特許第6358265号(P6358265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6358265空間光変調素子モジュール、光描画装置、露光装置、空間光変調素子モジュール製造方法およびデバイス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358265
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】空間光変調素子モジュール、光描画装置、露光装置、空間光変調素子モジュール製造方法およびデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/02 20060101AFI20180709BHJP
   G02B 26/06 20060101ALI20180709BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20180709BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20180709BHJP
   B81B 7/04 20060101ALI20180709BHJP
   B81C 3/00 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   G02B26/02 E
   G02B26/06
   G02B26/08 E
   G03F7/20 521
   B81B7/04
   B81C3/00
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-547769(P2015-547769)
(86)(22)【出願日】2014年11月12日
(86)【国際出願番号】JP2014079945
(87)【国際公開番号】WO2015072478
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2017年6月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-238088(P2013-238088)
(32)【優先日】2013年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 純児
【審査官】 鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0009732(US,A1)
【文献】 特開2008−235909(JP,A)
【文献】 米国特許第05497258(US,A)
【文献】 特開2006−098986(JP,A)
【文献】 特開2003−098445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/02−26/10
B81B 7/00
B81C 3/00
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
複数の空間光変調素子アレイと
を備え、
前記複数の空間光変調素子アレイの各々は、入射光の強度および位相の少なくとも一方を変調して出射する光変調素子を有し、
前記ベース部材は、前記複数の空間光変調素子アレイを、ベアチップ状態で、予め定められた相対位置に保持し、
前記ベース部材と前記複数の空間光変調素子アレイとの組を複数備え、前記複数の空間光変調素子アレイが千鳥配置されるように、前記組同士が配された空間光変調素子モジュール。
【請求項2】
複数の前記組が配列された方向からみて、1の空間光変調素子アレイの少なくとも1つの反射素子と、前記1の空間光変調素子アレイに隣接する他の空間光変調素子アレイの少なくとも1つの反射素子とが隙間なく隣接する位置、あるいは、重なった位置に配される請求項に記載の空間光変調素子モジュール。
【請求項3】
前記複数の空間光変調素子アレイの各々は、前記ベース部材と対向する面に、前記ベース部材と電気的に接続するマイクロバンプを有する請求項1または2に記載の空間光変調素子モジュール。
【請求項4】
前記ベース部材、および、前記複数の空間光変調素子アレイの各々の少なくとも一部を覆うパッケージ部を更に備える請求項1からのいずれか1項に記載の空間光変調素子モジュール。
【請求項5】
前記パッケージ部は、前記複数の空間光変調素子アレイの各々が配された領域に開口が設けられたマスク部を有し、
前記マスク部は、入射光または反射光を吸収する吸収体を含む反射防止構造を更に有する請求項に記載の空間光変調素子モジュール。
【請求項6】
前記パッケージ部は、前記複数の空間光変調素子アレイの各々が配された領域に開口が設けられたマスク部を有し、
前記マスク部は、ミラー、回折格子およびブレーズ型回折光学素子のいずれかを含み、反射素子からの反射光とは異なる光路に向かって入射光を反射する構造を更に含む請求項に記載の空間光変調素子モジュール。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の空間光変調素子モジュールを用いて光像を描画する光描画装置。
【請求項8】
請求項に記載の光描画装置を用いて半導体を露光する露光装置。
【請求項9】
複数の反射素子をそれぞれが有する複数の空間光変調素子アレイを準備する段階と、
前記複数の空間光変調素子アレイの各々をベース部材に沿って並べる段階と
を備え
前記準備する段階において、前記複数の空間光変調素子アレイの各々において複数の反射素子を固定する犠牲層が設けられており、
前記並べる段階の後に、前記犠牲層を除去する段階をさらに備える空間光変調素子モジュール製造方法。
【請求項10】
前記ベース部材および前記複数の空間光変調素子アレイの各々にアライメントマークが設けられており、
前記並べる段階において、前記アライメントマークを用いて前記複数の空間光変調素子アレイを位置決めする請求項に記載の空間光変調素子モジュール製造方法。
【請求項11】
前記並べる段階において、前記ベース部材と前記複数の空間光変調素子アレイの各々との間に挟まれる位置決め部材を用いて前記複数の空間光変調素子アレイを位置決めする請求項9または10に記載の空間光変調素子モジュール製造方法。
【請求項12】
前記ベース部材および前記複数の空間光変調素子アレイの各々には、前記位置決め部材を受け入れる溝が設けられている請求項11に記載の空間光変調素子モジュール製造方法。
【請求項13】
リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、
前記リソグラフィ工程では、請求項に記載の露光装置を用いて露光を行うデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間光変調素子モジュール、光描画装置、露光装置、空間光変調素子モジュール製造方法およびデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空間光変調素子を含む描画ヘッドを備えた露光装置がある(例えば特許文献1参照および非特許文献1参照)。
[特許文献1] 特開2007−052080号公報
[非特許文献1] Proc.of SPIE Vol.5377、p.777
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
空間光変調素子を大型化すると製造歩留りが著しく低下する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一態様においては、ベース部材と、複数の空間光変調素子アレイとを備え、複数の空間光変調素子アレイの各々は、入射光の強度および位相の少なくとも一方を変調して出射する光変調素子を有し、ベース部材は、複数の空間光変調素子アレイを、ベアチップ状態で、予め定められた相対位置に保持する空間光変調素子モジュールが提供される。
【0005】
本発明の第二態様においては、上記空間光変調素子モジュールを用いて光像を描画する光描画装置が提供される。
【0006】
本発明の第三態様においては、上記光描画装置を用いて物体を露光する露光装置が提供される。
【0007】
本発明の第四態様においては、複数の反射素子をそれぞれが有する複数の空間光変調素子アレイを準備する段階と、複数の空間光変調素子の各々をベース部材に沿って並べる段階とを備える空間光変調素子モジュール製造方法が提供される。
【0008】
本発明の第五態様においては、リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、上記露光装置を用いて露光を行うデバイス製造方法が提供される。
【0009】
上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】露光装置100の模式図である。
図2】空間光変調素子モジュールの製造過程を示す流れ図である。
図3】シリコンウエハ509の平面図である。
図4】空間光変調素子アレイ510の模式的な斜視図である。
図5】空間光変調素子アレイ510の模式的な断面図である。
図6】空間光変調素子アレイ510の模式的な断面図である。
図7】空間光変調素子アレイ510の模式的な斜視図である。
図8】空間光変調素子アレイ710の模式的な断面図である。
図9】空間光変調素子アレイ710の模式的な断面図である。
図10】空間光変調素子アレイ組立体610の模式的な側面図である。
図11】空間光変調素子アレイ組立体610の模式的な側面図である。
図12】空間光変調素子アレイ組立体610の模式的な平面図である。
図13】空間光変調素子アレイ組立体610の模式的な断面図である。
図14】空間光変調素子アレイ組立体611の模式的な断面図である。
図15】空間光変調素子アレイ組立体612の分解斜視図である。
図16】空間光変調素子アレイ組立体612の断面図である。
図17】空間光変調素子アレイ組立体613の分解斜視図である。
図18】空間光変調素子アレイ組立体613の断面図である。
図19】空間光変調素子モジュール500の斜視図である。
図20】空間光変調素子モジュール500の平面図である。
図21】空間光変調素子モジュール500の断面図である。
図22】空間光変調素子モジュール501の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、露光装置100の構造を示す模式図である。露光装置100は、制御系200、照明系300および光描画系400を備える。光描画系400は、空間光変調素子モジュール500を含む。
【0013】
制御系200は、主制御部210、ステージ制御部220、光源制御部230および変調制御部240を有する。ステージ制御部220はステージ駆動部430を、光源制御部230は光源310を、変調制御部240は空間光変調素子モジュール500を、それぞれ個別に制御する。
【0014】
これに対して、主制御部210は、ステージ制御部220、光源制御部230および変調制御部240を含む露光装置100全体を統括して制御する。また、主制御部210は、ユーザに対するインタフェイスを有し、ユーザからの指示を受け付けると共に、露光装置100の動作状態を、露光装置100の外部に向かって通知する。
【0015】
照明系300は、光源310および光学系301を有する。光源310は、発光のタイミングおよび発光強度を指示するトリガパルスを光源制御部230から供給されて、パルス発光する。光源310が発生するパルス光は略平行光束で、矩形のビーム断面形状を有する。
【0016】
光源310としては、例えば、波長193nmでパルス幅1ns程度のレーザ光を1〜3MHz程度の周波数でパルス発光する波長変換型個体レーザ等を用いることができる。また、光源310としては、波長193nmでパルス幅50ns程度のレーザ光を4〜6kHz程度の周波数でパルス発光するArFエキシマレーザ、波長248nmで発光するKrFエキシマレーザ、パルス点灯される発光ダイオード等も使用できる。
【0017】
光学系301は、ビームエキスパンダ320、偏光制御光学素子330、回折光学素子340、リレー光学系352、354、マイクロレンズアレイ360、リレーレンズ、視野絞り380等の光学部材を有する。ビームエキスパンダ320は、光源310が発生したパルス光のビーム径を拡大する。
【0018】
光学系301における偏光制御光学素子330は、パルス光の偏光状態を制御する。偏光制御光学素子330としては、パルス光の偏光方向を回転する1/2波長板、パルス光を円偏光に変換する1/4波長板、パルス光をランダム偏光(非偏光)に変換する複屈折性プリズム等が適宜選択されて配される。
【0019】
光学系301における回折光学素子340は、ターレットに保持された複数の素子のひとつがパルス光の光路に挿入される。回折光学素子340としては、通常照明用素子の他に、コヒーレンスファクター(σ値)の小さな照明光を生成する小σ照明用素子、2極照明用素子、4極照明用素子、輪帯照明用素子等が用いられる。なお、回折光学素子340として、反射形の空間変調素子を使用することもできる。
【0020】
光学系301において、回折光学素子340から射出されたパルス光は、リレー光学系352により、マイクロレンズアレイ360に導かれる。光学系301におけるマイクロレンズアレイ360は、多数の微小なレンズエレメントによりパルス光を二次元的に分割して、後側焦点面でもある光学系301の照明瞳面に、二次光源(面光源)を形成する。なお、リレー光学系352として、ズームレンズを用いてもよい。また、マイクロレンズアレイ360として、フライアイレンズを使用してもよい。
【0021】
照明瞳面に形成された二次光源から射出された照明光は、リレーレンズ370、視野絞り380および他のリレー光学系354を通じて、空間光変調素子モジュール500に向かって照射される。視野絞り380は、投影光学系410の物体面と共役な面COP382から光軸方向にシフトした位置に設けられる。
【0022】
空間光変調素子モジュール500に照射される照明光は、図中に矢印で示す方向のうち、X方向に細長い長方形状の領域を略均一な照度で照明する。また、照明光は、空間光変調素子モジュール500の反射面に対して、予め定められた一定の傾きを有する入射角αで入射する。
【0023】
なお、光学系301は、光路上に挿入された複数の反射鏡391、392、393を更に含む。反射鏡391、392、393は、照明光の光路を折り曲げることにより露光装置100を小型化している。
【0024】
光描画系400は、空間光変調素子モジュール500、投影光学系410およびウエハステージ420を含む。空間光変調素子モジュール500は、変調制御部240による制御の下に、均一な照度で照射された照明光に照度分布を形成する。空間光変調素子モジュール500については、他の図を参照して後述する。
【0025】
投影光学系410は、空間光変調素子モジュール500側に非テレセントリックであり、ウエハステージ420側にテレセントリックな縮小投影光学系を形成する。また、投影光学系410に対して、空間光変調素子モジュール500と、ウエハステージ420に搭載された半導体ウエハ450の表面は共役な関係に位置する。
【0026】
これにより、投影光学系410は、空間光変調素子モジュール500により形成された分布を有する空間像の縮小像を半導体ウエハ450の表面に形成して、半導体ウエハ450に塗布されたレジスト膜を感光させる。半導体ウエハ450は、シリコン単結晶の他、化合物半導体等でもあり得る。
【0027】
投影光学系410は、例えば1/10〜1/100程度の投影倍率βを有する。また、投影光学系410の解像度は、例えば、空間光変調素子モジュール500の解像度の1倍〜数倍程度である。換言すれば、空間光変調素子モジュール500の解像度を向上させることにより、投影光学系410の解像度を向上させることができる。
【0028】
ところで、制御系200、照明系300、空間光変調素子モジュール500および投影光学系410は、それぞれ、露光装置100に対して固定されている。これに対して、ウエハステージ420は、ステージ駆動部430により駆動されて、図中に矢印で示す走査方向yに変位する。これにより、投影光学系410から射出された投影光により、半導体ウエハ450の表面を走査できる。
【0029】
なお、ウエハステージ420は、反射鏡422も搭載する。反射鏡422は、ウエハステージ420の移動方向に対して直交する反射面を有し、干渉計440から照射されたレーザ光を干渉計440に向かって反射する。これにより、ステージ制御部220は、ウエハステージ420の移動量を精度よく検出して、ステージ駆動部430を高精度に制御する。
【0030】
このように、露光装置100においては、マスクまたはレチクルを用いることなく、マスクレス方式で形成したパターンの投影光により半導体ウエハ450を感光させることができる。また、ウエハステージ420を移動させることにより、半導体ウエハ450全面を感光させることができる。
【0031】
よって、露光を繰り返すことにより、半導体ウエハ450の表面に多数の露光パターンを形成することができる。また、ショット毎にパターンを変更することにより、投影光学系410の投影面積よりも大きなパターンを半導体ウエハ450上に形成することができる。更に、半導体ウエハ450の領域により、異なるパターンを形成することもできる。
【0032】
図2は、空間光変調素子モジュール500の製造過程を示す流れ図である。空間光変調素子モジュール500は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)技術によりシリコンウエハを加工して製造できる。そこで、空間光変調素子モジュール500の製造においては、まず、フォトリソグラフィ技術によりシリコンウエハを加工するウエハプロセス段階(ステップS101)が実行される。
【0033】
図3は、ウエハプロセスにより複数の空間光変調素子アレイ510が形成されたシリコンウエハ509を模式的に示す図である。図示のように、ウエハプロセスにより、1枚のシリコンウエハ509には複数の空間光変調素子アレイ510が形成される。また、個々の空間光変調素子アレイ510には、空間光変調素子アレイ510の解像度を決定する多数の反射素子530が形成される。
【0034】
直径30cmのシリコンウエハ509を用いた場合、個々の空間光変調素子アレイ510は、例えば2.5cm平方程度の寸法になる。また、空間光変調素子アレイ510に作り込まれた反射素子530のひとつひとつは、例えば、一辺の長さが数μm程度の矩形をなす。
【0035】
ここで、空間光変調素子アレイ510を個々に大型化することにより、単独の空間光変調素子アレイ510の解像度を向上させることができる。しかしながら、ひとつの空間光変調素子アレイ510に作り込む反射素子530の数が増加すると、空間光変調素子アレイ510の歩留りが低下する。このため、個々の空間光変調素子アレイ510の解像度を抑制することにより、反射素子530の歩留りが変わらない場合でも、シリコンウエハ509の利用効率を向上させることができる。
【0036】
再び図2を参照すると、ステップS101において複数の空間光変調素子アレイ510を造り込まれたシリコンウエハ509をダイシングすることにより、空間光変調素子アレイ510を個片化するダイシング段階が実行される(ステップS102)。シリコンウエハ509は、レーザ加工の他、ダイシングソーを用いた機械加工によってもダイシングできる。こうして、多数の空間光変調素子アレイ510を用意できる。
【0037】
図4は、単独の空間光変調素子アレイ510の構造を示す模式的な斜視図である。図示のように、空間光変調素子アレイ510は、アレイ基板520と、アレイ基板520上に配された複数の反射素子530と複数のポスト540とを有する。
【0038】
ポスト540は、アレイ基板520上にマトリクス状に整然と配される。ポスト540は、後述するように、反射素子530を、変位可能に支持する。反射素子530は、ポスト540に対して一定の相対位置を有して、マトリクス状に配される。また、反射素子530の表面は、アレイ基板520の表面と平行な共通の面に配される。
【0039】
図5は、空間光変調素子アレイ510の模式的断面図である。図示の断面においては、アレイ基板520の表面において、ポスト540と反射素子530とがフレクシャ550により弾性的に結合されていることが示される。
【0040】
また、図示の断面においては、アレイ基板520の図中上面に固定電極560が、フレクシャ550の図中下面に可動電極570が、それぞれ配される。なお、固定電極560および可動電極570において、互いに対向する表面には、少なくとも一部に絶縁膜562、572が形成される。これにより、固定電極560および可動電極570が互いに短絡することが防止される。
【0041】
更に、図示の断面においては、アレイ基板520の内部に、CMOS回路522が配される。CMOS回路522は、固定電極560のひとつひとつに対応するフリップフロップおよび選択回路を含む。CMOS回路522において、いずれかの選択回路が選択された場合、フリップフロップに供給されるクロック信号のタイミングに、対応する固定電極560に電圧が印可される。
【0042】
なお、可動電極570は、何らかの固定電位、例えば接地電位に接続されている。また、アレイ基板520には、CMOS回路522を外部に接続する配線、ビア、パッド、バンプ等が設けられる。
【0043】
上記のような空間光変調素子アレイ510において、CMOS回路522は、シリコンウエハ509をCMOSプロセスにより加工して形成することができる。また、反射素子530、ポスト540、フレクシャ550等の構造物は、シリコンウエハ509に堆積させた窒化珪素、ポリシリコン等により形成される。更に、反射素子530の表面には、反射効率を向上する目的で、アルミニウム等の金属層を堆積させてもよい。
【0044】
図6は、図5に示した空間光変調素子アレイ510において、ひとつの固定電極560に電圧が印可された状態を示す。即ち、図中左側に位置する固定電極560に電圧が印可され、対向する可動電極570が図中下方に引きつけられる。これにより、フレクシャ550が変形して、反射素子530が図中下方に変位する。よって、電圧を印可されていない図中右側の反射素子530との間に高さの差Hが生じる。
【0045】
図7は、上記のように、一部の固定電極560に電圧が印可された空間光変調素子アレイ510の様子を示す斜視図である。図示の例では、図中左側のA列および図中右側のC列の反射素子530は、図4に示した空間光変調素子アレイ510と同じ状態を保っている。それに対して、図中中央に位置するB列の反射素子530は、図中に点線で示す当初の配列平面に対して、アレイ基板520に近づく方向に変位している。
【0046】
空間光変調素子アレイ510に投影光が入射している場合、上記のような反射素子530の変位により、反射光の光路も変位する。また、光路の変位に伴い、外部に射出される反射光の位相が変化する。このように、空間光変調素子アレイ510において、複数設けられた反射素子530を個々に制御して、反射素子530毎に反射光の状態を変化させることができる。
【0047】
例えば、反射素子530における反射光の位相が変化した場合、反射素子530における反射光と、反射素子530相互の間の領域で反射される反射光との相互作用により、空間光変調素子アレイ510における当該反射素子530を含む領域における反射光の光強度が変化する。これにより、空間光変調素子アレイ510が反射する照明光に分布を形成することができる。
【0048】
図8は、空間光変調素子アレイ510に換えて空間光変調素子モジュール500を形成し得る他の空間光変調素子アレイ710を示す模式的な断面図である。空間光変調素子アレイ710は、アレイ基板720、反射素子730、ポスト740およびフレクシャ750を備える。
【0049】
アレイ基板720は、図中上面に配された一対の固定電極762、764を有する。固定電極762、764の表面は、絶縁膜763、765により覆われる。反射素子730は、柔軟なフレクシャ750を介して、ポスト740から支持される。
【0050】
ここで、一対の固定電極762、764は、反射素子730の支柱に対して、アレイ基板720の面方向に振り分けて配されている。また、固定電極762、764の各々には、個別に駆動電圧を印可できる。
【0051】
図9は、空間光変調素子アレイ710の動作を説明する図である。空間光変調素子アレイ710を動作させる場合は、図示のように、固定電極762、764のいずれか一方に駆動電圧を印可する。図示の例では、図中左側に位置する固定電極762に駆動電圧が印可される。なお、フレクシャ750は、基準電位に常時結合されている。
【0052】
固定電極762に駆動電圧が印可されると、フレクシャ750との間に発生した静電力によりフレクシャ750が固定電極762に吸着され、フレクシャ750に支持された反射素子730を傾ける。これにより、反射素子730により反射された反射光の伝播方向が変化するので、空間光変調素子アレイ710は入射光を変調できる。
【0053】
なお、固定電極762に吸着された可フレクシャ750は、固定電極762に当接することにより反射素子730の傾きを位置決めする。このとき、固定電極762の表面に設けられた絶縁膜763が、固定電極762とフレクシャ750との短絡を防止する。
【0054】
再び図2を参照すると、空間光変調素子モジュール500の製造においては、空間光変調素子アレイ組立体610を作成するレイアウト段階が実行される(ステップS103)。レイアウト段階においては、空間光変調素子アレイ510を、モジュール基板580に複数実装する。モジュール基板580は、例えば、シリコン基板により形成できる。
【0055】
図10は、空間光変調素子アレイ組立体610の模式的な側面図である。図示のように、ベース部材としてのモジュール基板580には、複数の空間光変調素子アレイ510が位置決めして固定される。これにより、複数の空間光変調素子アレイ510の相互の位置が固定される。モジュール基板580に対する空間光変調素子アレイ510の固定には、金属接合、有機系接着剤、水ガラス等の無機系接着剤、陽極接合等を広く利用できる。
【0056】
なお、接着剤等を硬化させる等して空間光変調素子アレイ510をモジュール基板580に恒久的に固定する前に、個々の空間光変調素子アレイ510を検査してもよい。この段階で検査して、傷んだ空間光変調素子アレイ510を正常なものに交換することにより、空間光変調素子モジュール500の歩留りを一層向上できる。
【0057】
また、空間光変調素子アレイ510の各々において、反射素子530は、アレイ基板520に対して変位可能に設けられている。このため、空間光変調素子アレイ510を固定する過程で、チャック、搬送ロボット、ピンセット等の工具が反射素子530に接触すると、フレクシャ550等の柔軟な構造の特性を変化させる可能性がある。
【0058】
そこで、図示の例では、空間光変調素子アレイ510の各々において、反射素子530が配されていないハンドリング領域524をアレイ基板520の周縁に設ける。これにより、空間光変調素子アレイ510をハンドリングする場合に、反射素子530に接触することなく、空間光変調素子アレイ510をハンドリングできる。
【0059】
このように、空間光変調素子アレイ組立体610においては、モジュール基板580に対して、空間光変調素子アレイ510がベアチップ状態で実装される。即ち、モジュール基板580に実装された空間光変調素子アレイ510の各々は、個別のパッケージ等を備えておらず、ダイシング段階(ステップS102)においてシリコンウエハ509から個片化された状態を保っている。これにより、空間光変調素子アレイ510は、モジュール基板580に対して高密度に実装できる。よって、少ない部品数で空間光変調素子モジュール500を高解像度化できる。
【0060】
更に、モジュール基板580に実装する前に、空間光変調素子アレイ510を選別することにより、シリコンウエハ509の利用効率を向上できる。また更に、欠陥のない空間光変調素子アレイを選択して実装することにより、画素数が多いにもかかわらず欠陥のない空間光変調素子モジュール500を製造できる。
【0061】
ただし、アレイ基板520にハンドリング領域524を設けた場合、空間光変調素子アレイ510の面積が、反射素子530が配置された領域よりも広くなる。このため、モジュール基板580において反射素子530が占める面積の割合が、ハンドリング領域524の分だけ減少する。
【0062】
図11は、レイアウト段階(ステップS103)の他の態様を説明する図である。図示の例では、モジュール基板580に実装される空間光変調素子アレイ510の各々が、反射素子530を埋め込んだ犠牲層512を有する。これにより、アレイ基板520の全面に反射素子530が配されていても、反射素子530に接触することなく空間光変調素子アレイ510をハンドリングできる。
【0063】
よって、空間光変調素子アレイ510を配列するレイアウト段階(ステップS103)よりも前に、空間光変調素子アレイ510に犠牲層512を設けることにより、空間光変調素子アレイ510の各々における反射素子530の面積の割合を向上できる。また、犠牲層512の上面を真空ピンセット等により吸着してハンドリングすることにより、モジュール基板580における空間光変調素子アレイ510の間隔を狭くして実装密度を向上できる。
【0064】
なお、犠牲層512は、例えば、ウエハプロセスにおいて用いるレジスト、酸化シリコン等により形成できる。また、犠牲層512は、空間光変調素子アレイ510をモジュール基板580に実装した後に取り除かれる。犠牲層512は、HF、XeF等を用いたドライエッチングまたはウェットエッチングにより除去できるが、空間光変調素子アレイ510をモジュール基板580に固定している接着剤を劣化しないエッチャントを選択して使用する。
【0065】
更に、犠牲層512は、半導体プロセス段階(ステップS101)において形成したものを利用してもよいし、レイアウト段階(ステップS103)において、空間光変調素子アレイ510に改めて設けてもよい。ただし、空間光変調素子アレイ510を個片化する前に犠牲層512を形成した方が、個々のチップに犠牲層512を設けるよりも手順を減らすことができる。よって、犠牲層512は、ダイシング段階(ステップS103)よりも前に形成することが好ましい。
【0066】
図12は、空間光変調素子アレイ組立体610の平面図である。図示のように、空間光変調素子アレイ510は、モジュール基板580において、図中水平に2列にレイアウトされている。
【0067】
ここで、図中上段に配列された空間光変調素子アレイ510と、図中下段に配列された空間光変調素子アレイ510とは、互いに、配列ピッチの半分の位置に交互に配される千鳥配置を形成する。また、各列における空間光変調素子アレイ510の間隔は、図中に点線Pで示すように、図中水平方向について、各空間光変調素子アレイ510の両端の反射素子530が、図中上下に重なり合うピッチを有する。
【0068】
これにより、空間光変調素子アレイ組立体610においては、図中に矢印yで示す露光装置100における走査方向と直交する方向について、反射素子530が隙間なく配置される。よって、露光装置100において空間光変調素子モジュール500を用いる場合に、走査方向yと直交する方向の解像度を向上できる。
【0069】
なお、露光装置100におけるスループットを増大するには、空間光変調素子モジュール500の画素数を増やす事がまず考えられる。これは、X方向にはそのまま当てはまり、増やした画素数分だけスループットが増大する。しかしながら、Y方向については、ステージのスキャン速度、レーザの繰返し周波数、露光の完了に要する露光量等が相互に関係するので、画素数を増加させても単純にスループットには反映されない。よって、Y方向の画素数は、むしろ、これらのパラメータにより決定される場合がある。また、Y方向の画素数が決定された後に、X方向の画素数を増加させることにより、露光装置100におけるスループットを効果的に増大できる。
【0070】
また、スループットを増大させるには、上記のように、X方向の画素数を増加することが効果的である。しかしながら、円形のシリコンウエハから空間光変調素子モジュール500を製造する場合、X方向に限って長い横長のチップは、1ウエハから取れるチップ数である面付数が減少する。また、単一のチップの寸法が大きくなるにつれて歩留り低下が漸増する。これに対して、バランスのよい縦横比のチップとして製造した複数の空間光変調素子アレイ510を更にアレイ状に配置することにより、上記のような問題を生じることなく、空間光変調素子モジュール500におけるX方向の画素数を増加させることができる。
【0071】
ただし、空間光変調素子アレイ510の個々のチップには、反射素子530が配置されていない領域がある。このため、複数の空間光変調素子アレイ510のチップを配置する場合に、チップを相互に突き合わせて配列しても、反射素子530が存在しない区間が生じる。これに対して、図12に示したように、空間光変調素子アレイ510の列を複数設け、これらの列を走査方向と交差する方向(Y方向)にずらして配置する千鳥配列とすることにより、反射素子530が緻密に配置された空間光変調素子モジュール500を形成できる。
【0072】
図13は、レイアウト段階(ステップS103)における空間光変調素子アレイ510の位置決め方法を説明する図である。レイアウト段階の実行に先立って、モジュール基板580および空間光変調素子アレイ510の各々には、アライメントマーク582、514が設けられる。これらアライメントマーク582、514を用いることにより、モジュール基板580において空間光変調素子アレイ510を位置決めして、図12に示したようなレイアウトを形成できる。
【0073】
モジュール基板580には、モジュール基板580の表面から光学的に視認できるアライメントマーク582が形成される。アライメントマークは、エッチング等により形成されたモジュール基板580表面の起伏、溝、段差等であってもよいし、モジュール基板580の表面に形成した配線、パッド等であってもよい。
【0074】
また、配線等を形成する材料で、アライメントマーク専用に設けたパターンであってもよい。更に、アライメントマーク582は、空間光変調素子アレイ510を実装する面と同じ面に形成することが好ましいが、モジュール基板580の内部または裏面に設けても、赤外線カメラ等により視認できる。
【0075】
同様に、空間光変調素子アレイ510にも、レイアウト段階(ステップS103)に先立ってアライメントマーク514が設けられる。アライメントマークは、空間光変調素子アレイ510を製造する段階で形成してもよいし、空間光変調素子アレイ510が形成された後に、改めて形成してもよい。アライメントマーク514は、アレイ基板520表面に形成した起伏、溝、段差等であってもよいし、反射素子530、ポスト540、配線、パッド等であってもよい。
【0076】
また、アライメントマーク514は、モジュール基板580に実装する場合に、モジュール基板580側のアライメントマーク582と同じ側から見える面に設けることが好ましい。しかしながら、モジュール基板580の内部または裏面に設けても、赤外線カメラ等により視認できる。更に、モジュール基板580上のひとつのアライメントマーク582を、複数の空間光変調素子アレイ510の位置決めに兼用してもよい。
【0077】
空間光変調素子アレイ510をモジュール基板580に実装する場合は、上記アライメントマーク514、582の相対位置を、予め定められた相対位置に一致させることにより、空間光変調素子アレイ510を位置決めできる。よって、空間光変調素子アレイ510毎に位置決めを繰り返すことにより、モジュール基板580における複数の空間光変調素子アレイ510相互の位置を、予め定めたものにすることができる。
【0078】
なお、レイアウト段階(ステップS103)は、空間光変調素子アレイ510の各々と、モジュール基板580とを電気的に結合する配線段階も含んでもよい。空間光変調素子アレイ510とモジュール基板580とは、例えば、ボンディングワイヤ584により、電気的に結合できる。
【0079】
図14は、他の空間光変調素子アレイ組立体611の、モジュール基板580に対する実装の態様を示す図である。図示の空間光変調素子アレイ組立体611においては、空間光変調素子アレイ510が、図中下面にマイクロバンプ516を有する。また、空間光変調素子アレイ510は、反射素子530等を形成する場合に利用する、反射素子530と同じ面に形成されたアライメントマーク514の他に、空間光変調素子アレイ510をフリップチップ実装する場合に位置決めに用いるアライメントマーク515を有する。
【0080】
これにより、レイアウト段階(ステップS103)における空間光変調素子アレイ510の実装と配線とを一括して実行できる。また、空間光変調素子アレイ510の周囲に配線パッドを設けることを省略できるので、モジュール基板580における空間光変調素子アレイ510の実装密度を一層向上できる。
【0081】
図15は、空間光変調素子アレイ組立体612において、空間光変調素子アレイ510をモジュール基板580に対して位置決めして実装する他の構造を説明する分解斜視図である。図示の空間光変調素子アレイ組立体612においては、アライメントマーク514、582を用いることなく、メカニカルな構造により空間光変調素子アレイ510を位置決めする。
【0082】
空間光変調素子アレイ組立体612において、モジュール基板580は、図中縦方向に形成された縦溝581と、図中横方向に形成された横溝583とを表面に有する。モジュール基板580の表面において、縦溝581および横溝583は互いに直交する。
【0083】
空間光変調素子アレイ組立体612において、空間光変調素子アレイ510は、図中縦方向に形成された縦溝511と、図中横方向に形成された横溝513とを図中下面に有する。空間光変調素子アレイ510における縦溝511および横溝513は、モジュール基板580の縦溝581および横溝583の位置に対応する。
【0084】
更に、空間光変調素子アレイ組立体612において、モジュール基板580および空間光変調素子アレイ510の間には、それぞれが円筒状の位置決め部材592が挟まれる。位置決め部材592は、縦溝511、581および横溝513、583の内部に収容される。このため、位置決め部材592の長さは、縦溝511、581および横溝513、583の長手方向の長さよりも短い。
【0085】
図16は、図15に示した構造を有する空間光変調素子アレイ組立体612の断面図である。図示のように、縦溝511、581および横溝513、583は、それぞれV字型の断面形状を有する。このため、円筒状の位置決め部材592は、縦溝511、581および横溝513、583の内部に、それぞれ線接触して、モジュール基板580と空間光変調素子アレイ510との相対位置を一意に決定する。
【0086】
また、図15に示した通り、縦溝511、581および横溝513、583は互いに直交する。よって、モジュール基板580および空間光変調素子アレイ510の相対位置は、間隔と傾きとがいずれも位置決めされる。
【0087】
なお、空間光変調素子アレイ組立体612においては、位置決め部材592を挟んだ場合に、モジュール基板580および空間光変調素子アレイ510の間に間隙が残り、両者が直接に接触しない程度の深さに縦溝511、581および横溝513、583を形成することが好ましい。これにより、空間光変調素子アレイ510の位置決め精度は、縦溝511、581および横溝513、583と位置決め部材592の寸法精度に依存する。
【0088】
縦溝511、581および横溝513、583は、フォトリソグラフィ技術を利用した異方性エッチングにより精度よく形成できる。また、位置決め部材としては、形状の精度が高いセラミックス製の丸棒を使用できる。よって、空間光変調素子アレイ510のモジュール基板580に対する位置決め精度も高くなる。また、モジュール基板580および空間光変調素子アレイ510の間に間隙を残すことにより、両者の間に挟まれる接着剤等が位置決め精度に影響を与えることも防止できる。
【0089】
なお、上記のように、位置決め部材592を用いて空間光変調素子アレイ510を位置決めする構造であっても、空間光変調素子アレイ510およびモジュール基板580に光学的に視認できるアライメントマーク514、582を設けてもよい。これにより、モジュール基板580上で空間光変調素子アレイ510を位置決めする場合に、実装位置の近傍まで移動させる作業を容易にすることができる。
【0090】
図17は、空間光変調素子アレイ組立体613において、空間光変調素子アレイ510をモジュール基板580に対して位置決めして実装する他の構造を説明する分解斜視図である。図示の空間光変調素子アレイ組立体613においても、アライメントマーク514、582を用いることなく、メカニカルな構造により空間光変調素子アレイ510を位置決めする。
【0091】
空間光変調素子アレイ組立体613において、空間光変調素子アレイ510は、図15および図16に示した例と同様に、図中縦方向に形成された縦溝511と、図中横方向に形成された横溝513とを図中下面に有する。空間光変調素子アレイ510において、縦溝511および横溝513は互いに直交する。
【0092】
空間光変調素子アレイ組立体613において、モジュール基板580は、図中縦方向に形成された一対の縦溝581と、図中横方向に形成された横溝583とを表面に有する。モジュール基板580の表面において、縦溝581は互いに平行になる。また、モジュール基板580における一方の縦溝581は、空間光変調素子アレイ510の縦溝511に対応する位置に設けられる。モジュール基板580における他方の縦溝581は、空間光変調素子アレイ510の横溝513と交差する位置に配される。
【0093】
更に、空間光変調素子アレイ組立体613においては、モジュール基板580および空間光変調素子アレイ510の間に、円筒状の位置決め部材592と球形の位置決め部材594とが挟まれる。位置決め部材592は、縦溝511、581の間に挟まれる。また、球形の位置決め部材594は、縦溝581と横溝513との間に挟まれる。
【0094】
図18は、図17に示した構造を有する空間光変調素子アレイ組立体613の断面図である。図示のように、縦溝511、581および横溝513は、それぞれV字型の断面形状を有する。
【0095】
このため、円筒状の位置決め部材592は、縦溝511、581の内面に線接触して、モジュール基板580と空間光変調素子アレイ510との相対位置を一意に決定する。また、球形の位置決め部材594は、空間光変調素子アレイ510の横溝513と、モジュール基板580の縦溝581とが交差する位置において、各溝の内面に点接触して、モジュール基板580と空間光変調素子アレイ510との間隔を一意に決定する。これにより、空間光変調素子アレイ組立体613においても、モジュール基板580および空間光変調素子アレイ510の相対位置が、間隔と傾きとがいずれについても位置決めされる。
【0096】
なお、空間光変調素子アレイ組立体613においても、位置決め部材592、594を挟んだ場合に、モジュール基板580および空間光変調素子アレイ510の間に間隙が残り、両者が直接に接触しない程度の深さに縦溝511、581および横溝513、583を形成することが好ましい。これにより、空間光変調素子アレイ510の位置決め精度は、縦溝511、581および横溝513、583と位置決め部材592の寸法精度に依存する。よって、空間光変調素子アレイ510のモジュール基板580に対する位置決め精度も高くなる。また、モジュール基板580および空間光変調素子アレイ510の間に間隙を残すことにより、両者の間に挟まれる接着剤等が位置決め精度に影響を与えることも防止できる。
【0097】
なお、図15から図18に示した例を応用して、例えば、球形の位置決め部材を3個用いて、空間光変調素子アレイ510をモジュール基板580に位置決めする構造を形成することもできる。しかしながら、位置決め部材594の部品点数が増加すると共に、空間光変調素子アレイ510およびモジュール基板580の溝加工の工数も増加する。
【0098】
再び図2を参照すると、空間光変調素子モジュール500の製造においては、上記のようなレイアウト段階(ステップS103)により形成された空間光変調素子アレイ組立体610、611、612、613に対して、パッケージング段階が実行される(ステップS104)。パッケージング段階においては、空間光変調素子アレイ組立体610が、パッケージ630に収容される。
【0099】
図19は、空間光変調素子モジュール500の斜視図である。空間光変調素子モジュール500は、パッケージ630および空間光変調素子アレイ組立体610を備える。ただし、空間光変調素子アレイ組立体610は、パッケージ630の内部に収容されているので、空間光変調素子アレイ510の反射素子530だけが外部に向かって露出している。
【0100】
パッケージ630は、容器状の収容部634と、収容部634の上面を封止する蓋部632とを有する。蓋部632には、複数の窓部631が設けられ、空間光変調素子アレイ510の反射素子530は、窓部631の内側に現れている。
【0101】
図20は、空間光変調素子モジュール500の平面図である。空間光変調素子モジュール500において、空間光変調素子アレイ510の各々の反射素子530は、パッケージ630の蓋部632に設けられた窓部631の内側に位置して、外部に向かって露出する。換言すれば、空間光変調素子アレイ510の各々において、反射素子530以外の部分は、蓋部632によりマスクされる。
【0102】
これにより、空間光変調素子モジュール500の外部から照射された照明光は、反射素子530が設けられた領域に限って照射され、それ以外の部分は、パッケージ630により照明光から保護される。よって、アレイ基板520に形成されたCMOS回路が照明光により劣化することが防止される。
【0103】
図21は、空間光変調素子モジュール500の断面図であり、図19に示すQ−Q断面を示す。空間光変調素子モジュール500において、空間光変調素子アレイ組立体610は、収容部634および蓋部632により形成された、パッケージ630内部の空間に収容される。パッケージ630は、例えば、アルミナ等のセラミックスにより形成できる。
【0104】
空間光変調素子アレイ組立体610は、モジュール基板580に実装された複数の空間光変調素子アレイ510を有する。空間光変調素子アレイ510の各々は、更に、個別に変位させることができる多数の反射素子530を有する。
【0105】
空間光変調素子モジュール500において、パッケージ630の蓋部632の図中上面には、遮光線635が形成される。遮光線635は、空間光変調素子モジュール500における反射素子530の反射光とは異なる方向に入射光を反射する、のこぎり状断面を有する反射面を有する。これにより、空間光変調素子モジュール500に照射された照明光のうち、窓部631の内側に露出した反射素子530に照射されず、パッケージ630の蓋部632に照射された照明光は、反射素子530の反射光とは異なる光路に向かって反射される。
【0106】
よって、照明光による空間光変調素子モジュール500の温度上昇を抑制すると共に、反射素子530において反射されて外部に向かって射出される変調光の変調精度を向上させることができる。なお、遮光線としては、図中に示したのこぎり状の反射面の他、ブレーズ型回折光学素子や、回折格子等を用いてもよい。また、遮光線635に換えて、入射光または反射光を吸収する部材を設けてもよい。
【0107】
また、空間光変調素子モジュール500において、パッケージ630の窓部631の内側、および、蓋部632の内面等には、反射防止部633が設けられる。これにより迷光の発生を防止し、空間光変調器として出力する照射光のパターン精度を向上が向上される。
【0108】
上記のような空間光変調素子モジュール500は、パッケージ630により空間光変調素子アレイ510の各々が保護されているので、高い変調精度を長期にわって維持できる。また、長期間の使用により性能が低下した場合は、パッケージ630ごと交換できるので、露光装置100の保守が容易になる。
【0109】
また、複数の空間光変調素子アレイ510を実装して形成されているので、空間光変調素子アレイ510単位で交換することにより、部分的に劣化した空間光変調素子モジュール500を容易に再生することができる。これにより、空間光変調素子モジュール500をコストダウンできるので、露光装置100等の、空間光変調素子モジュール500を用いた装置の運用コストも低減できる。
【0110】
なお、パッケージ630の形態は図示のものに限られない。金属パッケージ、樹脂モールドパッケージ等、他のパッケージ構造により空間光変調素子モジュール500を形成できることはもちろんである。
【0111】
図22は、他の空間光変調素子モジュール501の平面図である。空間光変調素子モジュール501は、パッケージ630と、パッケージ630の内部に収容された、複数の空間光変調素子アレイ組立体614とを備える。空間光変調素子アレイ組立体610は、更に、大きなモジュール基板640に実装された状態で、パッケージ630に収容される。
【0112】
空間光変調素子モジュール501において、空間光変調素子アレイ組立体614は、モジュール基板580と、モジュール基板580に一列に実装された複数の空間光変調素子アレイ510を備える。更に、一列の空間光変調素子アレイ510を実装されたモジュール基板580が2枚用意され、より大きなモジュール基板640に実装される。
【0113】
大きなモジュール基板640において、一対の空間光変調素子アレイ組立体614は、互いに長手方向にずれて実装される。これにより、双方の空間光変調素子アレイ組立体614に搭載された空間光変調素子アレイ510は、互いに千鳥配置をなす。なお、空間光変調素子アレイ510の各々の反射素子530が、パッケージ630の窓部631から外部に向かって露出する点は、空間光変調素子モジュール500と共通している。
【0114】
なお、上記の例では、各々が一列の空間光変調素子アレイ510を実装したモジュール基板580を、更に、大きなモジュール基板640に実装して、空間光変調素子アレイ510を位置決めした。しかしながら、大きなモジュール基板640を省略して、モジュール基板580の各々を、パッケージ630内で直接に位置決めしてもよい。
【0115】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0116】
本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をリソグラフィ工程を用いて製造する露光装置にも適用することができる。以上のように、上記各実施形態でエネルギビームが照射される露光対象の物体はウエハに限られるものではなく、ガラスプレート、セラミック基板、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0117】
半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、シリコン材料からウエハを形成するステップ、上記の実施形態の露光装置により可変成形マスクを介してウエハを露光するステップ、エッチング等の回路パターンを形成するステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、及び検査ステップ等を経て製造される。
【0118】
なお、上記実施形態では、露光装置に本発明の空間光変調素子モジュールが用いられた場合について説明したが、これに限らず、例えば、プロジェクタなどの投影画像表示装置に用いることも可能であるし、例えば、光学的情報処理装置、静電写真印刷装置、光通信に用いられる光スイッチ、Switched Blazed Grating Device、又は印刷分野で用いられるプレートセッターなど様々な用途に用いることも可能である。
【0119】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
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