【実施例】
【0094】
以下に本発明の実施例(発明例)を比較例と共に示すが、これらは本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
1H NMR測定は、JEOL AL 400型核磁気共鳴分光器(400 MHz)を用いた。スペクトルはテトラメチルシランのピークを0.00 ppm、クロロホルムのピークを7.26 ppmとして較正した。
【0095】
(実施例1)
図4に示す合成手順により金属錯体ナノシートを作製した。
【0096】
<化合物1の合成>
【化24】
【0097】
テトラヒドロフラン/トルエンの15/15mLの混合溶媒中の1,3,5−トリブロモベンゼン(1.26g、4.0mmol)溶液に、4−ホルミルフェニルボロン酸(3.51g、23.4mmol)、Pd(PPh
3)
4(693mg、0.6mmol、15mmol%)及びNa
2CO
3(水5mL中に2.48g、23.4mmol)を添加した。得られた混合液を還流温度で16時間加熱し、n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1(体積比)の混合液を溶離液とした薄層クロマトグラフィ(TLC)により反応の進行を確認した。室温に冷却後、水を加え、混合溶液を酢酸エチルで抽出した。有機相を無水Na
2SO
4で乾燥し、濾過した。その後、混合物を減圧濃縮し、n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1の混合液(体積比)を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィにより残渣を精製し、化合物1を白色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ/ppm): 10.09 (s, 3H, O=CH), 8.03-8.01 (d, J=8.0, 6H), 7.88-7.86 (d, J=8.0, 6H), 7.91 (s, 3H); FAB-MS (m/z): 390[M]
+.
【0098】
<化合物2の合成>
【化25】
【0099】
2.0gのピロール−2−カルボキシアルデヒド、6.0gの水酸化カリウム、及び5mLのヒドラジン一水和物の混合物を100mL容器に入れた。次いで1.7gのエチレングリコールを加えた後、この混合物を150℃で約1.5時間還流した。室温に冷却後、ジエチルエーテルによる抽出、脱イオン水及び塩水による洗浄、無水MgSO
4による乾燥、及び減圧蒸留による溶媒除去を行って、淡黄色の生成物(化合物2)を得た(4.20g、収率:82.5%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ/ppm): 7.69 (s, 1H, N-H), 6.50-6.49 (d, 1H, J=4.0), 6.03-6.01 (t, 1H, J=4.0), 5.8 (s, 1H), 2.14 (s, 3H, CH
3); FAB-MS (m/z): 81[M]
+.
【0100】
<配位子L1の合成>
【化26】
【0101】
化合物1(450mg、1.15mmol)及び化合物2(2−メチルピロール)(0.63mL、7.49mmol)をAr雰囲気下で100mLのCH
2Cl
2中に溶解した。トリフルオロ酢酸(TFA)を一滴加えると、溶液は淡黄色から鮮紅色に変化した。室温で3時間攪拌を行った。TLC(シリカ、CH
2Cl
2)によりアルデヒドが完全に消費されたことを確認した後、クロラニル (848.2 mg, 3.45 mmol)のCH
2Cl
2溶液を加え、15分間攪拌を継続した。反応混合物を水洗し、無水MgSO
4による乾燥、濾過、及びエバポレータによる蒸発乾燥を順に行った。得られた粗化合物をアルミナカラムクロマトグラフィ(溶離液:CH
2Cl
2)で精製したところ、配位子L1が濃黄色の粉末として得られた(230.7mg、収率:24.5%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ/ppm): 7.95 (s, 3H, Ar), 7.81-7.79 (d, J = 8.0 Hz, 6H, Ar), 7.62-7.60 (d, J = 8.0 Hz, 6H, Ar), 6.57-6.56 (d, J = 4.0 Hz, 6H, Ar), 6.20-6.19 (d, J = 4.0 Hz, 6H, Ar), 2.47 (s, 18H, -CH
3);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3, δ/ppm): 165.18, 146.78, 141.99, 137.88, 135.32, 132.12, 130.51, 128.89, 127.12, 116.54, 112.11, 105.97 (Ar), 18.21 (CH
3); FAB-MS (m/z): 817 [M]
+.
【0102】
<ナノシートの合成(1):単層シート>
50mMの酢酸亜鉛(II)水溶液30mLをバイアルに入れ、当該酢酸亜鉛(II)水溶液の上に、1mMの配位子L1のジクロロメタン溶液をマイクロシリンジにより極少量(14μL)散布した。20分静置したのち、気−液界面に生成したナノシートをLangmuir-Schaefar法を用いて各種基板に転写した。ナノシートの合成は同一の手順で複数回実施し、複数枚のシートを得た。得られたシートの一つについてAFM像を
図5に示す。100μm
2を超える大きさのナノシートが形成されていることが分かる。
【0103】
(化学構造)
得られたナノシートの一つについて可視光吸収スペクトルを測定し、次式で表されるジピリン配位子含有単核錯体と比較した(
図6)。
【化27】
その結果、単核錯体に見られた波長495nm付近のピークが長波長側の波長500nmにシフトしており、錯体形成が示唆されていた。
また、当該ナノシートを導電性カーボン両面テープ上に貼り付けてサンプルとし、X線光電子スペクトルをULVAC−PHI社のPHI 500 Versa Probeを用いて測定した。X線光源としてAlKα線(15kV、25W又は20kV、100W)を用いて測定した。得られたスペクトルは、C1sのピークが284.6eVとなるようにチャージアップの補正を行った。得られたスペクトルを次式で表されるジピリン配位子(a)及び当該配位子のモノマー錯体(b)のものと比較した。結果を
図22に示す。配位子の状態では非等価であったNは、モノマー錯体及びナノシートにおいて等価となったことが理解できる。また、配位子の状態では見られなかったZnがモノマー錯体及びナノシートにおいて確認された。
【化28】
【化29】
これらの結果から、当該ナノシートは配位子L1をもつ錯体ポリマーであり、六角形状の網目分子構造をもつと判断できる。
【0104】
(膜厚)
得られたナノシートの一つをSi−TMS基板上に置き、AFMの探針でナノシートの一部の領域をスクラッチして切り抜き、厚みを
図7の右図の矢印の方向に走査して調査した。その結果、シートは平均で約1.2nmの厚みであることが確認された。膜厚測定は膜の端部やシワ部分を避けた平坦な箇所に対して行った。この厚みの値は得られたナノシートが単層であることを示している。
【0105】
(加熱処理の効果)
得られたナノシートの一つをSi−TMS基板上に置き、120℃で3日間乾燥機内で加熱したときのAFM像の変化を
図8に示す。加熱処理前には見られていたシワ(代表的には
図8の(a)において丸で囲んだ場所に存在する直線上の変色箇所)が加熱処理後にはほとんど消失し、平坦なシートに変化したことが分かる。
【0106】
<ナノシートの合成(2):多層シート>
1mMの配位子L1のジクロロメタン溶液10mLをバイアルに入れ、当該ジクロロメタン溶液の上に、水相と有機相の分離状態が維持されるように純水10mLを静かに重ねた後、更に50mMの酢酸亜鉛(II)水溶液20mLを静かに重ねた。1日静置したところ、水相と有機相の界面に橙色の薄い不溶性シートが形成されたことを確認した。
【0107】
当該シートの膜厚をAFMにより測定したところ、平均で約1000nmの厚みであることが確認された。膜厚測定は膜の端部やシワ部分を避けた平坦な箇所に対して行った。この厚みの値は得られたナノシートが多層であることを示している。
【0108】
(実施例2)
図9に示す合成手順により配位子L2を合成した。
【0109】
<化合物2’>
次式で表されるピロール化合物を和光純薬工業から入手した。
【化30】
【0110】
2.0gのピロール−2−カルボキシアルデヒド、6.0gの水酸化カリウム、及び5mLのヒドラジン一水和物の混合物を100mL容器に入れた。1.7gのエチレングリコールを加えた後、混合物を150℃で約1.5時間還流した。室温に冷却後、ジエチルエーテルによる抽出、脱イオン水及び塩水による洗浄、MgSO
4による乾燥、及び減圧蒸留による溶媒除去を行って、淡黄色の生成物(化合物2’)を得た(4.20g、収率:82.5%)。
【0111】
<配位子L2の合成>
【化31】
【0112】
化合物1と化合物2’から、配位子L1と同様の合成手順(
図9)に従って、配位子L2を合成した。配位子L2が橙色の粉末として得られた(収率:24.2%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ/ppm): 7.99 (s, 3H, Ar), 7.87-7.85 (d, J = 8.0 Hz, 6H, Ar), 7.46-7.45 7.81-7.79 (d, J = 8.0 Hz, 6H, Ar), 2.33 (s, 18H, -CH
3), 2.31-2.27 (q, 12H, -CH
2-), 1.31 (s, 18H, -CH
3), 1.01-1.96 (t, J = 8.0 Hz, 18H, -CH
3);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3, δ/ppm): 150.29, 141.89, 140.51, 138.32, 137.01, 136.04, 134.59, 131.33, 130.22, 127.23, 125.05 (Ar), 17.58, 14.88, 14.41, 12.11 (alkyl); FAB-MS (m/z): 1070 [M]
+.
【0113】
(実施例3)
図10に示す合成手順により配位子L3を合成した。
【0114】
<化合物3の合成>
【化32】
【0115】
1.57Mのt−BuLiのペンタン溶液(15.9mL)を、−78℃のトリス(4−ブロモフェニルアミン)(2g、24.9mmol)の無水ジエチルエーテル溶液30mLに窒素雰囲気下で滴下した。反応混合物を当該温度を維持したまま1時間攪拌した後、無水DMF(1.92mL、24.9mmol、6当量)を滴下により加えた。生成した反応懸濁液を室温に戻して2時間攪拌した。飽和NH
4Clをゆっくり加えることで反応を制御した。有機溶媒を留去した後、水相をジクロロメタンで抽出した。有機相は無水MgSO
4による乾燥及びエバポレータによる蒸発乾燥を経た後、n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1(体積比)の混合液を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製し、化合物3を淡黄色の固体として得た(852mg、収率:46%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ/ppm): 9.95 (s, 3H, O=CH), 7.86-7.84 (d, 6H, J = 8.0), 7.26-7.24 (d, 6H, J = 8.0); FAB-MS (m/z): 330 [M]
+.
【0116】
<配位子L3の合成>
【化33】
化合物3と実施例1で合成した化合物2から、配位子L1と同様の合成手順(
図10)に従って、配位子L3を合成した。配位子L3が茶色の固体として得られた(収率:18.7%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ/ppm): 7.45-7.43 (d, 6H, J = 8.0), 7.24-7.22 (d, 6H, J = 8.0), 6.62-6.61 (d, 6H, J = 4.0), 6.20-6.19 (d, 6H, J = 4.0), 2.46 (s, 18H, CH
3); FAB-MS: 756.
【0117】
(実施例4)
図11に示す合成手順により配位子L4を合成した。
【0118】
<化合物4の合成>
【化34】
4−ホルミルフェニルボロン酸(2.002g、13.35mmol)に1.1当量のピナコール(1.806g、15.28mmol)を加えたものをTHF(30mL)及びトルエン(30mL)に溶解させた。すぐさまロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、真空下で乾燥させることによりピナコール保護された4−ホルミルフェニルボロン酸を定量的に得た。保護したものに無水硫酸ナトリウムを加えた後、窒素置換を行った。ジクロロメタンに溶解させ、保護したものに対して2.1当量の2−メチルピロール(2.55mL、29.5mmol)及び触媒量(50μL)のトリフルオロ酢酸(TFA)を加え室温、遮光条件下で3時間撹拌を行った。大気解放したのち1.1当量のクロラニル(3.61g、14.7mmol)を加え室温で5分間撹拌した。5分後、反応混合物を溶媒留去し、アルミナカラムクロマトグラフィ(溶離液:ジクロロメタン)にて分離を行い、化合物4を得た(2.677g、収率:54%)。
1H NMR (CDCl
3, 25℃) δ = 7.84 (d, J = 8.05, 2H), 7.46 (d, J = 8.05, 2H), 6.42(d, J = 4.03, 2H), 6.14 (d, J = 4.03, 2H), 2.44 (s, 3H) 1.38 (s, 6H)
【0119】
<配位子L4の合成>
【化35】
【0120】
ヘキサブロモベンゼン(60.2mg、0.109mmol)に15当量の化合物4(819mg、2.19mmol)及び触媒量のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド(Pd(PPh
3)
2Cl
2、52.0mg、74mmol)、トリフェニルホスフィン(PPh
3、113mg、431mmol)、及び6当量の炭酸カリウム(94.1mg、0.68mmol)を加えたものを窒素下でDMSO(30mL)、tert−ブタノール(5mL)及び水(1.5mL)の混合溶媒に溶解させた。反応溶液を凍結脱気した後、90℃、遮光条件下で1週間撹拌した。1週間後、大気解放した反応溶液に塩水及びジクロロメタンを加え、数分撹拌したものをセライト濾過したものから、有機相を分取した。これを水で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。反応生成物をアルミナカラムクロマトグラフィ(溶離液:ジクロロメタン)で大まかに精製したのち、GPCを用いて配位子L4の分取を行った(1.1mg、収率:1%)。
【0121】
(実施例5)
実施例4で合成したジピリン(化合物4)と、ポルフィリン(化合物6)から鈴木カップリングにより配位子L5を合成した(
図12)。
【化36】
【0122】
<化合物6の合成>
化合物6の合成を
図13の手順に従って行った。ピロール(370μL、5.4mmol)とp−ブロモベンズアルデヒド(1.0g、5.4mmol)を窒素雰囲気下で500mLのCH
2Cl
2に溶解した。トリフルオロ酢酸(400μL、5.4mmol)を添加し、18時間攪拌した。次いで、クロラニル(1.35g、5.4mmol)を添加し、4時間攪拌した。次いで、Zn(OAc)
2(1.0g、5.4mmol)を添加し、1時間攪拌した。反応混合物を水洗し、無水Na
2SO
4を加えて乾燥させた。溶媒をエバポレータにより留去した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(溶離液は、n−ヘキサン:CH
2Cl
2=1:1体積比)で精製して、MeOH/CH
2Cl
2中で再結晶させ、化合物6を得た(0.26g、収率:20%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) : δ/ppm 7.91 (8H, d, J= 4.1 Hz), 8.08 (8H, d, J= 4.1 Hz), 8.95 (8H, s) MS (FAB MS) (m/z
calcd = 993.8); m/z
found : 994.
【0123】
<配位子L5の合成>
化合物6のポルフィリン(150mg、0.15mmol)、化合物4のジピリン(560mg、1.5mmol)、Pd(PPh
3)
2Cl
2(35mg、0.05mmol)、K
2CO
3(275mg、2mmol)及びPPh
3(170mg、0.65mmol)をDMSO(30mL)及びH
2O(0.06mL)(=500:1体積比)の混合溶媒に溶解した。この溶液を凍結脱気(3サイクル)し、80℃、窒素雰囲気下で4日間攪拌した。反応混合物を300mLの水で希釈し、CH
2Cl
2で抽出した(50mL×6回)。有機相を無水Na
2SO
4で乾燥させた後、この溶液を減圧濃縮すると紫色の固体を得た。この固体をMeOHで洗浄し、配位子L5を得た(73mg、収率:30%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) : δ/ppm 2.50 (24 H, s), 6.24 (8H, d, J=3.0 Hz), 6.66 (8H, d, J=3.7 Hz), 7.70 (8H, d, J=6.9 Hz), 8.00 (8H, d, J=8.1 Hz), 8.07 (8H, d, J=6.9 Hz), 8.35 (8H, d, J=7.9 Hz), 9.02 (8H, s).
13C NMR (125 MHz, CDCl
3) : δ/ppm 16.39, 117.57, 120.28, 125.00, 126.38, 129.04, 131.59, 131.75, 136.74, 138.13, 139.13, 141.07, 142.93, 150.06, 153.91
【0124】
<ナノシートの合成(3)>
ピリジンを1体積%含有するジクロロメタン10mL中に1.7mgの配位子L5を溶解して、配位子L5のジクロロメタン溶液を作製した。バイアルに入れた当該ジクロロメタン溶液の上に、水相と有機相の分離状態が維持されるように純水10mLを静かに重ねた後、更に0.2mMの酢酸亜鉛(II)水溶液10mLを静かに重ねた。2日間静置したところ、水相と有機相の界面に緑色の薄い不溶性シートが形成された。水相を純水で、有機相をCH
2Cl
2で希釈した後、水相をピペットで除去した。濾過後、当該シートを純水、MeOH及びCH
2Cl
2で洗浄し、真空乾燥した。
【0125】
配位子L5と合成したナノシートのX線光電子分光(XPS)のスペクトルチャートを
図14、
図15にそれぞれ示す。配位子L5のXPSにおいては窒素1sのピークが398.0eVと399.7eVの二つ観測されているが、ナノシートのXPSでは398.2eVのピーク強度が大きく観測されている。窒素と亜鉛のスペクトルのピーク面積比を計算したところ配位子L5では窒素:亜鉛=14:1,(計算値 12:1)、ナノシートでは窒素:亜鉛=6:1,(計算値 4:1)となっており、これらのことから合成したナノシートにおける配位子L5の亜鉛イオンの錯形成を確認できる。ここで、窒素のピーク面積比が計算より大きくなっているのは配位子の溶解に用いたピリジンが亜鉛に軸配位子として配位しているためだと考えられる。当該ナノシートは配位子L5をもつ錯体ポリマーであり、四角形状の網目分子構造をもつと判断できる。
【0126】
当該シートの膜厚をAFMにより測定したところ、平均で約20nmの厚みであることが確認された。膜厚測定は膜の端部やシワ部分を避けた平坦な箇所に対して行った。この厚みの値は得られたナノシートが多層であることを示している。
【0127】
(実施例6)
本発明に係るナノシートの光電変換特性を測定するため、以下の手順によりサンプル1〜5のナノシートを作製した。
【0128】
<サンプル1:4層ナノシート>
50mLガラスバイアル中に30mLの酢酸亜鉛(II)水溶液(50mM、Zn(OAc)
2・2H
2O 0.3292g)を加えた。実施例1に示した配位子L1の7.4×10
-5mol/L溶液(7.4×10
-4gの配位子を6.0mLジクロロメタン+0.3mL酢酸エチルに溶かす)20μL(4層分のナノシートが形成される量に相当)をガラスバイアル中の水面に静かに散布し、4時間静置してナノシートを形成した。その後SnO
2基板をLangmuir−Schaefer法により水面上に1分間接触させることでナノシートを転写した。さらに転写した基板を引き上げた後、純水、エタノール、ジクロロメタンを用いて順に基板を洗浄し、サンプル1を作製した。サンプル1の厚みは約4.8nm以下と推定される)。
【0129】
<サンプル2:多積層ナノシート>
LB膜作成装置(KSV NIMA社社製、形式KSV NIMA Small、以下同様)を用いてナノシートの合成及び積層を行った。初めにLB膜作成装置のトラフ、バリアー及び表面圧測定に用いるウィルヘルミプレートをエタノール及び純水により洗浄し、LB膜作成装置のトラフ中に60mLの酢酸亜鉛(II)水溶液(50mM、 Zn(OAc)
2・2H
2O 0.6584g)でトラフを満たした。トラフ上の水面から極少量の酢酸亜鉛水溶液を埃やごみと共に取り除き、トラフの面積を69.75cm
2に変更した(トラフの最大面積の90%に相当)。その後、実施例1に示した配位子L1の7.5×10
-4mol/L溶液(1.27×10
-3gの配位子を950μLのジクロロメタン+50μLの酢酸エチルに溶かす)16.5μLをトラフの水面上に静かに散布し、18時間静置してナノシートを形成した。その後、表面圧1.83mN/m(18時間静置後の表面圧)の下で、SnO
2基板をLS法(水面に対して平行な状態)により水面上に1分間接触させることでナノシートを転写し、純水、エタノール、ジクロロメタンを用いて順に基板を洗浄した。この過程を6回繰り返すことによりナノシートの多積層化を行い、サンプル2を作製した。サンプル2の平均層数を、可視光吸収の観測を行うことで算出したところ、27であった(単層あたりの吸光度0.00197、サンプルの吸光度0.0530、推定厚み約32nm)。
【0130】
<サンプル3:多積層ナノシート>
LB膜作成装置を用いてナノシートの合成及び積層を行った。初めにLB膜作成装置のトラフ、バリアー及び表面圧測定に用いるウィルヘルミプレートをエタノール及び純水により洗浄し、LB膜作成装置のトラフ中に60mLの酢酸亜鉛(II)水溶液(50mM、 Zn(OAc)
2・2H
2O 0.6584g)でトラフを満たした。トラフ上の水面から極少量の酢酸亜鉛水溶液を水面上の埃やごみと共に取り除き、トラフの面積を69.75cm
2に変更した(トラフの最大面積の90%に相当)。その後、実施例1に示した配位子L1の7.5×10
-4mol/L溶液(1.27×10
-3gの配位子を950μLのジクロロメタン+50μLの酢酸エチルに溶かす)16.5μLをトラフの水面上に静かに散布し、4時間静置してナノシートを形成した。その後、表面圧1.83mN/m(4時間静置後の表面圧)の下で、SnO
2基板をLS法(水面に対して平行な状態)により水面上に1分間接触させることでナノシートを転写し、純水、エタノール、ジクロロメタンを用いて順に基板を洗浄し、トラフの面積を2cm
2(基板面積に相当)減少させた。この過程を8回繰り返した。さらに多層化を進めるため、以下の作業を行った。上記と全く同じ工程でトラフの水面上に配位子溶液を静かに散布し(散布量22.0μL)、22時間静置することでナノシートを形成した。その後、表面圧1.83mN/m(22時間静置後の表面圧)の下で、上記工程で得られた多積層ナノシートが形成されたSnO
2基板をLS法(水面に対して平行な状態)により水面上に1分間接触させることでナノシートの更なる多積層化を実現した。純水、エタノール、ジクロロメタンを用いて順に基板を洗浄し、トラフの面積を2cm
2(基板面積に相当)減少させた。この過程を9回繰り返すことによりサンプル3を得た。サンプル3の平均層数を、可視光吸収の観測を行うことで算出したところ、36であった(単層あたりの吸光度0.00197、サンプルの吸光度0.0720、推定厚み約43nm)。
【0131】
<サンプル4:多積層ナノシート>
LB膜作成装置を用いてナノシートの合成及び積層を行った。初めにLB膜作成装置のトラフ、バリアー及び表面圧測定に用いるウィルヘルミプレートをエタノール及び純水により洗浄し、LB膜作成装置のトラフ中に60mLの酢酸亜鉛(II)水溶液(50mM、 Zn(OAc)
2・2H
2O 0.6584g)でトラフを満たした。トラフ上の水面から極少量の酢酸亜鉛水溶液を埃やごみと共に取り除き、トラフの面積を69.75cm
2に変更した(トラフの最大面積の90%に相当)。その後、実施例1と同じ配位子L1の7.5×10
-4mol/L溶液(1.27×10
-3gの配位子を950μLのジクロロメタン+50μLの酢酸エチルに溶かす)22.0μLをトラフの水面上に静かに散布し、17時間静置した。その後、表面圧0.45mN/m(17時間静置後の表面圧)の下で、SnO
2基板をLS法(水面に対して平行な状態)により水面上に1分間接触させることでナノシートを転写し、純水、エタノール、ジクロロメタンを用いて順に基板を洗浄した。この過程を10回繰り返した。さらに多層化を進めるため、以下の作業を行った。上記と全く同じ工程でトラフの水面上に配位子溶液を静かに散布し(散布量22.0μL)、18時間静置することでナノシートを形成した。その後、表面圧0.45mN/m(18時間静置後の表面圧)の下で上記工程で得られた多積層ナノシートが形成されたSnO
2基板をLS法(水面に対して平行な状態)により水面上に1分間接触させることでナノシートの更なる多積層化を実現した。純水、エタノール、ジクロロメタンを用いて順に基板を洗浄した。この過程を16回繰り返すことによりサンプル4を得た。サンプル4の平均層数を、可視光吸収の観測を行うことで算出したところ、73であった(単層あたりの吸光度0.00197、サンプルの吸光度0.143、推定厚み約88nm)。
【0132】
<サンプル5:多層ナノシート>
50mLガラスバイアル中に実施例1と同じ配位子L1のジクロロメタン溶液(1.0×10
-4mol/L、8.2×10
-4g)を10mL加え、さらに純水10mLを加えて有機層と水層に分離した二相界面を形成させた。2時間静置した後、酢酸亜鉛(II)水溶液(100mM、 Zn(OAc)
2・2H
2O 0.6584g)を加えた。この状態で4日静置し、界面上でのナノシートの生成を確認した。水層部分を取り除き純水を加える操作を5回行い、さらに有機層部分を取り除き有機層にジクロロメタンを加える操作を2回行った。その後SnO
2基板に生成したナノシートを乗せることでサンプル5を得た。サンプル5の平均層数を、可視光吸収の観測を行うことで算出したところ、243であった(単層あたりの吸光度0.00197、サンプルの吸光度0.4796、推定厚み約292nm)。
【0133】
<サンプル6:配位子L5を用いた多層ナノシート>
ピリジンを1体積%含有するジクロロメタン10mL中に1.7mgの配位子L5を溶解して、配位子L5のジクロロメタン溶液を作製した。バイアルに入れた当該ジクロロメタン溶液の上に、水相と有機相の分離状態が維持されるように純水10mLを静かに重ねた後、更に0.2mMの酢酸亜鉛(II)水溶液10mLを静かに重ねた。2日間静置したところ、水相と有機相の界面に緑色の薄い不溶性シートが形成された。水相を純水で、有機相をCH
2Cl
2で希釈した後、水相をピペットで除去した。濾過後、当該シートを純水、MeOH及びCH
2Cl
2で洗浄し、真空乾燥した。その後SnO
2基板に生成したナノシートを乗せることでサンプル6を得た。ナノシートの厚みは20nmと推測される。
【0134】
<光電流測定手順>
1〜6のすべてのサンプルに対して下記に示す手法で光電流の測定を行った。電解質溶液として過塩素酸テトラブチルアンモニウム(0.10M)及び犠牲試薬トリエタノールアミン(0.05M)の混合溶液12mL(過塩素酸テトラブチルアンモニウム0.4103g及びトリエタノールアミン0.0894g)を調整した。セルに混合溶液を加え、作用電極として当該ナノシートを転写したSnO
2基板(サンプル1〜サンプル6のいずれか1つ)、参照電極として銀線ならびに対電極として白金電極を用いた3電極系をセットし、アルゴンガスにより30分バブリングした。
【0135】
その後、作用電極に対して光照射を行い、光電流の観測を行った。光電流の観測は光のon/offを25秒ずつ繰り返すことにより行い、また作用電極への印加電位は銀線基準で0Vで行った。銀線基準で0Vの電位を作用電極に印加しても、トリエタノールアミンの酸化電流が暗電流として流れないことも確認した。サンプル1−5については500nmの単色光を照射した。サンプル6については450nmの単色光を照射した。サンプル1については光電流値の照射波長依存(400nm、450nm、500nm、550nm、600nm)を測定した。サンプル2及び4に関して吸収波長500nmにおける光電流観測を繰り返し行い、耐久度測定を行った。サンプル2、3、4、及び5については500nmの単色光に対する量子収率および外部量子効率の算出を行った。またサンプルが転写されていないSnO
2基板に対しても光電流の観測を行い、光電流が観測されないことを明らかとした。光電流はALS 650DT(BAS社製)で検出・データ取得した。光源としてHIGH POWERキセノン光源 MAX302(旭分光株式会社)を利用し、単色光の強度としては同社のカタログ値を採用した。
【0136】
<光電流測定結果>
サンプル1
結果を
図23に示す。各波長の光を25秒照射し、光照射終了直前の光電流を測定したところ、400nmの光照射により13.3nAの光電流が、450nmの光照射により17.1nA、500nmの光照射により30.5nA、550nmの光照射により5.0nA、600nmの光照射により0.5nAの光電流が観測された。また、500nmの光照射については、光のon/offに応じて流れる光電流の変化を示すグラフも
図24に示す。
【0137】
サンプル2
結果を
図25(最初の4回の繰り返し)及び
図26(全体)に示す。500nmの光照射による光電流の測定により観測初期(1回目の光照射終了直前)に126nAの光電流が検出された。この際の量子収率は67.2%、外部量子効率は7.77%であった。さらに132回のon/off繰り返し測定の後27.8nAの光電流が観測され、電流量が一定になった。電流値の減少はナノシートの物理的な剥離によるものであり、電極との固定化法を改善することでより安定な光電流が取り出せるものと考えられる。
【0138】
サンプル3
結果を
図27に示す。500nmの光照射による光電流の測定により観測初期(1回目の光照射終了直前)に131nAの光電流が検出された。この際の量子収率は52.5%、外部量子効率は8.08%であった。
【0139】
サンプル4
結果を
図28(最初の4回の繰り返し)及び
図29(全体)に示す。500nmの光照射による光電流の測定により観測初期(1回目の光照射終了直前)に114nAの光電流が検出された。この際の量子収率は24.9%、外部量子効率は7.03%であった。さらに130回のon/off繰り返し測定の後18.1nAの光電流が観測され、電流量が一定になった。電流値の減少はナノシートの物理的な剥離によるものであり、電極との固定化法を改善することでより安定な光電流が取り出せるものと考えられる。
【0140】
サンプル5
結果を
図30に示す。500nmの光照射による光電流の測定により観測初期(1回目の光照射終了直前)に0.86nAの光電流が検出された。この際の量子収率は0.079%、外部量子収率は0.053%であった。
【0141】
サンプル6
結果を
図31に示す。450nmの光照射による光電流の測定により観測初期(1回目の光照射終了直前)に6.9nAの光電流が検出された。