特許第6359913号(P6359913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359913
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
   C23C16/455
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-164213(P2014-164213)
(22)【出願日】2014年8月12日
(65)【公開番号】特開2016-40397(P2016-40397A)
(43)【公開日】2016年3月24日
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100107559
【弁理士】
【氏名又は名称】星宮 勝美
(74)【代理人】
【識別番号】100166257
【弁理士】
【氏名又は名称】城澤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 勝人
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 俊男
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−091874(JP,A)
【文献】 特開2013−209722(JP,A)
【文献】 特開2013−151723(JP,A)
【文献】 特開2009−239082(JP,A)
【文献】 特開2009−228059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を収容する処理容器と、
前記被処理体の処理に使用される、パージガスを除く複数のガスを前記処理容器内に供給するための複数の第1のガス供給路と、
前記被処理体の処理に使用される、パージガスを除くガスを前記処理容器内に供給するための第2のガス供給路と、
前記複数の第1のガス供給路の開閉を行う複数の第1のバルブと、
前記第2のガス供給路の開閉を行う第2のバルブと、
前記複数の第1のバルブと前記第2のバルブの開閉動作を制御する制御部と
を備えた処理装置であって、
前記複数の第1のガス供給路は、1つ以上の第1のガス吐出口を有し、
前記第2のガス供給路は、前記1つ以上の第1のガス吐出口とは異なる位置に配置された1つ以上の第2のガス吐出口を有し、
前記複数の第1のバルブは、前記第2のバルブが追従して開閉動作を行う追従対象バルブを含み、
前記追従対象バルブが開閉を行う1つの第1のガス供給路と前記第2のガス供給路は、前記処理容器内に同じガスを供給するものであり、
前記制御部は、前記複数の第1のバルブの開期間が互いに重ならないように前記複数の第1のバルブの開閉動作を制御すると共に、前記第2のバルブの開期間の少なくとも一部分が、前記追従対象バルブの開期間と所定の時間上の関係を有して重なるように、前記第2のバルブの開閉動作を制御することを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記1つ以上の第2のガス吐出口は、前記1つ以上の第1のガス吐出口の周囲に配置された複数の第2のガス吐出口であることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記追従対象バルブの開期間に対する前記第2のバルブの開期間のずれを示す開期間ずれ情報を保持し、前記開期間ずれ情報に基づいて、前記追従対象バルブの開期間を基準として前記第2のバルブの開期間を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、それぞれ前記複数の第1のバルブの開閉動作を指示する複数の第1の指示信号を出力する上位制御部と、前記上位制御部が出力する前記複数の第1の指示信号をそれぞれ前記複数の第1のバルブに与えて前記複数の第1のバルブの開閉動作を直接制御する下位制御部とを備え、
前記下位制御部は、前記追従対象バルブの開期間に対する前記第2のバルブの開期間のずれを示す開期間ずれ情報を保持する開期間ずれ情報保持部と、前記複数の第1の指示信号のうちの前記追従対象バルブの開閉動作を指示する第1の指示信号と前記開期間ずれ情報保持部が保持する前記開期間ずれ情報とに基づいて、前記第2のバルブの開閉動作を指示する第2の指示信号を生成する第2の指示信号生成部とを含み、
前記第2の指示信号によって前記第2のバルブの開閉動作が制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項5】
前記上位制御部は、前記複数の第1のバルブのうちのどれを前記追従対象バルブとするかを示す追従対象バルブ指定情報を出力し、
前記下位制御部は、更に、前記上位制御部が出力する前記追従対象バルブ指定情報に基づいて、前記複数の第1の指示信号の中から、前記追従対象バルブの開閉動作を指示する第1の指示信号を選択する選択部を含むことを特徴とする請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記被処理体に対して、前記複数のガスを、互いに異なるタイミングで間欠的に繰り返し供給して成膜を行うALD(Atomic Layer Deposition)装置であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体に対して複数のガスを供給して成膜処理等を行う処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程では、半導体ウエハ等の被処理体に、成膜処理、エッチング処理、熱処理、改質処理等の各種の処理が繰り返し行われる。半導体ウエハの表面に薄膜を形成する成膜処理としては、成膜装置の処理容器内に半導体ウエハを配置し、処理容器内に原料ガスを含むガスを導入して反応生成物を生じさせ、半導体ウエハの表面に該反応生成物の薄膜を堆積させるCVD(Chemical Vapor Deposition)法による成膜処理が知られている。
【0003】
また、近年では、原料ガスと反応ガスとを交互に処理容器内へ供給し、原子レベルもしくは分子レベルの厚さの薄膜を一層ずつ形成するALD(Atomic Layer Deposition)法という成膜方法も知られている。このALD法は、膜質が良好で、膜厚を精度よく制御できることから、微細化が進行する半導体装置の製造手法として注目を集めている。
【0004】
ここで、ALD法によるTiN膜の成膜処理の一例について説明する。この例では、以下の(1)〜(4)の一連の工程を繰り返し行うことによって、TiN薄膜を繰り返し堆積させて、所望の膜厚のTiN膜を形成する。
(1)処理容器内へ原料ガスとして例えばTiClガスを供給してTiClをウエハの表面に付着させる。
(2)処理容器内をNガスにてパージすることにより残留した原料ガスを排除する。
(3)処理容器内へ反応ガスとして例えばNHガスを供給し、ウエハの表面に付着していた上記TiClと反応させて、原子レベルもしくは分子レベルの厚さのTiN薄膜を形成する。
(4)処理容器内をNガスにてパージすることによって残留ガスを排除する。
【0005】
ALD法による成膜処理では、上記のTiN膜の成膜例で示したように、原料ガスを含む複数のガスの供給と停止を短時間で間欠的に繰り返し行う必要がある。ALD法による成膜処理を行う成膜装置であるALD装置では、ガスの供給と停止は、制御部がガス供給レシピに基づき、処理容器内にガスを導くガス供給路に設けられた電磁バルブに信号を送り、このバルブを開閉させることによって行われる。
【0006】
ALD法による成膜処理の場合、CVD法による成膜処理に比べて、処理容器に対する1つのガスの供給時間が短い。そのため、ALD法による成膜処理において面内均一性の高い膜を成膜するためには、処理容器に対する1つのガスの供給の開始後、短時間で、ウエハの近傍においてガスの濃度の均一性が高くなるような条件で、ガスを供給することが求められる。
【0007】
ALD法による成膜処理において面内均一性の高い膜を成膜するための技術が記載された文献としては、例えば特許文献1ないし3がある。
【0008】
特許文献1には、縮径端側から拡径端側にガスを通流させるための概ね円錐形状のガス通流空間を形成する本体部と、ガス通流空間の縮径端側に設けられ、ガス通流空間にガスを導入するためのガス導入ポートと、ガス通流空間を、外側に向かうにつれて末広がりの程度が大きくなるように同心円状に区画するための区画部材とを備えたガス供給装置が記載されている。
【0009】
特許文献2には、基板の中央部上方に配置された中央ガス吐出部と、中央ガス吐出部を囲むように配置された周囲ガス供給部とを設けた成膜装置が記載されている。
【0010】
特許文献3には、基板に薄膜を形成するための原料を含むガスを成膜室に供給するための複数のガス供給配管と、複数のガス供給配管の各々に設けられた複数のバルブと、成膜室の状態を測定する複数の成膜室モニタと、複数の成膜室モニタの測定結果に基づいて複数のバルブの開度または開放時間を個別に制御する制御部とを備えた原子層成膜装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−239082号公報
【特許文献2】特開2013−209722号公報
【特許文献3】特開2009−228059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1,2に記載された各技術によれば、ウエハの表面に向けて、互いに異なる複数の位置から同じガスを吐出させることができ、これにより、ガスをウエハの表面の全域の近傍に行き渡らせることが可能になる。
【0013】
しかし、ALD法による成膜処理において面内均一性の高い膜を成膜するためには、特許文献1,2に記載された各技術では、十分とは言えない。以下、その理由について説明する。特許文献1,2に記載された各技術では、1つのガス供給路を経由したガスが、分流されて複数の分流ガスとなり、この複数の分流ガスがそれぞれ互いに異なる複数の位置から吐出される。この技術では、複数の分流ガスの吐出の期間は、1つのガス供給路に設けられた1つのバルブのみによって制御される。
【0014】
前述のように、ALD法による成膜処理において面内均一性の高い膜を成膜するためには、処理容器に対する1つのガスの供給の開始後、短時間で、ウエハの近傍においてガスの濃度の均一性が高くなるような条件で、ガスを供給することが求められる。しかし、特許文献1,2に記載された各技術では、複数の分流ガスの吐出の期間が1つのガス供給路に設けられた1つのバルブのみによって制御されるため、上記の条件を満たすように、ウエハの近傍におけるガスの分布を細かく制御することができない。
【0015】
また、特許文献3には明確に記載されていないが、特許文献3に記載された技術の趣旨から考えると、特許文献3に記載された原子層成膜装置では、複数のガス供給配管によって、ほぼ同時に同じガスを成膜室に供給していると考えられる。そのため、この原子層成膜装置では、同じ複数のガス供給配管に対して、特許文献3の段落0014に記載された原料ガス、酸化ガス、パージガスを切り換えて供給することによって、これらのガスを成膜室に切り換えて供給していると考えられる。この方法では、複数のガス供給配管内におけるガスを完全に切り換えるのに時間が掛かることから、成膜室に供給するガスの切り換えに時間が掛かり、その結果、成膜にも時間が掛かるという問題点がある。
【0016】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その目的は、被処理体の処理に使用されるガスの切り換えを短時間で行うことができ、且つ被処理体の近傍におけるガスの分布を制御できるようにした処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の処理装置は、被処理体を収容する処理容器と、被処理体の処理に使用される、パージガスを除く複数のガスを処理容器内に供給するための複数の第1のガス供給路と、被処理体の処理に使用される、パージガスを除くガスを処理容器内に供給するための第2のガス供給路と、複数の第1のガス供給路の開閉を行う複数の第1のバルブと、第2のガス供給路の開閉を行う第2のバルブと、複数の第1のバルブと第2のバルブの開閉動作を制御する制御部とを備えている。
【0018】
複数の第1のガス供給路は、1つ以上の第1のガス吐出口を有している。第2のガス供給路は、1つ以上の第1のガス吐出口とは異なる位置に配置された1つ以上の第2のガス吐出口を有している。複数の第1のバルブは、第2のバルブが追従して開閉動作を行う追従対象バルブを含んでいる。追従対象バルブが開閉を行う1つの第1のガス供給路と第2のガス供給路は、処理容器内に同じガスを供給するものである。制御部は、複数の第1のバルブの開期間が互いに重ならないように複数の第1のバルブの開閉動作を制御すると共に、第2のバルブの開期間が、追従対象バルブの開期間と所定の時間上の関係を有するように、第2のバルブの開閉動作を制御する。
【0019】
本発明の処理装置において、第2のバルブの開期間の少なくとも一部分が、追従対象バルブの開期間と重なってもよい。
【0020】
また、本発明の処理装置において、1つ以上の第2のガス吐出口は、1つ以上の第1のガス吐出口の周囲に配置された複数の第2のガス吐出口であってもよい。
【0021】
また、本発明の処理装置において、制御部は、追従対象バルブの開期間に対する第2のバルブの開期間のずれを示す開期間ずれ情報を保持し、開期間ずれ情報に基づいて、追従対象バルブの開期間を基準として第2のバルブの開期間を決定してもよい。
【0022】
また、本発明の処理装置において、制御部は、それぞれ複数の第1のバルブの開閉動作を指示する複数の第1の指示信号を出力する上位制御部と、上位制御部が出力する複数の第1の指示信号をそれぞれ複数の第1のバルブに与えて複数の第1のバルブの開閉動作を直接制御する下位制御部とを備えていてもよい。この場合、下位制御部は、追従対象バルブの開期間に対する第2のバルブの開期間のずれを示す開期間ずれ情報を保持する開期間ずれ情報保持部と、複数の第1の指示信号のうちの追従対象バルブの開閉動作を指示する第1の指示信号と開期間ずれ情報保持部が保持する開期間ずれ情報とに基づいて、第2のバルブの開閉動作を指示する第2の指示信号を生成する第2の指示信号生成部とを含んでいてもよく、また、第2の指示信号によって第2のバルブの開閉動作が制御されてもよい。
【0023】
また、上位制御部は、複数の第1のバルブのうちのどれを追従対象バルブとするかを示す追従対象バルブ指定情報を出力してもよく、下位制御部は、更に、上位制御部が出力する追従対象バルブ指定情報に基づいて、複数の第1の指示信号の中から、追従対象バルブの開閉動作を指示する第1の指示信号を選択する選択部を含んでいてもよい。
【0024】
また、本発明の処理装置は、被処理体に対して、複数のガスを、互いに異なるタイミングで間欠的に繰り返し供給して成膜を行うALD(Atomic Layer Deposition)装置であってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の処理装置では、制御部は、複数の第1のバルブの開期間が互いに重ならないように複数の第1のバルブの開閉動作を制御すると共に、第2のバルブの開期間が、複数の第1のバルブのうちの1つである追従対象バルブの開期間と所定の時間上の関係を有するように、第2のバルブの開閉動作を制御する。これにより、本発明の処理装置によれば、被処理体の処理に使用されるガスの切り換えを短時間で行うことができ、且つ被処理体の近傍におけるガスの分布を制御することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施の形態に係る処理装置の概略構成を示す説明図である。
図2図1に示した天井部材およびガス導入部を示す斜視図である。
図3図1に示した集合バルブユニットを示す説明図である。
図4】本発明の一の実施の形態に係る処理装置を含む基板処理システムの制御系統の概略構成を示す説明図である。
図5図3および図4に示したモジュールコントローラの概略構成を示す説明図である。
図6図3および図4に示したI/Oボードの構成を示す説明図である。
図7】本発明の一実施の形態における3つのバルブの動作の一例を示すタイミングチャートである。
図8】本発明の一実施の形態における3つのバルブの動作の他の例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
<成膜装置の構成例>
まず、図1ないし図3を参照して本発明の一実施の形態に係る処理装置について説明する。図1は、本実施の形態に係る処理装置の概略構成を示す説明図である。図2は、図1に示した天井部材およびガス導入部を示す斜視図である。図3は、図1に示した集合バルブユニットを示す説明図である。図1には、本実施の形態に係る処理装置としての成膜装置100を示している。成膜装置100は、被処理体としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と記す。)Wに対して、複数のガスを、互いに異なるタイミングで間欠的に繰り返し供給して成膜を行うALD(Atomic Layer Deposition)装置として構成されている。この成膜装置100は、処理部10と、ウエハWの処理に使用される複数のガスを供給するガス供給部20と、処理部10とガス供給部20との間に設けられた集合バルブユニット80と、成膜装置100の複数の構成部の制御を行う制御部とを備えている。
【0029】
処理部10は、ウエハWを収容する処理容器1を有している。図1に示したように、処理容器1は、互いに連結された下部2と上部3とを含み、略円筒状に形成されている。また、処理容器1は、気密に構成されている。処理容器1は、処理容器1の下部2に形成された排気口2aおよび搬入出口2bを含んでいる。処理部10は、更に、排気装置17と、排気口11dと排気装置17とを接続する排気管18と、搬入出口2bと図示しない搬送室との間を開閉するゲートバルブ19とを有している。排気装置17および排気管18は、排気装置17を作動させることにより、処理容器1内を所定の真空度まで減圧することができるように構成されている。ウエハWの搬入出は、搬入出口2bおよびゲートバルブ19を通して行われる。
【0030】
処理部10は、更に、処理容器1の中においてウエハWを水平に支持するためのサセプタ15と、サセプタ15を支持する円筒状の支持部材16と、サセプタ15に埋め込まれた図示しないヒータとを有している。このヒータは、ウエハWを所定の温度に加熱するためのものである。支持部材16は、処理容器1の外部に設けられた図示しない昇降装置に接続されている。図示しない昇降装置は、ウエハWの受け渡しが行われるサセプタ15の位置と、この位置よりも上方の位置であってウエハWに対して成膜処理が行なわれるサセプタ15の位置(以下、処理位置と言う。)との間で、サセプタ15を上下に昇降させる。図1には、サセプタ15を処理位置まで上昇させた場合の例を示している。また、支持部材16は、処理容器1の外部に設けられた図示しない回転装置に接続されていてもよい。図示しない回転装置は、支持部材16を回転させることによって、サセプタ15に支持されたウエハWを水平方向に回転させる。ウエハWを水平方向に回転させることによって、ウエハWの面内において周方向に成膜処理の均一性を向上させることができる。
【0031】
処理部10は、更に、サセプタ15の外周部よりも外側の位置において下部2の内周面に固定されたリング状部材4と、上部3に固定された天井部材5とを有している。図2に示したように、天井部材5は、円板状の形状を有している。なお、図2は、天井部材5の一部を省略して描いている。また、天井部材5は、天井部材5におけるサセプタ15側に形成された円錐状の凹部5aと、この凹部5aの外側に位置する平坦部5bとを有している。サセプタ15が処理位置にある場合、天井部材5の凹部5aとサセプタ15の上面とによって囲まれた空間は、ウエハWに対して成膜処理が行なわれる処理空間9となる。
【0032】
処理部10は、更に、天井部材5の凹部5aの中央部に設けられたガス導入部6を有している。図2に示したように、ガス導入部6は、後述する第1の反応ガスと第1のパージガスを処理空間9内に吐出する複数のガス吐出口6aと、後述する原料ガスと第2のパージガスを処理空間9内に吐出する複数のガス吐出口6bとを有している。複数のガス吐出口6aおよび複数のガス吐出口6bは、本発明における「1つ以上の第1のガス吐出口」に対応する。
【0033】
処理部10は、更に、ガス導入部6よりも外側の位置において天井部材5の内部に設けられた環状のバッファ部7と、バッファ部7に接続された複数のガス流路8とを有している。複数のガス流路8は、バッファ部7と処理空間9との間に設けられている。また、複数のガス流路8は、処理空間9内に後述する第2の反応ガスを吐出する複数のガス吐出口8aを有している。複数のガス吐出口8aは、複数のガス吐出口6aおよび複数のガス吐出口6bとは異なる位置に配置されている。具体的には、複数のガス吐出口8aは、複数のガス吐出口6aおよび複数のガス吐出口6bの周囲の位置であって、天井部材5の凹部5aにおける複数のガス吐出口6aおよび複数のガス吐出口6bよりも外側の位置に配置されている。更に具体的には、天井部材5において、複数のガス吐出口6aが、支持部材16に支持されたウエハWの中央部に対向する位置に設けられているのに対し、複数のガス吐出口8aは、支持部材16に支持されたウエハWのエッジ付近である周縁部に対向する位置に設けられている。つまり、複数のガス吐出口6aと、複数のガス吐出口8aとは、支持部材16に支持されたウエハWの径方向において、互いにウエハWの半径程度の距離をあけて離間した位置に配設されている。また、複数のガス吐出口8aは、互いに所定の間隔を開けて環状に配置されている。複数のガス吐出口8aは、本発明における「1つ以上の第2のガス吐出口」に対応する。なお、「1つ以上の第2のガス吐出口」は、天井部材5において、ウエハWの周縁部に対向する位置以外の位置に設けてもよい。例えば、「1つ以上の第2のガス吐出口」は、ウエハWの中央部と周縁部との間の中間部に対向する位置に設けてもよい。また、「1つ以上の第2のガス吐出口」は、天井部材5において、支持部材16に支持されたウエハWの径方向に対し、複数の位置に設けてもよい。
【0034】
処理部10は、更に、ガス導入部6に接続された2つのガス流路14A,14Bと、バッファ部7に接続されたガス流路14Cとを有している。ガス導入部6は、ガス流路14Aと複数のガス吐出口6aとの間に設けられた第1の分流路と、ガス流路14Bと複数のガス吐出口6bとの間に設けられた第2の分流路とを含んでいる。
【0035】
ガス供給部20は、第1のパージガスを供給する第1のパージガス供給源30と、第1の反応ガスを供給する第1の反応ガス供給源40と、原料ガスを供給する原料ガス供給源50と、第2のパージガスを供給する第2のパージガス供給源60と、第2の反応ガスを供給する第2の反応ガス供給源70とを有している。図1および図3には、一例として、ウエハWの表面にALD法によりTiN膜を形成する場合におけるガス供給部20の構成を示している。この例では、原料ガスはTiClガスであり、第1の反応ガスと第2の反応ガスは、同じNHガスである。また、第1のパージガスと第2のパージガスは、同じNガスである。原料ガス供給源50は、液体のTiClを気化させる図示しない気化器を有している。
【0036】
集合バルブユニット80は、配管31,41,51,61,71,13A,13B,13Cを有している。配管31の一端は、第1のパージガス供給源30に接続されている。配管41の一端は、第1の反応ガス供給源40に接続されている。配管31,41のそれぞれの他端は、配管13Aの一端に接続されている。配管13Aの他端は、ガス流路14Aに接続されている。
【0037】
配管51の一端は、原料ガス供給源50に接続されている。配管61の一端は、第2のパージガス供給源60に接続されている。配管51,61のそれぞれの他端は、配管13Bの一端に接続されている。配管13Bの他端は、ガス流路14Bに接続されている。
【0038】
配管71の一端は、第2の反応ガス供給源70に接続されている。配管71の他端は、配管13Cの一端に接続されている。配管13Cの他端は、ガス流路14Cに接続されている。
【0039】
配管31,13A、ガス流路14Aおよびガス導入部6の第1の分流路は、第1のパージガス(Nガス)を処理容器1内に供給するための第1のパージガス供給路を構成する。配管41,13A、ガス流路14Aおよびガス導入部6の第1の分流路は、第1の反応ガス(NHガス)を処理容器1内に供給するための第1の反応ガス供給路を構成する。配管51,13B、ガス流路14Bおよびガス導入部6の第2の分流路は、原料ガス(TiClガス)を処理容器1内に供給するための原料ガス供給路を構成する。配管61,13B、ガス流路14Bおよびガス導入部6の第2の分流路は、第2のパージガス(Nガス)を処理容器1内に供給するための第2のパージガス供給路を構成する。配管71,13C、ガス流路14C、バッファ部7および複数のガス流路8は、第2の反応ガス(NHガス)を処理容器1内に供給するための第2の反応ガス供給路を構成する。
【0040】
第1の反応ガス供給路および原料ガス供給路は、ウエハWの処理に使用される、パージガス(Nガス)を除く複数のガスを処理容器1内に供給するためのガス供給路であり、本発明における「複数の第1のガス供給路」に対応する。第2の反応ガス供給路は、ウエハWの処理に使用される、パージガス(Nガス)を除くガスを処理容器1内に供給するためのガス供給路であり、本発明における「第2のガス供給路」に対応する。なお、「ウエハWの処理に使用される、パージガスを除く(複数の)ガス」というのは、ウエハWの実質的な処理(本実施の形態では成膜処理)に使用されるガスという意味である。
【0041】
本発明の「複数の第1のガス供給路」に対応する第1の反応ガス供給路および原料ガス供給路は、本発明の「1つ以上の第1のガス吐出口」に対応する複数のガス吐出口6aおよび複数のガス吐出口6bを有している。本発明の「第2のガス供給路」に対応する第2の反応ガス供給路は、本発明の「1つ以上の第2のガス吐出口」に対応する複数のガス吐出口8aを有している。
【0042】
集合バルブユニット80は、更に、バルブ33,43,53,63,73と、流量制御のためのマスフローコントローラ(以下、MFCと記す。)35,45,55,65,75と、チャンババルブ37,47,57,67,77とを有している。配管31には、バルブ33、MFC35およびチャンババルブ37が、第1のパージガス供給源30側からこの順に設けられている。配管41には、バルブ43、MFC45およびチャンババルブ47が、第1の反応ガス供給源40側からこの順に設けられている。配管51には、バルブ53、MFC55およびチャンババルブ57が、原料ガス供給源50側からこの順に設けられている。配管61には、バルブ63、MFC65およびチャンババルブ67が、第2のパージガス供給源60側からこの順に設けられている。配管71には、バルブ73、MFC75およびチャンババルブ77が、第2の反応ガス供給源70側からこの順に設けられている。
【0043】
集合バルブユニット80は、更に、配管41においてMFC45とチャンババルブ47の間に設けられたバッファタンク48と、バッファタンク48に付設され、バッファタンク48の内部の圧力を計測する圧力計48Aと、配管51においてMFC55とチャンババルブ57の間に設けられたバッファタンク58と、バッファタンク58に付設され、バッファタンク58の内部の圧力を計測する圧力計58Aと、配管71においてMFC75とチャンババルブ77の間に設けられたバッファタンク78と、バッファタンク78に付設され、バッファタンク78の内部の圧力を計測する圧力計78Aとを有している。なお、図1では、バッファタンク48,58,78および圧力計48A,58A、78Aの図示を省略している。
【0044】
チャンババルブ37,47,57,67,77は、それぞれ、配管31,41,51,61,71に設けられた複数の構成部のうち、処理容器1に最も近接した位置に設けられた構成部である。チャンババルブ37,67は、それぞれ、第1および第2のパージガス供給路(配管31,61)の開閉を行うバルブである。チャンババルブ47,77は、それぞれ、第1および第2の反応ガス供給路(配管41,71)の開閉を行うバルブである。チャンババルブ57は、原料ガス供給路(配管51)の開閉を行うバルブである。チャンババルブ37,47,57,67,77を開放することによって、処理容器1内への各ガスの導入が行われ、チャンババルブ37,47,57,67,77を閉じることによって、処理容器1内への各ガスの導入が停止される。チャンババルブ47,57は、本発明における「複数の第1のバルブ」に対応する。チャンババルブ77は、本発明における「第2のバルブ」に対応する。
【0045】
チャンババルブ37,47,57,67,77は、いずれも高速での開閉が可能な電磁弁(ソレノイドバルブ)である。チャンババルブ37,47,57,67,77は、それぞれバルブ駆動部としてのソレノイド37a,47a,57a,67a,77aを含んでいる。なお、図3では、説明の便宜上、ソレノイド37a,47a,57a,67a,77aを、チャンババルブ37,47,57,67,77とは別に描いている。
【0046】
集合バルブユニット80は、更に、それぞれチャンババルブ37,47,57,67,77のセンサ部として用いられる5つのチャンババルブセンサ(以下、CVセンサと記す。)39,49,59,69,79を有している。CVセンサ39,49,59,69,79は、それぞれ、ソレノイド37a,47a,57a,67a,77aによって駆動される各チャンババルブ37,47,57,67,77の開動作および閉動作を検出する。なお、図1では、CVセンサ39,49,59,69,79の図示を省略している。
【0047】
なお、ガス供給部20は、更に、処理容器1内をクリーニングするためのクリーニングガスを供給する他のガス供給源を有していてもよい。この場合、集合バルブユニット80は、更に、この他のガス供給源と配管13A、配管13Bまたは配管13Cの一端とを接続する配管と、この配管に設けられたバルブ、MFCおよびチャンババルブ等を有していてもよい。
【0048】
<制御系統の構成例>
次に、図3ないし図5を参照して、成膜装置100を含む基板処理システムの制御系統の概要について説明する。図4は、成膜装置100を含む基板処理システムの制御系統の概略構成を示す説明図である。図5は、図3および図4に示したモジュールコントローラの概略構成を示す説明図である。
【0049】
図4は、成膜装置100を含む基板処理システム(図示せず)における全体の制御や、基板処理システム内の成膜装置100等の複数の処理装置の個々の制御を行う制御システム300を示している。制御システム300は、成膜装置100が備える制御部を含んでいる。以下、制御システム300によって制御される各構成部を、エンドデバイス201と言う。図1に示した成膜装置100におけるエンドデバイス201としては、チャンババルブ37,47,57,67,77(ソレノイド37a,47a,57a,67a,77a)、MFC35,45,55,65,75、CVセンサ39,49,59,69,79、排気装置17等が挙げられる。
【0050】
図4に示したように、制御システム300は、基板処理システム全体を制御する統括制御部であるEC(Equipment Controller)301と、複数のモジュールコントローラ(Module Controller;以下、MCと記す。)401と、EC301に接続されたユーザーインターフェース501と、EC301と各MC401とを接続するシステム内LAN(Local Area Network)503とを備えている。複数のMC401は、基板処理システム内の成膜装置100等の複数の処理装置の個々の制御を行うものである。
【0051】
なお、図4には、制御システム300のうち、成膜装置100の制御に関連する部分を示している。図4に示したMC401は、制御システム300が備える複数のMC401のうちの成膜装置100用のMC401である。成膜装置100が備える制御部は、この成膜装置100用のMC401を含んでいる。成膜装置100は、後述するように、成膜装置100用のMC401によって、処理容器1内で所定の処理が行えるように制御される。
【0052】
ユーザーインターフェース501は、工程管理者が基板処理システムを管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、基板処理システムの稼働状況を可視化して表示するディスプレイ、メカニカルスイッチ等を有している。
【0053】
システム内LAN503は、スイッチングハブ(HUB)505を有している。このスイッチングハブ505は、EC301からの制御信号に応じて、EC301に接続されるMC401を切り替える。
【0054】
(EC)
図4に示したように、EC301は、CPU(中央演算装置)303と、揮発性メモリとしてのRAM305と、記憶部としてのハードディスク装置(図4では、HDDと記す。)307とを有し、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体(以下、単に記憶媒体と記す。)507に対して情報を記録し、また記憶媒体507より情報を読み取ることができるように構成されている。基板処理システムの制御プログラムやウエハWの処理方法に関するレシピは、例えば、記憶媒体507に格納された状態のものをハードディスク装置307にインストールすることによって利用することができる。記憶媒体507としては、例えば、CD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリ、DVD等を使用することができる。また、上記レシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用することも可能である。
【0055】
EC301において、CPU303は、ユーザーインターフェース501によって工程管理者等によって指定されたレシピを含むプログラム(ソフトウェア)を、ハードディスク装置307や記憶媒体507から読み出す。そして、読み出したプログラムは、EC301から各MC401に送信される。
【0056】
また、EC301は、LAN601を介して基板処理システムが設置されている工場全体の製造工程を管理するMES(Manufacturing Execution System)としてのホストコンピュータ603に接続されている。ホストコンピュータ603は、制御システム300と連携して、工場における種々の工程に関するリアルタイム情報を基幹業務システム(図示せず)にフィードバックすると共に、工場全体の負荷等を考慮して工程に関する判断を行う。
【0057】
(MC)
複数のMC401は、EC301によって統括されて制御される。なお、MC401は、基板処理システム内の複数の処理装置だけでなく、ロードロック室や、ローダーユニットに対応させて設けることが可能であり、これらもEC301によって統括されて制御される。
【0058】
以下、成膜装置100用のMC401を例にとって、MC401の構成について説明する。図5に示したように、MC401は、CPU403と、RAM等によって構成された揮発性メモリ部405と、I/O(入出力)情報記憶部として用いられる不揮発性メモリ部407と、I/O制御部409とを有している。不揮発性メモリ部407は、例えばSRAM、MRAM、EEPROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリによって構成されている。不揮発性メモリ部407には、成膜装置100における種々の履歴情報、例えば、サセプタ15に埋め込まれたヒータの交換時間や、排気装置17の稼動時間等が保存される。また、不揮発性メモリ部407は、I/O情報記憶部としても機能する。後述するように、MC401は、MC401と各エンドデバイス201との間で取り交される各種のI/O情報(特に、後述するデジタル・アウトプット情報DOおよびアナログ・アウトプット情報AO)を不揮発性メモリ部407に随時書き込んで保存できるように構成されている。
【0059】
(I/Oモジュール)
制御システム300は、更に、各MC401に対応する1つ以上のI/Oモジュール413と、各MC401とそれに対応する1つ以上のI/Oモジュール413とを接続するネットワーク411とを備えている。図4には、成膜装置100用のMC401に対応する複数のI/Oモジュール413を示している。ネットワーク411は、I/Oモジュール413毎に割り当てられた複数のチャンネルCH0,CH1,CH2,…を有している。成膜装置100が備える制御部は、成膜装置100用のMC401の他に、成膜装置100用のMC401に対応する1つ以上のI/Oモジュール413を含んでいる。
【0060】
成膜装置100用のMC401に対応する1つ以上のI/Oモジュール413は、成膜装置100を構成する各エンドデバイス201への制御信号およびエンドデバイス201からの入力信号の伝達を行う。MC401のI/O制御部409は、I/Oモジュール413に種々の制御信号を送出したり、I/Oモジュール413から各エンドデバイス201に関するステータス情報等の信号を受け取ったりする。MC401による各エンドデバイス201の制御は、I/Oモジュール413を介して行われる。
【0061】
(I/Oボード)
1つのI/Oモジュール413は、1つ以上のI/Oボード415を有している。I/Oボード415は、MC401の支配のもとで動作し、各エンドデバイス201を直接制御する下位の制御ユニットである。I/Oモジュール413におけるデジタル信号、アナログ信号およびシリアル信号の入出力の制御は、1つ以上のI/Oボード415において行われる。1つのI/Oボード415には、1つ以上のエンドデバイス201が接続されている。本実施の形態では、図4に示したように、1つのI/Oボード415に、複数のエンドデバイス201であるソレノイド37a,47a,57a,67a,77aが接続されている。
【0062】
1つのI/Oボード415において入出力される入出力情報は、デジタル・インプット情報DI、デジタル・アウトプット情報DO、アナログ・インプット情報AI、アナログ・アウトプット情報AOの4種のうちの1種以上を含む。デジタル・インプット情報DIは、制御系統の下位に位置する各エンドデバイス201から、制御系統の上位に位置するMC401へインプットされるデジタル情報を含む。デジタル・アウトプット情報DOは、MC401から各エンドデバイス201へアウトプットされるデジタル情報を含む。アナログ・インプット情報AIは、各エンドデバイス201からMC401へインプットされるアナログ的情報を含む。アナログ・アウトプット情報AOは、MC401から各エンドデバイス201へアウトプットされるアナログ的情報を含む。なお、ここで言うアナログ的情報とは、アナログ値で表される性質を有する情報をデジタル化した情報を意味する。
【0063】
デジタル・インプット情報DIおよびアナログ・インプット情報AIは、例えば各エンドデバイス201のステータスに関する情報を含む。デジタル・アウトプット情報DOおよびアナログ・アウトプット情報AOは、例えば各エンドデバイス201へのプロセス条件等に関する値の設定や指令(コマンド)を含む。デジタル情報としては、各チャンババルブ37,47,57,67,77(ソレノイド37a,47a,57a,67a,77a)の開閉、排気装置17のON/OFFや排気系統におけるバルブ(図示せず)の開閉等の情報が例示される。また、アナログ的情報としては、サセプタ15におけるヒータ(図示せず)の設定温度、MFC35,45,55,65,75における設定流量等の情報が例示される。
【0064】
1つのI/Oボード415において入出力される入出力情報は、上記の4種の情報DI,DO,AI,AOのいずれか1つに分類される複数の情報を含むことができる。上記入出力情報は、アドレス部とデータ部を含んでいる。データ部は、例えば16ビットで構成されている。この場合、データ部は、最大で16ビットのデジタル情報、または、例えば16進数で表したときに0000〜FFFFの範囲内の数値で表されるアナログ的情報を含むことができる。アドレス部は、チャンネルを特定するためのチャンネル番号と、I/Oボード415を特定するためのノード番号と、データ部に格納された情報の内容の種類に応じたI/Oアドレスを含んでいる。従って、アドレス部の内容に基づいて、データ部に格納された情報が、どのチャンネルの、どのI/Oボード415の、どの内容の種類の情報であるかを特定することができる。
【0065】
I/Oボード415は、例えば、ファームウェアによって構成が設定されたプログラマブルロジックデバイスによって実現される。プログラマブルロジックデバイスとしては、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)が用いられる。
【0066】
<制御部の構成例>
次に、図5および図6を参照して、成膜装置100が備える制御部のうち、チャンババルブ37,47,57,67,77の開閉動作の制御に関連する部分(以下、ガス供給制御部200と言う。)について説明する。図6は、I/Oボード415の構成を示す説明図である。ガス供給制御部200は、図5に示した成膜装置100用のMC401と、図6に示したI/Oボード415とによって実現され、チャンババルブ37,47,57,67,77の開閉動作を制御する。ガス供給制御部200は、本発明における「制御部」に対応する。
【0067】
ガス供給制御部200は、以下のようにして、本発明の「複数の第1のバルブ」に対応するチャンババルブ47,57の開閉動作と、本発明の「第2のバルブ」に対応するチャンババルブ77の開閉動作を制御する。すなわち、ガス供給制御部200は、チャンババルブ47,57の開期間が重ならないように、チャンババルブ47,57の開閉動作を制御する。また、ガス供給制御部200は、チャンババルブ77の開期間の少なくとも一部分が、複数の第1のバルブのうちの1つである追従対象バルブの開期間と所定の時間上の関係を有して重なるように、チャンババルブ77の開閉動作を制御する。以下、チャンババルブ47が追従対象バルブである場合の例について説明する。この場合、ガス供給制御部200は、チャンババルブ77の開期間の少なくとも一部分が、チャンババルブ47の開期間と所定の時間上の関係を有して重なるように、チャンババルブ77の開閉動作を制御する。上記所定の時間上の関係については、後で詳しく説明する。
【0068】
以下、ガス供給制御部200について更に詳しく説明する。ガス供給制御部200は、上位制御部と下位制御部とを備えている。本実施の形態では、上位制御部は、MC401によって実現されている。また、下位制御部は、I/Oボード415によって実現されている。
【0069】
上位制御部(MC401)および下位制御部(I/Oボード415)は、以下のようにして、本発明の「複数の第1のバルブ」に対応するチャンババルブ47,57の開閉動作を制御する。すなわち、上位制御部は、それぞれチャンババルブ47,57の開閉動作を指示する2つの第1の指示信号を含む2つのデジタル・アウトプット情報(以下、指示情報と言う。)V2DO,V3DOを出力する。下位制御部は、上位制御部が出力する2つの指示情報V2DO,V3DOが含む2つの第1の指示信号をそれぞれチャンババルブ47,57に与えてチャンババルブ47,57の開閉動作を直接制御する。
【0070】
同様に、上位制御部(MC401)および下位制御部(I/Oボード415)は、以下のようにして、チャンババルブ37,67の開閉動作を制御する。すなわち、上位制御部は、それぞれチャンババルブ37,67の開閉動作を指示する2つの指示信号を含む2つの指示情報V1DO,V4DOを出力する。下位制御部は、上位制御部が出力する2つの指示情報V1DO,V4DOが含む2つの指示信号をそれぞれチャンババルブ37,67に与えてチャンババルブ37,67の開閉動作を直接制御する。
【0071】
指示情報V1DO〜V4DOが含む4つの指示信号は、それぞれ、下位制御部(I/Oボード415)から、フォトカプラ81,82,83,84を介して、チャンババルブ37,47,57,67のソレノイド37a,47a,57a,67aに伝達される。フォトカプラ81〜84は、I/Oモジュール413(図4参照)に設けられていてもよいし、I/Oボード415に設けられていてもよい。
【0072】
また、上位制御部(MC401)および下位制御部(I/Oボード415)は、以下のようにして、本発明の「第2のバルブ」に対応するチャンババルブ77の開閉動作を制御する。すなわち、上位制御部は、複数の第1のバルブのうちのどれを追従対象バルブとするかを示す追従対象バルブ指定情報SLDOを出力する。チャンババルブ47が追従対象バルブである場合には、上位制御部は、チャンババルブ47を追従対象バルブとすることを示す追従対象バルブ指定情報SLDOを出力する。
【0073】
下位制御部は、選択部419を含んでいる。選択部419は、上位制御部が出力する追従対象バルブ指定情報SLDOに基づいて、下位制御部に入力される複数の第1のバルブの開閉動作を指示する複数の第1の指示信号の中から、追従対象バルブの開閉動作を指示する第1の指示信号を選択する。チャンババルブ47が追従対象バルブである場合には、選択部419は、指示情報V2DO,V3DOが含むチャンババルブ47,57の開閉動作を指示する2つの第1の指示信号の中から、チャンババルブ47の開閉動作を指示する第1の指示信号を選択する。なお、図6に示した例では、選択部419は、上記2つの第1の指示信号と、指示情報V1DO,V4DOが含むチャンババルブ37,67の開閉動作を指示する2つの指示信号の、合わせて4つの指示信号の中から1つの指示信号を選択できるように構成されている。
【0074】
また、上位制御部は、開時間差情報OPDOと閉時間差情報CLDOを出力する。開時間差情報OPDOは、追従対象バルブであるチャンババルブ47の開動作のタイミングに対するチャンババルブ77の開動作のタイミングのずれを示す開時間差を表す。閉時間差情報CLDOは、追従対象バルブであるチャンババルブ47の閉動作のタイミングに対するチャンババルブ77の閉動作のタイミングのずれを示す閉時間差を表す。チャンババルブ47の開期間に対するチャンババルブ77の開期間のずれを示す開期間ずれ情報は、上記開時間差と閉時間差とを含む。
【0075】
下位制御部は、更に、開時間差情報OPDOが表す開時間差を保持する開時間差保持部426と、閉時間差情報CLDOが表す閉時間差を保持する閉時間差保持部428とを含んでいる。本発明における「開期間ずれ情報保持部」は、開時間差保持部426と閉時間差保持部428とによって構成されている。
【0076】
下位制御部は、更に、開タイミング生成部427と閉タイミング生成部429とを含んでいる。開タイミング生成部427および閉タイミング生成部429には、選択部419によって選択された第1の指示信号が入力される。開タイミング生成部427には、更に、開時間差保持部426が保持する開時間差が入力される。本実施の形態では、開タイミング生成部427は、チャンババルブ47の開閉動作を指示する第1の指示信号のうちのチャンババルブ47の開動作を指示する部分と、開時間差とに基づいて、チャンババルブ77の開動作のタイミングを指定する開タイミング指定信号を生成する。この開タイミング指定信号は、チャンババルブ47の開動作のタイミングに対して開時間差だけずれたチャンババルブ77の開動作のタイミングを指定する。
【0077】
また、閉タイミング生成部429には、更に、閉時間差保持部428が保持する閉時間差が入力される。本実施の形態では、閉タイミング生成部429は、チャンババルブ47の開閉動作を指示する第1の指示信号のうち、チャンババルブ47の閉動作を指示する部分と、閉時間差とに基づいて、チャンババルブ77の閉動作のタイミングを指定する閉タイミング指定信号を生成する。この閉タイミング指定信号は、チャンババルブ47の閉動作のタイミングに対して閉時間差だけずれたチャンババルブ77の閉動作のタイミングを指定する。
【0078】
下位制御部は、更に、チャンババルブ77の開閉動作を指示する第2の指示信号を生成する第2の指示信号生成部424を含んでいる。第2の指示信号生成部424には、開タイミング生成部427によって生成された開タイミング指定信号と、閉タイミング生成部429によって生成された閉タイミング指定信号が入力される。第2の指示信号生成部424は、チャンババルブ77が、開タイミング指定信号によって指定されたタイミングの開動作と閉タイミング指定信号によって指定されたタイミングの閉動作を行うように、第2の指示信号を生成する。
【0079】
第2の指示信号は、下位制御部(I/Oボード415)から、フォトカプラ85を介して、チャンババルブ77のソレノイド77aに伝達される。このようにして伝達された第2の指示信号によって、チャンババルブ77の開閉動作が制御される。フォトカプラ85は、フォトカプラ81〜84と同様に、I/Oモジュール413(図4参照)に設けられていてもよいし、I/Oボード415に設けられていてもよい。
【0080】
また、第2の指示信号生成部424には、更に、選択部419によって選択された第1の指示信号が入力される。第2の指示信号生成部424は、例外判定部425を含んでいる。例外判定部425の動作については、後で詳しく説明する。
【0081】
<ALD法による成膜処理>
次に、図1に示した成膜装置100によって実行されるALD法による成膜処理について説明する。ALD法による成膜処理では、ウエハWは、処理容器1内においてサセプタ15に載置された状態で、図示しないヒータによって加熱される。この状態で、ウエハWに対して、複数のガスを、互いに異なるタイミングで間欠的に繰り返し供給することによって、ウエハW表面に所定の薄膜が成膜される。
【0082】
一例として、ALD法によってTiN膜を形成する場合について説明する。この場合には、以下の(1)〜(8)の一連の工程を繰り返し行うことによって、TiN薄膜を繰り返し堆積させて、所望の膜厚のTiN膜を形成する。なお、以下の一連の工程は、バルブ33,43,53,63,73が開放された状態で行われる。
(1)チャンババルブ57を開放し、原料ガス供給源50から処理容器1内へ原料ガスとしてTiClガスを供給して、TiClをウエハW表面に付着させる。
(2)チャンババルブ57を閉鎖し、TiClガスの供給を停止する。
(3)チャンババルブ67を開放し、第2のパージガス供給源60から処理容器1内へNガスを供給して、処理容器1内をNガスにてパージすることにより残留したTiClガスを排除する。
(4)チャンババルブ67を閉鎖し、Nガスの供給を停止する。
(5)チャンババルブ47,77を開放し、第1および第2の反応ガス供給源40,70から処理容器1内へ反応ガスとしてNHガスを供給して、ウエハW表面に付着していた上記TiClと反応させて、原子レベルもしくは分子レベルの厚さのTiN薄膜を形成する。
(6)チャンババルブ47,77を閉鎖し、NHガスの供給を停止する。
(7)チャンババルブ37を開放し、第1のパージガス供給源30から処理容器1内へNガスを供給して、処理容器1内をNガスにてパージすることにより残留したNHガスを排除する。
(8)チャンババルブ37を閉鎖し、Nガスの供給を停止する。
【0083】
図7は、上記のALD法による成膜処理における、3つのチャンババルブ47,57,77の動作の一例を示すタイミングチャートである。図7では、チャンババルブ47,57,77を、それぞれ記号V47,V57,V77で表している。タイミングチャートにおける立ち上がりと立ち下りは、それぞれ、チャンババルブの開動作のタイミングと閉動作のタイミングを表している。また、図7では、チャンババルブ47,57,77の開期間を、それぞれ記号T47,T57,T77で表し、チャンババルブ47の開動作のタイミングに対するチャンババルブ77の開動作のタイミングのずれを示す開時間差を記号tで表し、チャンババルブ47の閉動作のタイミングに対するチャンババルブ77の閉動作のタイミングのずれを示す閉時間差を記号tで表している。なお、図7に示したタイミングチャートは模式的に示したものであり、実際の動作は、これとは異なっていてもよい。
【0084】
図7に示したように、ガス供給制御部200は、本発明の「複数の第1のバルブ」に対応するチャンババルブ47,57の開期間T47,T57が重ならないように、チャンババルブ47,57の開閉動作を制御する。また、図7に示したように、ガス供給制御部200は、本発明の「第2のバルブ」に対応するチャンババルブ77の開期間T77の少なくとも一部分が、追従対象バルブであるチャンババルブ47の開期間T47と所定の時間上の関係を有して重なるように、チャンババルブ77の開閉動作を制御する。図7に示した例では、開時間差tおよび閉時間差tが、所定の時間上の関係に対応する。
【0085】
なお、図7に示した例では、チャンババルブ77の開動作のタイミングは、チャンババルブ47の開動作のタイミングよりも後にずれている。また、チャンババルブ77の閉動作のタイミングは、チャンババルブ47の閉動作のタイミングよりも後にずれている。開時間差tと閉時間差tは、異なっていてもよいし、等しくてもよい。
【0086】
<本実施の形態の効果>
以上説明したように、成膜装置100は、処理容器1と、第1の反応ガス供給路と、原料ガス供給路と、第2の反応ガス供給路と、第1の反応ガス供給路の開閉を行うチャンババルブ47と、原料ガス供給路の開閉を行うチャンババルブ57と、第2の反応ガス供給路の開閉を行うチャンババルブ77と、チャンババルブ47,57,77の開閉動作を制御するガス供給制御部200とを備えている。第1の反応ガス供給路は、複数のガス吐出口6aを有している。原料ガス供給路は、複数のガス吐出口6bを有している。第2の反応ガス供給路は、複数のガス吐出口6aおよび複数のガス吐出口6bとは異なる位置に配置された複数のガス吐出口8aを有している。
【0087】
本実施の形態では、原料ガスと第1の反応ガスは、それぞれ、原料ガス供給路と第1の反応ガス供給路によって処理容器1内に供給される。また、ガス供給制御部200は、第1の反応ガス供給路の開閉を行うチャンババルブ47と原料ガス供給路の開閉を行うチャンババルブ57を、それらの開期間T47,T57が互いに重ならないように制御する。これにより、本実施の形態によれば、共通のガス供給路を用いて原料ガスと反応ガスを切り換えて処理容器1内に供給する場合に比べて、処理容器1内に供給する原料ガスと反応ガスの切り換えを短時間で行うことが可能になる。
【0088】
また、本実施の形態に係る成膜装置100は、第2の反応ガス供給路と、第2の反応ガス供給路の開閉を行うチャンババルブ77を備えている。第2の反応ガス供給路は、複数のガス吐出口6a,6bとは異なる位置に配置された複数のガス吐出口8aを有している。これにより、本実施の形態によれば、短時間で、第1および第2の反応ガスをウエハWの表面の全域の近傍に行き渡らせることが可能になる。
【0089】
更に、本実施の形態では、ガス供給制御部200は、チャンババルブ77の開期間T77の少なくとも一部分が、チャンババルブ47の開期間T47と所定の時間上の関係を有して重なるように、チャンババルブ77の開閉動作を制御する。これにより、本実施の形態によれば、処理容器1内への第1の反応ガスの供給期間と処理容器1内への第2の反応ガスの供給期間の関係を調整することができる。そのため、本実施の形態によれば、処理容器1内への第1の反応ガスの供給期間と処理容器1内への第2の反応ガスの供給期間が1つのチャンババルブによって制御される場合に比べて、ウエハWの近傍における第1および第2の反応ガスの分布を細かく制御することが可能になる。
【0090】
また、本実施の形態では、特に、チャンババルブ47が開閉を行う1つの第1のガス供給路(第1の反応ガス供給路)と、チャンババルブ77が開閉を行う第2のガス供給路(第2の反応ガス供給路)は、処理容器1内に同じ反応ガスであるNHガスを供給する。従って、本実施の形態によれば、ウエハWの近傍におけるNHガスの分布を細かく制御して、ウエハWの近傍においてNHガスの濃度の均一性を高くすることが可能になる。
【0091】
第1のガス供給路および複数のガス吐出口6aを介して処理空間9内に吐出されたNHガスは、ウエハWの中央付近から径外方向へ拡散していくが、この過程で原料ガスであるTiClとの反応によってNHが消費されていくものと考えられる。ここで、例えば300mm径以上の大型のウエハWを処理する場合、NHガスをウエハWの中央付近のみから吐出すると、ウエハWの周縁部にNHガスが十分な量で到達しない場合があり、該周縁部での成膜反応が効率的に進行せず、ウエハ面内でTiN膜の膜厚に不均一が生じる懸念がある。それに対して、本実施の形態では、第1のガス供給路および複数のガス吐出口6aに加え、第2の反応ガス供給路および複数のガス吐出口8aを介して、別途NHガスをウエハWの周縁部に向けて供給することによって、ウエハWの面内に均等にNHガスを供給できる。
【0092】
更に、本実施の形態では、ガス吐出口6aを介して処理空間9に吐出され、ウエハWの中央付近から径外方向へ拡散していくNHガスの拡散速度を考慮して、チャンババルブ47の開閉動作にチャンババルブ77の開閉動作を追従させている。例えば図7に示したように、チャンババルブ77の開動作のタイミングを、チャンババルブ47の開動作のタイミングよりも開時間差tだけ遅延させている。このような時間制御によって、成膜反応によって消費されたNHの不足分を補うための、必要最小限の量のNHガスを、ガス吐出口8aから直接ウエハWの周縁部へ向けて供給することが可能になり、ウエハWの面内で均一な成膜処理が実現する。また、チャンババルブ77の開動作のタイミングを、チャンババルブ47の開動作のタイミングよりも開時間差tだけ遅延させることによって、チャンババルブ47とチャンババルブ77の開動作を同期させる場合に比べて、NHガスの供給量を節約することができる。なお、チャンババルブ77の開時間差t、開期間T77およびガス吐出口8aから吐出させるNHガスの流量は、ウエハWの径、ガス吐出口6aから供給するNHガスの流量やその拡散速度などを考慮して決定することができる。
【0093】
以上のことから、本実施の形態によれば、成膜装置100において、ウエハWの処理に使用される第1および第2の反応ガスの切り替えを短時間で行い、且つウエハWの近傍における第1および第2の反応ガスの分布を制御することが可能になる。
【0094】
なお、本実施の形態では、第2の指示信号生成部424は、開時間差情報OPDOによって与えられた開時間差と閉時間差情報CLDOによって与えられた閉時間差の両方に基づいて、第2のチャンババルブ77の開閉動作を指示する第2の指示信号を生成している。しかし、第2の指示信号生成部424は、開時間差と、予め設定されたチャンババルブ77の開期間T77とに基づいて、第2の指示信号を生成してもよい。
【0095】
図8は、上述のように、第2の指示信号生成部424が、開時間差と、予め設定されたチャンババルブ77の開期間T77とに基づいて、第2の指示信号を生成する場合についての、3つのチャンババルブ47,57,77の動作の例を示すタイミングチャートである。図8におけるチャンババルブ47,57,77の動作の表し方は、図7における表し方と同じである。上述のように第2の指示信号を生成する場合には、図8に示したように、チャンババルブ77の開期間T77がチャンババルブ47の開期間T47よりも短く、チャンババルブ77の閉動作のタイミングが、チャンババルブ47の閉動作のタイミングよりも早くなる場合もある。
【0096】
また、図7および図8に挙げた例では、チャンババルブ77の開期間T77が追従対象バルブであるチャンババルブ47の開期間T47と部分的に重なっているが、開期間T77は、必ずしも開期間T47と重ならなくてもよい。
【0097】
また、本実施の形態では、ガス供給制御部200は、追従対象バルブであるチャンババルブ47の開期間T47に対するチャンババルブ77の開期間T77のずれを示す開期間ずれ情報(開時間差および閉時間差)を保持し、この開期間ずれ情報に基づいて、チャンババルブ47の開期間T47を基準としてチャンババルブ77の開期間T77を決定している。しかし、ガス供給制御部200は、追従対象バルブ以外の第1のバルブであるチャンババルブ57の開期間T57に対するチャンババルブ77の開期間T77のずれを示す開期間ずれ情報を保持し、この開期間ずれ情報に基づいて、チャンババルブ57の開期間T57を基準としてチャンババルブ77の開期間T77を決定してもよい。この場合には、チャンババルブ57の開動作のタイミングに対するチャンババルブ77の開動作のタイミングのずれと、チャンババルブ57の閉動作のタイミングに対するチャンババルブ77の閉動作のタイミングのずれは、比較的大きくなる。そのため、この場合には、処理時間に余裕を持って第2の指示信号を生成することが可能になる。
【0098】
<例外判定部の動作>
次に、図6および図7を参照して、例外判定部425の動作について説明する。例外判定部425は、第2の指示信号生成部424において生成された第2の指示信号が正常であるか否かを判定し、正常ではない場合には、上位制御部(MC401)に対して、正常ではないことを示すデジタル・インプット情報(以下、エラー情報と言う。)ERDIを出力する。正常ではない場合の例としては、追従対象バルブであるチャンババルブ47の開動作のタイミングに対するチャンババルブ77の開動作のタイミングのずれを示す開時間差tが大きすぎて、チャンババルブ47,77の開期間T47,T77aが重ならない場合が挙げられる。正常ではない場合の他の例としては、チャンババルブ47の閉動作のタイミングに対するチャンババルブ77の閉動作のタイミングのずれを示す閉時間差tが大きすぎて、チャンババルブ77の開期間T77がチャンババルブ47の次の開期間T47と重なる場合が挙げられる。上位制御部(MC401)は、エラー情報ERDIを取得すると、成膜装置100における成膜処理を中止するように、成膜装置100の各構成部を制御する。
【0099】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、ガス供給制御部200は、上位制御部(MC401)が、チャンババルブ77の開閉動作を指示する第2の指示信号を含む指示情報を出力できるように構成されていてもよい。この場合、下位制御部(I/Oボード415)は、上記指示情報に含まれる第2の指示信号をチャンババルブ77に与えてチャンババルブ77の開閉動作を直接制御する。なお、この場合には、チャンババルブ77の開動作のタイミングを、チャンババルブ47の開動作のタイミングよりも前にずらすことも可能である。
【0100】
また、本発明の処理装置は、ALD装置に限らず、複数のガスを供給して成膜処理等を行う他の処理装置に適用することができる。また、本発明は、半導体ウエハに限らず、液晶表示装置、有機ELディスプレイ、薄膜太陽電池パネル等に用いられる大型のガラス基板等を処理する処理装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1…処理容器、10…処理部、20…ガス供給部、30,40,50,60,70…ガス供給源、31,41,51,61,71…配管、37,47,57,67,77…チャンババルブ、37a,47a,57a,67a,77a…ソレノイド、80…集合バルブユニット、100…成膜装置、200…ガス供給制御部、300…制御装置、301…EC、401…モジュールコントローラ(MC)、413…I/Oモジュール、415…I/Oボード、419…選択部、424…第2の指示信号生成部、425…例外判定部、426…開時間差保持部、427…開タイミング生成部、428…閉時間差保持部、429…閉タイミング生成部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8