(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記第1付勢部の各々は、前記弁箱において、前記第1可動弁部に対して作用する位置に配され、かつ、前記第1可動弁部に沿って設けられる、請求項1に記載の仕切弁。
【背景技術】
【0002】
真空装置等においては、チャンバーと配管との間、配管と配管との間、あるいは配管とポンプ等との間等、異なる真空度の2つの空間の間を仕切り、仕切られた2つの空間をつなげる仕切りバルブが設けられている。このような仕切りバルブとしては、様々な形態の弁が知られている。
【0003】
例えば、弁板をスライドさせて流路の弁開閉位置に弁板を挿入し、更にこの弁板を作動させて流路を仕切り(閉弁動作)、あるいは上記弁板を作動させて流路をつなぎ(開弁動作)、更に弁板をスライドさせ、流路から弁箱内の退避位置に弁板を退避させる構造が知られている。このような構造を有する弁としては、振り子型,直動型,ドア型等が知られている。
【0004】
直動型仕切弁は、流路を構成する第1開口部及び第2開口部が形成された弁箱の中空部に、弁棒(支持体)に固設された弁板が配置された構造を有する。この構造においては、上記弁棒をその長手方向に直動させて、上記弁板を開口部(流路)の弁開閉位置に挿入し、または、上記弁板を開口部が形成されていない退避位置に退避させる。
【0005】
従来の上記直動型仕切弁としては、ベローズで接続された2枚の第1弁板及び第2弁板からなる弁体と、この2つの弁板の間において弁板の中央部に配置されたアクチュエータと、流路を構成する開口部が形成された弁箱とを備えた仕切弁が知られている。この仕切弁においては、アクチュエータによって、弁箱の開口部の周囲の内面に第1弁板を当接及び押圧させて流路を閉鎖し、または、アクチュエータによって第1弁板を上記弁箱の内面から離間させて流路を開放する(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、振り子型仕切弁は、流路を構成する第1開口部及び第2開口部が形成されかつ中空部を有する弁箱と、中空部において回転軸に固設されて回転軸と垂直をなす面に平行な方向において広がっている支持体と、この支持体に固設された弁体(シールリング板が開口部に設けられている構造の場合には弁板)とが配置された構造を有する。この仕切弁においては、上記回転軸を回転させて、上記弁体を回動させ、上記弁体を開口部(流路)の弁開閉位置に挿入し、または、上記弁体を開口部が形成されていない退避位置に退避させる。
【0007】
従来の上記振り子型仕切弁としては、ハウジングの中空部内に、回転軸において回動可能な弁板と、ハウジングの開口部に配置された摺動可能なシールリング板と、ハウジングに一体形成されたフランジに上記シールリング板を摺動させるアクチュエータとが設けられた構造が知られている。この仕切弁においては、上記シールリング板を上記弁板に当接及び押圧して流路を閉鎖し、または、上記シールリング板を上記弁板から離間させて流路を開放する(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
この振り子型仕切弁のアクチュエータは、ボルトと環状室(シリンダ)とピストンとスプリングとが、シールリング板の摺動方向に直列に配置された構造を有する。従って、流路を閉鎖するときは、スプリングに生じる復元力が、ピストン,シリンダ,及びボルトを介してシールリング板に伝達される。
【0009】
このような振り子型仕切弁としては、流路を気密的に遮断し、耐摩耗性に優れ、メンテナンスが容易な弁が開示されている(例えば、特許文献3参照)。この仕切弁においては、外側弁体部がアームによって駆動装置に接続されており、外側弁体部を開口軸に沿って縦移動させる。ゆえに、アームに対して動力伝達装置により縦移動を促す起動装置は、仕切弁の面積が大型化するにつれて、大きな駆動力が必要となる。
また、特許文献3に開示された構造を大型の仕切弁に適用した場合、潰すべきOリングの体積が増加することに加えて、回転軸からOリングが遠方に離れた位置に配置される。このため、必要なモーメント荷重に対し、剛体となるように回転軸を設計しなければならないので、仕切弁の重量増加の一因となる。
ゆえに、特許文献3に開示された構造は、小型の仕切弁には有効であるが、大型の仕切弁には不向きである。
【0010】
本発明者らは、上述した仕切弁の面積の大型化が可能な構成を備え、簡単な構成で高い信頼性の仕切り動作が可能な仕切弁を開発し、特許出願を行った(特許文献4)。この仕切弁においては、弁体を構成する可動弁部が重なり方向で複数の可動弁部[例えば、可動弁枠部(第1可動弁部)、可動弁板部(第2可動弁部)]から構成されており、両者を接続する位置にエアシリンダ(第2付勢部)を設けた。このエアシリンダを駆動するため、仕切弁の外部から、仕切弁の回転軸を通してエアシリンダまで至る、圧空の導入ライン(供給路)を可動弁枠部(第1可動弁部)の内部に設ける必要があった。
【0011】
このようにエアシリンダや供給路が仕切弁の内部に設けられた弁体構造においては、高い信頼性の仕切り動作が可能な反面、弁体の重量が増加し、弁体の上下移動や弁体を旋回移動する際に大きな駆動力を要するため、弁体の構成の簡素化および軽量化が求めされていた。
また、弁体内にエアシリンダを備える機構において、弁体の圧力を受ける面積に占める割合が、例えば、25%の場合、逆圧キャンセル率が75%程度に留まるため、大きなシール力が必要となる傾向にある。このため、より高い逆圧キャンセル機構の開発が期待されていた。ここで、逆圧とは、閉弁状態から開弁状態の方向へ弁体に対して圧力が加わることであり、逆圧キャンセル機構とは、逆圧にまともに対抗しない機構(逆圧を発生させない機構)を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る仕切弁の実施形態を、図面に基づいて説明する。
また、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法及び比率が実際のものとは適宜に異ならせてある。
本発明の技術範囲は、以下に述べる実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
本実施形態において、可動弁部Aは本発明の第1可動弁部に対応し、可動弁部Bは本発明の第2可動弁部に対応している。また、付勢部Aは本発明の第1付勢部に対応し、付勢部Bは本発明の第2付勢部に対応し、付勢部Cは本発明の第3付勢部に対応している。
【0024】
<実施形態>
図1は、本実施形態における仕切弁の構成を示す平面図である。
図2は、本実施形態における仕切弁の構成を示す縦断面図で、弁体が退避動作可能位置(FREE)に配置されている場合を示す図である。
図2は、
図1における線分B−O−Cに相当する。
図3〜
図6は、
図2と同様に、弁体が退避動作可能位置(FREE)に配置されている場合を示す図である。
図3は、
図1における線分A−Oに沿う要部を示す拡大図であり、弁箱に内蔵された付勢部Aの付近に位置する部材の構造を示す図である。
図4は、
図1における線分B−Oに沿う要部を示す拡大図であり、可動弁部Aと可動弁部Bとの間に配された付勢部Bの付近に位置する部材の構造を示す図である。
図5は、
図1における線分C−Oに沿う要部を示す拡大図であり、付勢部Aと付勢部Bが存在しない位置における可動弁部Aと可動弁部Bを示す図である。
図6は、
図1における付勢部Cの要部を示す拡大図であり、
図2において付勢部Cを紙面奥行き方向に見た図である。
【0025】
図7は、本実施形態における仕切弁の構成を示す縦断面図で、弁体が弁閉位置(正圧or差圧無)に配置されている場合を示す図である。
図7は、
図1における線分B−O−Cに相当する。
図8〜
図11は、
図7と同様に、弁体が弁閉位置(正圧or差圧無)に配置されている場合を示す図である。
図8は、
図1における線分A−Oに沿う要部を示す拡大図であり、弁箱に内蔵された付勢部Aの付近に位置する部材の構造を示す図である。
図9は、
図1における線分B−Oに沿う要部を示す拡大図であり、可動弁部Aと可動弁部Bとの間に配された付勢部Bの付近に位置する部材の構造を示す図である。
図10は、
図1における線分C−Oに沿う要部を示す拡大図であり、付勢部Aと付勢部Bが存在しない位置における可動弁部Aと可動弁部Bを示す図である。
図11は、
図1における付勢部Cの要部を示す拡大図であり、
図7において付勢部Cを紙面奥行き方向に見た図である。
【0026】
図12は、本実施形態における仕切弁の構成を示す縦断面図で、弁体が逆圧位置に配置されている場合を示す図である。
図12は、
図1における線分B−O−Cに相当する。
図13〜
図15は、
図12と同様に、弁体が逆圧位置に配置されている場合を示す図である。
図13は、
図1における線分A−Oに沿う部を示す拡大図であり、弁箱に内蔵された付勢部Aの付近に位置する部材の構造を示す図である。
図14は、
図1における線分B−Oに沿う要部を示す拡大図であり、可動弁部Aと可動弁部Bとの間に配された付勢部Bの付近に位置する部材の構造を示す図である。
図15は、
図1における線分C−Oに沿う要部を示す拡大図であり、付勢部Aと付勢部Bが存在しない位置における可動弁部Aと可動弁部Bを示す図である。
【0027】
[振り子型仕切弁]
本発明の実施形態に係る仕切弁100は、
図1〜
図15に示すように、振り子型スライド弁である。
仕切弁100は、中空部11と、中空部11を挟み互いに対向するように設けられて連通する流路となる第1開口部12a及び第2開口部12bとを有する弁箱10と、弁箱10の中空部11内に配置され第1開口部12aを閉塞可能な中立弁体5を備える。
第1開口部12aから第2開口部12bに向かって流路Hが設定されている。なお、以下の説明において、この流路Hに沿った方向を流路方向Hと称することがある。
仕切弁100は、中立弁体5を第1開口部12aに対して閉塞状態(
図7)にする弁閉塞位置と、中立弁体5を第1開口部12aから退避した開放状態(
図2)にする弁開放位置との間で動作する、位置切り替え部として機能する。また、仕切弁100は、流路方向Hに延在する軸線を有する回転軸20を有する。
【0028】
中立弁体5は、前記位置切り替え部(中立弁体5)に接続される中立弁部30、及び、中立弁部30に対して流路方向Hの位置が変更可能に接続される可動弁部40、から構成されている。
可動弁部40は、可動弁部A60(可動弁枠部)と可動弁部B50(可動弁板部)を備える。可動弁部A60(可動弁枠部)は、可動弁部Aに周設され第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面に密着される第1シール部61が設けられる。可動弁部B50(可動弁板部)は、可動弁部A60(可動弁枠部)に対して流路方向Hに摺動可能とされる。
【0029】
弁箱10には、複数の付勢部A70(ピストン:旧メインバネに相当)が内蔵されている。弁箱10の内部に配置された付勢部A70は、可動弁部A60をシール面に向く方向に押圧する、伸縮が可能な昇降機構を構成している。
これにより、付勢部A70は、可動弁部A60を流路方向Hにおける第1開口部12aに向けて付勢して第1シール部61を第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面に密着可能とする機能を有する。
【0030】
また、本発明の実施形態に係る仕切弁は、可動弁部Aを中立弁部に対して流路方向における位置が変更可能に接続するとともに、可動弁部Aを前記流路方向における中央位置に向けて付勢する付勢部Cを備える。
さらに、本発明の実施形態に係る仕切弁は、弁箱の内部に、可動弁部Aを弁箱内面10Aのシール面に向く方向に押圧する、伸縮が可能な昇降機構を構成する付勢部Aを有する。
【0031】
この構成によれば、2つの可動弁部A、Bと1つの付勢部Bとによって弁体を構成し、もう1つの付勢部Aは弁箱に内蔵した構成が得られるので、付勢部Aの重量分だけ弁体構造の軽量化が図れる。本発明の実施形態に係る仕切弁においては、開弁状態(
図2)から閉弁状態(
図7)とする場合には付勢部Aが機能し、逆に閉弁状態(
図7)から開弁状態(
図2)とする場合には付勢部Cが機能する。
【0032】
可動弁部A60(可動弁枠部)と可動弁部B50(可動弁板部)との間には、付勢部B(バネ:旧エアシリンダに相当)が配されている(可動弁部に内蔵されている)。付勢部Bは、可動弁部A60(可動弁枠部)と可動弁部B(可動弁板部)との流路方向Hにおける厚み寸法を、調整が可能なように駆動する。
【0033】
回転軸20が符号R1で示された方向(流路Hの方向に交差する方向)に回転すると、この回転に従って、接続部材(不図示)を介して回転軸20に固定されている中立弁部30も方向A1に沿って回動する。また、可動弁部40は中立弁部30に厚さ方向のみ摺動可能として接続されているため、可動弁部40は、中立弁部30と一体に回転する。
このように中立弁部30を回転することにより、流路Hが設けられていない中空部11とされる退避位置から第1開口部12aに対応する位置とされる流路Hの弁閉位置に可動弁部40が振り子運動で移動する。
【0034】
そして、弁箱10に内蔵された付勢部A70は、弁箱10の内部に配置された固定部71と、固定部71から可動弁部A60に向く方向へ伸縮が可能な可動部72とから構成されている。これにより、付勢部A70は、付勢部A70の先端部を可動弁部A60に当接させて、可動弁部A60を第1開口部12に向けて移動させる機能を備えている。
【0035】
付勢部A70は、可動弁部A60を第1開口部12aに向けて移動させる機能により、可動弁部A60を弁箱10の内面に接しさせ、可動弁部A60を前記弁箱10の内面に押圧し、流路Hを閉鎖する(閉弁動作)。
【0036】
逆に、付勢部C90は、可動弁部A60を第1開口部12aから離間可能とする機能により、可動弁部A60を弁箱10の内面から引き離した後、可動弁部A60を退避させることにより、前記流路Hを開放する(解除動作)。
弁箱10の内面に対して可動弁部A60を当接させる付勢部A70による機械的な当接動作と、弁箱10の内面から可動弁部A60を引き離す付勢部C90による機械的な分離動作によって、閉弁動作と解除動作が可能となる。
この解除動作の後に、回転軸20が符号R2で示された向きに回転する(退避動作)と、この回転に従って中立弁部30および可動弁部40(すなわち、可動弁部A60と可動弁部B50)も向きR2に回動する。
【0037】
さらに、可動弁部A60と可動弁部B50との流路方向Hにおける厚み寸法を、調整可能なように駆動する付勢部Bは、前記可動弁部Aと前記可動弁部Bとの間に配されている。すなわち付勢部Bは、可動弁部に内蔵されている。この付勢部Bの存在により、可動弁部Aと前記可動弁部Bは、一連の動作(閉弁動作、解除動作、退避動作)において連動する。
この解除動作と退避動作とにより、可動弁部40は上記弁開閉位置から上記退避位置に退避して弁開状態とする弁開動作が行われる。
【0038】
このように、本発明の実施形態に係る仕切弁においては、2つの可動弁部A60及び可動弁部B50と2つの付勢部B80及び付勢部C90とによって弁体を構成し、もう1つの付勢部Aは弁箱に内蔵した構成が得られる。すなわち、本発明の実施形態では、もう1つの付勢部Aが弁箱に内蔵された分だけ、弁体の軽量化が可能となる。
したがって、本発明の実施形態によれば、高い信頼性の仕切り動作が可能であり、可動弁部の軽量化が図れるとともに、100%の逆圧キャンセル率が実現できる、仕切弁を提供することができる。
【0039】
[弁箱10]
弁箱10は、中空部11を有するフレームによって構成されている。フレームの図示上面には第1開口部12aが設けられており、フレームの図示下面には第2開口部12bが設けられている。
仕切弁100は、第1開口部12aが露出されている空間(第1空間)と第2開口部12bが露出されている空間(第2空間)の間に挿入される。仕切弁100は、第1開口部12aと第2開口部12bとをつなげている流路H、即ち、第1空間と第2空間とをつなげている流路Hを仕切り(閉鎖し)、この仕切り状態を開放する(第1空間と第2空間をつなぐ)。
弁箱10の中空部11には、回転軸20、中立弁部30、可動弁部40を構成する2つの可動弁部A60(スライド弁板)と可動弁部B50(カウンター板)、及び、2つの付勢部B80(保持バネ)と付勢部C90(補助バネ)が設けられている。弁箱10を構成するフレームの内部には、付勢部A(昇降機構)が設けられている。
【0040】
[回転軸20]
回転軸20は、流路Hとほぼ平行状態に延在して弁箱10を貫通するとともに回転可能に設けられている。回転軸20は、不図示の駆動装置により回転可能である。
回転軸20には、接続部材(不図示)が固着されている。この接続部材は、例えば、略平板状の部材であり、回転軸20の一端に対してネジ等によって固着される。
【0041】
[中立弁部30]
中立弁部30は、回転軸20の軸線に対して直交する方向に延在し、この方向に平行な面に含まれるように配置される。中立弁部30は、接続部材(不図示)を介して、あるいは接続部材(不図示)を介さずに直接、回転軸20に固定される。
図1に示すように、中立弁部30は、可動弁部40に重なる円形部30aと、回転軸20の回転に伴って円形部30aを回転させる回転部30bとを有する。回転部30bは、回転軸20と円形部30aとの間に位置しており、回転軸20から円形部30aに向けて、2本の腕が延びたアーム形状で形成されている。これにより、円形部30aは、アーム部と呼称される場合もある。
これら回転軸20、中立弁部30は、弁箱10に対して回動はするが、流路H方向には位置変動しないように設けられている。
【0042】
回転軸20は、中立弁部30に対して流路方向Hに沿った上側と下側のいずれにも選択的に接続することができる。あるいは、回転軸20に対して、中立弁体5の全体、即ち、中立弁体5の両面に取り付けることができる。
本実施形態においては、仕切弁の閉弁時において、可動弁部40が第1開口部12aを塞ぐように中立弁体5が移動する仕切弁の配置に基づき、仕切弁の開閉動作が行われる場合について説明する。
【0043】
[可動弁部40、可動弁部B50(可動弁板部:カウンター板)、可動弁部A60(可動弁枠部:スライド弁板)]
可動弁部40は略円板状とされ、円形部30aと略同心円状に形成された可動弁部B50と、この可動弁部B50の周囲を囲むように配置された略円環状の可動弁部A60とを有する。可動弁部A60は、中立弁部30に流路H方向に摺動可能として接続されている。また、可動弁部B50は、可動弁部A60に摺動可能として嵌合されている。
可動弁部B50と可動弁部A60とは、付勢部B80(保持バネ)によって符号B1,B2(
図2)で示された方向(往復方向)に摺動しながら移動可能である。ここで、符号B1,B2で示された方向とは、可動弁部B50および可動弁部A60の面に垂直な方向であり、回転軸20の軸方向に平行な流路H方向である。
【0044】
また、可動弁部B50の外周付近における全領域には、内周クランク部50cが形成されている。また、可動弁部A60の内周付近における全領域には、外周クランク部60cが形成されている。
本実施形態においては、外周クランク部60cは、流路H方向と平行な摺動面60bを有する。内周クランク部50cは、流路H方向と平行な摺動面50bを有する。外周クランク部60c及び内周クランク部50cは、摺動面50b、60bどうしが摺動可能となるように嵌合している。この摺動を可能にするため、Oリング等からなる第3シール部52(摺動シールパッキン)が外周クランク部60cと内周クランク部50cとの間に配されている。
【0045】
弁箱10の内面に対向(当接)する可動弁部A60の表面には、第1開口部12aの形状に対応して円環状に形成された、例えば、Oリング等からなる第1シール部61(弁板シールパッキン)が設けられている。
この第1シール部61は、閉弁時に可動弁部40が第1開口部12aを覆っている状態で、第1開口部12aの周縁となる弁箱10の弁箱内面10Aに接触し、可動弁部A60及び弁箱10の弁箱内面10Aによって押圧される。これによって、第1空間は第2空間から確実に隔離される(仕切り状態が確保される)。
弁箱10の弁箱内面10Aに対向(当接)する可動弁部B50の表面には、第2開口部12bの形状に対応して円環状に形成された、例えば、Oリング等からなる第2シール部51(カウンタークッション)が設けられている。
【0046】
[付勢部B80(保持バネ)]
付勢部B80(保持バネ)は、可動弁部Aと可動弁部Bとの間に位置しており、可動弁部A60と可動弁部B50とが重なる領域に、局所的に配置される。すなわち、付勢部B80は、可動弁部40(可動弁部A60と可動弁部B50との間)に内蔵されている。付勢部B80を設ける箇所は、3箇所以上が好ましく、互いに離間して設けられる。互いに離間する付勢部B80の配置としては、等間隔の配置に限定されず、複数の付勢部B80が非等間隔で配置されている構造が採用されても構わない。
図1は、弁体の中心Oから見て、3個の付勢部B80が同じ角度位置(120度)に配された構成例を示している。
付勢部B80は、可動弁部A60(可動弁枠部:スライド弁板)に固定されたボルト状のガイドピン81の長軸部によって、可動弁部Bの動きを誘導(規制)するように構成されている。付勢部B80を構成する保持バネは、弾性部材(例えば、スプリング、ゴム等)で形成されている。
【0047】
付勢部B80(保持バネ)は、可動弁部A60と可動弁部B50との流路方向Hにおける厚み寸法を、調整が可能なように駆動する。これにより、可動弁部B50は、可動弁部A60の動く方向(符号B1の方向,あるいは符号B2の方向)へ連動する。その際、可動弁部B50は、流路方向Hにおける厚み寸法を調整が可能なように駆動するので、上述した閉弁時には、可動弁部A60の第1シール部61が弁箱10の弁箱内面10Aに接触する際の衝撃を緩和する。また、開弁時や逆圧時には、可動弁部B50の第2シール部51が弁箱10の弁箱内面10Bに接触する際の衝撃を緩和する。この衝撃を受けた際に、可動弁部B50と弁箱内面10Bと第2シール部51によって密閉空間が形成される。この密閉空間に圧力を与えている気体を除去するために、可動弁部B50には気抜き穴53が設けられる。
【0048】
[ガイドピン81]
ガイドピン81は、可動弁部A60に固設されて流路方向Hに立設されており、太さ寸法が均一の棒状体で構成されている。ガイドピン81は、付勢部B80内を貫通し、可動弁部B50に形成された孔部50hに嵌合している。
このガイドピン81は、可動弁部B50と可動弁部A60とが摺動する方向(符号Qで示す軸)が符号B1,B2に示された方向からずれないように、かつ、可動弁部B50と可動弁部A60とが摺動した際にも、可動弁部B50及び可動弁部A60の姿勢が変化せずに平行移動を行うように、可動弁部B50と可動弁部A60の位置規制を確実に誘導する。
【0049】
[付勢部C90(補助バネ)]
付勢部C90(補助バネ)は、中立弁部30と可動弁部A60との間に設けられ、弁箱10の流路方向Hにおいて、可動弁部A60を中立弁部30に対して流路方向における位置が変更可能に接続するとともに、可動弁部Aを前記流路方向における中央位置に向けて付勢する。これにより、本発明の実施形態において、仕切弁が閉弁状態(
図7)から開弁状態(
図2)に変わる場合に、付勢部C90が機能する。すなわち、付勢部C90は、閉弁状態(
図7)から、弁箱10の内面から可動弁部A60を引き離す機械的な分離動作を促す構造を有する。
付勢部C90は、中立弁部30の外周位置に位置する円形部30aを有し、可動弁部A60の外周位置に位置し、円形部30aと重なる部位(位置規制部65)に設けられている。
付勢部C90は、弁体の中心Oから見て、付勢部B80と同じ角度位置に配されている。
図1は、3個の付勢部C90が配置された構成例を示している。
付勢部C90も付勢部B80と同様に弾性部材(例えば、スプリング、ゴム、板バネ等)である。
【0050】
中でも、付勢部C90として板バネ(
図6、
図11)を用いた場合は、可動弁部A60を中立弁部30(アーム)に向けて引き込み保持する機能α[閉弁状態(
図7)から機械的な分離動作を促す機能]に加えて、中立弁部30(アーム)に対する可動弁部A60の半径方向の位置を保持する機能βも備えることができるので、より好ましい。
図6は、仕切弁が開弁状態(
図2)にある場合の付勢部C90を示す模式的な断面図である。
図11は、仕切弁が閉弁状態(
図7)にある場合の付勢部C90を示す模式的な断面図である。
図6や
図11に示すように、板バネ(付勢部C90)の両端部に近い部分が、固定ピン92,93によってリング状部材92a、92bを挟んで、中立弁部30の円形部30aの周方向に沿って係止されている。また、板バネの中央部に近い部分が、印圧ピン91によって可動弁部A60の位置規制部65に係止されている。
【0051】
仕切弁が開弁状態(
図2)にある板バネは、曲部90Aを有することにより、高さ方向の距離が縮まった状態、すなわち、中立弁部30(アーム)に対する可動弁部A60の離間距離が狭くなった状態にある(
図6)。
これに対して、仕切弁が閉弁状態(
図7)にある場合の板バネは、
図6に示す曲部90Aを解消することにより、高さ方向の距離が伸びた状態、すなわち、中立弁部30(アーム)に対する可動弁部A60の離間距離が広がった状態にある(
図11)。
このように、付勢部C90として、極めて簡素な構造からなる板バネを採用することで、本発明の実施形態に係る仕切弁における付勢部C90は、上述した2つの機能(機能αと機能β)が安定して得られる。
【0052】
[付勢部A70(昇降機構)]
付勢部A70(昇降機構)は、弁箱に内蔵されており、上述した2つの可動弁部A、可動弁部B及び2つの付勢部B、付勢部Cを含む弁体、とは別体をなしている。
付勢部A70は、後述する可動部72が、可動弁部A60を流路方向Hに沿って、第1開口部12aに向けて付勢して第1シール部61を第1開口部12aの周囲の弁箱内面10Aに密着可能とする機能を有している。複数の付勢部A70が弁箱10に内蔵されている。付勢部A70は、逆に第1シール部61を第1開口部12aの周囲の弁箱内面10Aから離間可能とする機能は有していないが、自ら(後述する可動部72)が初動する位置(後述する固定部71内の位置)に戻る機能は備えている。ゆえに、付勢部A70は、付勢部A70から可動弁部A60へ向かう方向へ伸縮可能な昇降機構である。
【0053】
このような構成を有する複数の付勢部A70は各々、弁箱10において、可動弁部A60に対して作用する位置に配され、かつ、可動弁部A60に沿って設けられる。
図1に示す構成例においては、付勢部A70を設ける箇所は、3箇所以上が好ましく、互いに離間して設けられる。互いに離間する付勢部A70の配置としては、等間隔の配置に限定されず、複数の付勢部A70が非等間隔で配置されている構造が採用されても構わない。
図1は、弁体の中心Oから見て、4個の付勢部A70が同じ角度位置(90度)に配された構成例を示している。
図1に示す構成例における付勢部A70は、付勢部A70の角度位置が前述した付勢部B80と付勢部Cが配置された角度位置と重ならないように構成されている。
【0054】
本実施形態における付勢部A70は、弁箱10の内部に設けられた固定部71と、固定部71から可動弁部A60に向く方向へ伸縮可能な可動部72とから構成されている。
この構成により、付勢部A70は、可動部72の先端部72aを可動弁部A60の下面60sbに当接させて、可動弁部A60を第1開口部12に向けて移動させる機能と、自ら(可動部72)が初動する位置(固定部71内の位置)に戻る機能の2つの機能を有しており、弁体の昇降機構の役割を担う。
【0055】
図2〜
図5は、可動弁部40(可動弁部A60、可動弁部B50)が、弁箱10の何れの弁箱内面10A、10Bとも接していない状態を表わしている。この状態を、弁体がFREEな状態と呼称する。
図6は、FREEな状態(
図2)における付勢部Cの要部を示す拡大図であり、
図2において付勢部Cを紙面奥行き方向に見た図である。
この弁体がFREEな状態において、上述した付勢部A70の機能、すなわち、可動弁部A60を第1開口部12aに向けて移動させる機能により、可動弁部A60を弁箱10の弁箱内面10Aに接するまで移動させ、可動弁部A60を前記弁箱内面10Aに押圧することによって、流路Hを閉鎖する(閉弁動作)。
【0056】
図7〜
図10は、上記の閉弁動作により流路Hが閉鎖された状態を表している。この状態を、正圧/差圧無の状態と呼称する。
図11は、正圧/差圧無の状態(
図7)における付勢部Cの要部を示す拡大図であり、
図7において付勢部Cを紙面奥行き方向に見た図である。
この弁体が正圧/差圧無の状態において、上述した付勢部C90の機能、すなわち、可動弁部A60を中立弁部30に対して流路方向における位置が変更可能に接続するとともに、可動弁部Aを前記流路方向における中央位置に向けて付勢する機能により、可動弁部A60を弁箱10の内面から引き離し、可動弁部A60を退避させることによって、前記流路Hを開放する(解除動作)。
【0057】
このように、本実施形態の仕切弁においては、Oリング等からなる第1シール部61(弁板シールパッキン)とOリング等からなる第3シール部52(摺動シールパッキン)とが、ほぼ同一円筒面上に配置される(例えば、
図3〜
図5に示すラインRに重なるように配置される)ため、約100%の逆圧キャンセル率が得られる。
また、本実施形態の仕切弁における付勢部A70は、弁箱10に内蔵されており、2つの可動弁部A60、可動弁部B50と2つの付勢部B80、付勢部C90とを含む中立弁体5とは別体をなしている。これにより、本実施形態の仕切弁100は、付勢部A70の重量分だけ弁体構造の軽量化が図れる。
ゆえに、本実施形態の仕切弁によれば、高い信頼性の仕切り動作が可能であると共に、弁体の重量が軽減されるので、弁体の上下移動や弁体を旋回移動する際に要する駆動力を抑制できるため、弁体の構成の簡素化および軽量化が実現する。
【0058】
図20〜
図22は従来の仕切弁501を示す図であり、
図20は横断面図を示しており、
図21及び
図22は縦断面図を示している。
図21は、弁体が退避動作可能位置に配置されている場合を示しており、
図22は、弁体が弁閉位置に配置されている場合を示している(特許文献4)。
図20〜
図22に示すように、従来の仕切弁501では、本実施形態の仕切弁100における付勢部A70に相当するリング状のエアシリンダ580が弁体構造に含まれており、エアシリンダ580に対して圧空を導入する供給路541も必要であり、弁体構造が極めて複雑になっていた。これに対して、本発明の実施形態に係る付勢部A70は、弁箱10の内部に配置され、弁体構造に含まれないので、弁体構造の簡素化も図れる。従来の仕切弁501が必須とした供給路541は、本実施形態の仕切弁100においては不要である。
【0059】
ゆえに、本発明の実施形態に係る仕切弁は、弁箱の内部に配置され、弁体構造に含まれない付勢部A70を採用したより、回転軸20を回転可能とする駆動装置として、従来よりも低パワーで駆動する部材や装置を選択することも可能となるので、本発明は省エネルギー型の仕切弁の実現に寄与する。
したがって、本発明は、高い信頼性の仕切り動作が可能であり、可動弁部の軽量化が図れるとともに、100%の逆圧キャンセル率が実現できる、仕切弁の提供に貢献する。
【0060】
なお、
図2は、付勢部A70が、第2開口部12bに近い位置において、弁箱10(10b)に内蔵されている構成を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、第2開口部12bに近い位置に代えて、第1開口部12aに近い位置に付勢部A70を設けても構わない。付勢部A70が可動弁部A60に対して作用できるならば、付勢部A70を設ける位置は自由に設定することが可能である。
【0061】
上述した実施形態においては、
図2に示した付勢部A70は、前記可動弁部A60に対して圧縮力を作用する構成例を示しており、機械的な当接動作によって、閉弁動作を行っているが、本発明はこの構成に限定されない。
圧縮力を作用する機能を備えた付勢部A70としては、例えば、上述したシリンダ機構の他に、圧空機構、電磁機構、等が挙げられる。
【0062】
なお、付勢部A70が前記可動弁部A60に対して圧縮力を作用する機能と、可動弁部A60に対して引張力を作用する機能とを兼ね備えた構成例については、後述する
図17〜
図19に基づき、変形例として説明する。
【0063】
図2に示した付勢部A70は、
図1における線分A−Oに沿う断面図である
図3から明らかなように、
図1において可動弁部A60の下方(紙面奥側)に配されている。すなわち、本実施態様は、付勢部A70が90度ピッチで4箇所に配された構成例を示している。この構成例は、4個の付勢部A70が等間隔で配置された場合を示しているが、本発明は、この構成に限定されるものではなく、付勢部A70の個数は、3個以上の複数であればよく、付勢部A70の間隔は非等間隔であっても構わない。
【0064】
また、本実施態様は、弁箱10の内部に局所的に配されて付勢部A70として機能する部材としてピン状のシリンダを開示しているが、本発明はこの部材に限定されるものではない。例えば、ピン状のシリンダに代えて、リング状のシリンダを、付勢部A70として用いてもよい。
【0065】
[弁体が退避動作可能位置(FREE)の状態]
以下では、
図1〜
図6に基づき、弁体がFREEの状態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る仕切弁の構成を示す横断面図であり、
図2は縦断面図である。
図3は
図1における線分A−Oに沿う要部を示す拡大図、
図4は
図1における線分B−Oに沿う要部に示す拡大図、
図5は
図1における線分C−Oに沿う要部を示す拡大図である。また、
図6は
図2における付勢部Cの要部を示す拡大図である。
【0066】
中立弁体5がFREEの状態とは、中立弁体5が弁箱10の内面(第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面、第2開口部12bの周囲に位置する弁箱10の内面)と接していない状態である。
付勢部A70(昇降機構)は、弁箱10の内部に配置された固定部71と、固定部71から可動弁部A60に向く方向へ伸縮可能な可動部72とから構成されており、固定部71とともに可動部72も弁箱10の内部に配置された状態にある。つまり、中立弁体5とは別体をなす付勢部A70(昇降機構)は、中立弁体5と接していない状態である。
【0067】
換言すると、付勢部A70(昇降機構)は、弁箱10に内蔵されており、2つの可動弁部A60、可動弁部B50、及び付勢部B90を含む中立弁体5とは別体をなしている。
この付勢部A70は、弁箱10の内部に配置された固定部71と、固定部71から可動弁部A60に向く方向へ伸縮可能な可動部72とから構成されている。
この構成により、付勢部A70は、可動部72の先端部72aを可動弁部A60の下面60sbに当接させて、可動弁部A60を第1開口部12に向けて移動させる機能と、可動弁部A60を逆に第1開口部12から離間可能とする機能の2つの機能を有しており、弁体の昇降機構の役割を担う。
【0068】
図3に示すように、付勢部A70を構成する可動部72の先端部72aが、可動弁部A60の下面60sbに当接する(矢印F1)ことにより、中立弁体5を構成する可動弁部A60は、弁箱10の内面(第1開口部12aの周囲の弁箱10の弁箱内面10A)に向けて移動する(矢印F2)。この移動により、第1シール部61(弁板シールパッキン)が弁箱10の弁箱内面10Aに接した状態が、閉弁位置の状態(閉弁状態)である。
可動弁部B50と可動弁部A60とは、保持バネ(付勢部B80)によって符号B1,B2(
図2)で示された方向(往復方向)に第3シール部52を介して摺動しながら移動可能とされているので、この移動時には、可動弁部B50も可動弁部A60と同じ方向へ移動する。
【0069】
[弁体が弁閉位置(正圧or差圧無)の状態]
以下では、
図7〜
図10に基づき、弁体が弁閉位置の状態について説明する。
図7は本発明の実施形態に係る仕切弁の構成を示す縦断面図である。
図8は
図1における線分A−Oに沿う要部を示す拡大図、
図9は
図1における線分B−Oに沿う要部を示す拡大図、
図10は
図1における線分C−Oに沿う要部を示す拡大図である。
【0070】
中立弁体5が弁閉位置の状態とは、中立弁体5が弁箱10の一方の内面(第1開口部12aの周囲の弁箱内面10A)と接した状態であり、他方の内面(第2開口部12bの周囲に位置する弁箱10の内面)とは接していない状態である。
付勢部A70(昇降機構)は、弁箱10の内部に配置された固定部71から可動部72を可動弁部A60に向く方向へ伸延させて、可動部72の先端部72aを可動弁部A60の下面60sbに当接させる。これにより、可動弁部A60を第1開口部12に向けて移動させることにより、可動弁部A60の上面60saに設けた第1シール部61を、弁箱10の第1開口部12aの周囲の弁箱内面10A)と接した状態とする。
【0071】
[弁体が逆圧位置の状態]
以下では、
図12〜
図15に基づき、弁体が逆圧位置の状態について説明する。
図12は本発明の実施形態に係る仕切弁の構成を示す縦断面図である。
図13は
図1における線分A−Oに沿う要部を示す拡大図、
図14は
図1における線分B−Oに沿う要部を示す拡大図、
図15は
図1における線分C−Oに沿う要部を示す拡大図である。
【0072】
中立弁体5が逆圧位置の状態とは、中立弁体5が弁箱10の一方の内面(第1開口部12aの周囲の弁箱内面10A)と接した状態を保ちながら、他方の内面(第2開口部12bの周囲に位置する弁箱10の内面)にも接した状態である。逆圧とは、閉弁状態から開弁状態の方向へ弁体に対して圧力が加わることである。
【0073】
中立弁体5が逆圧を受けた場合、弁体を構成する可動弁部A60と可動弁部B50の間に位置する付勢部B80が機能する。すなわち、可動弁部B50と可動弁部A60とは、付勢部B80によって符号B1,B2(
図12)で示された方向(往復方向)に第3シール部52を介して摺動しながら移動可能とされているので、中立弁体5が逆圧を受けた場合、可動弁部B50は可動弁部A60に対して符号B2の方向へ移動する。
【0074】
これにより、可動弁部B50は、弁箱10の他方の内面(第2開口部12bの周囲の弁箱内面10B)に衝突することになる。この衝突による衝撃を緩和するため、可動弁部B50は、第2シール部51を、第2開口部12bの周囲の弁箱内面10Bに対向する箇所に備えている。このように、中立弁体5が受けた力(符号B2の方向に受けた力)を、弁箱10の弁箱内面10B(裏側のボディ)で受けてもらう機構が、逆圧キャンセル機構である。
【0075】
第2シール部51としては、弾性体が好適に用いられる。可動弁部B50が弁箱10の弁箱内面10Bに衝突した場合、衝突した瞬間に発生するゴミや、弁箱10の弁箱内面10B(裏側のボディ)がミリ単位で変形して微小摺動が起こり発生するゴミを防止する対応策が必要となる。第2シール部51が弾性体であれば、衝突時に弾性体が変形することにより、何れのゴミであっても発生を防ぐことが可能となる。
【0076】
<実施形態の変形例>
図17〜
図19は、本発明の実施形態の変形例における仕切弁の構成を示す縦断面図である。
図17は、弁体が退避動作可能位置(FREE)に配置されている場合において、
図3に相当する線分A−Oに沿う要部を示す拡大図である。
図18は、弁体が弁閉位置(正圧or差圧無)に配置されている場合において、
図8に相当する線分A−Oに沿う要部を示す拡大図である。
図19は、弁体が逆圧位置に配置されている場合において、
図13に相当する線分A−Oに沿う要部を示す拡大図である。
【0077】
図17〜
図19における付勢部A70は、前記可動弁部A60に対して圧縮力を作用する機能と、可動弁部A60に対して引張力を作用する機能とを兼ね備えた構成例を示している。
この2つの機能を兼ね備えるために、変形例の付勢部A70は、弁箱10の内部に配置された固定部71と、固定部71から可動弁部A60に向く方向へ伸縮が可能な可動部72とから構成されており、さらに可動部72の側面には、
図16に示すようなボールプランジャが埋設されている。
【0078】
ここで、「プランジャ」とは、ワークを位置決め・固定するための機械要素部品であり、プランジャは、プランジャ本体と、プランジャ本体に内蔵されたスプリングと、スプリングの先端に位置する先端部材(ボールまたはピン)を備えている。プランジャは、先端部材に荷重が加わると、先端部材はプランジャ本体の内部に沈み込み、荷重が解けるとスプリングの力で先端部材が元の位置に戻る機構を有する。特に、ボールプランジャは、スプリングの先端に位置するボールが動作するプランジャであり、上下方向だけでなく横方向から加わる荷重によってボールを沈み込ませることができるため、スライドする機構の位置決めに適している。
【0079】
ボールプランジャ72Bを可動部72の側面に設けると共に、可動弁部A60において可動部72の先端部が当接する部位65Aに、可動部72の先端部とボールプランジャ72Bの受け手となる凹部65eを配置する。この構成によれば、変形例の付勢部A70は、前記可動弁部A60に対して圧縮力を作用する機能と、可動弁部A60に対して引張力を作用する機能とを兼ね備えることが可能となる。
【0080】
また、この変形例における仕切弁では、可動弁部A60と付勢部A70の一部である可動部72との間にボールプランジャ72Bを設けた構成と同じように、中立弁部30と可動弁部A60の一部である位置規制部65との間にもボールプランジャ65Bを設けた構成を採用する。これにより、上述した実施形態における付勢部C90が不要となる。ゆえに、変形例の仕切弁は、上述した実施形態の仕切弁に比較して、高い信頼性の仕切り動作が可能であると共に、弁体の重量がさらに軽減されるので、弁体の上下移動や弁体を旋回移動する際に要する駆動力を一段と抑制できるため、弁体の構成の簡素化および軽量化が実現する。
【0081】
この変形例における仕切弁では、可動弁部B50と可動弁部A60の一部であり可動弁部B50に重なる位置にある部位67との間には、上述した実施形態と同じ構成からなる付勢部B80が配置されている。ゆえに、この変形例における仕切弁においても、付勢部B80によって、弁体の上下移動や弁体を旋回移動する際に要する駆動力が得られる。
【0082】
つまり、変形例における仕切弁においては、ボールプランジャを設けた構成を採用することにより、上述した実施形態の仕切弁において必須であった、付勢部C90が弁体構造から排除することが可能となる。したがって、変形例によれば、弁体の上下移動や弁体を旋回移動する際に要する駆動力を一段と抑制でき、弁体の構成の簡素化および軽量化が図れる仕切弁をもたらす。
なお、この変形例では、2つのボールプランジャ72B、65Bを設けた構成を開示したが、必ずしも2つのボールプランジャを一緒に組込む必要はない。すなわち、上述した実施形態の仕切弁において、2つのボールプランジャ72B、65Bを設けた構成のうち、何れか1つを採用しても構わない。
【0083】
また、複数個の付勢部A70が弁箱10の内部に配置される場合、付勢部A70として、例えば、上述した実施形態に示した「可動弁部Aに対して圧縮力を作用する構造(第1構造)」と、上述した変形例に示した「可動弁部Aに対して圧縮力を作用する機能と、可動弁部A60に対して引張力を作用する機能とを兼ね備えた構造(第2構造)」とを、交互に配置する構成が採用されてもよい。あるいは、2つの第1構造の間に複数の第2構造が配置された構造や、2つの第2構造の間に複数の第1構造が配置された構造が採用されてもよい。
本発明の仕切弁は、中空部と、前記中空部を挟み互いに対向するように設けられて連通する流路となる第1開口部及び第2開口部とを有する弁箱と、前記弁箱の前記中空部内に配置され前記第1開口部を閉塞可能な中立弁体と、前記中立弁体を前記第1開口部に対して閉塞状態にする弁閉塞位置と、前記中立弁体を前記第1開口部から退避した開放状態にする弁開放位置との間で、前記中立弁体を動作する位置切り替え部として機能し、流路方向に延在する軸線を有する回転軸と、を具備する。前記中立弁体は、前記位置切り替え部に接続される中立弁部と、前記中立弁部に対して前記流路方向における位置が変更可能に接続される可動弁部と、を有する。前記可動弁部は、前記可動弁部に周設され前記第1開口部の周囲の弁箱内面に密着されるシール部が設けられるとともに前記中立弁部に対して前記流路方向における位置が変更可能に接続される第1可動弁部と、前記第1可動弁部に対して前記流路方向に摺動可能とされる第2可動弁部と、を有する。本発明の仕切弁は、前記弁箱に内蔵されている複数の第1付勢部と、前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との間に配されている第2付勢部と、第3付勢部とを備える。前記第3付勢部は、前記第1可動弁部を前記中立弁部に対して前記流路方向における位置が変更可能に接続するとともに、前記第1可動弁部を前記流路方向における中央位置に向けて付勢する。複数の前記第1付勢部は、前記第1可動弁部を前記流路方向において前記第1開口部に向けて付勢して前記シール部を前記第1開口部の周囲の弁箱内面に密着可能とする機能を有する。前記第2付勢部は、前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との前記流路方向における厚み寸法を、調整が可能なように駆動する。