特許第6359093号(P6359093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6359093低減したTOC放出を有するポリエステル成形材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359093
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】低減したTOC放出を有するポリエステル成形材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/03 20060101AFI20180709BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20180709BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20180709BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20180709BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20180709BHJP
   D01F 6/62 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   C08L67/03
   C08L67/00
   C08L33/02
   C08J5/00
   C08J5/18
   D01F6/62 302Z
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-517234(P2016-517234)
(86)(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公表番号】特表2016-520159(P2016-520159A)
(43)【公表日】2016年7月11日
(86)【国際出願番号】EP2014060877
(87)【国際公開番号】WO2014195176
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2017年5月26日
(31)【優先権主張番号】13170969.3
(32)【優先日】2013年6月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンナ カリーナ メラー
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン クニーゼル
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−168895(JP,A)
【文献】 特表2002−509968(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/085046(WO,A1)
【文献】 特表2012−519754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00−67/08
C08L 33/00−33/26
C08J 5/00− 5/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) A)に対し50〜100質量%の少なくとも1のポリアルキレンテレフタラートA1)及び0〜50質量%のA1)とは異なるポリエステルA2)から形成されたポリエステル 30〜99.99質量%、
B) アクリル酸B1) 70〜100質量%、
モノエチレン性不飽和カルボン酸の群から選択されているアクリル酸と共重合可能な少なくとも1の他のエチレン性不飽和モノマーB2) 0〜30質量%、
から形成されたアクリル酸ポリマー 0.01〜2質量%。
C) 更なる添加剤 0〜50質量%
を含み、成分A)〜C)の質量%の合計が100%である、熱可塑性成形材料。
【請求項2】
成分B)が4未満のpH値を有する請求項1記載の熱可塑成形材料。
【請求項3】
成分B)が1000〜12000g/molの平均分子量Mwを有する請求項1又は2記載の熱可塑性成形材料。
【請求項4】
成分B)が、
B1)アクリル酸 85〜100質量%、
B2) 請求項1記載の共重合可能なモノマー 0〜15質量%
から形成されている請求項1から3のいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項5】
ノマーが、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸又はその混合物の群から選択されている請求項1から4のいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項6】
50〜100質量%の少なくとも1のポリアルキレンテレフタラートA1)及び 0〜50質量%のA1)とは異なるポリエステルA2)を含むポリエステルA)のTOC(total organic carbon)放出の低減のためのアクリル酸ポリマーB)の使用。
【請求項7】
DA 277に従って00ppm以下のTOC放出を有する請求項1から5のいずれか1項記載の熱可塑性成形材料
【請求項8】
繊維、シート及び成形体の製造のための請求項1から5、7のいずれか1項記載の熱可塑性成形材料の使用。
【請求項9】
DA 277に従って00ppm以下のTOC放出を有する請求項1から7のいずれか1項記載の成形材料から得られる繊維、シート、成形体。
【請求項10】
リップスティック及びメイクアップスティック、スキンクリーム、ヘアケア製品、デンタルケア製品用包装からなる群から選択される、化粧品包装における請求項9記載の成形体の使用。
【請求項11】
医薬品、インジェクター、シリンジのための包装、タブレット用深絞り成形における請求項9記載の成形体の使用。
【請求項12】
コーヒーカプセル、レディミール、ホットフィリング及びミート製品、マーマレード、乳製品の滅菌に適した包装、場合により多用途を有する、食品包装における請求項9記載の成形体の使用。
【請求項13】
飲料水と接触する部材における請求項9記載の成形体の使用。
【請求項14】
カトラリーセット、フライ返しからなる群から選択される食品接触のために必要な物品、及び/又はコーヒーマシンの導水部:コーヒーユニット、ジューサーからなる群から選択される食品接触するキッチン器具の部材における請求項9記載の成形体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、
A) A)に対し50〜100質量%の少なくとも1のポリアルキレンテレフタラートA1)及び0〜50質量%のA1)とは異なるポリエステルA2)から形成されたポリエステル 30〜99.99質量%、
B) アクリル酸B1) 70〜100質量%、
モノエチレン性不飽和カルボン酸の群から選択されているアクリル酸と共重合可能な少なくとも1の他のエチレン性不飽和モノマーB2) 0〜30質量%、
から形成されたアクリル酸ポリマー 0.01〜2質量%、
C) 更なる添加剤 0〜70質量%を含み、
成分A)〜C)の質量%の合計が100%である、熱可塑性成形材料に関する。
【0002】
さらに、本発明は、全ての種類の成形体、特に100ppm以下のTOC放出を有する成形体の製造のための本発明の成形材料の使用、及び、好ましくは100ppm以下のTOC放出を有するこうして得られる成形体に関する。
【0003】
ポリエステル、特にポリアルキレンテレフタラート又は係る単位を有するポリマー又は係るポリアルキレンテレフタラートとのブレンドは、例えばチタン触媒存在下で相応するモノマーの重合によって製造される。(チタン)触媒は、重合終了後に、なお系中に反応性を有して存在し、したがって、後続のポリマー加工時に(特に溶融状態で、例えば押出又は射出成形の際に)ポリマーはガス状生成物又は昇華性生成物へと分解することがある。係る脱重合プロセスは特に、ポリエステルが溶融物中に長く維持されるか又は極限的な条件(高温、高圧、高剪断など)下で加工される場合に行われる。分解生成物がすぐさま放出されない限りは、PBT中で貯蔵されてもよく、そして、後の時間点で放出されてもよい。そして、例えばグラニュール又は射出成形したPBT成形体は、高められた温度が使用される場合に、有機化合物を放出することがある。これは、多くのE&E適用の場合であり、この適用ではポリエステルが、リレー、スイッチ、プラグにおいて使用され、さらに、自動車内室における適用、又は食品包装又は化粧品包装の場合でもある。多くの適用では、分解生成物の放出が低減されることが望ましく、それというのも、放出される化合物は匂い負荷又は風味変化を生じることがあり、かつ、場合によっては、刺激的であるか又は健康を損なう。特に、自動車の内室又は食品と接触する場合における使用の場合には、厳しいガイドラインが存在する。放出される生成物は、大抵は揮発性有機化合物VOC(=volatile organic compounds)、特にテトラヒドロフラン(THF)が98%、並びに、ブタジエン、アセトアルデヒド、フラン、アクロレイン、メタノール、1−ブテン−4−オール及び更なるTHF誘導体である。
【0004】
ポリエステルからの放出の低減のために、先行技術において以下の添加剤が使用されている:
EP−A 683 201 重合の際のスルホン酸成分の添加、前記成分は健康を害する乃至発癌性であると評価される、
US 2007/225475 チタン触媒の不活化のためのP含有成分の添加。ここに記載の放出値は百分率であり、すなわち絶対値でなく、改善に値する、
EP−A−2427 511 エポキシ化スチレン−アクリル−ポリマーを基礎とする連鎖伸長剤の添加、前記ポリマーは不所望な分子量増成も生じるが、こうしてオリゴマー又は溶媒残分は低減される、
US 6114495 重合の際のSn触媒又はSb触媒の不活化のための乳酸を基礎とするポリエステルへとポリアクリル酸の添加。
【0005】
DE−A 102009020211からは、スチレン−アクリル−ポリマー(例えばJoncry(R))の添加が知られており、前記ポリマーは、PBT中で抽出可能な不純物の含有量を低減させるために0.01〜2%の濃度で使用される。
【0006】
Joncryl(R)ADR−4368は、エポキシ官能化したスチレン−アクリル酸ポリマーを基礎とする、固形の、オリゴマーの連鎖伸長剤である。前記ポリマーはポリエステル中で反応性であり、通常は、ポリマーの分子量を高めるため、ひいては、ポリマーの固有粘度及び溶融粘度を高めるために使用される。
【0007】
しかし、エポキシ化スチレン−アクリル酸コポリマーの使用は、連鎖伸長及び分子量増大を生じる。分子量増大は、溶融粘度の増加又は流動性の低下と結び付いており、このことは多くの(射出成形)適用にとって不利である。
【0008】
したがって、本発明の基礎となる課題は、低減したTOC(total organic carbon)放出を有し、かつ、加工時の分解に対してより安定である、少なくとも50質量%のアルキレンテレフタラート単位を有するポリエステル成形材料を提供することである。同様に、加工の際の分子量増成は所望されない。
【0009】
冒頭部で定義された成形材料が以上に応じて見出された。好ましい実施態様は、下位請求項から取り出すことができる。
【0010】
成分(A)として、本発明の成形材料は、(100質量%のAに対して)50〜100質量%、特に60〜100質量%のポリアルキレンテレフタラートA1)及び0〜50質量%、好ましくは0〜40質量%のA1)とは異なるポリエステルA2)から形成された熱可塑性ポリエステル 30〜99.99質量%、好ましくは35〜99質量%、特に35〜85質量%含む。
【0011】
この量割合では、ポリアルキレンテレフタラートとポリエステルのブレンドも、同様に、少なくとも50質量%がアルキレンテレフタラート単位を有するコポリエステルも理解される。
【0012】
好ましいポリエステルA1)の第1の群は、アルコール部分中に2〜10個のC原子を有するポリアルキレンテレフタラートである。
【0013】
係るポリアルキレンテレフタラートはそれ自体知られており、かつ、文献に記載されている。係るポリアルキレンテレフタラートは、芳香族ジカルボン酸に由来する芳香族環を主鎖中に有する。芳香族環は、例えば塩素及び臭素といったハロゲンにより、又は、メチル基、エチル基、i−又はn−プロピル基及びn−、i−又はt−ブチル基といったC1〜C4−アルキル基により置換されていてもよい。
【0014】
このポリアルキレンテレフタラートは、芳香族ジカルボン酸、そのエステル又は他のエステル形成誘導体と脂肪族ジヒドロキシ化合物との反応によって自体公知のやり方で製造されてよい。
【0015】
30mol%までのテレフタル酸の割合は、例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸若しくはイソフタル酸又はその混合物によって置換されてよい。70mol%までの、好ましくは10mol%を超えない芳香族ジカルボン酸は、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸及びシクロヘキサンジカルボン酸で置換されてよい。
【0016】
脂肪族ジヒドロキシ化合物のうち、2〜6個の炭素原子を有するジオール、特に1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコール又はその混合物が好ましい。
【0017】
特に好ましいポリアルキレンテレフタラートは、2〜6個の炭素原子を有するアルカンジオールから誘導される。このうち、特に、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレンテレフタラート及びポリブチレンテレフタラート又はその混合物が好ましい。更に好ましくは、1質量%まで、好ましくは0.75質量%までが1,6−ヘキサンジオール及び/又は2−メチル−1,5−ペンタンジオールを更なるモノマー単位として含むPET及び/又はPBTである。
【0018】
ポリエステル(A)の粘度数は、一般に、(ISO1628により(25℃で質量比1:1での)フェノールとo−ジクロロベンゼン混合物中の0.5質量%の溶液中で測定して)50〜220、好ましくは80〜160の範囲内にある。
【0019】
特に好ましくは、そのカルボキシ末端基含有量が、100mval/kgポリエステルまで、好ましくは50mval/kgポリエステルまで、特に40mval/kgポリエステルまでであるものである。係るポリエステルは、例えばDE 44 01 055 Aの方法に応じて製造されることができる。カルボキシル末端基含有量は、通常は滴定法(例えば電位差滴定)によって決定される。
【0020】
特に好ましいポリアルキレンテレフタラートは、Ti触媒で製造される。この触媒は、重合後に残存Ti含有量250ppm以下、特に200ppm未満、特に好ましくは150ppm未満を有する。
【0021】
更なる群として、完全芳香族ポリエステルを挙げることができ、前記ポリエステルは芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導され、かつ、混合して又は繰り返し単位の成分として、ポリアルキレンテレフタラートと共に存在してよい。
【0022】
芳香族ジカルボン酸として、既にポリアルキレンテレフタラートのところで記載した化合物が適している。好ましくは、5〜100mol%のイソフタル酸及び0〜95mol%のテレフタル酸の混合物、特に約80%のテレフタル酸と20%のイソフタル酸との混合物乃至これらの両者の酸のおおよそ当量の混合物が使用される。
【0023】
芳香族ジヒドロキシ化合物は、好ましくは一般式
【化1】
[式中、Zは、8個までのC原子を有するアルキレン基又はシクロアルキレン基、12個までのC原子を有するアリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子又は硫黄原子、又は化学結合であり、式中、mは0〜2の値を有する]
を有する。前記化合物は、フェニレン基にC1〜C6−アルキル基又はアルコキシ基及びフッ素、塩素又は臭素を置換基として有してよい。
【0024】
この化合物の基礎は例えば次のものである:
ジヒドロキシジフェニル、
ジ−(ヒドロキシフェニル)アルカン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、
ジ−(ヒドロキシフェニル)エーテル、
ジ−(ヒドロキシフェニル)ケトン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、
α,α′−ジ−(ヒドロキシフェニル)−ジアルキルベンゼン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)スルホン、ジ−(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、
レゾルシン及びヒドロキノン並びにその核アルキル化したか又は核ハロゲン化した誘導体が挙げられる。
そのうち、以下のものが好ましい。
4,4′−ジヒドロキシジフェニル、
2,4−ジ−(4′−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、
α,α′−ジ−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン
2,2−ジ−(3′−メチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、及び
2,2−ジ−(3′−クロロ−4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、
並びに、次のものがとりわけ好ましい。
2,2−ジ−(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ジ−(3′5−ジクロロジヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ジ−(4′−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
3,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、
4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、及び
2,2−ジ(3′,5′−ジメチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロパン
又はその混合物。
【0025】
勿論、ポリアルキレンテレフタラート及び完全芳香族ポリエステルの混合物も使用できる。この混合物は一般に、20〜98質量%のポリアルキレンテレフタラート及び2〜80質量%の完全芳香族ポリエステルを含む。
【0026】
勿論、ポリエステルブロックコポリマー、例えばコポリエーテルエステルも使用できる。係る生成物はそれ自体知られており、かつ、例えばUS−A 3 651 014などの文献に記載されている。市販でも相応する生成物は入手可能であり、例えばHytrel(R) (DuPont)である。
【0027】
ポリエステルとして、本発明では、ハロゲン不含ポリカーボナートも理解される。適したハロゲン不含ポリカーボナートは、例えば、以下の一般式
【化2】
[式中、Qは単結合、C1〜C6−アルキレン基、C2〜C3−アルキリデン基、C3〜C6−シクロアルキリデン基、C6〜C12−アリーレン基並びに−O−、−S−又は−SO2−を意味し、mは0〜2の整数である]のジフェノールを基礎とするものである。
【0028】
ジフェノールはフェニレン基にC1〜C6−アルキル又はC1〜C6−アルコキシといった置換基を有してもよい。
【0029】
好ましい式のジフェノールは、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンである。特に好ましくは、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン及び1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン並びに1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
【0030】
ホモポリカーボナートもコポリカーボナートも成分Aとして適しており、好ましくはビスフェノールAホモポリマーの他に、ビスフェノールAのコポリカーボナートである。
【0031】
好適なポリカーボナートは、知られているとおりに分岐していてよく、つまり好ましくは、少なくとも三官能性の化合物、例えば3以上のフェノール性OH基を有する化合物を、使用されるジフェノールの合計に対して0.05〜2.0mol%組み込むことによって分岐していてよい。
【0032】
相対粘度ηrelが1.10〜1.50、特に1.25〜1.40であるポリカーボナートが特に適していることが判明した。これは、10000〜200000、好ましくは20000〜80000g/molの平均分子量Mw(質量平均値)に相当する。
【0033】
一般式のジフェノールはそれ自体知られているか、又は既知の方法によって製造可能である。
【0034】
ポリカーボナートは、例えば相界面法に応じたジフェノールとホスゲンとの反応又は均一相における方法(いわゆるピリジン法)に応じたホスゲンとジフェノールとの反応によって製造されることができ、ここで、そのつど調節すべき分子量は、知られているとおり、相応する量の既知の連鎖停止剤によって達成されることができる(ポリジオルガノシロキサン含有ポリカーボナートに関して、例えばDE−OS 3334782を参照のこと)。
【0035】
適した連鎖停止剤は、例えばフェノール、p−t−ブチルフェノール又は長鎖アルキルフェノール、例えば4−(1,3−テトラメチル−ブチル)−フェノール(DE−OS 2842005に従って)又はDE−A 3506472に従ってアルキル置換基に全部で8〜20個のC原子を有するモノアルキルフェノール又はジアルキルフェノール、例えばp−ノニルフェニル、3,5−ジ−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−ドデシル−フェノール、2−(3,5−ジメチル−ヘプチル)−フェノール及び4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールである。
【0036】
ハロゲン不含ポリカーボナートは本発明の意味合いにおいて、ポリカーボナートが、ハロゲン不含ジフェノール、ハロゲン不含連鎖停止剤及び場合によりハロゲン不含分岐剤から形成されていることを意味し、ここで鹸化可能な塩素の副次的なppm量の含分は、−例えばホスゲンを用いるポリカーボナートの製造から相界面法に応じて生じる−本発明の意味合いにおいてハロゲン含有とはみなされない。ppm含分の鹸化可能な塩素を有する係るポリカーボナートは、本発明の意味合いにおいてハロゲン不含ポリカーボナートである。
【0037】
更なる適した成分A)として、無定形ポリエステルカーボナートが挙げられ、ここでホスゲンがイソフタル酸及び/又はテレフタル酸単位といった芳香族ジカルボン酸単位に対して製造の際に置き換えられている。より詳細な説明は、EP−A 711810の該当箇所を参照のこと。
【0038】
モノマー単位としてシクロアルキル基を有する更なる適したコポリカーボナートは、EP−A 365916に記載されている。
【0039】
さらに、ビスフェノールAはビスフェノールTMCによって置き換えられてよい。係るポリカーボナートは商標名APEC HT(R)でBayer社から入手可能である。
【0040】
成分B)として、本発明の成形材料は、アクリル酸ポリマー0.01〜2質量%、好ましくは0.05〜1.5質量%、特に0.1〜1質量%を含む。
【0041】
前記ポリマーは、
アクリル酸B1) 70〜100質量%、好ましくは85〜100質量%、
モノエチレン性不飽和カルボン酸の群から選択されている、アクリル酸と共重合可能な少なくとも1の他のエチレン性不飽和モノマーB2) 0〜30質量%、好ましくは15質量%まで、から形成され、
ここで、B1)及びB2)の質量%の合計は100%である。
【0042】
コポリマーの好適なモノマーは、モノエチレン性不飽和カルボン酸、例えばメタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、メチレンマロン酸及びシトラコン酸又はその混合物である。
【0043】
同様に、前述の酸基を含むモノマーは、遊離酸の形で又は塩として、例えばナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩として、重合の際に使用できる。
【0044】
一般に、本発明のアクリル酸ポリマーの分子量は1000〜100000g/mol(Mw=質量平均分子量)である。
【0045】
好ましくは、アクリル酸ポリマーの質量平均分子量は1000〜12000g/mol、好ましくは1500〜8000g/mol、特に好ましくは3500〜6500g/molである。
【0046】
分子量はこの範囲内で狙いを定めて使用される調節剤量によって調節できる。
【0047】
全ポリマーに対する、分子量<1000g/molを有するポリマーの割合は、一般に≦10質量%、好ましくは≦5質量%である。
【0048】
分子量を、pH7に緩衝させたポリマー水溶液に対してGPCを用いて固定相としてヒドロキシエチルメタクリラートコポリマー架橋及びポリアクリル酸ナトリウム標準を使用して算出する。
【0049】
一般に、アクリル酸ポリマーの多分散指数Mw/Mnは、≦2.5、好ましくは1.5〜2.5、例えば2である。
【0050】
脱塩水中の1質量%溶液に対しフィッケンチャー法により測定されるK値は、一般に10〜50、好ましくは15〜35、特に好ましくは20〜30である。
【0051】
低分子量ポリアクリル酸を製造するために、分子量調節剤又は連鎖移動剤は、アクリル酸のラジカル重合の間に添加される。この調節剤は、重合開始剤に並びに重合プロセスに適合されている。公知の開始剤は、例えば無機又は有機ペル化合物、例えばペルオキソジスルファート、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド及びペルエステル、アゾ化合物、例えば2,2′−アゾビスイソブチロニトリル並びに無機成分及び有機成分を有するレドックス系である。調節剤として、大抵は無機硫黄化合物、例えばヒドロゲンスルフィット、ジスルフィット及びジチオナイト、有機スルファイド、スルホキシド、スルホン及びメルカプト化合物、例えばメルカプトエタノール、メルカプト酢酸並びに無機リン化合物、例えば次亜リン酸(ホスフィン酸)及びその塩(例えば次亜リン酸ナトリウム)が使用される。
【0052】
係るアクリル酸ポリマーの製造方法は例えばDE−A 19950941、WO−A 2012/104401から知られている。
【0053】
特に好ましいアクリル酸ポリマーは、4未満、特に3未満のpH値を有し、すなわち、使用されるアクリル酸ポリマーは好ましくは部分的にのみ中和されているか又は全く中和されておらず、すなわち、遊離酸基であるか又は部分的にのみアルカリイオンで中和された酸基が存在する。
【0054】
成分C)として、本発明の成形材料は、A)、B)及びC)100質量%に対して0〜70質量%、特に50質量%までの更なる添加剤及び加工助剤(B)及び/又はA)とは異なる)を含んでよい。
【0055】
通常の添加剤C)は、例えば40質量%までの量で、好ましくは15質量%までの量でゴム弾性ポリマー(しばしば、衝撃強さ改善剤、エラストマー又はゴムとも称される)である。
【0056】
全く一般的に、この場合に、好ましくは少なくとも2の以下のモノマーから形成されているコポリマーである;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、酢酸ビニル、スチレン、アクリルニトリル及びアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルであってアルコール成分中に1〜18個のC原子を有するもの。
【0057】
係るポリマーは、例えばHouben−Weyl、Methoden der organischen Chemie, 14/1版 (Georg−Thieme−Verlag、 シュツットガルト 1961) 392〜406頁及びC.B. Bucknallのモノグラフ「Toughened Plastics」 (Applied Science Publishers、 ロンドン 1977)に記載されている。
【0058】
以下では、係るエラストマーのいくつかの好ましい種類を紹介する。
【0059】
好ましい種類のエラストマーは、いわゆるエチレン−プロピレン(EPM)又はエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムである。
【0060】
EPMゴムは一般に実質的に二重結合をもはや有さず、一方で、EPDMゴムは1〜20個の二重結合/100個のC原子を有してよい。
【0061】
EPDMゴムのためのジエンモノマーとして、例えば共役ジエン、例えばイソプレン及びブタジエン、5〜25個のC原子を有する非共役ジエン、例えばペンタ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,5−ジエン、2,5−ジメチルヘキサ−1,5−ジエン及びオクタ−1,4−ジエン、環状ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン及びジシクロペンタジエン並びにアルケニルノルボルネン、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン及びトリシクロジエン、例えば3−メチル−トリシクロ(5.2.1.02.6)−3,8−デカジエン又はその混合物が挙げられる。好ましくはヘキサ−1,5−ジエン、5−エチリデンノルボルネン及びジシクロペンタジエンである。EPDMゴムのジエン含有量は、ゴムの全質量に対して好ましくは0.5〜50質量%、特に1〜8質量%である。
【0062】
EPMゴム又はEPDMゴムは好ましくは反応性カルボン酸と又はその誘導体とグラフトしていてもよい。ここでは、例えばアクリル酸、メタクリル酸及びその誘導体、例えばグリシジル(メタ)アクリラート並びに無水マレイン酸を挙げることができる。
【0063】
好ましいゴムの更なる一群は、エチレンとアクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はその酸のエステルとのコポリマーである。さらに、ゴムはなおジカルボン酸、例えばマレイン酸及びフマル酸又は前記酸の誘導体、例えばエステル及び無水物、及び/又はエポキシ基含有モノマーを含んでよい。ジカルボン酸誘導体又はエポキシ基を含有するモノマーは、好ましくは、モノマー混合物への一般式I又はII又はIII又はIVのジカルボン酸又はエポキシ基を含有するモノマーの添加によってゴムに組み込まれる。
【化3】
[式中、R1〜R9は、水素又は1〜6個のC原子を有するアルキル基であり、mは0〜20の整数、gは0〜10の整数、pは0〜5の整数である]。
【0064】
好ましくは、R1〜R9は水素であり、ここでmは0又は1、gは1である。この相応する化合物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アリルグリシジルエーテル及びビニルグリシジルエーテルである。
【0065】
一般式I、II及びIVの好ましい化合物は、マレイン酸、無水マレイン酸及びアクリル酸及び/又はメタクリル酸のエポキシ基含有エステル、例えばグリシジルアクリラート、グリシジルメタクリラート及び三級アルコールとのエステル、例えばt−ブチルアクリラートである。後者のものは、確かに遊離カルボキシル基を有しないが、その挙動において遊離酸に近く、したがって、潜在的カルボキシル基を有するモノマーと称される。
【0066】
好ましくは、コポリマーは50〜98質量%がエチレン、0.1〜20質量%がエポキシ基含有モノマー及び/又はメタクリル酸及び/又は酸無水物基含有モノマー並びに残分量が(メタ)アクリル酸エステルからなる。
【0067】
特に好ましくは、コポリマーは、
50〜98質量%、特に好ましくは55〜95質量%のエチレン、
0.1〜40質量、特に0.3〜20質量%のグリシジルアクリラート及び/又はグリシジルメタクリラート、(メタ)アクリル酸及び/又は無水マレイン酸、及び
1〜45質量%、特に10〜40質量%のn−ブチルアクリラート及び/又は2−エチルヘキシルアクリラート
からなる。
【0068】
アクリル酸及び/又はメタクリル酸の更なるエステルは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びi−又はt−ブチルエステルである。
【0069】
その他に、ビニルエステル及びビニルエーテルをコモノマーとして使用してもよい。
【0070】
前記エチレンコポリマーは、それ自体知られている方法に応じて製造されてよく、好ましくは高圧及び高温下のランダム共重合によって製造されてよい。相応する方法は一般に知られている。
【0071】
好ましいエラストマーは、エマルションポリマーでもあり、その製造は例えばBlackleyがモノグラフ「Emulsion Polymerization」において記載している。使用可能な乳化剤及び触媒はそれ自体知られている。
【0072】
原則的に、均一に構築されたエラストマー又はシェル構造を有するエラストマーが使用されてよい。シェル状構造は、個々のモノマーの添加順序によって決定される。ポリマーのモルホロジーもまたこの添加順序の影響を受ける。
【0073】
単に例示的に、ここでは、エラストマーのゴム部分の製造のためのモノマーとして、アクリラート、例えばn−ブチルアクリラート及び2−エチルヘキシルアクリラート、相応するメタクリラート、ブタジエン及びイソプレン並びにその混合物が挙げられる。このモノマーは、更なるモノマー、例えばスチレン、アクリルニトリル、ビニルエーテル及び更なるアクリラート又はメタクリラート、例えばメチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート及びプロピルアクリラートと共重合されてよい。
【0074】
エラストマーの軟質相又はゴム相(0℃未満のガラス転移温度を有する)は、コア、外殻又は中間シェル(2シェルより多い構造を有するエラストマーの場合)であってよい。多シェルエラストマーは、ゴム相からの複数のシェルからなってもよい。
【0075】
ゴム相の他に、なお1又は複数の硬質成分(20℃より高いガラス転移温度を有する)がエラストマーの構造に関与し、そうして前記成分は一般に主モノマーとしてスチレン、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、例えばメチルアクリラート、エチルアクリラート及びメチルメタクリラートの重合により製造される。その他に、ここではより少ない割合の更なるコモノマーが使用されてもよい。
【0076】
いくつかの場合には、表面に反応基を有するエマルションポリマーを使用することが好ましいことが判明した。係る基は、例えばエポキシ基、カルボキシル基、潜在カルボキシル基、アミノ基又はアミド基並びに以下の一般式のモノマーの併用により導入されてよい官能基である。
【化4】
置換基は下記意味を有してよい:
10 水素又はC1〜C4−アルキル基、
11 水素、C1〜C8−アルキル基又はアリール基、特にフェニル、
12 水素、C1〜C10−アルキル、C6〜C12−アリール基又は−OR13
131〜C8−アルキル基又はC6〜C12−アリール基、前記基は場合によってO−又はN−含有基によって置換されていてよい、
X 化学結合、C1〜C10−アルキレン基又はC6〜C12−アリーレン基又は
【化5】
[Y O−Z又はNH−Z、及び
Z C1〜C10−アルキレン基又はC6〜C12−アリーレン基]。
【0077】
EP−A 208 187に記載のグラフトモノマーもまた表面に反応基を導入するために適している。
【0078】
他の例として、さらにアクリルアミド、メタクリルアミド及びアクリル酸又はメタクリル酸の置換したエステル、例えば(N−t−ブチルアミノ)−エチルメタクリラート、(N,N−ジメチル−アミノ)エチルアクリラート、(N,N−ジメチルアミノ)−メチルアクリラート及び(N,N−ジエチルアミノ)エチル−アクリラートが挙げられる。
【0079】
さらに、ゴム相の粒子も架橋されていてよい。架橋剤として作用するモノマーは、例えばブタ−1,3−ジエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタラート及びジヒドロジシクロ−ペンタジエニルアクリラート並びにEP−A 50 265に記載の化合物である。
【0080】
さらに、いわゆるグラフト架橋性モノマー(graft−linking monomers)が使用されてもよく、すなわち、重合の際に異なる速度で反応する2以上の重合性二重結合を有するモノマーが使用されてもよい。好ましくは、少なくとも1の反応基が残りのモノマーとほぼ同じ速度で重合し、その一方で、他の1の反応基(又は複数の反応基)が例えば顕著に遅く重合する化合物が使用される。異なる重合速度は、ゴムへと所定の割合の不飽和二重結合をもたらす。引き続き、係るゴムへと更なる相がグラフトされ、そうしてゴムに存在する二重結合は少なくとも部分的にグラフトモノマーと反応して、化学結合を形成し、すなわち、グラフトされた相は少なくとも部分的に化学結合を介してグラフトベースと連結する。
【0081】
係るグラフト架橋性モノマーの例は、アリル基含有モノマー、特にエチレン性不飽和カルボン酸のアリルエステル、例えばアリルアクリラート、アリルメタクリラート、ジアリルマレアート、ジアリルフマラート、ジアリルイタコナート又はこのジカルボン酸の相応するモノアリル化合物である。その他に、多数の更なる適したグラフト架橋性モノマーが存在する。更なる詳細に関しては、ここでは例えばUS−PS 4 148 846を参照されたい。
【0082】
一般に、衝撃強さ改善ポリマーに対する架橋性モノマーの割合は、衝撃強さ改善ポリマーに対して、5質量%まで、好ましくは3質量%を超えない。
【0083】
以下では、いくつかの好ましいエマルションポリマーを紹介する。まず、ここでは、以下の構造を有するコア及び少なくとも1の外側シェルを有するグラフトコポリマーを挙げることができる。
【表1】
【0084】
このグラフトポリマー、特にABSポリマー及び/又はASAポリマーは、40質量%までの量で、好ましくはPBTの衝撃強さ改善のために、場合によって40質量%までのポリエチレンテレフタラートと混合して使用される。相応するブレンド製品は、商標名Ultradur(R)S (以前はUltrablend(R)S、BASF AG)で入手可能である。
【0085】
多シェル構造を有するグラフトポリマーの代わりに、均一な、すなわち一シェルエラストマーであって、ブタ−1,3−ジエン、イソプレン及びn−ブチルアクリラート又はそのコポリマーからのものが使用されてもよい。この生成物もまた、架橋性モノマー又は反応基を有するモノマーの併用によって製造できる。
【0086】
好ましいエマルションポリマーの例は、n−ブチルアクリラート/(メタ)アクリル酸コポリマー、n−ブチルアクリラート/グリリジルアクリラート−コポリマー又はn−ブチルアクリラート/グリシジルメタクリラート−コポリマー、n−ブチルアクリラートからの又はブタジエンベースである内部コアと、前述のコポリマー及びエチレンと反応基を提供するコモノマーとのコポリマーからの外殻を有するグラフトポリマーである。
【0087】
前記エラストマーは、他の通常の方法によって、例えば懸濁重合によって製造してもよい。
【0088】
DE−A 3725576、EP−A 235690、DE−A 3800603及びEP−A 319290に記載のシリコーンゴムは、同様に好ましい。
【0089】
無論、前述の種類のゴムの混合物も使用できる。
【0090】
繊維状又は粒子状の充填剤C)として、ガラス繊維、ガラス球、無定形ケイ酸、アスベスト、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、白亜、粉末状石英、雲母、硫酸バリウム及び長石が挙げられる。繊維状充填剤C)は、60質量%まで、特に35質量%まで、粒子状充填剤は30質量%まで、特に10質量%までの量で使用される。
【0091】
好ましい繊維状充填剤として、アラミド繊維及びチタン酸カリウム繊維が挙げられ、ここでEガラスとしてのガラス繊維は特に好ましい。これらはロービング又はカットガラスとして、市販の形態で使用できる。
【0092】
例えば、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン又はカーボンナノチューブなどのレーザー高吸収性充填剤は、好ましくは1質量%未満、特に好ましくは0.05質量%未満の量で使用される。
【0093】
繊維状充填剤は、熱可塑性樹脂とのより良好な相容性のためにシラン化合物で表面前処理されていてよい。
【0094】
適したシラン化合物は、以下の一般式の化合物である
【化6】
[式中、置換基は以下の意味合いを有する
【化7】
n 2〜10、好ましくは3〜4の整数、
m 1〜5、好ましくは1〜2の整数、
k 1〜3、好ましくは1の整数]。
【0095】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン並びに置換基Xとしてグリシジル基を含む相応するシランである。
【0096】
シラン化合物は、一般に(Cに対して)0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%、特に0.2〜0.5質量%の量で表面コーティングのために使用される。
【0097】
針状鉱物充填剤も適する。
【0098】
針状鉱物充填剤とは、本発明の意味合いにおいて、極めて際立った針状特性を有する鉱物充填剤が理解される。一例として、針状ウォラストナイトが挙げられる。好ましくは、前記鉱物は、L/D比(長さ直径比)8:1〜35:1、好ましくは8:1〜11:1を有する。鉱物充填剤は、場合によって、前述のシラン化合物で前処理されていてよい。しかし、前処理は必ず必要なわけではない。
【0099】
成分C)として、本発明の熱可塑性成形材料は、通常の加工助剤、例えば安定化剤、酸化遅延剤、熱分解防止剤及び紫外線分解防止剤、滑剤及び離型剤、着色剤、例えば染料及び顔料、可塑剤などを含んでよい。
【0100】
酸化遅延剤及び熱安定剤の例は、立体障害フェノール及び/又はホスファイト、ヒドロキノン、芳香族二級アミン、例えばジフェニルアミン、この群の種々の置換体及びその混合物が挙げられ、熱可塑性成形材料の質量に対して1質量%までの濃度である。
【0101】
成形材料に対し一般に2質量%までの量で使用されるUV安定剤として、種々の置換レゾルシン、サリチラート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノンが挙げられる。
【0102】
無機顔料及び有機顔料並びに染料、例えばニグロシン及びアントラキノンが着色剤として添加される。特に好ましい着色剤は例えばEP 1722984 B1、EP 1353986 B1又はDE 10054859 A1に挙げられている。
【0103】
更に好ましくは、10〜40個、好ましくは16〜22個のC原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸と2〜40個、好ましくは2〜6個のC原子を有する脂肪族飽和アルコール又はアミンのエステル又はアミドである。
【0104】
カルボン酸は1価又は2価であってよい。例として、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸、特に好ましくはステアリン酸、カプリン酸並びにモンタン酸が挙げられる(30〜40個のC原子を有する脂肪酸の混合物)。
【0105】
脂肪族アルコールは1価〜4価であってよい。アルコールの例は、n−ブタノール、n−オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリットであり、ここでグリセリン及びペンタエリトリットが好ましい。
【0106】
脂肪族アミンは1価〜3価であってよい。その例は、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ(6−アミノヘキシル)アミンであり、ここでエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。好ましいエステル又はアミドは相応してグリセリンジステアラート、グリセリントリステアラート、エチレンジアミンジステアラート、グリセリンモノパルミタート、グリセリントリラウラート、グリセリンモノベヘナート及びペンタエリスリトールテトラステアラートである。
【0107】
種々のエステル又はアミドの混合物又はエステルとアミドの組み合わせを使用してもよく、ここで混合比は任意である。
【0108】
更なる滑剤及び離型剤は、通常は1質量%までの量で使用される。好ましくは長鎖脂肪酸(例えばステアリン酸又はベヘン酸)、その塩(例えばステアリン酸Ca又はZn)又はモンタンロウ(鎖長28〜32個のC原子を有する直鎖の飽和カルボン酸からの混合物)並びにモンタン酸Ca又はNa並びに低分子量ポリエチレンロウ又はポリプロピレンロウである。
【0109】
可塑剤の例として、フタル酸ジオクチルエステル、フタル酸ジベンジルエステル、フタル酸ブチルベンジルエステル、炭化水素油、N−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミドが挙げられる。
【0110】
本発明の成形材料はなお0〜2質量%のフッ素含有エチレンポリマーを含んでよい。この場合に、55〜76質量%、好ましくは70〜76質量%のフッ素含有量を有するエチレンのポリマーである。
【0111】
その例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロ−プロピレン−コポリマー又はテトラフルオロエチレン−コポリマーであって少ない割合(通常は50質量%までの)の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを有するものである。この場合に、例えばSchildknechtが「Vinyl and Related Polymers」(Wiley−Verlag, 1952, 484〜494頁)に、そして、Wallが「Fluorpolymers」(Wiley Interscience, 1972)に記載している。
【0112】
このフッ素含有エチレンポリマーは、成形材料中に均一分散して存在し、かつ、好ましくは0.05〜10μm、特に0.1〜5μmの範囲の粒径d50(数平均値)を有する。この小さい粒径は、特に好ましくはフッ素含有エチレンポリマーの水性分散液の使用により、かつ、ポリエステル溶融物へのその混和により達成される。
【0113】
本発明の熱可塑性成形材料は、出発成分を通常の混合装置中で、例えばスクリュー押出機、ブラベンダーミル又はバンバリーミル中で混合し、引き続き押出することにより、それ自体知られている方法に応じて製造できる。押出後に、押出物は冷却及び破砕されてよい。個々の成分は(例えば、グラニュールへの成分B)の施与、又はドラム混合(Auftrommeln))予備混合され、次いで残りの出発物質が個々に及び/又は同様に混合して添加されてもよい。混合温度は通常は230〜290℃である。好ましくは成分B)はホットフィードで又は直接的に押出機のパスへと添加されてもよい。
【0114】
更なる好ましい作業のやり方では、成分B)並びに場合により成分C)は、ポリエステルプレポリマーと混合し、コンパウンド化し、造粒されてもよい。得られるグラニュールは、固相において引き続き不活性ガス下で連続的に又は不連続的に、成分A)の溶融点を下回る温度で、所望の粘度まで濃縮される。
【0115】
更なる好ましい一製造方法において、まずA)及びB)からのバッチ(濃縮物)を製造し、ここで成分Bを(A)+B)に対し)20質量%まで、好ましくは10質量%までA)に混和する。この濃縮物を管状押出物又は異形材押出物の製造の際にポリエステル(添加剤なし)へとグラニュールとして計量供給するか、又は相応する量比で、例えばタンブルミキサー中で予備混合し、コンパウンド化し、そして成形部材として押し出す。
【0116】
本発明の熱可塑性成形材料又は成形体は、低減したTOC放出、好ましくは100ppm以下、特に80ppm以下、特にとりわけ好ましく65ppm以下のTOC放出を示す(VDA 277に応じている)。
【0117】
適用及び成形部材の例は次のものである:
成形部材:深絞り又は射出成形キャビティ及び成形部材
化粧品包装:リップスティック及びメイクアップスティック、スキンクリーム、ヘアケア製品、デンタルケア製品用包装
医薬品、インジェクター、シリンジのための包装、タブレット用深絞り成形
食品包装:コーヒーカプセル、レディミール、ホットフィリング及び滅菌に適した包装(ミート製品、マーマレード、乳製品)、場合により多用途を有する
飲料水と接触する部材、例えば家庭設備のエレメント
食品接触のために必要な物品、例えばカトラリーセット、フライ返しなど
食品接触するキッチン器具の部材、例えばコーヒーマシンの導水部(コーヒーユニット)、ジューサーなど
自動車内室:動的システム。
【0118】
実施例
以下の成分を使用した:
成分A
MVR 106.7cm3/g 10分 (ISO 1133に応じて、250 ℃/2.16 kg)及びVZ 88.4ml/g (ISO 1628に応じて)を有するポリブチレンテレフタラート(PBT)
残分チタン含有量は100ppmであった。
【0119】
成分B/1
平均分子量(Mw)5000g/mol(GPCに応じて)を有するポリアクリル酸を、49%の水溶液として(Sokalan(R) PA 25 XS、BASF SE)
pH値:2
粘度:500mPas。
【0120】
成分B/2
ポリアクリル酸−無水マレイン酸−コポリマー、50%の溶液として(Sokalan(R) CP 10 S、BASF SE)
w 4000g/mol
pH値:1.5
粘度:150mPas。
【0121】
成分B/1V
次亜リン酸ナトリウム。
【0122】
成分B/2V
エポキシ官能化したスチレン−アクリル酸ポリマー(Joncryl(R)ADR−4368)。
【0123】
成分C
ペンタエリトリットテトラステアラート。
【0124】
全ての分子量B1/B2をGPCを用いて算出した。GPCに使用した条件は、次のとおりである:2個のカラム(Suprema Linear M)及び1個の予備カラム(Suprema予備カラム)。全て商標名Suprema−Gel(HEMA)(Polymer Standard Sevices社、マインツ、ドイツ国)を用い、35℃で0.8ml/分の流速で稼働した。流出物として、TRISでpH7で緩衝化した、0.15MのNaCl及び0.01MのNaN3と混合した水溶液を使用した。校正を、Na−PAA標準を用いて行い、その積算分子量分布曲線を、M.J.R. Cantow など(J. Polym. Sci., A−1、5 (1967) 1391 −1394)による校正法に応じてSECレーザー光散乱カップリングによって測定したが、そこに提案される濃度補正は行わなかった。全てのサンプルを50質量%の苛性ソーダ液を用いてpH7に調整した。一部の溶液を、脱塩水を用いて1.5mg/mlの固形含有量へと希釈し、12時間撹拌した。引き続き、サンプルを濾過し、100μlをSartorius Minisart RC (0.2 μm)を通じて注入した。
【0125】
成分Aを種々の添加剤とともに二軸スクリュー押出機において溶融温度265〜275℃、流量5kg/h及び回転数300rpmで押出した。(水溶液中の)添加剤の計量供給をコールドフィードにおいてグラニュールを用いて行った。表に記載の質量パーセントは、溶剤無しの純粋な添加剤Bに対する。
【0126】
押出された材料を引き続き射出成形して60×60×0.5mmの寸法のプレートにした。
【0127】
放出量の分析
放出量の分析をVDA277、TOC(= total organic carbon emission)の決定のための自動車産業協会の標準法に応じて行った。VDA277では、非金属の自動車材料をその炭素放出に関して試験する。この場合に、射出成形されたプレート又はグラニュールを、コンパウンド化後に破砕し、ガラス容器に添加し、前記容器を封止する。引き続き、サンプルを5時間120℃で貯蔵する。その後に、サンプルの上方のガス体積をガスクロマトグラフィにおいて分析する(ヘッドスペース−GC)。この場合に、放出をサンプル1gあたりの炭素(TOC)(μg)で算出する。
【0128】
成形材料の組成及び測定結果を表から取り出すことができる。
【表2】