特許第6359477号(P6359477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359477
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】基板液処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20180709BHJP
   B05C 11/08 20060101ALI20180709BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20180709BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20180709BHJP
   H01L 21/027 20060101ALN20180709BHJP
【FI】
   H01L21/304 651B
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 648K
   B05C11/08
   H01L21/68 N
   H01L21/306 R
   !H01L21/30 569C
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-72381(P2015-72381)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-48775(P2016-48775A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-172241(P2014-172241)
(32)【優先日】2014年8月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】久留巣 健人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 幸良
(72)【発明者】
【氏名】石田 省貴
【審査官】 小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−302746(JP,A)
【文献】 特開2004−265911(JP,A)
【文献】 特開2003−136024(JP,A)
【文献】 特開平11−297652(JP,A)
【文献】 特開2001−191006(JP,A)
【文献】 特開2005−203599(JP,A)
【文献】 特開2006−032891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B05C 11/08
H01L 21/306
H01L 21/683
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平姿勢で保持して鉛直軸線周りに回転させる基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板の下面の中央部の下方に配置され、前記基板の下面に向けて処理液を吐出する液体吐出部と、
前記液体吐出部の周囲に形成され、前記基板に向けて吐出する乾燥用気体を通過させる気体吐出路と、を備え、
前記液体吐出部は、
前記気体吐出路の上端部よりも外側に張り出して前記気体吐出路を上方から覆うカバー部と、前記カバー部に対して上方に突出した液体吐出口と、前記液体吐出口と前記カバー部との間に形成され表面が下方向に落ち込んでいる湾曲部と、を有する頭部を含み、
前記液体吐出部から吐出される処理液を供給する処理液供給ラインと、
前記処理液供給ラインに接続され、基板に供給された乾燥用気体及び前記処理液供給ラインに残存する処理液を排出するドレインラインと、
前記ドレインラインから排出された処理液及び気体を一時的に貯留するタンクと、
前記タンクに接続され前記タンクの気体を排出させるエジェクトラインと、
を備え、
前記処理液供給ラインに残存する処理液を排出する際に、前記エジェクトラインから前記タンクの気体を吸引することにより、前記タンクの水位を上昇させることを特徴とする基板液処理装置。
【請求項2】
前記カバー部は、親水化処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の基板液処理装置。
【請求項3】
前記湾曲部は、親水化処理が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板液処理装置。
【請求項4】
前記カバー部は、親水化処理が施されており、前記湾曲部は、疎水化処理が施されていることを特徴とする請求項1記載の基板液処理装置。
【請求項5】
前記頭部は、前記液体吐出口と前記湾曲部とを接続する頭頂部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基板液処理装置。
【請求項6】
前記頭部は、前記液体吐出口を前記湾曲部の上端よりも上方に形成したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の基板液処理装置。
【請求項7】
前記液体吐出口の外側側面は、疎水化処理が施されていることを特徴とする請求項6に記載の基板液処理装置。
【請求項8】
前記気体吐出路は、前記液体吐出部と前記液体吐出部の周囲を囲む包囲部材との隙間により形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の基板液処理装置。
【請求項9】
前記頭部の外周端縁と前記基板保持部の表面により、前記乾燥用気体を吐出するための気体吐出口が画定されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の基板液処理装置。
【請求項10】
前記タンクに接続され、前記タンクに貯留される処理液を排出するタンク排出ラインと、
前記タンク排出ラインに接続され、前記タンク排出ラインからの排液を外部へと排出する外部排出ラインと、をさらに備え、
前記外部排出ラインは、タンク排出ラインからの排液を一時的に貯留することにより、前記タンク排出ラインと排出ラインとの流量の差を緩衝する緩衝部を含むことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の基板液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の下面に処理液を供給して液処理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、半導体ウエハ等の基板を水平に保持し、鉛直軸線周りに回転させた状態で、基板の下面(例えばデバイス非形成面である基板裏面)に洗浄液(例えば洗浄用薬液またはリンス液)を供給して、当該下面に洗浄処理を施すことがある。このような液処理は、基板の上面(例えばデバイス形成面である基板表面)に対する洗浄処理と同時に行われることもある。下面の洗浄が終了した後に、基板を高速回転させることにより振り切り乾燥が行われる。このとき、乾燥促進及びウオーターマークの発生を防止するため、基板の下面側に窒素ガス等の不活性ガスが供給される。上記の一連の処理を実行するための基板液処理装置が、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1の装置に限らず、上記の処理を行うための装置では、洗浄液及び不活性ガスはともに基板の下面の中央部に吹き付けられる。このため、洗浄液の吐出口及び不活性ガスの吐出口は、いずれも基板の下面の中央部の下方に配置される。このため、洗浄液が吐出されているときに、一旦基板の下面に到達した洗浄液の一部が不活性ガスの吐出口に向けて落下し、不活性ガスの吐出口内に入り込んで当該吐出口内部を汚染する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5005571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、基板下面に供給された液体が乾燥用気体の吐出口内に浸入することを防止しつつ、基板下面の乾燥効率を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
好適な一実施形態において、本発明は、基板を水平姿勢で保持して鉛直軸線周りに回転させる基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板の下面の中央部の下方に配置され、前記基板の下面に向けて処理液を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部の周囲に形成され、前記基板に向けて吐出する乾燥用気体を通過させる気体吐出路と、を備え、前記液体吐出部は、前記気体吐出路の上端部よりも外側に張り出して前記気体吐出路を上方から覆うカバー部と、前記カバー部に対して上方に突出した液体吐出口と、前記液体吐出口と前記カバー部との間に形成され表面が下方向に落ち込んでいる湾曲部と、を有する頭部を含み、前記液体吐出部から吐出される処理液を供給する処理液供給ラインと、前記処理液供給ラインに接続され、基板に供給された乾燥用気体及び前記処理液供給ラインに残存する処理液を排出するドレインラインと、前記ドレインラインから排出された処理液及び気体を一時的に貯留するタンクと、前記タンクに接続され前記タンクの気体を排出させるエジェクトラインと、を備え、前記処理液供給ラインに残存する処理液を排出する際に、前記エジェクトラインから前記タンクの気体を吸引することにより、前記タンクの水位を上昇させる基板液処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板下面に供給された液体が乾燥用気体の吐出口に浸入することを防止することができる。しかも、供給位置の周辺に液体が残留するのを抑制することができ、基板下面全体の乾燥効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る基板液処理装置の全体構成を示す概略平面図である。
図2図1の基板液処理装置に含まれる処理ユニットの概略縦断面図である。
図3図2の処理ユニットの処理液の吐出口及び乾燥用ガスの吐出口の付近を拡大して示す断面図である。
図4】第2の実施形態における流体供給システムの構成を示す図である。
図5】液処理開始前の待機時における流体供給システムの動作状態を示す図である。
図6】液処理時における流体供給システムの動作状態を示す図である。
図7】乾燥処理時における流体供給システムの動作状態を示す図である。
図8】処理液の排出動作の終了時における流体供給システムの動作状態を示す図である。
図9】第1の実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0011】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0012】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚のウエハW(基板)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0013】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウエハWを保持する基板保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、基板保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウエハWの搬送を行う。
【0014】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0015】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウエハWを保持する基板保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、基板保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウエハWの搬送を行う。
【0016】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWに対して所定の基板処理を行う。
【0017】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0018】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0019】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、取り出したウエハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウエハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0020】
処理ユニット16へ搬入されたウエハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウエハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0021】
次に、処理ユニット16の概略構成について図2及び図3を参照して説明する。
【0022】
図2に示すように、処理ユニット16は、チャンバ20と、ウエハWを保持して回転させる基板保持回転機構30と、処理液供給ノズルを構成する液体吐出部40と、ウエハWに供給された後の処理液を回収する回収カップ50とを備える。
【0023】
チャンバ20は、基板保持回転機構30、液体吐出部40及び回収カップ50を収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。なお、図示していないが、FFU21には後述するCDA(クリーンドライエア)を供給するためのCDA供給口が備えられており、乾燥処理を行う際などは、図示しないCDA供給口からCDAがウエハWに向けて供給される。
【0024】
基板保持回転機構30は、機械的なクランプ機構によりウエハWを保持するメカニカルチャックとして構成されている。基板保持回転機構30は、基板保持部31、回転軸32及び回転モータ(回転駆動部)33を有している。
【0025】
基板保持部31は、円板形のベースプレート(板状体)31aと、ベースプレート31aの周縁部に設けられた複数の保持部材31bを有している。保持部材31bは、ベースプレート31aの上部に形成されており、ウエハWの周縁を保持する。これにより、ウエハWの下面とベースプレート31aの上面との間には下方空間83が形成される。一実施形態においては、複数の保持部材31bのいくつかはウエハWに対して進退してウエハWの把持及び解放の切り換えを行う可動の支持部材であり、残りの保持部材31bは不動の保持部材である。回転軸32は中空であり、ベースプレート31aの中央部から鉛直方向下向きに延びている。回転モータ33は回転軸32を回転駆動し、これにより、基板保持部31により水平姿勢で保持されたウエハWが鉛直軸線周りに回転する。
【0026】
液体吐出部40は、全体として鉛直方向に延びる細長い軸状の部材として形成されている。液体吐出部40は、鉛直方向に延びる中空円筒形の軸部41と、頭部42とを有している。軸部41は、基板保持回転機構30の回転軸32の内部の円柱形の空洞32a内に挿入されている。軸部41と回転軸32とは同心である。軸部41の外周面と回転軸32の内周面との間に円環状の断面を有する気体通路80としての空間が形成されている。
【0027】
液体吐出部40の内部には、鉛直方向に延びる円柱形の空洞がある。この空洞の内部には処理液供給管43(図3参照)が設けられている。処理液供給管43の上端は、液体吐出部40の頭部42の頭頂部42aで開口しており、基板保持回転機構30に保持されたウエハWの下面の中央部に向けて処理液を吐出する(図3の黒塗り矢印を参照)液体吐出口43aとなる。ここで、頭頂部42aは、液体吐出口43aを取り囲む細いリング状の平面領域であり、液体吐出口43aと後述の湾曲部42dとを接続する部分である。
【0028】
処理液供給管43には、ウエハWの下面を処理するための所定の処理液が、処理液供給機構72から供給される。処理液供給機構72の構成の詳細な説明は後述するが、処理液供給源に接続された処理液供給ラインと、この処理液供給ラインに介設された開閉バルブ及び流量制御器などから構成される。本実施形態では、この処理液供給機構72は、純水(DIW)を供給するものとするが、複数の処理液、例えば洗浄用薬液(例えばDHF)及びリンス液を切り換えて供給することができるように構成されていてもよい。
【0029】
回収カップ50は、基板保持回転機構30の基板保持部31を取り囲むように配置され、回転するウエハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50は、不動の下カップ体51と、上昇位置(図2に示す位置)と下降位置との間で昇降可能な上カップ体52とを有している。上カップ体52は、昇降機構53により昇降する。上カップ体52が下降位置にあるときには、上カップ体52の上端は、基板保持回転機構30により保持されたウエハWよりも低い位置に位置する。このため、上カップ体52が下降位置にあるときに、チャンバ20内に進入した図1に示した基板搬送装置17の基板保持機構(アーム)と基板保持回転機構30との間で、ウエハWの受け渡しが可能となる。
【0030】
下カップ体51の底部には、排出口54が形成されている。この排出口54を介して、捕集された処理液及び回収カップ50内の雰囲気が回収カップ50から排出される。排出口54には排出管55が接続され、排出管55は減圧雰囲気の工場排気系(図示せず)に接続されている。
【0031】
FFU21からの清浄空気のダウンフローは、回収カップ50(上カップ体52)の上部開口を介して回収カップ50内に引き込まれ、排出口54から排気される。このため、回収カップ50内には、矢印Fで示す気流が生じる。
【0032】
処理ユニット16はさらに、基板保持回転機構30により保持されたウエハWの上面に処理液(洗浄用薬液あるいはリンス液)を供給する少なくとも1つの処理液供給ノズル61を備えていてもよい。処理ユニット16はさらに、ウエハWの上面をスクラブ洗浄するブラシ62を備えていてもよい。
【0033】
次に、図2及び図3を参照して、ウエハW下面への液体及び気体の供給に関与する部分について詳細に説明する。なお、特に説明の無い限り、図3に現れている全ての部材は、幾何学的用語としての回転体に該当する。
【0034】
液体吐出部40の上側部分(頭部42及びその下側付近)の周囲は、包囲部材により包囲されている。図示された実施形態において、回転軸32の上部32aが、上記包囲部材に該当する。液体吐出部40の上側部分と包囲部材との間には円環状の隙間があり、この隙間が乾燥用の気体を通過させる気体吐出路81を形成している。
【0035】
ベースプレート31aの中央部の上面には、液体吐出部40の頭部42の外周端縁42bと基板保持部の表面31cにより、気体吐出口31dが画定されている。ここで、外周端縁42bは、頭部42のうち、最も半径方向外側に位置する部分である。上記気体吐出口31dは、円環状の気体吐出路81を流れる気体をウエハWの下方空間83(ウエハWとベースプレート31aとの間の空間)に吐出する円環状の吐出口である。
【0036】
前述した液体吐出部40の軸部41と回転軸32との間の気体通路80には、乾燥用気体としての不活性ガス、ここでは窒素(N2)ガスが、乾燥用気体供給機構74から供給される。乾燥用気体供給機構74の構成の図示及び詳細な説明は後述するが、例えば、乾燥用気体供給源に接続された乾燥用気体供給ラインと、この乾燥用気体供給ラインに介設された開閉バルブ及び流量制御器等から構成される。
【0037】
乾燥用気体供給機構74から、気体通路80に供給された窒素ガスは、気体吐出路81に流入し、気体吐出路81の上端部82から外側に向かった後、気体吐出口31dから斜め上方に向けて吐出される(図3の白抜き矢印を参照)ように形成されている。すなわち、気体吐出口31dに到達した気体は、外周端縁42bの湾曲形状により吐出方向は斜め上向きとなる。これにより、ウエハWの中心付近に滞留する気体を外側へと引き出すことが可能になり、ウエハWの中心付近の気体が置換されるので乾燥を促進させることができる。
【0038】
気体吐出路81及び気体通路80内に液体(液体吐出口43aから吐出されてウエハW下面に到達した後に落下してくる処理液)が侵入することを防止するため、頭部42の外周端縁42b(後述のカバー部42cの端部)は、気体吐出路81の上端部82よりも半径方向外側に張り出し、上方からの平面視で気体吐出路81の上端部82を完全に覆っている。一方、基板保持部31の表面31cは水平面であるので、外周端縁42bよりも半径方向外側に液体が落ちても、気体吐出路81及び気体通路80内に浸入することはない。なお、液体吐出口43aから液体が吐出されているときには基板保持部31は回転しているため、比較的多くの量の液体が落ちたとしても、この液体は遠心力により外側に移動し、気体吐出路81及び気体通路80内に浸入することはない。
【0039】
次に、頭部42の上面の形状について説明する。図3に示されるように、頭部42はカバー部42cを有し、上方から見るとほぼ円盤状の形状を有している。ただし、中心に位置する液体吐出口43aは、ウエハWにより近い位置で液体を吐出するためにカバー部42cよりも高い位置にある。すなわち、液体吐出口43aは、カバー部42cに対して上方に突出しており、その周辺を囲む頭頂部42aもカバー部42cに対して上方に突出している。本実施形態では、カバー部42cは水平面としたが、気体吐出路81の上端部82よりも半径方向外側に張り出し上端部82を完全に覆うものであれば、これに限らない。例えば、外側に向かい多少傾斜させたほうが、液体が頭部42から落下しやすくなる。
【0040】
頭頂部42aとカバー部42cとの間には、表面が下方向に落ち込んでいる湾曲部42dが形成されている。湾曲部42dは、液体吐出口43aから吐出された液体のうち、ウエハWに向かうことなく横方向にある頭頂部42aへと流れてきた液体、又はウエハWに到達した後で跳ね返り落下した液体を受けて、それらの液体が、カバー部42cの方向へと円滑に流れていくよう案内する機能を有する。
【0041】
本実施形態と異なり湾曲部42dや頭頂部42aが形成されず、液体吐出口43aのみがカバー部42cから突出している場合、液体吐出口43aの周辺に落下した液体は外周方向へと流れて行かず、液体吐出口43aの円筒外周面の表面やカバー部42cとの境界部分に付着し、液溜まりとして残ってしまうことがある。この様な液溜まりは液体吐出口43aの周辺の湿度を上昇させる原因となり、ウエハWの中心領域の乾燥を妨げてしまう。
【0042】
本実施形態のように、液体を外周方向へと案内する湾曲部42dを設けることによってこの様な液溜まりの発生は防止又は抑制され、ウエハWの中心領域の乾燥効率を向上させることができる。
【0043】
また、液体吐出口43aがPFA等の疎水性の高い材料から形成されている場合、液体吐出口43aから吐出された液体はその高さで集合して液滴に変化する傾向がある。液体吐出口43aとウエハWの隙間の幅は狭いので、液滴のサイズがその隙間の幅よりも大きくなってしまうと、ウエハWの表面に液滴が接触してしまうおそれがある。本実施形態の湾曲部42dはその表面が下方向に落ち込んでいる弓状の形状を有するので、湾曲部42dの表面とウエハWの隙間の幅は、液体吐出口43aとウエハWの隙間の幅に比べて広くなっている。したがって、湾曲部42dの表面を流れ落ちる液体が集合して液滴に変化しても、液滴のサイズがその隙間の幅よりも大きくなることはなく、ウエハWの表面に液滴が接触することによる乾燥不良を起こすおそれもない。
【0044】
本実施形態では、カバー部42cに対して予め親水化処理を施しておくものとする。これにより、液滴が生じにくくなりまた生じた液滴も崩れやすくなるので、湾曲部42dから案内された液体がカバー部42c上で留まることなく外周方向へと向かい基板保持部の表面31cへと落下しやすくなる。なお、湾曲部42dのみに対して予め疎水化処理を施しておいても良い。これにより、一度カバー部42cに案内された液体が湾曲部42d側に戻ってくることを防ぐことができる。
【0045】
液体吐出口43aがPFA等の疎水性の高い材料から形成されており、液滴が生成されることを防止することを優先する場合、カバー部42cのみでなく湾曲部42dに対しても親水化処理を施しておくと良い。液体吐出口43aの周辺で液体が集合しようとしても、親水化された湾曲部42d側へと液体が引っ張られるため、液滴が生成されなくなる。
【0046】
親水化処理の一例としては、表面に対してガラスコーティングを施す処理がある。また、別の例として、PVA(ポリビニルアルコール)の発泡樹脂をシート状にして、カバー部42c表面に貼り付けてもよい。この場合、シートに水分が吸湿されるが、中心領域は負圧状態にあるため少量の水分であれば次第に乾燥していくので、処理上問題はない。疎水化処理の一例としては、表面に対して樹脂材料によるコーティングを施す処理がある。
【0047】
次に、処理ユニット16で行われるウエハWに対する処理について簡単に説明する。本処理における各構成の動作は、制御部18が、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって制御される。
【0048】
まず、上カップ体52が下降位置にある状態で、基板搬送装置17の基板保持機構(アーム)がチャンバ20内に進入し、ウエハWを基板保持回転機構30の保持部31に渡す。その後、基板保持機構(アーム)がチャンバ20から退出し、上カップ体52が上昇位置に上昇する。
【0049】
次に、基板保持回転機構30が、ウエハWを回転させる。この状態で、ウエハWに対して所定の液処理が施される。液処理の一例を以下に述べる。所定時間の間、処理液供給ノズル61から洗浄用薬液(例えばDHF)がウエハWの上面(デバイスが形成されたウエハWの表面)に供給され、これと同時に、処理液供給管43の液体吐出口43aからDIWがウエハの下面(デバイスが形成されていないウエハWの裏面)の中央部(ほぼ中心)に供給され、これによりウエハWの上面及び下面に洗浄処理が施される。なお、DIWに代えて、上面の洗浄処理と同時に、処理液供給管43の液体吐出口43aから洗浄用薬液(例えばDHF)がウエハWの下面の中央部に供給され、これによりウエハWの上面及び下面に薬液洗浄処理が施されるようにしてもよい。
【0050】
次に、引き続きウエハWを回転させたまま、所定時間の間、処理液供給ノズル61からウエハWの上面にリンス液(例えば純水(DIW))が供給されると同時に、液体吐出口43aからウエハWの下面中央部にリンス液(例えば純水(DIW))が供給され、ウエハWの上面及び下面にリンス処理が施される。これにより、ウエハWの上面及び下面に残留する薬液及び薬液洗浄処理により生じた反応生成物がリンス液により洗い流される。
【0051】
次に、ウエハWの上面及び下面への液体の供給を停止し、引き続きウエハWを回転させたまま(好ましくはウエハの回転速度を増大させ)、ウエハWの上面及び下面を乾燥させる。このとき、気体吐出口31dからウエハWの下面に向けて窒素ガスを吐出し、乾燥を促進する。窒素ガスは低湿度であるためウエハW下面とベースプレート31aとの間の空間内の雰囲気が低湿度となり、乾燥が促進される。
【0052】
上述したように、気体吐出口31d内に液体が入り込む可能性は非常に低いのであるが、より確実に気体吐出口31d内に液体が入り込むことを防止するために、乾燥処理を行っていないときに(例えば、液処理を行っているときに)、気体吐出口31dからパージガスとしての不活性ガス(窒素ガス)を乾燥時よりも少ない流量で吹き出させるように乾燥用気体供給機構74の供給流量を切り替え制御するようにしても構わない。
【0053】
その後、ウエハWの回転を停止させ、上カップ体52を下降させ、基板搬送装置17の基板保持機構(アーム)ウエハWを基板保持回転機構30の保持部31から受け取る。なお、ウエハWを搬出させた後であって保持部31によりウエハWが保持されていないときに、液体吐出口43aから純水を吐出させるとともに、気体吐出口31dから窒素ガスを吐出させ、さらに、基板保持部31の上方から2流体ノズル等を用いて純水を吐出させることで、頭部42を洗浄することもできる。
【0054】
上記実施形態においては、ウエハW上面に対して、処理液ノズル61から供給された洗浄用薬液により薬液洗浄を行ったが、これに限定されず、ブラシ62によりスクラブ洗浄を行ってもよい。ウエハW下面に対して上述した処理を行っている間に、ウエハW上面に対して任意の処理を行うことが可能であるが、ウエハW上面に対して何ら処理を行わなくてもよい。
【0055】
処理対象の基板は半導体ウエハ(ウエハW)に限定されるものではなく、ガラス基板、セラミック基板等の他の種類の基板であってもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、カバー部42cは、気体吐出路81の上端部82よりも外側に張り出して気体吐出路81を上方から覆うようにした。この構成により、ウエハWの裏面中心に液体を吐出可能にしながらも、ウエハWの下面に供給された液体が気体吐出路81に浸入することを防止することができる。
【0057】
また、本実施形態では、頭部42に湾曲部42dを設け、液体吐出口43aから吐出された液体をカバー部42cへと案内するようにした。この構成により、ウエハWにより近い位置で液体を吐出できるのでより洗浄効果が増すとともに、落下等した液体が頭部42で液溜まりとして残留するようなことを無くし、乾燥効率を向上させることができる。また、湾曲部42dを表面が下方向に落ち込む弓状の形状としたことにより、液滴がウエハに付着することを防止することができる。
【0058】
さらに、本実施形態では、予めカバー部42cを親水化処理し、湾曲部42dを疎水化処理しておいた。これにより、液体が湾曲部42dからカバー部42cへとより流れ落ちやすくなり、カバー部42c上の液体も基板保持部の平面31cへとより落下しやすくなる。
【0059】
(第1の実施形態の変形例)
液体吐出口43aから吐出された液滴が液体吐出口43aの周囲に残留すると、液体を吐出した際に残留した液滴や液滴に含まれていた塵が液体とともに吐出され、ウエハWに付着するおそれがある。そのため、第1の実施形態では、図9(a)に示すように、液体吐出口43aと頭部42の頭頂部42a(湾曲部42dの上端部)とを同じ高さになるようにしたが、図9(b)に示すように、液体吐出口43aを頭頂部42a(湾曲部42dの上端部)よりも高く(上方に形成)しても良い。これにより、液体吐出口43aはウエハWにさらに近くなり洗浄効果を向上させることができる。また、頭頂部42aの幅は狭く、液体吐出口43aから落下した処理液が頭頂部42aに留まることはなく湾曲部42dへと流れ落ちるので、乾燥効率には影響しない。さらに、液体吐出口43aの外側側面に対して疎水化処理が施されていれば湾曲部42d側へと液体が引っ張られやすくなり、また、湾曲部42dに対して親水化処理が施されていればその効果も大きくなる。また、図9(c)に示すように、頭頂部42aを省略し、液体吐出口43aに湾曲部42dが隣接するように構成してもよい。この場合に、図9(d)に示すように、処理液供給管43の先端外周部を湾曲部42dに連続するように先鋭湾曲形状としてもよい。また、図9(e)に示すように、液体吐出口43aを湾曲部42dの上端部よりも高く(上方に形成)してもよい。なお、ウエハWと液体吐出口43aとの間隔が広ければウエハWに液滴が付着するおそれもないので、湾曲部42dは、表面が下方向に落ち込む弓状の形状でなくても良い。その場合、液体吐出口43aとカバー部42cとの間には、液体を液体吐出口43aからカバー部42cへ案内できるガイド部が配置されれば良く、ガイド部は、湾曲状に限らず、直線状に傾斜する面で形成されていても良い。
【0060】
また、液体吐出口43aから吐出された液滴が気体吐出口31dに残留すると、気体を吐出した際に残留した液滴や液滴に含まれていた塵が気体とともに吐出され、ウエハWに付着するおそれがある。そのため、第1の実施形態では、図9(f)に示すように、外周端縁42bの上部を外側下方へ向けて傾斜させるとともに外周端縁42bの下部を外側上方へ向けて傾斜させている。これにより、カバー部42cの上面を流れる液滴が外周端縁42bから外側の表面31cへと円滑に流れるようになる。また、液滴が気体吐出口31dの内側に流れ込まないようにして、液滴が気体吐出口31dに残留しないようにしている。外周端縁42bの形状はこれに限られず、図9(g)に示すように、外周端縁42bを外側下方へ向けて傾斜させてもよい。また、図9(h)に示すように、外周端縁42bの下部を下方へ向けて湾曲状に膨出させてもよい。また、図9(i)に示すように、外周端縁42bを内側下方へ向けて鋭角状に傾斜させてもよい。さらに、図9(j)に示すように、カバー部42cの外側表面をポリビニルアルコール等の親水性・吸水性を有する素材で被覆してもよい。この場合、外周端縁42bの下部まで被覆することで、外周端縁42bの下部において気体吐出口31dから吐出される気体で水分を蒸発させることができる。
【0061】
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態で説明した、処理ユニット16で行われるウエハWに対する処理を行う際の処理液供給機構72及び乾燥用気体供給機構74の動作、並びに処理液及び乾燥用気体の排出動作について説明する。
【0062】
本実施形態において、基板液処理装置の処理液及び乾燥用気体の供給及び排出を行う流体供給システムの構成を図4に示す。第1の実施形態で説明したように、処理液としては、DHF等の薬液を用いても良いが、本実施形態では、DIWを用いた例を説明する。
【0063】
図4の乾燥用気体供給機構74において、乾燥用気体供給源407は、乾燥処理に用いる気体の供給源であって、本実施形態の乾燥用気体は窒素(N2)である。乾燥用気体供給ライン408は、乾燥用気体供給源407からの乾燥用気体をチャンバ20に対して供給するための供給路である。開閉バルブ409は、乾燥用気体供給ライン408に介設されており、チャンバ20に対する乾燥用気体の供給の開始及び停止を制御する。流量調整器410は、乾燥用気体供給ライン408に介設されており、乾燥用気体供給ライン408からチャンバ20に対して供給される乾燥用気体の流量を調整する。
【0064】
図4の処理液供給機構72において、処理液供給源401は、液処理に用いる処理液の供給源であって、本実施形態の処理液である純水(DIW)の供給源である。処理液供給ライン402は、処理液供給源401からの処理液をチャンバ20に対して供給するための供給路である。開閉バルブ403は、処理液供給ライン402に介設されており、チャンバ20に対する処理液の供給の開始及び停止を制御する。流量調整器404は、処理液供給ライン402に介設されており、処理液供給源401から処理液供給ライン402に対して供給される処理液の流量を調整する。ダミードレインライン405は、後述するダミードレイン動作を実行するための排出路である。開閉バルブ406は、ダミードレインライン405に介設されており、ダミードレインライン405へのドレイン量を調整する。
【0065】
チャンバ20と開閉バルブ403の間の処理液供給ライン402には、ドレインライン411が接続されている。ドレインライン411は、処理液供給ライン402のうちチャンバ20と開閉バルブ403の間の供給路に残存する処理液又はチャンバ20内の気体を最終的に基板液処理装置の外部へと排出するための分岐ラインである。開閉バルブ412は、ドレインライン411への処理液又は気体の排出の開始と停止を制御する。ドレインライン411は、処理ステーション3の各処理ユニット16との間で共用されているため、他のチャンバ20とも接続されている。同様の構成を持つ各チャンバ20から排出された処理液や気体は、ドレインライン411に合流して排出される。
【0066】
トラップタンク413は、各チャンバ20のドレインライン411から排出された処理液や気体を一時的に貯留するタンクである。後述するように、トラップタンクは、排出された処理液が各チャンバ20に対して逆流しないようにするためにも用いられる。
【0067】
エジェクトライン414は、トラップタンク413に貯留される気体を吸引して排出するための排出路である。エジェクトライン414は、気体を吸引するために所定の吸気圧を必要とするが、この吸気圧は、その端部に接続されたエジェクター部415から得ている。エジェクター部415は、ポンプ等の機械的駆動によらず高速の気体の流れを利用して真空に近い負圧を作り出す機能を有しており、その高速気体はCDA分岐ライン416から得ている。
【0068】
CDA分岐ライン416は、チャンバ20にCDA(クリーンドライエア)を供給するCDA供給ライン417から分岐した通路であり、例えば、10L/minの流量でCDAを通過させている。エジェクター部415を通過したCDAは、そのままシステムの外部へと排気される。
【0069】
タンク排出ライン418はトラップタンク413の底面に接続されており、外部排出ライン419に対して処理液を排出する。タンク排出ライン418の配管はトラップタンク413よりも下方を通過した後、上方に向かって伸び最上部通路418aの高さで平行となり外部排出ライン419に接続する。タンク排出ライン418がこの様な配置構成を有するので、後述するようにトラップタンク413の水位は最上部通路418aの高さに依存している。外部排出ライン419は排出口421から処理液をシステム外部へと排出させるが、処理液の逆流を防止するための緩衝部422も備えている。
【0070】
次に、上記構成を有する流体供給システムにおける、処理ユニット16で行われるウエハWに対する処理を行う際の動作について説明する。本システムにおける各構成の動作は、制御部18が、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって制御される。
【0071】
以下説明する各図において、各配管の色が太い黒色ラインが引かれている場合は、処理液が通過していることを示している。また、各配管に沿った矢印は、処理液(黒色矢印)又は気体(白抜き矢印)がその方向に向かって通過していることを示す。また、他のチャンバ20では、同様の処理及び動作が行われているものとするが、その説明は省略する。
【0072】
図5は、液処理開始前の待機時における流体供給システムの動作状態を示す図である。待機時において、制御部18は、開閉バルブ403は閉状態とし、開閉バルブ412は開状態とし、開閉バルブ409は開状態とし、開閉バルブ406は所定の時間間隔ごとに開閉を繰り返す制御を行う。
【0073】
以上の制御を行うことにより、待機状態では、ダミードレイン動作が実行されることになる。すなわち、処理液供給源401からの処理液が処理液供給ライン402を通過するが、チャンバ20へと供給されることなく、ダミードレインライン405へと流れていく。ダミードレインライン405では開閉バルブ406の開閉を繰り返すことにより簡易的な流量調整を行いながら処理液が排出される。なお、流量調整器404によって精度よく流量調整を行っても良い。ダミードレイン動作を行うことにより、液処理を開始する前に処理液供給ライン402に残留している処理液を排出できるため、液処理を開始時には、ウエハWに対して劣化していない新鮮な液を供給することができる。
【0074】
ダミードレイン動作が実行される一方で、乾燥用気体供給ライン408からの乾燥用気体は気体吐出口31dからウエハWの裏面に供給されている。この時の供給量は、流量調整器410により調整されるが、後述の乾燥処理時よりも低流量である。本実施形態では、開閉バルブ403は閉状態としているためその上方には処理液は存在せず、チャンバ20に供給された後の気体は、液体吐出口43aから排出できるようになっている。排出された気体は、ドレインライン411を通過した後、トラップタンク413へと到達する。
【0075】
トラップタンク413の液体の水位d1は、タンクの流入口の高さHよりも低い位置にある。処理液が流入しない際又は流入する流量が少ないときの水位d1は、タンク排出ライン418の最上部通路418aの高さに依存する。すなわち、水位がd1よりも高い間はトラップタンク413内に貯留される処理液は自重の圧力によりタンク排出ライン418内の処理液を押し下げ、最上部通路418aから外部排出ライン419へと処理液を流出させる。一方、トラップタンク413の水位が最上部通路418aと同じ高さの水位d1になるとタンク排出ライン418内の処理液との間で圧力が釣り合い、処理液の先端も最上部通路418aのおよそ中間位置で停止して流れなくなり、それ以降、水位が変化しないようになる。
【0076】
以上のようにトラップタンク413の内部に貯留される処理液は、トラップタンク413の流入口の高さHよりも低い水位を有するので、排出された気体はドレインライン411を容易に通過してトラップタンク413に到達し、タンク内の空間を介してエジェクトライン414へと向かう。エジェクトライン414を通過する気体は、エジェクター部415に到達してCDA分岐ライン416を流れる気体と合流した後、システム外部へと排気される。
【0077】
上述したように、エジェクター部415は所定の吸気圧でエジェクトライン414の気体を吸引しており、この吸引の作用は、トラップタンク413の空間やドレインライン411を介して、気体吐出口31dにまで影響するため、気体吐出口31dにおける気体の引き込み圧力も、自然排気を行う場合よりも高くすることができる。したがって、チャンバ20が待機時にあっても、通常の排気を行うよりもウエハWの裏面空間の清浄度を高く保つことができる。
【0078】
図6は、液処理時における流体供給システムの動作状態を示す図である。液処理時において、制御部18は、開閉バルブ403は開状態とし、開閉バルブ412は閉状態とし、開閉バルブ409は開状態とし、開閉バルブ406は閉状態とする制御を行う。
【0079】
以上の制御を行うことにより、液処理状態では液体吐出口43aから処理液が吐出され、第1の実施形態で説明した、処理液(DIW)を用いた裏面の洗浄処理が実行される。また、気体吐出口31dから乾燥用気体も吐出されることによりパージ動作も実行される。
【0080】
液処理時は、開閉バルブ412が閉状態なため、供給された処理液及び乾燥用気体はドレインライン411には流入しない。ただし、ドレインライン411は他のチャンバ20にも接続されているため、他のチャンバ20が待機状態にある場合は、上述した待機時の動作と同様に、他のチャンバ20からの気体をトラップタンク413、エジェクトライン414、エジェクター部415、及びCDA分岐ライン416を介して外部へと排出することができる。
【0081】
図7は、乾燥処理時における流体供給システムの動作状態を示す図である。乾燥処理状態では、制御部18は、開閉バルブ403は閉状態とし、開閉バルブ412は開状態とし、開閉バルブ409は開状態とし、開閉バルブ406は閉状態とする制御を行う。
【0082】
以上の制御を行うことにより、乾燥処理時では気体吐出口31dから乾燥用気体が吐出され、第1の実施形態で説明した、乾燥用気体(N2)を用いた裏面の乾燥処理が実行される。
【0083】
乾燥処理状態では、開閉バルブ412を開状態にすることにより、供給された処理液のうちチャンバ20に到達せず処理液供給ライン402に残存する処理液をドレインライン411に対して流入させる。
【0084】
トラップタンク413に流入した処理液はトラップタンク413に一時的に貯留された後、タンク排出ライン418へと流入していき、最上部通路418aを通過して外部排出ライン419へと流出していく。ここで、タンク排出ライン418から外部排出ライン419への排出流量よりもドレインライン411からトラップタンク413への流入流量が多い場合、トラップタンク413の水位は増加していき、やがてタンクの供給口の高さHに到達する。
【0085】
トラップタンク413の水位が供給口の高さHよりも高くなると、トラップタンク413の処理液がドレインライン411の上流側へと逆流してしまう、又は逆流しなくてもドレインライン411からの処理液の流入が停止してしまうおそれがある。しかし、本実施形態では、エジェクター部415がエジェクトライン414を介して所定の吸気圧でトラップタンク413の内部の気体を吸引している。したがって、トラップタンク413の水位を供給口の高さHよりも上昇させることができ、ドレインライン411への逆流等が生じることを防止することができる。
【0086】
一方、タンク排出ライン418へと流入した処理液は外部排出ライン419から排出されるが、タンク排出ライン418から流入する処理液の流量が、外部排出ライン419の排出可能流量を超えている場合、タンク排出ライン418において上流側に向けての逆流が生じるおそれがある。本実施形態では、外部排出ライン419に緩衝部422を設けて所定量の処理液を一時的に貯留できるようにしている(図7のf1の部分)。したがって、外部排出ライン419へと大流量で処理液が流れ込んでも、緩衝部422で流量の差分を緩衝して逆流を防止することができ、処理液を円滑に排出することができる。
【0087】
図8は、処理液の排出動作の終了時における流体供給システムの動作状態を示す図である。ダミードレイン動作を行っていない点を除いて、図5で示した待機時と同様の状態を示している。なお、排出動作後、流量調整器410によって乾燥用気体の流量を増加させて乾燥を促進させるようにしてもよい。
【0088】
以上説明したように、本実施形態によれば、チャンバ20での乾燥処理において、ドレインライン411から処理液供給ライン402に残存する処理液を排出する際に、エジェクトライン414からトラップタンク413の気体を吸引することにより、トラップタンク413の水位を上昇させるようにした。これにより、トラップタンク413により多くの処理液を貯留できるようになるので、ドレインライン411への逆流を防止することができ、安定した処理液排出が可能となる。また、外部排出ライン419に緩衝部422を設け、タンク排出ライン418からの排液を一時的に貯留するようにした。これにより、タンク排出ライン418と外部排出ライン419との流量の差を緩衝し、トラップタンク413への逆流を防止することができる。
【0089】
以上、本実施形態における流体供給システムの動作を説明してきたが、本発明は上述した構成に限定しない。例えば、本実施形態において、エジェクター部415は、CDA分岐ライン416からの気体供給により動作するように構成したが、CDAに限らず、N2供給ライン等、他の気体供給ラインからの分岐ラインを利用して動作するようにしても良い。また、乾燥処理時において、残存する処理液の排出動作を行うようにしたが、これに限らず、待機時等、他のタイミングで排出動作を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0090】
31 基板保持部
31c 包囲部材(32a)
31d 気体吐出口
40 液体吐出部
42 頭部
42a 頭頂部
42b 液体吐出部の頭部の外周端縁
42c カバー部
42d 湾曲部
43a 液体吐出口
81 気体吐出路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9