(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円板状ワークを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルが保持する円板状ワークに当接して研削する研削砥石を環状に配置した研削ホイールを回転可能に装着する研削手段と、を備えた研削装置において、
該研削砥石は、円板状ワークの中心を通過し円板状ワークの半径より大きい直径の内径で環状に配置され、円板状ワークの中心を該研削砥石が通過するように位置付ける事で研削中に円板状ワークより外にはみ出しているはみ出し部分が形成され、
該研削砥石の該はみ出し部分における研削面にレーザー光を照射する第1の照射手段と、該研削砥石で研削される円板状ワークの被研削面にレーザー光を照射する第2の照射手段とを備え、
該第1の照射手段は、該第1の照射手段により照射されたレーザー光を該はみ出し部分の該研削面に集光させる第1の集光レンズを備え、該第2の照射手段は、該第2の照射手段により照射されたレーザー光を円板状ワークの該被研削面に集光させる第2の集光レンズを備え、
該第1の集光レンズは該研削砥石の幅に対応した幅の第1のシリンドリカルレンズで構成され、該第2の集光レンズは該チャックテーブルの半径に対応した幅の第2のシリンドリカルレンズで構成され、
円板状ワークを研削中に該第1の照射手段により該研削砥石の該はみ出し部分における該研削面にレーザー光を照射するとともに該第1の集光レンズによりレーザー光を該研削砥石の幅に対応するように集光する一方、該第2の照射手段により円板状ワークの該被研削面にレーザー光を照射するとともに該第2の集光レンズによりレーザー光を該チャックテーブルの半径に対応するように集光する研削装置。
該第1の集光レンズを該研削面の高さに応じて昇降する第1の移動手段と、該第2の集光レンズを該被研削面の高さに応じて昇降する第2の移動手段と、を備える請求項2記載の研削装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の複数の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る研削装置においては、被加工物である円板状ワーク及びこの円板状ワークを研削する研削砥石に対してレーザー光を照射する単一又は複数の照射手段を備え、レーザー光により円板状ワークを研削し易くする一方、研削砥石をドレッシングすることにより、研削砥石の磨耗量を低減しつつ、硬度の高い被加工物に対して効率的な研削加工を施すものである。
【0017】
なお、以下においては、サファイアや炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)など硬度の高い被加工物としての円板状ワーク(半導体ウエーハ)を研削して所定の厚みに加工する研削装置について説明する。しかしながら、本発明に係る研削装置における被加工物としての円板状ワークの材質については、これらに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る研削装置1の外観を示す斜視図である。以下においては、説明の便宜上、
図1に示す左下方側を研削装置1の前方側と呼び、同図に示す右上方側を研削装置1の後方側と呼ぶものとする。また、以下においては、説明の便宜上、
図1に示す上下方向を研削装置1の上下方向と呼ぶものとする。なお、
図1においては、後述する研削ホイール51がチャックテーブル31に保持された円板状ワークWを研削する位置に配置された状態について示している。
【0019】
図1に示すように、研削装置1は、概して直方体状の基台2を有している。基台2の上面には、チャックテーブル31を支持するテーブル支持台3が設けられている。テーブル支持台3の後方側には、支柱部4が設けられている。この支柱部4の前面には、上下方向に移動可能に研削ユニット5が支持されている。基台2の内部及び研削ユニット5の近傍には、研削ユニット5が有する研削砥石52及びチャックテーブル31に保持された円板状ワークWにレーザー光を照射するレーザー照射機構6の構成部品が配置されている。
【0020】
このような構成を有し、本実施の形態に係る研削装置1においては、研削ユニット5の研削砥石51と、円板状ワークWを保持したチャックテーブル31とを相対回転させて円板状ワークWに研削加工を施すように構成されている。また、本実施の形態に係る研削装置1においては、研削加工中にレーザー照射機構6から研削ユニット5が有する研削砥石52及びチャックテーブル31に保持された円板状ワークWにレーザー光を照射するように構成されている。
【0021】
テーブル支持台3は、上面視にて正方形状に設けられ、チャックテーブル31を回転可能に支持する。テーブル支持台3は図示しない駆動機構に接続され、この駆動機構から供給される駆動力により、基台2の上面に形成された開口部2a内を前後方向にスライド移動する。これにより、チャックテーブル31は、研削ユニット5に円板状ワークWの一部を対向させる研削位置と、この研削位置から前方側に離間し、加工前の円板状ワークWが供給される一方、加工後の円板状ワークWが回収される載せ換え位置との間でスライド移動される。
【0022】
テーブル支持台3の前後には、円板状ワークWの研削加工時に発生する研削砥石51の研削屑等の基台2内への侵入を防止する防塵カバー7が設けられている。防塵カバー7は、テーブル支持台3の前面及び後面に取り付けられると共に、その移動位置に応じて伸縮可能に設けられ、基台2の開口部2aを覆うように構成されている。
【0023】
チャックテーブル31は、円盤状に形成され、その上面に円板状ワークWが保持される保持面31aが形成されている(
図3参照)。保持面31aの中央部分には、ポーラスセラミック材により吸着面が形成されている。チャックテーブル31は、基台2内に配置された図示しない吸引源に接続され、保持面31aの吸着面で円板状ワークWを吸着保持する。また、チャックテーブル31は、図示しない回転駆動機構に接続され、この回転駆動機構により保持面31aに円板状ワークWを保持した状態で回転される。
【0024】
支柱部4は、直方体状に設けられ、その前面にはチャックテーブル31の上方において研削ユニット5を移動させる研削ユニット移動機構41が設けられている。研削ユニット移動機構41は、支柱部4に対してボールねじ式の移動機構により上下方向に移動するZ軸テーブル42を有している。Z軸テーブル42には、その前面側に取り付けられた支持部43を介して研削ユニット5が支持されている。
【0025】
研削ユニット5は、研削手段を構成するものであり、図示しないスピンドルの下端に回転可能に装着された研削ホイール51を有している。研削ホイール51の下面には、複数の研削砥石52が設けられている。これらの研削砥石52は、研削ホイール51の下面にて環状に配置されている。各研削砥石52は、例えば、ダイヤモンドの砥粒をメタルボンドやレジンボンド等の結合剤で固めたダイヤモンド砥石で構成される。研削加工時においては、これらの研削砥石52が当接して円板状ワークWを研削する。
【0026】
ここで、研削加工時における研削ホイール51と円板状ワークWとの位置関係について
図2を参照しながら説明する。
図2は、本実施の形態に係る研削装置1の研削加工時における研削ホイール51と円板状ワークWとの位置関係を説明するための模式図である。
図2においては、研削加工時における研削ホイール51及び円板状ワークWを上方側から示している。また、
図2においては、説明の便宜上、研削ホイール51の下面に配列される研削砥石52を示すと共に斜線を付与している。
【0027】
図2に示すように、研削ホイール51の直径は、円板状ワークWの直径と略同一の寸法で構成されている。研削ホイール51の下面の外周縁には、複数の研削砥石52が環状に配列されている。研削加工時において、研削ホイール51は、研削砥石52が常に円板状ワークWの中心を通過する位置に配置されている。このため、複数の研削砥石52の一部の研削砥石52は、円板状ワークWに対向して配置されず、円板状ワークWより外にはみ出している。
【0028】
なお、ここでは研削ホイール51の直径が円板状ワークWの直径と略同一の寸法で構成される場合について示している。しかしながら、研削ホイール51の構成については、複数の研削砥石52が、円板状ワークWに対向して配置されず、円板状ワークWより外側にはみ出す部分を有することを条件として適宜変更が可能である。例えば、円板状ワークWより外側にはみ出す部分は、複数の研削砥石52が、円板状ワークWの半径より大きい直径の内径で環状に配置されることで形成される。
【0029】
図1に戻り、本実施の形態に係る研削装置1の構成要素の説明を続ける。レーザー照射機構6は、特許請求の範囲における第3の照射手段を構成するものであり、レーザー発光部601と、λ/2波長板602と、分割器603と、複数のミラー604a〜604cと、第1の集光レンズ605、第2の集光レンズ606とを含んで構成される。例えば、レーザー発光部601、λ/2波長板602、分割器603、複数のミラー604a及び第1の集光レンズ605は基台2内に配置される。ミラー604bは、基台2の上面に突出して設けられた収容部21に収容される。ミラー604c及び第2の集光レンズ606は、基台2の上面に設けられた支持アームに支持される。
【0030】
ここで、本実施の形態に係る研削装置1が有するレーザー照射機構6の構成及びレーザー光の光路について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、本実施の形態に係る研削装置1が有するレーザー照射機構6の構成及びレーザー光の光路について説明するための模式図である。
図3においては、レーザー照射機構6、そのレーザー照射対象を含むチャックテーブル31及び研削ホイール51のみを示している。また、
図3においては、研削ホイール51がチャックテーブル31に保持された円板状ワークWを研削する位置に配置された状態について示している。
【0031】
図3に示すレーザー照射機構6において、レーザー発光部601は、研削装置1の上方側に向けてレーザー光を放射する。レーザー発光部601は、異なる波長を有する第1、第2のレーザー光を放射することができる。例えば、第1のレーザー光は、波長が515nm、パワーが約20W、パルス幅が約8ps、繰り返し周波数が200kHzに設定される。一方、第2のレーザー光は、波長が1030nm、パワーが約20W、パルス幅が約8ps、繰り返し周波数が200kHzに設定される。また、第1のレーザー光の波長、第2のレーザー光の波長をそれぞれ257nm、515nmに設定することもできる。なお、第1のレーザー光は、円板状ワークWの被研削面Waにグルーブを形成する際に利用され、第2のレーザー光は、円板状ワークWの被研削面Waに改質層を形成する際に利用される。
【0032】
分割器603は、レーザー発光部601の上方側に配置される。分割器603は、レーザー発光部601から放射されたレーザー光を直進する方向と直交する方向との2方向に分割する。例えば、分割器603は、ビームスプリッター、ハーフミラー、ダイクロックミラーで構成することができる。ここでは、分割器603がビームスプリッターで構成されるものとする。ビームスプリッターは、入射されたレーザー光の一部を反射し、一部を透過させる。分割器603においては、入射されたレーザー光を直交する方向に反射させる。
【0033】
なお、分割器603をハーフミラーで構成することもできる。ハーフミラーは、ビームスプリッターの一種であり、反射光の強度と透過光の強度とを同等にする光学装置である。また、分割器603をダイクロックミラーで構成することもできる。ダイクロックミラーは、特殊な光学素材を用いて作成された鏡の一種であり、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過する光学装置である。その為、レーザー発光部601から異なる波長を有するレーザー光が放射される場合に利用することが可能である。ここで、異なる波長を有するレーザー光線とは、同一光路上に2つの波長が含まれているレーザー光線を指す。例えば、異なる波長を有するレーザー光線は、515umと1030umまたは257umと515umのように2つの波長を含む。このようなレーザー光線をダイクロックミラーに入射させることで、波長によって分割することができる。
【0034】
λ/2波長板602は、レーザー発光部601と分割器603との間の光路上に配置されている。λ/2波長板602は、レーザー発光部601から放射されたレーザー光の光量を変化させることなくその偏光状態(偏光面)を変化させる。例えば、λ/2波長板602は、研削装置1に採用される分割器603の種別及び状態に応じて、レーザー光の直線偏光の偏光方位を変化可能に構成される。また、λ/2波長板602とビームスプリッターとを組み合わせて利用することにより、透過光量及び反射光量の調整や、透過光と反射光との光量比調整を行うことができる。
【0035】
ミラー604aは、分割器603の側方側であって、研削ホイール51の下方側の位置に配置される。ミラー604aは、分割器603により直交方向に分割されたレーザー光の光路上に配置され、このレーザー光を研削装置1の上方側に反射させる。例えば、ミラー604aは、ガルバノミラー、ポリゴンミラーやPZTミラーで構成され、反射角度を調整可能に構成されている。例えば、ミラー604aは、第1の集光レンズ605により集光されるレーザー光が研削砥石52の厚み方向の寸法(
図2に示すL1)を走査可能にレーザー光の反射角度を調整する。
【0036】
第1の集光レンズ605は、ミラー604aの上方側であって、このミラー604aと研削ホイール51との間の位置に配置される。第1の集光レンズ605は、ミラー604aにより反射されたレーザー光の光路上に配置され、レーザー光を研削砥石52の研削面52aに集光する。より具体的にいうと、第1の集光レンズ605は、研削ホイール51の下面に設けられた複数の研削砥石52のうち、円板状ワークWと対向していない研削砥石52の研削面52aでレーザー光を集光させる。なお、第1の集光レンズ605により集光されたレーザー光は、基台2に形成された開口部23を介して研削砥石52の研削面52aに照射される。
【0037】
例えば、第1の集光レンズ605は、研削砥石52の幅方向の寸法(
図2に示すL2)に対応する幅を有するシリンドリカルレンズ(第1のシリンドリカルレンズ)で構成される。このようなシリンドリカルレンズで第1の集光レンズ605を構成することにより、レーザー発光部601からのレーザー光を研削砥石52の幅に対応するように線状に集光することができる。これにより、レーザー発光部601からのレーザー光を用いて研削砥石52の研削面52aを幅方向に一括的にドレッシングすることができる。
【0038】
ミラー604bは、分割器603の上方側であって、分割器603により直進方向に分割されたレーザー光の光路上に配置され、このレーザー光を研削装置1の側方側(研削ホイール51側)に反射させる。なお、分割器603から直進方向に分割されたレーザー光は、基台2に形成された開口部24を介してミラー604bに入射される。ミラー604bは、上述したミラー604aと異なり、反射角度が固定される。例えば、ミラー604bは、高い反射特性を有する金属膜又は誘電体多層膜を基板(ガラスや金属)の表面に蒸着した表面鏡で構成される。
【0039】
ミラー604cは、ミラー604bにより反射されたレーザー光の光路上であって、研削位置に配置されたチャックテーブル31の上方側に配置される。ミラー604cは、第2の集光レンズ606により集光されたレーザー光をチャックテーブル31側に反射させる。例えば、ミラー604cは、ガルバノミラー、ポリゴンミラーやPZTミラーで構成され、反射角度を調整可能に構成されている。例えば、ミラー604cは、第2の集光レンズ606により集光されるレーザー光がチャックテーブル31の半径に対応した幅を走査可能にレーザー光の反射角度を調整する。
【0040】
第2の集光レンズ606は、ミラー604bの側方側であって、ミラー604bとミラー604cとの間に配置される。第2の集光レンズ606は、ミラー604bにより反射されたレーザー光の光路上に配置され、ミラー604cで反射したレーザー光を円板状ワークWの被研削面Waに集光する。より具体的にいうと、第2の集光レンズ606は、研削ホイール51の研削砥石52により研削が行われている円板状ワークWの被研削面Waでレーザー光を集光させる。
【0041】
例えば、第2の集光レンズ606は、チャックテーブル31の半径に対応した幅を有するシリンドリカルレンズ(第2のシリンドリカルレンズ)で構成することができる。このようなシリンドリカルレンズで第2の集光レンズ606を構成することにより、レーザー発光部601からのレーザー光をチャックテーブルの半径に対応するように線状に集光することができる。これにより、レーザー発光部601からのレーザー光を用いて円板状ワークを半径方向に一括的に研削し易くすることができる。
【0042】
以下、本実施の形態に係る研削装置1における研削加工時の動作について説明する。研削加工時においては、まず、円板状ワークWを保持したチャックテーブル31が研削位置に搬送されると共に、研削ユニット移動機構41により研削砥石52が円板状ワークWの被研削面Waに当接する位置に研削ユニット5が下方移動される。その際、回転駆動機構からチャックテーブル31及び研削ホイール5に対して駆動力が供給され、チャックテーブル31及び研削ホイール51が同一方向に回転駆動される。これにより、研削砥石52の研削面52aが円板状ワークWの被研削面Waに接触しながら回転し研削加工が行われる。
【0043】
研削砥石52による円板状ワークWに対する研削加工中において、レーザー照射機構6のレーザー発光部601からレーザー光線が放射される。レーザー発光部601から放射されたレーザー光は、λ/2波長板602を通過して分割器603に入射する。λ/2波長板602を通過する際、レーザー光は、その光量が変化することなく分割器603に適した偏光状態に調整される。分割器603に入射したレーザー光は、反射光として直交方向に分割される一方、透過光として直進方向に分割される。直交方向に分割されたレーザー光は、ミラー604aで反射して第1の集光レンズ605に入射し、研削砥石52の研削面52aに集光される。このように集光されるレーザー光により研削砥石52の研削面52aがドレッシングされる。このドレッシングによって研削砥石52内の刃が目立てされ、研削砥石52の研削性能が高められる。
【0044】
一方、直進方向に分割されたレーザー光は、ミラー604bで反射して第2の集光レンズ606に入射し、ミラー604cで反射して円板状ワークWの被研削面Waに集光される。このように集光されるレーザー光により円板状ワークWの被研削面Waに対して改質層又はグルーブが形成される。例えば、レーザー発光部601から第1のレーザー光が放射される場合、被研削面Waの一部が揮発してグルーブが形成される。一方、レーザー発光部601から第2のレーザー光が放射される場合、被研削面Waの一部に改質層が形成される。被研削面Waにグルーブ又は改質層が形成されると、研削砥石52内の刃が被研削面Waに引っかかり易くなり、円板状ワークWが研削し易い状態となる。
【0045】
このような研削加工により円板状ワークWが所定の厚み寸法に到達すると研削加工が停止される。そして、研削ユニット移動機構41により研削ホイール51がチャックテーブル31から離反された後、チャックテーブル31が載せ換え位置まで搬送される。載せ換え位置にて、円板状ワークWがチャックテーブル31から搬出されることにより、一連の研削加工時の一連の動作が終了する。
【0046】
このように本実施の形態に係る研削装置1によれば、レーザー照射機構6のレーザー発光部601からのレーザー光による円板状ワークWの被研削面Waに対する改質層又はグルーブの形成を通じて円板状ワークWを研削し易くできる。一方、レーザー発光部601からのレーザー光による研削砥石52の研削面52aのドレッシングを通じて研削砥石52の研削性能を高めることができる。このため、円板状ワークWを研削し易い状態とし、研削砥石52の研削性能を高めながら円板状ワークWの研削加工を行うことができる。これにより、硬度の高い被加工物に対して効率的な研削加工を施すことが可能となる。また、円板状ワークWを研削し易い状態としながら研削加工を行うので、研削砥石52の磨耗を低減すると共に、摩耗した場合に必要なドレッシング処理量を低減できる。この結果、研削砥石52を長寿命化しつつ、硬度の高い被加工物に対して効率的な研削加工を施すことが可能となる。
【0047】
特に、本実施の形態に係る研削装置1においては、レーザー照射機構6が備える単一のレーザー発光部601から放射されたレーザー光を分割器603で分割すると共に、第1の集光レンズ605及び第2の集光レンズ606でそれぞれ研削砥石52の研削面52a及び円板状ワークWの被研削面Waに集光することができる。これにより、単一のレーザー発光部601からのレーザー光を用いて円板状ワークWを研削し易い状態としながら、研削砥石52の研削性能を高めることが可能となる。
【0048】
また、本実施の形態に係る研削装置1においては、レーザー照射機構6にて、レーザー発光部601と分割器603との間にλ/2波長板602を配置している。これにより、分割器603で分割される前にレーザー発光部601からのレーザー光をλ/2波長板602に入射できるので、光量を変化させることなくレーザー光の偏光状態を変化させることができる。この結果、分割器603による分割態様に適した偏光状態とでき、レーザー発光部601からのレーザー光を効率的に分割することが可能となる。特に、分割器603をビームスプリッターで構成することにより、透過光量及び反射光量の調整や、透過光と反射光との光量比調整を行うことができる。
【0049】
なお、上記実施の形態においては、研削加工の実行に伴い、レーザー照射機構6によるレーザー光の照射対象(研削砥石52の研削面52a及び円板状ワークWの被研削面Wa)の位置(研削装置1の上下方向の高さ位置)が変化する。このようなレーザー光の照射対象の位置の変化に対応すべく、第1、第2の集光レンズ605、606によるレーザー光の集光位置を調整することは実施の形態として好ましい。
【0050】
このような第1、第2の集光レンズ605、606によるレーザー光の集光位置の調整は、例えば、第1の集光レンズ605を研削砥石52の研削面52aの高さに応じて移動させる第1の移動手段、第2の集光レンズ606を円板状ワークWの被研削面Waの高さに応じて移動させる第2の移動手段によって実現することができる。
【0051】
また、第1、第2の集光レンズ605、606までのレーザー光の光路上に配置されるミラー604a、604bの位置を移動する移動手段を備え、第1、第2の集光レンズ605、606を通過した後のレーザー光の光路長を調整することで、第1、第2の集光レンズ605、606によるレーザー光の集光位置を調整することも可能である。
【0052】
さらに、分割器603から第1、第2の集光レンズ605、606までの光路上に凹レンズ又は凸レンズを配置し、これらの凹レンズ又は凸レンズにおける曲率を変化させることで第1、第2の集光レンズ605、606によるレーザー光の集光位置を調整することも可能である。
【0053】
これらのように第1、第2の集光レンズ605、606によるレーザー光の集光位置を調整することにより、研削加工の実行に伴って変化するレーザー光の照射対象位置に追随して円板状ワークWを研削し易い状態とし、研削砥石52の研削性能を高めながら円板状ワークWの研削加工を行うことができる。これにより、例えば、研削加工が長時間に亘る場合においても、硬度の高い被加工物に対して効率的な研削加工を継続して実行することが可能となる。
【0054】
また、以上の説明においては、レーザー照射機構6の構成要素に関し、レーザー発光部601、λ/2波長板602や分割器603等を基台2内に配置する場合について説明している。しかしながら、レーザー照射機構6の構成要素の配置については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。これらの構成要素は、レーザー発光部601から被照射対象までの光路長や研削装置1における他の構成部品との干渉状況等に応じて任意の位置に配置することができる。また、これらの構成要素の配置を実現するためにミラー604の数量や種別を適宜変更することもできる。
【0055】
例えば、
図4に示すように、レーザー発光部601、λ/2波長板602及び分割器603をチャックテーブル31の上方側に配置する一方、ミラー604bを基台2内に配置するようにしてもよい。
図4に示すレーザー照射機構6においては、第2の集光レンズ606の側方に分割器603が配置されると共に、この分割器603の側方にλ/2波長板602及びレーザー発光部601が配置されている。
【0056】
図4に示すレーザー照射機構6において、レーザー発光部601から放射されたレーザー光は、λ/2波長板602を通過して分割器603に入射される。分割器603において、透過光として直進方向に分割されたレーザー光は、第2の集光レンズ606に入射され、ミラー604cで反射して円板状ワークWの被研削面Waに集光される。一方、反射光として直交方向に分割されたレーザー光は、ミラー604b及びミラー604aで反射して第1の集光レンズ605に入射し、研削砥石52の研削面52aに集光される。
【0057】
このように
図4に示すレーザー照射機構6の構成要素を配置した場合においても、上記実施の形態と同様に、第1、第2の集光レンズ605、606で集光されるレーザー光により研削砥石52の研削面52aがドレッシングされると共に、円板状ワークWの被研削面Waに対して改質層又はグルーブが形成される。これにより、円板状ワークWが研削し易い状態とされる一方、研削砥石52の研削性能を高めながら研削加工が行われる。この結果、研削砥石52を長寿命化しつつ、硬度の高い被加工物に対して効率的な研削加工を施すことが可能となる。
【0058】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態においては、円板状ワークWの被研削面Waに対してチャックテーブル31の上方側からレーザー光を照射する。これに対し、第2の実施の形態においては、円板状ワークWの被研削面Waに対してチャックテーブル31の下方側からレーザー光を照射する点において第1の実施の形態と相違する。以下、第2の実施の形態に係る研削装置の構成について、第1の実施の形態に係る研削装置1との相違点を中心に説明する。
【0059】
第2の実施の形態に係る研削装置は、チャックテーブル31及びレーザー照射機構6の構成において第1の実施の形態に係る研削装置1と相違する。チャックテーブル31及びレーザー照射機構6以外の構成要素については、第1の実施の形態に係る研削装置1と共通するため、その説明を省略する。
【0060】
図5は、第2の実施の形態に係る研削装置が有するレーザー照射機構の構成及びレーザー光の光路を説明するための模式図である。なお、
図5において、
図3に示す研削装置1と共通の構成要素については同一の符号を付与し、適宜その説明を省略する。
【0061】
第2の実施の形態に係るチャックテーブル131は、円板状ワークWに対して透過性を有する波長のレーザー光を透過可能な素材で形成される点で第1の実施の形態に係るチャックテーブル31と相違する。例えば、チャックテーブル131は、ガラス等の透明材料で構成される。構成する材料を除き、チャックテーブル131は、第1の実施の形態に係るチャックテーブル31と同一の機能を有する。
【0062】
また、第2の実施の形態に係るレーザー照射機構16は、全ての構成要素が基台2内に収容されると共に、レーザー発光部1601が円板状ワークWに対して透過性を有する波長のレーザー光を放射する点にて、第1の実施の形態に係るレーザー照射機構6と相違する。なお、このレーザー照射機構16は、特許請求の範囲における第4の照射手段を構成する。
【0063】
図5に示すように、レーザー照射機構16は、レーザー発光部1601と、λ/2波長板1602と、分割器1603と、複数のミラー1604a〜1604cと、第1の集光レンズ1605、第2の集光レンズ1606と、第1の移動手段1607と、第2の移動手段1608とを含んで構成される。なお、λ/2波長板1602、分割器1603、ミラー1604c、第1の集光レンズ1605及び第2の集光レンズ1606は、第1の実施の形態と同一の機能を有する。
【0064】
第1の移動手段1607は、第1の集光レンズ1605に接続され、第1の集光レンズ1605を研削砥石52の研削面52aの高さに応じて移動させる役割を果たす。第2の移動手段1608は、第2の集光レンズ1606に接続され、第2の集光レンズ1606を円板状ワークWの被研削面Waの高さに応じて移動させる役割を果たす。
【0065】
レーザー照射機構16においては、レーザー発光部1601の上方にλ/2波長板1602、分割器1603及びミラー1604aが配置されている。ミラー1604bは、分割器1603により直交方向に分割されたレーザー光の光路上に配置され、上方側(研削ホイール51側)にレーザー光を反射させる。例えば、ミラー1604bは、ガルバノミラー、ポリゴンミラーやPZTミラーで構成され、反射角度を調整可能に構成されている。第1の集光レンズ1605は、ミラー1604bの上方側であって、このミラー1604bと研削ホイール51との間の位置に配置される。第1の集光レンズ1605は、ミラー1604bにより反射されたレーザー光の光路上に配置され、レーザー光を研削砥石52の研削面52aに集光する。
【0066】
ミラー1604aは、分割器1603により直進方向に分割されたレーザー光の光路上に配置され、側方側にレーザー光を反射させる。例えば、ミラー1604aは、高い反射特性を有する金属膜又は誘電体多層膜を基板(ガラスや金属)の表面に蒸着した表面鏡で構成される。ミラー1604cは、ミラー1604aにより反射されたレーザー光の光路上であって、研削位置に配置されたチャックテーブル131の下方側に配置される。ミラー1604cは、第2の集光レンズ1606により集光されたレーザー光をチャックテーブル31側に反射させる。例えば、ミラー1604cは、ガルバノミラー、ポリゴンミラーやPZTミラーで構成され、反射角度を調整可能に構成されている。例えば、ミラー1604cは、第2の集光レンズ1606により集光されるレーザー光がチャックテーブル131の半径に対応した幅を走査可能にレーザー光の反射角度を調整する。
【0067】
第2の集光レンズ1606は、ミラー1604aの側方側であって、ミラー1604aとミラー1604cとの間に配置される。第2の集光レンズ1606は、ミラー1604aにより反射されたレーザー光の光路上に配置され、ミラー1604cで反射したレーザー光を円板状ワークWの被研削面Waに集光する。より具体的にいうと、第2の集光レンズ1606は、研削ホイール51の研削砥石52により研削が行われている円板状ワークWの被研削面Waでレーザー光を集光させる。例えば、第2の集光レンズ1606は、チャックテーブル31の半径に対応した幅を有するシリンドリカルレンズで構成することができる。
【0068】
第2の実施の形態においても、研削砥石52による円板状ワークWに対する研削加工中において、レーザー照射機構16のレーザー発光部1601からレーザー光線が放射される。レーザー発光部1601から放射されたレーザー光は、λ/2波長板1602を通過して分割器1603に入射する。分割器1603に入射したレーザー光は、反射光として直交方向に分割される一方、透過光として直進方向に分割される。直交方向に分割されたレーザー光は、ミラー1604bで反射して第1の集光レンズ1605に入射し、研削砥石52の研削面52aに集光される。このように集光されるレーザー光により研削砥石52の研削面52aがドレッシングされる。このドレッシングによって研削砥石52内の刃が目立てされ、研削砥石52の研削性能が高められる。
【0069】
一方、直進方向に分割されたレーザー光は、ミラー1604aで反射して第2の集光レンズ1606に入射し、ミラー1604cで反射して円板状ワークWの被研削面Waに集光される。このように集光されるレーザー光により円板状ワークWの被研削面Waに対して改質層が形成される。このように被研削面Waに改質層が形成されることにより、研削砥石52内の刃が被研削面Waに引っかかり易くなり、円板状ワークWが研削し易い状態となる。
【0070】
このように本実施の形態に係る研削装置によれば、レーザー照射機構16のレーザー発光部1601からのレーザー光による円板状ワークWの被研削面Waに対する改質層の形成を通じて円板状ワークWを研削し易くできる。一方、レーザー発光部1601からのレーザー光による研削砥石52の研削面52aのドレッシングを通じて研削砥石52の研削性能を高めることができる。このため、円板状ワークWを研削し易い状態とし、研削砥石52の研削性能を高めながら円板状ワークWの研削加工を行うことができる。また、円板状ワークWを研削し易い状態としながら研削加工を行うので、研削砥石52の磨耗を低減すると共に、摩耗した場合に必要なドレッシング処理量を低減できる。この結果、研削砥石52を長寿命化しつつ、硬度の高い被加工物に対して効率的な研削加工を施すことが可能となる。
【0071】
特に、本実施の形態に係る研削装置においては、第1及び第2の移動手段1607、1608によりそれぞれ第1及び第2の集光レンズ1605、1606を所望の高さ位置に移動することができる。これにより、レーザー発光部1601からのレーザー光を適切に研削砥石52の研削面52a、円板状ワークWの被研削面Waの高さに応じて集光でき、効果的に円板状ワークWを研削し易い状態としながら研削砥石52の研削性能を高めることが可能となる。つまり、研削砥石52で研削される円板状ワークWの被研削面Waの高さは研削されるに従って下がって来る。第2の移動手段1608は、その下がって来る被研削面Waの高さに応じて第2の集光レンズ1606を移動させ集光点の高さを調整する。また、研削する研削砥石52の研削面52aの高さも研削するに従って下がって来る。第1の移動手段1607は、その下がって来る研削面52aの高さに応じて第1の集光レンズ1605を移動させ集光点の高さを調整する。これにより、第1、第2の集光レンズ1605、1606による集光点の高さを常に適切な位置に調整でき、円板状ワークWを研削し易い状態としながら研削砥石52の研削性能を高めることができる。
【0072】
また、本実施の形態に係る研削装置においては、チャックテーブル131の下からチャックテーブル131と円板状ワークWとを透過させ、円板状ワークWの被研削面Waに集光されることから、円板状ワークWの上からレーザー光を照射させる場合と比べてレーザー光の光路長を短縮することが可能となる(
図3、
図5参照)。これにより、レーザー発光部1601によるレーザー光の放射開始から短時間で円板状ワークWを研削し易い状態としながら研削砥石52の研削性能を高めることが可能となる。
【0073】
さらに、本実施の形態に係る研削装置においては、チャックテーブル131の下からチャックテーブル131と円板状ワークWとを透過させ、円板状ワークWの被研削面Waに集光されることから、円板状ワークWの上からレーザー光を照射させる場合と比べて被研削面Waに形成される改質層の領域を広く確保することができる。
【0074】
以下、第1、第2の実施の形態に係る研削装置で円板状ワークWの被研削面Waに形成される改質層の領域について説明する。
図6A、
図6Bは、それぞれ第1、第2の実施の形態に係る研削装置で円板状ワークWの被研削面Waに形成される改質層を説明するための模式図である。
図6においては、円板状ワークWの被研削面Waに形成される改質層の領域(改質層領域)をML(ML1、ML2)と示している。
【0075】
図6Aに示すように、第1の実施の形態に係る研削装置1においては、チャックテーブル31の上方側からレーザー光を照射するため、レーザー光がチャックテーブル31の上方側に配置される研削ホイール51と干渉する。このため、改質層領域ML1は、研削ホイール51の外側に配置される円板状ワークWの被研削面Waに形成される。研削加工時において、研削ホイール51は、研削砥石52が常に円板状ワークWの中心を通過するように配置される。このため、円板状ワークWの中央位置には、改質層領域ML1が形成されることはない。
【0076】
これに対し、第2の実施の形態に係る研削装置においては、チャックテーブル131の上方側からレーザー光を照射するため、第1の実施の形態のような制約がない。このため、改質層領域ML2は、円板状ワークWの中心を含んで形成される。このように円板状ワークWの被研削面Waに改質層領域ML2が形成されることから、円板状ワークWの被研削面Waをムラなく研削し易い状態とすることができる。
【0077】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0078】
例えば、上記実施の形態においては、単一のレーザー照射機構6(16)を備え、単一のレーザー発光部601(1601)からのレーザー光を分割器603(1603)で分割して研削砥石52の研削面52a及び円板状ワークWの被研削面Waに照射する場合について説明している。しかしながら、研削砥石52の研削面52a及び円板状ワークWの被研削面Waにレーザー光を照射する構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、研削砥石52の研削面52a、円板状ワークWの被研削面Waにレーザー光をそれぞれ照射する第1、第2照射手段を個別に備える構成としても良い。このように第1、第2照射手段からそれぞれ研削砥石52の研削面52a、円板状ワークWの被研削面Waにレーザー光を照射する場合においても、上記実施の形態と同様に、研削砥石の磨耗量を低減しつつ、硬度の高い被加工物に対して効率的な研削加工を施すことができる。
【0079】
また、上記実施の形態に係るレーザー照射機構6(16)においては、レーザー発光部601(1601)と、分割器603(1603)との間の光路にλ/2波長板602(1602)を配置する場合について示している。しかしながら、レーザー照射機構6(16)の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、λ/2波長板602(1602)を省略し、レーザー発光部601(1601)から放射されたレーザー光を、分割器603(1603)に直接入射する構成としてもよい。