特許第6358658号(P6358658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6358658ブロックチェーン生成装置、ブロックチェーン生成方法、ブロックチェーン検証装置、ブロックチェーン検証方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358658
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】ブロックチェーン生成装置、ブロックチェーン生成方法、ブロックチェーン検証装置、ブロックチェーン検証方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/06 20120101AFI20180709BHJP
   H04L 9/32 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   G06Q20/06
   H04L9/00 675B
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-219426(P2015-219426)
(22)【出願日】2015年11月9日
(65)【公開番号】特開2017-91149(P2017-91149A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2017年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504193837
【氏名又は名称】国立大学法人室蘭工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 大喜
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 明人
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】中平 篤
(72)【発明者】
【氏名】藤村 滋
(72)【発明者】
【氏名】岸上 順一
【審査官】 山本 雅士
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0046337(US,A1)
【文献】 淵田 康之,イノベーションと金融,野村資本市場クォータリー 2015年秋号 第19巻 第2号 Nomura Capital Markets Quarterly,日本,株式会社野村資本市場研究所,2015年11月 1日,第19巻 第2号,11〜35,ISSN:2185-4629
【文献】 FinTech 金融を変えるのは銀行ではない,日経コンピュータ,日本,日経BP社,2015年 8月 6日,第892号,28〜31,ISSN;0285-4619
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
H04L 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトランザクション生成装置によって生成されたトランザクションデータを含むブロックを連結したブロックチェーンデータに、新たなブロックを連結して、新たなブロックチェーンデータを生成するブロックチェーン生成装置であって、
前記ブロックチェーンデータと、前記ブロックチェーンに含まれていないトランザクションデータとを含む共有データを取得する同期手段と、
前記ブロックチェーンデータの前記トランザクションデータのうち、当該ブロックチェーン生成装置を用いる生成者の識別子に関連するトランザクションデータから、前記生成者の取引パターン量を算出する取引パターン量算出手段と、
前記取引パターン量算出手段が算出した前記取引パターン量に基づいて、前記生成者が、前記新たなブロックチェーンデータを生成する資格を有しているか否かを判定するブロック生成条件確認手段と、
前記ブロック生成条件確認手段が資格を有していると判定した場合、前記共有データを参照して、前記新たなブロックチェーンの生成を試みるブロックチェーン生成手段
とを備えることを特徴とするブロックチェーン生成装置。
【請求項2】
前記取引パターン量は、前記生成者の信用の指標である
ことを特徴とする請求項1に記載のブロックチェーン生成装置。
【請求項3】
前記取引パターン量は、
前記生成者の識別子に関連するトランザクションデータにおける、取引相手の識別子の各組み合わせにおける、前記取引相手の識別子の合計である
ことを特徴とする請求項1に記載のブロックチェーン生成装置。
【請求項4】
前記取引パターン量は、
前記生成者の識別子に関連するトランザクションデータにおける、取引相手の識別子のユニーク数である
ことを特徴とする請求項1に記載のブロックチェーン生成装置。
【請求項5】
複数のトランザクション生成装置によって生成されたトランザクションデータを含むブロックを連結したブロックチェーンデータに、新たなブロックを連結して、新たなブロックチェーンデータを生成するブロックチェーン生成方法であって、
コンピュータが、前記ブロックチェーンデータと、前記ブロックチェーンに含まれていないトランザクションデータとを含む共有データを取得するステップと、
前記コンピュータが、前記ブロックチェーンデータの前記トランザクションデータのうち、当該コンピュータを用いる生成者の識別子に関連するトランザクションデータから、前記生成者の取引パターン量を算出すステップと、
前記コンピュータが、前記生成者の取引パターン量に基づいて、前記生成者が、前記新たなブロックチェーデータンを生成する資格を有しているか否かを判定するステップと、
前記コンピュータが、前記生成者が、前記新たなブロックチェーンデータを生成する資格を有していると判定した場合、前記共有データを参照して、前記新たなブロックチェーンの生成を試みるステップ
とを備えることを特徴とするブロックチェーン生成方法。
【請求項6】
複数のトランザクション生成装置によって生成されたトランザクションデータを含むブロックを連結したブロックチェーンデータを検証するブロックチェーン検証装置であって、
前記ブロックチェーンデータを含む共有データを取得する同期手段と、
前記ブロックチェーンデータの前記トランザクションデータのうち、前記ブロックチェーンデータを生成した装置を用いる生成者の識別子に関連するトランザクションデータから、前記生成者の取引パターン量を算出する取引パターン量算出手段と、
前記取引パターン量算出手段が算出した前記取引パターン量に基づいて、前記生成者が、前記ブロックチェーンデータを生成する資格を有しているか否かを判定するブロック生成条件検証手段と、
前記ブロック生成条件検証手段が資格を有していると判定した場合、前記ブロックチェーンデータを承認するブロックチェーン検証手段
とを備えることを特徴とするブロックチェーン検証装置。
【請求項7】
複数のトランザクション生成装置によって生成されたトランザクションデータを含むブロックを連結したブロックチェーンデータを検証するブロックチェーン検証方法であって、
コンピュータが、前記ブロックチェーンデータを含む共有データを取得するステップと、
前記コンピュータが、前記ブロックチェーンデータの前記トランザクションデータのうち、前記ブロックチェーンデータを生成した装置を用いる生成者の識別子に関連するトランザクションデータから、前記生成者の取引パターン量を算出するステップと、
前記コンピュータが、前記生成者の取引パターン量に基づいて、前記生成者が、前記ブロックチェーンデータを生成する資格を有しているか否かを判定するステップと、
前記コンピュータが、前記生成者が、前記ブロックチェーンデータを生成する資格を有していると判定した場合、前記ブロックチェーンデータを承認するステップ
とを備えることを特徴とするブロックチェーン検証方法。
【請求項8】
コンピュータに、請求項1ないし請求項4および請求項6のいずれか1項に記載の手段として機能させるためのプログラム。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のトランザクション生成装置によって生成されたトランザクションデータを含むブロックを連結したブロックチェーンデータを生成するブロックチェーン生成装置およびブロックチェーン生成方法、ブロックチェーンデータを検証するブロックチェーン検証装置およびブロックチェーン検証方法、ならびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビットコイン(登録商標)などのデジタル仮想通貨が普及しつつある。このような仮想通貨では、中央集権的な管理を必要とせずに、信頼性を担保可能な仕組みが導入されている。ビットコイン(登録商標)などの仮想通貨において、ブロックチェーンと呼ばれる技術が用いられている。ブロックチェーン技術において、参加者間でやり取りされる情報の信頼性は、参加者全体で形成されるネットワーク内での合意形成のプロセスによって担保され、かつ、改ざんや二重使用などの不正を系全体で防ぐことで、ブロックチェーンの健全性が保たれる。ブロックチェーンは、参加者間の仮想通貨の取引情報(トランザクション)がブロックと呼ばれる単位でまとめられたものである。ブロックチェーンは、P2P(Peer To Peer)ネットワークにおいて参加者が共有する一つの巨大な元帳として機能する。
【0003】
非特許文献1によれば、ブロックチェーンでは、デジタル署名を図2のように使用し、署名の連鎖によりコインの取引情報を表現する。
【0004】
ところでブロックチェーンの仕組みによるデジタル仮想通貨では、ネットワークに参加する一つの端末が代表してネットワーク内にブロードキャストされた取引データをまとめて承認して、その取引情報を含めたブロックを生成し、他の端末に通知する。また、このプロセスに不正がないことを、システム全体、より具体的には、ブロックを生成する端末以外の複数の端末で検証する。ブロックを生成する端末は、ブロックの生成においてコストを必要とするものの、ブロックを生成した報酬として新規のコインを得ることが出来るため、ブロック生成の権利を得ようと参加者間では競争的プロセスが働く。
【0005】
ここで、同時に複数の端末がブロックを生成すると、ブロックチェーンが分岐する可能性があるが、その後より長くブロックを伸ばしたチェーンが正式なチェーンとされる。即ち、最も生成コストをかけたブロックチェーンが、共有される唯一のブロックチェーンとして選ばれる。従って、攻撃者が改ざんや二重使用を行うためには、他のブロックチェーンよりも長くブロックをつながなければならないので、攻撃者はその分多くのコストをかける必要があり、攻撃が困難となる。
【0006】
ブロックを生成する際に、参加者が提供するコストに関して、複数の手法が提案されている。例えば、Proof of Work (PoW)と呼ばれる手法や、Proof of Stake (PoS)と呼ばれる手法が提案されている。PoWでは、数学的な問題をいち早く解いた参加者がブロックを生成する。問題を解くために、参加者は計算機パワーをコストとして提供することとなる。一方で、PoWにおいて、報酬を得るためだけに問題を解くという非生産的であり、電力資源の浪費する問題がある。
【0007】
このような問題を解決するために、PoWに代替する手法としてPoSが提案されている。PoSは、数学的な条件に当てはまる参加者に、ブロックを生成する権利が与えられる。条件に当てはまるか否かを決める難易度は、参加者の所持するコインの貯蓄量に応じて調整されることが知られている(Kourosh Davarpanah , Dan Kaufman, Ophelie Pubellier “NeuCoin: the First Secure, Cost-efficient and Decentralized Cryptocurrency”、[online]、2015年6月15日、2015年10月20日検索、インターネット<URL: http://www.neucoin.org/en/whitepaper/download>)。具体的には、PoSでは、数学的な条件に当てはまる参加者に、ブロックを生成する権利(資格)が与えられる。条件の難易度は参加者のコインの所持量に応じて調整されるので、コインの貯蓄量が多いほどブロックが生成しやすい。具体的には、参加者のアドレスと前ブロックのハッシュ値と現在時刻を含めてハッシュ値を取り、そのハッシュ値がコインの貯蓄量に比例する値よりも小さくなる条件の時に、その参加者がブロックを生成する権利を持つ。条件の判定は現在時刻をパラメータに含めることにより、1秒に1回実施される。このようなPoSにおいて、参加者は、大量のコインを保持するリスクをコストとして提供している。
【0008】
一方でブロックチェーンには、不正に支払いを行ったり過去の履歴を改ざんしたりするために、「51%攻撃」と呼ばれる攻撃方法が存在する。この攻撃方法では、悪意のある攻撃者が全体のブロック生成速度の51%以上を支配すると、正規のブロックの生成速度を上回るため、理論的には不正が成功すると考えられている。ブロック生成速度はPoWやPoSにおける提供リソースの大きさに比例している。例えばPoWでは計算機パワーの51%以上を、PoSでは全コイン量の51%以上を独占することで、攻撃が実現すると考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】斉藤賢爾,ビットコイン−人間不在のデジタル巨石貨幣,WIDEテクニカルレポート
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
昨今では、計算機パワーを集結させ組織的にブロック生成を行うマイニングプールや、ASICなどを用いたPoW専用の集積回路の登場を背景に、PoWにおいて、計算機リソースの51%以上が独占されることが現実味を帯びてきている。
【0011】
一方、後継のアルゴリズムのPoSでは、コイン資産の独占に要するコストが計算機リソースの独占よりもはるかに高コストであり、また攻撃によりコイン価格の暴落が予測される。従って、PoSでは、コストをかけて独占したコインの価値がなくなるリスクが大きいため、攻撃者が51%攻撃を実施する動機が薄く、抑止力があると考えられていた。
【0012】
ここで、ブロックチェーンは参加者全ての取引の内容を記録した一つの元帳であると捉えると、通貨以外の様々な取引に応用することが考えられる。例えば、複数者間で契約書を交わす際の証跡としてブロックチェーンを用いる方法が考えられる。契約書の内容をメタデータとして、コインの取引を絡めて、トランザクションのデータに含めて取引を行うことで、契約を交わした証跡をブロックチェーンに書き込むことが可能になる。
【0013】
しかしながら、ブロックチェーンに契約の証跡を記録する方法において、PoSを採用した場合、問題が生じる場合がある。従来の仮想通貨のPoSにおいては、攻撃者がコインの不正取引や履歴の改ざんを目的として攻撃を仕掛けると、その攻撃のためにむしろ独占したコインの価値が暴落するというリスクが攻撃の抑止力として働いていた。しかしながら、契約の証跡を記録する方法において、攻撃者の目的はコインの不正利用よりも、ブロックチェーンに書き込んだ契約の取り消しや内容の書き換えにあると考えられる。すなわちこのような方法においてPoSを導入した場合、コインの価値を暴落させても、契約を取り消すことができれば、暴落で失ったコインの価値を上回る利益を得るといった状況が成り立つため、従来のような抑止力が働かず、攻撃の動機が生まれる可能性がある。
【0014】
従って本発明の目的は、より安全で信頼性の高いデジタル仮想通貨のブロックチェーンデータを生成可能な、ブロックチェーンデータを生成するブロックチェーン生成装置およびブロックチェーン生成方法、ブロックチェーンデータを検証するブロックチェーン検証装置およびブロックチェーン検証方法、ならびにプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第1の特徴は、複数のトランザクション生成装置によって生成されたトランザクションデータを含むブロックを連結したブロックチェーンデータに、新たなブロックを連結して、新たなブロックチェーンデータを生成するブロックチェーン生成装置に関する。本発明の第1の特徴に係るブロックチェーン生成装置は、ブロックチェーンデータと、ブロックチェーンに含まれていないトランザクションデータとを含む共有データを取得する同期手段と、ブロックチェーンデータのトランザクションデータのうち、当該ブロックチェーン生成装置を用いる生成者の識別子に関連するトランザクションデータから、生成者の取引パターン量を算出する取引パターン量算出手段と、取引パターン量算出手段が算出した取引パターン量に基づいて、生成者が、新たなブロックチェーンデータを生成する資格を有しているか否かを判定するブロック生成条件確認手段と、ブロック生成条件確認手段が資格を有していると判定した場合、共有データを参照して、新たなブロックチェーンの生成を試みるブロックチェーン生成手段とを備える。
【0016】
ここで、取引パターン量は、生成者の信用の指標である。
【0017】
取引パターン量は、生成者の識別子に関連するトランザクションデータにおける、取引相手の識別子の各組み合わせにおける、取引相手の識別子の合計であっても良い。
【0018】
取引パターン量は、生成者の識別子に関連するトランザクションデータにおける、取引相手の識別子のユニーク数であっても良い。
【0019】
本発明の第2の特徴は、複数のトランザクション生成装置によって生成されたトランザクションデータを含むブロックを連結したブロックチェーンデータに、新たなブロックを連結して、新たなブロックチェーンデータを生成するブロックチェーン生成方法に関する。本発明の第2の特徴に係るブロックチェーン生成方法は、コンピュータが、ブロックチェーンデータと、ブロックチェーンに含まれていないトランザクションデータとを含む共有データを取得するステップと、コンピュータが、ブロックチェーンデータのトランザクションデータのうち、当該コンピュータを用いる生成者の識別子に関連するトランザクションデータから、生成者の取引パターン量を算出すステップと、コンピュータが、生成者の取引パターン量に基づいて、生成者が、新たなブロックチェーデータンを生成する資格を有しているか否かを判定するステップと、コンピュータが、生成者が、新たなブロックチェーンデータを生成する資格を有していると判定した場合、共有データを参照して、新たなブロックチェーンの生成を試みるステップとを備える。
【0020】
本発明の第3の特徴は、複数のトランザクション生成装置によって生成されたトランザクションデータを含むブロックを連結したブロックチェーンデータを検証するブロックチェーン検証装置に関する。本発明の第3の特徴に係るブロックチェーン検証装置は、ブロックチェーンデータを含む共有データを取得する同期手段と、ブロックチェーンデータのトランザクションデータのうち、ブロックチェーンデータを生成した装置を用いる生成者の識別子に関連するトランザクションデータから、生成者の取引パターン量を算出する取引パターン量算出手段と、取引パターン量算出手段が算出した取引パターン量に基づいて、生成者が、ブロックチェーンデータを生成する資格を有しているか否かを判定するブロック生成条件検証手段と、ブロック生成条件検証手段が資格を有していると判定した場合、ブロックチェーンデータを承認するブロックチェーン検証手段とを備える。
【0021】
本発明の第4の特徴は。複数のトランザクション生成装置によって生成されたトランザクションデータを含むブロックを連結したブロックチェーンデータを検証するブロックチェーン検証方法に関する。本発明の第4の特徴に係るブロックチェーン検証方法は、コンピュータが、ブロックチェーンデータを含む共有データを取得するステップと、コンピュータが、ブロックチェーンデータのトランザクションデータのうち、ブロックチェーンデータを生成した装置を用いる生成者の識別子に関連するトランザクションデータから、生成者の取引パターン量を算出するステップと、コンピュータが、生成者の取引パターン量に基づいて、生成者が、ブロックチェーンデータを生成する資格を有しているか否かを判定するステップと、コンピュータが、生成者が、ブロックチェーンデータを生成する資格を有していると判定した場合、ブロックチェーンデータを承認するステップとを備える。
【0022】
本発明の第5の特徴は、コンピュータを、本発明の第1の特徴および第3の特徴に記載の各手段として機能させるためのプログラムに関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、より安全で信頼性の高いデジタル仮想通貨のブロックチェーンデータを生成可能な、ブロックチェーンデータを生成するブロックチェーン生成装置およびブロックチェーン生成方法、ブロックチェーンデータを検証するブロックチェーン検証装置およびブロックチェーン検証方法、ならびにプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態に係る取引支援システムのシステム構成を説明する図である。
図2】一般的な仮想通貨における署名を説明する図である。
図3】一般的な仮想通貨におけるブロックチェーンを説明する図である。
図4】本発明の実施の形態に係るトランザクション生成装置のハードウエア構成と機能ブロックを説明する図である。
図5】本発明の実施の形態に係るブロックチェーン生成装置のハードウエア構成と機能ブロックを説明する図である。
図6】本発明の実施の形態に係るブロックチェーン生成装置によるブロックチェーン生成処理を説明するフローチャートである。
図7】本発明の実施の形態に係るブロックチェーン検証装置のハードウエア構成と機能ブロックを説明する図である。
図8】本発明の実施の形態に係るブロックチェーン検証装置によるブロックチェーン検証処理を説明するフローチャートである。
図9】本発明の実施の形態に係る取引支援システムにおいて用いられるブロック承認方法データのブレンドパターンの一例を説明する図である。
図10】本発明の実施の形態に係る取引支援システムにおける、取引パターン量の算出の一例を説明する図である。
図11】本発明の実施の形態に係る取引支援システムにおける、取引パターン量算出手段による取引パターン量算出処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
【0026】
(取引支援システム)
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る取引支援システム5を説明する。取引支援システム5は、複数のコンピュータを備え、各コンピュータは、各コンピュータに設けられた通信制御装置およびP2Pネットワーク4を介して、自律分散的に接続されている。なお、図1に示す取引支援システム5において接続されるコンピュータの数は、一例であって、これに限るものではない。
【0027】
取引支援システム5を構成する各コンピュータに、デジタル仮想通貨における取引を実現するためのプログラムがインストールされる。各コンピュータは、それぞれ、P2Pネットワーク4を介して、ブロックチェーンデータとトランザクションデータを取得し、ネットワークに参加する端末群全体が、不正を監視し、唯一のブロックチェーンを共有する。
【0028】
各コンピュータは、取引支援システム5における各場面における役割に応じて、ブロックチェーン生成装置1として機能したり、ブロックチェーン検証装置2として機能したり、トランザクション生成装置3として機能したりする。
【0029】
本発明の実施の形態において、取引支援システム5における仮想通貨を利用する者を、「参加者」と記載する。ブロックチェーン生成装置を用いる参加者を、「生成者」と記載する。
【0030】
ブロックチェーン生成装置1は、所定の条件を満たした場合、複数のトランザクション生成装置3によって生成されたトランザクションデータを含むブロックを連結した既存のブロックチェーンデータに、新たなブロックを連結して、新たなブロックチェーンデータを生成する。新たなブロックは、既存のブロックチェーンの生成後に発生したトランザクションのデータを含む。ブロックチェーン生成装置1が生成した新たなブロックチェーンデータは、P2Pネットワーク4を介して、他の端末に共有される。
【0031】
ブロックチェーン検証装置2は、ブロックチェーン生成装置1が生成したブロックチェーンデータを検証する。ブロックチェーン検証装置2は、複数のトランザクション生成装置3によって生成されたトランザクションデータを含むブロックを連結したブロックチェーンデータを検証する。ブロックチェーン検証装置2が検証した結果は、P2Pネットワーク4を介して、他の端末に共有される。
【0032】
本発明の実施の形態に係る取引支援システム5において、所定のブロックの完全な取引の完了には、所定のブロックが連結され承認された後に一定数のブロックが続き、これらの各ブロックが連結され検証されることを要する。例えば、あるブロックAが承認されブロックチェーンに連結された後、5つの連続するブロックが認証され連結された場合、すなわち、6個の連続するブロックが認証され連結された場合、この6個の先頭ブロックであるブロックAについて完全に取引が終了したと見なされる。ここで、完全な取引終了が認められるブロック数「6」は、「承認ブロック数」と称される。これは、攻撃の成功確率はブロック差が拡がるほど指数関数的に下がることが証明されていることに基づく(Satoshi Nakamoto, “Bitocoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System,”、[online]、2008年、2015年10月20日検索、インターネット<URL:
https://bitcoin.org/bitcoin.pdf>)。最終的に攻撃によって作られたチェーンがネットワークに受け入れられるためには、正規のチェーンの長さを追い抜く必要があり、攻撃者がブロックを生成している間にも、正規のチェーンの長さは伸びていくため、攻撃者はシステムにおける過半数以上(すなわち正規のチェーン以上)のブロック生成速度がなければ差を縮めることができないからである。
【0033】
トランザクション生成装置3は、仮想通貨や契約などの取引によって、各ブロックに含まれるトランザクションデータを生成する。トランザクション生成装置3が生成したトランザクションデータは、P2Pネットワーク4を介して、他の端末に共有される。
【0034】
図2を参照して、本発明の実施の形態における取引支援システム5において、第2の参加者が、第3の参加者にコインを支払う場合の取引(トランザクション)を説明する。トランザクション生成装置3は、最新のトランザクション(第1のトランザクションT1)のデータと第3の参加者の公開鍵を合わせたデータに対して暗号学的ハッシュ関数を適用し、第2の参加者の秘密鍵を用いて署名を施して、第2のトランザクションT2のデータを生成する。コインを受け取る第3の参加者は、そのひとつ手前の取引(第1のトランザクションT1)における受け手(第2の参加者)の公開鍵を用いて、第2のトランザクションT2の署名を検証するとともに、ハッシュ値を再計算することで、コインが正当な所有者から渡されたことを確かめる。また各トランザクションのデータには、取引された仮想通貨の値などのトランザクションの内容や、トランザクションを生成する参加者の公開鍵に対応するアドレスが含まれる。
【0035】
図2に示すように生成された複数のトランザクションのデータは、所定条件下で、図3に示すように、ブロックチェーン生成装置1によってブロックにまとめられ、既存のブロックチェーンに連結され、各コンピュータで共有される。このとき、ブロックチェーン生成装置1は、新たなブロック(第n+1のブロック)を生成する際、ブロックチェーンに含まれていないトランザクションのデータを収集し、新たなブロック(第n+1のブロック)に、収集したトランザクションのデータと、現在のブロックチェーンの末尾のブロック(第nのブロック)のハッシュ値(256ビット)を含める。さらに現在生成中のブロック(第n+1のブロック)に対して、暗号学的ハッシュ関数(SHA−256)を適用した場合のハッシュ値の先頭のkビットがすべて“0”になるように、ブロックチェーン生成装置1は、現在生成中のブロック(第n+1のブロック)に含める適切値を探索する。適切値が見つかると、その適切値を含むブロック(第n+1のブロック)を、現在のブロックチェーンの末尾に連結して、ブロードキャストする。ここで、適切値の算出条件となる「kビット」のkの数値を変更することにより、適切値を求める難易度が適宜決定される。
【0036】
その後、ブロックチェーン検証装置2は、ブロックチェーン生成装置1から送信されたブロックチェーンデータを検証し、その検証結果を他の端末と共有する。
【0037】
(トランザクション生成装置)
図4を参照して、トランザクション生成装置3を説明する。トランザクション生成装置3は、記憶装置310、処理装置320および通信制御装置330を備える一般的なコンピュータである。一般的なコンピュータが所定の機能を実現するためのプログラムを実行することによって、トランザクション生成装置3は、図4に示す各機能を実現する。
【0038】
記憶装置310は、共有データ311を記憶する。共有データ311は、ブロックチェーンデータ312と、ブロックチェーンに含まれていないトランザクションデータ313とを含む。共有データ311は、図1に示す取引支援システム5において共有されるデータである。
【0039】
処理装置320は、同期手段321およびトランザクション生成手段322を備える。
【0040】
同期手段321は、P2Pネットワーク4を介して、ブロックチェーンデータ312と、ブロックチェーンに含まれていないトランザクションデータ313とを含む共有データ311を取得する。同期手段321は、P2Pネットワーク4を介して他の装置と通信して共有データ311を取得し、最新のデータに同期して共有する。
【0041】
同期手段321はさらに、当該コンピュータ内でブロックチェーンデータ312やトランザクションデータ313が更新された場合、P2Pネットワーク4を介して、他の装置に更新後のデータをブロードキャストする。これにより、当該コンピュータ内で生成された最新のデータが、他のコンピュータとの間で共有される。
【0042】
トランザクション生成手段322は、仮想通貨や契約に関するトランザクションを遂行し、このトランザクションに関するトランザクションデータを生成する。生成されたトランザクションデータは、P2Pネットワーク4を介して他のコンピュータにも送信され、共有される。
【0043】
(ブロックチェーン生成装置)
図5を参照して、ブロックチェーン生成装置1を説明する。ブロックチェーン生成装置1は、記憶装置110、処理装置120および通信制御装置130を備える一般的なコンピュータである。一般的なコンピュータが所定の機能を実現するためのプログラムを実行することによって、ブロックチェーン生成装置1は、図4に示す各機能を実現する。
【0044】
記憶装置110は、共有データ111、ブロック承認方法データ114およびパラメータデータ115を記憶する。共有データ111は、図4を参照して説明したトランザクション生成装置3の共有データ311と同様であって、ブロックチェーンデータ112およびトランザクションデータ113を含む。
【0045】
ブロック承認方法データ114は、ブロックチェーンデータ112において複数のブロックを連結する資格の有無を判定する際に用いられる複数のパラメータ種別のブレンドパターンを特定する。ブロック承認方法データ114は、ブロックチェーンデータ112において連続する複数のブロックのそれぞれと、各ブロックの連結に用いられるパラメータ種別を対応づけることを可能とする。本発明の実施の形態において、ブロック承認方法データで特定される複数のパラメータ種別は、互いに相反する。
【0046】
ブロック承認方法データ114は、例えば、本発明の実施の形態に係るブロックチェーン生成装置1およびブロックチェーン検証装置2を実現するために用いられるプログラムに記載されるなどにより、ブロックチェーン生成装置1およびブロックチェーン検証装置2間で共有される。
【0047】
本発明の実施の形態において、ブロックを生成し連結する際のブロックチェーン生成装置1における生成者の資格の有無は、単一のパラメータ種別によって判定されるものではなく、複数のパラメータ種別のいずれかによって判定されるのが好ましい。本発明の実施の形態において、連続するブロックにおける各ブロックの承認方法は、複数のパラメータ種別がブレンドされており、ブロック承認方法データ114は、各ブロックを生成する際に、いずれのパラメータ種別を用いるかを特定する。
【0048】
本発明の実施の形態において、複数のブロックの承認方法で用いられる「複数のパラメータ種別」は、相反するパラメータ種別である。「相反するパラメータ種別」は、片方のリソースを独占したとしても、もう片方のリソースの独占に影響を及ぼさない関係を有するパラメータ種別である。例えば、「コインの貯蓄量」と「コインの消費量」は、両方の条件を満たすことは困難であるので、相反するパラメータ種別となる。
【0049】
またPoWとPoSとは、PoWが外的リソースに関するパラメータであるのに対し、PoSが内的リソースに関するパラメータである。従って、PoWとPoSは、一人のブロック生成者が両方の条件を満たすことは困難であり、相反するパラメータ種別となる。
【0050】
なお、本発明の実施の形態において、相反するパラメータ種別が2種類である場合を説明したが、3種類のパラメータ種別間で、互いに相反する関係が成り立つ場合、相反するパラメータ種別が3種類であっても良い。
【0051】
また本発明の実施の形態において、相反するパラメータ種別として、「コインの貯蓄量」と「取引経路パターンの量」が考えられる。「取引経路パターンの量」は、コインを使用することによって、生成者が、どれだけ多様な取引を行ったかを示す指標である。これに対し「コインの貯蓄量」はコインを保有することによって得られる。従って、「コインの貯蓄量」と「取引経路パターンの量」は、コインの保有と使用の相反する性質を有するので、一人のブロック生成者がこれらの二つのパラメータを同時に独占することは難しい。従って、「コインの貯蓄量」と「取引経路パターンの量」の各パラメータ種別は、相反する。
【0052】
ブロック承認方法データ114の具体例は、後に詳述される。
【0053】
パラメータデータ115は、ブロックチェーン生成装置1が新たに生成するブロックを承認するためのパラメータ種別の値が設定される。パラメータデータ115は、パラメータ算出手段122により算出され、記憶装置110に記憶される。
【0054】
処理装置120は、同期手段121、パラメータ算出手段122、ブロック生成条件確認手段125およびブロックチェーン生成手段126を備える。同期手段121は、図4を参照して説明したトランザクション生成装置3の同期手段321と同様である。
【0055】
パラメータ算出手段122は、ブロックチェーンデータ112およびブロック承認方法データ114に基づいて、新たなブロックを連結する際に用いられるパラメータ種別を特定する。パラメータ算出手段122は、ブロック承認方法データ114を参照して、ブロックチェーンデータ112における各ブロックの承認方法および新たに連結するブロックの承認方法が、ブロック承認方法データ114で特定されるブレンドパターンにあうように、新たに連結するブロックの承認方法(パラメータ種別)を特定する。このときパラメータ算出手段122は、既に連結されたブロックのうち、新たにブロックを連結する際にパラメータ種別を特定することが必要な各ブロックの所定ビットのデータを参酌して、各ブロックの連結時に用いられたパラメータ種別を特定する。
【0056】
パラメータ算出手段122は、さらに、ブロックチェーンデータ112のトランザクションデータのうち、当該ブロックチェーン生成装置1を用いる生成者の識別子に関連するトランザクションデータから、特定されたパラメータ種別の値を算出する。
【0057】
パラメータ算出手段122において、ブロックを新たに追加する生成者の資格の承認に用いるパラメータ種別を特定する方法は、後に詳述される。
【0058】
ここでパラメータ算出手段122は、ブレンドパターンで特定される各パラメータ種別について算出するための各算出手段を有する。例えば、ブロック承認方法データ114のブレンドパターンが、相反するパラメータ種別として、コイン貯蓄量と取引パターン量を設定する場合、パラメータ算出手段122は、コイン貯蓄量を算出するコイン貯蓄量算出手段123と、取引パターン量算出手段124を備える。ブロック承認方法データ114のブレンドパターンが指定するパラメータ種別によっては、他のパラメータ種別を算出するための算出手段を備えても良い。
【0059】
ブロック生成条件確認手段125は、パラメータ算出手段122が算出した値に基づいて、新たなブロックチェーンの生成者が、新たなブロックチェーンデータを生成する資格を有しているか否かを判定する。パラメータ算出手段122が、コインの貯蓄量、コインの消費量、PoW、PoSなどの一般的なパラメータ種別の値を算出した場合、ブロック生成条件確認手段125は、一般的な方法で、新たなブロックチェーンデータを生成する資格を有しているか否かを判定する。
【0060】
ここで、取引パターン量算出手段124の処理や、取引パターン量に基づいて新たなブロックチェーンデータを生成する資格を有しているか否かを判定する処理は、後に詳述される。
【0061】
ブロックチェーン生成手段126は、ブロック生成条件確認手段125が資格を有していると判定した場合、共有データ111を参照して、新たなブロックチェーンの生成を試みる。具体的には、ブロックチェーン生成手段126は、パラメータデータ115で設定された値を用いて、図3に示す「適切値」の探索を試みる。適切値が見つかった場合、その適切値を用いて新たなブロックを生成する。このときブロックチェーン生成手段126は、生成した新たなブロックの所定ビットに、このブロックを生成する際に用いられたパラメータ種別の識別子を設定する。ブロックチェーン生成手段126は、既存のブロックチェーンデータ112の末尾に、生成した新たなブロックを連結して、新たなブロックチェーンデータを生成し、共有データ111を更新する。新たなブロックチェーンの生成に成功した場合、他の端末と共有するために、新たなブロックチェーンのデータは、P2Pネットワークにブロードキャストされる。
【0062】
ブロックチェーン生成手段126が、適切値を探索している間に、他の装置によってブロックが生成され新たなブロックチェーンが共有される場合もある。この場合、ブロックチェーン生成手段126は、古いブロックチェーンにおける適切値の探索を中止し、新たに共有されたブロックチェーンについて、適切値の探索を繰り返す。
【0063】
図6を参照して、ブロックチェーン生成装置1によるブロックチェーン生成方法を説明する。
【0064】
まずステップS101においてブロックチェーン生成装置1は、ブロック承認方法データ114を参照して、新たにブロックを生成する際の承認に用いるパラメータ種別を特定する。ステップS102においてブロックチェーン生成装置1は、共有データ111を参照して、ステップS101で特定されたパラメータ種別に対応する値を算出する。
【0065】
ステップS103においてブロックチェーン生成装置1は、ステップS102で算出された値に基づいて、当該ブロックチェーン生成装置1の生成者がブロックを生成する資格を有しているか否かを判定する。ブロックの生成資格がないと判定された場合、そのまま処理を終了する。
【0066】
一方、ステップS103においてブロックの生成資格があると判定された場合、ステップS104においてブロックチェーン生成装置1は、ステップS103で算出されたパラメータに基づいて、適切値の算出を開始する。適切値の算出に成功した場合、ブロックチェーン生成装置1は、算出した適切値を用いて、新たなブロックを生成し、既存のブロックチェーンに連結した新たなブロックチェーンデータを記憶する。
【0067】
(ブロックチェーン検証装置)
図7を参照して、ブロックチェーン検証装置2を説明する。ブロックチェーン検証装置2は、記憶装置210、処理装置220および通信制御装置230を備える一般的なコンピュータである。一般的なコンピュータが所定の機能を実現するためのプログラムを実行することによって、ブロックチェーン生成装置1は、図4に示す各機能を実現する。
【0068】
記憶装置210は、共有データ211、ブロック承認方法データ214およびパラメータデータ215を記憶する。共有データ211は、図4を参照して説明したトランザクション生成装置3の共有データ311と同様であって、ブロックチェーンデータ212およびトランザクションデータ213を含む。なお、ブロックチェーン検証装置2は、既存のブロックチェーンデータ212を検証するものであるので、トランザクションデータ213の有無は問わない。
【0069】
ブロック承認方法データ214およびパラメータデータ215は、図5を参照して説明したブロック承認方法データ114およびパラメータデータ115と同様である。
【0070】
処理装置220は、同期手段221、ブロック承認方法検証手段222、パラメータ算出手段223、ブロック生成条件検証手段226およびブロックチェーン検証手段227を備える。同期手段221は、図4を参照して説明したトランザクション生成装置3の同期手段321と同様である。
【0071】
ブロック承認方法検証手段222は、ブロック承認方法データ214に基づいて、ブロックを連結する際に用いられるパラメータ種別を特定し、ブロックチェーンデータ212が、特定されたパラメータ種別に基づいて生成されているか否かを判定する。ブロック承認方法検証手段222は、ブロックチェーンデータ212における各ブロックの承認方法が、ブロック承認方法データ214で特定されるブレンドパターンに適合するか否かを判定する。このときブロック承認方法検証手段222は、検証対象のブロックチェーンデータ212において、ブレンドパターンの適合性を確認するために必要な各ブロックの所定ビットのデータを参酌して、各ブロックの連結時に用いられたパラメータ種別を特定する。
【0072】
ブロックチェーンデータ212のブロックの生成に用いるパラメータ種別が、ブロック承認方法データ214で特定されるパラメータ種別であるか否かを判定する処理は、後に詳述される。
【0073】
パラメータ算出手段223は、ブロックチェーンデータ212のトランザクションデータのうち、ブロックチェーンデータ212を生成した装置を用いる生成者の識別子に関連するトランザクションデータから、ブロック承認方法検証手段222で特定されたパラメータ種別の値を算出する。算出した値は、パラメータデータ215として記憶装置210に記憶される。
【0074】
パラメータ算出手段223は、図5を参照して説明したブロックチェーン生成装置1のパラメータ算出手段122と同様に、コイン貯蓄量算出手段224、取引パターン量算出手段225などの、各パラメータ種別の値を算出するための算出手段を備える。
【0075】
ブロック生成条件検証手段226は、パラメータ算出手段223が算出した値に基づいて、ブロックチェーンの生成者が、ブロックチェーンデータ212を生成する資格を有しているか否かを判定する。
【0076】
パラメータ算出手段223が、コインの貯蓄量、コインの消費量、PoW、PoSなどの一般的なパラメータ種別の値を算出した場合、ブロック生成条件検証手段226は、一般的な方法で、新たなブロックチェーンデータを生成する資格を有しているか否かを判定する。
【0077】
ここで、取引パターン量算出手段225の処理や、取引パターン量に基づいて新たなブロックチェーンデータを生成する資格を有しているか否かを判定する処理は、後に詳述される。
【0078】
ブロックチェーン検証手段227は、ブロック承認方法検証手段222、ブロック生成条件検証手段226の結果に基づいて、ブロックを検証する。具体的にはブロックチェーン検証手段227は、ブロック承認方法検証手段222が、ブロックチェーンデータ212が特定されたパラメータ種別に基づいて生成されていると判定し、かつブロック生成条件検証手段226が、生成者がブロックチェーンデータ212を生成する資格を有していると判定した場合、ブロックチェーンデータ212を承認する。ブロックチェーン検証手段227は、検証結果を他の端末に通達する。ここで承認されなかった旨の検証結果を受けた端末は、不正なブロックチェーンとして、周囲の端末に通達するなどの処理を行う。
【0079】
図8を参照して、ブロックチェーン検証装置2によるブロックチェーン検証方法を説明する。
【0080】
まずステップS201においてブロックチェーン検証装置2は、ブロック承認方法データ214を参照して、新たにブロックを生成する際に用いるパラメータ種別を特定する。
ステップS202においてブロックチェーン検証装置2は、ブロックチェーンデータ212におけるブロックが、ステップS201で特定されたパラメータ種別で承認されているか否かを判定する。特定されたパラメータ種別で承認されていないと判定された場合、ステップS206においてブロックチェーン検証装置2は、当該ブロックチェーンデータを承認しないことを決定する。
【0081】
一方、特定されたパラメータ種別で承認されていると判定された場合、ステップS203においてブロックチェーン検証装置2は、共有データ111を参照して、ステップS201で特定されたパラメータ種別に対応する値を算出する。
【0082】
ステップS204においてブロックチェーン生成装置1は、ステップS203で算出された値に基づいて、ブロックチェーンデータ212のブロックが生成された端末の生成者がブロックを生成する資格を有しているか否かを判定する。ブロックの生成資格がないと判定された場合、ステップS206においてブロックチェーン検証装置2は、当該ブロックチェーンデータを承認しないことを決定する。
【0083】
一方、ブロックの生成資格があると判定された場合、ステップS205においてブロックチェーン検証装置2は、当該ブロックチェーンデータを承認することを決定する。さらにステップS207においてブロックチェーン検証装置2は、検証結果を他の端末に通知する。
【0084】
(ブレンドパターン)
ブロックチェーン生成装置1が参照するブロック承認方法データ114と、ブロックチェーン検証装置2が参照するブロック承認方法データ214は、同様のデータである。このブロック承認方法データは、例えば、図6に示すいずれかの承認方法のブレンドパターンを特定する。
【0085】
図9に示す例における四角の連結は、ブロックチェーンデータにおいて連続するブロックの連結を表している。白抜きの四角は、各ブロックを生成し連結される際に用いられるパラメータ種別が、「第1のパラメータ種別」であることを示し、斜線ハッチの四角は、「第2のパラメータ種別」であることを示す。ここで、第1のパラメータ種別と第2のパラメータ種別は、互いに相反する関係を有する。
【0086】
図9を参照して、ブロック承認方法データ114が特定するブレンドパターンについて詳述する。図9に示す各ブレンドパターンの例は、下記に大別される。
ブレンドパターンA:第1のパラメータ種別を第1の数だけ繰り返した後、第2のパラメータ種別を第2の数だけ繰り返す(図9(a)ないし(c))
ブレンドパターンB:連続する所定の数のパラメータ種別の繰り返しにおいて、少なくとも、第1のパラメータ種別および第2のパラメータ種別をそれぞれ1つずつ含む(図9(d)および(e))
【0087】
図9(a)のブレンドパターンは、第1のパラメータ種別を第1の数(1)だけ繰り返した後、第2のパラメータ種別を第2の数(1)だけ繰り返す。この場合、ブロック承認方法データ114に、図9(a)のブレンドパターンの識別子を含む。ブロックチェーンにおける各ブロックは、第1のパラメータ種別による承認と第2のパラメータ種別による承認を交互に繰り返しながら、それぞれの新たなブロックが生成されブロックチェーンに連結される。
【0088】
図9(a)に示すブロック承認方法が設定された場合、ブロックチェーン生成装置1は、最後尾のブロックの生成で用いられたパラメータ種別とは異なるパラメータ種別を用いて、ブロックの生成資格の有無を判定する。またブロックチェーン検証装置2は、直近の2個のブロックが、図9(a)のブレンドパターンに一致する場合、最後尾のブロックが、ブロック承認方法データ214に基づいて承認されていると判定する。
【0089】
図9(b)のブレンドパターンは、第1のパラメータ種別を第1の数(N=3)だけ繰り返した後、第2のパラメータ種別を第2の数(1)だけ繰り返す。この場合、ブロック承認方法データ114に、図9(b)のブレンドパターンの識別子のほか、第1の数(N)も含む。ブロックチェーンにおける各ブロックは、第1のパラメータ種別による承認をN回繰り返した後、第2のパラメータ種別による承認を経て、それぞれ新たなブロックが生成されブロックチェーンに連結される。
【0090】
図9(b)に示すブロック承認方法が設定された場合、ブロックチェーン生成装置1は、直近のN個のブロックの生成で用いられたパラメータ種別が、全て第1のパラメータ種別の場合、新たなブロックの生成において、第2のパラメータ種別を用いる。ブロックチェーン生成装置1は、それ以外の場合、すなわち最後尾のブロックの生成で用いられたパラメータ種別が、第2のパラメータ種別の場合、または、直近のN個のブロックの生成で用いられたパラメータ種別に第2のパラメータ種別が含まれる場合、新たなブロックの生成において、第1のパラメータ種別を用いる。またブロックチェーン検証装置2は、直近のN+1個のブロックが、図9(b)のブレンドパターンに一致する場合、最後尾のブロックがブロック承認方法データ214に基づいて承認されていると判定する。
【0091】
図9(c)のブレンドパターンは、第1のパラメータ種別を第1の数(N=3)だけ繰り返した後、第2のパラメータ種別を第2の数(M=2)だけ繰り返す。この場合、ブロック承認方法データ114に、図9(c)のブレンドパターンの識別子のほか、第1の数(N)および第2の数(M)も含む。ブロックチェーンにおける各ブロックは、第1のパラメータ種別による承認をN回繰り返した後、第2のパラメータ種別による承認をM回繰り返して、それぞれ新たなブロックが生成されブロックチェーンに連結される。
【0092】
図9(c)に示すブロック承認方法が設定された場合、ブロックチェーン生成装置1は、直近のM個のブロックの生成で用いられたパラメータ種別が、全て第2のパラメータ種別の場合、新たなブロックの生成において、第1のパラメータ種別を用いる。ブロックチェーン生成装置1は、直近のN個のブロックの生成で用いられたパラメータ種別が、全て第1のパラメータ種別の場合、新たなブロックの生成において、第2のパラメータ種別を用いる。それ以外の場合、ブロックチェーン生成装置1は、直近のブロックの生成で用いられたパラメータ種別を用いる。またブロックチェーン検証装置2は、直近のN+M個のブロックが、図9(c)のブレンドパターンに一致する場合、最後尾のブロックがブロック承認方法データ214に基づいて承認されていると判定する。
【0093】
図9(d)のブレンドパターンは、連続する所定の数(N=6)のパラメータ種別の繰り返しにおいて、少なくとも、第1のパラメータ種別および第2のパラメータ種別をそれぞれ1つずつ含む。この場合、ブロック承認方法データ114に、図9(d)のブレンドパターンの識別子のほか、所定の数(N)も含む。ブロックチェーンにおける各ブロックは、直近のN−1個の各ブロックの生成時に用いられたパラメータ種別を参酌してパラメータ種別が決定され、決定されたパラメータ種別で生成された新たなブロックがブロックチェーンに連結される。
【0094】
図9(d)に示すブロック承認方法が設定された場合、ブロックチェーン生成装置1は、直近のN−1個のブロックの生成で用いられたパラメータ種別が、全て第1のパラメータ種別の場合、新たなブロックの生成において、第2のパラメータ種別を用いる。ブロックチェーン生成装置1は、直近のN−1個のブロックの生成で用いられたパラメータ種別が、全て第2のパラメータ種別の場合、新たなブロックの生成において、第1のパラメータ種別を用いる。それ以外の場合、ブロックチェーン生成装置1は、乱数による抽選などの所定のアルゴリズムに基づいて、第1のパラメータ種別および第2のパラメータ種別のうちのいずれかを選択して、選択したパラメータ種別で、新たなブロックの生成しブロックチェーンに連結する。またブロックチェーン検証装置2は、直近のN個のブロックにおいて、相反するパラメータ種別を少なくとも一つずつ含む場合、最後尾のブロックがブロック承認方法データ214に基づいて承認されていると判定する。
【0095】
図9(e)は、図9(d)に示す例の変形例であって、連続する所定の数(N)に、承認ブロック数を設定する方法である。承認ブロック数は、あるブロックの完全な取引終了が認められるための、連続するブロックの生成数である。すなわち、あるブロックAが生成され連結された後、5個のブロックがそれぞれ連結された際にブロックAについて完全な取引終了が認められる場合、承認ブロック数は「6」となる。連続する所定の数(N)に、承認ブロック数を設定する場合、ブロックAが完全に取引終了したと認められるために、互いに相反する複数のパラメータ種別による承認が必ずブレンドされていることが保証されるので、悪意のある参加者による攻撃をさらに適切に回避することができる。
【0096】
なお、ブロックチェーンデータ112における各ブロックを生成する際に用いられたパラメータ種別は、ブロックチェーン内の各ブロックにおいて特定されることが好ましい。例えば、ブロック内の所定ビットに、このブロックを生成する際に用いられたパラメータ種別の識別子が設定される。ブロックチェーン生成装置1は、既に連結されたブロックのうち、新たにブロックを連結する際にパラメータ種別を特定することが必要な各ブロックの所定ビットのデータを参酌して、各ブロックの連結時に用いられたパラメータ種別を特定する。ここで、「新たにブロックを連結する際にパラメータ種別を特定することが必要な各ブロック」は、ブロック承認方法データにおいて指定されるブレンドパターンの識別子やN、Mなどの設定情報などによって異なる。またブロックチェーン検証装置2は、検証対象のブロックチェーンデータ212において、ブレンドパターンの適合性を確認するために必要な各ブロックの所定ビットのデータを参酌して、各ブロックの連結時に用いられたパラメータ種別を特定して、ブレンドパターンに適合しているか否かを判定する。ここで、「ブレンドパターンの適合性を確認するために必要な各ブロック」は、ブロック承認方法データにおいて指定されるブレンドパターンの識別子やN、Mなどの設定情報などによって異なる。
【0097】
(取引パターン量算出手段)
図5のブロックチェーン生成装置1の取引パターン量算出手段124および図6のブロックチェーン検証装置2の取引パターン量算出手段225を説明する。
【0098】
取引パターン量算出手段124(取引パターン量算出手段225)は、ブロックチェーンデータ112のトランザクションデータのうち、ブロックチェーン生成装置1を用いる生成者の識別子に関連するトランザクションデータから、生成者の取引パターン量を算出する。ここで、「取引パターン量」は、生成者の信用の指標である。
【0099】
取引パターン量は、取引は互いに素性を明らかにし、相手がどういった人物であるかを把握した上で相手を信用して取引することに着目して算出された、信用スコアに相当する。多様なノードと取引を行った参加者は、多くのノードから信用を受けて取引していると推定され、その信用の大きい承認者が51%攻撃を実施すれば、その人物は特定され社会的にも信用を失うこととなる。従ってこのような参加者は、信用の暴落が攻撃の抑止力となると考えられる。「取引経路パターンの量」は、ブロックチェーンデータ112を参照して、どれだけ多様なノードと取引を行ったのかをスコアリングすることで得られる。また「取引経路パターンの量」は、取引においてコインを使用することにより得られる値であるので、「コインの貯蓄量」に相反するパラメータ種別として採用される。
【0100】
ここで、「取引」は、トランザクション生成装置3が生成するトランザクションデータによって特定され、仮想通貨の譲渡はもちろん、複数者間で契約書を交わす際の証跡としてブロックチェーンを応用する場合の契約も含まれる。証跡としてのブロックチェーンを応用する際の契約は、物品や役務等の売買契約、譲渡、申込書、使用許諾などを指し、二者間以上の個人または機関において交わされる。
【0101】
PoSの場合、「コインの貯蓄量」がコストになる。従って、ブロックチェーンで証跡が残された契約の価値が、ブロックの生成者のコインの貯蓄量以上の価値がある状況において、PoSでブロックを生成する生成者が承認される場合、コストの貯蓄量を無駄にしても攻撃を挑む動機付けが生じる。そこで本発明の実施の形態において、取引経路パターンの量を、ブロックを生成する生成者を承認するためのパラメータ種別として採用する。これにより、取引パターンの量を増加させるためには、コインを使用して多様な取引を行なって信用を得なければならないので、このような信用を得たブロックの生成者が、攻撃することの抑止力につながる。
【0102】
図10を参照して、本発明の実施の形態に係る取引パターン量を説明する。図10(a)に示すように、ある参加者が過去に発行した経路パターンの集合をaとし、このaに含まれる経路パターンpに含まれるノード数をnp,aとする場合、aの全ての経路パターのノー度数の和(取引パターン量:スコア)は、式(1)で表現される。
【0103】
この場合、取引パターン量は、ブロックの生成者(ブロックチェーン生成装置1を用いる生成者)の識別子に関連するトランザクションデータにおける、取引相手の識別子の各組み合わせにおける、取引相手の識別子の合計である。具体的には、図10(b)に示すように、参加者Aが過去に、Bのみを相手とする取引と、Cのみを相手とする取引と、BおよびCのみを相手とする取引を行った場合を考える。各取引におけるノード数(取引相手の識別子の合計)は、それぞれ、1、1、2であるので、この場合の取引パターン量は、「4」となる。
【0104】
また他の方法として、取引パターン量が、ブロックの生成者の識別子に関連するトランザクションデータにおける、取引相手の識別子のユニーク数であっても良い。具体的には、図10(b)に示すように、参加者Aが過去に、Bのみを相手とする取引と、Cのみを相手とする取引と、BおよびCのみを相手とする取引を行った場合、参加者Aの取引相手は、A、BおよびCであるので、この場合の取引パターン量は、「3」となる。
【0105】
なお、取引パターン量を算出する場合、同じ取引相手、または同じ取引相手の組み合わせで、数度取引があったとしても、取引パターン量が増えないように算出される。これにより、悪意のある複数の参加者が協力して、取引パターン量を増やすような不正を回避することができる。
【0106】
図10(c)は、このように算出された取引パターン量(score(a))に基づいて、ブロックの生成者となりうるアドレスの条件式の一例を示す。図10(c)は、PoSに基づいてブロックの生成者となりうるアドレスの条件式において、コインの貯蓄量を、取引パターン量に変換したものである。
【0107】
図11を参照して、取引パターン量算出手段124の処理を算出する取引パターン量算出処理を説明する。なお、取引パターン量算出手段225の処理も同様である。
【0108】
まずステップS151においてブロックチェーン生成装置1は、ブロックチェーンデータ112の過去のトランザクションから、ブロックの生成者(ブロックチェーン生成装置1を用いる参加者)に関連するトランザクションを抽出する。
【0109】
ステップS152においてブロックチェーン生成装置1は、ステップS151で抽出したトランザクションから、取引相手の識別子を特定する。ステップS153において、ステップS152において特定された取引相手の識別子に基づいて、ブロックの生成者の取引パターン量を算出する。
【0110】
上述したように、本発明の実施の形態に係るブロックチェーン生成装置1は、複数の相反するパラメータ種別のうちの一つのパラメータ種別に基づいて、ブロックチェーンに新たなブロックを連結する資格があるか否かを判定する。本発明の実施の形態において、複数の相反するパラメータ種別がブレンドされるブレンドパターンに基づいて各ブロックが生成され、ブロックチェーンが生成される。この「複数の相反するパラメータ種別」は、片方のリソースを独占したとしても、もう片方のリソースの独占に影響を及ぼさない関係、同一人が両立して条件を満たすことが難しい関係を有する。
【0111】
さらに、本発明の実施の形態に係るブロックチェーン検証装置2は、ブロックチェーンでの複数のブロックの生成で用いられた各パラメータ種別が、複数の相反するパラメータ種別をブレンドするブレンドパターンに合致する場合に、このブロックチェーンデータを承認する。
【0112】
これにより、本発明の実施の形態は、悪意のある生成者が連続してブロックを連結して、攻撃することを回避することができる。
【0113】
また、ブロックチェーンにおいて、連続する承認ブロック数のブロックが、複数の相反するパラメータ種別に基づいて生成されることにより、悪意のある生成者が連続してブロックを連結した状態で、完全な取引の完了が保証されることを回避することができる。
【0114】
さらに、本発明の実施の形態において、新たなブロックを連結する資格があるか否かを判断するために、生成者の信用スコアに対応する取引パターン量を用いる。取引パターン量は、長い時間をかけて積み上げた実績に基づくものであるので、この信用の暴落が攻撃の抑止力となる。さらに、取引パターン量によるブロック生成の承認は、仮想通貨の譲渡はもちろん、複数者間で契約書を交わす際の証跡としてブロックチェーンを応用する場合にも適用することができる。
【0115】
また、相反するパラメータ種別として、取引パターン量と、取引パターン量に相反するコインの貯蓄量を設定することにより、悪意のある生成者が連続してブロックを連結して、攻撃することを回避することができる。
【0116】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなる。
【0117】
例えば、本発明の実施の形態に記載したブロックチェーン生成装置1およびブロックチェーン検証装置2は、図5および図7にそれぞれ示すように一つのハードウエア上に構成されても良いし、その機能や処理数に応じて複数のハードウエア上に構成されても良い。また、既存の情報処理システム上に実現されても良い。
【0118】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0119】
1 ブロックチェーン生成装置
2 ブロックチェーン検証装置
3 トランザクション生成装置
4 P2Pネットワーク
5 取引支援システム
110、210、310 記憶装置
111、211、311 共有データ
112、212、312 ブロックチェーンデータ
113、213、313 トランザクションデータ
114、214 ブロック承認方法データ
115、215 パラメータデータ
120、220、320 処理装置
121、221、321 同期手段
122、223 パターン算出手段
123、224 コイン貯蓄量算出手段
124、225 取引パターン量算出手段
125 ブロック生成条件確認手段
126 ブロックチェーン生成手段
130、230、330 通信制御装置
222 ブロック承認方法検証手段
226 ブロック生成条件検証手段
227 ブロックチェーン検証手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11