特許第6359906号(P6359906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6359906フルオロマロン酸エステル誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359906
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】フルオロマロン酸エステル誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/307 20060101AFI20180709BHJP
   C07C 69/63 20060101ALI20180709BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180709BHJP
【FI】
   C07C67/307
   C07C69/63
   !C07B61/00 300
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-150879(P2014-150879)
(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公開番号】特開2016-23178(P2016-23178A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】柴田 哲男
(72)【発明者】
【氏名】香川 巧
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−091331(JP,A)
【文献】 特表平08−512286(JP,A)
【文献】 特開平09−227531(JP,A)
【文献】 国際公開第96/008502(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/148903(WO,A1)
【文献】 Synlett,2013年,24(3),p.375-378
【文献】 Angewandte Chemie,International Edition,2008年,47(1),p.164-168
【文献】 Chemical Communications,2014年 6月 9日,50(58),p.7870-7873
【文献】 Beilstein Journal of organic Chemistry,2011年,7,p.1421-1435
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/00
C07C 69/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中、R及びRは各々独立して、メチル基、エチル基、炭素数3〜4の直鎖、分岐若しくは環式のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示し、Rは水素原子を示す)
で表されるマロン酸エステル誘導体を、テトラアルコキシオルトチタネート類存在下、N−フルオロビス(メタンスルホニル)イミドと反応させる、下記一般式(2)
【化2】
(式(2)中、R、R及びRは前記式(1)に同じ)
で表されるフルオロマロン酸エステル誘導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフルオロマロン酸エステル誘導体の新規製造方法に関する。フルオロマロン酸エステル誘導体は、電子材料原料や医・農薬の製造中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来より、フッ素ガスにより直接フッ素化しフルオロマロン酸エステル誘導体を得る方法としては、硝酸銅触媒存在下実施する方法(例えば特許文献1、非特許文献1参照)、マロン酸ジエチルを水素化ナトリウムによりナトリウム塩とした後に実施する方法(例えば特許文献2参照)が知られている。
また、クロロマロン酸ジエチルをアミン類のフッ化水素塩により、フッ素置換する方法(例えば特許文献3参照)、トリフルオロアクリル酸塩をエタノールと反応させ得る方法(例えば非特許文献2参照)等が知られている。
【0003】
さらに、フッ素化剤として、N−フルオロピリジニウム塩を用いる方法(例えば非特許文献3参照)、二フッ化キセノンを用いる方法(例えば非特許文献4参照)、並びに1−フルオロ−2−ピリドンを用いる方法(例えば非特許文献5参照)が知られている。
このような特許文献1及び非特許文献2に記載の方法はフッ素ガスを用いるために、安全上の課題があり、また多くの場合において低収率である。特許文献2に記載の方法は、生成物の分離が困難なフルオロマロン酸ジエチルとジフルオロマロン酸ジエチルの混合物となる課題がある。
【0004】
一方、特許文献3に記載の方法は、あらかじめクロロマロン酸ジエチルを調製する必要があり、多段の反応で製造工程が長くなるという課題がある。非特許文献2に記載の方法は、フッ素原子が3個導入された原料を分解することにより製造しており、高価なフッ素を2個分廃液として廃棄するという課題がある。
さらに、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5に記載の方法は、高価なフッ素化剤を用いるために、工業的規模での生産には適用することができない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−510173号公報
【特許文献2】特表平11−507938号公報
【特許文献3】特表2004−537502号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】R. D. チャンバース(Chambers)等, ジャーナル オブ フロライン ケミストリー(J. Fluorine Chem.), 1988, 92, 45
【非特許文献2】T. フチカミ(Fuchikami)等, ケミストリー レターズ(Chemistry Lett.), 1573(1984)
【非特許文献3】T. ウメモト(Umemoto)等, ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.), 1990, 112, 8563
【非特許文献4】T. B. パトリック(Patrick)ら, ジャーナル オブ フロライン ケミストリー(J. Fluorine Chem.), 1988, 39, 415
【非特許文献5】S. T. プリントン(Purrington)等, ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry), 1983, 48, 761
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来の課題を克服し、工業的に実施可能なモノフルオロマロン酸エステル誘導体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、モノフルオロマロン酸エステル誘導体の製造方法について鋭意検討した結果、ルイス酸存在下、マロン酸エステル誘導体を、安価に調製可能なN−フルオロビス(メタンスルホニル)イミドを反応させることにより、比較的高い収率でモノフルオロマロン酸エステル誘導体が得られる方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、下記一般式(1)
【0009】
【化1】
【0010】
(式(1)中、R1及びR2は各々独立して、メチル基、エチル基、炭素数3〜4の直鎖、分岐若しくは環式のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示し、R3は水素原子、メチル基又はエチル基を示す)
で表されるマロン酸エステル誘導体を、ルイス酸存在下、N−フルオロビス(メタンスルホニル)イミドと反応させる、下記一般式(2)
【0011】
【化2】
【0012】
(式(2)中、R1、R2及びR3は前記式(1)に同じ)
で表されるモノフルオロマロン酸エステル誘導体の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、電子材料原料や医農薬の合成中間体として有用な、フルオロマロン酸エステル誘導体の簡便な製造方法が提供された。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のテトラアルキルオルトチタネート類とは、テトラメチルオルトチタネート、テトラエチルオルトチタネート、テトラ−n−プロピルオルトチタネート、テトラ−iso−プロピルオルトチタネート、テトラ−n−ブチルオルトチタネート、テトラ−iso−ブチルオルトチタネートを示す。
【0015】
本発明に用いられる一般式(1)で表されるマロン酸エステル誘導体としては、具体的には例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジ−n−プロピル、マロン酸ジ−iso−プロピル、マロン酸ジ−n−ブチル、マロン酸ジ−iso−ブチル、マロン酸ジ−tert−ブチル、マロン酸ジ−n−ペンチル、マロン酸時ジ−シクロペンチル、マロン酸ジ−n−ヘキシル、マロン酸ジ−シクロヘキシル、マロン酸tert−ブチル−エチル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ジベンジル、2−メチルマロン酸ジメチル、2−メチルマロン酸ジエチル、2−メチルマロン酸ジ−n−プロピル、2−メチルマロン酸ジ−iso−プロピル、2−メチルマロン酸ジ−n−ブチル、2−メチルマロン酸ジ−iso−ブチル、2−メチルマロン酸ジ−tert−ブチル、2−メチルマロン酸ジ−n−ペンチル、2−メチルマロン酸時ジ−シクロペンチル、2−メチルマロン酸ジ−n−ヘキシル、2−メチルマロン酸ジ−シクロヘキシル、2−メチルマロン酸tert−ブチル−エチル、2−メチルマロン酸ジフェニル、2−メチルマロン酸ジベンジル2−エチルマロン酸ジメチル、2−エチルマロン酸ジエチル、2−エチルマロン酸ジ−n−プロピル、2−エチルマロン酸ジ−iso−プロピル、2−エチルマロン酸ジ−n−ブチル、2−エチルマロン酸ジ−iso−ブチル、2−エチルマロン酸ジ−tert−ブチル、2−エチルマロン酸ジ−n−ペンチル、2−エチルマロン酸時ジ−シクロペンチル、2−エチルマロン酸ジ−n−ヘキシル、2−エチルマロン酸ジ−シクロヘキシル、2−エチルマロン酸tert−ブチル−エチル、2−エチルマロン酸ジフェニル、2−エチルマロン酸ジベンジル等が挙げられる。
【0016】
本発明により得られる一般式(2)で表わされるフルオロマロン酸エステル誘導体としては、具体的には例えば、フルオロマロン酸ジメチル、フルオロマロン酸ジエチル、フルオロマロン酸ジ−n−プロピル、フルオロマロン酸ジ−iso−プロピル、フルオロマロン酸ジ−n−ブチル、フルオロマロン酸ジ−iso−ブチル、フルオロマロン酸ジ−tert−ブチル、フルオロマロン酸ジ−n−ペンチル、フルオロマロン酸時ジ−シクロペンチル、フルオロマロン酸ジ−n−ヘキシル、フルオロマロン酸ジ−シクロヘキシル、フルオロマロン酸tert−ブチル−エチル、フルオロマロン酸ジフェニル、フルオロマロン酸ジベンジル、2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジメチル、2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジエチル、2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジ−n−プロピル、2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジ−iso−プロピル、2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジ−n−ブチル、2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジ−iso−ブチル、2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジ−tert−ブチル、2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジ−n−ペンチル、2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジ−シクロペンチル、2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジ−n−ヘキシル、2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジ−シクロヘキシル、2−フルオロ−2−メチルマロン酸tert−ブチル−エチル、2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジフェニル、2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジベンジル、2−フルオロ−2−エチルマロン酸ジメチル、2−フルオロ−2−エチルマロン酸ジエチル、2−フルオロ−2−エチルマロン酸ジ−n−プロピル、2−フルオロ−2−エチルマロン酸ジ−iso−プロピル、2−フルオロ−2−エチルマロン酸ジ−n−ブチル、2−フルオロ−2−エチルマロン酸ジ−iso−ブチル、2−フルオロ−2−エチルマロン酸ジ−tert−ブチル、2−フルオロ−2−エチルマロン酸ジ−n−ペンチル、2−フルオロ−2−エチルマロン酸時ジ−シクロペンチル、2−フルオロ−2−エチルマロン酸ジ−n−ヘキシル、2−フルオロ−2−エチルマロン酸ジ−シクロヘキシル、2−フルオロ−2−エチルマロン酸tert−ブチル−エチル、2−フルオロ−2−エチルマロン酸ジフェニル、2−フルオロ−2−エチルマロン酸ジベンジル等が挙げられる。
【0017】
本発明に用いられるN−フルオロビス(メタンスルホニル)イミドの使用量は、反応に具する一般式(1)で表わされるマロン酸エステル誘導体に対して、1.0モル倍量〜5.0モル倍量とするとよいが、過剰の使用は経済的ではないことがあるため、好ましくは、1.0モル倍量〜3.0モル倍量の範囲である。
本発明に適用可能なルイス酸としては、具体的には例えば、テトラアルキルオルトチタネートとは、テトラメチルオルトチタネート、テトラエチルオルトチタネート、テトラ−n−プロピルオルトチタネート、テトラ−iso−プロピルオルトチタネート、テトラ−n−ブチルオルトチタネート、テトラ−iso−ブチルオルトチタネート等の前記テトラアルキルオルトチタネート類、スカンジウム(III)トリフラート、ランタン(III)トリフラート、イッテルビウム(III)トリフラート等の希土類トリフラート類等が挙げられ、反応に具する一般式(1)で表わされるマロン酸エステル誘導体に対して、0.3モル倍量〜3.0モル倍量使用するとよい。
【0018】
本発明に使用可能な溶剤としては、反応に不活性なものであれば特に制限はないが、具体的には例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等の塩素化脂肪族炭化水素系溶剤、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クメン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ベンゾトリフルオリド等のフッ素化芳香族炭化水素系溶剤等の非極性溶剤が挙げられ、反応に具する一般式(1)で表わされるマロン酸エステル誘導体に対して、5重量倍量〜100重量倍量使用するとよい。
【0019】
本発明の反応温度及び時間は、0℃〜40℃の温度範囲で、6時間〜24時間反応を行うことにより反応は完結する。
本発明の反応後の後処理としては、周知の方法で実施可能であり、例えば、水や炭酸水素ナトリウム水溶液等を添加の後、ジクロロメタン等の溶剤で抽出、飽和食塩水で洗浄、硫酸ナトリウム等で乾燥、濃縮することにより粗製物を得るとよい。さらに必要に応じてシリカゲルカラムクロマトグラフィー等で精製を行っても良い。
【実施例】
【0020】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお収率の算出、化合物の同定には、1H−NMR及び19F−NMRはバリアン社製オックスフォード300(Varian Oxford 300)を使用し、MSスペクトルは島津社製LCMS−2010EV(Shimadzu LCMS−2010EV)を使用した。なお、1H−NMRの測定においては基準物質としてテトラメチルシラン(0.00ppm)を用い、19F−NMRの測定においては、基準及び内部標準物質としてヘキサフルオロベンゼン(−162.2ppm)を用いた。
【0021】
また、N−フルオロビス(メタンスルホニル)イミドは特表平8−512286号公報に従い、調製した。
実施例1 フルオロマロン酸ジエチル(3)の調製
【0022】
【化3】
【0023】
撹拌子を備えた試験管にN−フルオロビス(メタンスルホニル)イミド(382.4mg,2.0mmol)及び1,2−ジクロロエタン(10mL)を仕込み、室温下、溶解させた。次いで、同溶液にマロン酸ジエチル(160.2mg,1.0mmol)及びテトラ−iso−プロポキシオルトチタネート(0.16mL,0.5mmol)を添加し、室温下、12時間反応を行った。反応終了後、水を添加、ジクロロメタン抽出(3回)、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮し、粗製物を得た。
【0024】
得られた粗製物を、ヘキサフルオロベンゼンを内部標準として用いた19F−NMR測定において、収率57%で目的物のフルオロマロン酸ジエチル(3)が生成していた。次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/ジクロロメタン=50/50 vol/vol)で精製し、精製フルオロマロン酸ジエチルを無色透明液体として得た(89.0mg,0.50mmol、収率50%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ1.34(t,J=7.2Hz,6H),4.32(q,J=6.9Hz,4H),5.28(d,J=48.3Hz,1H)。
19F−NMR(282MHz,CDCl3)δ−195.5(d,J=48.5Hz)。
LCMS(ESI,m/z)201[(M+Na)+]。
なお生成物の物性データーはジャナル・オブ・オルガニック・ケミストリー,1991,56,213−277(J.Org.Chem.,1991,56,213−277)に記載のフルオロマロン酸ジエチル(3)の物性値と一致した。
実施例2 フルオロマロン酸ジベンジル(4)の調製
【0025】
【化4】
【0026】
実施例1と同じ反応装置を用い、マロン酸ジエチル(160.2mg,1.0mmol)に替えてマロン酸ジベンジル(284.3mg,1.0mmol)を用いた以外、実施例1と同じ操作を行い、粗製物を得た。
得られた粗製物を、ヘキサフルオロベンゼンを内部標準として用いた19F−NMR測定において、収率63%で目的物のフルオロマロン酸ジベンジル(4)が生成していた。次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=50/50 vol/vol)で精製し、精製フルオロマロン酸ジベンジルを無色透明液体として得た(178.4mg,0.59mmol、収率59%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ5.19−5.35(m,5H),7.33(bs,10H)。
19F−NMR(282MHz,CDCl3)δ−192.2(d,J=50.0Hz)。
LCMS(ESI,m/z)325[(M+Na)+]。
なお生成物の物性データーはテトラヘドロン,1991,47,1001−1012(Tetrahedron,1991,47,1001−1012)に記載のフルオロマロン酸ジベンジル(4)の物性値と一致した。
実施例3 フルオロマロン酸ジ−tert−ブチル(5)の調製
【0027】
【化5】
【0028】
実施例1と同じ反応装置を用い、マロン酸ジエチル(160.2mg,1.0mmol)に替えてマロン酸ジ−tert−ブチル(216.3mg,1.0mmol)を用いた以外、実施例1と同じ操作を行い、粗製物を得た。
得られた粗製物を、ヘキサフルオロベンゼンを内部標準として用いた19F−NMR測定において、収率47%で目的物のフルオロマロン酸ジ−tert−ブチル(5)が生成していた。次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/ヘキサン=80/20 vol/vol)で精製し、精製フルオロマロン酸ジ−tert−ブチルを無色透明液体として得た(93.7mg,0.40mmol、収率40%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ1.49(s,18H),5.00(d,J=48.9Hz,1H)。
19F−NMR(282MHz,CDCl3)δ−193.2(d,J=49.4Hz)。
LCMS(ESI,m/z)257[(M+Na)+]。
なお生成物の物性データーはテトラヘドロン,1991,47,1001−1012(Tetrahedron,1991,47,1001−1012)に記載のフルオロマロン酸ジ−tert−ブチル(5)の物性値と一致した。
実施例4 フルオロマロン酸ジメチル(6)の調製
【0029】
【化6】
【0030】
実施例1と同じ反応装置を用い、マロン酸ジエチル(160.2mg,1.0mmol)に替えてマロン酸ジメチル(150.1mg,1.0mmol)を用いた以外、実施例1と同じ操作を行い、粗製物を得た。
得られた粗製物を、ヘキサフルオロベンゼンを内部標準として用いた19F−NMR測定において、収率45%で目的物のフルオロマロン酸ジメチル(6)が生成していた。
実施例5 2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジエチル(7)の調製
【0031】
【化7】
【0032】
撹拌子を備えた試験管にN−フルオロビス(メタンスルホニル)イミド(38.2mg,0.2mmol)及び1,2−ジクロロエタン(1.0mL)を仕込み、室温下、溶解させた。次いで、同溶液に2−メチルマロン酸ジエチル(17.4mg,0.1mmol)及びテトラ−iso−プロポキシオルトチタネート(0.016mL,0.05mmol)を添加し、室温下、12時間反応を行った。反応終了後、水を添加、ジクロロメタン抽出(3回)、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮し、粗製物を得た。
【0033】
得られた粗製物を、ヘキサフルオロベンゼンを内部標準として用いた19F−NMR測定において、定量的に目的物の2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジエチルが生成していた。
次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=10/90 vol/vol)で精製し、精製2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジエチル(7)を無色透明液体として得た(18.7mg,0.097mmol、収率97%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ1.29(t,J=7.2Hz,6H),1.79(d,J=21.9Hz,3H),4.30(q,J=7.2Hz,4H)。
19F−NMR(282MHz,CDCl3)δ−157.9(q,J=21.7Hz)。
LCMS(ESI,m/z)215[(M+Na)+]。
なお生成物の物性データーはダルトン・トランジッション,2005,1637−1643(Dalton Trans.,2005,1637−1643)に記載の2−フルオロ−2−メチルマロン酸ジエチル(7)の物性値と一致した。
【0034】
実施例6 フルオロマロン酸ジエチル(3)の調製
撹拌子を備えた試験管にN−フルオロビス(メタンスルホニル)イミド(191.2mg,1.0mmol)及びジクロロメタン(10mL)を仕込み、室温下、溶解させた。次いで、同溶液にマロン酸ジエチル(160.2mg,1.0mmol)及びテトラ−iso−プロポキシオルトチタネート(0.10mL,0.3mmol)を添加し、室温下、12時間反応を行った。反応終了後、水を添加、ジクロロメタン抽出(3回)、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮し、粗製物を得た。
【0035】
得られた粗製物を、ヘキサフルオロベンゼンを内部標準として用いた19F−NMR測定において、収率36%で目的物のフルオロマロン酸ジエチル(3)が生成していた。
実施例7 フルオロマロン酸ジエチル(3)の調製
実施例6と同じ反応装置を用い、N−フルオロビス(メタンスルホニル)イミド(191.2mg,1.0mmol)の量を(382.4mg,2.0mmmol)に替えた以外、実施例6と同じ反応操作行い、粗製物を得た。
【0036】
得られた粗製物を、ヘキサフルオロベンゼンを内部標準として用いた19F−NMR測定において、収率49%で目的物のフルオロマロン酸ジエチル(3)が生成していた。
実施例8 フルオロマロン酸ジエチル(3)の調製
実施例6と同じ反応装置を用い、N−フルオロビス(メタンスルホニル)イミド(191.2mg,1.0mmol)の量を(382.4mg,2.0mmmol)に替え、テトラ−iso−プロポキシオルトチタネート(0.10mL,0.3mmol)の量を(0.16mL,0.5mmol)に替えた以外、実施例6と同じ反応操作行い、粗製物を得た。
【0037】
得られた粗製物を、ヘキサフルオロベンゼンを内部標準として用いた19F−NMR測定において、収率75%で目的物のフルオロマロン酸ジエチル(3)が生成していた。
実施例9 フルオロマロン酸ジエチル(3)の調製
実施例6と同じ反応装置を用い、N−フルオロビス(メタンスルホニル)イミド(191.2mg,1.0mmol)の量を(382.4mg,2.0mmmol)に替え、テトラ−iso−プロポキシオルトチタネート(0.10mL,0.3mmol)の量を(0.36mL,1.0mmol)に替えた以外、実施例6と同じ反応操作行い、粗製物を得た。
【0038】
得られた粗製物を、ヘキサフルオロベンゼンを内部標準として用いた19F−NMR測定において、収率73%で目的物のフルオロマロン酸ジエチル(3)が生成していた。
実施例10 フルオロマロン酸ジエチル(3)の調製
実施例6と同じ反応装置を用い、N−フルオロビス(メタンスルホニル)イミド(191.2mg,1.0mmol)の量を(382.4mg,2.0mmmol)に替え、テトラ−iso−プロポキシオルトチタネート(0.10mL,0.3mmol)の量を(0.72mL,2.0mmol)に替えた以外、実施例6と同じ反応操作行い、粗製物を得た。
【0039】
得られた粗製物を、ヘキサフルオロベンゼンを内部標準として用いた19F−NMR測定において、収率76%で目的物のフルオロマロン酸ジエチル(3)が生成していた。
実施例11 フルオロマロン酸ジエチル(3)の調製
撹拌子を備えた試験管にN−フルオロビス(メタンスルホニル)イミド(383.4mg,2.0mmol)及びジクロロエタン(10mL)を仕込み、室温下、溶解させた。次いで、同溶液にマロン酸ジエチル(160.2mg,1.0mmol)及びイッテリビウムトリフラート(310.1mg,0.5mmol)を添加し、室温下、12時間反応を行った。反応終了後、水を添加、ジクロロメタン抽出(3回)、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮し、粗製物を得た。
【0040】
得られた粗製物を、ヘキサフルオロベンゼンを内部標準として用いた19F−NMR測定において、収率9%で目的物のフルオロマロン酸ジエチル(3)が生成していた。
実施例12 フルオロマロン酸ジエチル(3)の調製
撹拌子を備えた試験管にN−フルオロビス(メタンスルホニル)イミド(383.4mg,2.0mmol)及びクロロホルム(10mL)を仕込み、室温下、溶解させた。次いで、同溶液にマロン酸ジエチル(160.2mg,1.0mmol)及びテトラ−iso−プロポキシオルトチタネート(0.16mL,0.5mmol)を添加し、室温下、12時間反応を行った。反応終了後、水を添加、ジクロロメタン抽出(3回)、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮し、粗製物を得た。
【0041】
得られた粗製物を、ヘキサフルオロベンゼンを内部標準として用いた19F−NMR測定において、収率75%で目的物のフルオロマロン酸ジエチル(3)が生成していた。
実施例13 フルオロマロン酸ジエチル(3)の調製
実施例12と同じ反応装置を用い、クロロホルム(10mL)に替えてトルエン(10mL)を用いた以外、実施例12と同じ反応操作行い、粗製物を得た。
【0042】
得られた粗製物を、ヘキサフルオロベンゼンを内部標準として用いた19F−NMR測定において、収率81%で目的物のフルオロマロン酸ジエチル(3)が生成していた。
実施例14 フルオロマロン酸ジエチル(3)の調製
実施例12と同じ反応装置を用い、クロロホルム(10mL)に替えてベンゾトリフルオリド(10mL)を用いた以外、実施例12と同じ反応操作行い、粗製物を得た。
【0043】
得られた粗製物を、ヘキサフルオロベンゼンを内部標準として用いた19F−NMR測定において、収率77%で目的物のフルオロマロン酸ジエチルが生成していた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により、フルオロマロン酸エステル誘導体の簡便な製造が可能となる。