特許第6358094号(P6358094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6358094感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358094
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20180709BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20180709BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20180709BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20180709BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20180709BHJP
   C08F 20/30 20060101ALI20180709BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20180709BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20180709BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20180709BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   G03F7/027 502
   G03F7/033
   G03F7/031
   G03F7/004 512
   G03F7/40 521
   C08F20/30
   C08F2/44 C
   C08F2/50
   H05K3/06 H
   H05K3/18 D
【請求項の数】7
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2014-548540(P2014-548540)
(86)(22)【出願日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】JP2013080831
(87)【国際公開番号】WO2014080834
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2016年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-254405(P2012-254405)
(32)【優先日】2012年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡出 翔太
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】村松 有紀子
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−086224(JP,A)
【文献】 特開2009−229657(JP,A)
【文献】 特開2007−163772(JP,A)
【文献】 特開2003−186186(JP,A)
【文献】 特開2007−264483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/00;G03F7/004−7/18;7/26−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸に由来する構造単位、スチレン又はα−メチルスチレンに由来する構造単位及び(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、
エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を有し、前記エチレンオキシ基の構造単位数が1〜20であり、前記プロピレンオキシ基の構造単位数が2〜7であり、前記エチレンオキシ基及び前記プロピレンオキシ基の総構造単位数が10を超える第一のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートを含む光重合性化合物と、
光重合開始剤と、
増感色素としてのピラゾリン誘導体と、
を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ピラゾリン誘導体が、下記一般式(8)で表される化合物及び一般式(9)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】



(一般式(8)中、R〜R11はそれぞれ独立に炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、炭素数6〜8のアリール基又はハロゲン原子を示す。a、b及びcはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、且つ、a、b及びcの総和は1〜6である。a、b及びcの総和が2以上のとき、複数存在するR〜R11は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化2】


(一般式(9)中、R12〜R14はそれぞれ独立に炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、炭素数6〜8のアリール基又はハロゲン原子を示す。d、e及びfはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、且つ、d、e及びfの総和は1〜6である。d、e及びfの総和が2以上のとき、複数存在するR12〜R14は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
エチレンオキシ基を有し、前記エチレンオキシ基の構造単位数が8以下であり、前記第一のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートとは異なる第二のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートを更に含む請求項1又は請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
支持フィルムと、
前記支持フィルム上に設けられる請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂組成物層と、
を備える感光性エレメント。
【請求項5】
基板上に、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂組成物層を形成する感光層形成工程と、
前記感光性樹脂組成物層の少なくとも一部の領域に活性光線を照射する工程と、
前記感光性樹脂組成物層の前記活性光線を照射した領域以外の領域を前記基板上から除去する工程と、
を有するレジストパターンの形成方法。
【請求項6】
前記活性光線の波長が340nm〜430nmの範囲内である請求項5に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板をエッチング処理又はめっき処理する工程を含むプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造分野においては、エッチング処理又はめっき処理に用いられるレジスト材料として、感光性樹脂組成物が広く用いられている。感光性樹脂組成物は、支持フィルムと、該支持フィルム上に感光性樹脂組成物を用いて形成された層(以下、「感光性樹脂組成物層」ともいう)とを備える感光性エレメント(積層体)として用いられることが多い。
【0003】
プリント配線板は、例えば以下のようにして製造される。まず、感光性エレメントの感光性樹脂組成物層を回路形成用基板上に形成(ラミネート)する(感光層形成工程)。次に、支持フィルムを剥離除去した後、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を硬化させる(露光工程)。その後、感光性樹脂組成物層の未露光部を基板上から除去(現像)することにより、基板上に、感光性樹脂組成物の硬化物(以下、「レジスト硬化物」ともいう)からなるレジストパターンが形成される(現像工程)。得られたレジストパターンをマスクとして、エッチング処理又はめっき処理を施して基板上に回路を形成した後(回路形成工程)、最終的にレジストを剥離除去してプリント配線板が製造される(剥離工程)。
【0004】
露光の方法としては、従来、水銀灯を光源としてフォトマスクを介して露光する方法が用いられている。また、近年、DLP(Digital Light Processing)又はLDI(Laser Direct Imaging)と呼ばれる、パターンのデジタルデータを感光性樹脂組成物層に直接描画する直接描画露光法が提案されている。この直接描画露光法は、フォトマスクを介した露光法よりも位置合わせ精度が良好であり、且つ高精細なパターンが得られることから、高密度パッケージ基板作製のために導入されつつある。
【0005】
一般に露光工程では、生産効率の向上のために露光時間を短縮する必要がある。しかし、上述の直接描画露光法では、光源にレーザ等の単色光を用いるほか、基板を走査しながら光線を照射するため、従来のフォトマスクを介した露光方法と比べて多くの露光時間を要する傾向がある。そのため、露光時間を短縮して生産効率を高めるためには、従来よりも感光性樹脂組成物の感度を向上させる必要がある。
【0006】
一方で、近年のプリント配線板の高密度化に伴い、解像度(解像性)及び密着性に優れたレジストパターンを形成可能な感光性樹脂組成物に対する要求が高まっている。特に、パッケージ基板作製において、L/S(ライン幅/スペース幅)が10/10(単位:μm)以下のレジストパターンを形成することが可能な感光性樹脂組成物が求められている。
【0007】
また、一般的に、レジストパターンの高解像度化は、例えば、感光性樹脂組成物の硬化後の架橋密度を向上させることにより達成される。しかし、架橋密度を向上させるとレジストパターンが硬く、もろくなり、搬送工程等でレジストパターンの欠けという問題が発生しやすくなる。この問題を解決する方法として、レジストパターンの屈曲性を向上させる手法がある。しかし、屈曲性を向上させると、レジストパターンが倒れやすくなってしまい、その結果として解像性が低下してしまう傾向がある。従って、形成されるレジストパターンの高解像度化と屈曲性は互いに相反する特性であるといえる。
【0008】
さらに現像工程では、生産効率の向上のために未硬化の感光性樹脂組成物の剥離時間を短縮する必要がある。
【0009】
これらの要求に対して、従来、種々の感光性樹脂組成物が検討されている。
【0010】
例えば、特開2005−301101号公報、特開2007−114452号公報、特開2007−122028号公報、国際公開第08/078483号パンフレット、国際公開第10/098175号パンフレット、国際公開第10/098183号パンフレット及び国際公開第12/067107号パンフレットには、特定のバインダーポリマー、光重合性化合物、光重合開始剤、及び増感色素を用いることで、上述の要求される特性を向上させた感光性樹脂組成物が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の感光性樹脂組成物においては、形成されるレジストパターンの解像度及び密着性を維持したまま、屈曲性に優れ、さらに現像性を改良する点で未だ改善の余地がある。
【0012】
本発明は、解像度、密着性及び屈曲性のいずれにも優れるレジストパターンを優れた現像性で形成可能な感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、構造単位数1〜20のエチレンオキシ基及び構造単位数2〜7のプロピレンオキシ基を、総構造単位数10を超えて有し、ビスフェノール型構造及び2つのエチレン性不飽和結合基を有する光重合性化合物と、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位、スチレンに由来する構造単位及び(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する構造単位を有するバインダーポリマーとを組み合わせることにより、解像度、密着性及び屈曲性のいずれにも優れるレジストパターンを優れた現像性で形成可能な感光性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の第一の態様は、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位、スチレン又はα−メチルスチレンに由来する構造単位及び(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を有し、上記エチレンオキシ基の構造単位数が1〜20であり、上記プロピレンオキシ基の構造単位数が2〜7であり、上記エチレンオキシ基及び上記プロピレンオキシ基の総構造単位数が10を超える第一のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートを含む光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物である。
【0015】
上記感光性樹脂組成物は、上記の態様をとることによって、解像度、密着性及び屈曲性のいずれにも優れるレジストパターンを優れた現像性で形成することができる。上記感光性樹脂組成物によれば、L/S(ライン幅/スペース幅)が10/10(単位:μm)以下のレジストパターンを形成することが可能となる。
【0016】
上記感光性樹脂組成物は、感度、並びに形成されるレジストパターンの解像度、密着性、屈曲性及び硬化後の剥離特性をより向上する点から、ピラゾリン誘導体及びビスアルコキシアントラセンからなる群より選ばれる少なくとも1種の増感色素を更に含有することが好ましい。
【0017】
上記感光性樹脂組成物は、解像度、密着性及び屈曲性、並びに現像性を更に向上させる点から、エチレンオキシ基を有し、前記エチレンオキシ基の構造単位数が8以下であり、上記第一のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートとは異なる第二のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートを更に含むことが好ましい。
【0018】
本発明の第二の態様は、支持フィルムと、上記支持フィルム上に設けられる上記第一の態様の感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメントである。このような感光性エレメントを用いることにより、特に解像度、密着性、屈曲性及びレジスト形状に優れたレジストパターンを、優れた感度及び現像性で効率的に形成することができる。
【0019】
本発明の第三の態様は、基板上に、上記第一の態様の感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂組成物層を形成する工程(感光層形成工程)と、上記感光性樹脂組成物層の少なくとも一部の領域に活性光線を照射する工程(露光工程)と、上記感光性樹脂組成物層の上記活性光線を照射した領域以外の領域を上記基板上から除去する工程(現像工程)とを有するレジストパターンの形成方法である。上記レジストパターンの形成方法によれば、解像度、密着性及び屈曲性のいずれにも優れるレジストパターンを、優れた感度及び現像性で効率的に形成することができる。
【0020】
上記レジストパターンの形成方法において、照射する活性光線の波長は、340nm〜430nmの範囲内とすることが好ましい。これにより、解像度、密着性、屈曲性及びレジスト形状がより良好なレジストパターンを、優れた感度及び現像性で更に効率的に形成することができる。
【0021】
本発明の第四の態様は、上記レジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板をエッチング処理又はめっき処理する工程を含むプリント配線板の製造方法である。この製造方法によれば、高密度パッケージ基板のような高密度化した配線を有するプリント配線板を、優れた精度で生産性よく、効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、解像度、密着性、及び屈曲性のいずれにも優れるレジストパターンを優れた現像性で形成可能な感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の感光性エレメントの一実施形態を示す模式断面図である。
図2図2(a)〜図2(f)は、セミアディティブ工法によるプリント配線板の製造工程の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を意味する。(ポリ)エチレンオキシ基とは、エチレンオキシ基又は2以上のエチレン基がエーテル結合で連結したポリエチレンオキシ基の少なくとも1種を意味する。なお、エチレンオキシ基とは、(−CHCH−O−)で表される基であり、オキシエチレン基ともいう。(ポリ)プロピレンオキシ基とは、プロピレンオキシ基又は2以上のプロピレン基がエーテル結合で連結したポリプロピレンオキシ基の少なくとも1種を意味する。なお、プロピレンオキシ基とは、(−CHCHCH−O−)で表される基、(−CHCHCH−O−)で表される基又は(−CHCHCH−O−)で表される基であり、オキシプロピレン基ともいう。さらに、「EO変性」とは、(ポリ)エチレンオキシ基を有する化合物であることを意味し、「PO変性」とは、(ポリ)プロピレンオキシ基を有する化合物であることを意味し、「EO・PO変性」とは、(ポリ)エチレンオキシ基及び(ポリ)プロピレンオキシ基の双方を有する化合物であることを意味する。
【0025】
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が脱着可能であってもよい。
【0026】
<感光性樹脂組成物>
本発明の一実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)成分:(メタ)アクリル酸に由来する構造単位、スチレンに由来する構造単位及び(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、(B)成分:エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を有し、上記エチレンオキシ基の構造単位数が1〜20であり、上記プロピレンオキシ基の構造単位数が2〜7であり、上記エチレンオキシ基及び上記プロピレンオキシ基の総構造単位数が10を超える第一のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートを含む光重合性化合物と、(C)成分:光重合開始剤と、を含有する。上記感光性樹脂組成物は、必要に応じて更にその他の成分を含んでいてもよい。
【0027】
光重合性化合物として構造単位数1〜20のエチレンオキシ基と構造単位数2〜7のプロピレンオキシ基を、合計構造単位数10を超えて有する第一のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位、スチレン又はα−メチルスチレンに由来する構造単位及び(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する構造単位を有するバインダーポリマーとを含むことで、感度、解像度、密着性、及び屈曲性のいずれにも優れるレジストパターンを、優れた現像性で形成可能な感光性樹脂組成物を構成することが出来る。上記効果を奏する詳細な理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、疎水性で低膨潤性に効果のあるプロピレンオキシ基とビスフェノールA誘導体構造に加えて、柔軟性に優れるエチレンオキシ基を有する光重合性化合物を、特定構造を有するバインダーポリマーと組み合わせて用いることで、低膨潤性を有しながら粗い架橋ネットワーク形成が可能となり、密着性と現像性という互いに相反する特性をバランスよく向上することが出来ると推察している。更に上記の光重合性化合物とスチレン又はα−メチルスチレンに由来する構造単位及び(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する構造単位を有するバインダーポリマーとを組み合わせることで、解像度と屈曲性が向上するものと推察している。
【0028】
(A)成分:バインダーポリマー
上記感光性樹脂組成物は、(A)成分として、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸に由来する構造単位、下記一般式(2)で表されるスチレン又はα−メチルスチレンに由来する構造単位、及び下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する構造単位を有するバインダーポリマーの少なくとも1種を含む。
【0029】
【化1】

【0030】
一般式(1)、(2)及び(3)において、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、共にメチル基であることが好ましい。
【0031】
上記バインダーポリマーは例えば、重合性単量体(モノマー)として、(メタ)アクリル酸、スチレン又はα−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジル及び必要に応じて用いられるその他の重合性単量体を、常法により、ラジカル重合させることにより得られる。
【0032】
その他の重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、スチレン又はα−メチルスチレン、及び(メタ)アクリル酸ベンジルと重合可能であり、(メタ)アクリル酸、スチレン及び(メタ)アクリル酸ベンジルとは異なる重合性単量体であれば、特に制限はない。その他の重合性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルオキシエチル、(メタ)アクリル酸アダマンチルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシプロピルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシプロピルオキシエチル、(メタ)アクリル酸アダマンチルオキシプロピルオキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;α−ブロモアクリル酸、α−クロルアクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸誘導体;ビニルトルエン等の芳香族環において置換されている重合可能なスチレン誘導体;ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド;アクリロニトリル;ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエーテル化合物;マレイン酸;マレイン酸無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル;フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等の不飽和カルボン酸誘導体などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種類以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0033】
上記バインダーポリマー中の、(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する構造単位の含有率は、解像度及び剥離性に優れる点から、バインダーポリマーを構成する重合性単量体の全質量を基準(100質量%、以下同様)として、3質量%〜85質量%であることが好ましく、5質量%〜75質量%であることがより好ましく、10質量%〜70質量%であることが更に好ましく、10質量%〜50質量%であることが特に好ましい。解像度に優れる点からは、この含有率が3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。また、剥離性及び密着性に優れる点からは、この含有率が85質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
【0034】
上記バインダーポリマー中の、スチレン又はα−メチルスチレンに由来する構造単位の含有率は、形成されるレジストパターンの密着性及び剥離性に優れる点からは、バインダーポリマーを構成する重合性単量体の全質量を基準として10質量%〜70質量%であることが好ましく、15質量%〜60質量%であることがより好ましく、20質量%〜55質量%であることが更に好ましい。形成されるレジストパターンの密着性に優れる点からは、この含有率が10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。また、形成されるレジストパターンの剥離性に優れる点からは、この含有率が70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、55質量%以下であることが更に好ましい。
【0035】
また、バインダーポリマーは、現像性及び剥離特性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を更に有することが好ましい。
【0036】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、及び(メタ)アクリル酸ドデシルが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0037】
バインダーポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を有する場合、該構造単位の含有率は、形成されるレジストパターンの剥離性、解像度及び密着性に優れる点では、バインダーポリマーを構成する重合性単量体の全質量(100質量%)を基準として1質量%〜30質量%であることが好ましく、1質量%〜20質量%であることがより好ましく、2質量%〜10質量%であることが更に好ましい。剥離性に優れる点では、この含有量が1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、解像度及び密着性に優れる点では、この含有量が30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
【0038】
バインダーポリマーの酸価は、形成されるレジストパターンの現像性及び密着性に優れる点では、90mgKOH/g〜250mgKOH/gであることが好ましく、100mgKOH/g〜240mgKOH/gであることがより好ましく、120mgKOH/g〜235mgKOH/gであることが更に好ましく、130mgKOH/g〜230mgKOH/gであることが特に好ましい。現像時間を短縮する点からは、この酸価は90mgKOH/g以上であることが好ましく、100mgKOH/g以上であることがより好ましく、120mgKOH/g以上であることが更に好ましく、130mgKOH/g以上であることが特に好ましい。また、感光性樹脂組成物の硬化物の密着性を充分に達成する点からは、この酸価は250mgKOH/g以下であることが好ましく、240mgKOH/g以下であることがより好ましく、235mgKOH/g以下であることが更に好ましく、230mgKOH/g以下であることが特に好ましい。なお、溶剤現像を行う場合は、(メタ)アクリル酸等のカルボキシ基を有する重合性単量体(モノマー)を少量に調製することが好ましい。
【0039】
バインダーポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定(標準ポリスチレンを用いた検量線により換算)した場合、現像性及び密着性に優れる点では、10000〜200000であることが好ましく、15000〜100000であることがより好ましく、20000〜80000であることが更に好ましく、23000〜60000であることが特に好ましい。現像性に優れる点では、上記重量平均分子量は200000以下であることが好ましく、100000以下であることがより好ましく、80000以下であることが更に好ましく、60000以下であることが特に好ましい。密着性に優れる点では、上記重量平均分子量は10000以上であることが好ましく、15000以上であることがより好ましく、23000以上であることが更に好ましく、30000以上であることが特に好ましい。
【0040】
バインダーポリマーの分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、解像度及び密着性に優れる点では、3.0以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましく、2.5以下であることが更に好ましい。
【0041】
バインダーポリマーは、必要に応じて340nm〜430nmの範囲内の波長を有する光に対して感光性を有する特性基をその分子内に有していてもよい。上記特性基としては後述する増感色素から水素原子を少なくとも1つ取り除いて構成される基を挙げることができる。
【0042】
(A)成分としては、1種類のバインダーポリマーを1種単独で使用してもよく、2種類以上のバインダーポリマーを任意に組み合わせて使用してもよい。
【0043】
上記感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量は、フィルム形成性、感度及び解像度に優れる点では、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部中に、30質量部〜70質量部であることが好ましく、35質量部〜65質量部であることがより好ましく、40質量部〜60質量部であることが特に好ましい。フィルム(感光性樹脂組成物層)の形成性の点からは、この含有量は30質量部以上であることが好ましく、35質量部以上であることがより好ましく、40質量部以上であることが特に好ましい。また、感度及び解像度が充分に得られる点からは、この含有量は70質量部以下であることが好ましく、65質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることが更に好ましい。
【0044】
(B)成分:光重合性化合物
次に、光重合性化合物(以下「(B)成分」ともいう。)について説明する。(B)成分である光重合性化合物は、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を有し、上記エチレンオキシ基の構造単位数が1〜20であり、上記プロピレンオキシ基の構造単位数が2〜7であり、上記エチレンオキシ基及び上記プロピレンオキシ基の総構造単位数が10を超える第一のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート(以下、「特定重合性化合物」ともいう)の少なくとも1種を必須成分として含む。(B)成分は、必要に応じて第一のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート以外の光重合性化合物を更に含んでいてもよい。
【0045】
上記特定重合性化合物は、プロピレンオキシ基を有することで、光硬化後の架橋ネットワークの分子運動の抑制により低膨潤性を示すため、形成されるレジストパターンの解像性に優れると考えられる。更に柔軟な部分構造であるエチレンオキシ基を有することにより、形成されるレジストパターンの屈曲性がより向上すると考えられる。
【0046】
上記特定重合性化合物において、一分子中におけるプロピレンオキシ基の総構造単位数は2〜7である。ここで構造単位数は、プロピレンオキシ基の分子中における付加数を示すものである。従って、単一の分子については整数値を示すが、複数種の分子の集合体としては平均値である有理数を示す。
【0047】
上記特定重合性化合物において、一分子中におけるエチレンオキシ基の総構造単位数は1〜20である。ここで構造単位数はエチレンオキシ基が、分子中にどの程度付加されているかを示すものである。従って、単一の分子については整数値を示すが、複数種の分子の集合体としては平均値である有理数を示す。
【0048】
上記特定重合性化合物中におけるプロピレンオキシ基の総構造単位数は、レジストの解像性に優れる点から2以上であり、3以上であることが好ましい。また、現像性の観点から5以下であることが好ましい。
【0049】
上記特定重合性化合物中におけるエチレンオキシ基の総構造単位数は、現像性に優れる点からは、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましい。また、解像性の観点から16以下であることが好ましく、14以下であることがより好ましい。
【0050】
上記特定重合性化合物は下記一般式(4a)で表される化合物であることが好ましい。
【0051】
【化2】


【0052】
上記一般式(4a)中、R41及びR42はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。XO及びYOはそれぞれ独立に、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基を示す。(XO)m、(XO)m、(YO)n、及び(YO)nはそれぞれ(ポリ)エチレンオキシ基又は(ポリ)プロピレンオキシ基を示す。m、m、n及びnはそれぞれ独立に、0〜20を示す。XOがエチレンオキシ基、YOがプロピレンオキシ基である場合、m+mは1〜20であり、n+nは2〜7である。XOがプロピレンオキシ基、YOがエチレンオキシ基の場合、m+mは2〜7であり、n+nは1〜20である。m+m+n+nは10を超える。m、m、n及びnは構造単位の構造単位数を示す。従って単一の分子においては整数値を示し、複数種の分子の集合体としては平均値である有理数を示す。以下、構造単位の構造単位数については同様である。
【0053】
上記化合物の市販品としては、2,2−ビス(4−(メタクリロキシドデカエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン(日立化成(株)、「FA−3200MY」)等が挙げられる。
【0054】
上記感光性樹脂組成物における上記特定重合性化合物の含有量は、光硬化後に、架橋ネットワーク中の分子運動の抑制により膨潤を抑制させる観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部中に、1質量部〜60質量部であることが好ましく、5重量部〜50質量部であることがより好ましく、10質量部〜40質量部であることが更に好ましい。また、レジストの底部硬化性に優れる点からは、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、23質量部以下であることが更に好ましい。
【0055】
上記感光性樹脂組成物は(B)成分として、上記特定重合性化合物以外のその他の光重合性化合物を含むことができる。その他の光重合性化合物としては、光重合が可能なものであれば特に制限はない。その他の光重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、分子内にエチレン性不飽和結合を1つ有する化合物、分子内にエチレン性不飽和結合を2つ有する化合物、分子内にエチレン性不飽和結合を3つ以上有する化合物等が挙げられる。
【0056】
上記(B)成分がその他の光重合性化合物を含む場合、(B)成分中における上記その他の光重合性化合物の含有量は、架橋ネットワーク中の嵩高さにより物理的に膨潤を抑制させる観点から、(B)成分の総量100質量部中に、2質量部〜60質量部であることが好ましく、6質量部〜50質量部であることがより好ましく、10質量部〜40質量部であることが更に好ましい。
【0057】
上記(B)成分は、その他の光重合性化合物として分子内にエチレン性不飽和結合を2つ有する化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。上記(B)成分がその他の光重合性化合物として、分子内にエチレン性不飽和結合を2つ有する化合物を含む場合、その含有量は(A)成分及び(B)成分の総量100質量部中に、5質量部〜60質量部であることが好ましく、5質量部〜55質量部であることがより好ましく、10質量部〜50質量部であることが更に好ましい。
【0058】
分子内にエチレン性不飽和結合を2つ有する化合物の例としては、特定重合性化合物とは異なるビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート化合物、水添ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物、分子内にウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート化合物、分子内に(ポリ)エチレンオキシ基及び(ポリ)プロピレンオキシ基の双方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
上記(B)成分はその他の光重合性化合物として、解像度及び剥離特性を向上させる観点から、特定重合性化合物とは異なるビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート化合物、水添ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物及び分子内に(ポリ)エチレンオキシ基と(ポリ)プロピレンオキシ基とを有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる分子内にエチレン性不飽和結合を2つ有する化合物の少なくとも1種を含むことが好ましく、特定重合性化合物とは異なるビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種を含むことがより好ましく、エチレンオキシ基を有し、前記エチレンオキシ基の構造単位数が8以下であり、特定重合性化合物とは異なるビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート化合物(以下、「第二のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート化合物」ともいう)の少なくとも1種を含むことが更に好ましい。
【0060】
上記特定重合性化合物とは異なるビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート化合物としては、下記一般式(4b)で表される化合物が挙げられる。
【0061】
【化3】

【0062】
上記一般式(4b)中、R41及びR42はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。XOはそれぞれ独立にエチレンオキシ基を示し、(XO)m及び(XO)mはそれぞれ(ポリ)エチレンオキシ基を示す。m及びmはそれぞれの構造単位の構造単位数であり、それぞれ独立に0〜40を示す。
【0063】
解像性に優れる点からは、上記一般式(4b)において、m及びmがそれぞれ独立に0〜8であり、m+mが8以下である化合物を用いることが好ましく、m及びmはそれぞれ独立に0〜6であり、m+mが6以下である化合物を用いることがより好ましい。m+mの下限値は、屈曲性の点から、2以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。
【0064】
上記一般式(4b)で表される化合物のうち、商業的に入手可能なものとしては、2,2−ビス(4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(日立化成(株)、「FA−324M」等)、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン((新中村化学工業(株)、「BPE−500」)、(日立化成(株)、「FA−321M」)等)、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン(新中村化学工業(株)、「BPE−1300」)等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種類以上を任意に組み合わせて使用される。
【0065】
上記感光性樹脂組成物が(B)成分として特定重合性化合物とは異なるビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート化合物を更に含む場合、その含有量としては、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部中に、1質量部〜50質量部であることが好ましく、5質量部〜50質量部であることがより好ましく、10質量部〜45質量部であることが更に好ましい。
【0066】
水添ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物としては、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)シクロヘキシル)プロパンが挙げられる。上記感光性樹脂組成物が水添ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物を含む場合、その含有量としては、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部中に、1質量部〜50質量部であることが好ましく、5質量部〜40質量部であることがより好ましい。
【0067】
上記(B)成分は、レジストパターンの屈曲性を向上させる観点から、その他の光重合性化合物としてポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが好ましい。上記感光性樹脂組成物がポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む場合、その含有量としては、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部中に、5質量部〜30質量部であることが好ましく、10質量部〜25質量部であることがより好ましい。
【0068】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物としては、分子内に(ポリ)エチレンオキシ基及び(ポリ)プロピレンオキシ基の双方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの分子内において、(ポリ)エチレンオキシ基及び(ポリ)プロピレンオキシ基は、それぞれ連続してブロック的に存在しても、ランダムに存在してもよい。なお、(ポリ)プロピレンオキシ基におけるプロピレンオキシ基は、n−プロピレンオキシ基又はイソプロピレンオキシ基のいずれであってもよい。また、(ポリ)イソプロピレンオキシ基において、プロピレン基の2級炭素が酸素原子に結合していてもよく、1級炭素が酸素原子に結合していてもよい。
【0069】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、(ポリ)n−ブチレンオキシ基、(ポリ)イソブチレンオキシ基、(ポリ)n−ペンチレンオキシ基、(ポリ)ヘキシレンオキシ基、これらの構造異性体等である炭素原子数4〜6程度の(ポリ)アルキレンオキシ基を有していてもよい。
【0070】
上記(B)成分は、その他の光重合性化合物として分子内にエチレン性不飽和結合を3つ以上有する光重合性化合物の少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0071】
エチレン性不飽和結合を3つ以上有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(エチレンオキシ基の構造単位数が1〜5のもの)、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
上記エチレン性不飽和結合を3つ以上有する化合物のうち、商業的に入手可能なものとしては、テトラメチロールメタントリアクリレート(新中村化学工業(株)、「A−TMM−3」等)、EO変性トリメチロールプロパントリメタクリレート(日立化成(株)、「TMPT21E」、「TMPT30E」等)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(サートマー(株)、「SR444」等)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業(株)、「A−DPH」等)、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)、「ATM−35E」等)等が挙げられる。
【0073】
上記(B)成分が、その他の光重合性化合物として分子内にエチレン性不飽和結合を3つ以上有する光重合性化合物を含む場合、その含有量は、解像度、密着性、レジスト形状及び硬化後の剥離特性をバランスよく向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部中に、3質量部〜30質量部であることが好ましく、5質量部〜25質量部であることがより好ましく、5質量部〜20質量部であることが更に好ましい。
【0074】
上記(B)成分は、形成されるレジストパターンの解像度、密着性、レジスト形状及び硬化後の剥離特性をバランスよく向上させる点、又はスカム発生の抑制の点から、その他の光重合性化合物として分子内にエチレン性不飽和結合を1つ有する光重合性化合物を含んでもよい。
【0075】
分子内にエチレン性不飽和結合を1つ有する光重合性化合物としては、例えば、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、フタル酸系化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。上記の中でも、形成されるレジストパターンの解像度、密着性、レジスト形状及び硬化後の剥離特性をバランスよく向上させる観点から、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート又はフタル酸系化合物を含むことが好ましい。
【0076】
上記(B)成分が、その他の光重合性化合物として分子内にエチレン性不飽和結合を1つ有する光重合性化合物を含む場合、その含有量は(A)成分及び(B)成分の総量100質量部中に、1質量部〜20質量部であることが好ましく、3質量部〜15質量部であることがより好ましく、5質量部〜12質量部であることが更に好ましい。
【0077】
上記感光性樹脂組成物における(B)成分全体の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して30質量部〜70質量部とすることが好ましく、35質量部〜65質量部とすることがより好ましく、35質量部〜50質量部とすることが特に好ましい。この含有量が30質量部以上であると、充分な感光性樹脂組成物の感度及び形成されるレジストパターンの解像度が得られ易くなる傾向がある。70質量部以下であると、フィルム(感光性樹脂組成物層)を形成し易くなる傾向があり、また良好なレジスト形状が得られ易くなる傾向がある。
【0078】
(C)成分:光重合開始剤
上記感光性樹脂組成物は、(C)成分として光重合開始剤の少なくとも1種を含む。(C)成分である光重合開始剤としては、特に制限はなく、通常用いられる光重合開始剤から適宜選択することができる。光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;アルキルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(2−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体が挙げられる。これらは1種単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
(C)成分は、感光性樹脂組成物の感度及び形成されるレジストパターンの密着性を向上させる点から、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体の少なくとも1種を含むことが好ましく、2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体を含むことがより好ましい。2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体は、その構造が対称であっても非対称であってもよい。
【0080】
上記感光性樹脂組成物における(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.1質量部〜10質量部であることが好ましく、1質量部〜7質量部であることがより好ましく、2質量部〜6質量部であることが更に好ましく、3質量部〜5質量部であることが特に好ましい。(C)成分の含有量が0.1質量部以上であると良好な感度、解像度又は密着性が得られ易くなる傾向があり、10質量部以下であると良好なレジスト形状を得られ易くなる傾向がある。
【0081】
(D)成分:増感色素
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(D)成分として、ピラゾリン誘導体及びビスアルコキシアントラセンからなる群より選ばれる少なくとも1種の増感色素を含有することが好ましい。(D)成分である増感色素は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
特に、340nm〜430nmの活性光線を用いて感光性樹脂組成物層の露光を行う場合には、感度及び密着性の観点から、(D)成分は、ピラゾリン誘導体及びビスアルコキシアントラセンからなる群より選ばれる少なくとも1種の増感色素を含むことが好ましい。
【0083】
上記ピラゾリン化合物としては、下記一般式(8)で表される化合物及び一般式(9)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0084】
【化4】

【0085】
上記一般式(8)中、R〜R11はそれぞれ独立に炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、炭素数6〜8のアリール基又はハロゲン原子を示す。また、a、b及びcはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、且つ、a、b及びcの総和は1〜6である。a、b及びcの総和が2以上のとき、複数存在するR〜R11は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0086】
上記一般式(8)中、R〜R11のうち少なくとも一つは、炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素原子数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基又はフェニル基であることがより好ましく、tert−ブチル基、イソプロピル基、メトキシ基、又はエトキシ基であることが更に好ましい。
【0087】
上記一般式(8)で表されるピラゾリン化合物としては、特に制限なく用いることができるが、具体例としては、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,5−ジメトキシスチリル)−5−(3,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,4−ジメトキシスチリル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,6−ジメトキシスチリル)−5−(2,6−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,5−ジメトキシスチリル)−5−(2,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,3−ジメトキシスチリル)−5−(2,3−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,4−ジメトキシスチリル)−5−(2,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン等の上記一般式(8)中のa=0に該当するピラゾリン化合物が挙げられる。
【0088】
【化5】

【0089】
上記一般式(9)中、R12〜R14はそれぞれ独立に炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、炭素数6〜8のアリール基又はハロゲン原子を示す。また、d、e及びfはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、且つ、d、e及びfの総和は1〜6である。d、e及びfの総和が2以上のとき、複数存在するR12〜R14は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0090】
上記一般式(9)中、R12〜R14のうち少なくとも一つは、炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基又はフェニル基であることが好ましく、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基又はフェニル基であることがより好ましく、tert−ブチル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基又はフェニル基であることが更に好ましい。
【0091】
また、上記一般式(9)で表されるピラゾリン化合物としては、特に制限なく用いることができるが、例としては、1−フェニル−3,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3,5−ビス(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−イソプロピルフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチルフェニル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−イソプロピルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1,5−ジフェニル−3−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1,3−ジフェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1,5−ジフェニル−3−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1,3−ジフェニル−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1,5−ジフェニル−3−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1,3−ジフェニル−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1,5−ジフェニル−3−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン等の上記一般式(9)中のd=0に該当するピラゾリン化合物;1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−オクチルフェニル)−ピラゾリン等の上記一般式(9)中、e=1、R13=フェニル基であるピラゾリン化合物が挙げられる。
【0092】
上記ビスアルコキシアントラセン化合物としては、下記一般式(10)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0093】
【化6】

【0094】
上記一般式(10)中、R15及びR16は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数5〜12のシクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基、炭素原子数2〜12のアルカノイル基又はベンゾイル基を示す。R17〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、フェニル基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、炭素原子数6〜8のアリールオキシ基又はベンゾイル基を示す。
【0095】
上記一般式(10)におけるR15及びR16の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が好ましく挙げられる。R15及びR16の組合せとしては、例えば、エチル基同士の組合せ、プロピル基同士の組合せ、及びブチル基同士の組合せが挙げられる。
【0096】
17〜R24としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、へキセニル基、ヘプテニル基、エトキシカルボニル基、ヒドロキシエトキシカルボニル基、及びフェノキシ基が挙げられる。R17〜R24の組合せとしては、それら全てが水素原子;それらのいずれか1つがメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、へキセニル基、ヘプテニル基、エトキシカルボニル基、ヒドロキシエトキシカルボニル基、又はフェノキシ基であって、それ以外の全てが水素原子;それらのいずれか2つが、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、へキセニル基、ヘプテニル基、エトキシカルボニル基、ヒドロキシエトキシカルボニル基、及びフェノキシ基からなる群より選ばれる基であり、それ以外の全てが水素原子等の組み合わせが挙げられる。
【0097】
上記R15及びR16は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましい。R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、及びR24はそれぞれ水素原子であることが好ましい。
【0098】
上記一般式(10)で示される化合物の例としては、具体的には9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン等が挙げられる。
【0099】
上記感光性樹脂組成物における(D)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.01質量部〜10質量部とすることが好ましく、0.05質量部〜5質量部とすることがより好ましく、0.1質量部〜3質量部とすることが更に好ましい。この含有量が0.01質量部以上であると、感度及び解像度が得られ易くなる傾向があり、10質量部以下であると、充分に良好なレジスト形状が得られ易くなる傾向がある。
【0100】
(E)成分:アミン系化合物
上記感光性樹脂組成物は、(E)成分としてアミン系化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。アミン系化合物の例としては、ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メタン、ビス[4−(ジエチルアミノ)フェニル]メタン、ロイコクリスタルバイオレット等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0101】
感光性樹脂組成物が(E)成分を含む場合、その含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.01質量部〜10質量部とすることが好ましく、0.05〜5質量部とすることがより好ましく、0.1質量部〜2質量部とすることが更に好ましい。この含有量が0.01質量部以上であると充分な感度が得られ易くなる傾向がある。10質量部以下であると、フィルム形成後、過剰な(E)成分が異物として析出することが抑制される傾向がある。
【0102】
(その他の成分)
上記感光性樹脂組成物は、必要に応じて、分子内に少なくとも1つのカチオン重合可能な環状エーテル基を有する光重合性化合物(オキセタン化合物等)、カチオン重合開始剤、マラカイトグリーン、ビクトリアピュアブルー、ブリリアントグリーン、メチルバイオレット等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ジフェニルアミン、ベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、2−クロロアニリン等の光発色剤、熱発色防止剤、4−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などを含有してもよい。これらは、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。感光性樹脂組成物がその他の成分を含む場合、これらの含有量(複数種含む場合には、総含有量)は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、それぞれ0.01質量部〜20質量部程度とすることが好ましい。
【0103】
[感光性樹脂組成物の溶液]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、有機溶剤の少なくとも1種を更に含んでいてもよい。有機溶剤の例としては、メタノール、エタノール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル溶剤;トルエン等の芳香族炭化水素溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらは1種単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。上記感光性樹脂組成物に含まれる有機溶剤の含有量は目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、固形分が30質量%〜60質量%程度となる溶液として用いることができる。以下、有機溶剤を含む感光性樹脂組成物を「塗布液」ともいう。
【0104】
上記塗布液を、後述する支持フィルム、金属板などの表面上に塗布し、乾燥させることにより、上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂組成物層を形成することができる。金属板としては特に制限されず、目的等に応じて適宜選択できる。金属板の例としては、銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金などの金属板を挙げることができる。金属板として、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金等の金属板が挙げられる。
【0105】
形成される感光性樹脂組成物層の厚みは特に制限されず、その用途により適宜選択できる。感光性樹脂組成物層の厚みは、例えば、乾燥後の厚みで1μm〜100μm程度であることが好ましい。金属板上に感光性樹脂組成物層を形成した場合、感光性樹脂組成物層の金属板とは反対側の表面を、保護フィルムで被覆してもよい。保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムなどが挙げられる。
【0106】
上記感光性樹脂組成物は、後述する感光性エレメントの感光性樹脂組成物層の形成に適用することができる。すなわち本発明の別の実施形態は、(A)成分:(メタ)アクリル酸に由来する構造単位、スチレン又はα−メチルスチレンに由来する構造単位及び(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、(B)成分:エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を有し、上記エチレンオキシ基の構造単位数が1〜20であり、上記プロピレンオキシ基の構造単位数が2〜7であり、上記エチレンオキシ基及び上記プロピレンオキシ基の総構造単位数が10を超える第一のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートを含む光重合性化合物と、(C)成分:光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物の感光性エレメントへの応用である。また、本発明の別の実施形態の感光性樹脂組成物は、後述するレジストパターンの形成方法に使用できる。すなわち本発明の別の実施形態は、(A)成分:(メタ)アクリル酸に由来する構造単位、スチレン又はα−メチルスチレンに由来する構造単位及び(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、(B)成分:エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を有し、上記エチレンオキシ基の構造単位数が1〜20であり、上記プロピレンオキシ基の構造単位数が2〜7であり、上記エチレンオキシ基及び上記プロピレンオキシ基の総構造単位数が10を超える第一のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートを含む光重合性化合物と、(C)成分:光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物のレジストパターンの形成方法への応用である。
【0107】
<感光性エレメント>
本発明の感光性エレメントは、支持フィルムと、該支持フィルム上に設けられる上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂組成物層とを備える。なお、上記塗膜は上記感光性樹脂組成物が未硬化状態のものである。上記感光性エレメントは、必要に応じて保護フィルム等のその他の層を有していてもよい。
【0108】
図1に、上記感光性エレメントの一実施形態を示す。図1に示す感光性エレメント1では、支持フィルム2、上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂組成物層3、及び保護フィルム4がこの順に積層されている。感光性エレメント1は、例えば、以下のようにして得ることができる。支持フィルム2上に、有機溶剤を含む上記感光性樹脂組成物である塗布液を塗布して塗布層を形成し、これを乾燥することで感光性樹脂組成物層3を形成する。次いで、感光性樹脂組成物層3の支持フィルム2とは反対側の面を保護フィルム4で被覆することにより、支持フィルム2と、該支持フィルム2上に形成される感光性樹脂組成物層3と、該感光性樹脂組成物層3上に積層される保護フィルム4とを備える、本実施形態の感光性エレメント1が得られる。感光性エレメント1は、保護フィルム4を必ずしも備えなくてもよい。
【0109】
支持フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。
【0110】
支持フィルム(重合体フィルム)の厚みは、1μm〜100μmであることが好ましく、5μm〜50μmであることがより好ましく、5μm〜30μmであることが更に好ましい。支持フィルムの厚みが1μm以上であることで、支持フィルムを剥離する際に支持フィルムが破れることを抑制できる。また、100μm以下であることで解像度の低下が抑制される。
【0111】
保護フィルムとしては、感光性樹脂組成物層に対する接着力が、支持フィルムの感光性樹脂組成物層に対する接着力よりも小さいものが好ましい。また、低フィッシュアイのフィルムが好ましい。ここで、「フィッシュアイ」とは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものを意味する。すなわち、「低フィッシュアイ」とは、フィルム中の上記異物等が少ないことを意味する。
【0112】
具体的に、保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンなどの耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。市販のものとしては、王子製紙(株)のアルファンMA−410、E−200、信越フィルム(株)等のポリプロピレンフィルム、帝人(株)のPS−25等のPSシリーズのポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。なお、保護フィルム4は支持フィルム2と同一のものでもよい。
【0113】
保護フィルムの厚みは1μm〜100μmであることが好ましく、5μm〜50μmであることがより好ましく、5μm〜30μmであることが更に好ましく、15μm〜30μmであることが特に好ましい。保護フィルムの厚みが1μm以上であると、保護フィルムを剥がしながら、感光性樹脂組成物層及び支持フィルムを基板上にラミネートする際、保護フィルムが破れることを抑制できる。100μm以下であると、取扱い性と廉価性に優れる。
【0114】
本実施形態の感光性エレメントは、具体的には、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわち、感光性エレメントは、上記(A)成分:バインダーポリマー、上記(B)成分:光重合性化合物、及び上記(C)光重合開始剤を上記有機溶剤に溶解した塗布液を準備する工程と、上記塗布液を支持体(支持フィルム)上に塗布して塗布層を形成する工程と、上記塗布層を乾燥して感光性樹脂組成物層を形成する工程と、を含む製造方法で製造することができる。
【0115】
感光性樹脂組成物の溶液の支持フィルム上への塗布は、ロールコート、コンマコート、グラビアコート、エアーナイフコート、ダイコート、バーコート等の公知の方法により行うことができる。
【0116】
上記塗布層の乾燥条件は、塗布層から有機溶剤の少なくとも一部を除去することができれば特に制限はない。70℃〜150℃にて、5分〜30分間程度行うことが好ましい。乾燥後、感光性樹脂組成物層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する観点から、2質量%以下とすることが好ましい。
【0117】
感光性エレメントにおける感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により適宜選択することができる。乾燥後の厚みで1μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜50μmであることがより好ましく、5μm〜40μmであることが更に好ましい。感光性樹脂組成物層の厚みが1μm以上であることで、工業的な塗工が容易になる。100μm以下であると、密着性及び解像度が充分に得られる傾向がある。
【0118】
上記感光性樹脂組成物層の紫外線に対する透過率は、波長350nm〜420nmの範囲の紫外線に対して5%〜75%であることが好ましく、10%〜65%であることがより好ましく、15%〜55%であることが更に好ましい。この透過率が5%以上であると、充分な密着性が得られ易くなる傾向がある。75%以下であると、充分な解像度が得られ易くなる傾向がある。なお、上記透過率は、UV分光計により測定することができる。
UV分光計としては、228A型Wビーム分光光度計((株)日立製作所)を使用できる。
【0119】
感光性エレメントは、更にクッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層等を有していてもよい。これらの中間層としては、例えば、特開2006−098982号公報に記載の中間層を本発明においても適用することができる。
【0120】
得られた感光性エレメントの形態は特に制限されない。感光性エレメントは、例えば、シート状であってもよく、又は巻芯にロール状に巻き取った形状であってもよい。ロール状に巻き取る場合、支持フィルムが外側になるように巻き取ることが好ましい。巻芯の材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックなどが挙げられる。このようにして得られた感光性エレメントロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。梱包方法としては、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。
【0121】
本実施形態の感光性エレメントは、例えば、後述するレジストパターンの形成方法に好適に用いることができる。
【0122】
<レジストパターンの形成方法>
上記感光性樹脂組成物を用いて、レジストパターンを形成することができる。本発明の一実施形態のレジストパターンの形成方法は、(i)上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂組成物層を基板上に形成する工程(感光層形成工程)と、(ii)上記感光性樹脂組成物層の少なくとも一部の領域に活性光線を照射する工程(露光工程)と、(iii)上記感光性樹脂組成物層の上記活性光線を照射した領域以外の領域を上記基板上から除去する工程(現像工程)と、を有する。上記レジストパターンの形成方法は必要に応じて更にその他の工程を有していてもよい。
【0123】
(i)感光層形成工程
まず、上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂組成物層を基板上に形成する。基板としては、絶縁層と該絶縁層上に形成された導体層とを備える基板(回路形成用基板)を用いることができる。
【0124】
感光性樹脂組成物層の基板上への形成は、例えば、上記感光性エレメントが保護フィルム4を有している場合には、保護フィルムを除去した後、感光性エレメントの感光性樹脂組成物層を加熱しながら上記基板に圧着することにより行われる。これにより、基板と感光性樹脂組成物層と支持フィルムとがこの順に積層された積層体が得られる。
【0125】
感光層形成工程は、密着性及び追従性の見地から、減圧下で行うことが好ましい。圧着の際の感光性樹脂組成物層及び基板の少なくとも一方に対する加熱は、70℃〜130℃の温度で行うことが好ましく、0.1MPa〜1.0MPa程度(1kgf/cm〜10kgf/cm程度)の圧力で圧着することが好ましい。これらの条件には特に制限されず、必要に応じて適宜選択される。なお、感光性樹脂組成物層を70℃〜130℃に加熱すれば、予め基板を予熱処理することは必要ではない。回路形成用基板の予熱処理を行うことで密着性及び追従性を更に向上させることができる。
【0126】
(ii)露光工程
露光工程では、上記のようにして基板上に形成された感光性樹脂組成物層の少なくとも一部の領域に活性光線を照射することで、活性光線が照射された露光部が光硬化して、潜像が形成される。この際、感光性樹脂組成物層上に存在する支持フィルムが活性光線に対して透明である場合には、支持フィルムを通して活性光線を照射することが出来る。一方、支持フィルムが活性光線に対して遮光性を示す場合には、支持フィルムを除去した後に感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する。
【0127】
露光方法の例としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する方法(マスク露光法)が挙げられる。また、LDI(Laser Direct Imaging)露光法又はDLP(Digital Light Processing)露光法等の直接描画露光法により活性光線を画像状に照射する方法を採用してもよい。
【0128】
活性光線の光源としては特に制限されず、公知の光源を用いることができる。光源の例としては、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、アルゴンレーザ等のガスレーザ、YAGレーザ等の固体レーザ、半導体レーザ、窒化ガリウム系青紫色レーザ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。
【0129】
活性光線の波長(露光波長)としては、本発明の効果をより確実に得る観点から、340nm〜430nmの範囲内とすることが好ましく、350nm〜420nmの範囲内とすることがより好ましい。
【0130】
(iii)現像工程
現像工程では、上記感光性樹脂組成物層の未硬化部分が回路形成用基板上から現像処理により除去されることで、感光性樹脂組成物層が光硬化した硬化物であるレジストパターンが基板上に形成される。感光性樹脂組成物層上に支持フィルムが存在している場合には、支持フィルムを除去してから、未露光部分の除去(現像)を行う。現像処理には、ウェット現像とドライ現像とがあるが、ウェット現像が広く用いられている。
【0131】
ウェット現像による場合、感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、公知の現像方法により現像する。現像方法の例としては、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング、スクラッビング、揺動浸漬等を用いた方法が挙げられ、解像度向上の観点からは、高圧スプレー方式が最も適している。これら2種以上の方法を組み合わせて現像を行ってもよい。
【0132】
現像液は上記感光性樹脂組成物の構成に応じて適宜選択される。現像液の例としては、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤系現像液等が挙げられる。
【0133】
上記アルカリ性水溶液は、現像液として用いられる場合、安全且つ安定であり、操作性が良好である。アルカリ性水溶液の塩基としては、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ;リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが用いられる。
【0134】
現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1質量%〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等が好ましい。アルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましい。また、その温度は、感光性樹脂組成物層のアルカリ現像性に合わせて調節される。アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0135】
上記水系現像液は、例えば、水又はアルカリ性水溶液と1種以上の有機溶剤とを含む現像液である。ここで、アルカリ性水溶液の塩基の例としては、先に述べた物質以外に、ホウ砂、メタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、モルホリン等が挙げられる。水系現像液のpHは、現像が充分に行われる範囲でできるだけ小さくすることが好ましく、pH8〜12とすることが好ましく、pH9〜10とすることがより好ましい。
【0136】
水系現像液に用いる有機溶剤の例としては、アセトン、酢酸エチル、炭素原子数1〜4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。水系現像液における有機溶剤の含有率は、通常2質量%〜90質量%とすることが好ましい。また、その温度は、アルカリ現像性に合わせて調整することができる。水系現像液中には、界面活性剤、消泡剤等を少量混入することもできる。
【0137】
有機溶剤系現像液に用いられる有機溶剤の例としては、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの有機溶剤の少なくとも1種に、引火防止のため、1質量%〜20質量%の範囲で水を添加して有機溶剤系現像液とすることが好ましい。
【0138】
上記レジストパターンの形成方法では、未露光部分を除去した後、必要に応じて60℃〜250℃程度の加熱又は0.2J/cm〜10J/cm程度の露光を行うことにより、レジストパターンを更に硬化する工程を更に含んでもよい。
【0139】
<プリント配線板の製造方法>
本発明のプリント配線板の製造方法は、絶縁層と該絶縁層上に形成された導体層とを備える基板(回路形成用基板)の該導体層上に、上記レジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板をエッチング処理又はめっき処理して、導体パターンを形成する工程を含む。プリント配線板の製造方法は、必要に応じてレジスト除去工程等のその他の工程を含んでいてもよい。基板のエッチング処理又はめっき処理は、形成されたレジストパターンをマスクとして、基板の導体層等に対して行われる。
【0140】
エッチング処理では、基板上に形成されたレジストパターン(硬化レジスト)をマスクとして、硬化レジストによって被覆されていない回路形成用基板の導体層をエッチング除去し、導体パターンを形成する。エッチング処理の方法は、除去すべき導体層に応じて適宜選択される。エッチング液の例としては、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素エッチング液等が挙げられる。これらの中でもエッチファクタが良好な点から、塩化第二鉄溶液を用いることが好ましい。
【0141】
一方、めっき処理では、基板上に形成されたレジストパターン(硬化レジスト)をマスクとして、硬化レジストによって被覆されていない回路形成用基板の導体層上に銅及び半田などをめっきする。めっき処理の後、硬化レジストを除去し、更にこの硬化レジストによって被覆されていた導体層をエッチング処理して、導体パターンを形成する。めっき処理の方法は、電解めっき処理であっても、無電解めっき処理であってもよい。めっき処理としては、硫酸銅めっき、ピロリン酸銅めっき等の銅めっき、ハイスローはんだめっき等のはんだめっき、ワット浴(硫酸ニッケル−塩化ニッケル)めっき、スルファミン酸ニッケル等のニッケルめっき、ハード金めっき、ソフト金めっき等の金めっきなどが挙げられる。
【0142】
上記エッチング処理及びめっき処理の後、基板上のレジストパターンは除去(剥離)される。レジストパターンの除去は、例えば、上記現像工程に用いたアルカリ性水溶液より更に強アルカリ性の水溶液を用いて行うことができる。この強アルカリ性の水溶液としては、1質量%〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1質量%〜10質量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。中でも1質量%〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いることが好ましく、1質量%〜5質量%水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いることがより好ましい。レジストパターンの剥離方式としては、浸漬方式、スプレー方式等が挙げられ、これらは1種単独で用いても併用してもよい。
【0143】
めっき処理を施してからレジストパターンを除去した場合、更にエッチング処理によって硬化レジストで被覆されていた導体層を除去し、導体パターンを形成することで所望のプリント配線板を製造することができる。エッチング処理の方法は、除去すべき導体層に応じて適宜選択される。例えば、上述のエッチング液を適用することができる。
【0144】
本発明のプリント配線板の製造方法は、単層プリント配線板のみならず多層プリント配線板の製造にも適用可能であり、また小径スルーホールを有するプリント配線板等の製造にも適用可能である。
【0145】
本発明の一実施形態の感光性樹脂組成物は、配線板の製造に好適に使用することができる。すなわち、本発明の好適な実施形態の一つは、(A)成分:(メタ)アクリル酸に由来する構造単位、スチレン又はα−メチルスチレンに由来する構造単位及び(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、(B)成分:エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を有し、上記エチレンオキシ基の構造単位数が1〜20であり、上記プロピレンオキシ基の構造単位数が2〜7であり、上記エチレンオキシ基及び上記プロピレンオキシ基の総構造単位数が10を超える第一のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートを含む光重合性化合物と、(C)成分:光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物のプリント配線板の製造への応用である。また、より好適な実施形態は、上記感光性樹脂組成物の高密度パッケージ基板の製造への応用であり、上記感光性樹脂組成物のセミアディティブ工法への応用である。以下に、セミアディティブ工法による配線板の製造工程の一例について図面を参照しながら説明する。
【0146】
図2(a)では、絶縁層15上に導体層10が形成された基板(回路形成用基板)を準備する。導体層10は、例えば、金属銅層である。図2(b)では、上記感光層形成工程により、基板の導体層10上に感光性樹脂組成物層32を形成する。図2(c)では、感光性樹脂組成物層32上にマスク20を配置し、活性光線50を照射して、マスク20が配置された領域以外の領域を露光して光硬化部を形成する。図2(d)では、上記露光工程により形成された光硬化部以外の領域を現像工程により、基板上から除去することにより、基板上に光硬化部であるレジストパターン30を形成する。図2(e)では、光硬化部であるレジストパターン30をマスクとしためっき処理により、導体層10上にめっき層42を形成する。図2(f)では、光硬化部であるレジストパターン30を強アルカリの水溶液により剥離した後、エッチング処理により、めっき層42の一部とレジストパターン30でマスクされていた導体層10とを除去して回路パターン40を形成する。図2(a)〜2(f)ではマスク20を用いてレジストパターン30を形成する方法について説明したが、マスク20を用いずに直接描画露光法によりレジストパターン30を形成してもよい。
【実施例】
【0147】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0148】
(実施例1〜7及び比較例1〜5)
(感光性樹脂組成物の溶液の調製)
表2及び表3に示す(A)〜(E)成分及び染料を同表に示す配合量(g単位)で、アセトン9g、トルエン5g及びメタノール5gとともに混合することにより、実施例1〜7及び比較例1〜5の感光性樹脂組成物の溶液をそれぞれ調製した。表2及び表3に示す(A)成分の配合量は不揮発分の質量(固形分量)である。表2及び表3に示す各成分の詳細については、以下のとおりである。なお、表2及び表3における「−」は未配合を意味する。
【0149】
(A)バインダーポリマー
[バインダーポリマ(A−1)の合成]
重合性単量体(モノマ)であるメタクリル酸90g、メタクリル酸メチル6g、スチレン150g及びメタクリル酸ベンジル54g(質量比30/2/50/18)と、アゾビスイソブチロニトリル1.5gとを混合して得た溶液を「溶液a」とした。
【0150】
メチルセロソルブ60g及びトルエン40gの混合液(質量比3:2)100gに、アゾビスイソブチロニトリル0.5gを溶解して得た溶液を「溶液b」とした。
【0151】
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、メチルセロソルブ180g及びトルエン120gの混合液(質量比3:2)300gを投入し、フラスコ内に窒素ガスを吹き込みつつ撹拌しながら加熱し、80℃まで昇温させた。
【0152】
フラスコ内の上記混合液に、上記溶液aを4時間かけて滴下した後、撹拌しながら80℃にて2時間保温した。次いで、フラスコ内の溶液に、上記溶液bを10分間かけて滴下した後、フラスコ内の溶液を撹拌しながら80℃にて3時間保温した。更に、フラスコ内の溶液を30分間かけて90℃まで昇温させ、90℃にて2時間保温した後、冷却してバインダーポリマ(A−1)の溶液を得た。
【0153】
バインダーポリマ(A−1)の不揮発分(固形分)は47.4質量%であり、重量平均分子量は23000であり、酸価は196mgKOH/gであり、分散度は2.7であった。
【0154】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。GPCの条件を以下に示す。
【0155】
GPC条件
ポンプ:日立 L−6000型((株)日立製作所)
カラム:以下の計3本、カラム仕様:10.7mmφ×300mm
Gelpack GL−R440
Gelpack GL−R450
Gelpack GL−R400M(以上、日立化成(株))
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:固形分が47.4質量%のバインダーポリマ溶液を120mg採取し、5mLのTHFに溶解して試料を調製した。
測定温度:40℃
注入量:200μL
圧力:49Kgf/cm(4.8MPa)
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L−3300型RI((株)日立製作所)
【0156】
[バインダーポリマ(A−2)の合成]
重合性単量体(モノマ)であるメタクリル酸90g、メタクリル酸メチル6g、スチレン150g及びメタクリル酸ベンジル54g(質量比30/2/50/18)と、アゾビスイソブチロニトリル0.72gとを混合して得た溶液を「溶液a’」とした。
【0157】
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、メチルセロソルブ180g及びトルエン120gの混合液(質量比3:2)300gを投入し、フラスコ内に窒素ガスを吹き込みつつ撹拌しながら加熱し、80℃まで昇温させた。
【0158】
フラスコ内の上記混合液に、上記溶液a’を4時間かけて滴下した後、撹拌しながら80℃にて2時間保温した。次いで、フラスコ内の溶液に、上記溶液bを10分間かけて滴下した後、フラスコ内の溶液を撹拌しながら80℃にて3時間保温した。更に、フラスコ内の溶液を30分間かけて90℃まで昇温させ、90℃にて2時間保温した後、冷却してバインダーポリマ(A−2)の溶液を得た。
【0159】
[バインダーポリマ(A−3)〜(A−4)の合成]
重合性単量体(モノマ)として、表1に示す材料を同表に示す質量比で用いたほかは、バインダーポリマ(A−1)の溶液を得るのと同様にしてバインダーポリマ(A−3)〜(A−4)の溶液を得た。
【0160】
バインダーポリマ(A−1)〜(A−4)について、重合性単量体(モノマ)の質量比(%)、酸価及び重量平均分子量及び分散度を表1に示す。なお、表1における「−」は未配合を意味する。
【0161】
【表1】
【0162】
(B)光重合性化合物
・FA−321M:2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(日立化成(株)、「FA−321M」)
・FA−324M:2,2−ビス(4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(日立化成(株)、「FA−324M」)
・FA−3200MY:2,2−ビス(4−(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン(エチレンオキサイド平均12mol及びプロピレンオキサイド平均4mol付加物)(日立化成(株)、「FA−3200MY」)
・BA−4PO10EO−DM:2,2−ビス(4−(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン(エチレンオキサイド平均10mol及びプロピレンオキサイド平均4mol付加物)(日立化成(株)、「BA−4PO10EO−DM」)
・BA−4PO8EO−DM:2,2−ビス(4−(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン(エチレンオキサイド平均8mol及びプロピレンオキサイド平均4mol付加物)(日立化成(株)、「BA−4PO8EO−DM」)
・BA−4PO6EO−DM:2,2−ビス(4−(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン(エチレンオキサイド平均6mol及びプロピレンオキサイド平均4mol付加物)(日立化成(株)、「BA−4PO6EO−DM」)
・BA−2PO8EO−DM:2,2−ビス(4−(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン(エチレンオキサイド平均8mol及びプロピレンオキサイド平均2mol付加物)(日立化成(株)、「BA−2PO8EO−DM」)
【0163】
(C)光重合開始剤
・B−CIM:2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビスイミダゾール[2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体](Hampford社、「B−CIM」)
【0164】
(D)増感色素
・PYR−1:1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)ピラゾリン((株)日本化学工業所)
【0165】
(E)アミン系化合物
・LCV:ロイコクリスタルバイオレット(山田化学(株)、「LCV」)
【0166】
染料
・MKG:マラカイトグリーン(大阪有機化学工業(株)、「MKG」)
【0167】
【表2】

【0168】
【表3】

【0169】
<感光性エレメントの作製>
上記で得られた感光性樹脂組成物の溶液を、それぞれ厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)、「FB−40」)上に塗布し、70℃及び110℃の熱風対流式乾燥器で順次乾燥処理して、乾燥後の膜厚が25μmである感光性樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層上に保護フィルム(王子製紙(株)、「E−200K」)を貼り合わせ、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持フィルム)と、感光性樹脂組成物層と、保護フィルムとが順に積層された感光性エレメントをそれぞれ得た。
【0170】
<積層基板の作製>
ガラスエポキシ材と、その両面に形成された銅箔(厚さ16μm)とからなる銅張積層板(日立化成(株)、「MCL−E−679F」)(以下、「基板」という。)を加熱して80℃に昇温させた後、実施例1〜7及び比較例1〜5に係る感光性エレメントを用いて、各々、基板の銅表面上に感光層を形成(ラミネート)した。ラミネートは、保護フィルムを除去しながら、各感光性エレメントの感光性樹脂組成物層が基板の銅表面に密着するようにして、温度120℃、ラミネート圧力4kgf/cm(0.4MPa)の条件下で行った。このようにして、基板の銅表面上に感光性樹脂組成物層及びポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された積層基板を得た。
【0171】
得られた積層基板を23℃まで放冷した。次に、積層基板のポリエチレンテレフタレートフィルム上に、濃度領域0.00〜2.00、濃度ステップ0.05、タブレットの大きさ20mm×187mm、各ステップの大きさが3mm×12mmである41段ステップタブレットを有するフォトツールを配置させた。波長405nmの青紫色レーザダイオードを光源とする直描露光機(日立ビアメカニクス(株)、「DE−1UH」)を使用して、100mJ/cmのエネルギー量(露光量)でフォトツール及びポリエチレンテレフタレートフィルムを介して感光性樹脂組成物層に対して露光した。なお、照度の測定は、405nm対応プローブを適用した紫外線照度計(ウシオ電機(株)、「UIT−150」)を用いて行った。
【0172】
<感度の評価>
露光後、積層基板からポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、感光性樹脂組成物層を露出させ、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を60秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去した。このようにして、基板の銅表面上に感光性樹脂組成物の硬化物からなるレジストパターンを形成した。レジストパターン(硬化膜)として得られたステップタブレットの残存段数(ステップ段数)を測定することにより、感光性樹脂組成物の感度を評価した。感度は、上記ステップ段数により示され、この段数が高いほど感度が良好であることを意味する。結果を表4及び表5に示す。
【0173】
<解像度及び密着性の評価>
ライン幅(L)/スペース幅(S)(以下、「L/S」と記す。)が3/3〜30/30(単位:μm)である描画パターンを用いて、41段ステップタブレットの残存段数が16段となるエネルギー量で上記積層基板の感光性樹脂組成物層に対して露光(描画)した。露光後、上記感度の評価と同様の現像処理を行った。
【0174】
現像後、スペース部分(未露光部分)が、残渣がなくきれいに除去され、且つライン部分(露光部分)が蛇行及び欠けを生じることなく形成されたレジストパターンにおけるライン幅/スペース幅の値のうちの最小値により、解像度及び密着性を評価した。この数値が小さいほど解像度及び密着性が共に良好であることを意味する。結果を表4及び表5に示す。
【0175】
<屈曲性の評価>
レジストパターンの屈曲性を以下のようにして評価した。FPC(Flexible Printed Circuit)基板(ニッカン工業(株)、「F−30VC1」、基板厚:25μm、銅厚:18μm)を80℃に加温し、その銅表面上に実施例1〜7及び比較例1〜5に係る感光性エレメントの感光性樹脂組成物層及び支持フィルムを、感光性樹脂組成物層がFPC基板側に対向するように、保護フィルムを剥がしながら110℃のヒートロールを用い1.5m/分の速度でラミネートした。この感光性樹脂組成物層及び支持体が積層されたFPC基板を、屈曲性を評価するための試験片とした。上記試験片には、405nmの青紫色レーザダイオードを光源とする直描露光機(日立ビアメカニクス(株)、「DE−1UH」)を使用して、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数で16段となるエネルギー量で露光を行い、感光性樹脂組成物層を光硬化させた。その後、支持フィルムを剥離、現像してFPC基板上にレジストパターンが積層された屈曲性評価用基板を得た。
【0176】
屈曲性は、マンドレル試験により評価を行い、屈曲性評価用基板を幅2cm、長さ10cmの短冊状に切断し、円筒状の棒に180°で5往復擦りあわせた。その後、FPC基板とレジストパターンとの間に剥がれのない最小の円筒の直径(mm)を求めた。円筒の直径が小さいほど、屈曲性に優れる。結果を表4及び表5に示す。
【0177】
<現像性の評価>
感光性樹脂組成物層の現像性の評価を、以下のようにして最小現像時間(秒)を測定することで評価した。
上記積層基板を5cm四方に切断して評価用の積層基板とした。得られた評価用の積層基板を露光せずに現像した場合に、基板上に感光性樹脂組成物層が残らなくなるのに要する最小の現像時間(秒)を測定した。
【0178】
【表4】


【0179】
【表5】


【0180】
表4及び表5から明らかなように、特定のバインダーポリマーと、構造単位数1〜20のエチレンオキシ基及び構造単位数2〜7のプロピレンオキシ基を、合計構造単位数10を超えて有するビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートとを含有する感光性樹脂組成物から形成されたレジストパターンは、解像度、密着性及び屈曲性のいずれにも優れていた。更に感光性樹脂組成物の現像性に優れていた。
【0181】
本発明の実施形態を以下に記載する。
<1> (メタ)アクリル酸に由来する構造単位、スチレン又はα−メチルスチレンに由来する構造単位及び(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、
エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を有し、前記エチレンオキシ基の構造単位数が1〜20であり、前記プロピレンオキシ基の構造単位数が2〜7であり、前記エチレンオキシ基及び前記プロピレンオキシ基の総構造単位数が10を超える第一のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートを含む光重合性化合物と、
光重合開始剤と、
を含有する感光性樹脂組成物。
<2> ピラゾリン誘導体及びビスアルコキシアントラセンからなる群より選ばれる少なくとも1種の増感色素を更に含有する<1>に記載の感光性樹脂組成物。
<3> エチレンオキシ基を有し、前記エチレンオキシ基の構造単位数が8以下であり、前記第一のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートとは異なる第二のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートを更に含む<1>又は<2>に記載の感光性樹脂組成物。
<4> 支持フィルムと、
前記支持フィルム上に設けられた<1>〜<3>のいずれか1に記載の感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂組成物層と、
を備える感光性エレメント。
<5> 基板上に、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂組成物層を形成する感光層形成工程と、
前記感光性樹脂組成物層の少なくとも一部の領域に活性光線を照射する工程と、
前記感光性樹脂組成物層の前記活性光線を照射した領域以外の領域を前記基板上から除去する工程と、
を有するレジストパターンの形成方法。
<6> 前記活性光線の波長が340nm〜430nmの範囲内である<5>に記載のレジストパターンの形成方法。
<7> <5>又は<6>に記載のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板をエッチング処理又はめっき処理する工程を含むプリント配線板の製造方法。
【0182】
なお、2012年11月20日付けで出願の日本出願2012−254405の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2