(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高屈折率を有し、高透明性、高耐熱性、高耐光性、高硬度を達成し得る電子デバイス用膜作製に好適な膜形成組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は第1観点として、下記式(1)で表されるアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体(A)、と、1乃至100nmの平均粒子径を有するジルコニア粒子(B)と、溶剤(C)とを含む固体撮像素子用膜形成組成物、
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R
1、R
2はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、又はt−ブチル基を表し、a、bはそれぞれ1乃至6の整数を表す。式中、Lは水素原子又は式(2)を表す。式(2)中のR
3はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、又はt−ブチル基を表し、cは1乃至6の整数を表す。)、
【0010】
【化2】
【0011】
第2観点として、前記式(1)で表されるアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体(A)が下記式(3
)である第1観点に記載の固体撮像素子用膜形成組成物、
【0012】
【化3】
【0013】
第3観点として、前記式(1)で表されるアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体(A)が下記式(4
)である第1観点に記載の固体撮像素子用膜形成組成物、
【0014】
【化4】
【0015】
第4観点として、(B)成分の固形分を100質量部としたときに、前記(A)成分を1乃至20質量部含む、第1観点乃至第3観点のいずれか一つに記載の固体撮像素子用膜形成組成物、
第5観点として、ジルコニア粒子(B)が1.50〜2.20の屈折率を有するものである第1観点乃至第4観点のいずれか一つに記載の
固体撮像素子用膜形成組成物、
第6観点として、ジルコニア粒子(B)が動的光散乱法による平均粒子径が1乃至100nmである第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載の
固体撮像素子用膜形成組成物、
第7観点として、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載の
固体撮像素子用膜形成組成物を基板上に被覆し焼成して得られる硬化膜
を備える固体撮像素子、及び
第8観点として、
前記硬化膜を平坦化膜として備える
、第7観点に記載の固体撮像素子である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の固体撮像素子用膜形成組成物は、当該組成物に含まれるアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体
(A)が自己架橋タイプであるため架橋剤が添加される必要はない。さらに、固体撮像素子用膜形成組成物から形成される膜は、優れた透明性、耐熱性、耐溶剤性及び耐光性を有する。
ジルコニア粒子(B)が動的光散乱法による分散粒子径が1乃至100nmであることで、ろ過性が良好であり、膜形成組成物の高透過率を達成できる。(B)成分がジルコニア粒子であることから、チタニア粒子のように400nm近傍に光吸収を有さず、透過率が高くなる。
(B)成分の固形分を100質量部としたときに、前記(A)成分を1乃至20質量部含む組成物とすることで、ジルコニア粒子以外の低屈折率成分を低減できることから高屈折率を維持でき、且つ、耐熱性及び耐光性に優れた被膜を得ることができる。
【0017】
(A)成分のアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体は自己架橋するとともに、加熱時にジルコニア粒子表面の水酸基とも反応し、ジルコニア粒子とアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体との架橋を有するため、永久膜として信頼性が高い被膜を得ることができる。
そして、本願発明によって得られた膜は高屈折率、高透明性、高耐熱性、高耐光性を一度に満たすことが可能であり、高耐光性が要求される固体撮像素子の平坦化膜として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願発明は上記式(1)で表されるアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体(A)、と、1乃至100nmの平均粒子径を有するジルコニア粒子(B)と、溶剤(C)とを含む固体撮像素子用膜形成組成物である。
【0019】
上記膜形成組成物の固形分濃度は、目的の膜形成被膜の膜厚を得られるように調製されていれば良く、0.1〜50質量%、又は1〜30質量%、又は5〜20質量%の濃度範囲とすることができる。固形分は膜形成組成物から溶剤を除去した残りの割合である。
【0020】
固形分中におけるイソシアヌル酸誘導体(A)とジルコニア粒子(B)の含有量は50〜100質量%、又は70〜100質量%、又は70〜99質量%とすることができる。
【0021】
また、本発明の固体撮像素子用膜形成組成物における前記共重合体の含有量は、(B)成分の固形分を100質量部としたときに、1乃至20質量部であり、好ましくは1乃至10質量部である。前記共重合体の含有量が20質量部よりも高いと、屈折率が低下し、耐光性が悪化する場合がある。また、前記共重合体の含有量が1質量部よりも低いと加熱時の架橋が未完了で溶剤耐性が不足する場合がある。
【0022】
上記式(1)において、R
1、R
2はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、又はt−ブチル基を表し、a、bはそれぞれ1乃至6の整数を表す。式(1)中、Lは水素原子又は式(2)を表す。式(2)中のR
3はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、又はt−ブチル基を表し、cは1乃至6の整数を表す。
【0023】
本発明において、アルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体
(A)を得る方法は特に限定されない。例えば、式(
3)に示した1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリル)プロピル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(例えば、Gelest社製)は一般試薬として購入できる。
【0024】
上記溶剤(C)の具体例としては、トルエン、p−キシレン、o−キシレン、スチレン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、1−オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、1−メトキシー2−ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、γ−ブチルラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルノーマルブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピルケトン、酢酸ノーマルプロピル、酢酸イソブチル、酢酸ノーマルブチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、アリルアルコール、ノーマルプロパノール、2−メチル−2−ブタノール、イソブタノール、ノーマルブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、1−メトキシー2−ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、イソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、N−シクロヘキシル−2−ピロリジノンが挙げられる。
本発明の(C)成分は溶剤である。溶剤は(A)成分を得た溶剤と同様の溶剤が好ましいが、本発明の膜形成組成物の保存安定性を著しく損ねなければ特に限定されない。上述した、一般的な有機溶剤を用いることができる。
【0025】
自己架橋タイプのアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体(A)と、平均粒子径が1〜100nmのジルコニア粒子(B)との相溶性の観点から、溶剤(C)はより好ましくは、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、乳酸エチルエステル等が挙げられる。
以下、本明細書では、プロピレングリコールモノメチルエーテルをPGMEと略称し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをPGMEAと略称する。
本願発明に用いられる(B)成分は1〜100nmの平均粒子径を有するジルコニア粒子(B)であり、上記ジルコニア粒子(B)の屈折率は1.50乃至2.20、又は1.50乃至1.70、又は1.60乃至2.00、又は1.90乃至2.20の範囲を選択することができる。
【0026】
なお、ジルコニア粒子は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本願発明に用いられる(B)成分は動的光散乱法による平均粒子径が1乃至100nm、又は5乃至50nm、又は10nm以下のジルコニア粒子を用いることができる。
上記粒子径については平均粒子径の異なる微粒子を混合して用いても良い。
【0027】
さらに、ジルコニア粒子を、酸化ケイ素、有機ケイ素化合物、有機金属化合物などにより処理した粒子を用いてもよい。
なお、酸化ケイ素による処理とは、ジルコニア粒子を含む分散体中で粒子表面に、酸化ケイ素粒子を公知の方法で成長させるものである。有機ケイ素化合物、有機金属化合物による処理とは、ジルコニア粒子を含む分散体中に、これらの化合物を添加し、ジルコニア粒子の表面にこれらの化合物、又はこれらの化合物の反応生成物を吸着又は結合させるものである。
【0028】
上記有機ケイ素化合物としては、シランカップリング剤やシランが挙げられ、シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0029】
また、シランの具体例としては、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランフェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0030】
上記有機金属化合物としては、チタネート系カップリング剤やアルミニウム系カップリング剤が挙げられ、チタネート系カップリング剤の具体例としては、プレンアクト KR TTS,KR 46B、KR 38B、KR 138S、KR238S、338X、KR 44、KR 9SA、KR ET5、KR ET(味の素ファインテクノ(株)製)、アルミニウム系カップリング剤の具体例としては、プレンアクトAL−M(味の素ファインテクノ(株)製)等が挙げられる。
【0031】
これら有機ケイ素化合物、有機金属化合物の使用量は、上記ジルコニア粒子100質量部に対して2〜100質量部が好ましい。
【0032】
ジルコニア粒子に用いられる金属酸化物コロイド粒子は、公知の方法、例えば、イオン交換法、解こう法、加水分解法、反応法により製造することができる。
【0033】
イオン交換法としては、例えば、上記金属の塩をイオン交換樹脂で処理し、対イオンを除去して粒子を生成する方法が挙げられる。
【0034】
解こう法としては、上記ジルコニウムの塩を酸、又は塩基で中和する、又は上記金属のアルコキシドを加水分解、または上記金属の塩基性塩を加熱下で加水分解して得られた沈殿物又はゲルから、不要の電解質を除去する又は分散に必要なイオンを添加する方法などが挙げられる。反応法の例としては、上記金属の粉末と酸とを反応させる方法等が挙げられる。
本発明の表示デバイス用膜形成組成物及び被膜形成組成物を調製する方法は特に限定されない。(A)成分、(B)成分及び(C)成分が均一に混合した状態であれば良い。成分(A)乃至成分(C)を混合する際の順序は均一なワニスが得られれば問題なく、特に限定されない。
【0035】
膜形成組成物の固形分中には自己架橋タイプのアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体(A)とジルコニア粒子(B)を含むが、それ以外の成分を含有してもよい。本発明においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)以外にその他の成分、例えばレベリング剤、界面活性剤等の成分が含まれていてもよい。
【0036】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロツクコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、商品名エフトップEF301、EF303、EF352(株式会社トーケムプロダクツ製)、商品名メガファックF171、F173、F−553、F−554、R−08、R−30、R−30−N(大日本インキ化学工業株式会社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム株式会社製)、商品名アサヒガードAG710,サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子株式会社製)等のフッ素系界面活性剤、及びオルガノシロキサンポリマ−KP341(信越化学工業株式会社製)、BYK−302、BYK−307、BYK−322、BYK−323、BYK−330、BYK−333、BYK−370、BYK−375、BYK−378(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、等を挙げることができる。これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また二種以上の組み合わせで使用することもできる。界面活性剤が使用される場合、その割合としては、ケイ素化合物(A)100質量部に対して0.0001〜5質量部、または0.001〜1質量部、または0.01〜0.5質量部である。
上記の他の成分、溶剤、レベリング剤若しくは界面活性剤を混合する方法は、自己架橋タイプのアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体(A)にジルコニア粒子(B)及び溶剤(C)を添加すると同時でも、成分(A)乃至成分(C)混合後であっても良く、特に限定されない。
【0037】
<被膜の形成>
本発明の膜形成組成物は、基材に塗布し熱硬化することで所望の被膜を得ることができる。塗布方法は、公知又は周知の方法を採用できる。例えば、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の方法を採用できる。その際に用いる基材は、シリコン、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレン(PE)、アイオノマー(IO)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレンメタクリル酸共重合体(EMMA)、ポリメタクリル酸(PMMA)、ナイロン、プラスチック、ガラス、サファイア、石英、ダイヤモンド、セラミックス、アルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)、ガリウムヒ素リン(GaAsP)、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、窒化ガリウム(GaN)、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)、リン化ガリウム(GaP)、セレン化亜鉛(ZnSe)、アルミニウムインジウムガリウムリン(AlGaInP)、酸化亜鉛(ZnO)等からなる基材を挙げることができる。
焼成機器としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレート、オーブン、ファーネスを用いて、適切な雰囲気下、すなわち大気、窒素等の不活性ガス、真空中等で焼成させればよい。これにより、均一な製膜面を有する被膜を得ることが可能である。
【0038】
焼成温度は、溶媒を蒸発させる目的では、特に限定されないが、例えば、40〜200℃で行うことができる。これらの場合、より高い均一製膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で2段階以上の温度変化をつけてもよい。
【0039】
焼成温度及び焼成時間は目的とする電子デバイスのプロセス工程に適合した条件を選択すれば良く、被膜の物性値が電子デバイスの要求特性に適合した焼成条件を選択できる。本願発明の自己架橋タイプのアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体(A)とジルコニア粒子(B)と溶剤(C)とを含む膜形成組成物は、これら各成分をハイブリッド化してなるワニスが均一分散液となっていることが好ましい。
【0040】
ここで、ハイブリッド化とは、広義では異なった性質の溶質を混合し、溶液の状態で混和することを意味し、異なる溶質同士が化学的または物理的に相互作用を有していても、有していなくてもよく、分散性が保持されていればよい。
【0041】
ハイブリッド化は、最終的なワニスの安定性が得られる限りにおいて、その調製方法は特に限定されない。
【0042】
例えば、(1)自己架橋タイプのアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体(A)を、溶液状態(ワニス)でジルコニア粒子の分散液(ジルコニアゾル)に混合させる、(2)自己架橋タイプのアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体(A)を溶液中(ワニス中)でジルコニア微粒子を分散させる、など種々の方法が挙げられるが、ハンドリング性の観点から、自己架橋タイプのアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体(A)を溶液(ワニス)の状態でジルコニア粒子の分散液(ジルコニアゾル)に混合させる方法が好ましい。
【0043】
ハイブリッド化した最終的なワニスの安定性は、分散性の低下による析出、1次粒子径または2次粒子径の大幅な変化、塗布性の悪化、着色(白化、黄変)、膜質の悪化を引き起こさなければよい。
【0044】
組成物中におけるジルコニア粒子の含有量は、得られる最終的なワニスの分散性が損なわれない範囲であればよく、作製する被膜の目的とする屈折率、透過率、耐熱性に合わせてコントロールすることが可能である。
【0045】
本発明の自己架橋タイプのアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体(A)とジルコニア粒子(B)と溶剤(C)とを含む膜形成組成物(塗布液)は、分散性の低下による析出、1次粒子径または2次粒子径の大幅な変化、塗布性の悪化、着色(白化、黄変)、膜質の悪化を引き起こさない保管条件であれば特に限定されない。例えば、23℃(室温保管)、5℃(冷蔵保管)及び−20℃(冷凍保管)で保管すれば良く、ワニス状態で水酸基同士が反応するのを防止するために−20℃(冷凍保管)で保管することが好ましい。
このようにして得られた本発明の組成物からなる膜は、高屈折率、高透明性、高耐熱性、高耐光性を一度に満たすことが可能であり、高耐光性が要求される固体撮像素子の平坦化膜として好適に用いることができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた各測定装置は以下のとおりである。
[紫外線可視分光光度計]
装置:(株)島津製作所製 SHIMADSU UV−3600
[被膜の屈折率/エリプソメーター]
装置:ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製 多入射角分光エリプソメーターVASE。
波長450nmで測定。
〔粒子の屈折率〕
装置:ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製 多入射角分光エリプソメーターVASE。
波長450nmで測定。
無機粒子を膜厚が100nmになるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、シリコン基板にスピンコートし、100℃で1分間、ホットプレートで焼成後、200℃で5分間、ホットプレートで焼成した膜の屈折率を測定した。
【0047】
〔平均粒子径〕
装置:Beckman Coulter製 N5
無機粒子分散液を分散媒と同じ溶媒で希釈し、動的光散乱法の粒子径(Unimodalモード、強度平均粒子径)を測定した。
[参考例1]
ジルコニア分散液;アルコキシシランにより表面処理されたジルコニア粒子を30.5質量%含むプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液(D1と略す)(日産化学工業(株)製)
参考例1で得たジルコニア粒子の各物性値を表1に示す。
【0048】
〔表1〕
表1 無機粒子の各物性値
――――――――――――――――――――――――
略称 D1
粒子種 ジルコニア
平均粒子径(nm) 14
粒子屈折率 1.66
固形分(wt%) 30.5
B型粘度(BLアダプター) 4.3
(mPa・s、20℃)
――――――――――――――――――――――――
【0049】
<膜形成組成物および被膜の作製>
[実施例1]
20mLナス型フラスコに参考例1で得られた7.0000gのD1分散液を秤量し、次いで、9.6202gのPGMEを加え、自己架橋タイプのアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体である1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリル)プロピル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(TSIと略す)をPGMEに溶解し、25質量%とした溶液0.4270g(D1の固形分に対して、TSIの固形分が5質量%)を加え、界面活性剤として大日本インキ化学工業(株)製のR−30−NをPGMEで希釈し1質量%とした溶液0.2135gを加え、室温で完全に均一になるまで混合し、固形分の総質量が13.0質量%のワニス(V1と略す)を得た。
【0050】
得られたV1はシリコン基板及び石英基板上にスピンコーターを用いて、膜厚が200nmとなるようにスピンコートし、ホットプレートを用いて、100℃で1分間、次いで200℃で5分間焼成を行い、被膜を得た。シリコン基板上の被膜はエリプソメーターにより波長450nmの光の屈折率を測定し、石英基板上の被膜は透過率を測定し、400nmから800nmの平均透過率を算出し、その結果を表2に示す。また、シリコン基板上の被膜は溶剤耐性試験を行った。溶剤耐性試験とは、本焼成後の被膜が溶剤への接触に対して不溶化していることを示す試験である。溶剤耐性は被膜の上にレジストなどをリコートし、パターニングする後工程が加わった際に必要になる特性であり、溶剤耐性がない場合、リコートする際のレジスト溶剤に被膜が溶解してしまい、被膜とレジストとがミキシングされてしまって、本来の特性が発現しないことがある。
V1の被膜の焼成後の膜厚は200.2nmであり、これを初期膜厚とした。被膜をPGMEに完全に浸漬させ5分間放置した。次いで、エアーで乾燥後、200℃のホットプレートで1分間焼成し、残留溶剤を完全に蒸発させた後、膜厚を測定し、初期膜厚を100%として比較し、その結果を表2に示す。
【0051】
[実施例2]
実施例1のTSIを1,3−ビス(3−トリメトキシシリル)プロピルイソシアヌル酸
に置き換えた以外は実施例1と同様に操作し、ワニス(V2と略す)を得た。実施例1と同様に焼成し被膜を得た。屈折率、平均透過率、溶剤耐性を測定した結果を表2に示す。
[比較例1]
実施例1のTSIを式(5)に示すトリス(2−ヒドロキシエチル)エステルイソシアヌル酸に置き換えた以外は実施例1と同様に操作し、ワニス(RV1と略す)を得た。実施例1と同様に焼成し被膜を得た。屈折率、平均透過率、溶剤耐性を測定した結果を表2に示す。
【0052】
【化5】
【0053】
[比較例2]
実施例1のTSIを式(6)に示すトリグリシジルエステルイソシアヌル酸に置き換えた以外は実施例1と同様に操作し、ワニス(RV2と略す)を得た。実施例1と同様に焼成し被膜を得た。屈折率、平均透過率、溶剤耐性を測定した結果を表2に示す。
【0054】
【化6】
【0055】
[比較例3]
実施例1のTSIを式(7)に示すビス(トリエトキシシリル)メタンに置き換えた以外は実施例1と同様に操作し、ワニス(RV3と略す)を得た。実施例1と同様に焼成し被膜を得た。屈折率、平均透過率、溶剤耐性を測定した結果を表2に示す。
【0056】
【化5】
【0057】
〔表2〕
表2 被膜の波長450nmにおける屈折率、平均透過率及び溶剤耐性
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
屈折率[波長450nm] 平均透過率[%] 溶剤耐性[%]
実施例1 1.6441 98.8 100
実施例2 1.6459 98.7 100
比較例1 1.6410 98.6 31
比較例2 1.6391 98.5 73
比較例3 1.6355 98.8 67
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0058】
表2の結果について、実施例1及び実施例2と比較例1乃至比較例3とを比較する。実施例1及び実施例2で得られた膜は高屈折率、高透過率であり、さらに溶剤耐性が100%となった。一方で、比較例1乃至比較例3で得られた被膜は高屈折率、高透過率であるものの、溶剤耐性が100%とならなかった。溶剤耐性は被膜の上にレジストなどをリコートし、パターニングする後工程が加わった際に必要になる特性であり、溶剤耐性がない場合、リコートする際のレジスト溶剤に被膜が溶解してしまい、被膜とレジストとがミキシングされてしまって、本来の特性が発現しないことがある。したがって、固体撮像素子用の膜形成用組成物には溶剤耐性が必須である。
【0059】
この結果は、自己架橋タイプのアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体が溶剤耐性に寄与していることを示しており、比較例1の場合はイソシアヌル酸骨格であるものの水酸基末端では溶剤耐性が不足し、比較例2の場合はイソシアヌル酸骨格であるもののエポキシ基末端では溶剤耐性が不足し、比較例3の場合は多官能なアルコキシシ
リル基を含有しているもののイソシアヌル酸骨格を有していないため溶剤耐性が不足することが明確化した。
【0060】
<エッジビードリンス試験>
エッジビードリンス(EBRと略す)はシリコンウェハ上に膜をスピンコートで製膜した後、仮乾燥までの間にレジスト溶剤でウェハのエッジ付近の膜を洗浄する工程である。EBRでウェハのエッジを洗浄できないと、塗布装置のウェハ搬送アームを汚染し、安定的に製造できない問題が発生する場合がある。EBR工程は固体撮像素子の膜作製工程で必須の工程である。
[実施例3]
実施例1で得た、V1のワニスを用いてEBR試験を行った。EBRは東京エレクトロン(株)製 クリーントラックアクト8を用いて行い、EBR溶剤はPGMEとPGMEAとが70:30(質量%)の割合で混合されたシンナーを用いた。
【0061】
その結果、V1のワニスを用いた場合、EBRは可能であり、ウェハエッジ部分の残渣は全く確認できなかった。
【0062】
[実施例4]
実施例2で得た、V2のワニスを用いてEBR試験を行った。EBRは東京エレクトロン(株)製 クリーントラックアクト8を用いて行い、EBR溶剤はPGMEとPGMEAとが70:30(質量%)の割合で混合されたシンナーを用いた。
【0063】
その結果、V2のワニスを用いた場合、EBRは可能であり、ウェハエッジ部分の残渣は全く確認できなかった。
[比較例4]
20mLナス型フラスコに参考例1で得られた8.0000gのD1を秤量し、次いで、10.5440gのPGMEを加え、自己架橋タイプのアルコキシシ
リル基を含有するイソシアヌル酸誘導体を加えずに、界面活性剤として大日本インキ化学工業(株)製のR−30−NをPGMEで希釈し1質量%とした溶液0.2440gを加え、室温で完全に均一になるまで混合し、固形分の総質量が13.0質量%のワニス(RV4と略す)を得た。
【0064】
得られたRV4を実施例
3と同様にEBR試験を行った。その結果、RV4はウェハエッジ部分に膜残渣が多発した。
【0065】
実施例
3と比較例4とを比較すると、ジルコニア粒子単独で膜を作製しようとするとEBRが不可となり、
自己架橋タイプのアルコキシシランを含有するイソシアヌル酸誘導体が混合されていると可能となることが分かった。この結果は、ジルコニア粒子がスピンコートの際に溶剤の揮発とともに縮合反応し、溶剤に溶解しにくくなることを、バインダーオリゴマーの自己架橋タイプのアルコキシシランを含有するイソシアヌル酸誘導体が抑制していると考えられる。
【0066】
<耐光性試験>
耐光性試験における、光照射は一般財団法人日本ウエザリングテストセンターにて行い、照度が38.7W/m
2、露光波長が320nm乃至400nmのキセノンアークランプを光源とした。試験機はスガ試験機(株)製 SX75−AP型を用いた。試験環境は温度が42±3℃、相対湿度が50±5%RHとした。
[実施例5]
実施例1で作製したV1の被膜の耐光性試験を行った。光照射時間は62.5時間とし、光照射前後の膜厚、屈折率、平均透過率を測定した。その結果を表3に示す。
[実施例6]
実施例2で作製したV2の被膜の耐光性試験を行った。光照射時間は62.5時間とし、光照射前後の膜厚、屈折率、平均透過率を測定した。その結果を表3に示す。
[比較例5]
比較例1で作製したRV1の被膜の耐光性試験を実施例
5と同様に行った。その結果を表3に示す。
【0067】
〔表3〕
表3 被膜の耐光性試験結果
――――――――――――――――――――――――――――――――――
膜厚 屈折率 平均透過率
[nm] [波長450nm] [%]
実施例5 試験前 200.2 1.6441 98.8
試験後 200.1 1.6440 98.8
実施例6 試験前 200.2 1.6459 98.7
試験後 200.1 1.6456 98.7
比較例5 試験前 200.5 1.6410 98.6
試験後 177.1 1.6288 94.5
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【0068】
表3の結果について実施例5及び実施例6と比較例5とを比較する。実施例5及び実施例6は62.5時間の光照射後に膜厚、屈折率、平均透過率の変化はなかった。本耐光性試験条件における62.5時間の光照射は500万Lux相当を意味しており、固体撮像素子用の膜形成組成物としては、非常に良好な耐光性を有しているといえる。一般的に固体撮像素子で用いられる被膜の耐光性は100万Lux以下である。
一方で、比較例5は膜厚が減少、屈折率が低下、透過率が低下する結果となった。この結果は、耐光性試験中に被膜中の未反応基である水酸基が反応した、若しくは残存する水酸基が着色した結果と考えられる。
以上のことから、本発明の組成物からなる膜は、高屈折率、高透明性、高耐熱性、高耐光性を一度に満たすことが可能であり、高耐光性が要求される固体撮像素子の平坦化膜として好適に用いることができる。