特許第6359118号(P6359118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359118
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】ターゲットアッセンブリ
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
   C23C14/34 C
   C23C14/34 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-562198(P2016-562198)
(86)(22)【出願日】2015年6月16日
(86)【国際出願番号】JP2015003004
(87)【国際公開番号】WO2016088284
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2017年4月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-244802(P2014-244802)
(32)【優先日】2014年12月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】池田 佳広
(72)【発明者】
【氏名】宮口 有典
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一義
(72)【発明者】
【氏名】堤 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佳詞
【審査官】 原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−197873(JP,A)
【文献】 特開昭57−194254(JP,A)
【文献】 特表平11−504986(JP,A)
【文献】 特開2013−129871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
H01L 21/31
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁物製のターゲットと、このターゲットの一方の面にボンディング材を介して接合されるバッキングプレートとを備え、バッキングプレートがターゲットの外周端より外方に延出した延出部分を有するターゲットアッセンブリであって、スパッタリング装置への組付状態にてターゲット側面との間に所定の隙間を存してターゲットの周囲を囲う環状のシールド板が配置されるものにおいて、
ターゲット側面との間に所定の隙間を存してターゲットの周囲を囲い、延出部分のターゲット側の面を覆う、バッキングプレートに着脱自在な環状の絶縁プレートを更に備え
ターゲットとシールド板との間の隙間を臨む絶縁プレートの内周縁部に、垂直方向にターゲット側に向けて凸設させた突条を有し、
ターゲットとシールド板との間の隙間及び突条の高さが、突条がスパッタリングされない範囲に設定されることを特徴とするターゲットアッセンブリ
【請求項2】
絶縁物製のターゲットと、このターゲットの一方の面にボンディング材を介して接合されるバッキングプレートとを備え、バッキングプレートがターゲットの外周端より外方に延出した延出部分を有するターゲットアッセンブリにおいて、
ターゲット側面との間に所定の隙間を存してターゲットの周囲を囲い、延出部分のターゲット側の面を覆う、バッキングプレートに着脱自在な環状の絶縁プレートを更に備え、
絶縁プレートは、周方向に間隔を存して開設された複数の透孔を有し、各透孔の内壁との間に間隔を存して透孔に内挿されるスペーサを介してバッキングプレートに固定され、絶縁プレートのバッキングプレート側を上とし、スペーサの下端部に径方向外側に張り出すフランジ部を設け、このフランジ部の上面を絶縁プレートの下面に当接させることを特徴とするターゲットアッセンブリ。
【請求項3】
絶縁プレートは複数の円弧状部材に分割され、各円弧状部材の周方向一端に上部よりも下部が張り出す第1段差部を有すると共に周方向他端に下部よりも上部が張り出す第2段差部を設け、隣接する円弧状部材の第1段差部と第2段差部の段差面を相互に当接させることを特徴とする請求項記載のターゲットアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置に組み付けられるターゲットアッセンブリに関し、より詳しくは、絶縁物製のターゲットとこのターゲットの一方の面にボンディング材を介して接合されるバッキングプレートとを備え、バッキングプレートがターゲットの外周端より外方に延出した延出部分を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、NAND型フラッシュメモリやMRAM(磁気抵抗メモリ)の製造工程においては、酸化アルミニウム膜や酸化マグネシウム膜等の絶縁膜を成膜する工程が実施され、絶縁膜を量産性よく成膜するためにスパッタリング装置が用いられている。このようなスパッタリング装置では、真空引き可能な真空チャンバ内に、成膜しようとする薄膜の組成に応じて適宜選択されるターゲットとこのターゲットをスパッタリングによる成膜時に冷却するためのバッキングプレートとを一体化したターゲットアッセンブリが着脱自在に組み付けられる。
【0003】
このようなターゲットアッセンブリは例えば特許文献1で知られている。このものでは、バッキングプレートが熱伝導の良い銅などの金属で形成され、ターゲットの外周端より外方に延出した延出部分を有する。そして、この延出部分を利用してターゲットアッセンブリがスパッタリング装置の所定位置に固定できるようにしている。また、ターゲットアッセンブリをスパッタリング装置に組み付けた後、放電の安定化等のため、一般に、ターゲットの周囲を囲う環状のシールド板が延出部分に対向配置される。
【0004】
ところで、ターゲットアッセンブリとシールド板とをスパッタリング装置に組み付けた状態では、ターゲット側面とシールド板との間に隙間がある。そして、成膜時に真空チャンバ内にプラズマを発生させると、プラズマ中の電子が上記隙間を通って金属である延出部分に帯電することがある。延出部分に電子が帯電すると、ターゲットが絶縁物であるため、ターゲット側面と延出部分との電位差で異常放電が発生し、これに起因してボンディング材が外部に滲み出る場合がある。このような状態で成膜すると、基板表面に成膜した絶縁膜中に金属が混入する所謂コンタミネーションが生じ、これでは良好な成膜が阻害される。
【0005】
ボンディング材の滲み出しを防止するため、本出願人は、先願(特願2014−163095)にて、ターゲットが接合されるバッキングプレートの接合部分を延出部分に対して凸設し、延出部分から接合部分の側面に亘って粗面化し、延出部分からターゲットの側面まで跨るように絶縁物膜を形成したカソードアッセンブリを提案した。ここで、ターゲットよりもバッキングプレートの寿命が長い場合には、バッキングプレートが再利用される。つまり、所定の処理枚数に達すると、スパッタリング装置からターゲットアッセンブリを取り外し、ボンディング材を除去して使用済みのターゲットとバッキングプレートとを分離し、バッキングプレートにボンディング材を用いて未使用のターゲットを接合し、このようにして得たターゲットアッセンブリをスパッタリング装置に組み付ける。
【0006】
しかしながら、上記先願のものでは、ボンディング材を除去する前に絶縁物膜を除去する必要があり、この絶縁物膜の除去は非常に困難である。さらに、バッキングプレートに未使用のターゲットを接合した後に絶縁物膜を再度形成する必要があり、バッキングプレートの再利用に手間が掛かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−255052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、バッキングプレートの延出部分とターゲット側面との間での異常放電の発生を抑制しつつ、ターゲットとバッキングプレートとを接合するボンディング材の外部への滲み出しを確実に防止でき、しかも、バッキングプレートの再利用が容易であるターゲットアッセンブリを提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、絶縁物製のターゲットと、このターゲットの一方の面にボンディング材を介して接合されるバッキングプレートとを備え、バッキングプレートがターゲットの外周端より外方に延出した延出部分を有する本発明のターゲットアッセンブリは、ターゲット側面との間に所定の隙間を存してターゲットの周囲を囲い、延出部分のターゲット側の面を覆う、バッキングプレートに着脱自在な環状の絶縁プレートを更に備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ターゲットの周囲を囲う環状の絶縁プレートによって延出部分のターゲット側の面を覆い、絶縁プレートとターゲット側面との間に所定の隙間が存するように構成したため、プラズマ中の電子が当該隙間を通って延出部分に帯電することが防止され、異常放電の発生を抑制することができ、その結果として、ターゲットとバッキングプレートとを接合するボンディング材の外部への滲み出しを確実に防止できる。しかも、絶縁プレートは着脱自在であるため、ターゲットを交換する際に、バッキングプレートから絶縁プレートを取り外し、ボンディング材を除去すれば使用済みターゲットとバッキングプレートとを容易に分離でき、上記先願のように絶縁物膜の除去や再形成が不要となるため、バッキングプレートの再利用が容易である。
【0011】
本発明において、スパッタリング装置への組付状態にてターゲット側面との間に所定の隙間を存してターゲットの周囲を囲う環状のシールド板が配置される場合、ターゲットとシールド板との間の隙間を臨む絶縁プレートの内周縁部に、ターゲット側に向けて凸設させた突条を有することが好ましい。ここで、絶縁プレートを厚くすると、プラズマ中の電子がターゲット側面と絶縁プレートとの間の隙間を通り難くなり、当該隙間のマージンを広げることができる一方で、絶縁プレートからシールド板までの距離が短くなり、両者の間で異常放電が発生し易くなる。本発明によれば、絶縁プレートの内周縁部の厚みを厚くできるため、絶縁プレートとシールド板との間での異常放電の発生を防止しつつ、ターゲット側面と絶縁プレートとの間の隙間のマージンを広げることができて有利である。
【0012】
本発明において、絶縁プレートは、周方向に間隔を存して開設された複数の透孔を有し、各透孔の内壁との間に間隔を存して透孔に内挿されるスペーサを介してバッキングプレートに固定され、絶縁プレートのバッキングプレート側を上とし、スペーサの下端部に径方向外側に張り出すフランジ部を設け、このフランジ部の上面を絶縁プレートの下面に当接させることが好ましい。これによれば、ターゲットがプラズマからの輻射熱によって径方向に伸びて絶縁プレートを押圧したとしても、透孔の内壁とスペーサとの間の隙間の分だけ絶縁プレートが径方向に移動できるため、絶縁プレートの割れを防止することができる。
【0013】
本発明において、絶縁プレートは複数の円弧状部材に分割され、各円弧状部材の周方向一端に上部よりも下部が張り出す第1段差部を有すると共に周方向他端に下部よりも上部が張り出す第2段差部を設け、隣接する円弧状部材の第1段差部と第2段差部の段差面を相互に当接させることが好ましい。これによれば、各円弧状部材を径方向に移動させることができるため、ターゲット側面と絶縁プレートとの間の隙間をターゲット全周に亘って略均等に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態のターゲットアッセンブリを組み付けたスパッタリング装置を示す模式的断面図。
図2図1に示すターゲットアッセンブリを矢印A方向からみた矢示図。
図3】ターゲットアッセンブリの要部を拡大して示す断面図。
図4図2のIV−IV断面図。
図5】ターゲットアッセンブリの変形例の要部を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、スパッタ装置に組み付けられるものを例に、本発明の実施形態のターゲットアッセンブリについて説明する。以下においては、図1を基準とし、真空チャンバ1の天井部側を「上」、その底部側を「下」として説明する。
【0016】
図1に示すように、スパッタリング装置SMは、処理室1aを画成する真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1の底部には、排気管を介してターボ分子ポンプやロータリーポンプなどからなる真空ポンプPが接続され、所定圧力(例えば10−5Pa)まで真空引きできるようにしている。真空チャンバ1の側壁には、図示省略のガス源に連通し、マスフローコントローラ11が介設されたガス管12が接続され、Arなどの希ガスからなるスパッタガスを処理室1a内に所定流量で導入できるようになっている。
【0017】
真空チャンバ1の天井部には、カソードユニットCが設けられている。カソードユニットCは、ターゲットアッセンブリ2と磁石ユニット3とで構成されている。図2及び図3も参照して、ターゲットアッセンブリ2は、成膜しようとする薄膜の組成に応じて適宜選択される絶縁物製のターゲット21と、このターゲット21をスパッタリングによる成膜時に冷却するための金属製のバッキングプレート22とを一体化したものであり、ターゲット21とバッキングプレート22とはインジウムやスズ等のボンディング材(図示省略)を介して接合されている。ターゲット21には、スパッタ電源Eとしての公知の構造を有する高周波電源からの出力が接続され、スパッタリング時、交流電力が投入される。磁石ユニット3は、ターゲット21のスパッタ面21aの下方空間に磁場を発生させ、スパッタリング時にスパッタ面21aの下方で電離した電子等を捕捉してターゲット21から飛散したスパッタ粒子を効率よくイオン化する公知の構造を有するものである。
【0018】
バッキングプレート22は、ターゲット21の外周端より外方に且つ水平に延出した延出部分22aを有し、この延出部分22aが絶縁部材Iを介して真空チャンバ1に取り付けられる。これにより、ターゲットアッセンブリ2がスパッタリング装置SMに組み付けられ、この状態でターゲット21を囲うようにして環状のシールド板4が延出部分22aに対向配置される。シールド板4の外周縁部から上方に起立した側壁部の上端にはフランジ部4aが設けられ、このフランジ部4aが真空チャンバ1の上壁内面に固定されることで、シールド板4が接地電位にされている。なお、シールド板4をフローティングしてもよい。尚、バッキングプレート22のターゲット21が接合される接合部分22bが延出部分22aに対して下方に凸設されている。凸設した量、即ち、接合部分22bの下面から延出部分22aの下面までの長さは、0.5〜10mmの範囲内に調整される。
【0019】
ところで、放電の安定化等のため、シールド板4とターゲット21との間には、通常例えば0.5〜2mmの隙間d4が設けられている。プラズマがこの隙間を通ってバッキングプレート22の延出部分22aに到達すると、延出部分22aに投入された交流電圧によりプラズマに対して電流が流れて異常放電が発生する。
【0020】
そこで、本実施形態のターゲットアッセンブリ2は、ターゲット21の側面との間に所定の隙間d1を存してターゲット21の周囲を囲い、延出部分22aのターゲット21側の面を覆う、バッキングプレート22に着脱自在な環状の絶縁プレート23を更に備える。絶縁プレート23は、酸化アルミニウム等の絶縁物で作製することができ、その板厚t1は、ターゲット21の厚みが通常の2〜16mmの範囲内に設定されている場合、絶縁プレート23の下面がターゲット21の表面(下面)より下方に位置しない範囲、例えば1mm〜15mmの範囲に設定することができる。但し、図3に示すようにバッキングプレート22における絶縁プレート23の設置面(すなわち、延出部分22aの下面)が、ターゲット21とバッキングプレート22との接合面よりも上方に位置する場合には、絶縁プレート23下面がターゲット21表面より下方に位置しない限度で、板厚t1を15mm以上に設定することができる。絶縁プレート23は、ターゲット21とシールド板4との間の隙間を臨む内周縁部に、ターゲット21側に向けて凸設させた突条23aを有する。突条23aを含む絶縁プレート23の内周縁部の板厚t2は例えば1.5mm〜15.5mmの範囲に設定することができる。特に、ターゲット21の厚みが比較的薄い場合にはバッキングプレート22からプラズマの存する空間までの沿面距離を確保できないため、突条23aを設ける効果が高くなる。また、シールド板4とターゲット21との間の隙間d4を広げれば突条23aを大きく(高く)形成することが可能であるが、アース電位のシールド板4を設置することによるプラズマ遮蔽効果が失われるため、絶縁プレート23とターゲット21との間の隙間近傍でのプラズマ密度が高くなり、突条23aがターゲット21同様にスパッタされてコンタミネーションの原因となってしまう。このため、隙間d4と突条23aの高さは、突条23aがスパッタされない範囲に留めておくことが好ましい。隙間d4は、例えば、0.5mm〜6mmの範囲に設定することが好ましく、0.5mm〜3.5mmの範囲に設定することがより好ましく、1.5mm〜3.5mmの範囲に設定することがさらに好ましい。また、突条23aの先端(下端)は、シールド板4の下面よりも上方に位置することが好ましく、シールド板4の上面と下面の間に位置することがより好ましく、シールド板4の上面よりも上方に位置することが好ましい。
【0021】
絶縁プレート23は、周方向に間隔を存して開設された複数(図2では6個)の透孔23bを有し、各透孔23bの内壁面との間に間隔d2を存して透孔23bにはスペーサ24が内挿され、このスペーサ24を介して絶縁プレート23がバッキングプレート22にねじ25を用いて固定されている。これによれば、この間隔d2の分だけ絶縁プレート23が径方向に移動できるため、ターゲット21がプラズマからの輻射熱によって径方向に伸びて絶縁プレート23を押圧したとしても、絶縁プレート23の割れを防止することができる。スペーサ24は下端部に径方向外側に張り出すフランジ部24aを有し、このフランジ部24aの上面を絶縁プレート23の下面に当接させることにより、絶縁プレート23がバッキングプレート22に押し付けられると共に、バッキングプレート22の露出を防止している。
【0022】
絶縁プレート23は一体で構成されてもよいが、図2及び図4に示すように、絶縁プレート23を複数個(図2では3個)の円弧状部材230に分割して構成することが好ましい。各円弧状部材230の周方向一端には上部よりも下部が張り出す第1段差部23c、周方向他端には下部よりも上部が張り出す第2段差部23dが夫々設けられ、隣接する円弧状部材230,230の第1段差部23cと第2段差部23dの段差面を相互に当接させている。これにより、各円弧状部材230を径方向に独立して移動させることができ、その結果、ターゲット21側面と絶縁プレート23との間の隙間d1をターゲット21全周に亘って略均等に調整することができる。
【0023】
真空チャンバ1の底部には、ターゲット21のスパッタ面21aに対向させてステージ5が配置され、基板Wがその成膜面を上側にして位置決め保持されるようにしている。上記スパッタリング装置SMは、特に図示しないが、マイクロコンピュータやシーケンサ等を備えた公知の制御手段を有し、制御手段により電源Eの稼働、マスフローコントローラ11の稼働や真空ポンプPの稼働等を統括管理するようになっている。
【0024】
次に、上記ターゲットアッセンブリ2の作製方法について説明する。先ず、バッキングプレート22の接合部分22bにボンディング材を介して酸化アルミニウム製のターゲット21を接合する。ボンディング材としては、インジウムを用いることができ、接合方法としては公知の方法を用いることができる。そして、延出部分22aのターゲット21側の面を絶縁プレート23で覆い、この絶縁プレート23の透孔23bに内装したスペーサ24を介してバッキングプレート22にねじ止めする。
【0025】
このように作製されたターゲットアッセンブリ2をスパッタリング装置SMに組み付ける。このとき、絶縁プレート23を構成する3個の円弧状部材230を夫々径方向に適宜移動させることにより、ターゲット21側面と絶縁プレート23との間の隙間S1をターゲット21全周に亘って略均等に調整することができる。以下、ターゲットアッセンブリ2が組み付けられたスパッタリング装置SMを用いて基板W表面に酸化アルミニウム膜を成膜する方法について説明する。
【0026】
先ず、真空チャンバ1内のステージ5に基板Wをセットした後、真空排気手段Pを作動させて処理室1a内を所定の真空度(例えば、1×10−5Pa)まで真空引きする。処理室1a内が所定圧力に達すると、マスフローコントローラ11を制御してアルゴンガスを所定の流量で導入する(このとき、真空処理室1aの圧力が0.01〜30Paの範囲となる)。これと併せて、スパッタ電源Eからターゲット21に交流電力を投入して真空チャンバ1内にプラズマを形成する。これにより、ターゲット21のスパッタ面21aをスパッタし、飛散したスパッタ粒子を基板W表面に付着、堆積させることにより酸化アルミニウム膜が成膜される。
【0027】
本実施形態によれば、ターゲット21とシールド板4との間に隙間があったとしても、バッキングプレート22の延出部分22aのターゲット21側の面を絶縁プレート23で覆うことで、プラズマ中の電子が延出部分22aに帯電することが防止され、バッキングプレート22とターゲット21との間での異常放電を抑制することができ、その結果として、ターゲット21とバッキングプレート22とを接合するボンディング材の滲み出しを確実に防止できる。しかも、絶縁プレート23は着脱自在であるため、ターゲット21を交換する際に、バッキングプレート22から絶縁プレート23を取り外し、ボンディング材Bを除去すれば使用済みターゲット21とバッキングプレート22とを容易に分離でき、上記先願のように絶縁物膜の除去や再形成が不要となるため、バッキングプレート22の再利用が容易である。
【0028】
また、絶縁プレート23の厚みt1を厚くすると、プラズマ中の電子がターゲット21側面と絶縁プレート23との隙間d1を通り難くなり、当該隙間d1のマージンを広げることができるものの、絶縁プレート23からシールド板4までの距離d3が短くなり、両者の間で異常放電が発生し易くなる。本実施形態によれば、突条23aを設けることで、上記距離d3を短くすることなく、絶縁プレート23の内周縁部の厚みt2を厚くできるため、絶縁プレート23とシールド板4との間での異常放電の発生を防止しつつ、上記隙間d1のマージンを広げることができて有利である。
【0029】
ここで、ターゲット21の製造バラツキ等の理由により、ターゲット21の全周で上記隙間d1のバラツキが生じることがあり、隙間d1が大きい部分にて異常放電が局所的に生じる虞がある。本実施形態によれば、絶縁プレート23を複数の円弧状部材230に分割し、各円弧状部材230の周方向一端に上部よりも下部が張り出す第1段差部23c、周方向他端に下部よりも上部が張り出す第2段差部23dを夫々設け、隣接する円弧状部材230,230の第1段差部23cと第2段差部23dの段差面を相互に当接させることが好ましい。これによれば、各円弧状部材230を径方向に独立して移動させることできるため、ターゲット21側面と絶縁プレート23との間の隙間d1をターゲット21全周に亘って略均等に調整することができて有利である。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。ターゲット21及び絶縁プレート23の材質として酸化アルミニウムを例に説明したが、これに限らず、酸化マグネシウムのような他の絶縁物を適宜選択でき、また、ターゲット21と絶縁プレート23の材質が異なっていてもよい。また、絶縁プレート23としては、絶縁物のみで作製されたもののほか、金属等の基材の表面を溶射法等により絶縁物膜で覆ったものを用いることができる。
【0031】
上記実施形態では、接合部分22bの側面とターゲット21の側面とが延出部分22aに対して垂直である場合について説明したが、図5に示すように、ターゲット21と接合部分22bとの接合部分を径方向内側に凹設して凹部21b,22cを形成し、この凹部21b,22cとの間に所定の隙間を存するように凸部23eを絶縁プレート23の内周面に突出させて設ければ、即ち、ラビリンス構造とすれば、プラズマ中の電子が延出部分22aにより一層到達し難くなり有利である。
【0032】
次に、上記効果を確認するために、上記スパッタリング装置SMを用いて次の実験を行った。本実験では、基板Wとしてφ200mmのSi基板を用い、ターゲットアッセンブリ2としてφ300mmの酸化アルミニウム製のターゲット21と銅製のバッキングプレート22とをインジウムを介して接合し、板厚t1が1.5mm、板厚t2が2.3mmである絶縁プレート23で延出部分22aを覆ったものとし、このターゲットアッセンブリ2が組み付けられた真空チャンバ1内のステージ5に基板Wをセットした後、基板W表面に酸化アルミニウム膜をスパッタリング法により成膜した。成膜条件は、アルゴンガス流量:29sccm(処理室1a内の圧力:0.15Pa)、ターゲット21への投入電力:13.56MHz、4000W(Vpp:2300V)とし、ターゲット21と絶縁プレート23との間の隙間d1を0.15mm、0.2mm、0.25mm、0.3mmに調整して夫々成膜した。成膜中、Vdc(バッキングプレート22に流入した電子によるバッキングプレート22の帯電電位)を夫々測定して異常放電の有無を確認したところ、隙間d1を0.2mm以下に調整すれば、Vdcがハンチングせず安定化し異常放電が発生していないことが確認された。
【0033】
また、突条23aの無い、板厚t1が1.5mmである絶縁プレート23を用いる点以外は、上記と同様に成膜を行い、成膜中の異常放電の有無を確認したところ、隙間d1を0.15mm以下に調整すれば、Vdcがハンチングせず安定化し異常放電が発生していないことが確認された。
【0034】
以上より、延出部分22aを絶縁プレート23で覆うことで、異常放電の発生を抑制できることが判った。また、突条23aを設けることで、隙間d1のマージンを広げることができることが判った。
【符号の説明】
【0035】
SM…スパッタリング装置、2…ターゲットアッセンブリ、21…絶縁物製のターゲット、22…バッキングプレート、22a…延出部分、23…絶縁プレート、23a…突条、23b…透孔、23c…第1段差部、23d…第2段差部、24…スペーサ、24a…フランジ部、230…円弧状部材、4…シールド板。
図1
図2
図3
図4
図5