【実施例】
【0027】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0028】
(実施例1)
金属原料粉末として、平均粒径4μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径3μmのPt粉末を、非磁性材粉末として平均粒径1.2μmのTiO
2粉末、平均粒径0.7μmの球形SiO
2粉末、平均粒径1μmのCr
2O
3粉末を用意した。また、粒径が50μm以上150μm以下の範囲となるように調整したCo粗粉を準備し、平均粒径4μmのCo粉末と前記Co粗粉との比率を重量比で7:3とした。これらの粉末を以下の組成比で2000g秤量した。
組成:69Co−18Pt−2Cr−5SiO
2−2TiO
2−4Cr
2O
3(mol%)
【0029】
次に、Co粗粉を除き、秤量した粉末を粉砕媒体のタングステン合金ボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、120時間回転させて混合した。その後、Co粗粉をボールミルポットに追加で添加して、1時間混合した。このようにして得られた混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1100°C、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件のもとホットプレスして焼結体を得た。さらにこれを旋盤で切削加工して直径が180mm、厚さが5mmの円盤状のターゲットを得た。
【0030】
このようにして得られたターゲットの平均漏洩磁束密度を測定した結果、30%であった。なお、漏洩磁束の測定は、ASTM F2086−01(Standard Test Method for Pass Through Flux of Circular Magnetic Sputtering Targets, Method 2)に則して実施した。具体的には、ターゲットの中心を固定し、0度、30度、60度、90度、120度と回転させて測定した漏洩磁束密度を、ASTMで定義されているreference fieldの値で割り返し、100を掛けてパーセントで表した。そして、これら5点について平均した結果を、平均漏洩磁束密度(%)とした。
【0031】
このターゲット表面を研磨して組織を顕微鏡で観察したところ
図1に示すように非磁性材粒子が金属相に分散した組織中に、金属粒が点在していることが分かる。金属粒の外周上にある任意の2点の距離の最大値を最大径とし、平行な2本の直線で同金属粒を挟んだときの2直線間の距離の最小値を最小径とした場合、その最大径と最小径の和が30μm以上の金属粒が1mm
2視野内に平均40個確認された。
また、非磁性材粒子を観察するため、
図1を拡大したものを
図2に示す。非磁性材粒子の外周上にある任意の2点の距離の最大値を最大径とし、平行な2本の直線で同粒子を挟んだときの2直線間の距離の最小値を最小径とした場合、最大径と最小径の差が0.7μm以下である酸化物粒子が顕微鏡視野内において85%存在しており、平均粒径は0.75μmであった。
なお、酸化物粒子の最大径、最小径、平均粒径を算出するにあたっては、
図3に示すように、顕微鏡像をPC画面に映し出し、画像解析処理(二値化処理)して、酸化物粒子(黒い部分)の輪郭を明確にした上で、これらを算出した。
【0032】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1.2kW、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレスパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのシリコン基板上のパーティクル数は4個であった。
なお、スパッタリングしない場合でも、パーティクルカウンターで測定すると、シリコン基板上にパーティクル数が0〜5個とカウントされる場合があるので、本実施例のパーティクル数4個は、極めて少ないレベルにあると言える。
【0033】
(実施例2)
金属原料粉末として、平均粒径4μmのCo粉末、平均粒径3μmのPt粉末、平均粒径7μmのRu粉末、平均粒径6μmのTa粉末、酸化物粉末として平均粒径1.2μmのTiO
2粉末、平均粒径0.7μmの球形SiO
2粉末、平均粒径0.8μmのCoO粉末、平均粒径5μmのB
2O
3粉末を用意した。また、粒径が50μm〜300μmの範囲となるように調整したCo粗粉を準備し、平均粒径4μmのCo粉末と前記Co粗粉との比率を重量比で7:3とした。これらの粉末を以下の組成比で2000g秤量した。
組成:61.2Co−22Pt−3Ru−0.8Ta−6SiO
2−2TiO
2−4CoO−1B
2O
3(mol%)
【0034】
次に、Co粗粉を除き、秤量した粉末を粉砕媒体のタングステン合金ボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、120時間回転させて混合した。その後、Co粗粉をボールミルポットに追加で添加して、1時間混合した。このようにして得られた混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1000°C、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件のもとホットプレスして焼結体を得た。さらにこれを旋盤で切削加工して直径が180mm、厚さが5mmの円盤状のターゲットを得た。
【0035】
実施例2のターゲットの平均漏洩磁束密度は、28%であった。このターゲット表面を研磨して組織を顕微鏡で観察したところ
図4に示すように非磁性材粒子が金属相に分散した組織中に、金属粒が点在していることが分かる。実施例1と同様に評価した最大径と最小径の和が30μm以上の金属粒は1mm
2視野内に平均19個確認された。また、非磁性材粒子を観察するため、
図4を拡大したものを
図5に示す。実施例1と同様に評価した最大径と最小径の差が0.7μm以下の非磁性材粒子の割合は64%であり、平均粒径は1.26μmであった。
【0036】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けスパッタリングを行った。スパッタ条件は、実施例1と同様とし、スパッタパワー1.2kW、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレスパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのシリコン基板上のパーティクル数は4個であった。
【0037】
(実施例3)
金属原料粉末として、平均粒径4μmのCo粉末、平均粒径3μmのPt粉末、平均粒径7μmのCo−B粉末、酸化物粉末として平均粒径1.2μmのTiO
2粉末、平均粒径0.7μmの球形SiO
2粉末、平均粒径0.8μmのMnO粉末、平均粒径2μmのCo
3O
4粉末を用意した。また、粒径が50μm〜300μmの範囲となるように調整したCo粗粉を準備し、平均粒径4μmのCo粉末と前記Co粗粉との比率を重量比で7:3とした。これらの粉末を以下の組成比で2000g秤量した。
組成:63Co−21Pt−3B−6SiO
2−2TiO
2−4MnO−1Co
3O
4(mol%)
【0038】
次に、Co粗粉を除き、秤量した粉末を粉砕媒体のタングステン合金ボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、120時間回転させて混合した。その後、Co粗粉をボールミルポットに追加で添加して、1時間混合した。このようにして得られた混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1000°C、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件のもとホットプレスして焼結体を得た。さらにこれを旋盤で切削加工して直径が180mm、厚さが5mmの円盤状のターゲットを得た。
【0039】
実施例3のターゲットの平均漏洩磁束密度は、31%であった。このターゲット表面を研磨して組織を顕微鏡で観察したところ非磁性材粒子が金属相に分散した組織中に、金属粒が点在していることが分かる。実施例1と同様に評価した最大径と最小径の和が30μm以上の金属粒は1mm
2視野内に平均18個確認された。また、実施例1と同様に評価した最大径と最小径の差が0.7μm以下の非磁性材粒子の割合は60%であり、平均粒径は1.16μmであった。
【0040】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けスパッタリングを行った。スパッタ条件は、実施例1と同様とし、スパッタパワー1.2kW、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレスパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのシリコン基板上のパーティクル数は5個であった。
【0041】
(実施例4)
金属原料粉末として、平均粒径4μmのFe粉末、平均粒径3μmのPt粉末、平均粒径7μmのFe−B粉末、酸化物粉末として平均粒径0.8μmの球形SiO
2粉末を用意した。また、粒径が50μm〜300μmの範囲となるように調整したFe粗粉を準備し、平均粒径4μmのFe粉末と前記Fe粗粉との比率を重量比で8:2とした。これらの粉末を以下の組成比で2000g秤量した。
組成:52Fe−25Pt−5B−18SiO
2(mol%)
【0042】
次に、Fe粗粉を除き、秤量した粉末を粉砕媒体のタングステン合金ボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、120時間回転させて混合した。その後、Fe粗粉をボールミルポットに追加で添加して、1時間混合した。このようにして得られた混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1300°C、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件のもとホットプレスして焼結体を得た。さらにこれを旋盤で切削加工して直径が180mm、厚さが5mmの円盤状のターゲットを得た。
【0043】
実施例4のターゲットの平均漏洩磁束密度は、61%であった。このターゲット表面を研磨して組織を顕微鏡で観察したところ非磁性材粒子が金属相に分散した組織中に、金属粒が点在していることが分かる。実施例1と同様に評価した最大径と最小径の和が30μm以上の金属粒は1mm
2視野内に平均4個確認された。実施例1と同様に評価した最大径と最小径の差が0.7μm以下の非磁性材粒子の割合は65%であり、平均粒径は1.29μmであった。
【0044】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けスパッタリングを行った。スパッタ条件は、実施例1と同様とし、スパッタパワー1.2kW、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレスパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのシリコン基板上のパーティクル数は6個であった。
【0045】
(比較例1)
金属原料粉末として、平均粒径4μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径3μmのPt粉末、酸化物粉末として平均粒径1.2μmのTiO
2粉末、平均粒径0.7μmの芯状SiO
2粉末、平均粒径1μmのCr
2O
3粉末を用意した。そして、これらの粉末を以下の組成比で2000g秤量した。
組成:69Co−18Pt−2Cr−5SiO
2−2TiO
2−4Cr
2O
3(mol%)
【0046】
次に、秤量した粉末を粉砕媒体のタングステン合金ボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、120時間回転させて混合した。このようにして得られた混合粉をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様に、真空雰囲気中、温度1100°C、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件のもとホットプレスして焼結体を得た。さらにこれを旋盤で切削加工して直径が180mm、厚さが5mmの円盤状のターゲットを得た。
【0047】
比較例1のターゲットの平均漏洩磁束密度は、18%であった。このターゲット表面を研磨して組織を顕微鏡で観察したところ、実施例1と同様に評価した最大径と最小径の和が30μm以上の金属粒は1mm
2視野内に平均1個なかった。また、実施例1と同様に評価した最大径と最小径の差が0.7μm以下の非磁性材粒子の割合は89%であり、平均粒径は0.71μmであった。
【0048】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けスパッタリングを行った。スパッタ条件は、実施例1と同様に、スパッタパワー1.2kW、Arガス圧1.5Paとしたが、安定した放電が得られなかったため、スパッタパワー1.7kW、Arガス圧を2.8Paとして放電を安定させ、2kWhrのプレスパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのシリコン基板上のパーティクル数は9個であった。
【0049】
(比較例2)
金属原料粉末として、平均粒径4μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径3μmのPt粉末、酸化物粉末として平均粒径1.2μmのTiO
2粉末、平均粒径0.7μmの芯状SiO
2粉末、平均粒径1μmのCr
2O
3粉末を用意した。また、粒径が50μm〜300μmの範囲となるように調整したCo粗粉を準備し、平均粒径4μmのCo粉末と前記Co粗粉との比率を重量比で7:3とした。これらの粉末を以下の組成比で2000g秤量した。
組成:69Co−18Pt−2Cr−5SiO
2−2TiO
2−4Cr
2O
3(mol%)
【0050】
次に、Co粗粉を除き、秤量した粉末を粉砕媒体のタングステン合金ボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、70時間回転させて混合した。その後、Co粗粉をボールミルポットに追加で添加して、1時間混合した。このようにして得られた混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1100°C、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件のもとホットプレスして焼結体を得た。さらにこれを旋盤で切削加工して直径が180mm、厚さが5mmの円盤状のターゲットを得た。
【0051】
比較例2のターゲットの平均漏洩磁束密度は、29%であった。このターゲット表面を研磨して組織を顕微鏡で観察したところ、実施例1と同様に評価した最大径と最小径の和が30μm以上の金属粒は1mm
2視野内に平均36個確認された。また、実施例1と同様に評価した最大径と最小径の差が0.7μm以下の非磁性材粒子の割合は54%であり、平均粒径は1.87μmであった。
【0052】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けスパッタリングを行った。スパッタ条件は、実施例1と同様とし、スパッタパワー1.2kW、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレスパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのシリコン基板上のパーティクル数は28個と多かった。
【0053】
【表1】