(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記薄膜が、感光性組成物からなる感光性組成物膜を露光及び現像して形成される、厚さ方向に貫通する複数の孔部を有する樹脂膜である、請求項1に記載のメンブレンフィルター。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪メンブレンフィルター≫
本発明にかかるメンブレンフィルターは、薄膜と、前記薄膜を支持する支持膜とが積層されたメンブレンフィルターである。薄膜の膜厚は1〜1000nmである。支持膜は、感光性組成物からなる感光性組成物膜を露光及び現像して形成される、厚さ方向に貫通する複数の孔部を有する、膜厚1〜1000μmの多孔膜である。以下、薄膜、及び支持膜について、厚さ方向に貫通する孔部を貫通孔とも記す。薄膜及び支持膜は、樹脂溶液や液状の感光性組成物の塗布によって容易に形成可能であるため、本発明にかかるメンブレンフィルターは大面積化が容易である。以下、薄膜及び支持膜について順に説明する。
【0013】
<薄膜>
薄膜の膜厚は、1〜1000nmである。薄膜の強度と、メンブレンフィルターの良好な透過性とを両立しやすいことから、薄膜の厚さは、5〜1000nmが好ましい。薄膜は極めて薄いため、貫通孔や空孔を有さない場合でも、気体や液体を構成する種々の分子を、薄膜を構成する材料の分子間に形成される空隙のサイズに応じて透過させる。
【0014】
薄膜には、必要に応じて、厚さ方向に貫通する複数の孔部が形成されていてもよい。この場合、感光性組成物からなる感光性組成物膜を露光及び現像して、前述の孔部を有する薄膜を形成するのが好ましい。薄膜中に複数の貫通孔を形成することにより、貫通孔を備えない薄膜を透過できない、ある程度大きなサイズの物質のメンブレンフィルターの透過が可能である。薄膜が貫通孔を有する場合、例えば、貫通孔のサイズより大きな粒子を含む液体を、メンブレンフィルターを用いて、粒子と液体とに効率よく分離できる。
【0015】
また、感光性組成物膜を露光及び現像して孔部を有する薄膜を形成する場合、開口径が精密にコントロールされた孔部を有する薄膜を形成可能であり、これにより、メンブレンフィルターを用いて精密なろ過を行うことができる。
【0016】
薄膜を形成するための材料は特に限定されず、有機材料であっても無機材料であってもよい。加工性や可撓性に優れることから、典型的には、高分子材料であるのが好ましい。例えば、種々の樹脂の溶液や、熱硬化性組成物や、感光性組成物が挙げられる。感光性組成物としては、露光部が現像液に対して可溶化するポジ型のものと、露光部が現像液に対して不溶化するネガ型のものとがあるが、両者とも薄膜の形成に用いることができる。薄膜を形成するための材料としては、強度に優れる薄膜を形成できる点で、加熱により硬化する熱硬化性組成物、及び露光により硬化するネガ型の感光性組成物が好ましい。これらの硬化性の組成物の中では、短時間で薄膜を形成できることから露光により硬化するネガ型の感光性組成物が好ましい。
【0017】
熱硬化性組成物の組成は、所望の膜厚の薄膜を形成できれば特に限定されない。好ましい熱硬化性組成物としては、例えば、エポキシ化合物と、エポキシ化合物を熱硬化させる硬化剤とを含む液状の組成物等が挙げられる。露光により硬化するネガ型の感光性組成物の好適な例としてはエポキシ化合物と、感光性の硬化剤とを含む組成物や、アルカリ可溶性樹脂と、不飽和二重結合を有する光重合性化合物と、光重合開始剤とを含む組成物等が挙げられる。
【0018】
薄膜が複数の貫通孔を有する場合、貫通孔の両端に相当する薄膜の表面の開口部の形状は、特に限定されない。当該開口部の形状の例としては、三角形(例えば正三角形)、四角形(例えば正方形)、及び六角形(例えば正六角形)のような多角形や、円形、楕円形等が挙げられる。当該開口部の形状としては所望するサイズの物質の透過を阻害しにくい点と、所望するサイズよりも大きな物質の透過を阻止しやすい点とから、円形が好ましい。なお、上記の正三角形、正方形、正六角形、円形、及び楕円形等は、目視でこれらの形状と認識できるものであればよく、幾何学的に定義されるこれらの形状に限定されない。
【0019】
貫通孔の開口部の平均径は特に限定されず、分離対象物のサイズに応じて適宜決定される。典型的には、開口部の平均径は、1nm〜100μmが好ましく、5nm〜50μmがより好ましく、10nm〜20μmが特に好ましい。なお、開口部の平均径は、開口部の面積に基づいて算出される円相当径である。
【0020】
なお、薄膜には、異なる2種以上の形状の開口部を有する貫通孔が形成されてもよく、異なる2以上のサイズの開口部を有する貫通孔が形成されてもよい。
【0021】
<支持膜>
支持膜は、感光性組成物からなる感光性組成物膜を露光及び現像して形成される、厚さ方向に貫通する複数の孔部を有する、膜厚1〜1000μmの多孔膜である。支持膜の強度と、メンブレンフィルターの良好な透過性とを両立しやすいことから、支持膜の厚さは、5〜1000μmが好ましい。
【0022】
支持膜は、薄膜と比較して厚く、且つ、多数の貫通孔を有する。このため、薄膜と支持膜とが積層されたメンブレンフィルターは、メンブレンフィルターに供給される気体又は液体を良好に透過させつつ、メンブレンフィルターのハンドリング時に加わる力や、気体又は液体を透過させる際にメンブレンフィルターにかかる圧力によっても、破損しにくい。
【0023】
支持膜を形成するための感光性組成物としては、露光部が現像液に対して可溶化するポジ型のものと、露光部が現像液に対して不溶化するネガ型のものとのいずれも用いることができる。支持膜を形成するための材料としては、強度に優れる支持膜を形成できる点で、露光により硬化するネガ型の感光性組成物が好ましい。ネガ型の感光性組成物の好適な例としては、薄膜を形成するための材料と同様のものが挙げられる。
【0024】
支持膜は複数の貫通孔を有する。貫通孔の両端に相当する支持膜の表面の開口部の形状は、特に限定されない。当該開口部の形状の例としては、薄膜が有していてもよい貫通孔の開口部の形状と同様である。
【0025】
貫通孔の開口部の平均径は特に限定されず、分離対象物のサイズ、薄膜の強度及びフィルター全体の使用面積に応じて、適宜決定される。
【0026】
なお、支持膜には、異なる2種以上の形状の開口部を有する貫通孔が形成されてもよく、異なる2以上のサイズの開口部を有する貫通孔が形成されてもよい。
【0027】
≪メンブレンフィルターの製造方法≫
メンブレンフィルターの製造方法は、それぞれ所定の構成を備える薄膜と支持膜とを積層できる方法であれば特に限定されない。以下、メンブレンフィルターの好ましい製造方法について、第一の方法、第二の方法、及び第三の方法について説明する。
【0028】
<第一の方法>
本発明にかかるメンブレンフィルターの製造方法のうち、薄膜14が貫通孔を有さない場合の好ましい方法としては、基板10上に薄膜14を形成した後に、薄膜14上に感光性組成物の厚膜(以下、感光性組成物厚膜15とも記す)を形成し、形成された感光性組成物厚膜15に対して露光及び現像を行って支持膜19を形成する方法が挙げられる。この方法を、メンブレンフィルター21の好ましい製造方法のうちの第一の方法と称する。
【0029】
薄膜14を形成するための材料としては、強度に優れる薄膜14を形成できる点で、加熱により硬化する熱硬化性組成物、及び露光により硬化するネガ型の感光性組成物が好ましい。これらの硬化性の組成物の中では、短時間で薄膜14を形成できることから露光により硬化するネガ型の感光性組成物が好ましい。
【0030】
また、薄膜14上に支持膜19を積層して形成されたメンブレンフィルターの基板10からの剥離が容易であることから、薄膜14は、液体に溶解する材料からなる犠牲膜11を介して基板10上に形成されるのが好ましい。
【0031】
以下、第一の方法の中でも好ましい、露光により硬化するネガ型の感光性組成物を用いて、基板10上に犠牲膜11を介して薄膜14を形成する工程を含む方法について、
図1を参照しながら説明する。
【0032】
まず、
図1(a)に示されるように、基板10上に、犠牲膜11が形成される。ここで基板10の材質は、感光性組成物に含まれる有機溶剤や、犠牲膜11を溶解させるための液体に侵されたり、溶解したりしないものであれば特に限定されない。基板10の材質としては、シリコン、ガラス、PETフィルム等が挙げられる。
【0033】
犠牲膜11の形成方法は特に限定されないが、犠牲膜形成用の塗布液を基板10上に塗布する方法が好ましい。液状の犠牲膜形成用の材料を基板10上に塗布する方法としては、例えば、ロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いる方法が挙げられる。塗布後に形成された塗布膜を加熱等の方法により乾燥させることで、犠牲膜11が形成される。犠牲膜11の膜厚は特に限定されないが、犠牲膜11を速やかに溶解させる観点から、0.1〜100μmが好ましく、0.5〜50μmがより好ましい。
【0034】
犠牲膜11の材料としては、ポリビニルアルコール樹脂、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びアルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの材料は、同種の液体に可溶な複数の材料の組み合わせであってもよい。犠牲膜11の強度や柔軟性の観点から、犠牲膜11の材料は、マンナン、キサンタンガム、及びグアーガム等のゴム成分を含んでいてもよい。
【0035】
以上説明した、犠牲膜11の材料を、犠牲膜11が可溶な液体に溶解させて、犠牲膜形成用の塗布液が調製される。犠牲膜11を溶解させる液体は、薄膜14と、支持膜19とを、劣化又は溶解させない液体であれば特に限定されない。犠牲膜11を溶解させる液体の例としては、水、酸性又は塩基性の水溶液、有機溶剤、及び有機溶剤の水溶液が挙げられ、これらの中では、水、酸性又は塩基性の水溶液、及び有機溶剤が好ましい。
【0036】
犠牲膜11材料を溶解させる液体の好適な例としては、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、ラクトン類、ケトン類、多価アルコール類、環式エーテル類及びエステル類の有機溶媒、芳香族系有機溶媒、アルコール系溶媒、テルペン系溶媒、炭化水素系溶媒、石油系溶媒等が挙げられる。これら有機溶媒は、一種類のみを用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
ラクトン類の有機溶媒としては、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、ケトン類の有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、又は2−ヘプタノン等が挙げられ、多価アルコール類の有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、又はジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0038】
多価アルコール類の有機溶媒としては、多価アルコールの誘導体であってもよく、例えば、エステル結合(エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等)を有する化合物、又はエーテル結合(上記多価アルコール類又は上記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、又はモノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル)を有する化合物等が挙げられ、これらのうちプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい。
【0039】
環式エーテル類の有機溶媒としては、ジオキサン等が挙げられ、エステル類の有機溶媒としては、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、又はエトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。
【0040】
芳香族系有機溶媒としては、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、又はメシチレン等が挙げられる。
【0041】
アルコール系溶媒としては、犠牲膜11を溶解することができれば特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0042】
テルペン系溶媒としては、例えば、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー等が挙げられる。
【0043】
炭化水素系溶媒としては、直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素が挙げられる。当該炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の炭素数3から15の直鎖状の炭化水素;メチルオクタン等の炭素数4から15の分岐状の炭化水素;p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、α−ピネン、β−ピネン、α−ツジョン、β−ツジョン等の環状の炭化水素が挙げられる。
【0044】
また、石油系溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、テトラヒドロナフタレン(テトラリン)等が挙げられる。
【0045】
次いで、
図1(b)に示されるように、上記のようにして形成された犠牲膜11の表面に、液状のネガ型の感光性組成物を塗布して、感光性組成物薄膜12が形成される。ネガ型の感光性組成物を犠牲膜11の表面に塗布する方法は、犠牲膜形成用の塗布液を基板10の表面に塗布する方法と同様である。感光性組成物薄膜12の膜厚は、膜厚1〜1000nmの薄膜14が形成されるように適宜調整される。
【0046】
図1(c)に示されるように、感光性組成物薄膜12に対して露光光13を照射することで感光性組成物薄膜12が硬化し、薄膜14が形成される。感光性組成物薄膜12を露光する方法は特に限定されず、光硬化性の感光性組成物を硬化させる周知の方法により露光が行われる。
【0047】
基板10がガラス基板のように透明な材質からなる場合、感光性組成物薄膜12の露光は、基板10の犠牲膜11及び感光性組成物薄膜12が形成されている面と反対側の面から行うこともできる。
【0048】
薄膜14の形成後、
図1(d)に示されるように、薄膜14上に感光性組成物厚膜15が形成される。感光性組成物厚膜15は、液状の感光性組成物を薄膜14上に塗布して形成するのが好ましい。感光性組成物を薄膜14の表面に塗布する方法は、犠牲膜形成用の塗布液を基板10の表面に塗布する方法と同様である。感光性組成物厚膜15の膜厚は、膜厚1〜1000μmの支持膜19が形成されるように適宜調整される。
【0049】
次いで、感光性組成物厚膜15を、位置選択的に露光した後に現像して、多孔膜である支持膜19が形成される。
図1(e)では、感光性組成物厚膜15が露光により硬化するネガ型の感光性組成物を用いて形成された場合について示されている。感光性組成物厚膜15の表面を位置選択的に露光する方法は特に限定されず、レーザー等による描画法、遮光性のマスクを介して露光を行う方法等が挙げられる。
図1(e)に示されるように、このような方法により、感光性組成物厚膜15の表面に露光光13が位置選択的に照射されることにより、感光性組成物厚膜15中に、露光部16と未露光部17が形成される。
【0050】
基板10がガラス基板のように透明な材質からなる場合、感光性組成物厚膜15の露光も、基板10の犠牲膜11及び薄膜14が形成されている面と反対側の面から行うこともできる。
【0051】
図1(f)及び
図1(g)に示されるように、露光された感光性組成物厚膜15を現像液18と接触させて現像することによって、未露光部17が溶解除去され支持膜19が形成される。このようにして、支持膜19が形成されることで、基板10上に、薄膜14と支持膜19とが積層されたメンブレンフィルター21が形成される。
【0052】
現像液18は、感光性組成物の種類に応じて適宜選択される。典型的には、有機溶剤からなる現像液や、アルカリ現像液が好ましく使用される。
【0053】
現像液18として使用される有機溶剤としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、及びアミド系溶剤等の極性溶剤と、炭化水素系溶剤とが挙げられる。
【0054】
アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液をアルカリ現像液として使用することもできる。
【0055】
現像時間は、感光性組成物厚膜15の組成や膜厚等によっても異なるが、通常1〜30分間である。現像方法は、公知の方法から選択すればよく、液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法等のいずれでもよい。
【0056】
図1(h)に示されるように、このようにして形成されたメンブレンフィルター21を備える基板10を、犠牲膜11を溶解させる溶解液20に接触させて、犠牲膜11を溶解させることで、基板10の表面からメンブレンフィルター21を剥離させることができる。
【0057】
犠牲膜11を溶解させる方法は特に限定されないが、
図1(h)に示されるように、溶解液20が張り込まれた容器に、犠牲膜11とメンブレンフィルター21とを備える基板10を浸漬させる方法好ましい。
【0058】
犠牲膜11を溶解させる溶解液20としては、前述の犠牲膜11の材料を溶解させることができる種々の液体を用いることができる。
【0059】
このようにして基板10から剥離されたメンブレンフィルター21は、溶解液から引き上げられたのち、必要に応じて、イオン交換水等によるリンスや、乾燥を施された後、種々の用途に使用される。
【0060】
<第二の方法>
本発明にかかるメンブレンフィルターの製造方法のうち、薄膜14が貫通孔を有さない場合の第一の方法と異なる好ましい方法としては、基板10上に形成された薄膜14を、薄膜14を備える基板10とは別の基板10上に形成された支持膜19の表面に接着する方法が挙げられる。この方法を、メンブレンフィルター21の好ましい製造方法のうちの第二の方法と称する。
【0061】
第一の方法と同様に、薄膜14を形成するための材料としては、強度に優れる薄膜14を形成できる点で、加熱により硬化する熱硬化性組成物、及び露光により硬化するネガ型の感光性組成物が好ましい。これらの硬化性の組成物の中では、短時間で薄膜14を形成できることから露光により硬化するネガ型の感光性組成物が好ましい。
【0062】
第二の方法では、二つの基板10の間に、薄膜14と支持膜19とが積層されたメンブレンフィルター21が形成される。メンブレンフィルター21は二つの基板10から剥離された状態で使用される。このため、メンブレンフィルター21からの二つの基板10の剥離が容易であることから薄膜14と支持膜19とは、それぞれ犠牲膜11を介して基板10上に形成されるのが好ましい。
【0063】
以下、第二の方法の中でも好ましい、露光により硬化するネガ型の感光性組成物を用いて、基板10上に犠牲膜11を介して形成された薄膜14を、基板10上に犠牲膜11を介して形成された支持膜19に接着する工程を含む方法について、
図2を参照しながら説明する。
【0064】
第二の方法では、まず、
図2(a)に示されるように、基板10上に犠牲膜11を介して形成された薄膜14と、基板10上に犠牲膜11を介して形成された支持膜19とを準備する。薄膜14の形成方法は、第一の方法と同様である。また、支持膜19の形成方法は、薄膜14上ではなく犠牲膜11上に感光性組成物厚膜15を形成することの他は第一の方法と同様である。
【0065】
次いで、基板10上に犠牲膜11を介して形成された薄膜14と、基板10上に犠牲膜11を介して形成された支持膜19とを、薄膜14と、支持膜19とが対向するように配置させた後、支持膜19と薄膜14とを接着させる。支持膜19と薄膜14とを接着させる方法としては、ラミネート(熱圧着)や、物理吸着、硬化性化合物等の接着剤を接着層として使用する方法等が挙げられる。例えば、少なくとも一方の基板10に、ロール等を用いて、支持膜19又は薄膜14が破損しない程度の圧力を加えることによって、支持膜19と薄膜14とを接着してもよい。このような接着操作を経て、
図2(b)に示されるように、二つの基板10の間に、薄膜14と支持膜19とが積層されたメンブレンフィルター21が形成される。
【0066】
図2(c)に示されるように、上記のようにして二つの基板10の間に形成されたメンブレンフィルター21を、犠牲膜11を溶解させる溶解液20に接触させて、犠牲膜11を溶解させることで、二つの基板10の表面からメンブレンフィルター21を剥離させることができる。
【0067】
犠牲膜11を溶解させる方法は特に限定されないが、
図1(h)に示されるように、溶解液20が張り込まれた容器に、犠牲膜11とメンブレンフィルター21とを備える基板10を浸漬させる方法好ましい。この際、犠牲膜11が溶解した後に、基板10の自重によって、剥離したメンブレンフィルター21に皺や傷が生じる場合がある。このため、犠牲膜11を溶解させる際には、溶解液20の液面側の基板10を溶解液20中で自由に移動しないように固定するか、二つの基板10の双方を溶解液20中で自由に移動しないように固定するのが好ましい。
【0068】
犠牲膜11を溶解させる溶解液19としては、前述の犠牲膜11の材料を溶解させることができる種々の液体を用いることができる。
【0069】
このようにして二つの基板10から剥離されたメンブレンフィルター21は、溶解液20から引き上げられたのち、必要に応じて、イオン交換水等によるリンスや、乾燥を施された後、種々の用途に使用される。
【0070】
<第三の方法>
本発明にかかるメンブレンフィルターの製造方法のうち、薄膜14が貫通孔を有する場合の好ましい方法としては、基板10上に形成された貫通孔を有する薄膜14を、薄膜14を備える基板10とは別の基板10上に形成された支持膜19の表面に接着する方法が挙げられる。この方法を、メンブレンフィルター21の好ましい製造方法のうちの第三の方法と称する。
【0071】
薄膜14を形成するための材料としては、貫通孔を形成するために、感光性組成物が使用される。感光性組成物薄膜12に対して露光及び現像を行うことにより、強度に優れ、貫通孔を備える薄膜14を形成できる点で、薄膜14を形成するための材料としては、露光により硬化するネガ型の感光性組成物が好ましい。
【0072】
第三の方法では、二つの基板10の間に、薄膜14と支持膜19とが積層されたメンブレンフィルター21が形成される。メンブレンフィルター21は二つの基板10から剥離された状態で使用される。このため、メンブレンフィルター21からの二つの基板10の剥離が容易であることから薄膜14と支持膜19とは、それぞれ犠牲膜11を介して基板10上に形成されるのが好ましい。
【0073】
以下、第三の方法の中でも好ましい、露光により硬化するネガ型の感光性組成物を用いて、基板10上に犠牲膜11を介して形成された貫通孔を有する薄膜14を、基板10上に犠牲膜11を介して形成された支持膜19に接着する工程を含む方法について、
図3を参照しながら説明する。
【0074】
最初に、貫通孔を備える薄膜14の形成方法について説明する。貫通孔を備える薄膜14を形成する場合、まず、
図3(a)に示されるように、基板10上に形成された犠牲膜11の表面に感光性組成物薄膜12を、第一の方法と同様にして形成する。
【0075】
次いで、
図3(b)に示されるように、感光性組成物薄膜12を位置選択的に露光する。かかる露光により、感光性組成物薄膜12中に、露光部16と未露光部17が形成される。露光方法は、第一の方法における感光性組成物厚膜15に対する露光の方法と同様である。
【0076】
図3(c)及び
図3(d)に示されるように、露光された感光性組成物薄膜12を現像液18と接触させて現像することによって、未露光部17が溶解除去され貫通孔を有する薄膜14が形成される。
【0077】
図3(d)に示されるように、以上説明した貫通孔を有する薄膜14と別に、第二の方法と同様にして、基板10上に犠牲膜11を介して形成された支持膜19を準備する。
【0078】
次いで、基板10上に犠牲膜11を介して形成された貫通孔を有する薄膜14と、基板10上に犠牲膜11を介して形成された支持膜19とを、薄膜14と、支持膜19とが対向するように配置させた後、支持膜19と薄膜14とが圧着されるように、少なくとも一方の基板10に外力を印加する。そうすることで、
図3(e)に示されるように、二つの基板10の間に、貫通孔を有する薄膜14と支持膜19とが積層されたメンブレンフィルター21が形成される。
【0079】
図3(f)に示されるように、第二の方法と同様の方法により、二つの基板10の間に形成されたメンブレンフィルター21を、犠牲膜11を溶解させる溶解液20に接触させて、犠牲膜11を溶解させることで、二つの基板10の表面からメンブレンフィルター21を剥離させることができる。
【0080】
このようにして二つの基板10から剥離されたメンブレンフィルター21は、溶解液20から引き上げられたのち、必要に応じて、イオン交換水等によるリンスや、乾燥を施された後、種々の用途に使用される。
【0081】
<第一の方法の変形例>
以下、第一の方法の変形例について、
図4を参照しながら説明する。第三の方法によれば、貫通孔を備える薄膜と、貫通孔を備える支持膜とが積層されたメンブレンフィルターを製造するために、2枚の基板が必要であった。しかし、第一の方法の変形例によれば、一枚の基板のみを用いて、貫通孔を備える薄膜と、貫通孔を備える支持膜とが積層されたメンブレンフィルターを製造することができる。
【0082】
具体的には、まず、
図4(a)に示されるように、基板10上に形成された犠牲膜11の表面に感光性組成物薄膜12を、第一の方法と同様にして形成する。
【0083】
次いで、
図4(b)に示されるように、感光性組成物薄膜12を位置選択的に露光する。かかる露光により、感光性組成物薄膜12中に、露光部16と未露光部17が形成される。露光方法は、第一の方法における感光性組成物厚膜15に対する露光の方法と同様である。
【0084】
図4(c)及び
図4(d)に示されるように、露光された感光性組成物薄膜12を現像液18と接触させて現像することによって、未露光部17が溶解除去され貫通孔を有する薄膜14が形成される。
【0085】
貫通孔を有する薄膜14を形成した後、
図4(e)に示されるように、薄膜14上に感光性組成物厚膜15を形成する。この時、薄膜14中の貫通孔に感光性組成物が充填されるように、感光性組成物厚膜15が形成される。感光性組成物厚膜15は、第一の方法と同様に形成される。
なお、薄膜14の貫通孔に充填された感光性組成物は、露光された感光性組成物厚膜15を現像液18により現像する際に、現像液18に溶解して除去される。このため、感光性組成物厚膜15を形成する際に、薄膜14中の貫通孔に、必ずしも感光性組成物が完全に充填される必要はない。
【0086】
次いで、
図4(f)及び
図4(g)に示されるように、感光性組成物厚膜15を、位置選択的に露光した後に現像して、多孔膜である支持膜19が形成される。
なお、本変形例においては、薄膜14の貫通孔に充填された感光性組成物が完全に露光されるように、感光性組成物厚膜15が位置選択的に露光される。そうすることで、露光された感光性組成物厚膜15を現像液18により現像する際に、薄膜14中の貫通孔に充填された感光性組成物が、感光性組成物厚膜15中に形成された露光部16とともに現像液18中に溶解する。
【0087】
以上の現像操作を経て、
図4(h)に示されるように、貫通孔を有する薄膜14と、貫通孔を有する支持膜19とが積層されたメンブレンフィルター21を、犠牲膜11を介して備える基板10が得られる。
【0088】
図4(i)に示されるように、このようにして形成されたメンブレンフィルター21を備える基板10を、犠牲膜11を溶解させる溶解液20に接触させて、犠牲膜11を溶解させることで、基板10の表面からメンブレンフィルター21を剥離させることができる。
【0089】
このようにして基板10から剥離されたメンブレンフィルター21は、溶解液20から引き上げられたのち、必要に応じて、イオン交換水等によるリンスや、乾燥を施された後、種々の用途に使用される。
【実施例】
【0090】
〔実施例〕
ガラス製の基板上に、水添型スチレン−イソプレン共重合体である下記構造の熱可塑性エラストマーをデカヒドロナフタリンに溶解させた溶液(固形分濃度10質量%)を塗布した後、90℃5分、及び120℃5分の条件でベークを行い、膜厚1.5μmの犠牲膜を形成した。
【0091】
<水添型スチレン−イソプレン共重合体>
【化1】
【0092】
次いで、犠牲膜上に、下記構造のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂100質量部と、下記構造の光酸発生剤3質量部とを固形分濃度が7質量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させたネガ型感光性組成物を塗布した。その後、90℃3分間でのベークと、露光量100mJ/cm
2でのghi線による露光と、120℃5分間でのベークとをこの順で行い、膜厚100nmの薄膜を形成した。
【0093】
<クレゾールノボラック型エポキシ樹脂>
【化2】
(nは、括弧内の繰り返し単位の繰り返し数を表す。)
【0094】
<光酸発生剤>
【化3】
【0095】
形成された薄膜上に、下記構造のフェノールノボラック型エポキシ樹脂50質量部と、下記構造のビスフェノールA型エポキシ樹脂50質量部と、上記式の光酸発生剤3質量部とを固形分濃度が50質量%となるようにPGMEAに溶解させたネガ型感光性組成物を塗布した。その後、90℃3分間でのベークと、露光量200mJ/cm
2でのghi線による露光と、90℃5分とのベークとをこの順で行った。なお、露光は、孔径10μmの円形のホールがピッチ(ホールの中心間距離)50μmで形成されるように、マスクを介して位置選択的に行われた。 露光後に、基板をPGMEAに1分間浸漬して現像を行い、上記の径及びピッチの円形の開口部を有するホールを備える膜厚10μmの支持膜を形成した。
【0096】
<フェノールノボラック型エポキシ樹脂>
【化4】
【0097】
<ビスフェノールA型エポキシ樹脂>
【化5】
【0098】
次いで、薄膜と支持膜とが積層されたメンブレンフィルターを備える基板を、p−メンタンに、室温で1時間浸漬して、犠牲膜を溶解させ、基板からメンブレンフィルターを剥離させた。剥離したメンブレンフィルターを、回収した後、イオン交換水でリンスした後に、乾燥させた。
【0099】
得られたメンブレンフィルターを治具に固定し、窒素ガスをメンブレンフィルターの両側の圧力差が0.05MPaとなる条件で、メンブレンフィルターの支持膜側から供給したところ、100ml/分の窒素流量が確認された。また、窒素流量の確認試験後にメンブレンフィルターの破損は確認されず、実施例1で得られたメンブレンフィルターは強度に優れることが分かる。
【0100】
〔比較例〕
薄膜の膜厚を1500nmとすることの他は、実施例と同様にしてメンブレンフィルターを得た。得られたメンブレンフィルターについて、実施例と同様に、差圧0.05MPaを与えた場合の窒素流量を確認したところ、窒素流量は0ml/分であった。つまり、比較例のメンブレンフィルターは、差圧0.05MPaにおいて窒素を透過させなかった。