(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1のような汚染水に浮遊する微生物燃料電池においては、汚染水内の微生物を汚染水の処理に使用するものであり、汚染水とは別に用意した微生物(例えば、特許文献2に記載の培養した微生物)を汚染水の処理に使用するものではない。
【0006】
例えば、特許文献2に記載のようなグラフェン上に培養された微生物を汚染水の処理に使用したいという要求もある。
【0007】
そこで、本発明は、汚染水とは別に用意した微生物を用いて汚染水を処理し、汚染水に浮遊する汚染水処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる第一の汚染水処理装置は、汚染水に浮遊する汚染水処理装置であって、空気に接触し、前記汚染水を透過しない内側面と、前記汚染水に接触する外側面と、前記内側面に配置され、前記空気および前記汚染水に接触するカソード電極と、前記内側面と前記外側面との間に配置され、微生物を収容する微生物収容体と、前記微生物収容体に接触するアノード電極とを備え、前記カソード電極と前記アノード電極とは外部で電気的に接続されており、前記外側面は、前記汚染水を透過し、前記微生物収容体を通過させないように構成される。
【0009】
上記のように構成された第一の汚染水処理装置によれば、汚染水に浮遊する汚染水処理装置が提供される。内側面が、空気に接触し、前記汚染水を透過しない。外側面が、前記汚染水に接触する。カソード電極が、前記内側面に配置され、前記空気および前記汚染水に接触する。微生物収容体が、前記内側面と前記外側面との間に配置され、微生物を収容する。アノード電極が、前記微生物収容体に接触する。前記カソード電極と前記アノード電極とは外部で電気的に接続されている。前記外側面は、前記汚染水を透過し、前記微生物収容体を通過させない。
【0010】
本発明にかかる第二の汚染水処理装置は、汚染水処理モジュールを汚染水の深さ方向に連結し、全体としては汚染水に浮遊する汚染水処理装置であって、前記汚染水処理モジュールは、空気に接触し、前記汚染水を透過しない内側面と、前記汚染水に接触する外側面と、前記内側面に配置され、前記空気および前記汚染水に接触するカソード電極と、前記内側面と前記外側面との間に配置され、微生物を収容する微生物収容体と、前記微生物収容体に接触するアノード電極とを備え、前記カソード電極と前記アノード電極とは外部で電気的に接続されており、前記外側面は、前記汚染水を透過し、前記微生物収容体を通過させないように構成される。
【0011】
上記のように構成された第二の汚染水処理装置によれば、汚染水処理モジュールを汚染水の深さ方向に連結し、全体としては汚染水に浮遊する汚染水処理装置が提供される。前記汚染水処理モジュールにおいては、内側面が、空気に接触し、前記汚染水を透過しない。外側面が、前記汚染水に接触する。カソード電極が、前記内側面に配置され、前記空気および前記汚染水に接触する。微生物収容体が、前記内側面と前記外側面との間に配置され、微生物を収容する。アノード電極が、前記微生物収容体に接触する。前記カソード電極と前記アノード電極とは外部で電気的に接続されている。前記外側面は、前記汚染水を透過し、前記微生物収容体を通過させない。
【0012】
本発明にかかる第三の汚染水処理装置は、汚染水に浮遊する汚染水処理装置であって、前記汚染水に接触し、前記汚染水を透過する内側面と、前記汚染水に接触し、前記汚染水を透過しない外側面と、前記内側面と前記外側面との間に配置され、前記汚染水を透過しない中間面と、前記中間面に配置され、前記空気および前記汚染水に接触するカソード電極と、前記内側面と前記カソード電極との間に配置され、微生物を収容する微生物収容体と、前記微生物収容体に接触するアノード電極と、を備え、前記カソード電極と前記アノード電極とは外部で電気的に接続されており、前記内側面は前記微生物収容体を通過させず、前記カソード電極は、前記カソード電極と前記外側面との間に存在する空気に接触するように構成される。
【0013】
上記のように構成された第三の汚染水処理装置によれば、汚染水に浮遊する汚染水処理装置が提供される。内側面が、前記汚染水に接触し、前記汚染水を透過する。外側面が、前記汚染水に接触し、前記汚染水を透過しない。中間面が、前記内側面と前記外側面との間に配置され、前記汚染水を透過しない。カソード電極が、前記中間面に配置され、前記空気および前記汚染水に接触する。微生物収容体が、前記内側面と前記カソード電極との間に配置され、微生物を収容する。アノード電極が、前記微生物収容体に接触する。前記カソード電極と前記アノード電極とは外部で電気的に接続されている。前記内側面は前記微生物収容体を通過させない。前記カソード電極は、前記カソード電極と前記外側面との間に存在する空気に接触する。
【0014】
本発明にかかる第四の汚染水処理装置は、汚染水処理モジュールを汚染水の深さ方向に連結し、全体としては汚染水に浮遊する汚染水処理装置であって、前記汚染水処理モジュールは、前記汚染水に接触し、前記汚染水を透過する内側面と、前記汚染水に接触し、前記汚染水を透過しない外側面と、前記内側面と前記外側面との間に配置され、前記汚染水を透過しない中間面と、前記中間面に配置され、前記空気および前記汚染水に接触するカソード電極と、前記内側面と前記カソード電極との間に配置され、微生物を収容する微生物収容体と、前記微生物収容体に接触するアノード電極とを備え、前記カソード電極と前記アノード電極とは外部で電気的に接続されており、前記内側面は前記微生物収容体を通過させず、前記カソード電極は、前記カソード電極と前記外側面との間に存在する空気に接触するように構成される。
【0015】
上記のように構成された第四の汚染水処理装置によれば、汚染水処理モジュールを汚染水の深さ方向に連結し、全体としては汚染水に浮遊する汚染水処理装置が提供される。前記汚染水処理モジュールにおいては、内側面が、前記汚染水に接触し、前記汚染水を透過する。外側面が、前記汚染水に接触し、前記汚染水を透過しない。中間面が、前記内側面と前記外側面との間に配置され、前記汚染水を透過しない。カソード電極が、前記中間面に配置され、前記空気および前記汚染水に接触する。微生物収容体が、前記内側面と前記カソード電極との間に配置され、微生物を収容する。アノード電極が、前記微生物収容体に接触する。前記カソード電極と前記アノード電極とは外部で電気的に接続されている。前記内側面は前記微生物収容体を通過させない。前記カソード電極は、前記カソード電極と前記外側面との間に存在する空気に接触する。
【0016】
なお、本発明にかかる第一、第二、第三および第四の汚染水処理装置は、前記カソード電極が酸素還元触媒を有するようにしてもよい。
【0017】
なお、本発明にかかる第一、第二、第三および第四の汚染水処理装置は、前記アノード電極が導電性材料であるようにしてもよい。
【0018】
なお、本発明にかかる第一、第二、第三および第四の汚染水処理装置は、前記微生物収容体がグラフェン、多層グラフェン、酸化グラフェン還元体または多層酸化グラフェン還元体であるようにしてもよい。
【0019】
なお、本発明にかかる第一、第二、第三および第四の汚染水処理装置は、前記微生物収容体が黒鉛フェルト、膨張黒鉛、黒鉛ブラシまたは黒鉛グラニュールであるようにしてもよい。
【0020】
なお、本発明にかかる第一および第二の汚染水処理装置は、前記外側面がメッシュを有するようにしてもよい。
【0021】
なお、本発明にかかる第三および第四の汚染水処理装置は、前記内側面がメッシュを有するようにしてもよい。
【0022】
なお、本発明にかかる第一、第二、第三および第四の汚染水処理装置は、前記微生物収容体が前記汚染水を透過可能なものであり、導電性物質を有するようにしてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0025】
第一の実施形態
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1の使用態様の一例を示す図である。本発明の第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1は、中空円筒部材10、上部フランジ12a、下部フランジ12b、フロート14を備える。ただし、
図1において、上部フランジ12aは、フロート14により覆われて見えない。
【0026】
なお、汚染水処理装置1は、生物反応槽2の汚染水層2aに浮遊している。なお、汚染水層2aの上には空気層2bがある。なお、生物反応槽2は、下水を処理するための槽である。汚染水層2aは、有機物を多く含む、すなわち有機物により汚染された下水の層である。ただし、汚染水を溜めるものは、生物反応槽2に限らず、たとえば池であってもよい。
【0027】
フロート14は、汚染水処理装置1の上部に取り付けられており、汚染水層2aよりも比重が小さい。フロート14の浮力は、フロート14の頂面14a(
図3参照)を空気層2b内に維持するに足りるものである。なお、フロート14の材質は、例えば、発泡スチロールである。
【0028】
図2は、本発明の第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1の斜視図である。
図3は、本発明の第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1の断面図である。
図5は、本発明の第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1の平面図である。
【0029】
汚染水処理装置1は、中空円筒部材10、上部フランジ12a、下部フランジ12b、フロート14に加えて、さらに、アノード電極用貫通孔13、微生物収容体20、アノード電極30、カソード電極40を備える。中空円筒部材10は、内側面10a、外側面10bを有する。
【0030】
なお、図示の便宜上、
図2においてはカソード電極40を、
図3においてはアノード電極用貫通孔13、微生物収容体20、アノード電極30、カソード電極40を、
図5においてはアノード電極30を図示省略している。
【0031】
中空円筒部材10は、中空の円筒状の部材である。内側面10aは、中空円筒部材10の内側の側面であり、空気に接触し、汚染水を透過しない。外側面10bは、中空円筒部材10の外側の側面であり、汚染水層2aに接触する。
【0032】
上部フランジ12aは、中空円筒部材10の上部に配置されたフランジである。下部フランジ12bは、中空円筒部材10の下部に配置されたフランジである。上部フランジ12aは中空であるが、下部フランジ12bは中空ではなく中実である。中空円筒部材10の中空の部分の直径をD、高さをHとする。
【0033】
微生物収容体20は、中空円筒部材10の内側面10aと外側面10bとの間に配置され、微生物を収容する。微生物は、汚染水層2a中の有機物を分解して、電子を産生するものである。微生物収容体20は、例えば、電流生産菌がグラフェンの粒に挟まれるようにした粗密な凝集構造である(例えば、特許文献2を参照)。
図2の例では、縦1列につき5個のグラフェン凝集構造が6列図示されている。なお、微生物収容体20は、カーボンであってもよい。微生物収容体20は、汚染水を透過可能なものであり、しかも、導電性物質(例えば、グラフェンまたはカーボン)または非導電性物質(例えば、スポンジ)を有するものであればよい。微生物収容体20は、微生物を担持する担体であってもよい。
【0034】
アノード電極30は、導電性材料(例えば、黒鉛またはチタン)であり、微生物収容体20に接触する。アノード電極30は、上部フランジ12aおよび下部フランジ12bに垂直に延伸している。
【0035】
アノード電極用貫通孔13は、アノード電極30が上部フランジ12aまたは下部フランジ12bを貫通する孔である。
【0036】
カソード電極40は、酸素還元触媒(例えば白金)を有するものであり、内側面10aに配置されている。カソード電極40とアノード電極30とは外部で(例えば、外部の回路部材により)電気的に接続されている。なお、両者を電気的に接続する外部の回路部材(汚染水処理装置1外部の回路部材(例えば、導線や負荷など))は図示省略する(他の実施形態も同様)。カソード電極40は、例えば、酸素還元触媒を担持する。
【0037】
図4は、本発明の第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1の内側面10aおよびカソード電極40の斜視図(
図4(a))および
図4(a)のb−b断面図(
図4(b))である。カソード電極40の高さをhとすると、hの最大値はHとなる。内側面10aの上部と下部では、内側面10aのみが空気を包囲しているが、内側面10aの中央部では、内側面10aとカソード電極40とが空気を包囲している。カソード電極40の内側は空気に、外側が汚染水に接触している。
【0038】
なお、外側面10bは、汚染水を透過し、微生物収容体20を通過させない。例えば、外側面10bがメッシュである。例えば、メッシュの直径を30μmとすると、汚染水を透過し、微生物収容体20であるグラフェンの粒を通過させないようにすることができる。また、外側面10bが、メッシュと、メッシュの外側を部分的に覆うガード(例えば、ポリ塩化ビニルやアクリルの部材にスリットまたは孔を開けたもの)を有するようにしてもよい。
【0039】
次に、本発明の第一の実施形態の動作を説明する。
【0040】
汚染水層2aの汚染水が、汚染水処理装置1の外側面10bを透過して、微生物収容体20に到達する。微生物収容体20は汚染水に含まれる有機物を分解して、電子を産生する。産生された電子は、アノード電極30を流れて、図示省略した外部の回路部材を介して、カソード電極40へと流れる。これにより、汚染水処理装置1が汚染水を処理する、すなわち汚染水に含まれる有機物を分解することができる。
【0041】
本発明の第一の実施形態にかかる汚染水に浮遊する汚染水処理装置1によれば、汚染水とは別に用意した微生物収容体20を内側面10aと外側面10bとの間に配置し、しかも汚染水層2aの汚染水が外側面10bを透過して微生物収容体20に到達するので、汚染水とは別に用意した微生物を用いて汚染水を処理することができる。しかも、汚染水が、微生物収容体20を包囲する外側面10bの全面から取り込まれるので、微生物収容体20への有機物(汚染水に含まれている)の供給の効率が良い。
【0042】
また、本発明の第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1は、生物反応槽2の汚染水層2aに浮遊させれば、汚染水を処理できる。このため、汚染水を汚染水処理装置1に引き込むための水路の形成などが不要となり、汚染水の処理を手軽に行うことができる。
【0043】
また、本発明の第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1によれば、フロート14、中空円筒部材10および下部フランジ12bがいずれも(中空または中実の)円筒状なので、生物反応槽2の汚染水の流下機能をあまり損なわない。ただし、フロート14、中空円筒部材10および下部フランジ12b(フロート14等)が円筒状でなくても、楕円筒状でもかまわない。なお、汚染水の流下機能に着目して、フロート14等が円筒状または楕円筒状である旨を説明したが、フロート14等を、アノード電極30とカソード電極40との実装密度を高めるために矩形筒としてもよい。また、フロート14等を、筒の肉厚を薄くするために六角形筒としてもよい。
【0044】
また、本発明の第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1によれば、カソード電極40の高さhを最大値Hとすれば、カソード電極40の表面積を最大でπDHとすることができる(カソード電極40を、内側面10aに隙間なく配置した場合)。特許文献1のFig.3のように、カソード電極を内側面ではなく上部に配置した場合は、カソード電極の表面積をπD
2/4にしかできない。すなわち、H≧D/4とすることで、カソード電極40の表面積を従来(例えば、特許文献1)よりも広くすることができ、汚染水の処理の効率を良くすることができる。
【0045】
第二の実施形態
本発明の第二の実施形態にかかる汚染水処理装置1は、本発明の第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1と同様な汚染水処理モジュール1a、1b、1cを汚染水の深さ方向に連結したものである。
【0046】
図6は、本発明の第二の実施形態にかかる汚染水処理装置1の使用態様の一例を示す図である。本発明の第二の実施形態にかかる汚染水処理装置は、各汚染水処理モジュールの中空円筒部材10が3個、汚染水の深さ方向に連結している。
図6は
図1に比べて、汚染水層2aが深くなっているが、その分、中空円筒部材10を汚染水の深さ方向に連結して、汚染水処理の効率化を図っている。
【0047】
図7は、本発明の第二の実施形態にかかる汚染水処理装置1の斜視図である。
図8は、本発明の第二の実施形態にかかる汚染水処理装置1の断面図である。なお、本発明の第二の実施形態にかかる汚染水処理装置1の平面図は、
図5と同様である。以下、第一の実施形態と同様な部分は同一の番号を付して説明を省略する。
【0048】
なお、図示の便宜上、
図7においてはカソード電極40を、
図8においてはアノード電極用貫通孔13、微生物収容体20、アノード電極30、カソード電極40を図示省略している。
【0049】
汚染水処理モジュール1a、1b、1c(
図8参照)は、本発明の第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1と同様である。
【0050】
ただし、汚染水処理モジュール1aは、下部フランジ12bが中空円筒である。汚染水処理モジュール1bは、フロート14を有しておらず、下部フランジ12bが中空円筒である。汚染水処理モジュール1cは、フロート14を有していない。ただし、汚染水処理モジュール1cの下部フランジ12bが中実円筒であることは第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1と同様である。
【0051】
また、汚染水処理モジュール1aの下部フランジ12bと、汚染水処理モジュール1bの上部フランジ12aとは、ボルト15とナット16により連結されている。汚染水処理モジュール1bの下部フランジ12bと、汚染水処理モジュール1cの上部フランジ12aとは、ボルト15とナット16により連結されている。ただし、汚染水処理モジュール1a、1b、1cの連結手段は、必ずしもボルトとナットに限定されない。例えば、汚染水の流下機能の維持の観点から、ソケットによる連結も考えられる。
【0052】
本発明の第二の実施形態の動作は、第一の実施形態の動作と同様であり、説明を省略する。なお、汚染水処理モジュール1aは浮遊しており、汚染水処理モジュール1b、1cは潜水しているが、汚染水処理装置1全体としては汚染水に浮遊している。
【0053】
本発明の第二の実施形態にかかる汚染水処理装置1によれば、第一の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0054】
しかも、本発明の第二の実施形態にかかる汚染水処理装置1によれば、汚染水層2aが深くなっている場合であっても(
図6は
図1に比べて、汚染水層2aが深くなっている)、その分、汚染水処理モジュール1a、1b、1cを汚染水の深さ方向に連結して、汚染水処理の効率化を図ることができる。
【0055】
また、本発明の第二の実施形態にかかる汚染水処理装置1によれば、カソード電極40の高さhの最大値はH’(≒3H)であるが(
図3、
図8参照)、カソード電極40の表面積を最大でπDH’とすることができる(カソード電極40を、内側面10aに隙間なく配置した場合)。特許文献1のFig.3のように、カソード電極を内側面ではなく上部に配置した場合は、カソード電極の表面積をπD
2/4にしかできない。すなわち、H’≧D/4とすることで、カソード電極40の表面積を従来(例えば、特許文献1)よりも広くすることができ、汚染水の処理の効率を良くすることができる。
【0056】
第三の実施形態
本発明の第三の実施形態にかかる汚染水処理装置1は、本発明の第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1とは逆に、内側面10cに汚染水が接触するものである。
【0057】
図9は、本発明の第三の実施形態にかかる汚染水処理装置1の使用態様の一例を示す図である。本発明の第三の実施形態にかかる汚染水処理装置1は、中空円筒部材10、蓋部材12c、底部材12d、フロート14を備える。ただし、
図9において、蓋部材12cは、フロート14により覆われて見えない。
【0058】
なお、汚染水処理装置1は、生物反応槽2の汚染水層2aに浮遊している。なお、汚染水層2aの上には空気層2bがある。なお、生物反応槽2は、下水を処理するための槽である。汚染水層2aは、有機物を多く含む、すなわち有機物により汚染された下水の層である。ただし、汚染水を溜めるものは、生物反応槽2に限らず、たとえば池であってもよい。
【0059】
フロート14は、汚染水処理装置1の上部に取り付けられており、汚染水層2aよりも比重が小さいものである。フロート14の浮力は、フロート14の頂面14a(
図11参照)を空気層2b内に維持するに足りるものである。なお、フロート14の材質は、例えば、発泡スチロールである。
【0060】
図10は、本発明の第三の実施形態にかかる汚染水処理装置1の斜視図である。
図11は、本発明の第三の実施形態にかかる汚染水処理装置1の断面図である。
図13は、本発明の第三の実施形態にかかる汚染水処理装置1の平面図である。
【0061】
汚染水処理装置1は、中空円筒部材10、蓋部材12c、底部材12d、フロート14に加えて、さらに、アノード電極用貫通孔13、微生物収容体20、アノード電極30、カソード電極40を備える。中空円筒部材10は、内側面10c、外側面10d、補強部材(中間面)10eを有する。
【0062】
なお、図示の便宜上、
図10においてはカソード電極40を、
図11においてはアノード電極用貫通孔13、微生物収容体20、アノード電極30、カソード電極40を、
図13においてはアノード電極30を図示省略している。また、
図13では、図示の便宜上、補強部材10eおよびカソード電極40を透視して図示している。
【0063】
中空円筒部材10は、中空の円筒状の部材である。内側面10cは、中空円筒部材10の内側の側面であり、汚染水層2aに接触し、汚染水を透過する。外側面10dは、中空円筒部材10の外側の側面であり、汚染水層2aに接触するが、汚染水を透過しない。
【0064】
蓋部材12cは、中空円筒部材10の上部に配置された蓋である。底部材12dは、中空円筒部材10の下部に配置された底である。蓋部材12cも底部材12dも中空である。中空円筒部材10の中空の部分の直径をD、高さをH1とする。
【0065】
カソード電極40は、酸素還元触媒(例えば白金)を有するものであり、内側面10cと外側面10dとの間に配置されている。カソード電極40は、内側面10cと外側面10dとの間に配置された補強部材10eに配置されている。補強部材10eは、例えばポリ塩化ビニルまたはアクリルの部材であり、汚染水を透過させないものである。カソード電極40とアノード電極30とは外部で(例えば、外部の回路部材により)電気的に接続されている。なお、両者を電気的に接続する外部の回路部材(汚染水処理装置1外部の回路部材(例えば、導線や負荷など))は図示省略する(他の実施形態も同様)。カソード電極40は、例えば、酸素還元触媒を担持する。
カソード電極40は、カソード電極40と外側面10dとの間に存在する空気に接触する。
【0066】
カソード電極40と外側面10dとの間の空間は、空気穴18により、外気とつながっており、空気を取り込むことができる。なお、空気穴18は、蓋部材12cおよびフロート14を貫通している。
【0067】
微生物収容体20は、内側面10cとカソード電極40との間に配置され、微生物を収容する。微生物は、汚染水層2a中の有機物を分解して、電子を産生するものである。微生物収容体20は、例えば、電流生産菌がグラフェンの粒に挟まれるようにした粗密な凝集構造である(例えば、特許文献2を参照)。ただし、微生物収容体20は、カーボンであってもよい。微生物収容体20は、汚染水を透過可能なものであり、しかも、導電性物質(例えば、グラフェンまたはカーボン)または非導電性物質(例えば、スポンジ)を有するものであればよい。微生物収容体20は、微生物を担持する担体であってもよい。
【0068】
アノード電極30は、導電性材料(例えば、黒鉛またはチタン)であり、微生物収容体20に接触する。アノード電極30は、蓋部材12cおよび底部材12dに垂直に延伸している。
【0069】
アノード電極用貫通孔13は、アノード電極30が蓋部材12cまたは底部材12dを貫通する孔である。
【0070】
図12は、本発明の第三の実施形態にかかる汚染水処理装置1の補強部材10eおよびカソード電極40の斜視図(
図12(a))および
図12(a)のb−b断面図(
図12(b))である。カソード電極40の高さをh1とすると、h1の最大値はH1となる。補強部材10eの上部と下部では、補強部材10eのみが汚染水を包囲しているが、補強部材10eの中央部では、補強部材10eとカソード電極40とが汚染水を包囲している。カソード電極40の内側が汚染水に、外側が空気に接触している。
【0071】
なお、内側面10cは、汚染水を透過し、微生物収容体20を通過させない。例えば、内側面10cがメッシュである。例えば、メッシュの直径を30μmとすると、汚染水を透過し、微生物収容体20であるグラフェンの粒を通過させないようにすることができる。また、内側面10cが、メッシュと、メッシュの内側(汚染水に接触する側)を部分的に覆うガード(例えば、ポリ塩化ビニルやアクリルの部材にスリットまたは孔を開けたもの)を有するようにしてもよい。
【0072】
次に、本発明の第三の実施形態の動作を説明する。
【0073】
汚染水層2aの汚染水が、汚染水処理装置1の内側面10cを透過して、微生物収容体20に到達する。微生物収容体20は汚染水に含まれる有機物を分解して、電子を産生する。産生された電子は、アノード電極30を流れて、図示省略した外部の回路部材を介して、カソード電極40へと流れる。これにより、汚染水処理装置1が汚染水を処理する、すなわち汚染水に含まれる有機物を分解することができる。
【0074】
本発明の第三の実施形態にかかる汚染水に浮遊する汚染水処理装置1によれば、汚染水とは別に用意した微生物収容体20を内側面10cとカソード電極40との間に配置し、しかも汚染水層2aの汚染水が内側面10cを透過して微生物収容体20に到達するので、汚染水とは別に用意した微生物を用いて汚染水を処理することができる。しかも、汚染水が、内側面10cの全面から取り込まれるので、微生物収容体20への有機物(汚染水に含まれている)の供給の効率が良い。
【0075】
また、本発明の第三の実施形態にかかる汚染水処理装置1は、生物反応槽2の汚染水層2aに浮遊させれば、汚染水を処理できる。このため、汚染水を汚染水処理装置1に引き込むための水路の形成などが不要となり、汚染水の処理を手軽に行うことができる。
【0076】
また、本発明の第三の実施形態にかかる汚染水処理装置1によれば、フロート14、中空円筒部材10および下部フランジ12bがいずれも(中空または中実の)円筒状なので、生物反応槽2の汚染水の流下機能をあまり損なわない。ただし、フロート14、中空円筒部材10および下部フランジ12b(フロート14等)が円筒状でなくても、楕円筒状でもかまわない。なお、汚染水の流下機能に着目して、フロート14等が円筒状または楕円筒状である旨を説明したが、フロート14等を、アノード電極30とカソード電極40との実装密度を高めるために矩形筒としてもよい。また、フロート14等を、筒の肉厚を薄くするために六角形筒としてもよい。
【0077】
また、本発明の第三の実施形態にかかる汚染水処理装置1によれば、第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1よりも、カソード電極40の直径を大きくとることができるので、カソード電極40の表面積を、第一の実施形態にかかる汚染水処理装置1の場合よりも、大きくすることができ、汚染水の処理の効率を良くすることができる。
【0078】
第四の実施形態
本発明の第四の実施形態にかかる汚染水処理装置1は、本発明の第三の実施形態にかかる汚染水処理装置1と同様な汚染水処理モジュール1d、1e、1fを汚染水の深さ方向に連結したものである。
【0079】
図14は、本発明の第四の実施形態にかかる汚染水処理装置1の使用態様の一例を示す図である。本発明の第四の実施形態にかかる汚染水処理装置は、各汚染水処理モジュールの中空円筒部材10が3個、汚染水の深さ方向に連結している。
図14は
図9に比べて、汚染水層2aが深くなっているが、その分、中空円筒部材10を汚染水の深さ方向に連結して、汚染水処理の効率化を図っている。
【0080】
図15は、本発明の第四の実施形態にかかる汚染水処理装置1の斜視図である。
図16は、本発明の第四の実施形態にかかる汚染水処理装置1の断面図である。なお、本発明の第四の実施形態にかかる汚染水処理装置1の平面図は
図13と同様である。以下、第三の実施形態と同様な部分は同一の番号を付して説明を省略する。
【0081】
なお、図示の便宜上、
図15においてはカソード電極40を、
図16においてはアノード電極用貫通孔13、微生物収容体20、アノード電極30、カソード電極40を図示省略している。
【0082】
汚染水処理モジュール1d、1e、1f(
図16参照)は、本発明の第三の実施形態にかかる汚染水処理装置1と同様である。ただし、汚染水処理モジュール1e、1fは、フロート14を有していない。
【0083】
また、汚染水処理モジュール1dと汚染水処理モジュール1eとは図示省略したボルトとナットにより連結されている。汚染水処理モジュール1eと汚染水処理モジュール1fとは図示省略したボルトとナットにより連結されている。ただし、汚染水処理モジュール1d、1e、1fの連結手段は、必ずしもボルトとナットに限定されない。例えば、汚染水の流下機能の維持の観点から、ソケットによる連結も考えられる。
【0084】
本発明の第四の実施形態の動作は、第三の実施形態の動作と同様であり、説明を省略する。なお、汚染水処理モジュール1dは浮遊しており、汚染水処理モジュール1e、1fは潜水しているが、汚染水処理装置1全体としては汚染水に浮遊している。
【0085】
本発明の第四の実施形態にかかる汚染水処理装置1によれば、第三の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0086】
しかも、本発明の第四の実施形態にかかる汚染水処理装置1によれば、汚染水層2aが深くなっている場合であっても(
図14は
図9に比べて、汚染水層2aが深くなっている)、その分、汚染水処理モジュール1d、1e、1fを汚染水の深さ方向に連結して、汚染水処理の効率化を図ることができる。
【0087】
また、本発明の第四の実施形態にかかる汚染水処理装置1によれば、カソード電極40の高さhの最大値はH1’(≒3H1)であるが(
図11、
図16参照)、カソード電極40の表面積を最大でπDH’とすることができる(カソード電極40を隙間なく配置した場合)。特許文献1のFig.3のように、カソード電極を内側面ではなく上部に配置した場合は、カソード電極の表面積をπD
2/4にしかできない。すなわち、H1’≧D/4とすることで、カソード電極40の表面積を従来(例えば、特許文献1)よりも広くすることができ、汚染水の処理の効率を良くすることができる。
【0088】
なお、これまでの実施形態においては、微生物収容体20が有する導電性物質の一例としてグラフェンを挙げていた。しかし、微生物収容体20が有する導電性物質は、グラフェンに限定されるものではなく、例えば、多層グラフェン、酸化グラフェン還元体または多層酸化グラフェン還元体であってもよいし、黒鉛フェルト、膨張黒鉛、黒鉛ブラシまたは黒鉛グラニュールであってもよい。