(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示の技術では、マンホール蓋に取り付けられるカバー部材の頂面とICタグの間には、所定の厚みのゴム層が存在するのみである。そのため、マンホール蓋上を車両が通過した場合のタイヤ等から受ける衝撃や、土砂が大量に積もる等したときの衝撃に対しては十分な耐衝撃性を有していない。たとえば、マンホール上には土砂や氷雪等が堆積することがあり、かかる堆積物の上から車両のタイヤ等で踏み付けられる場合もあるが、その場合、ゴム製のカバーでは衝撃に耐えるだけの耐衝撃性を有していない。
【0008】
なお、特許文献2には、ねじ状の取付ロッドの有底穴にICタグが取り付けられる構成が開示されているものの(
図7等)、電磁波(電波)の受信し難さから、現実的には
図1等に示すような凹部にICタグが取り付けられる構成(
図1等)が採用される。しかし、この場合にも、上述のように、タイヤ等や土砂等から受ける衝撃に耐えられるだけの耐衝撃性を有していない。この点は、特許文献3に開示の構成も同様である。
【0009】
また、特許文献1〜3に開示の構成では、マンホール蓋から離れた位置では電磁波(電波)で通信を行う際の感度が低いという問題もある。
【0010】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、耐衝撃性を向上させることが可能であると共に、通信を行う際の感度を向上させることが可能なマンホール蓋用ICタグユニットおよびICタグ組み込みマンホール蓋を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、金属製のマンホール蓋の表面から窪む取付凹部に取り付けられるマンホール蓋用ICタグユニットであって、ICチップおよびコイルアンテナを有するICチップ体を有するICタグと、金属から形成され、外部からの衝撃に耐える耐衝撃性を備える程度の厚みを有すると共に、取付凹部から外部に露出する状態で配置される保護アンテナ部と、樹脂を材料として形成され、保護アンテナ部を支持すると共に、ICタグを格納するベース部と、を有
し、ベース部には、一対のネジ部材が一体的に取り付けられると共に、この一対のネジ部材は、その一端側がベース部に埋設される状態で、かつベース部の長手方向において中央から離間した位置にそれぞれ取り付けられていて、ネジ部材のネジ部は取付凹部の底面を貫通する貫通孔に挿通され、そのネジ部材の他端側からナットを捻じ込むことでマンホール蓋に固定されていて、ネジ部材の頭部は、保護アンテナ部とは非接触の状態でベース部の内部に埋め込まれている、ことを特徴とするマンホール蓋用ICタグユニットが提供される。
【0013】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、ベース部の長手方向の寸法は、保護アンテナ部の長手方向の寸法よりも大きく設けられていると共に、保護アンテナ部の端部側には、ベース部に食い込む爪部が設けられている、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、保護アンテナ部は、ICタグと通信を行う電磁波により生じる高周波電流に共振を生じさせる寸法に設定されている、ことが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の他の側面は、金属製のマンホール蓋の表面から窪んだ取付凹部に対して、上述の各発明に係るマンホール蓋用ICタグユニットを取り付けている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、マンホール蓋用ICタグユニットおよびICタグ組み込みマンホール蓋において、耐衝撃性を向上させることが可能となると共に、電磁波(電波)の受信感度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係る、マンホール蓋用ICタグユニットおよびICタグ組み込みマンホール蓋について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、マンホール蓋用ICタグユニットは単にICタグユニット10と表記し、このICタグユニット10が取り付けられたICタグ組み込みマンホール蓋は、単にマンホール蓋1と表記する。また、以下の説明においては、XYZ直交座標系を用いて説明する場合があるものとし、X方向をICタグユニット10の長手方向とし、X1側は
図2において右側、X2側は
図2において左側とする。またZ方向をマンホール蓋1およびICタグユニット10の上下方向とし、Z1側は上側、Z2側は下側とする。またY方向はX方向およびY方向に直交する方向とし、Y1側は
図1において左側、Y2側はそれとは逆の右側とする。
【0019】
<マンホール蓋1の構成について>
本実施の形態におけるICタグユニット10は、
図1に示すようなマンホール蓋1に取り付けられるものである。マンホール蓋1は、金属製であり平面視したときの形状が円形状に形成されているが、車両が通過した際に十分に耐えられる強度を有していて、さらに車両が通過した際の衝撃でもマンホールから外れない程度の重量を有している。そのため、マンホール蓋1は、たとえば鋳鉄により形成されている。
【0020】
このマンホール蓋1の表面1aには、凹凸部2が形成されている。なお、この凹凸部2の形状は、マンホール蓋1の大きさや用途(例えば、下水用やガス用など)および表面図案によって種々のものがあり、
図1で示す凹凸形状はそのうちの一例として示すものである。なお、マンホール蓋1としては、
図1では円形状のものが示されているが、長方形状や多角形状、楕円形状を初め、その他の形状を採用しても良い。
【0021】
図2は、マンホール蓋1のうち取付凹部3付近を切断した状態を示す側断面図である。
図1および
図2に示すように、マンホール蓋1には、取付凹部3が設けられている。取付凹部3は、ICタグユニット10を取り付けるために配置する部分であり、所定の深さTに設けられている。この取付凹部3の底部3aには、貫通孔3bが設けられている。貫通孔3bは、一対設けられているが、
図2においては取付凹部3の長手方向の中央から離間した位置にそれぞれ設けられている。
【0022】
また、マンホール蓋1には、ナット取付穴4が設けられている。ナット取付穴4は、後述するナット60が位置する凹形状部分であり、マンホール蓋1の表面1aとは反対側の裏面1bから表面1a側に向かい窪んでいる。
【0023】
<ICタグユニット10の構成について>
続いて、上述したようなマンホール蓋1の取付凹部3に取り付けられるICタグユニット10について説明する。
図3は、ICタグユニット10の構成を示す側断面図であり、
図4は、ICタグユニット10の構成を示す平面図である。このICタグユニット10は、保護アンテナ部20と、ベース部30と、埋め込みボルト40と、ICタグ50とを有している。
【0024】
なお、ICタグユニット10としては、
図3および
図4に示す構成には限られず、種々の形状を採用することが可能である。たとえば、
図5に示すような保護アンテナ部20とベース部30とが長尺状に設けられる構成としても良い。また、ICタグユニット10としては、
図3〜
図5に示す形状以外にも、種々の形状を採用することが可能である。
【0025】
保護アンテナ部20は導電性を備える金属から形成されているが、この保護アンテナ部20は、外部からの衝撃に耐える(耐衝撃性を有する)程度の厚みを備えている。保護アンテナ部20の材質としては、たとえば、SUS304他のステンレス鋼としても良く、その他の鉄系材料質としても良く、アルミニウム系材料、銅、金、銀等、種々の材料を用いることが可能である。
【0026】
この保護アンテナ部20は、その大部分が板状に形成された板状部21であるが、その板状部21から上方に向かい突出する突起部22を備えていても良い。突起部22は、たとえばICタグユニット10が取り付けられるマンホール蓋1のデザイン的な観点から設けられる部分であっても良く、滑り止めとして機能する部分であっても良い。
【0027】
また、保護アンテナ部20の厚みをT1とすると、その厚みT1は、車両のタイヤ等によって踏み付けられた際の衝撃によって割れたり剥がれたりする力に耐えられる耐衝撃性を備えると共に、水分を含む大量の土砂による圧力が加わった場合でも、凍結であっても、十分に耐えられるだけの強度を有している。そのような厚みT1としては、たとえば突起部22の頂部から板状部21の裏面まで4mm程度とするものがあるが、十分な耐衝撃性や強度を有していれば、上記以外の寸法であっても良い。
【0028】
また、
図6に示すように、保護アンテナ部20の長手方向(X方向)の端部側には、爪部23が設けられる構成としても良い。爪部23は、ベース部30に食い込む部分であり、その爪部23の存在によって保護アンテナ部20がベース部30から物理的に剥がれ難くなっている。なお、爪部23は、後述する埋め込みボルト40と接触しない配置となっている。そのため、
図6に示す構成例では、埋め込みボルト40の方が、爪部23よりも長手方向(X方向)の端部側に位置している。ただし、ICタグユニット10のマンホール蓋1に対する取り付けの都合で爪部23の方が、埋め込みボルト40よりも長手方向(X方向)の端部に位置する構成を採用しても良い。なお、埋め込みボルト40は、ネジ部材に対応する。
【0029】
かかる保護アンテナ部20には、ベース部30が積層されている。ベース部30は、誘電体である樹脂を材料として形成されている。かかる樹脂の材料としては、上記のように、車両のタイヤ等によって踏み付けられた際の衝撃に耐えられる耐衝撃性を備えると共に、大量の土砂による圧力が加わった場合でも、十分に耐えられるだけの強度を有する材質から形成されている。また、マンホール蓋1にICタグユニット10が取り付けられる関係上、樹脂材料としては耐候性を有することも好ましい。かかる樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂を改質したASA(AAS)樹脂、ACS樹脂、AES樹脂、変性ポリフェニレンエーテル等があるが、これ以外の樹脂を用いても良い。
【0030】
また、
図3に示すように、ベース部30は、保護アンテナ部20よりも長手方向(X方向)の寸法が大きくなるように設けられている。このような寸法とすることで、
図6に示すような爪部23を設けることが容易となり、ICタグユニット10全体の強度を高めることが可能となっている。なお、
図4に示すように、ベース部30は、保護アンテナ部20よりも短手方向(Y方向)の寸法も大きくなるように形成しても良く、その場合には保護アンテナ部20がマンホール蓋1の表面1a側に接触するのを防止可能となり、電磁波の印加時に高周波電流がマンホール蓋1側に流れてしまう(共振を助長して感度を高くするブースターアンテナとしての機能を失う)のを防止可能となる。
【0031】
図7は、ベース部30のうちICタグ格納部31付近の構成を拡大して示す部分的な斜視図である。
図7に示すように、ベース部30には、ICタグ格納部31が設けられている。ICタグ格納部31は、ICタグ50を格納する部分である。
図7に示すように、本実施の形態では、ICタグ格納部31は説明のしやすい例として、ベース部30の側面に開口した差込穴形状に設けられている。そして、このICタグ格納部31にICタグ50を差し込み可能としている。なお、ICタグ格納部31は有底状の穴部分であっても良く、貫通孔であっても良い。また、ICタグ格納部31にICタグ50を差し込んだ後に樹脂を充填して、ICタグ50が樹脂で覆われた構成としても良い。
【0032】
また、ベース部30には、埋め込みボルト40の頭部41が埋め込まれている。頭部41は、ベース部30に完全に埋め込まれているものの、保護アンテナ部20には接触していない。そのため、保護アンテナ部20を流れる電流が埋め込みボルト40を流れてしまい共振しなくなる、という事態が生じるのを防止可能となっている。頭部41からは埋め込みボルト40のネジ部42が下方側に向かい延伸していて、そのネジ部42は、マンホール蓋1の貫通孔3bを挿通させられる。そして、ネジ部42に対して下方側からナット60を捻じ込むことで、ICタグユニット10がマンホール蓋1に固定される。
【0033】
なお、この固定に際しては、ナット60はナット取付穴4に収納される。また、ネジ部42の下端側は、ナット取付穴4から裏面1bに突出しない構成とすることが好ましい。
【0034】
次に、ICタグ50について説明する。
図8は、ICタグ50の構成を示す斜視図である。
図9は、ICタグ50の構成を示す側断面図である。
図8および
図9に示すように、ICタグ50は、本体部51と、ICインレット52(単にインレットともいう;ICチップ体に対応)とを有している。本体部51は、誘電性樹脂材料で形成された樹脂部51aを備え、この樹脂部51aによりICインレット52が覆われている。換言すると、ICインレット52は、樹脂部51aの内部に埋め込まれている。
【0035】
なお、樹脂部51aは、例えば、磁路の流れを良くするために、誘電性樹脂材料以外に、磁性体の粉末、または誘電体と磁性体の粉末の混合体などを用いるようにしても良い。
【0036】
また、ICインレット52は、ICタグ基板52aと、ICチップ52bと、コイルアンテナ52cとを備えている。ICタグ基板52aは、略矩形状をなす平板形状に形成されている。ICタグ基板52aとしては、たとえばPETを始めとした樹脂製のフィルムを用いることができる。かかるICタグ基板52aには、ICチップ52bと、コイルアンテナ52cとを有しているが、そのうちICチップ52bは、各種のデータを記憶する。また、コイルアンテナ52cは、電磁誘導方式の場合には、直近に配置する保護アンテナ20の表面に流れる高周波電流IAと電磁相互誘導によりコイルアンテナ52cに電流を生じさせるが、直近に高周波電流IAがない場合は、電波方式の動作として、コイルアンテナ52cが受信した電波に基づいて電流を生じさせる(電波の構成要素として電界と磁界が挙げられるが、
図8では電界の図示は省略し磁界(磁力線Φ)だけを表示していて、この磁力線Φが直接コイルアンテナ52cに作用している様子を示めしている)。
【0037】
かかるICタグ50がICタグ格納部31に差し込まれる場合、ICチップ52bと接続しているコイルアンテナ52cがなす平面がXZ平面とICタグ格納部31の入り口に相当する開口面とが平行になるように取り付けられる。
【0038】
<ブースターアンテナとして機能させる際の基本原理について>
次に、ICタグユニット10において、保護アンテナ部20をブースターアンテナとして機能させる際の基本原理について説明する。上述のような構成を有する構成においては、保護アンテナ部20は、共振を助長するブースターアンテナとして機能する。この点を詳述すると、RFID(Radio Frequency IDentification)通信における高周波の電磁波を保護アンテナ部20に当てると、保護アンテナ部20の表面には高周波電流IA(進行波)が流れる。この高周波電流IAの進行波と、保護アンテナ部20の端部等から反射して戻ってくる高周波電流IAの反射波とが干渉して定在波を形成する。この定在波の形成により、遠くまで届く電波放射を発生させ、通常のRFIDリーダ/ライタ装置で通信が可能となる。
【0039】
なお、保護アンテナ部20の長さMがRFID通信電波の波長の半分、すなわち半波長であるとき、定在波は1つとなり、半波長共振(定在波励振)となって感度が最大となる。このときRFID通信は最大飛距離を得ることになる。そのため、保護アンテナ部20が存在しない場合には数cmないしは数十cm程度までRFIDリーダ/ライタ装置を近接させないと通信を行えないが、適切な長さMに設定された保護アンテナ部20が存在することで、2〜3m離れた位置でもRFIDリーダ/ライタ装置と通信を行える。
【0040】
ところで、ICタグ50のコイルアンテナ52cには、高周波電流IAを変圧器の1次電流として相互誘導された2次電流IBが流れる。そのため、マンホール蓋1の表面1aの上空には、この2次電流IBによって誘導される高周波の磁力線Φも形成されるが、その磁力線Φは、
図10に示すように、コイルアンテナ52cのコイルが囲む面内を通り、また樹脂製のベース部30を通る閉ループを形成する。そして、この磁力線Φによっても、マンホール蓋1の表面1aに電流が流れ、その電流による進行波および反射波によっても、定在波が形成される状態となっている。
【0041】
<保護アンテナ部20の寸法設定について>
続いて、保護アンテナ部20の寸法設定について、以下に述べる。RFID通信においてICタグ50と通信を行うために用いられるUHF帯の電磁波の周波数は、空気中において約920MHzであることが多い。その場合、電磁波の半波長は約16cmとなり、かかる長さに保護アンテナ部20を設定することが考えられる。このとき、電磁気学で知られるように高周波電流の干渉による定在波の特徴として保護アンテナ部20の中央部において保護アンテナ部20の表面を流れる高周波電流の値が最大となると共に、その中央で最大の磁界となるものの、この中央部では電位が0となる。一方、両端部では電圧が最大となる。(周期的高周波電流の時間変変化において、ある一瞬、一端側がプラスの最大電圧となり他端側がマイナスの最大電圧となる。さらに次の半周期の時間ではそれぞれの電圧が逆転する。このため保護アンテナ部20の中央部は常に電位が0で、電流が最大となりそれによる磁界も最大になる。)。
【0042】
ところで、本実施の形態のように、劣悪環境で耐えるために誘電体性の衝撃に強い樹脂製のベース部30を介して、保護アンテナ部20とICタグ50とがマンホール蓋1に固定される場合、保護アンテナ部20の長さMは、保護アンテナ部20の幅Wが無視できるような小さな値の場合には、式(1)となる。
式(1)… M=(λ/2)・(1/√ε)
ここで、λは空気中のRFIDの通信電磁波の波長であり、λ/2はその半波長である。また、εは、誘電体から形成されるベース部30の媒質定数の比誘電率である。なお、ベース部30と底部3aとの間には僅かながら空気層が存在する等により、ベース部30の媒質定数における共振条件からずれてしまう。このずれは空気層の厚みに依存するが一般的には空気の比誘電率がほぼ1.0であるため実質的な媒質定数の比誘電率εは1の方向、つまり低い方向にずれ、式(1)の長さMは長い方向にずれる。
【0043】
しかし、ブースターアンテナとして機能する部分が細線状のものであれば幅Wは無視できるものの、本実施の形態における保護アンテナ部20の幅Wは路面の様々な衝撃に耐久するため、無視できるような大きさではない。その場合、保護アンテナ部20にて共振するための長さMは、幅Wを加味して、
図11のようなモデルにて、式(2)にて求められる。
式(2)… W/2+W/2+M≧(λ/2)・(1/√ε)
この式(2)から、
式(3)… M≧(λ/2)・(1/√ε)−W
ただし、この式(2)、(3)では、M>Wであることが必要である。
【0044】
なお、式(2)、(3)は、最適な共振を生じさせるための長さMを求めるための、経験的に求められた簡易的な式である。ただし、長さMが幅Wに対して十分に長い場合には、式(1)を用いても良い。
【0045】
ここで、λ/2=16cm、W=3cm、ε=3とすると、M≧6.2cmとなる。しかし、実際に組み立てる場合、樹脂製のベース部30やICタグ50等の接触部分や境界面には、僅かながら空気層が存在している。そのため、実質的な比誘電率は上記の数値から異なってくる。また、RFIDの通信電磁波の周波数も、所定の幅を持った帯域となっている。そのため、長さMは、上記の数値ではなく、概略的な寸法としても良い場合が多い。
【0046】
また一方で、保護アンテナ部20は、電磁波の共振を生じさせるブースターアンテナとしての機能のみならず、外部からの衝撃に耐える(耐衝撃性を有する)程度の厚みを備えており、ICタグ50を保護するガード板としての機能をも有している。そのようなガード板の機能をも考慮すると、保護アンテナ部20の長さMは、上記の値よりも若干大きい寸法とするのが好ましい。
【0047】
なお、上記のように保護アンテナ部20の長さMを設定した場合に、実用的な感度に過不足が生じた場合、ICタグ50と通信を行うICカードリーダの通信電波強度を調節することで、上記の感度不良を補うことができ、もってICタグ50との通信の際の実用的な距離を補うことができる。そのため、長さMの精度は±10%以内であれば、十分実用的であるが、±20%程度であっても良い。なお、長さMが若干大きい方が好ましいことを考慮すると、長さMの一例としては、たとえば6.2cm≦M≦7.4cmと設定するものがある。
【0048】
また、ICタグユニット10の厚みをTとすると、その厚みTは、保護アンテナ部20の厚みT1とベース部30の厚みT2との合計となる。ここで、保護アンテナ部20の厚みT1は、マンホール蓋1における摩耗限度を考慮した厚みに設定される。たとえば、厚みT1は摩耗限度そのものに設定しても良く、若干の余裕を持たせた寸法に設定しても良い。また、ベース部30の厚みT2は、水などの侵入からICタグ50を保護するため、ICタグ50の周囲を取り囲む構成とすることが好ましい。そのような厚みT2としては、たとえば4mmとするものがある。
【0049】
<効果について>
以上のような構成のICタグユニット10では、金属から形成され、外部からの衝撃に耐える耐衝撃性を備える程度の厚みを有する保護アンテナ部20を備えており、さらに樹脂を材料として形成され、保護アンテナ部20を支持すると共に、ICタグ50を格納するベース部30とを備えている。このため、ICタグユニット10の耐衝撃性を向上させることができる。
【0050】
そのため、ICタグユニット10の保護アンテナ部20側がマンホール蓋1の取付凹部3から外部に露出する状態で配置され、そのICタグユニット10に対して車両が通過した場合のタイヤ等から衝撃を受けたり、土砂が大量に積もる等したときに衝撃を受けても、十分な耐衝撃性を備えさせることができる。また、耐衝撃性を備えると共に強度も向上させることができる。
【0051】
また、本実施の形態では、保護アンテナ部20においては、RFID通信を行う際に共振を生じさせることができ、保護アンテナ部20をブースターアンテナとして機能させることができる。それにより、ICタグユニット10の感度を向上させることができ、RFID通信における放射電磁波の飛距離を増大させることができる。それにより、RFIDリーダ/ライタ装置の位置を従来よりも離すことができ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0052】
また、本実施の形態では、ベース部30には一対の埋め込みボルト40が一体的に取り付けられている。また、一対の埋め込みボルト40は、その頭部41側がベース部30に埋設される状態で、かつベース部30の長手方向(X方向)において中央から離間した位置にそれぞれ取り付けられている。加えて、一対の埋め込みボルト40のそれぞれのネジ部42は、取付凹部3の底部3aを貫通する貫通孔3bに挿通され、その埋め込みボルト40の他端側(Z2側)からナット60を捻じ込むことで、マンホール蓋1にICタグユニット10が固定される。このような固定手法を採用する場合、ベース部30と一体化された一対の埋め込みボルト40が互いに離れており、しかもナット60を介してマンホール蓋1に締結固定されるので、強固な固定を実現可能となる。
【0053】
さらに、本実施の形態では、ベース部30の長手方向(X方向)の寸法は、保護アンテナ部20の長手方向(X方向)の寸法よりも大きく設けられていると共に、その保護アンテナ部20の端部側側には、ベース部30に食い込む爪部23が設けられている構成を採用することもできる。このように構成する場合、保護アンテナ部20がベース部30から剥がれてしまうのを防止可能となる。それにより、ICタグユニット10の強度を一層向上させることが可能となる。また、ICタグユニット10の寿命を延ばすことも可能となる。
【0054】
また、本実施の形態では、保護アンテナ部20は、ICタグ50と通信を行う電磁波により生じる高周波電流に共振を生じさせる寸法に設定されている。そのため、保護アンテナ部20は、ブースターアンテナとして良好に機能させることができる。
【0055】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0056】
上述の実施の形態においては、ICタグユニット10は、マンホール蓋1に取り付けられるマンホール蓋用ICタグユニットとして説明している。しかしながら、ICタグユニット10は、マンホール蓋1以外に取り付けられるものであっても良い。マンホール蓋1以外のものとしては、たとえば路面に設置される消火栓用の蓋、各種の弁を格納する部位の蓋、測量杭や鋲等、種々のものが挙げられる。
【0057】
また、上述の実施の形態においては、RFID通信にて用いられるUHF帯の周波数として920MHzが挙げられている。しかしながら、RFID通信にて用いられるUHF帯の周波数としては、たとえば860MHzから960MHzの帯域であれば、どのような周波数であっても良い。また、RFID通信にて用いられる周波数としては、UHF帯の周波数には限られず、2.45GHzを中心とする周波数であっても良く、433MHzを中心とする周波数であっても良く、その他の周波数であっても良い。
【0058】
さらに、上述の実施の形態では、ネジ部材として頭部41をベース部30に埋め込んだ埋め込みボルト40が用いられている。しかしながら、ネジ部材としては、その他のネジやナットを用いても良い。なお、ベース部30にナットを埋め込んで、ナット取付穴4側からネジやボルトを捻じ込む構成を採用することも可能である。