(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記(a)成分、(b)成分、(c)成分に加え、更に(d)シリカ系充填材:(a)成分100質量部に対して1〜100質量部を含有することを特徴とする請求項1記載の含フッ素硬化性組成物。
上記(b)成分が、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロポリエーテル構造含有基、2価のパーフルオロアルキレン基、又は2価のパーフルオロポリエーテル構造含有基を有し、かつケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の含フッ素硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の含フッ素硬化性組成物は、
(a)1分子中に4個のアルケニル基を有し、下記一般式(1)で表される数平均分子量1,000〜100,000の直鎖状の含フッ素ポリマー、
(b)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する含フッ素有機ケイ素化合物、及び
(c)ヒドロシリル化反応触媒
を含有し、目的に応じて
(d)シリカ系充填材
を含有するものである。
【0012】
[(a)成分]
本発明の(a)成分は、1分子中に4個のアルケニル基を有し、数平均分子量1,000〜100,000の直鎖状の含フッ素ポリマーであって、下記一般式(1)で表されるものである。
【化7】
(式中、Rfは2価のパーフルオロアルキレン基又は2価のパーフルオロポリエーテル構造含有基であり、Zは単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基であり、Rは水素原子、又は1価のシリル基である。)
【0013】
上記式(1)において、Rfの2価のパーフルオロアルキレン基としては、炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜6程度の直鎖状又は分岐状の2価のパーフルオロアルキレン基が挙げられる。また、2価のパーフルオロポリエーテル構造含有基としては、下記式
【化8】
(式中、gは1〜6の整数である。)
で表される多数の繰り返し単位を含むものが好ましく、例えば下記式(2)で表されるもの等が挙げられる。
【化9】
(式中、gは1〜6の整数であり、hは20〜600、好ましくは30〜400、より好ましくは30〜200の整数である。)
【0014】
上記式
【化10】
で表される繰り返し単位としては、例えば下記式で表される単位等が挙げられる。
【化11】
【0015】
これらの中では、特に下記式で表される単位が好適である。
【化12】
【0016】
なお、上記2価のパーフルオロポリエーテル構造含有基は、これらの繰り返し単位の1種単独で構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせで構成されていてもよい。
【0017】
また、上記2価のパーフルオロポリエーテル構造含有基は、下記式(3)〜(5)で表される構造からなる群から選ばれる構造を含有することが好ましい。
【化13】
(式中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、p,q及びrは、それぞれp≧0、q≧0、0≦p+q≦600、及び0≦r≦6を満たす整数である。但し、p=q=r=0を除く。)
【化14】
(式中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、v及びwは、それぞれ0≦v≦300、0≦w≦300、及び1≦v+w≦600を満たす整数である。各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
【化15】
(式中、zは1≦z≦600の整数である。)
【0018】
上記式(1)において、Rfの具体例としては、下記式で表されるものが例示される。
【化16】
(式中、p1,q1及びr1は、それぞれp1≧0、q1≧0、0≦p1+q1≦200、特に2≦p1+q1≦150、及び0≦r1≦6を満たす整数である。)
【化17】
(式中、p2及びq2は、それぞれ1≦p2≦100、1≦q2≦100、2≦p2+q2≦200を満たす整数である。)
【化18】
(式中、v1、v2、w1、z1は、それぞれ2≦v1≦200、1≦v2≦100、1≦w1≦100、2≦v2+w1≦200、1≦z1≦200を満たす整数である。各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
【0019】
上記式(1)において、Zは単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基であり、炭素数1〜8のアルキレン基として、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が例示できる。これらの中でもメチレン基が好ましい。
【0020】
上記式(1)において、Rは水素原子、又は1価のシリル基であり、1価のシリル基としては、−SiR
13(R
1は、独立にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基)で示されるトリオルガノシリル基が例示できる。具体的に、1価のシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等のアルキル置換シリル基;トリフェニルシリル基が挙げられる。Rとしては、水素原子、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基が好ましい。
【0021】
上記式(1)の直鎖状の含フッ素ポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリスチレン換算の数平均分子量が1,000〜100,000であり、特に3,000〜30,000であることが好ましい。数平均分子量が1,000未満では、必要とされる耐薬品性を満たすことができない。一方、数平均分子量が100,000を超えると、他成分との相溶性に問題を生じるため好ましくない。
なお、本発明におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定は、以下のような条件で行った。
[測定条件]
展開溶媒:ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)−225
流量:1ml/min.
検出器:蒸発光散乱検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel Multipore HXL−M
7.8mmφ×30cm 2本使用
カラム温度:35℃
試料注入量:100μl(濃度0.3質量%のHCFC−225溶液)
【0022】
(a)成分の直鎖状の含フッ素ポリマーとして、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化19】
(式中、p、q、rは上記と同じである。)
【化20】
(式中、v、wは上記と同じであり、各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
【0023】
(a)成分の直鎖状の含フッ素ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
上記式(1)において、Rが水素原子である直鎖状の含フッ素ポリマーの調製方法としては、例えば下記のような方法が挙げられる。
分子鎖両末端に酸フロライド基(−C(=O)−F)を有する含フッ素ポリマーと、求核剤としてグリニャール試薬、溶剤として例えば1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン、テトラヒドロフランを混合し、0〜80℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは約60℃で1〜6時間、好ましくは3〜5時間、より好ましくは約4時間熟成する。
【0025】
ここで、直鎖状の含フッ素ポリマーは、分子鎖両末端に有する基として、上述した酸フロライド基の他に、酸ハライド、酸無水物、エステル、カルボン酸、アミドなども用いることができる。
分子鎖両末端にこれらの基を有する直鎖状の含フッ素ポリマーとして、具体的には、下記に示すものが挙げられる。
【化21】
(式中、p、q、rは上記と同じである。)
【化22】
(式中、v、wは上記と同じであり、各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
【0026】
求核剤としては、アリルマグネシウムハライド、3−ブテニルマグネシウムハライド、4−ペンテニルマグネシウムハライド、5−ヘキセニルマグネシウムハライドなどを用いることができる。また、対応するリチウム試薬を用いることも可能である。
求核剤の使用量は、ポリマーの反応性末端基1当量に対して、3〜8当量、より好ましくは3〜5当量、更に好ましくは約4当量用いることができる。
【0027】
溶剤としては、フッ素系溶剤として、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタンなどのハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(3M社製、商品名:Novecシリーズ)、完全フッ素化された化合物で構成されているパーフルオロ系溶剤(3M社製、商品名:フロリナートシリーズ)などが挙げられる。更に、有機溶剤として、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶剤を用いることができる。
溶剤の使用量は、ポリマー100質量部に対して、10〜300質量部、好ましくは100〜200質量部、更に好ましくは約150質量部用いることができる。
【0028】
続いて、1M塩酸水溶液を添加し、反応を停止し、分液操作により水層とフッ素溶剤層を分離する。得られたフッ素溶剤層を更にアセトンで洗浄し、溶剤を留去することで、例えば、直鎖状の含フッ素ポリマーとして、
【化23】
(式中、p、q、rは上記と同じである。)
を使用し、求核剤としてアリルマグネシウムハライドを使用した場合には、下記構造の末端に水酸基及びアルケニル基を有する直鎖状の含フッ素ポリマーが得られる。
【化24】
(式中、p、q、rは上記と同じである。)
【0029】
上記式(1)において、Rがシリル基である直鎖状の含フッ素ポリマーの調製方法としては、例えば下記のような方法が挙げられる。
上記のような末端に水酸基及びアルケニル基を有する直鎖状の含フッ素ポリマーと、シリル化剤とを、塩基の存在下、必要により溶剤を用い、0〜80℃、好ましくは40〜60℃、より好ましくは約50℃の温度で、1〜24時間、好ましくは2〜10時間、より好ましくは約3時間熟成する。
【0030】
また、上記式(1)において、Rがシリル基である直鎖状の含フッ素ポリマーの調製方法の別法としては、例えば下記のような方法が挙げられる。
上記のような末端に水酸基及びアルケニル基を有する直鎖状の含フッ素ポリマーと、ヒドロシランとを、脱水素触媒の存在下、溶剤を用いて0〜60℃、好ましくは15〜35℃、より好ましくは約25℃の温度で、10分〜24時間、好ましくは30分〜2時間、より好ましくは約1時間脱水素反応を行う。
【0031】
ここで、末端に水酸基及びアルケニル基を有する直鎖状の含フッ素ポリマーとして、上記の構造の他に、例えば下記のような構造が挙げられる。
【化25】
(式中、p、q、rは上記と同じである。)
【化26】
(式中、v、wは上記と同じであり、各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
【0032】
上記式(1)において、Rがシリル基である直鎖状の含フッ素ポリマーの調製に用いられるシリル化剤としては、例えば、シリルハライドやシリルトリフラートなどを用いることができ、具体的には、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、t−ブチルジメチルクロリド、トリイソプロピルシリルクロリド、トリフェニルシリルクロリド、トリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルトリフラート、トリエチルシリルトリフラート、t−ブチルジメチルトリフラート、トリイソプロピルシリルトリフラートなどが挙げられる。また、塩基を使用しない場合、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、トリメチルシリルイミダゾールを用いてもよい。
シリル化剤の使用量は、末端に水酸基及びアルケニル基を有する直鎖状の含フッ素ポリマーの水酸基1当量に対して、1〜10当量、より好ましくは1〜4当量、更に好ましくは約2当量用いることができる。
【0033】
上記式(1)において、Rがシリル基である直鎖状の含フッ素ポリマーの調製に用いられる塩基としては、例えば、アミン類やアルカリ金属系塩基などを用いることができ、具体的には、アミン類では、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、DBU、イミダゾールなどが挙げられる。アルカリ金属系塩基では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、アルキルリチウム、t−ブトキシカリウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどが挙げられる。
塩基の使用量は、末端に水酸基及びアルケニル基を有する直鎖状の含フッ素ポリマーの水酸基1当量に対して、1〜10当量、より好ましくは1〜4当量、更に好ましくは約2当量用いることができる。
【0034】
上記式(1)において、Rがシリル基である直鎖状の含フッ素ポリマーの調製に用いられる溶剤としては、フッ素系溶剤として、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどの含フッ素芳香族炭化水素系溶剤、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタンなどのハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(3M社製、商品名:Novecシリーズ)、完全フッ素化された化合物で構成されているパーフルオロ系溶剤(3M社製、商品名:フロリナートシリーズ)などが挙げられる。更に、有機溶剤として、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶剤を用いることができる。
溶剤の使用量は、末端に水酸基及びアルケニル基を有する直鎖状の含フッ素ポリマー100質量部に対して、10〜300質量部、好ましくは50〜150質量部、更に好ましくは約100質量部用いることができる。
【0035】
上記式(1)において、Rがシリル基である直鎖状の含フッ素ポリマーの調製に用いられるヒドロシランとしては、トリメチルシラン、トリエチルシラン、t−ブチルジメチルシラン、トリイソプロピルシラン、トリフェニルシランなどが挙げられる。
ヒドロシランの使用量は、末端に水酸基及びアルケニル基を有する直鎖状の含フッ素ポリマーの水酸基1当量に対して、1〜5当量、より好ましくは1.5〜3当量、更に好ましくは約2当量用いることができる。
【0036】
上記式(1)において、Rがシリル基である直鎖状の含フッ素ポリマーの調製に用いられる脱水素触媒としては、例えば、ロジウム、パラジウム、ルテニウム等の白金族金属系触媒やホウ素触媒などを用いることができ、具体的には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属系触媒、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等のホウ素触媒などが挙げられる。
脱水素触媒の使用量は、末端に水酸基及びアルケニル基を有する直鎖状の含フッ素ポリマーの水酸基1当量に対して、0.01〜0.0005当量、より好ましくは0.007〜0.001当量、更に好ましくは約0.005当量用いることができる。
【0037】
続いて、反応を停止し、分液操作により水層とフッ素溶剤層を分離する。得られたフッ素溶剤層を更に有機溶剤で洗浄し、溶剤を留去することで、上記式(1)において、Rがシリル基である直鎖状の含フッ素ポリマーが得られる。
【0038】
[(b)成分]
(b)成分の含フッ素有機ケイ素化合物は、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiHで示されるヒドロシリル基)を少なくとも2個有する含フッ素有機ケイ素化合物であり、上記(a)成分の架橋剤(及び鎖長延長剤)として作用するものである。(b)成分の含フッ素有機ケイ素化合物は特に制限されるものではないが、(a)成分との相溶性、分散性、硬化後の均一性等を考慮すると、1分子中に1個以上の1価又は2価の含フッ素有機基(具体的に、1価の含フッ素有機基としては、パーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロポリエーテル構造含有基等、2価の含フッ素有機基としては、2価のパーフルオロアルキレン基、2価のパーフルオロポリエーテル構造含有基等)を有し、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個、好ましくは3個以上有する有機ケイ素化合物が好ましい。
【0039】
上記1価の含フッ素有機基としては、下記式で表される基を例示することができる。
【化27】
(式中、aは1〜10、好ましくは2〜8の整数である。)
【化28】
(式中、kは1〜6の整数であり、n及びmは、それぞれ0≦m≦100、0≦n≦100、かつ0≦m+n≦100を満たす整数である。各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
【0040】
また、上記2価の含フッ素有機基としては、下記式で表される基を例示することができる。
【化29】
(式中、eは1〜10、好ましくは2〜8の整数である。)
【化30】
(式中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、p,q及びrは、それぞれp≧0、q≧0、0≦p+q≦600、特に2≦p+q≦200、及び0≦r≦6を満たす整数である。但し、p=q=r=0を除く。)
【化31】
(式中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、v及びwは、それぞれ0≦v≦300、0≦w≦300、及び1≦v+w≦600を満たす整数である。各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
【化32】
(式中、zは1≦z≦600の整数である。)
【0041】
上記1価又は2価の含フッ素有機基は、ケイ素原子に直接結合していてもよいが、ケイ素原子と2価の連結基を介して結合していてもよい。ここで、2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基やこれらの組み合わせでも、あるいは、これらにエーテル結合酸素原子やアミド結合、カルボニル結合等を介在するものであってもよい。上記2価の連結基は、例えば炭素数2〜12、特に2〜10のものが好ましく、具体的には下記式で表される基等が挙げられる。なお、下記式中、Phはフェニル基である。
【0042】
【化33】
(式中、Phはフェニル基、Ph’はフェニレン基である。)
【0043】
なお、透明性が必要な用途においては、上記2価の連結基として、芳香環とケイ素原子が結合した部位[芳香環−Si原子]及びアミド結合を含まないことが望ましい。
【0044】
また、この(b)成分の含フッ素有機ケイ素化合物における上記1価又は2価の含フッ素有機基以外のケイ素原子に結合した1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;あるいはこれらの基の水素原子の一部が塩素原子、シアノ基等で置換された例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、シアノエチル基等の炭素数1〜20の非置換又は置換1価炭化水素基が挙げられる。
【0045】
(b)成分の含フッ素有機ケイ素化合物は、直鎖状、分岐状又は環状でもよく、更に三次元網状構造であってもよい。なお、この含フッ素有機ケイ素化合物における分子中のケイ素原子数は特に制限されないが、通常2〜60、特に3〜30程度が好ましい。
【0046】
このような含フッ素有機ケイ素化合物としては、例えば下記式で表される、シロキサン構造及び/又はシルアルキレン構造等を有する有機ケイ素化合物等が挙げられ、これらの化合物は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0062】
(b)成分の配合量は、通常、(a)成分中に含まれるビニル基、アリル基、シクロアルケニル基等のアルケニル基1モルに対する(b)成分中のヒドロシリル基(即ち、SiH基)の合計のモル比が、0.4〜5となる量であり、好ましくは0.8〜3となる量である。(b)成分中のヒドロシリル基の量が少なすぎると架橋度合いが不十分で硬化物の強度が不足し、多すぎても同様に硬化物の強度が不足する。また、この(b)成分は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
[(c)成分]
(c)成分のヒドロシリル化反応触媒としては、遷移金属、例えばPt、Rh、Pd等の白金族金属やこれら遷移金属の化合物等が好ましく使用される。本発明では、これら化合物が一般に貴金属の化合物であり高価格であることから、比較的入手しやすい白金又は白金化合物が好適に用いられる。
【0064】
白金化合物として、具体的には、塩化白金酸又は塩化白金酸とエチレン等のオレフィンとの錯体、アルコールやビニルシロキサンとの錯体、白金/シリカ、アルミナ又はカーボン等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
白金化合物以外の白金族金属化合物としては、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム系化合物等が知られており、例えば、RhCl(PPh
3)
3、RhCl(CO)(PPh
3)
2、RhCl(C
2H
4)
2、Ru
3(CO)
12、IrCl(CO)(PPh
3)
2、Pd(PPh
3)
4等が挙げられる(なお、Phはフェニル基を示す)。
【0065】
これらの触媒の使用量は、特に制限されるものではなく、いわゆる触媒量で所望とする硬化速度を得ることができるが、経済的見地から、又は良好な硬化物を得るためには組成物全質量に対して白金族金属の質量換算で0.1〜1,000ppm、より好ましくは0.1〜500ppm程度の範囲とするのがよい。
【0066】
[(d)成分]
本発明の(d)成分は、シリカ系充填材である。シリカ系充填材としては、石英やガラスを粉砕した粉砕シリカ、一旦溶融してから球粒状に成形した溶融シリカ、ケイ酸ソーダに鉱酸を加えて製造される湿式シリカ、シラン化合物を燃焼させて製造される乾式シリカ等が挙げられる。これらのうち、機械的強度を向上させる観点から、BET比表面積が30m
2/g以上、好ましくは50〜400m
2/gのシリカ系充填材が好適に用いられる。なお、湿式シリカ、乾式シリカがこれに該当するが、吸着水分が少ない乾式シリカが好適である。ポリマー成分との濡れ性を考慮すると、シリカ系充填材表面が疎水化処理されたものが更に好ましい。シリカ系充填材表面の疎水化処理が施されていないと、十分な機械的強度が得られなかったり、組成物の粘度が異常に高くなったりする等の弊害が生じるおそれがある。
【0067】
(d)成分を使用する場合の配合量は、(a)成分100質量部に対して1〜100質量部、特に1〜40質量部であることが好ましい。1質量部未満ではフィラーの補強性効果が十分に得られない場合があり、100質量部を超えると組成物の粘度が高くなり、作業性を損なう場合がある。
【0068】
[その他の成分]
本発明の組成物には、上記した(a)〜(c)成分及び任意成分である(d)成分のほかに、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサン、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、フェニルブチノール等のアセチレンアルコールや、1価のパーフルオロアルキル基又は1価のパーフルオロオキシアルキル基を有するクロロシランとアセチレン性アルコールとの反応物、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、トリアリルイソシアヌレート、ポリビニルシロキサン、有機リン化合物等のヒドロシリル化反応触媒の制御剤、酸化鉄、酸化セリウム、カーボンブラック等の顔料、着色剤、染料、酸化防止剤、一部又は全てがフッ素変性されたオイル状化合物等が挙げられる。なお、これらの任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で任意とすることができる。
【0069】
[使用方法]
本発明の組成物は、用途に応じて上記(a)〜(c)成分の必須成分全てを1つの組成物として取り扱う、いわゆる1液タイプとして構成してもよいし、あるいは、例えば上記(a)、(c)成分を一方の組成物とし、(a)、(b)成分を他方の組成物とする、いわゆる2液タイプとして構成し、使用にあたってこれを混合してもよい。
【0070】
また、組成物を溶解希釈して用いることも可能である。このような溶剤としては、(a)成分を溶解させ得るものが好ましく、例えばC
4F
10、C
8F
18、C
4F
9OCH
3、C
4F
9OC
2H
5、2−n−ノナフルオロブチル−テトラフルオロフラン、トリス(n−ノナフルオロブチル)アミン、メタキシレンヘキサフルオライド、パラキシレンヘキサフルオライド、ベンゾトリフルオライド等のフッ素化溶剤等が例示される。
【0071】
本発明の含フッ素硬化性組成物は、常温にて放置するか、加熱することにより容易に硬化させることができるが、通常室温(例えば5〜35℃)〜200℃、1分間〜24時間の範囲で熱的に硬化させるのが好ましく、このような硬化により、優れた特性を有するゴム物品を得ることができる。
【0072】
本発明の含フッ素硬化性組成物は、フッ素含有率が高いため、耐溶剤性、耐薬品性、耐酸性、耐アミン性に優れ、また、透湿性も低く、低表面エネルギーを有するため、離型性、撥水性にも優れており、種々の用途に利用することができる。例えば、耐油性を要求される自動車用ゴム部品、具体的にはフューエル・レギュレーター用ダイヤフラム、パルセーションダンパ用ダイヤフラム、オイルプレッシャースイッチ用ダイヤフラム、EGR用ダイヤフラム等のダイヤフラム類、キャニスタ用バルブ、パワーコントロール用バルブ等のバルブ類、クイックコネクタ用O−リング、インジェクター用O−リング等のO−リング類、あるいは、オイルシール、シリンダヘッド用ガスケット等のシール材として好適に使用できる。また、化学プラント用ゴム部品、具体的にはポンプ用ダイヤフラム、バルブ類、O−リング類、ホース類、パッキン類、オイルシール、ガスケット等のシール材、インクジェットプリンタ用ゴム部品、半導体製造ライン用ゴム部品、具体的には薬品が接触する機器用のダイヤフラム、弁、O−リング、パッキン、ガスケット等のシール材、低摩擦耐磨耗性を要求されるバルブ、分析、理化学機器用ゴム部品、具体的にはポンプ用ダイヤフラム、弁、シール部品(O−リング、パッキン等)、医療機器用ゴム部品、具体的にはポンプ、バルブ、ジョイントとしても好適に使用できる。更に、テント膜材料、シーラント、成形部品、押し出し部品、被覆材、複写機ロール材料、電気用防湿コーティング材、センサー用ポッティング材、積層ゴム布、航空機用エンジンオイル、ジェット燃料、ハイドローリックオイル、スカイドロール等の流体配管用O−リング、フェースシール、パッキン、ガスケット、ダイヤフラム、バルブ等の航空機用ゴム部品、アルカリ洗浄液用容器のシール材、光半導体素子の封止材等に有用である。
【実施例】
【0073】
以下に合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0074】
[合成例1]
反応容器に、テトラヒドロフラン150g、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン450gを混合し、1.0Mのアリルマグネシウムクロリド(テトラヒドロフラン溶液)80mlを滴下した。続いて、下記式(6)
【化49】
(p’+q’の平均値=90)
で表される化合物300g(1.9×10
-2mol)をゆっくりと滴下した後、60℃で4時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、1.2M塩酸水溶液300g中へ溶液を滴下し、反応を停止させた。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(7)
【化50】
(p’+q’の平均値=90)
で表される直鎖状の含フッ素ポリマー(数平均分子量=15,600)290gを得た。
【0075】
1H−NMR
δ2.2(−CO
H(CH
2CH=CH
2)
2)1H
δ2.4(−COH(C
H2CH=CH
2)
2)4H
δ5.1(−COH(CH
2CH=C
H2)
2)4H
δ5.6(−COH(CH
2C
H=CH
2)
2)2H
【0076】
[合成例2]
反応容器に、テトラヒドロフラン150g、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン450gを混合し、1.0Mのアリルマグネシウムクロリド(テトラヒドロフラン溶液)80mlを滴下した。続いて、下記式(8)
【化51】
(p’+q’の平均値=90)
で表される化合物300g(2.0×10
-2mol)をゆっくりと滴下した後、60℃で4時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、1.2M塩酸水溶液300g中へ溶液を滴下し、反応を停止させた。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(7)
【化52】
(p’+q’の平均値=90)
で表される直鎖状の含フッ素ポリマー(数平均分子量=15,600)285gを得た。
【0077】
1H−NMR
δ2.2(−CO
H(CH
2CH=CH
2)
2)1H
δ2.4(−COH(C
H2CH=CH
2)
2)4H
δ5.1(−COH(CH
2CH=C
H2)
2)4H
δ5.6(−COH(CH
2C
H=CH
2)
2)2H
【0078】
[合成例3]
反応容器に、テトラヒドロフラン150g、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン450gを混合し、1.0Mのアリルマグネシウムクロリド(テトラヒドロフラン溶液)230mlを滴下した。続いて、下記式(9)
【化53】
(w’:v’=47:53、w’+v’の平均値=43、各繰り返し単位同士はランダムに結合されている。)
で表される化合物300g(9.6×10
-2mol)をゆっくりと滴下した後、60℃で4時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、1.2M塩酸水溶液300g中へ溶液を滴下し、反応を停止させた。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(10)
【化54】
(w’:v’=47:53、w’+v’の平均値=43、各繰り返し単位同士はランダムに結合されている。)
で表される直鎖状の含フッ素ポリマー286g(数平均分子量=4,600)を得た。
【0079】
1H−NMR
δ2.2(−CO
H(CH
2CH=CH
2)
2)1H
δ2.4(−COH(C
H2CH=CH
2)
2)4H
δ5.1(−COH(CH
2CH=C
H2)
2)4H
δ5.6(−COH(CH
2C
H=CH
2)
2)2H
【0080】
[合成例4]
反応容器に、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン300g、DBU5.9g(3.8×10
-2mol)、下記式(7)
【化55】
(p’+q’の平均値=90)
で表される化合物300g(1.9×10
-2mol)を混合した後、トリメチルクロロシラン4.1g(3.8×10
-2mol)を滴下した。続いて、50℃で3時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、1.2M塩酸水溶液300gを滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、メタノールで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(11)
【化56】
(p’+q’の平均値=90)
で表される直鎖状の含フッ素ポリマー(数平均分子量=15,700)275gを得た。
【0081】
1H−NMR
δ0−0.2(−OSi(C
H3)
3)18H
δ2.4−2.6(−C
H2CH=CH
2)8H
δ5.0−5.2(−CH
2CH=C
H2)8H
δ5.7−5.9(−CH
2C
H=CH
2)4H
【0082】
[合成例5]
反応容器に、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン300g、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン0.05g(9.5×10
-5mol)、下記式(7)
【化57】
(p’+q’の平均値=90)
で表される化合物300g(1.9×10
-2mol)を混合した後、トリエチルシラン4.4g(3.8×10
-2mol)をゆっくりと滴下した後、25℃で1時間撹拌した。続いて、水を添加し、分液操作により下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(12)
【化58】
(p’+q’の平均値=90)
で表される直鎖状の含フッ素ポリマー(数平均分子量=15,800)280gを得た。
【0083】
1H−NMR
δ0.5−0.8(−SiC
H2CH
3)2H
δ0.8−1.1(−SiCH
2C
H3)3H
δ2.4−2.6(−C
H2CH=CH
2)4H
δ5.0−5.1(−CH
2CH=C
H2)4H
δ5.7−5.9(−CH
2C
H=CH
2)2H
【0084】
[実施例1]
上記合成例1で得られた、下記式(7)
【化59】
(p’+q’の平均値=90)
で表されるポリマー(ビニル基量0.0170モル/100g、数平均分子量=15,600)100質量部、R972(日本アエロジル(株)製、ジクロロジメチルシランで表面が疎水化処理された乾式シリカ、BET比表面積=110m
2/g)20質量部をプラネタリーミキサーにより、120℃で1時間混合した。その後、3本ロールミル処理を施した。得られた混合物120質量部中100質量部に、下記式(13)
【化60】
で表される含フッ素有機ケイ素化合物3.4質量部(SiH基/ビニル基=1.2モル/モル)、塩化白金酸をCH
2=CHSiMe
2OSiMe
2CH=CH
2で変性した触媒のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.4質量部及び1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンの60質量%トルエン溶液0.5質量部を混合し、含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して以下の測定を行った。
【0085】
硬化物のゴム物性:
上記組成物を150℃、10分のプレス架橋(一次架橋)及び150℃、1時間のオーブン架橋(二次架橋)を行って硬化シート(170mm×130mm×2mm)を作製した。得られた硬化シートの物性(硬さ、引張強さ、切断時伸び)をJIS K6253−3:2012、及びJIS K6251:2010に準拠して測定した。
耐酸性:
上記硬化シートを40℃の温度条件下、3,000時間、98質量%濃硫酸に浸漬し、硬さの変化量、引張強さと切断時伸び変化量を観測した。
耐アミン性:
上記硬化シートを60℃の温度条件下、3,000時間、2−アミノエタノールに浸漬し、硬さの変化量、引張強さと切断時伸び変化量を観測した。
なお、硬化物のゴム物性の測定結果は表1に、耐酸性の測定結果は表2に、耐アミン性の測定結果は表3に記した。
【0086】
[実施例2]
上記合成例3で得られた、下記式(10)
【化61】
(w’:v’=47:53、w’+v’の平均値=43、各繰り返し単位同士はランダムに結合されている。)
で表されるポリマー(ビニル基量0.0653モル/100g、数平均分子量=4,600)100質量部、R972(日本アエロジル(株)製、ジクロロジメチルシランで表面が疎水化処理された乾式シリカ、BET比表面積=110m
2/g)20質量部をプラネタリーミキサーにより、120℃で1時間混合した。その後、3本ロールミル処理を施した。得られた混合物120質量部中100質量部に、下記式(13)
【化62】
で表される含フッ素有機ケイ素化合物13.1質量部(SiH基/ビニル基=1.2モル/モル)、塩化白金酸をCH
2=CHSiMe
2OSiMe
2CH=CH
2で変性した触媒のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.2質量部及び1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンの60質量%トルエン溶液0.3質量部を混合し、含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して、上述した方法により硬化物のゴム物性、耐酸性、耐アミン性の測定を行った。
【0087】
[実施例3]
上記合成例5で得られた、下記式(12)
【化63】
(p’+q’の平均値=90)
で表されるポリマー(ビニル基量0.0167モル/100g、数平均分子量=15,800)100質量部、R972(日本アエロジル(株)製、ジクロロジメチルシランで表面が疎水化処理された乾式シリカ、BET比表面積=110m
2/g)20質量部をプラネタリーミキサーにより、120℃で1時間混合した。その後、3本ロールミル処理を施した。得られた混合物120質量部中100質量部に、下記式(13)
【化64】
で表される含フッ素有機ケイ素化合物3.3質量部(SiH基/ビニル基=1.2モル/モル)、塩化白金酸をCH
2=CHSiMe
2OSiMe
2CH=CH
2で変性した触媒のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.4質量部及び1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンの60質量%トルエン溶液0.5質量部を混合し、含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して、上述した方法により硬化物のゴム物性、耐酸性、耐アミン性の測定を行った。
【0088】
[実施例4]
上記合成例1で得られた、下記式(7)
【化65】
(p’+q’の平均値=90)
で表されるポリマー(ビニル基量0.0170モル/100g、数平均分子量=15,600)100質量部、R976(日本アエロジル(株)製、ジクロロジメチルシランで表面が疎水化処理された乾式シリカ、BET比表面積=240m
2/g)20質量部をプラネタリーミキサーにより、120℃で1時間混合した。その後、3本ロールミル処理を施した。得られた混合物120質量部中100質量部に、下記式(13)
【化66】
で表される含フッ素有機ケイ素化合物3.4質量部(SiH基/ビニル基=1.2モル/モル)、塩化白金酸をCH
2=CHSiMe
2OSiMe
2CH=CH
2で変性した触媒のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.4質量部及び1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンの60質量%トルエン溶液0.5質量部を混合し、含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して、上述した方法により硬化物のゴム物性、耐酸性、耐アミン性の測定を行った。
【0089】
[比較例1]
下記式(14)
【化67】
(p’+q’の平均値=90)
で表されるポリマー(ビニル基量0.0121モル/100g、数平均分子量=15,800)100質量部、R972(日本アエロジル(株)製、ジクロロジメチルシランで表面が疎水化処理された乾式シリカ、BET比表面積=110m
2/g)20質量部をプラネタリーミキサーにより、120℃で1時間混合した。その後、3本ロールミル処理を施した。得られた混合物120質量部中100質量部に、下記式(13)
【化68】
で表される含フッ素有機ケイ素化合物2.4質量部(SiH基/ビニル基=1.2モル/モル)、塩化白金酸をCH
2=CHSiMe
2OSiMe
2CH=CH
2で変性した触媒のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.2質量部及び1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンの60質量%トルエン溶液0.3質量部を混合し、含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して、上述した方法により硬化物のゴム物性、耐酸性、耐アミン性の測定を行った。
【0090】
[比較例2]
下記式(15)
【化69】
(p’+q’の平均値=90)
で表されるポリマー(ビニル基量0.0119モル/100g、数平均分子量=15,800)100質量部、R972(日本アエロジル(株)製、ジクロロジメチルシランで表面が疎水化処理された乾式シリカ、BET比表面積=110m
2/g)20質量部をプラネタリーミキサーにより、120℃で1時間混合した。その後、3本ロールミル処理を施した。得られた混合物120質量部中100質量部に、下記式(13)
【化70】
で表される含フッ素有機ケイ素化合物2.4質量部(SiH基/ビニル基=1.2モル/モル)、塩化白金酸をCH
2=CHSiMe
2OSiMe
2CH=CH
2で変性した触媒のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.2質量部及び1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンの60質量%トルエン溶液0.3質量部を混合し、含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して、上述した方法により硬化物のゴム物性、耐酸性、耐アミン性の測定を行った。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
[実施例5]
上記実施例1において、R972(日本アエロジル(株)製乾式シリカ)を除く以外は実施例1と同様にして含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して、以下の測定を行った。
【0095】
透明性:
上記実施例5で得られた組成物を2枚のガラス板で作られた厚さ2mmの隙間に流し込み、150℃、1時間のオーブン架橋を行って硬化シート(50mm×50mm×2mm)を作製した。得られた硬化シートの透明性を、(株)島津製作所製紫外可視近赤外分光光度計UV−3600を用いて測定した。測定結果は表4に示した。
【0096】
[実施例6]
上記実施例3において、R972(日本アエロジル(株)製乾式シリカ)を除く以外は実施例3と同様にして含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して、上述した方法により透明性の測定を行った。
【0097】
[比較例3]
上記比較例1において、R972(日本アエロジル(株)製乾式シリカ)を除く以外は比較例1と同様にして含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して、上述した方法により透明性の測定を行った。
【0098】
[比較例4]
上記比較例2において、R972(日本アエロジル(株)製乾式シリカ)を除く以外は比較例2と同様にして含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して、上述した方法により透明性の測定を行った。
【0099】
【表4】
【0100】
表1〜3の結果から明らかなように、比較例1で用いたアルケニル基含有含フッ素ポリマーは芳香環−Si結合を有しているため、この組成物の硬化物は濃硫酸浸漬後に物性測定ができないほど劣化した。更に、比較例1で用いたアルケニル基含有含フッ素ポリマーはアミド構造を有しているため、この組成物の硬化物はアミン浸漬により劣化し、ゴムは大きく軟化した。
一方、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4及び比較例2で用いたアルケニル基含有含フッ素ポリマーは芳香環−Si結合を有していないため、この組成物の硬化物は濃硫酸浸漬後に物性が変化したものの劣化は少なかった。更に、実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4で用いたアルケニル基含有含フッ素ポリマーはアミド構造を有していないため、この組成物の硬化物はアミン浸漬後もゴム物性を保った。また比較例2で用いたアルケニル基含有含フッ素ポリマーはアミド構造を有しているが、この組成物の硬化物はアミン浸漬後もゴム物性を保った。
【0101】
表4の結果から明らかなように、比較例3及び比較例4の組成物を用いて得られた硬化物は、芳香環を有しているために、可視光の短波長領域から近紫外光領域(400〜350nm)において透過率が大きく低下した。
一方、実施例5及び実施例6の組成物の硬化物は、上記の波長域において透過率の低下が小さく、特に酸素−ケイ素結合を有するアルケニル基含有含フッ素ポリマーを含有する実施例6の組成物の硬化物は、同波長域で透過率がより高かった。
【0102】
以上の結果から、本発明の含フッ素硬化性組成物は、特許第2990646号公報に記載された、ポリマー末端構造が[アミド基−芳香環−Si原子−ビニル基]であるポリマーに比べ、特に耐酸性と耐アミン性の両面において優れており、特開2011−201940号公報に記載された、ポリマー末端構造が[側鎖に芳香環を有するアミド基−アルキレン基−Si原子−ビニル基]であるポリマーに比べ、シリカを含まない硬化物において優れた光透過性を有するといえる。