特許第6359105号(P6359105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6359105不飽和アルデヒドの気相酸化により不飽和カルボン酸を製造する触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359105
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】不飽和アルデヒドの気相酸化により不飽和カルボン酸を製造する触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/888 20060101AFI20180709BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20180709BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20180709BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20180709BHJP
   C07C 57/055 20060101ALI20180709BHJP
   C07C 51/235 20060101ALI20180709BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180709BHJP
【FI】
   B01J23/888 Z
   B01J35/02 301A
   B01J35/10 301G
   B01J37/02 301R
   C07C57/055 A
   C07C51/235
   !C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-543369(P2016-543369)
(86)(22)【出願日】2014年9月15日
(65)【公表番号】特表2016-536136(P2016-536136A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2014069580
(87)【国際公開番号】WO2015039982
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2017年9月6日
(31)【優先権主張番号】102013218628.2
(32)【優先日】2013年9月17日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/878,651
(32)【優先日】2013年9月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カトリン アレクサンドラ ヴェルカー−ニーヴァウト
(72)【発明者】
【氏名】コーネリア カタリーナ ドープナー
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ボアヒャート
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ハモン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ マハト
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ カルポフ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴァルスドルフ
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−529128(JP,A)
【文献】 特表2006−523187(JP,A)
【文献】 特開平07−010802(JP,A)
【文献】 特表2004−503516(JP,A)
【文献】 特表2007−506540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C07C 51/235
C07C 57/055
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β−不飽和アルデヒドの気相酸化によってα,β−不飽和カルボン酸を製造するための、担持成形体上に被着された活性材料を備えた前記担持成形体を含む触媒において、
活性材料被覆量q
【数1】
は、最大で0.22mg/mmであり、ここで、Qは、質量%で表される前記触媒の活性材料割合であり、かつSは、mm/mgで表される前記担持成形体の幾何学的比表面積であり、
前記活性材料は、元素Mo及びVを含む触媒活性多元素系酸化物材料を含み、ここで、前記触媒活性多元素系酸化物材料の、酸素以外の全ての元素の全体量に対する元素Moのモル割合は、20モル%〜80モル%であり、かつ前記触媒活性多元素系酸化物材料中に含まれるMoの、前記触媒活性多元素系酸化物材料中に含まれるVに対するモル比であるMo/Vは、15:1〜1:1である、前記触媒。
【請求項2】
マクロ孔に関する容積割合pvolは、少なくとも0.35であり、ここで、pvolは、
【数2】
により決定され、
0.26−2は、0.26〜2μmの範囲内の平均直径を有する細孔の容積を表し、かつ
0.02−6.5は、0.02〜6.5μmの範囲内の平均直径を有する細孔の容積を表す、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記担持成形体は、中空円柱形の担持成形体である、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
前記担持成形体はステアタイトからなり、かつ実質的に無孔性である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
前記中空円柱形の担持成形体は、高さ2〜5mm及び外径4〜8mmを示し、外径と内径の差の半分の値は1〜2mmである、請求項3又は4に記載の触媒。
【請求項6】
前記活性材料は、一般式(II)
Mo12Cu (II)
[式中、
は、1種以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を表し、
は、Si、Al、Ti及びZrの群からの1種以上の元素を表し、
aは、2〜4の範囲内の数を表し、
bは、0〜3の範囲内の数を表し、
cは、0.8〜3の範囲内の数を表し、
eは、0〜4の範囲内の数を表し、
fは、0〜40の範囲内の数を表し、
nは、一般式(II)中の、酸素以外の元素の化学量論係数並びにその電荷数により決まる、元素の酸素の化学量論係数を表す]の多元素系酸化物を含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
多数の担持成形体、粉末状の活性材料及び液状の結合剤を、前記粉末状の活性材料が前記液状の結合剤で飽和されることなく、容器内で混合することにより、前記担持成形体を前記活性材料で被覆する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒の製造方法であって、前記担持成形体を前記容器中に装入し、前記粉末状の活性材料と前記液状の結合剤とを相互に別個に、被覆時間にわたり前記容器内へ添加し、かつ被覆工程の時間は30分未満である、前記製造方法。
【請求項8】
前記混合を、前記容器の連続的な運動によって行う、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記運動は、回転運動である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記粉末状の活性材料は、50μmを越える最大幅を有する粒子の数値割合が、1%未満である、請求項からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
触媒固定床による分子酸素を用いたα,β−不飽和アルデヒドの気相酸化によりα,β−不飽和カルボン酸を製造する方法であって、前記触媒固定床は、請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒の床を含む、前記製造方法。
【請求項12】
前記触媒固定床は、少なくとも2つの相互に連続する反応区域を有し、かつ前記床は、少なくとも、反応器入口に最も近い反応区域中に、請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒固定床は、少なくとも2つの相互に連続する反応区域を有し、かつ前記床は、少なくとも、最も高い局所温度を生じる反応区域中に、請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
所定の運転時点から、前記床の品質の回復のために、使用した全ての床ではなく、最も高い局所温度を生じる床の部分量のみを取り出しかつ新たな床に交換する、請求項11から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
アクロレインの気相酸化によってアクリル酸を製造する、請求項11から14までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
担持成形体と、この担持成形体の外側表面上に被着された、少なくともMo、V及びCuの元素を含む触媒活性酸化物材料からなる外被とからなる触媒は公知である(例えば、EP-A 714 700、DE-A 199 27 624、DE-A 10360057及びWO 2011/134932 A1参照)。この触媒は、アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒による部分気相酸化のための触媒として主に使用される。
【0002】
しかしながら、この触媒は欠点を有する。アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒による部分気相酸化のための触媒として使用する場合、アクリル酸形成の選択率が全面的に満足できるとはいえない。特に、副反応として、CO及びCO(以後、まとめてCOという)への過剰な酸化が生じる。
【0003】
アクロレインに関する十分に高い転化率は、先行技術の触媒を使用する場合にしばしば、アクリル酸形成の選択率が満足できない条件下で達成されるにすぎない。よって、アクロレインについて十分に高い転化率を達成する温度では頻繁に過剰な酸化が生じ、従ってアクリル酸形成の選択率の低下が生じる。
【0004】
WO 2011/134932は、中空円柱形の担持成形体と、この担持成形体の外側表面に被着された、触媒活性酸化物材料からなる外被とからなる外被触媒(Schalenkatalysator)、並びにこの外被触媒を含む触媒固定床によるアクロレインの気相接触酸化によってアクリル酸を製造する方法を開示している。この実施例中では、100運転時間の後に、97.5%までのアクリル酸形成の選択率が達成される。
【0005】
この課題は、アクロレインに関して持続的に高い転化率で、COへの過剰な酸化を低減できかつアクリル酸形成の選択率を高めることができる触媒を提供することであった。
【0006】
上記課題は、α,β−不飽和アルデヒドの気相酸化によりα,β−不飽和カルボン酸を製造するための、担持成形体上に被着された活性材料を備えた当該担持成形体を含む触媒において、この活性材料被覆量q
【数1】
は、最大で0.3mg/mmであり、ここで、Qは、質量%で表される触媒の活性材料割合であり、Sは、mm/mgで表される担持成形体の幾何学的比表面積であることを特徴とする触媒により解決される。
【0007】
好ましくは、この活性材料被覆量qは、最大で0.26mg/mm、好ましくは最大で0.22mg/mmである。一般に、この活性材料被覆量qは、少なくとも0.10mg/mm、好ましくは少なくとも0.15mg/mmである。
【0008】
担持成形体は、好ましくは定義された幾何学形状を示す。
【0009】
好ましい担持成形体は、リング形、球形、タブレット形、穴あきタブレット形、三つ葉形、穴あき三つ葉形、星形ストランド形、星形タブレット形、車輪形、押出物、ペレット形、円柱形及び中空円柱形である。この担持成形体の最大幅(つまり成形体表面上にある2点を直接結ぶ最長の直線距離)は、好ましくは1〜10mmである。
【0010】
特に好ましい担持成形体は、中空円柱形である。この中空円柱形の担持成形体は、好ましくは高さ2〜5mm、及び外径4〜8mmを示し、外径と内径との差の半分の値は1〜2mmである。この外径と内径との差の半分の値は、壁厚に相当する。特に外径7mm、高さ3mm及び内径4mmの寸法形状が好ましい。
【0011】
担持成形体は、好ましくは不活性材料からなる。不活性とは、担持成形体の材料が、気相酸化条件下で、ほぼ変化せず、かつ被着された活性材料と比べて、気相酸化に関して触媒活性を示さないか又はほとんど示さないことを意味する。不活性材料としては、特に酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、二酸化ジルコニウム、二酸化トリウム、ケイ酸塩、例えば粘土、カオリン、ステアタイト、軽石、ケイ酸アルミニウム、及びケイ酸マグネシウム及びこれらの混合物が挙げられる。ステアタイトが好ましい。C 220型のステアタイトが特に好ましい。更に、CeramTec社のC 220型のステアタイトが特に好ましい。
【0012】
好ましくは、この担持成形体は、明らかに形成された表面粗さを示す(例えば砕片粒被覆を備えた中空円柱)。好ましくは、中空円柱形の担持成形体の表面は粗い、というのも、表面粗さの向上は、一般に中空円柱形の担持成形体の表面に被着された、活性材料及び/又は前駆体材料の外被の付着強度を高めるためである。表面粗さRは、好ましくは30〜60μm、特に好ましくは40〜50μmである(Hommelwerke社の「DIN-ISO表面測定値用のHommel Tester」を用いてDIN 4768 Blatt 1に従って決定)。
【0013】
この不活性材料は、多孔性でも無孔性であってもよい。好ましくは、この不活性材料は、実質的に無孔性である(担持成形体の体積を基準とした細孔の全容積は、1体積%未満である)。不活性材料の幾何学的密度は、一般に0.5〜8.0g/cmの範囲内、好ましくは1.0〜7.0g/cmの範囲内、更に好ましくは1.5〜6.0g/cmの範囲内、特に好ましくは2.0〜5.0g/cmの範囲内である。化学的に不活性な材料の幾何学的密度は、担持成形体の質量を担持成形体の幾何学的体積で除算することにより算定される。
【0014】
この幾何学的体積は、完全な寸法形状を前提とする形の相応する測定値から算定することができる。例えば、中空円柱形の幾何学的体積は、円柱の高さH、外径AD及び内部開口の直径IDの前提の下で算定することができる。
【0015】
触媒の活性材料割合Q(質量%で表す)は、活性材料と担持成形体との質量の合計を基準とする活性材料の質量である。活性材料の質量を決定するために、計量によって測定された触媒の質量(結合剤の除去のための熱処理後;下記参照)から、担持成形体の公知の質量を引き算することができる。測定精度を高めるために、多数の触媒及び担持成形体の質量を決定しかつ平均値を求めることができる。よって、定義された数の触媒の活性材料の質量は、これらの触媒の全質量を決定し、かつ、担持成形体質量に担持成形体の上記の数を掛け算することにより得られる担持成形体質量を引き算することにより決定することができる。更に、活性材料割合Qの決定は、担持成形体から活性材料を洗い落とすことによっても可能である。このために、被覆された触媒を例えばアンモニア水溶液で数回煮沸し、生じる液体を傾瀉により除去することができる。残った担持成形体を引き続き乾燥することができる。活性材料割合は、触媒質量を基準として、触媒質量(活性材料を洗い落とす前に決定される)と担持成形体質量(活性材料の洗い落とし及び乾燥後に決定される)との差から得られる。
【0016】
従って、触媒の質量%で表される担持成形体割合は、(100−Q)である。
【0017】
担持成形体の幾何学的比表面積Sは、担持成形体の質量を基準とした、担持成形体の幾何学的表面積である。
【0018】
この幾何学的表面積は、完全な寸法形状を前提とする形の相応する測定値から算出することができる。幾何学的表面積は、理想化された値であり、成形体の多孔性又は表面粗さに基づく表面積の増大を考慮していない。
【0019】
球形の担持成形体の場合に、幾何学的表面積は
4πr
であり、ここで、rは、球形の担持成形体の半径を表す。中空円柱形の担持成形体の場合に、幾何学的表面積は、
【数2】
であり、ここで、Hは、中空円柱形の担持成形体の高さを表し、ADは、外径を表し、IDは、内径を表す。
【0020】
好ましくは、担持成形体上に被着された活性材料の平均厚さは、50〜400μm、好ましくは75〜350μm、特に好ましくは100〜300μm、更に特に好ましくは100〜200μmである。
【0021】
好ましくは、担持成形体上に被着された活性材料の厚さは、できる限り均一である。この被着された活性材料の厚さは、異なる担持成形体の間でも同様にできる限り均一である。
【0022】
α,β−不飽和アルデヒドの気相酸化によりα,β−不飽和カルボン酸を製造するための活性材料は、自体公知である。例えば、元素Mo及びVを含む触媒活性多元素系酸化物材料が適していて、ここで、触媒活性多元素系酸化物材料の、酸素以外の全ての元素の全体量に対する元素Moのモル割合は、20モル%〜80モル%であり、触媒活性多元素系酸化物材料中に含まれるMoの、触媒活性多元素系酸化物材料中に含まれるVに対するモル比のMo/Vは、15:1〜1:1である。好ましくは、多元素系酸化物は、更に元素Nb及びWの少なくとも1つを含み;Mo/(W及びNbの全体量)の相応するモル比は、好ましくは80:1〜1:4である。頻繁に、このような多元素系酸化物材料は、更にCuを30:1〜1:3の相応するモル比Mo/Cuで含む。
【0023】
上述の多元素系酸化物材料は、元素Mo、V、及び場合によりNb及び/又はW又はCuの他に、更に、例えば元素Ta、Cr、Ce、Ni、Co、Fe、Mn、Zn、Sb、Bi、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、H、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)、Si、Al、Ti及びZrを含むことができる。しかしながら、もちろん、この多元素系酸化物材料は、元素Mo、V、O並びにCu及び場合によりW及び/又はNbだけからなることもできる。この多元素系酸化物材料は、特に、アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒による部分気相酸化のための触媒用の活性材料として適している。
【0024】
アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒による部分気相酸化のための触媒用の活性材料として、更に特に適切な材料は、次の一般式(I)
Mo12 (I)
[式中、
は、W、Nb、Ta、Cr及び/又はCeを表し、
は、Cu、Ni、Co、Fe、Mn及び/又はZnを表し、
は、Sb及び/又はBiを表し、
は、1種以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属及び/又はNを表し、
は、Si、Al、Ti及び/又はZrを表し、
aは、1〜6の範囲内の数を表し、
bは、0.2〜4の範囲内の数を表し、
cは、0〜18の範囲内、好ましくは0.5〜18の範囲内の数を表し、
dは、0〜40の範囲内の数を表し、
eは、0〜4の範囲内の数を表し、
fは、0〜40の範囲内の数を表し、及び
nは、一般式(I)中の、酸素以外の元素の化学量論係数並びにその電荷数(価数)により決まる、元素の酸素の化学量論係数を表す]の多元素系酸化物材料を含む。
【0025】
好ましくは、これらの変数は、多元素系酸化物材料(I)の酸素以外の全ての元素の全体量に対する元素Moのモル割合が20モル%〜80モル%であるという条件で、規定の範囲内で選択される。
【0026】
この多元素系酸化物材料は、好ましくは一般式(II)
Mo12Cu (II)
[Xは、1種以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を表し、
は、Si、Al、Ti及びZrの群からの1種以上の元素を表し、
aは、2〜4の範囲内の数、好ましくは2.5〜3.5の範囲内の数を表し、
bは、0〜3の範囲内の数、好ましくは0.2〜3の範囲内の数、特に0.5〜2の範囲内の数、特に好ましくは0.75〜1.5の範囲内の数を表し、
cは、0.5〜3の範囲内の数、好ましくは0.7〜2.7の範囲内の数、特に0.9〜2.4の範囲内の数、特に好ましくは1〜1.5の範囲内の数を表し、
eは、0〜4の範囲内の数、好ましくは0〜2の範囲内の数、特に0〜1の範囲内の数、特に好ましくは0〜0.2の範囲内の数を表し、
fは、0〜40の範囲内の数、好ましくは0〜15の範囲内の数、特に0〜8の範囲内の数、特に好ましくは0を表し、及び
nは、一般式(II)中の、酸素以外の元素の化学量論係数並びにその電荷数(価数)により決まる、元素の酸素の化学量論係数を表す]に相当する。
【0027】
元素X及びXは、一般式(II)の活性材料の必須の成分ではない。これらは、活性材料中で、一般に不活性な希釈剤のように作用する。これを活性材料中に混入することにより、体積基準の触媒活性を所望の水準に調節することができる。
【0028】
一実施態様の場合に、この活性材料は、DE 10 2007 010 422に記載されているように、例えば式(I)又は(II)の、元素Mo及びVを含む多元素系酸化物材料の、酸化モリブデン源との微細粒の混合物の形で存在することができる。この酸化モリブデン源は、モリブデンの酸化物、及び高めた温度でかつ分子酸素の作用下でモリブデンの酸化物を形成するモリブデンの化合物の中から適切に選択される。これには、MoO、Mo1852、Mo23及びMo11のような酸化モリブデン又はモリブデン酸アンモニウム[(NHMoO]のような化合物並びに七モリブデン酸アンモニウム四水和物[(NHMo24 4HO]のようなポリモリブデン酸アンモニウムが該当する。別の例は、酸化モリブデン水和物(MoO xHO)である。MoOは、好ましい酸化モリブデン源である。
【0029】
微細粒の酸化モリブデン源の粒度(粒子直径、又は粒子直径分布)は、本発明の場合に、元素Mo及びVを含む微細粒の多元素系酸化物の粒度と同じであるのが好ましい(これは、微細粒の多元素系酸化物との特に均質な混合を可能にする)。これは、特に、微細粒の酸化モリブデン源が、酸化モリブデン(特にMoO)である場合に当てはまる。
【0030】
酸化モリブデン源の併用は、アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒による部分気相酸化の過程での触媒の失活に予防的に対抗するか又は失活の開始を遅らせることができる。
【0031】
一般的に、この触媒は多孔性である。この触媒は、好ましくは、多様な平均孔径の細孔の所定の分布を示す。触媒のマクロ孔の容積割合pvolは、好ましくは少なくとも0.35であり、ここで、pvolは、
【数3】
[式中、
0.26−2は、0.26〜2μmの範囲内の平均直径を有する細孔の容積を表し、かつ
0.02−6.5は、0.02〜6.5μmの範囲内の平均直径を有する細孔の容積を表す]によって決定される。
【0032】
ナノメートル範囲〜マイクロメートル範囲の平均直径を有する細孔の容積は、水銀圧入法(例えばDIN No. 66133)によって決定することができる。水銀は、たいていの固体に対して濡れない液体としてふるまう。従って、水銀は、自発的に多孔性材料に吸収されず、極端な圧力下でのみ固体試料の細孔内へ圧入される。この圧力の高さは、細孔の大きさに依存する。水銀圧入法の場合に、この挙動が、外部から所定の圧力が印加される場合に容積的に把握される侵入量によって細孔直径を検知するために利用される。
【0033】
この場合、(多孔性構造の場合に、場合により含まれる液体を脱気するために)あらかじめ脱気した多孔性の系(調査されるべき試料)を水銀浴に浸し、この圧力を変化させることができる。
【0034】
水銀は試料材料を濡らさないため、水銀を試料の細孔内へ圧入しなければならない(その都度の圧力で平衡になるまで待機する)。より大きな横断面を有する細孔内への水銀の侵入は、比較的低い圧力で行われ、より狭い細孔中への水銀の侵入は比較的高い圧力が必要となる。環状円柱形の孔の存在を除いて、ウォッシュバーンの式によって、液状の水銀を、水銀の表面張力に抗して相応する直径の細孔内へ圧入(侵入;水銀侵入)するために必要とされる外部圧力は、上述の直径と関連づけることができる。水銀圧入調査の範囲内で適用される圧力範囲は、検知される細孔直径の(帯域)幅と相関する。
【0035】
25℃で実験的に測定した水銀侵入曲線から、引き続き、細孔直径の検知された(帯域)幅によって、細孔の直径分布、細孔の全体の内部表面積、及び細孔の全体の内部容積(全侵入体積;全細孔容積)を計算によって導き出すことができる(Georges Reberの「Eigenschaften und Einsatzmoeglichkeiten von Aerogelfenstern im Vergleich mit konventionellen sowie evakuierten Fenstern(慣用の窓並びに真空にされた窓と比べたエーロゲル窓の特性及び能力)」、バーゼル大学の哲学−自然科学学部の博士学位論文(1991)を参照)。Micrometritics社の下記の測定機器Auto Pore IV 9520は、これに関して適切な標準計算プログラムを有する。
【0036】
本発明による触媒は、一般に、粉末状の活性材料を担持成形体に、好ましくは次に記載する製造方法によって、被着させることにより得られる。
【0037】
粉末状の活性材料の製造は、多種多様に行うことができる。一実施態様の場合に、活性材料の製造は、活性材料の元素成分源から均質な乾燥混合物を製造し、これを350〜600℃の温度で焼成し、引き続き粉末の形に変換することにより行われる。
【0038】
活性材料の好ましい元素成分源は、活性材料中に含まれる金属の酸化物である。活性材料の元素成分源として、更に、少なくとも酸素の存在での加熱により酸化物に変換可能な化合物;特に、活性材料中に含まれる金属のハロゲン化物、硝酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、アミン錯体、アンモニウム塩及び/又は水酸化物が挙げられる。
【0039】
好ましくは、この均質な乾燥混合物は、これらの源の均質混合によって製造される。均質な混合は、乾式又は湿式で行うことができる。乾式で行う場合に、これらの源を好ましくは微細粒の粉末として使用する。専ら溶解した形で存在する源から出発する場合に、特に均質な乾燥混合物が混合の際に得られる。従ってこれらの源の均質な混合は、好ましくは湿式で行われる。好ましくは、これらの源を互いに溶液及び/又は懸濁液の形で混合し、その際に生じる湿った混合物を引き続き乾燥して均質な乾燥混合物にする。溶剤及び/又は懸濁剤として、好ましくは水又は水溶液が使用される。湿った混合物の乾燥は、好ましくは100〜150℃の出口温度で噴霧乾燥によって行われる。乾燥するガス流は、好ましくは空気又は分子窒素である。
【0040】
焼成の前に、この乾燥混合物(例えば噴霧乾燥により得られた乾燥混合物)を、混合による材料調整操作に供することができる。混合の概念とは、乾燥混合、場合により液体の添加下での乾燥混合、混練及び攪拌であると解釈される。この混合により、狭い粒度分布を示す均質化された材料が得られる。
【0041】
特に好ましくは、この混合操作は、液体、例えば水、酢酸等の添加後に混練として実施され、ここで、可塑性の又は可塑化された材料が得られる。この場合に作用する剪断力により、凝集体は粉砕される。この可塑性の材料は、ストランド押出のために適していて、乾燥することができる安定なストランド体を提供する。乾燥したストランド体は、特に好ましくは回転炉中での焼成のために適している。
【0042】
この焼成は、不活性ガス下でも、酸化雰囲気下でも、還元雰囲気下でも実施することができる。好ましくは、この焼成は、酸化雰囲気下で実施する。不活性ガスとして、特に窒素、水素、希ガス及びこれらの混合物が挙げられる。酸化雰囲気は、好ましくは酸素、特に空気を含む。還元雰囲気は、好ましくはH、NH、CO、メタン及び/又はアクロレインを含む。活性材料の触媒活性は、焼成雰囲気の酸素含有率に依存して一般に最大値を示す。好ましくは、焼成雰囲気の酸素含有率は、0.5〜10体積%、特に好ましくは1〜5体積%である。上述の境界を越える酸素含有率及び下回る酸素含有率は、通常では生じる触媒活性を低下させる。焼成時間は、数分〜数時間であってもよく、通常では焼成温度が高くなるにつれて短くなる。良好な焼成方法は、例えばWO 95/11081に記載されている。
【0043】
乾燥混合物を焼成する際に活性材料が得られる。粉末の形への変換は、好ましくは粉砕により行う。
【0044】
触媒を製造するための別の方法の場合に、担持成形体の表面にまず微細粒の前駆体材料を被着させ、担持成形体の表面上で前駆体材料から活性材料への焼成を実施する。微細粒の前駆体材料は、好ましくは活性材料の元素成分源を含む。活性材料は、好ましくは一般式(I)又は(II)の活性材料である。
【0045】
触媒を製造するための本発明による方法の場合、多数の担持成形体、粉末状の活性材料及び液状の結合剤を、粉末状の活性材料が液状の結合剤で飽和することなく、容器内で混合することにより、担持成形体を活性材料で被覆し、ここで被覆工程の時間は30分未満である。結合剤の量が、粉末状の活性材料の液体吸収能力を下回るように、液状の結合剤の量の粉末状の活性材料の量に対する比率を選択することにより、粉末状の活性材料が液状の結合剤で飽和されることを回避する。
【0046】
粉末の液体吸収能力は、例えば、粉末を攪拌機中で流動させ、攪拌された粉末に液体を被着させ、攪拌機モータのトルクの時間経過を測定することにより決定することができる。トルクの最大値まで粉末に被着された液体量から、粉末の液体吸収能力を算定することができる。
【0047】
この粉末状の活性材料は、好ましくは、最大幅が50μmを越える粒子の割合が1%未満である。
【0048】
結合剤の概念とは、活性材料粉末粒子の相互の及び/又は担持材料との付着を持続的に又は一時的に改善する物質であると解釈される。好ましくは、この結合剤は、引き続く乾燥の際にほとんど蒸発又は昇華する。本発明による方法の場合、結合剤として、例えばポリオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン又はアミド、例えばホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、アセトアミド、ピロリドン又はN−メチルピロリドンを使用することができる。この液状の結合剤は、好ましくは、水、グリセリン及び水中のグリセリンの溶液から選択される。好ましい液状の結合剤は、水20〜99質量%を含む水中のグリセリンの溶液である。特に好ましい液状の結合剤は、水75質量%を含む水中のグリセリンの溶液である。
【0049】
好ましくは、担持成形体を容器中に装入し、粉末状の活性材料と液状の結合剤とを相互に個別に、被覆時間にわたり容器内に添加する。よって、粉末状の活性材料と液状の結合剤とは相互に容器中で初めて接触する。粉末状の活性材料と液状の結合剤とは、好ましくは、容器中に装入された担持成形体の表面で初めて合一される。これは、液状の結合剤を容器中に噴霧し、かつ粉末状の活性材料を、この液状の結合剤の噴霧円錐体の外側にある容器の領域に導入することにより達成される。よって、粉末粒子の液体による局所的な過負荷は避けられる。粉末状の活性材料と、液状の結合剤は、例えば連続的添加によるか又は部分量の時間的に個別の添加により、処理時間にわたり容器中へ添加することができる。
【0050】
混合は、好ましくは、容器の連続的な運動によって行う。この運動は、好ましくは回転運動である。
【0051】
上述の触媒の製造方法を実施するために、特に、それぞれ所望の液状の結合剤の使用下でのDE-A 2909671に開示された方法原理(EP-A 714 700並びにDE-A 10 2005 010 645も参照)が適している。
【0052】
つまり、被覆されるべき担持成形体、好ましくは中空円柱形の担持成形体は、好ましくは適切に回転する(傾斜角は、一般に30〜90°である)回転式容器(例えば回転皿又はコーティング用タンク又はコーティング用ドラム)中に充填される。この使用目的に適した回転式容器は、特にFreund Industrial Co., Ltd(Tokyo(JP))社のHCF-100型のハイコーター並びにGebrueder Loedige Maschinenbau GmbH社(DE-Paderborn)のLH 100型のハイコーターである。
【0053】
回転する回転式容器は、担持成形体、好ましくは中空円柱形の担持成形体を、2つの互いに好ましい間隔で配置された供給装置の下に通過させる。この2つのうちの第1の供給装置は、好ましくはノズルに相当し、このノズルによって、回転する回転皿(ハイコーター)中で回転する担持成形体を液状の結合剤で調節しながら湿らせる。第2の供給装置は、適用技術的に好ましくは、噴霧される液状結合剤の噴霧円錐体の外側に存在し、粉末状の活性材料を(例えば振動式コンベアを介して)供給するために用いられる。この担持成形体は、活性材料を取り込む、というのも活性材料は、回転運動によって、担持成形体の表面上で緻密化されてまとまった外被となるためである。
【0054】
必要な場合に、下地塗りされた好ましくは中空円柱形の担持成形体は、後続する回転の過程で、再び噴霧ノズルの前を通り過ぎ、この場合に、更なる運動の過程で(場合により他の)粉末状の活性材料の更なる層を取り込むなどするために(場合により他の液状の結合剤で)調節しながら湿らされる(中間乾燥は一般に必要とされない)。使用された液状の結合剤の少なくとも部分的な除去は、例えば、EP-A 714 700の教示又はDE-A 10 2005 010 645の教示に従って、例えば熱ガス、例えばN又は空気を作用させることによる最終的な熱供給によって行うことができる(この熱ガスは、それぞれ空間的に別々に取り付けられた網状に構成された、回転皿、又はコーティング用タンク又はコーティング用ドラム(一般に回転容器)の壁部エレメントを通して供給及び排出される)。
【0055】
この被覆法の記載された実施態様についての利点は、担持成形体の被覆されるべき表面の湿潤を調節された方式で行うことである。簡単に言い表すと、これは、担持成形体表面を好都合に、この表面が液状の結合剤を吸着して含むが、この担持成形体表面上ではこの液状の結合剤を視覚的に現れていないように濡らすことを意味する。この担持成形体表面が湿りすぎている場合には、微細粒の活性材料及び/又は前駆体材料は、表面に張り付かずに、凝集して個別の凝集体を形成する。これについての詳細な記載は、DE-A 2909671、EP-A 714 700並びにDE-A 10 2005 010 645に見られる。記載された方法様式の利点は、使用された液状の結合剤の除去を比較的調節された様式で、例えば蒸発及び/又は昇華によって行うことができる点にある。最も簡単な場合には、この除去は既に記載されたように、相応する温度(頻繁に50〜150℃)の熱ガスの作用によって行うことができる。熱ガスのこのような作用は、一般に予備乾燥を生じさせる。
【0056】
結合剤の除去は、任意の種類の乾燥装置中で(例えばベルト式乾燥器中で)及び/又は管束型反応器の触媒固定床中で初めて、例えばDE-A 10 2005 010 645が推奨しているように行うことができる。好ましくは、液状の結合剤を被覆した担持成形体から、150〜400℃の範囲内の、好ましくは250〜350℃の範囲内の温度で乾燥することによって除去することにより本発明による触媒が得られる。この乾燥は、好ましくは空気流中で実施される。好ましくは、乾燥時間は、0.5〜8時間、好ましくは1〜4時間である。
【0057】
本発明の主題は、本発明による触媒床を含む触媒固定床による分子酸素を用いたα,β−不飽和アルデヒドの気相酸化によるα,β−不飽和カルボン酸の製造方法でもある。好ましくは、分子酸素及びα,β−不飽和アルデヒドを、触媒床を介して導入することにより、分子酸素とα,β−不飽和アルデヒドとを触媒床と接触させる。好ましくは、分子酸素及びα,β−不飽和アルデヒドを含む反応ガスを、触媒床を介して導入し、こうしてこの反応ガスを反応させて生成物ガスにする。
【0058】
このα,β−不飽和アルデヒドは、好ましくは3〜6(つまり3、4、5又は6)個のC原子を含むα,β−不飽和アルデヒド、特にアクロレイン及びメタクロレインの中から選択される。特に好ましくは、α,β−不飽和アルデヒドはアクロレインである。この方法は、特に、α,β−不飽和カルボン酸の製造のために、特に、アクロレインからアクリル酸への酸化及びメタクロレインからメタクリル酸への酸化のために適している。好ましくは、アクロレインの気相酸化によるアクリル酸の製造方法である。
【0059】
この分子酸素は、好ましくは空気の形で、この方法に供給される。
【0060】
反応ガス中に含まれるα,β−不飽和アルデヒドの割合は、反応ガスを基準としてそれぞれ、一般に3〜15体積%、好ましくは4〜10体積%、特に5〜8体積%である。
【0061】
好ましくは、この反応ガスは、更に、水蒸気とは異なる少なくとも1種の不活性希釈ガスを含む。この不活性希釈ガスとは、気相酸化の経過において、少なくとも95モル%、好ましくは少なくとも98モル%が化学的に変化しないままであるガスであると解釈される。不活性希釈ガスの例は、N、CO及び希ガス、例えばArである。不活性希釈ガスとして、好ましくは分子窒素が使用される。この不活性希釈ガスは、分子窒素を、少なくとも20体積%、好ましくは少なくとも40体積%、更に好ましくは少なくとも60体積%、特に好ましくは少なくとも80体積%、更に特に好ましくは少なくとも95体積%含むことができる。
【0062】
反応ガスは、更に水蒸気を含むことができる。
【0063】
反応ガスは、更に循環ガスを含むことができる。循環ガスとは、気相酸化の生成物ガスから、α,β−不飽和カルボン酸を主に選択的に除去する際に残留する残留ガスであると解釈される。
【0064】
好ましくは、本発明によるα,β−不飽和カルボン酸の製造方法は、アルカンをα,β−不飽和カルボン酸にする二段階気相酸化の第2段階を構成する。このような二段階気相酸化の範囲内で、第1段階の生成物ガスが好ましくは第2段階に供給される。第2段階への供給の前に、第1段階の生成物ガスを例えば冷却し及び/又は酸素を添加することもできる(二次酸素添加、空気の添加が好ましい)。循環ガスは、好ましくは、2つの段階の第1段階に供給される。
【0065】
反応ガス中で、O:α,β−不飽和アルデヒドのモル比の値は、好ましくは1〜3、特に1〜2、特に好ましくは1〜1.5である。
【0066】
この反応ガスは、好ましくはα,β−不飽和アルデヒド:酸素:水蒸気:水蒸気とは異なる不活性希釈ガスを、1:(1〜3):(0〜20):(3〜30)の体積比で、好ましくは1:(1〜3):(0.5〜10):(7〜10)の体積比で含む。
【0067】
好ましくは、α,β−不飽和アルデヒドによる床の空間速度(Belastung)は、高くても600Nl/(lh)、好ましくは高くても300Nl/(lh)、特に好ましくは高くても250Nl/(lh)、最も好ましくは高くても200Nl/(lh)である。好ましくは、α,β−不飽和アルデヒドによる床の空間速度は、少なくとも30Nl/(lh)、好ましくは少なくとも70Nl/(lh)、特に好ましくは少なくとも90Nl/(lh)、最も好ましくは少なくとも120Nl/(lh)である。Nl/(lh)で表される、α,β−不飽和アルデヒドによる床の空間速度とは、1時間当たりで床1リットル当たりの反応ガスの成分として触媒床を介して導入される、ノルマルリットルで表されるα,β−不飽和アルデヒドの量であると解釈される。ノルマルリットル(Nl)は、標準条件下で、つまり25℃でかつ1barで、α,β−不飽和アルデヒドのモル量に相当する理想ガスのモル量が占めるリットルで表される体積である。
【0068】
一般に、反応ガス中では0.5〜100bar、好ましくは1〜5bar、特に1〜3barの全体圧力が生じる。この明細書中の全ての圧力表示は、絶対圧に関する。
【0069】
好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸の製造方法は、管束型反応器中で実施され、この管束型反応器の反応管には触媒固定床が充填されている。
【0070】
この床は、例えば、本発明による触媒だけからなることができる。この床中に、本発明による触媒と、気相酸化に関してほぼ不活性に挙動する希釈成形体とからなる十分に均質な混合物が存在していてもよい。希釈成形体用の材料として、例えば、多孔性又は無孔性の酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、ケイ酸、例えばケイ酸マグネシウム又はケイ酸アルミニウム及び/又はステアタイト(例えばCeramTec社(DE)のC 220型)が挙げられる。
【0071】
希釈成形体の形状寸法は、原則として任意であってよい。つまりこれは、例えばリング形、球形、タブレット形、穴あきタブレット形、三つ葉形、穴あき三つ葉形、星形ストランド形、星形タブレット形、車輪形、押出物、ペレット形、円柱形及び中空円柱形であることができる。
【0072】
この管束型反応器は、好ましくは二領域管束型反応器である。好ましい二領域管束型反応器は、DE-C 28 30 765に開示されている。しかしながら、DE-C 25 13 405、US-A 3147084、DE-A 22 01 528、EP-A 383224及びDE-A 29 03 582に開示された二領域管束型反応器も適している。
【0073】
反応管の周囲には、二領域管型反応器中で、好ましくは2つの相互にほぼ空間的に別々の温度調節媒体が供給される。この温度調節媒体とは、好ましくは塩融液である。温度調節媒体の入口温度は、好ましくは230〜300℃、特に240〜290℃、特に好ましくは250〜285℃に調節される。この温度調節媒体は、それぞれの温度調節区域にわたって、反応ガス混合物に対して並流で又は向流で案内することができる。温度調節区域内で、温度調節媒体は、好ましくはメアンダ型に案内される。この温度調節媒体の流動速度は、それぞれの温度調節区域内で、好ましくは、熱交換媒体の温度が、温度調節区域への入口から温度調節区域からの出口までで0〜15℃、頻繁に1〜10℃、又は2〜8℃、又は3〜6℃上昇するように選択される。
【0074】
好ましい実施態様の場合に、触媒固定床は、少なくとも2つの互いに連続する反応区域を有し、ここで、この床は、少なくとも、反応器入口に最も近い反応区域中に本発明による触媒を有する。
【0075】
他の好ましい実施態様の場合に、触媒固定床は、少なくとも2つの相互に連続する反応区域を有し、ここで、この床は、少なくとも、最高の局所温度を生じる反応区域中に本発明による触媒を有する。
【0076】
個々の反応区域は、不活性希釈成形体の含有率、触媒の形状、触媒の空間充填度、触媒の活性材料割合及び活性材料の組成の中から選択される少なくとも1つの特性が相互に異なる。
【0077】
これらの特性が異なるために、一方の反応区域の体積基準の触媒活性は、他方の反応区域の体積基準の触媒活性とは異なることができる。好ましくは、体積基準の触媒活性は、一方の反応区域から次の反応区域に向かって、反応器入口から反応器出口に向かって増大する。
【0078】
この(相対的な)体積基準の触媒活性は、触媒床体積を基準とする反応速度として、その他の点は一定の条件下で測定することができる。
【0079】
この体積基準の触媒活性は、希釈成形体を用いた触媒の希釈によって変えることができる。これとは別に又は付加的にこの体積基準の触媒活性は、活性材料割合を変えることによって調節することができる。
【0080】
好ましくは、反応器入口に最も近い反応区域中の、活性材料空間密度、つまりリットルで表される反応区域の空の空間容積当たりのgで示される活性材料の量は、反応器出口に最も近い反応区域中よりも低い。
【0081】
所定の運転時点から、運転時間の増加と共に、触媒装入物の品質の低下が増大する。好ましい実施態様の場合に、床の品質の回復のために、使用した全ての床ではなく、最高の局所温度を生じる床の部分量だけを取り出し、これを新たな床と交換する。例えば、最高の局所温度を生じる反応区域の床を新たな床に交換し、反応ガスの流動方向で下流側にある反応区域中の床はそのままにする。
【0082】
一般に、管束型反応器は、更に触媒床中のガス温度の決定のために温度管を備えている。好ましくは、この温度管の内径及び熱電素子用の内側の収容スリーブの外径は、反応熱を発する体積の、温度管及び反応管における熱を搬出する表面積に対する比が同じであるか又は僅かにしか異ならないように選択される。
【0083】
圧力損失は、反応管と温度管とでは、同じGHSVを基準として、同じであるのが好ましい。温度管における圧力損失補償は、例えば触媒に破砕した触媒を添加することにより行うことができる。この補償は、好ましくは全体の温度管の長さにわたって均一に行われる。その他の点では、温度管の充填は、EP-A 873783に記載したように構成されていてもよい。
【0084】
温度管中で測定された温度によって、触媒固定床の最高の局所温度及び触媒固定床中のその位置を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1a】微細粒の粉末Pの累積粒度分布を示す。この場合、横座標は対数尺度で、μmで表される粒子直径を示す。分布曲線に関する所定の粒子直径に属する縦座標の値は、それぞれの粒子直径又はより小さな粒子直径の粒子からなる全ての粒子体積の百分率を示す。
図1b】微細粒の粉末Pの微分粒度分布を示す。この場合、横座標は対数尺度で、μmで表される粒子直径を示す。分布曲線に関する所定の粒子直径に属する縦座標の値は、それぞれの直径の粒子からなる全ての粒子体積の百分率を示す。
図2】微細粒の粉末Pの回折図を示す。
図3】C1の活性材料外被の細孔の孔径分布を示す。
図4】C2の活性材料外被の細孔の孔径分布を示す。
図5】C3の活性材料外被の細孔の孔径分布を示す。
図6】C4の活性材料外被の細孔の孔径分布を示す。
図7】C5の活性材料外被の細孔の孔径分布を示す。
図8】C6の活性材料外被の細孔の孔径分布を示す。
図9】C7の活性材料外被の細孔の孔径分布を示す。
図10】C8の活性材料外被の細孔の孔径分布を示す。
図11】C9の活性材料外被の細孔の孔径分布を示す。
図12】C10の活性材料外被の細孔の孔径分布を示す。
図13】C11の活性材料外被の細孔の孔径分布を示す。
【0086】
図3〜13には、横座標に、μmで表されるそれぞれの孔径がプロットされている(10を底とする対数プロット)。縦座標には、(ml/g活性材料)で表される、全比細孔容積についての個々の孔径の個別の寄与率に関する積分値(全比細孔容積についての累積寄与率)がプロットされている(曲線□)。この終点は、活性材料に関する全(比)細孔容積(全侵入容積)である。
【0087】
実施例
触媒の製造
A) 前駆体材料の製造
パドル型攪拌機を備えた、水により温度調節される1.75mの特殊鋼製の二重ジャケット容器中で、酢酸銅水和物(含有率:Cu 32.0質量%、添加速度50kg/h、Goldschmidt社)8.2kgを、水274l中に室温(約25℃)で攪拌(回転数:70rpm)しながら溶かした。溶液1が得られた。これを更に30分間攪拌した。
【0088】
これとは空間的に別個に、パドル型攪拌機(回転数70rpm)を備えた、水により温度調節される1.75mの特殊鋼製の二重ジャケット容器中に水614lを装入し、40℃に加熱し、七モリブデン酸アンモニウム四水和物(MoO 81.5質量%、添加速度300kg/h、H.C. Starck GmbH社)73kgを、40℃を維持しながら攪拌混入した。次いで、この容器内容物を30分間攪拌しながら90℃に加熱し、この温度を維持しながら、記載された順序で連続して、メタバナジン酸アンモニウム(V 77.6%、添加速度150kg/h、添加後の後攪拌時間40分)12.1kg並びにパラタングステン酸アンモニウム七水和物(WO 89.6質量%、添加速度50kg/h、添加後の後攪拌時間30分)10.7kgを攪拌混入した。溶液2が得られた。
【0089】
溶液2を80℃に冷却し、引き続き溶液1を素早く、70rpmのパドル攪拌機の攪拌機回転数で溶液2に移して攪拌混入した。得られた混合物に、25℃の温度を示す25質量%のNH水溶液133lを添加した。攪拌しながら透明な溶液が生じ、この透明な溶液は短時間65℃の温度及び8.5のpH値を示した。これを、他の、パドル型攪拌機を備えた、水により温度調節される1.75mの特殊鋼製の他の二重ジャケット容器に移した。この容器内容物を80℃に加熱し、40rpmの攪拌機回転数で攪拌し、循環で運転した。容器内容物のpH値を、25質量%のNH水溶液の自動添加によって8.5の値に維持した。この容器内容物を、Niro社(デンマーク国)のFS 15型の回転ディスクスプレー塔中に圧送し、並流熱空気中で350±10℃のガス入口温度で、15000rpmのディスク回転数で、かつ2300Nm/hの燃焼空気体積流で乾燥し、ここでスプレー塔中で1mbarの負圧を維持した。スプレー塔に供給される液体体積流を、この場合、110±5℃のガス出口温度が達成されるように調節した。生じるスプレー粉末は、2〜50μmの粒子直径及び21±2質量%の強熱減量を示した。この強熱減量は、空気中で磁製るつぼ中で加熱(600℃で3時間)することにより決定した。この磁製るつぼは、あらかじめ900℃で一定質量になるまで強熱した。スプレー粉末を充填は、プラスチックインレットを備えた特殊容器又は特殊バレル(200リットル)中に行った。破片を分離するために、ここでは、組み込み式篩い部材を使用した。
【0090】
こうして得られたスプレー粉末75kgを、AMK(Aachener Misch- und Knetmaschinen Fabrik)社のVM 160型(シグマ型ブレード)のニーダー中に、15rpmのスクリュー回転数で供給した。引き続き、酢酸(100質量%、氷酢酸)6.5l及び水5.2lを、このニーダー中に、15rpmのスクリュー回転数で供給した。4〜5分の混練時間(スクリュー回転数:20rpm)後に、更に水6.5lを添加し、混練プロセスを30分の経過まで継続した(混練温度約40〜50℃)。この混練の際に、電力消費を観察した。25%の電力消費を越えた際に、必要に応じて、更に混練物に水約1lを添加した。その後、この混練物を押出機に入れ替え、押出機(Bonnot Company社(オハイオ)、タイプ:G 103-10/D7A-572K(6”押出機W Packer))を用いてストランド(長さ:1〜10cm;直径6mm)に成形した。3ゾーン型ベルト式乾燥器で、このストランドを10cm/minのベルト送り速度で、64minの生じる滞留時間で、155℃のガス入口温度で乾燥した。ガス温度の期待値は、ゾーン1で90〜95℃、ゾーン2で約115℃、及びゾーン3で約125℃であった。
【0091】
B) 式Mo121.2Cu1.2の活性材料の製造
熱処理の実施を、DE 10360057A1に記載された回転炉中で次の条件下で行った:
熱処理を、A)で記載されたように製造した306kgの原料品の量を用いて不連続的に行った;
水平線に対する回転円筒部の傾き角は0°であった;
この回転円筒部は、1.5rpmで右回りに回転した;
全体の熱処理の間に、回転円筒部に205Nm/hのガス流を通過させ、このガス流は(当初に含まれる空気の排出後に)次の組成を有していて、かつガス流の回転円筒部からの排出について更に25Nm/hの遮断ガス窒素により補った:80Nm/hは、ベース負荷−窒素及び回転円筒部中で放出されるガスから構成され、25Nm/hは遮断ガス窒素、30Nm/hは空気、70Nm/hは再循環された循環ガスである。遮断ガス窒素は、25℃の温度で供給した。他のガス流の混合物は、ヒーターによって、回転円筒部中の原料品がそれぞれ有する温度で、それぞれ回転円筒部中へ導入した。
【0092】
10時間の間に、原料品温度を25℃からほぼ直線的に300℃に高めた;引き続き原料品温度を2時間の間にほぼ直線的に360℃に高めた;その後で、この原料品温度を7時間の間にほぼ直線的に350℃に下げた;次いでこの原料品温度を2時間の間にほぼ直線的に420℃に高め、かつこの原料品温度を30分間維持した;次いで回転円筒部を通過するガス流中で、空気30Nm/hを、ベース負荷窒素を相応して高めることによって置き換え(それにより、本来の熱処理の過程を完了し)、回転円筒部の加熱を停止し、原料品を、周囲空気の吸引による回転円筒部の急速冷却を始動することにより2時間内に100℃未満にある温度に冷却し、最終的に周囲温度に冷却し;この場合、ガス流を回転円筒部に25℃の温度で供給し;全体の熱処理の間に、ガス流の回転円筒部出口の背後(直後)の圧力は外部圧力を0.2mbar下回る。
【0093】
回転炉中のガス雰囲気の酸素含有率は、熱処理の全ての期間で2.9体積%である。還元熱処理の全体の時間にわたり、回転炉中のガス雰囲気のアンモニア濃度は、算術的に平均して4体積%である。
【0094】
得られた触媒活性材料は、バイプレックスクロスフロー分級型ミル(Biplexquerstromsichtmuehle)(BQ 500)(Hosokawa-Alpine社、Augsburg)を用いて微細粒の粉末Pに粉砕した。この場合、粉砕通路中に24枚の長い刃を組み込んだ。ミル回転数は、2500rpmであった。送風機スロットルバルブは完全に開放されていた。この供給は2.5rpmに調節した。排気体積流は1300m/hであり、差圧は10〜20mbarであった。粉砕により生じる微細粒の粉末の粉末粒子の50%は、1〜10μmの目開きの篩いを通過した。微細粒粉末に関して50μmを越える最大幅を有する粒子の割合は1%未満であった。上述の粉砕された触媒活性多元素系酸化物材料粉末の粒子のサイズ分布は、乾式分散のために使用した圧縮空気の分散圧力(◇=1.1bar絶対圧;□=2.0bar絶対圧;△=4.5bar絶対圧)に依存して、図1a及び1bを示す。
【0095】
図1a及び1bの粒子直径分布の基礎となる測定方法は、レーザー回折である。この場合、多元素系酸化物材料粉末を分散コンベアを介して乾式分散器Sympatec RODOS(Sympatec GmbH, System-Partikel-Technik, Am Pulverhaus 1, D-38678 Clausthal-Zellerfeld)に供給し、そこで圧縮空気(この圧縮空気はそれぞれ1.1又は2又は4.5bar(絶対圧)の分散圧力を有する)で乾式で分散させ、自由噴流の形で測定セルに吹き込んだ。この中で、次いで、ISO 13320によりレーザー回折分光計Malvern Mastersizer S(Malvern Instruments, Worcestershire WR14 1AT, United Kingdom)を用いて、体積基準の粒径分布を決定した(オブスキュレーション 3〜7%)。
【0096】
図2は、微細粒の粉末PのX線回折図を示す。横座標は、2Θスケール[°]で表される回折角を示す。縦座標には、絶対強度がプロットされている。
【0097】
C) 活性材料の付形
C1(比較例)
中空円柱形の担持成形体(外径7mm、長さ3mm、内径4mm、表面粗さR 45μm(砕片粒被覆)を示す、CeramTec社のステアタイトC 220)1600gを、粉砕された微細粒の粉末Pで被覆した。この被覆を、ハイコーターLHC 25/36(Loedige社、D-33102 Paderborn)中で行った。このハイコーターは、連続的に粉末供給を可能にするために改良されていた。これは、Tygonホース(内径:8mm、外径11.1mm;Saint-Gobain Performance社、89120 Charny, Frankreich)を介して、ハイコーターのドラムと接続されている漏斗状の粉末貯蔵容器からなっていた。ドラム半径はこの場合18cmである。ドラムの深さは20cmである。ドラムが回転する軸は、水平方向に調整されていた。被覆のために、粉砕された触媒活性酸化物材料粉末750gを粉末貯蔵容器内へ充填した。この粉末供給は、連続式加圧計量供給によって行った。パルス時間バルブは、50msに調節し、調節された圧力は、周囲圧力(約1atm)を0.7bar上回った。漏斗状の粉末貯蔵容器中の粉末は、均一な計量供給(攪拌機走行時間:2s、攪拌機休止時間:1s、改良V字型アンカー型攪拌機、BASF SE社の独自型)を保証するために、被覆の間に連続的に攪拌した。結合剤は、水75質量%及びグリセリン25質量%からなる水溶液であった。これを、別個に液体計量供給器を介してドラム内へ噴霧した。この液体を、Watson-Marlow社のHPLCポンプ(323型)を用いて、ドラム内に存在する供給アーム中へ圧送した(噴霧圧力3bar、成形圧力2bar、流量:3gのグリセリン/水の溶液(1:3)/min)。粉末計量供給器と液体計量供給器とは互いに平行に配置されている。供給アームに取り付けられた、Schlick社(DE)の570/0 S75型のノズル並びに同様に供給アームの下側に取り付けられた固体供給器の搬出口は、6cmの間隔で平行しかつ角度測定器を用いて水平線に対して40°の角度に調整された。この粉末供給は、ノズルのスプレー円錐体の外側に行った。ノズル口と固体供給器の搬出口は、この場合ドラムの回転方向を示す。ドラムは、被覆の間、時計回りで15rpmで回転する。被覆は、25℃で50分間の期間にわたり行った。その後、被覆された担持成形体を27分間、130℃の通気温度でかつ81℃の排気温度で乾燥した。この後、この担持成形体を静止したドラム中で30分間の期間にわたり25℃に冷却した。この被覆の間に、供給された粉末の大部分は、担持成形体の表面に取り込まれた。取り込まれなかった部分は、ドラムの後方のフィルターに捕らえられた。双子形状は形成されず及び微細粒の酸化物材料の凝集は観察されなかった。
【0098】
被覆された担持成形体を、試料中にまだ存在するグリセリンを除去するために、Memmert GmbH + Co. KG社の空気循環乾燥庫(UM 400型;内部容積=53l;空気流=800l/h)中で処理した。このため、空気循環乾燥庫を2時間で300℃(空気温度を含めて)に加熱し、次いで300℃で2時間保持した。この乾燥品は、乾燥の間に、乾燥庫内の中央に配置された多孔板(多孔板上に均一に分布する貫通孔の孔径=0.5cm;多孔板の開口率は60%であり;多孔板の全横断面積は35cm×26cm=910cmであった)上に層状で存在していた(層の高さ=2cm)。その後、空気循環乾燥庫を2〜3時間の間に40〜50℃に冷却し、この試料を取り出した。この空気循環乾燥庫から取り出した中空円柱形の外被触媒C1は、その全質量を基準として、29.1質量%の酸化物外被割合を有していた。
【0099】
C2(比較例)
粉砕された微細粒の粉末P335kgを、Climax社の三酸化モリブデン(Mo66.6質量%、このMoOは、DE 10 2007 010 422 A1に記載された要件を全体として満たす)50kgと、AMK社(Aachen(DE))社のR645型のミキサー中で、10分間の混合時間で強力に混合した。これは切断刃を備えた傾斜型ミキサー(強力ミキサー)である。混合アームは39rpmで回転する。この生じる粉末は、次に粉末PMoとして表す。
【0100】
付形を次のように行った:中空円柱形の担持成形体(外径7mm、長さ3mm、内径4mm;45μmの表面粗さR及び担持成形体の体積を基準として≦1体積%の全細孔容積を示す、CeramTec社のC220型のステアタイト;DE-A 2135620を参照)61kgを、200l内容積のコーティング用タンク(傾き角90°;Loedige社(DE)のハイコーター)に充填した。引き続き、このコーティング用タンクを16rpmで回転させた。Schlick 0.5mm, 90°の型のノズルを介して、40分間で水75質量%及びグリセリン25質量%の水溶液3.8〜4.2リットルを、液体フィード圧力約1.8barで、担持成形体に噴霧した。同時に、同じ期間で、粉末PMo18.3kgを、振動式コンベアを介して、噴霧ノズルの噴霧円錐体の外側に連続的に供給した。この被覆の間に、供給した粉末は完全に担持成形体の表面に取り込まれ、微細粒の酸化物活性材料の凝集又は双子形状の形成は観察されなかった。
【0101】
活性材料粉末及び水溶液の添加が完了した後、2rpmの回転速度で40分間(これとは別に15〜60分間)110℃(これとは別に80〜120℃)の熱さの空気(約400m/h)をコーティング用タンク内に吹き込んだ。
【0102】
約2kgの被覆された活性材料粉末の試料を取り出した。試料中にまだ存在するグリセリンを、Memmert GmbH + Co. KG社(UM 400型;内部容積=53l;空気中=800l/h)の空気循環型乾燥庫中で除去した。熱処理条件は、実施例C1の条件と同一であった。この空気循環乾燥庫から取り出した中空円柱形の外被触媒C2は、その全質量を基準として、22質量%の酸化物外被割合を有していた。
【0103】
C3(比較例)
付形を次のように行った:中空円柱形の担持成形体(外径7mm、長さ3mm、内径4mm;45μmの表面粗さR及び担持成形体の体積を基準として≦1体積%の全細孔容積を示す、CeramTec社のC 220型のステアタイト;DE-A 2135620を参照)70kgを、200l内容積のコーティング用タンク(傾き角90°;Loedige社(DE)のハイコーター)に充填した。引き続き、このコーティング用タンクを16rpmで回転させた。Schlick 0.5mm, 90°の型のノズルを介して、40分間で水75質量%及びグリセリン25質量%の水溶液3.8〜4.2リットルを、液体フィード圧力約1.8barで、担持成形体に噴霧した。同時に、同じ期間で、粉砕された微細粒の粉末P(この粉末Pの比表面積は16m/gであった)18.2kgを、振動式コンベアを介して、噴霧ノズルの噴霧円錐体の外側に連続的に供給した。この被覆の間に、供給した粉末は完全に担持成形体の表面に取り込まれ、微細粒の酸化物活性材料の凝集又は双子形状の形成は観察されなかった。
【0104】
活性材料粉末及び水の添加が完了した後、2rpmの回転速度で40分間(これとは別に15〜60分間)110℃(これとは別に80〜120℃)の熱さの空気(約400m/h)をコーティング用タンク内に吹き込んだ。全質量を基準として酸化物活性材料の割合が20質量%である中空円柱形の外被触媒が得られた。
【0105】
約2kgの被覆された活性材料粉末の試料を取り出した。試料中にまだ存在するグリセリンを、Memmert GmbH + Co. KG社(UM 400型;内部容積=53l;空気中=800l/h)の空気循環型乾燥庫中で除去した。熱処理条件は、実施例C1の条件と同一であった。この空気循環乾燥庫から取り出した中空円柱形の外被触媒C3は、その全質量を基準として、20質量%の酸化物外被割合を有していた。
【0106】
C4(比較例)
触媒C4の付形を、C1と同様に行うが、C1と異なるのは、粉末600gだけを粉末貯蔵容器中に充填し、被覆を40分間の期間にわたり行ったことであった。C1の際に実施した熱処理と同様の循環空気型乾燥庫内での熱処理の後に、この循環空気型乾燥庫から取り出した中空円柱形の外被触媒C4は、その全質量を基準として、20.0質量%の酸化物外被割合を示した。
【0107】
C5(比較例)
この被覆を、ERWEKA社(DE)の顆粒化装置を備えた回転するコーティング用ドラム(内径=25.5cm;36rpm)中で行った。このドラムの回転軸は、この場合、水平線を基準として51.6℃の角度に置かれていた。このコーティング用ドラムは、中空円柱形の担持成形体(外径7mm、長さ3mm、内径4mm、45μmの表面粗さR(砕片粒被覆)を有するCeramTec社のC 220のステアタイト)800gを充填した。結合剤として、水75質量%及びグリセリン25質量%からなる水溶液を使用した。液状結合剤約76gを、ノズル(ノズル直径=1mm)を介して、45分間の被覆時間内で担持成形体に吹き付けた。同時に、同じ期間で、粉砕された微細粒の粉末P200gを供給スクリューを用いて噴霧ノズルの噴霧円錐体の外側に連続的に供給した。この被覆の間に、供給された粉末の全部は、担持成形体の表面に取り込まれた。微細粒の酸化物活性材料の凝集は観察されなかった。この被覆を繰り返した。両方の被覆試験の全体量は試料にまとまった。この試料を、試料中にまだ存在するグリセリンを除去するために、Memmert GmbH + Co. KG社の空気循環乾燥庫(UM 400型;内部容積=53l;空気流=800l/h)中で処理した。熱処理条件は、実施例C1の条件と同一であった。この空気循環乾燥庫から取り出した中空円柱形の外被触媒C5は、その全質量を基準として、19.6質量%の酸化物外被割合を有していた。
【0108】
C6(実施例)
触媒C6の付形を、C1と同様に行うが、C1と異なるのは、粉末451gだけを粉末貯蔵容器中に充填し、被覆を30分間の期間にわたり行ったことであった。C1で実施した熱処理と同様の循環空気型乾燥庫内での熱処理の後に、この循環空気型乾燥庫から取り出した中空円柱形の外被触媒C6は、その全質量を基準として、18.0質量%の酸化物外被割合を示した。
【0109】
C7(実施例)
触媒C7の付形を、C1と同様に行うが、C1と異なるのは、粉末377.5gだけを粉末貯蔵容器中に充填し、被覆を25分間の期間にわたり行ったことであった。C1で実施した熱処理と同様の循環空気型乾燥庫内での熱処理の後に、この循環空気型乾燥庫から取り出した中空円柱形の外被触媒C7は、その全質量を基準として、15.8質量%の酸化物外被割合を示した。
【0110】
C8(実施例)
触媒C8の付形を、C5と同様に行うが、C5と異なるのは、液状結合剤約44gをノズル(ノズル直径=1mm)を介して担持成形体に噴霧し、この被覆を27.5分間で行ったことであった。C1で実施した熱処理と同様の循環空気型乾燥庫内での熱処理の後に、この循環空気型乾燥庫から取り出した中空円柱形の外被触媒C8は、その全質量を基準として、15.5質量%の酸化物外被割合を示した。
【0111】
C9(実施例)
触媒C9の付形を、C5と同様に行うが、C5と異なるのは、液状結合剤約29gをノズル(ノズル直径=1mm)を介して担持成形体に噴霧し、この被覆を16分間で行ったことであった。C1で実施した熱処理と同様の循環空気型乾燥庫内での熱処理の後に、この循環空気型乾燥庫から取り出した中空円柱形の外被触媒C9は、その全質量を基準として、10.8質量%の酸化物外被割合を示した。
【0112】
C10(実施例)
触媒C10の付形を、C1と同様に行うが、C1と異なるのは、粉末300gだけを粉末貯蔵容器中に充填し、被覆を20分間の期間にわたり行ったことであった。C1で実施した熱処理と同様の循環空気型乾燥庫内での熱処理の後に、この循環空気型乾燥庫から取り出した中空円柱形の外被触媒C10は、その全質量を基準として、10.4質量%の酸化物外被割合を示した。
【0113】
C11(実施例)
実施例C2と同様に、微細粒の粉末PをMoOと混合した。しかしながら、実施例C2と異なるのは、水溶液(グリセリン/水=1/3)約1.9〜2.1リットルを約20分間で担持成形体に噴霧しただけであることであった。同時に、同じ期間で粉末PMo約8kgだけを連続的に供給した。この被覆の後に、実施例C2と同様に熱処理を被覆装置中で行った。
約2kgの被覆された活性材料粉末の試料を取り出した。試料中にまだ存在するグリセリンを、Memmert GmbH + Co. KG(UM 400型;内部容積=53l;空気中=800l/h)の空気循環型乾燥庫中で除去した。熱処理条件は、実施例C1の条件と同一であった。この空気循環乾燥庫から取り出した中空円柱形の外被触媒C11は、その全質量を基準として、10質量%の酸化物外被割合を有していた。
【0114】
C12(実施例)
触媒C12の付形を、C1と同様に行うが、C1と異なるのは、粉末345.5gだけを粉末貯蔵容器中に充填し、被覆を23分間の期間にわたり行ったことであった。C1で実施した熱処理と同様の循環空気型乾燥庫内での熱処理の後に、この循環空気型乾燥庫から取り出した中空円柱形の外被触媒C12は、その全質量を基準として、14質量%の酸化物外被割合を示した。本発明による外被触媒C12の活性材料被覆量は、0.23mg/mmである。
【0115】
C13(実施例)
触媒C13の付形を、C1と同様に行うが、C1と異なるのは、粉末360.7gだけを粉末貯蔵容器中に充填し、被覆を24分間の期間にわたり行ったことであった。C1で実施した熱処理と同様の循環空気型乾燥庫内での熱処理の後に、この循環空気型乾燥庫から取り出した中空円柱形の外被触媒C13は、その全質量を基準として、13.4質量%の酸化物外被割合を示した。
【0116】
実施例C1〜C11による触媒の特性は表1に示されている。担持成形体の幾何学的比表面積Sは、全ての実施例で0.725mm/mgであった。これは、この担持成形体の幾何学的表面積(155.5mm)を質量(214.4mg)で除算することにより算定された。
【表1】
: 本発明によらない
1) 触媒の活性材料割合
2) 活性材料被覆量
3) 0.02〜6.5μmの範囲内の平均直径を有する細孔の容積
4) 0.26〜2μmの範囲内の平均直径を有する細孔の容積
5) 0.02〜6.5μmの範囲内の全細孔容積に対する、0.26〜2μmの範囲内の平均直径を有するマクロ孔の容積割合。
6) 被覆工程の期間
【0117】
本明細書中で、固形材料の細孔特性の全てのデータは、他に明確に記載されていない限り、Micromeritics社(Norcross, Georgia 30093-1877, USA)のAuto Pore IV 9520の機器を使用する水銀圧入法を用いた決定に関する。粉末を調査する場合には、試料室内にそれぞれ導入された試料量は2.5gであった。外被触媒を調査する場合には、それぞれの外被触媒それぞれ5個を試料室中に導入した(ここで、外被触媒の幾何学的担持成形体の細孔の寄与率は、この試験の場合に活性材料外被の細孔の寄与率と比較して無視できた)。
【0118】
この試料室は、細長い毛管に続いていたため、僅かな圧力変化は、その毛管内へ突出する水銀線の長さの明らかな変化に相当した。利用した毛管容積は、全ての場合に、全毛管容積を基準として25〜91容積%であった。
【0119】
それぞれの試料調査の開始前に、試料室(25℃で)をそれぞれ、9.3×10−4barの内圧にまで排気し、この試料をこの温度で20分間及びこの圧力で脱ガスした。その後、水銀を、時間に対して圧力を上昇させて、試料室中で4137barの最終圧力まで圧入した。開始圧力は0.04barであった。この圧力には、0.003μm〜360μmの検知された孔径の(帯域)幅が相当する。
【0120】
本明細書の図3は、C1の活性材料外被の細孔の孔径分布を示す。横座標に、μmで表されるそれぞれの孔径がプロットされている(10を底とする対数プロット)。左側の縦座標には、([ml]/[g活性材料])で表される、全比細孔容積についての個々の孔径の個別の寄与率に関する積分値(上述の全比細孔容積についての累積寄与率)がプロットされている(曲線□)。この終点は、活性材料に関する(比)細孔容積(全侵入容積)である。
【0121】
アクロレインからアクリル酸への気相酸化
反応管(V2A鋼;外径30mm;壁厚2mm;内径26mm;長さ464cm)は、上から下に向かって、次の区間を有していた:
区間1:長さ79cm、空の管;
区間2:長さ62cm、寸法7mm×3mm×4mmのステアタイトリング(外径×長さ×内径;CeramTec社のステアタイトC 220)からなる前床;
区間3:長さ100cm、寸法7mm×3mm×4mmのステアタイトリング(外径×長さ×内径;CeramTec社のステアタイトC 220)20質量%及びそれぞれの触媒80質量%からなる均質な混合物からなる触媒床;
区間4:長さ200cm、区間3でそれぞれ使用した触媒だけからなる触媒床;
区間5:長さ10cm、区間2と同じステアタイトリングからなる後床;
区間6:長さ14cm、触媒固定床の収容のための、V2A鋼からなる触媒ベース。
【0122】
それぞれの反応管に、上から下に向かってこの反応管を貫流するように反応ガス混合物を供給し、この反応ガス混合物は、反応管内への入口で次の含有率を示した:
アクロレイン 4.3体積%、
プロペン 0.2体積%、
プロパン 0.2体積%、
アクリル酸 0.3体積%、
5.4体積%、
O 7.0体積%、
CO及びCO 0.4体積%、
残部 N
【0123】
触媒固定床のアクロレインによる空間速度は、それぞれ75Nl/(lh)であった。
【0124】
反応管の周囲には、その長さ(区間1中の空の管の最後の10cm及び区間6中の管の最後の3cmを除く)にわたり、それぞれ攪拌されかつ外部から電気的に加熱された塩浴(硝酸カリウム53質量%、亜硝酸ナトリウム40質量%及び硝酸ナトリウム7質量%、塩融液50kg)が流されていた(管に接する流動速度は3m/s(管の縦軸に対して垂直方向の平面で)であった)。
【0125】
この塩浴温度Tは、この塩浴中に塩融液が案内される温度に相当する。この温度を、全ての場合に、触媒固定床を通る反応混合物の単純な通過に関して、99.3モル%のアクロレイン転化率Uが生じるように調節した。反応管に沿って、塩浴の温度は加熱によって変化しなかった(反応管から塩浴へ引き渡されるよりも、塩浴から多くの熱が放射された)。反応管の入口では、反応ガスの温度は、それぞれの塩浴温度Tに相当した。最高の局所温度Tは、反応管内での点測定によって決定した。多様な触媒の使用下で達成された結果は、表2中にまとめられている。
【0126】
アクリル酸形成の選択率(SAS(モル%))とは、本明細書中では次のように解釈される:
【数4】
(この転化率の数値は、それぞれ触媒固定床を通る反応ガス混合物の1回の通過に関する)。
【0127】
次の表2は、使用した外被触媒に依存して、それぞれ100時間の運転時間の後に生じる結果を示す:
【表2】
: 本発明によらない
1) アクリル酸形成の選択率
【0128】
高くても0.3mg/mmの触媒の本発明による活性材料被覆量の場合に、SASは97.6モル%以上である。触媒のより高い活性材料被覆量の場合には、SASは、96.7〜97.2モル%の値でより低い。本発明による活性材料被覆量の利点は、281〜299℃の比較的高いホットポスト温度Tにもかかわらず生じる。
【0129】
本発明による好ましく高い、マクロ孔の容積割合(pvol)の利点は、ほぼ同じ活性材料被覆量を有する本発明による触媒によって達成された結果の比較の際に明らかである。0.15〜0.17mg/mmの活性材料被覆量を示す触媒の群では、pvol=0.5の場合にSASは特に高い(97.9モル%、C10)が、pvol=0.24の場合にSASは低下している(97.6モル%、C11)。0.25〜0.26mg/mmの範囲内の活性材料被覆量を示す両方の触媒の中で、pvol=0.49の場合にSASは高い(97.7モル%、C7)が、pvol=0.40の場合にSASは低下している(97.5モル%、C8)。
【0130】
2つの連続する反応区域を備えた触媒床の使用下でのアクロレインからのアクリル酸への気相酸化
反応管(特殊鋼1.4541型(EU規格番号 EN10088−3);外径33.7mm;壁厚2mm;内径29.7mm;長さ400cm、温度スリーブ4mm)は下から上へ向かって次のように充填された:
区間1:長さ70cm
寸法7mm×3mm×4mmのステアタイトリング(外径×長さ×内径;CeramTec社のステアタイトC 220)からなる前床;
区間2:長さ100cm
それぞれの外被触媒からなる触媒固定床;
区間3:長さ200cm
それぞれの外被触媒からなる触媒固定床;
区間4:長さ8cm
区間1と同じステアタイトリングからなる後床;
区間5:長さ23cm
空の管。
【0131】
上述のようにそれぞれ充填された反応管を、上から下へ向かって、この反応管を貫流させて、次の含有率を示す反応ガス混合物を導入した:
アクロレイン 4.5体積%、
プロペン 0.1体積%、
プロパン 0.07体積%、
アクリル酸 0.5体積%、
5.4体積%、
O 7体積%、
CO及びCO 0.6体積%、及び
残部 N
【0132】
アクロレインによる(DE-A 19927624に定義されたような)触媒固定床の空間速度は、それぞれ75Nl/(lh)であった。
【0133】
この反応管の周囲には、その長さにわたって、それぞれ攪拌されかつ外部から電気的に加熱された塩浴(硝酸カリウム53質量%、亜硝酸ナトリウム40質量%及び硝酸ナトリウム7質量%;塩融液50kg)が流されていた(管に接する流動速度は、3m/sであった(管の縦軸に対して垂直方向の平面で))。
【0134】
塩浴温度T(℃)(塩浴を供給する温度)を、全ての場合に、触媒固定床を通る反応ガス混合物の単純な通過に関して、98.3モル%のアクロレイン転化率が生じるように調節した。反応管に沿って、塩浴温度は加熱によって変化しなかった(反応管から塩浴へ引き渡されるよりも、塩浴から多くの熱が放射された)。この反応ガス混合物の供給温度(反応管中への入口で)を、それぞれの塩浴温度に対してそれぞれ調節した。
【0135】
触媒床中の温度は、反応管の内部にある温度スリーブ中に配置されかつ反応器床中で下から上へ牽引器によってスライドさせた熱電素子によって連続的に決定した。この測定の最大温度は、ホットスポット温度Tに相当した。
【0136】
次の表3は、異なる本発明による外被触媒及び本発明によらない外被触媒を備えた反応器区間2及び3の充填に応じて生じる、100時間の運転時間の後に生じる結果を示す。
【表3】
: 本発明によらない
**: 寸法7mm×3mm×4mmのステアタイトリング(CeramTec社のステアタイトC220)
***: 区間2中に存在するホットスポットの、区間1から区間2への移行部からの距離
【0137】
表3中の、実施例D2と比較例との比較は、対照(97モル%)と比べたD2の改善されたアクリル酸選択率(97.5モル%)により、最も高い温度を有するそれぞれの反応区域(ホットスポットは、D2及び対照の場合に区間2に存在する、表3参照)の、本発明による外被触媒による充填がアクリル酸形成の選択率に関して好ましいことを示す。
【0138】
触媒固定床の、下流にある反応区域の部分的な交換
DE-A 10232748は、触媒固定床の部分量を新たな触媒充填物に交換することを記載している。次に、本発明による触媒が、DE-A 10232748に記載された触媒固定床の部分交換についても好ましいかどうかを調査した。
【0139】
反応管(特殊鋼1.4541型(EU規格番号 EN10088−3);外径33.7mm;壁厚2mm;内径29.7mm;長さ400cm、温度スリーブ4mm)は、下から上へ向かって次のように充填された:
区間1:長さ75cm
寸法7mm×3mm×4mmのステアタイトリング(外径×長さ×内径;CeramTec社のステアタイトC 220)からなる前床:
区間2:長さ110cm
それぞれの外被触媒からなる触媒固定床
区間3:長さ190cm
DE 103 60 057 A1の実施例1により製造された外被触媒(71質量%)と、寸法7mm×3mm×4mmのステアタイトリング(外径×長さ×内径;CeramTec社のステアタイトC 220)29質量%とからなる触媒固定床;
区間4:長さ3cm
区間1と同じステアタイトリングからなる後床;
区間5:長さ23cm
空の管。
【0140】
上述のようにそれぞれ充填された反応管を、上から下へ向かって、この反応管を貫流させて、次の含有率を示す反応ガス混合物を導入した:
アクロレイン 4.5体積%、
プロペン 0.1体積%、
プロパン 0.07体積%、
アクリル酸 0.5体積%、
5.4体積%、
O 7体積%、
CO及びCO 0.6体積%、及び
残部 N
【0141】
アクロレインによる(DE-A 19927624で定義されたような)触媒固定床の空間速度は、それぞれ75Nl/(lh)であった。
【0142】
この反応管の周囲には、その長さにわたって、それぞれ攪拌されかつ外部から電気的に加熱された塩浴(硝酸カリウム53質量%、亜硝酸ナトリウム40質量%及び硝酸ナトリウム7質量%;塩融液50kg)が流されていた(管に接する流動速度は、3m/sであった(管の縦軸に対して垂直方向の平面で))。
【0143】
塩浴温度T(℃)(塩浴を供給する温度)を、全ての場合に、触媒固定床を通る反応ガス混合物の単純な通過に関して、99.3モル%のアクロレイン転化率が生じるように調節した。反応管に沿って、塩浴温度は加熱によって変化しなかった(反応管から塩浴へ引き渡されるよりも、塩浴から多くの熱が放射された)。この反応ガス混合物の供給温度(反応管中への入口で)は、それぞれの塩浴温度に対してそれぞれ調節した。触媒床中の温度は、反応管の内部にある温度スリーブ中に配置されかつ反応器床中で下から上へ牽引器によってスライドさせた熱電素子によって連続的に決定した。この測定の最大温度は、ホットスポット温度Tに相当した。
【0144】
次の表4は、異なる本発明による外被触媒又は本発明によらない外被触媒を備えた反応器区間2の充填に応じて生じる、100時間の運転時間の後に生じる結果を示す。
【表4】
: 本発明によらない
**: 寸法7mm×3mm×4mmのステアタイトリング(CeramTec社のステアタイトC220)
***: 区間2中に存在するホットスポットの、区間1から区間2への移行部からの距離
【0145】
表4中の、実施例E1の比較例との比較は、対照(96.9モル%)と比べた実施例E1の改善されたアクリル酸選択率(97.5モル%)により、触媒部分交換の際に本発明による外被触媒を有する上述の反応区域の充填がアクリル酸形成の選択率に関して好ましいことを示す。
【0146】
2つの連続する加熱区域を備えた触媒床の使用下でのアクロレインからのアクリル酸への気相酸化
反応管(特殊鋼1.4541型(EU規格番号 EN10088−3);外径33.7mm;壁厚2mm;内径29.7mm;長さ400cm、温度スリーブ4mm)は上から下へ向かって次のように充填された:
区間1:長さ70cm
寸法7mm×3mm×4mmのステアタイトリング(外径×長さ×内径;CeramTec社のステアタイトC 220)からなる前床:
区間2:長さ100cm
外被触媒C13からなる触媒固定床;
区間3:長さ200cm
外被触媒C3からなる触媒固定床;
区間4:長さ8cm
区間1と同じステアタイトリングからなる後床;
区間5:長さ23cm
空の管。
【0147】
上述のようにそれぞれ充填された反応管を、上から下へ向かって、この反応管を貫流させて、次のような含有率を示す反応ガス混合物を導入した:
アクロレイン 4.5体積%、
プロペン 0.1体積%、
プロパン 0.07体積%、
アクリル酸 0.5体積%、
5.4体積%、
O 7体積%、
CO及びCO 0.6体積%、及び
残部 N
【0148】
アクロレインによる(DE-A 19927624で定義されたような)触媒固定床LACRの空間速度は、75、100及び145NlAcrolein/(lh)であった。
【0149】
反応管は、2つの異なる塩浴で、DE 2010-10048405に記載されているように加熱した。最初の190cmは、温度Tで供給された、向流で圧送した塩浴によって恒温にされた。第2の210cmは、温度Tで供給された、向流で圧送した塩浴Bによって恒温にされた。両方の塩浴は、硝酸カリウム53質量%、亜硝酸ナトリウム40質量%及び硝酸ナトリウム7質量%からなる混合物からなっていた;塩融液50kg。管に接する流動速度は、3m/s(管の縦軸に対して垂直方向の平面で)であった。
【0150】
塩浴温度T及びT(℃)(両方の塩浴が供給された温度)は、全ての場合において、触媒床を通る反応ガス混合物の簡単な通過に関して、75〜100NlAcrorein/(lh)のアクロレイン空間速度の場合に、99.4モル%のアクロレイン転化率が生じるように並びに145NlAcrorein/(lh)の空間速度で98.5モル%のアクロレイン転化率が生じるように調節された。反応管に沿って、塩浴温度は加熱によって変化しなかった(反応管から塩浴へ引き渡されるよりも、塩浴から多くの熱が放射された)。この反応ガス混合物の供給温度(反応管中への入口で)は、それぞれの塩浴温度に対してそれぞれ調節した。
【0151】
触媒床中の温度は、反応管の内部にある温度スリーブ中に配置されかつ反応器床中で下から上へ牽引器によってスライドさせた熱電素子によって連続的に決定した。この測定の際に決定された最高温度は、ホットスポット温度TH1及びTH2に相当した。
【0152】
次の表5は、多様な空間速度での本発明による外被触媒により生じる100時間の運転時間の後の結果を示す。
【表5】
: 第1のホットスポットの、区間1から区間2への移行部からの距離。
**: 第2のホットスポットの、区間1から区間2への移行部からの距離。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13