特許第6361009号(P6361009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6361009光電変換特性を有するジピリン金属錯体シート及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361009
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】光電変換特性を有するジピリン金属錯体シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 79/00 20060101AFI20180712BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20180712BHJP
   H01L 51/42 20060101ALI20180712BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C08G79/00
   H01G9/20 113B
   H01L31/08 T
   H01G9/20 111D
   H01G9/20 115A
   C08J5/18CFJ
【請求項の数】14
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2014-84073(P2014-84073)
(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公開番号】特開2015-203085(P2015-203085A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年3月16日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 錯体化学会 第63回討論会 要旨集 発行所 錯体化学会、発行日 平成25年10月15日 錯体化学会 第63回討論会 琉球大学千原キャンパス、平成25年11月4日 平成25年度 理学部化学科 卒業論文要旨集 該当ページ 第44頁 発行所 国立大学法人東京大学、配布日 平成26年3月7日以降平成26年3月14日以前 平成25年度卒論発表会 東京大学理学部化学科、平成26年3月14日 第一回東北大学リーディング大学院研究会「金属錯体の固体物性最前線‐金属錯体と固体物性物理と生物物性の連携新領域を目指して‐」、該当ページ 第3頁 発行所 国立大学法人東北大学、 配布日 平成26年2月21日 第一回東北大学リーディング大学院研究会「金属錯体の固体物性最前線‐金属錯体と固体物性物理と生物物性の連携新領域を目指して‐」東北大学理学部化学第4講義室、平成26年2月21日 平成25年度修士論文要旨〜修士課程業績報告会要旨〜該当ページ p150〜152 発行所 国立大学法人東京大学、配布日 平成26年2月3日以降平成26年2月13日以前 平成25年度修士課程業績報告会 東京大学化学本館5階講堂、平成26年2月13日 日本化学会第94春季年会 講演予稿集 発行所 日本化学会、発行日 平成26年3月12日 日本化学会第94春季年会 名古屋大学東山キャンパス、平成26年3月29日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、産業技術力強化法第19条の規定の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛
(72)【発明者】
【氏名】坂本 良太
(72)【発明者】
【氏名】星子 健
(72)【発明者】
【氏名】八木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】永山 達大
(72)【発明者】
【氏名】獅野 裕一
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−214584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 79/00
C08J 5/18
H01G 9/20
H01L 51/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属錯体ポリマーシートであって、当該金属錯体ポリマーは、式(i)で表されるジピリン誘導体及び中心金属を含み、前記中心金属がFe、Mn、Zn、Ni、Pd、Pt、Cd、Hg、Co、Au、Ag、Sn、Pb又はCuであり、一つの中心金属に対して二つの前記ジピリン誘導体が配位することで前記ジピリン誘導体同士が連結され、当該連結の繰り返しによって構築された六角形状の網目分子構造をもつシート。
【化1】
【化2】
各Yは式(ii)で表される1価の基であり、各Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、各R1はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣接したR1同士は結合して環を形成してもよく、各Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表し、Xに結合したR1はXが窒素原子を表すときは存在しない。
【請求項2】
金属錯体ポリマーシートであって、当該金属錯体ポリマーは、式(iii)で表されるジピリン誘導体及び中心金属を含み、前記中心金属がFe、Mn、Zn、Ni、Pd、Pt、Cd、Hg、Co、Au、Ag、Sn、Pb又はCuであり、一つの中心金属に対して二つの前記ジピリン誘導体が配位することで前記ジピリン誘導体同士が連結され、当該連結の繰り返しによって構築された六角形状の網目分子構造をもつシート。
【化3】
【化4】
各Yは式(ii)で表される1価の基であり、各Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、Aは窒素原子又はホウ素原子を表し、各R1はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣接したR1同士は結合して環を形成してもよい。
【請求項3】
金属錯体ポリマーシートであって、当該金属錯体ポリマーは、式(iv)で表されるジピリン誘導体及び中心金属を含み、前記中心金属がFe、Mn、Zn、Ni、Pd、Pt、Cd、Hg、Co、Au、Ag、Sn、Pb又はCuであり、一つの中心金属に対して二つの前記ジピリン誘導体が配位することで前記ジピリン誘導体同士が連結され、当該連結の繰り返しによって構築された三角形状の網目分子構造をもつシート。
【化5】
【化6】
各Yは式(ii)で表される1価の基であり、各Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、各R1はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣接したR1同士は結合して環を形成してもよい。
【請求項4】
金属錯体ポリマーシートであって、当該金属錯体ポリマーは、式(v)で表されるジピリン誘導体及び中心金属を含み、前記中心金属がFe、Mn、Zn、Ni、Pd、Pt、Cd、Hg、Co、Au、Ag、Sn、Pb又はCuであり、一つの中心金属に対して二つの前記ジピリン誘導体が配位することで前記ジピリン誘導体同士が連結され、当該連結の繰り返しによって構築された四角形状の網目分子構造をもつシート。
【化7】
【化8】

各Yは式(ii)で表される1価の基であり、各Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、各R1はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣接したR1同士は結合して環を形成してもよく、Qは水素原子又は金属原子を表し、Zは対イオン又は軸配位子を表し、nは0以上の整数を表す。
【請求項5】
各Lは同一であり、置換又は非置換のp−フェニレン基、置換又は非置換の4,4’−ビフェニリレン基、置換又は非置換のアルケニレン基、及び置換又は非置換のアルキニレン基よりなる群から選択される請求項1〜4の何れか一項に記載のシート。
【請求項6】
各Lが置換又は非置換のp−フェニレン基である請求項1〜5の何れか一項に記載のシート。
【請求項7】
各R1は水素原子である請求項1〜6の何れか一項に記載のシート。
【請求項8】
平均厚みが0.5nm〜100μmである請求項1〜の何れか一項に記載のシート。
【請求項9】
請求項1に記載の式(i)、請求項2に記載の式(iii)、請求項3に記載の式(iv)又は請求項4に記載の式(v)で表されるジピリン誘導体1種以上を含有する有機相と、中心金属となる金属の錯体及び塩から選択される1種以上を含有する水相を、相分離させた状態を維持しながら両者の接触を継続することにより、有機相と水相の界面に金属錯体ポリマーをシート状に成長させる工程を含む金属錯体ポリマーシートの製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の式(i)、請求項2に記載の式(iii)、請求項3に記載の式(iv)又は請求項4に記載の式(v)で表されるジピリン誘導体1種以上を含有する有機相と、中心金属となる金属の錯体及び塩から選択される1種以上を含有する水相のうち何れか一方の相を他方の相で被覆し、両者を相分離させた状態を維持しながら両者の接触を継続することにより、気−液界面に金属錯体ポリマーをシート状に成長させる工程を含む金属錯体ポリマーシートの製造方法。
【請求項11】
金属錯体ポリマーの成長時間を1秒〜1ヶ月とする請求項又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記シートの平均厚みが0.5nm〜100μmとなるのに必要な時間だけ金属錯体ポリマーを成長させる請求項11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
成長後の金属錯体ポリマーシートを回収後、加熱処理によりシートを平坦化する工程を含む請求項〜1の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜の何れか一項に記載のシートを光吸収層に用いた太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電変換特性を有するジピリン金属錯体シートに関する。より詳細には、本発明はジピリン誘導体を配位子とした金属錯体ポリマーから形成された光電変換特性を有するシートに関する。
【背景技術】
【0002】
新しい物質群「ナノシート」が注目を集めている。ナノシートとは厚さが単〜数原子層程度の二次元結晶を指し、その半導体活物質層としての利用が小型化・高密度化・高速化・省電力化など、エレクトロニクス素子のブレイクスルーをもたらすと予測されている。グラフェン、二硫化モリブデンなど、ナノシートの研究は結晶性層状化合物の剥離(例:グラファイト→グラフェン)によって得られる「トップダウン型」ナノシートに集中している。一方、化学者は構成要素(有機分子・金属原子・イオン)からボトムアップ的にナノシートを組み上げる手法も手にしつつある。この「ボトムアップ型」ナノシートの優位点として、(1)構成要素の事実上無限の組み合わせによる多彩なバリエーション、(2)ナノシートの構造・機能性(半導体特性、磁性など)の自在チューニング、(3)構成要素の光・磁気・電気的特性とナノシートの物性との協奏が挙げられる。現状では「ボトムアップ型」ナノシートの報告は合成に留まっており、魅力的な物性を示すものは存在しない。
【0003】
一方、環境保護の高まりを受けて、再生可能エネルギー源である太陽光を用いて発電を行う太陽光発電のニーズが高まっている。太陽電池は光起電力効果を利用して光エネルギーを直接電力に変換する電力機器である。従来、太陽電池に使用される半導体層はシリコン系や化合物半導体系が主流であったが、変換効率の向上に光明が見えてきたことから、製造コストを大幅に低減できる色素増感太陽電池が脚光を浴びつつある。
【0004】
色素増感太陽電池は、可視光線を吸収して電子正孔対を生成できる感光性染料分子と、生成された電子を伝達する遷移金属酸化物を主たる構成材料とする。色素増感太陽電池は、グレッツェル教授等が提案した二酸化チタン微粒子の表面にルテニウム金属錯体色素を吸着させる方法で変換効率が大幅に向上したことで注目を集めるようになった。
このため、現在開発が進められている色素増感太陽電池は、色素を吸着させた酸化チタンなどの半導体微粒子を光吸収層として電極に堆積させるというグレッツェル教授の提案した構造をベースとするものである(例:特開2008−204956号公報、特開2009−132922号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−204956号公報
【特許文献2】特開2009−132922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、太陽電池の技術的可能性を広げる観点からは、従来とは異なる材料を用いて色素増感太陽電池を構築することも検討しておくべきである。本発明は上記事情に鑑み、ボトムアップ型ナノシートと太陽電池という二つの技術分野を組み合わせて、色素増感太陽電池に適用可能な、光電変換特性をもつ新たなシートを提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、所定の対称構造を有するジピリン誘導体と金属塩又は錯体を原料とし、液−液界面又は気−液界面で錯形成反応を起こすことで、錯形成を伴う自己組織化により錯体ポリマーシートが簡便に製造可能であることを見出した。そして、当該錯体ポリマーシートは光電変換特性を示すことを見出した。本発明は以上の知見を背景として完成したものであり、以下によって特定される。
【0008】
本発明は一側面において、金属錯体ポリマーシートであって、当該金属錯体ポリマーは、式(i)で表されるジピリン誘導体及び中心金属を含み、一つの中心金属に対して二つの前記ジピリン誘導体が配位することで前記ジピリン誘導体同士が連結され、当該連結の繰り返しによって構築された六角形状の網目分子構造をもつシートである。
【化1】
【化2】
各Yは式(ii)で表される1価の基であり、各Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、各R1はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣接したR1同士は結合して環を形成してもよく、各Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表し、Xに結合したR1はXが窒素原子を表すときは存在しない。
【0009】
本発明は別の一側面において、金属錯体ポリマーシートであって、当該金属錯体ポリマーは、式(iii)で表されるジピリン誘導体及び中心金属を含み、一つの中心金属に対して二つの前記ジピリン誘導体が配位することで前記ジピリン誘導体同士が連結され、当該連結の繰り返しによって構築された六角形状の網目分子構造をもつシートである。
【化3】
【化4】
各Yは式(ii)で表される1価の基であり、各Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、Aは窒素原子又はホウ素原子を表し、各R1はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣接したR1同士は結合して環を形成してもよい。
【0010】
本発明は更に別の一側面において、金属錯体ポリマーシートであって、当該金属錯体ポリマーは、式(iv)で表されるジピリン誘導体及び中心金属を含み、一つの中心金属に対して二つの前記ジピリン誘導体が配位することで前記ジピリン誘導体同士が連結され、当該連結の繰り返しによって構築された三角形状の網目分子構造をもつシートである。
【化5】
【化6】
各Yは式(ii)で表される1価の基であり、各Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、各R1はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣接したR1同士は結合して環を形成してもよい。
【0011】
本発明は更に別の一側面において、金属錯体ポリマーシートであって、当該金属錯体ポリマーは、式(v)で表されるジピリン誘導体及び中心金属を含み、一つの中心金属に対して二つの前記ジピリン誘導体が配位することで前記ジピリン誘導体同士が連結され、当該連結の繰り返しによって構築された四角形状の網目分子構造をもつシートである。
【化7】
【化8】

各Yは式(ii)で表される1価の基であり、各Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、各R1はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣接したR1同士は結合して環を形成してもよく、Qは水素原子又は金属原子を表し、Zは対イオン又は軸配位子を表し、nは0以上の整数を表す。
【0012】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートの一実施形態においては、各Lは同一であり、置換又は非置換のp−フェニレン基、置換又は非置換の4,4’−ビフェニリレン基、置換又は非置換のアルケニレン基、及び置換又は非置換のアルキニレン基よりなる群から選択される。
【0013】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートの別の一実施形態においては、各Lが置換又は非置換のp−フェニレン基である。
【0014】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートの更に別の一実施形態においては、各R1は水素原子である。
【0015】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートの更に別の一実施形態においては、前記中心金属がZn、Ni、Pd、Pt、Cd、Hg、Co、Au、Ag、Sn、Pb又はCuである。
【0016】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートの更に別の一実施形態においては、平均厚みが0.5nm〜100μmである。
【0017】
本発明には更に別の一側面において、上述した式(i)、式(iii)、式(iv)又は式(v)で表されるジピリン誘導体1種以上を含有する有機相と、中心金属となる金属の錯体及び塩から選択される1種以上を含有する水相を、相分離させた状態を維持しながら両者の接触を継続することにより、有機相と水相の界面に金属錯体ポリマーをシート状に成長させる工程を含む金属錯体ポリマーシートの製造方法である。
【0018】
本発明は更に別の一側面において、上述した式(i)、式(iii)、式(iv)又は式(v)で表されるジピリン誘導体1種以上を含有する有機相と、中心金属となる金属の錯体及び塩から選択される1種以上を含有する水相のうち何れか一方の相を他方の相で被覆し、両者を相分離させた状態を維持しながら両者の接触を継続することにより、気−液界面に金属錯体ポリマーをシート状に成長させる工程を含む金属錯体ポリマーシートの製造方法である。
【0019】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートの製造方法の一実施形態においては、金属錯体ポリマーの成長時間を1秒〜1ヶ月とする。
【0020】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートの製造方法の別の一実施形態においては、前記シートの平均厚みが0.5nm〜100μmとなるのに必要な時間だけ金属錯体ポリマーを成長させる。
【0021】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートの製造方法の更に別の一実施形態においては、成長後の金属錯体ポリマーシートを回収後、加熱処理によりシートを平坦化する工程を含む。
【0022】
本発明には更に別の一側面において、本発明に係る金属錯体ポリマーシートを光吸収層に用いた太陽電池である。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、光電変換特性を有するジピリン金属錯体シートが提供される。有機化合物と金属イオンからボトムアップ的に合成されるナノシートはいくつか存在するが、光電変換特性を示すものは初めてである。当該シートを用いることで、これまでにない構造や利用方法の色素増感太陽電池が生まれる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】三方向ジピリン誘導体を配位子として含有する本発明に係る金属錯体ポリマーの分子構造(一部)の一例を示す模式図である。
図2】六方向ジピリン誘導体を配位子として含有する本発明に係る金属錯体ポリマーの分子構造の一例を示す模式図である。
図3】四方向ジピリン誘導体を配位子として含有する本発明に係る金属錯体ポリマーの分子構造の一例を示す模式図である。
図4】実施例1のナノシートの合成手順を示す。
図5】実施例1のナノシート(単層〜数層)のAFM像を示す。
図6】実施例1のナノシート(単層〜数層)と対応するビス(ジピリナト)亜鉛単核錯体の吸収スペクトルの比較を示す。
図7】スクラッチ前後での実施例1のナノシート(単層)のAFM像の変化を示す。
図8】加熱処理前後での実施例1のナノシート(単層〜数層)のAFM像の変化を示す。
図9】実施例2の配位子L2の合成手順を示す。
図10】実施例3の配位子L3の合成手順を示す。
図11】実施例4の配位子L4の合成手順を示す。
図12】実施例5の配位子L5の合成手順を示す。
図13】実施例5におけるポルフィリン(化合物6)の合成手順を示す。
図14】実施例5における配位子L5のXPSのスペクトルチャートである。
図15】実施例5で合成したナノシートのXPSのスペクトルチャートである。
図16】式(i)に係るジピリン誘導体を合成するための反応機構を示す。
図17】式(iii)に係るジピリン誘導体を合成するための反応機構を示す。
図18】式(iv)に係るジピリン誘導体を合成するための反応機構を示す。
図19】式(v)に係るジピリン誘導体を合成するための反応機構を示す。
図20】式(i)に係るジピリン誘導体を合成するための別の反応機構を示す。
図21】式(v)に係るジピリン誘導体を合成するための別の反応機構を示す。
図22】実施例1で合成したナノシートのXPSのスペクトルチャートである。
図23】実施例6のサンプル1について、照射する光の波長を変えたときの光電流の変化を示すグラフである。
図24】実施例6のサンプル1について、波長500nmの光のon/offに応じて流れる光電流の変化を示すグラフである。
図25】実施例6のサンプル2について、波長500nmの光のon/offに応じて流れる光電流の変化を示すグラフである(最初の4回の繰り返し)。
図26】実施例6のサンプル2について、波長500nmの光のon/offに応じて流れる光電流の変化を示すグラフである(全体)。
図27】実施例6のサンプル3について、波長500nmの光のon/offに応じて流れる光電流の変化を示すグラフである。
図28】実施例6のサンプル4について、波長500nmの光のon/offに応じて流れる光電流の変化を示すグラフである(最初の4回の繰り返し)。
図29】実施例6のサンプル4について、波長500nmの光のon/offに応じて流れる光電流の変化を示すグラフである(全体)。
図30】実施例6のサンプル5について、波長500nmの光のon/offに応じて流れる光電流の変化を示すグラフである。
図31】実施例6のサンプル6について、波長450nmの光のon/offに応じて流れる光電流の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<配位子化合物>
本発明に係る金属錯体ポリマーシートは一実施形態において、式(i)で表されるジピリン誘導体を配位子として含有する金属錯体ポリマーから形成されてなる。
【化9】
【化10】

各Yは式(ii)で表される1価の基であり、各Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、各R1はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣接したR1同士は結合して環を形成してもよく、各Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表し、Xに結合したR1はXが窒素原子を表すときは存在しない。
【0026】
式(i)のジピリン誘導体は例えば図16に記載の反応機構により合成可能である。1、3及び5位がハロゲノ基若しくは擬ハロゲノ基(図16では臭素原子)で置換された6員環芳香族化合物1と、連結基Lの末端にホルミル基及びB(OR22基(式中、R2は水素原子又はアルキル基)(図16ではR2=H)が結合した化合物2をPd(PPh34等の触媒、および炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下で反応させると化合物3が得られる(反応1)。反応1については図示した鈴木カップリング以外にも、薗頭カップリング、根岸カップリングなど、様々な反応を利用できる。
【0027】
化合物3を5員環芳香族化合物4(ピロール誘導体)とトリフルオロ酢酸(TFA)や三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF3Et2O)等の酸触媒下で反応させてホルミル基とピロール誘導体二つが縮合したジピロメタンを生成し、生成したジピロメタンを酸化することで、式(i)のジピリン誘導体が得られる(反応2)。ジピロメタンの酸化剤としてはクロラニルが好適であるが、キノン系酸化剤(例:o-テトラクロロキノン、DDQなど)や酸素も利用可能である。反応1及び反応2は不活性雰囲気下で行うことが望ましい。
【0028】
反応2の後、式(i)のジピリン誘導体が反応系から上手く単離できない場合は、BF2でジピリン誘導体を保護した後に単離し、その後に脱保護するという手法を採用することも可能である。BF2による保護は式(i)のジピリン誘導体をBF3Et2Oをトリエチルアミン(Et3N)存在下で反応させることにより可能であり、脱保護はChem. Asian J. 2012, 7, 907に記載の反応により行うことができる。BF2による保護は、反応2の後に続けて行っても良いし、簡単に精製した後、ジクロロメタンなどの溶媒に溶解させてから行っても良い。BF2保護されたジピリン誘導体の例を次式に示す。
【0029】
【化11】
【0030】
式(i)のジピリン誘導体は、ジピリン(E=H)又はBODIPY(E=BF2)単量体を予め合成しておき、これを反応点が3個存在する基質とPd(PPh34等の触媒の存在下でクロスカップリングさせることにより合成することも可能である。図20に反応機構の例を示す。図20では、クロスカップリングとして鈴木カップリングを行っている。図20中、ルート1及びルート2は何れを採用してもよい。R2としては水素原子又はアルキル基が利用でき、Dとしてはハロゲンおよび擬ハロゲン(例:トリフルオロメチルスルホニル(OTf)基)が利用できる。クロスカップリングとしてはこの他薗頭カップリング、根岸カップリングなど、様々な反応を利用できる。E=BF2である場合には、クロスカップリングの後、先述したようにBF2の脱保護を行う。
【0031】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートは別の一実施形態において、式(iii)で表されるジピリン誘導体を配位子として含有する金属錯体ポリマーから形成されてなる。
【化12】
【化13】
各Yは式(ii)で表される1価の基であり、各Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、Aは窒素原子又はホウ素原子を表し、各R1はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣接したR1同士は結合して環を形成してもよい。
【0032】
式(iii)のジピリン誘導体は例えば図17に記載の反応機構により合成可能である。末端にハロゲノ基若しくは擬ハロゲノ基(図17では臭素原子)をもつ3本の連結基Lが中心の窒素原子又はホウ素原子に結合した3級化合物5を有機リチウム等でホルミル化して化合物6を得る(反応3)。次いで、化合物6を5員環芳香族化合物4(ピロール誘導体)とトリフルオロ酢酸(TFA)や三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF3Et2O)等の酸触媒下で反応させてホルミル基とピロール誘導体二つが縮合したジピロメタンを生成し、生成したジピロメタンを酸化することで、式(iii)のジピリン誘導体が得られる(反応4)。ジピロメタンの酸化剤としてはクロラニルが好適であるが、キノン系酸化剤(例:o-テトラクロロキノン、DDQなど)や酸素も利用可能である。反応3及び反応4は不活性雰囲気下で行うことが望ましい。
【0033】
式(iii)のジピリン誘導体は、式(i)に関して図20に示した合成法において、反応点を3個もつ基質中央のベンゼン環を窒素原子又はホウ素原子に置き換えて、同様の手順により合成することも可能である。
【0034】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートは更に別の一実施形態において、式(iv)で表されるジピリン誘導体を配位子として含有する金属錯体ポリマーから形成されてなる。
【化14】
【化15】
各Yは式(ii)で表される1価の基であり、各Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、各R1はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣接したR1同士は結合して環を形成してもよい。
【0035】
式(iv)のジピリン誘導体は例えば図18に記載の反応機構により合成可能である。連結基Lの末端にホルミル基及びB(OR22基(式中、R2は水素原子又はアルキル基)(図18ではR2=H)が結合した化合物2のB(OR22基を必要に応じてピナコール等で保護した後、5員環芳香族化合物4(ピロール誘導体)とトリフルオロ酢酸(TFA)や三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF3Et2O)等の酸触媒下で反応させてホルミル基とピロール誘導体二つが縮合したジピロメタンを生成し、生成したジピロメタンを酸化することで、化合物7を得る(反応5)。なお、ピナコール等によるB(OR22基の保護は取り扱い安さの観点から行うことが好ましいが、必須ではない。次いで、ヘキサブロモベンゼン(化合物8)を化合物7と触媒下で反応させることで式(iv)のジピリン誘導体が得られる(反応6)。ジピロメタンの酸化剤としてはクロラニルが好適であるが、キノン系酸化剤(例:o-テトラクロロキノン、DDQなど)や酸素も利用可能である。反応5及び反応6は不活性雰囲気下で行うことが望ましい。
【0036】
式(iv)のジピリン誘導体は、式(i)に関して図20に示した合成法において、基質の反応点を6個にして、同様の手順により合成することも可能である。
【0037】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートは更に別の一実施形態において、式(v)で表されるジピリン誘導体を配位子として含有する金属錯体ポリマーから形成されてなる。
【化16】
【化17】
各Yは式(ii)で表される1価の基であり、各Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、各R1はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣接したR1同士は結合して環を形成してもよく、各Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表し、Qは水素原子又は金属原子を表し、Zは対イオン又は軸配位子を表し、nは0以上の整数を表す。
【0038】
式(v)のジピリン誘導体は例えば図19に記載の反応機構により合成可能である。連結基Lの一部を構成するL’の末端にホルミル基とハロゲノ基若しくは擬ハロゲノ基(図19では臭素原子)が結合した化合物9とピロール(化合物10)をトリフルオロ酢酸(TFA)等の酸触媒下で反応させ、次いでクロラニル等の酸化剤で酸化し、Qが金属原子を表すときは更に金属塩の存在下で錯形成反応させて、ポルフィリン化合物11を得る(反応7)。これを先述した化合物7と鈴木カップリングさせることで、式(v)のジピリン誘導体が得られる(反応8)。反応7及び反応8は不活性雰囲気下で行うことが望ましい。反応8については図示した鈴木カップリング以外にも、薗頭カップリング、根岸カップリングなど、様々な反応を利用できる。
【0039】
また、別法によれば、式(v)のジピリン誘導体は図21に記載の反応機構により合成可能である。連結基Lの末端にホルミル基及びジピリン(E=H)又はBODIPY(E=BF2)部分をもつ化合物12とピロール(化合物10)をトリフルオロ酢酸(TFA)等の酸触媒下で反応させ、次いでクロラニル等の酸化剤で酸化することでポルフィリン化合物13を得る(反応9)。式(v)において、Qが金属原子を表すときは更に金属塩の存在下で錯形成反応させる。さらにその後Qに対してZを導入してもよい。E=BF2である場合には、先述したようにBF2の脱保護を行う。
【0040】
式(v)で表される四方向ジピリン誘導体において、ポルフィリン環中の金属原子Qとしては特に制限はなく、典型元素及び遷移元素の金属原子の何れでもよいが、遷移金属が好ましく、2価以上の原子価を持つ遷移金属がより好ましい。金属原子Qの具体例としては、典型元素の金属として、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Cs、Ba、Hg、Tl、Pb、Bi、Fr、Raが挙げられ、遷移金属として、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、So、Ir、Pt、Au、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、No、Lr、Rf、Db、Sg、Bh、Hs、Mt、Ds、Rgが挙げられる。金属原子Qはこれらの1種以上を任意に選択することができる。金属原子Qは、典型的にはFe、Ni、Co、Cu、Zn、Sn、Ti、Mn、Mo、V、Zr、Cd、Ga、Sb、Cr、Nb、Al等からなる群から選択される1種以上を挙げることができる。
【0041】
対イオンZは金属原子Qの各種の塩に対応するものである。金属の塩は、無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の塩、又は有機酸の塩のうちの任意のものとすることができる。金属原子Qには軸配位子Zが配位し得る。軸配位子Zとしては、特に制限はないが、例えばイミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、アニリン及びその誘導体、ヒスチジン及びその誘導体、トリメチルアミン及びその誘導体等の窒素系軸配位子、チオフェノール及びその誘導体、システイン及びその誘導体、メチオニン及びその誘導体等の硫黄系軸配位子、安息香酸及びその誘導体、酢酸及びその誘導体、フェノール及びその誘導体、脂肪族アルコール及びその誘導体、水等の酸素系軸配位子が挙げられる。nは金属原子Qの価数に応じた0以上の値となる。なお、Qが水素原子のときは、Qは水素原子2個を表すのが典型的である。また、Qが水素原子のとき、Zは存在しない。
【0042】
式(i)、式(ii)、式(iii)、式(iv)及び式(v)において、R1が表す置換基としては、ハロゲン原子、置換又は非置換の1価の炭化水素基、メルカプト基、カルボニルメルカプト基、チオカルボニルメルカプト基、置換又は非置換の炭化水素チオ基、置換又は非置換の炭化水素チオカルボニル基、置換又は非置換の炭化水素ジチオ基、水酸基、置換又は非置換の炭化水素オキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、置換又は非置換の炭化水素カルボニル基、置換又は非置換の炭化水素オキシカルボニル基、置換又は非置換の炭化水素カルボニルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、置換又は非置換の炭化水素一置換アミノ基、置換又は非置換の炭化水素二置換アミノ基、ホスフィノ基、置換又は非置換の炭化水素一置換ホスフィノ基、置換又は非置換の炭化水素二置換ホスフィノ基、式:−P(=O)(OH)2で表される基、カルバモイル基、置換又は非置換の炭化水素一置換カルバモイル基、置換又は非置換の炭化水素二置換カルバモイル基、式:−B(OH)2で表される基、ホウ酸エステル残基、スルホ基、置換又は非置換の炭化水素スルホ基、置換又は非置換の炭化水素スルホニル基、置換又は非置換の1価の複素環基、2個以上のエーテル結合を有する炭化水素基、2個以上のエステル結合を有する炭化水素基、2個以上のアミド結合を有する炭化水素基、式:−CO2Mで表される基、式:−PO3Mで表される基、式:−PO2Mで表される基、式:−PO32で表される基、式:−OMで表される基、式:−SMで表される基、式:−B(OM)2で表される基、式:−SO3Mで表される基、式:−SO2Mで表される基(式中、Mは、金属カチオン又は置換又は非置換のアンモニウムカチオンを表す。)、式:−NR3M’で表される基、式:−BR3M’で表される基、式:−PR3M’で表される基、式:−SR2M’で表される基(式中、Rは、1価の炭化水素基を表し、M’は、アニオンを表す。)、及び、第4級化された窒素原子を複素環内に有する置換又は非置換の1価の複素環基等が挙げられる。
【0043】
1としては、ハロゲン原子、置換又は非置換の炭化水素基、水酸基、置換又は非置換の炭化水素オキシ基、カルボキシル基、置換又は非置換の炭化水素カルボニル基、シアノ基、アミノ基、置換又は非置換の炭化水素一置換アミノ基、置換又は非置換の炭化水素二置換アミノ基、スルホ基、置換又は非置換の1価の複素環基、及び、水素原子が好ましく、ハロゲン原子、置換又は非置換の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、置換又は非置換の1価の複素環基、及び、水素原子がより好ましく、置換又は非置換の1価の炭化水素基、置換又は非置換の1価の複素環基、及び、水素原子が更により好ましく、1価の炭化水素基、及び水素原子が更により好ましく、水素原子がとりわけ好ましい。
【0044】
1がハロゲン原子であるときは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子がより好ましく、塩素原子及び臭素原子が更に好ましい。
【0045】
1が1価の炭化水素基であるときは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等の炭素数1〜20のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の炭素数3〜20のシクロアルキル基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素数2〜20のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の炭素数6〜20のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基が特に好ましい。これらの1価の炭化水素基は水素原子の少なくとも一部(特には1〜3個、とりわけ1個又は2個)が置換されていてもよく、置換基としてはフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素原子1〜4のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボ二ル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;シアノ基等が挙げられる。
【0046】
1が炭化水素チオ基、炭化水素チオカルボニル基、炭化水素ジチオ基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素一置換アミノ基、炭化水素二置換アミノ基、炭化水素一置換ホスフィノ基、炭化水素二置換ホスフィノ基、炭化水素一置換カルバモイル基、炭化水素二置換カルバモイル基、置換又は非置換の炭化水素スルホ基、置換又は非置換の炭化水素スルホニル基、式:−NR3M’で表される基、式:−BR3M’で表される基、又は、式:−PR3M’で表される基、式:−SR2M’で表される基であるときは、これらに含まれる炭化水素基部分は「1価の炭化水素基」として上述した通りである。これらの基に含まれる炭化水素基部分の水素原子の少なくとも一部は上記した1価の炭化水素基の場合と同様に置換されていてもよく、置換基としては同様のものを例示することができる。
【0047】
ホウ酸エステル残基としては、典型的には以下の式で表される基が挙げられる。
【化18】
【0048】
1価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子を1個取り除いた残りの原子団を指す。複素環式化合物としては、ピリジン、1,2−ジアジン、1,3−ジアジン、1,4−ジアジン、1,3,5−トリアジン、フラン、ピロール、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、アザジアゾール等の単環式複素環式化合物;単環式複素環式化合物を構成する複素環の2個以上が縮合した縮合多環式複素環式化合物;単環式複素環式化合物を構成する複素環2個を、又は、芳香環1個と単環式複素環式化合物を構成する複素環1個とを、メチレン基、エチレン基、カルボニル基等の2価の基で橋かけした構造を有する有橋多環式複素環式化合物等が挙げられ、ピリジン、1,2−ジアジン、1,3−ジアジン、1,4−ジアジン、1,3,5−トリアジンが好ましく、ピリジン、1,3,5−トリアジンがより好ましい。該1価の複素環基は置換されていてもよく、置換基としては、上述した1価の炭化水素基について挙げた置換基を例示することができる。
【0049】
2個以上のエーテル結合を有する炭化水素基としては、以下の式で表される基が挙げられる。式中、各R’は、それぞれ独立に置換又は非置換の2価の炭化水素基を表す。pは、2以上の整数である。
【化19】
【0050】
R’で表される2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基等の炭素原子数1〜20の2価の飽和炭化水素基;エテニレン基、プロペニレン基、3−ブテニレン基、2−ブテニレン基、2−ペンテニレン基、2−ヘキセニレン基、2−ノネニレン基、2−ドデセニレン基等のアルケニレン基、および、エチニレン基等の炭素原子数2〜20の2価の不飽和炭化水素基;シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロノニレン基、シクロドデシレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基等の炭素原子数3〜20の2価の環状飽和炭化水素基;1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基等の炭素原子数6〜20のアリーレン基等が挙げられる。これらの2価の炭化水素基が有する水素原子の少なくとも一部は置換基で置換されていてもよい。置換基としては、上述した1価の炭化水素基について挙げた置換基を例示することができる。
【0051】
2個以上のエステル結合を有する炭化水素基としては、例えば、以下の式で表される基が挙げられる。式中、R’およびpは前述した通りである。
【化20】
【0052】
2個以上のアミド結合を有する炭化水素基としては、以下の式で表される基が挙げられる。式中、R’およびpは前述した通りである。
【化21】
【0053】
前記Mで表される金属カチオンとしては、1〜3価のイオンが好ましく、Li、Na、K、Cs、Be、Mg、Ca、Ba、Ag、Al、Bi、Cu、Fe、Ga、Mn、Ni、Pb、Sn、Ti、V、W、Y、Yb、Zn、Zr等の金属のイオンが挙げられる。
【0054】
前記Mで表されるアンモニウムカチオンとしては非置換でも置換されていてもよく、置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0055】
前記M’で表されるアニオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、SO42-、HSO4-、PO43-、HPO42-、H2PO4-、BF4-、PF6-、CH3SO3-、CF3SO3-、テトラキス(イミダゾリル)ボレートアニオン、8−キノリノラトアニオン、2−メチル−8−キノリノラトアニオン、2−フェニル−8−キノリノラトアニオン等が挙げられる。
【0056】
第4級化された窒素原子を複素環内に有する1価の複素環基としては、例えば、以下の式で表される基が挙げられる。式中、RおよびM’は前述した通りある。
【化22】
【0057】
式(i)、式(ii)、式(iii)、式(iv)及び式(v)において、隣接したR1同士は結合して環を形成してもよい。形成された環の構成原子の数は5〜10個が好ましく、5〜7個がさらに好ましく、6個が特に好ましい。形成された環には、光電変換特性の観点から共役が分子内に広く広がるべく、π電子が存在していることが好ましく、π電子が2個以上あることがより好ましく、芳香環を形成していることが更により好ましい。
【0058】
式(i)、式(iii)、式(iv)及び式(v)において、2価の連結基Lは置換又は非置換の2価の炭化水素基の他、以下の式(A−1)〜(A−7)で表される2価の基が例示され、置換又は非置換の2価の炭化水素基、(A−1)〜(A−3)、(A−6)及び(A−7)で表される2価の基が好ましく、置換又は非置換の2価の炭化水素基、(A−1)、(A−2)、及び(A−3)で表される2価の基がより好ましく、置換又は非置換の2価の炭化水素基が更により好ましい。式中、Rdは水素原子又は置換基を表す。該置換基はR1について説明した通りであり、例の説明も同じであり、好ましくは水素原子又は炭素数が1〜20個のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又は炭素数が1〜10個のアルキル基であり、更により好ましくは水素原子又は炭素数が1〜5個のアルキル基である。
【0059】
【化23】
【0060】
置換又は非置換の2価の炭化水素基としては、置換又は非置換の2価の飽和炭化水素基及び置換又は非置換の2価の不飽和炭化水素基が挙げられ、置換又は非置換の2価の不飽和炭化水素基であることが好ましい。また、これらの2価の炭化水素基においては、二カ所の結合部位が最も離れた正反対同士の位置にある(例えば芳香環の場合はパラ位)ことが錯体ポリマーの形状規則性及び安定性の観点から望ましい。
【0061】
置換又は非置換の2価の飽和炭化水素基としては、置換又は非置換のアルキレン基、置換又は非置換のヘテロアルキレン基が挙げられる。置換又は非置換の2価の不飽和炭化水素基としては、置換又は非置換のアルケニレン基、置換又は非置換のヘテロアルケニレン基、置換又は非置換のアルキニレン基、置換又は非置換のヘテロアルキニレン基が挙げられる。これらの飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基における炭素数(ヘテロ原子が介在する場合はその数も含める。)は、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が更により好ましい。
【0062】
置換又は非置換の2価の不飽和炭化水素基としては更に、置換又は非置換のアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレン基が挙げられる。これらの不飽和炭化水素基における炭素数(ヘテロ原子が介在する場合はその数も含める。)は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6〜8が更により好ましい。
【0063】
置換又は非置換の2価の不飽和炭化水素基としては更に、置換又は非置換のアラルキレン基、置換又は非置換のヘテロアラルキレン基が挙げられる。これらの不飽和炭化水素基における炭素数(ヘテロ原子が介在する場合はその数も含める。)は7〜20が好ましく、7〜12がより好ましく、7〜9が更により好ましい。
【0064】
置換又は非置換の2価の不飽和炭化水素基の中では、構造及び化学的安定性の観点から置換又は非置換のアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレン基が好ましい。
【0065】
ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子などを挙げることができる。ヘテロ原子が2価の炭化水素基中に複数含まれる場合、各ヘテロ原子は同一であっても異なっていてもよい。
【0066】
2価の炭化水素基が置換基を有する場合、該置換基はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素原子1〜4のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボ二ル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;シアノ基等が挙げられる。
【0067】
アルキレン基の具体例としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、2−エチルヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基などを挙げることができ、アルキレン基としてはシクロヘキシレン基などの環状アルキレン基も挙げられる。ヘテロアルキレン基の具体例としては、メチレンオキシメチレン基、メチレンオキシエチレン基、エチレンオキシエチレン基、エチレンオキシメチレンオキシエチレン基、メチレンチオメチレン基、メチレンチオエチレン基、エチレンチオエチレン基などを挙げることができ、アルケニレン基及びアルキニレン基の具体例としては、エテン−1,2−ジイル基(−CH=CH−基)、2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH2−CH=CH−CH2−基)、及びエチン−1,2−ジイル基(−C≡C−基)などを挙げることができる。アリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ビフェニリレン基、ナフチレン基及びアントリレン基などを挙げることができ、ヘテロアリーレン基の具体例としては、ピリジレン基、ピリミジレン基、ジベンゾフラニレン基、ジベンゾチオフェニレン基などを挙げることができる。アラルキレン基の具体例としては、スチリレン基等のベンジリデン基、シンナミリデン基、トリレン基、キシリレン基などを挙げることができる。
【0068】
<中心金属イオン(Q’)>
本発明に係る金属錯体ポリマーシートを形成する金属錯体ポリマーにおいて、上述した配位子が配位する中心金属イオン(Q’)としては特に制限はなく、典型元素及び遷移元素の金属イオンの何れでもよい。典型元素の金属イオンとしては、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Cs、Ba、Hg、Tl、Pb、Bi、Fr、Raが挙げられ、遷移金属イオンとしては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、So、Ir、Pt、Au、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、No、Lr、Rf、Db、Sg、Bh、Hs、Mt、Ds、Rgが挙げられる。Q’はこれらの1種以上を任意に選択することができる。Q’は、典型的にはFe、Ni、Co、Cu、Zn、Sn、Ti、Mn、Mo、V、Zr、Cd、Ga、Sb、Cr、Nb、Alのイオンからなる群から選択される1種以上とすることができる。
【0069】
<金属錯体ポリマーシート>
本発明に係る金属錯体ポリマーシートは、上述した配位子化合物と上述した中心金属イオンの錯体又は塩とを原料として液−液界面又は気−液界面での自己組織化現象を利用することにより、二次元に広がった錯体ポリマーを形成することで作製可能である。得られたシートは、光電変換特性を示すことができ、例えば色素増感太陽電池の光吸収層として有用である。
【0070】
具体的には、本発明に係る金属錯体ポリマーシートの製造方法の一実施形態においては、式(i)、式(iii)、式(iv)又は式(v)で表されるジピリン誘導体を含有する有機相と、中心金属となる金属の錯体及び塩から選択される1種以上を含有する水相を、相分離させた状態を維持しながら両者の接触を継続することにより、有機相と水相の界面に金属錯体ポリマーをシート状に成長させる工程とを含む。
【0071】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートの製造方法の別の一実施形態においては、式(i)、式(iii)、式(iv)又は式(v)で表されるジピリン誘導体を含有する有機相と、中心金属となる金属の錯体及び塩から選択される1種以上を含有する水相のうち何れか一方の相を他方の相で被覆し、両者を相分離させた状態を維持しながら両者の接触を継続することにより、気−液界面に金属錯体ポリマーをシート状に成長させる工程とを含む。
【0072】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートの製造方法の典型的な実施形態においては、式(i)、式(iii)、式(iv)又は式(v)で表されるジピリン誘導体を含有する有機相の上に、中心金属となる金属の錯体及び塩から選択される1種以上を含有する水相を供給する工程と、次いで両者を相分離させた状態を維持することにより、有機相と水相の界面に金属錯体ポリマーをシート状に成長させる工程とを含む。上から供給する水相によって水相と有機相の界面が乱され、その結果、ナノシートに構造上の乱れが生じることを防止するために、水相を供給する前に純水などで有機相の上にバッファー層を形成してもよい。バッファー層を設けることで有機相と水相の接触が穏やかに進行する。
【0073】
上から供給する水相の量を少なくして、水相を薄く形成することにより、形成されるポリマーシートの厚さも薄くすることができる。この方法により水相を極めて薄く形成すると、供給した水相に含まれる金属の錯体及び塩が実質的にすべて錯形成反応に使用されて消費され、金属錯体ポリマーシートが液−液界面ではなく、気−液界面に形成される。この方法により単層のポリマーシートを形成することも可能である。従って、本発明に係る金属錯体ポリマーシートの製造方法の一実施形態においては、式(i)、式(iii)、式(iv)又は式(v)で表されるジピリン誘導体を含有する有機相を、中心金属となる金属の錯体及び塩から選択される1種以上を含有する水相で被覆し、相分離させた状態を維持しながら両者の接触を継続することにより、気−液界面に金属錯体ポリマーをシート状に成長させる工程とを含む。
【0074】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートの製造方法の別の典型的な実施形態においては、中心金属となる金属の錯体及び塩から選択される1種以上を含有する水相の上に、式(i)、式(iii)、式(iv)又は式(v)で表されるジピリン誘導体を含有する有機相を供給する工程と、次いで両者を相分離させた状態を維持することにより、有機相と水相の界面に金属錯体ポリマーをシート状に成長させる工程とを含む。上から供給する有機相によって水相と有機相の界面が乱され、その結果、ナノシートに構造上の乱れが生じることを防止するために、有機相を供給する前に純粋な有機溶媒などで水相の上にバッファー層を形成してもよい。バッファー層を設けることで有機相と水相の接触が穏やかに進行する。
【0075】
上から供給する有機相の量を少なくして、有機相を薄く形成することにより、形成されるポリマーシートの厚さも薄くすることができる。この方法により有機相を極めて薄く形成すると、供給した有機相に含まれる式(i)、式(iii)、式(iv)又は式(v)で表されるジピリン誘導体が実質的にすべて錯形成反応に使用されて消費され、金属錯体ポリマーシートが液−液界面ではなく、気−液界面に形成される。この方法により単層のポリマーシートを形成することも可能である。従って、本発明に係る金属錯体ポリマーシートの製造方法の更に別の一実施形態においては、中心金属となる金属の錯体及び塩から選択される1種以上を含有する水相を、式(i)、式(iii)、式(iv)又は式(v)で表されるジピリン誘導体を含有する有機相で被覆し、相分離させた状態を維持しながら両者の接触を継続することにより、気−液界面に金属錯体ポリマーをシート状に成長させる工程とを含む。
【0076】
理論によって本発明が限定されることを意図しないが、式(i)、式(iii)、式(iv)又は式(v)で表されるジピリン誘導体を含有する有機相と、中心金属となる金属の塩又は錯体を含有する水相を、相分離させた状態を維持しながら両者の接触を継続することにより、一つの中心金属に対して二つの前記ジピリン誘導体が配位することで前記ジピリン誘導体同士が連結され、当該連結がジピリン誘導体の種類に応じて三方向、四方向又は六方向に繰り返すことで網目分子構造が成長すると考えられる。
【0077】
また、シートは界面での接触時間を長くすることで厚く成長させることが可能である。理論によって本発明が限定されることを意図しないが、二次元方向に成長した単層シートが積層することにより厚くなると考えられる。
【0078】
配位子として式(i)、式(iii)、式(iv)又は式(v)で表されるジピリン誘導体を使用する場合、単一種類の配位子を利用してもよいし、複数種類の配位子を組み合わせ利用してもよい。しかしながら、作製するシートの均一性、品質安定性及び形態安定性の観点からは、使用する配位子は同一の一般式に包含されるジピリン誘導体で組み合わせることが好ましく、すべて同一の配位子とすることがより好ましい。
【0079】
当該製造方法を実施する上では複雑な操作が不要であり、また、高価な製造装置も不要である。そのため、本発明に係る金属錯体ポリマーシートは低コストでの製造が可能となる。また、当該シートの面積は液−液界面の面積に依存することから、反応容器を大きくすることで、得られるシートの面積も簡単に大きくすることができる。すなわち、本発明に係る製造方法は工業的生産に対しても有利である。
【0080】
前記ジピリン誘導体の溶媒としては、前記ジピリン誘導体を溶解するものであれば特に制限はないが、有機相と水相の相分離状態を維持するために、低極性溶媒を好ましく使用でき、例えば石油エーテル、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、ジクロロエタン、テトラクロロメタン、シクロヘキサン、クロロホルム、四塩化炭素、及びヘキサンから選ばれる少なくとも一種を含む溶媒を好適なものとして挙げることができる。溶媒としては他の溶媒も混合して用いることができるが、溶媒全体に対する上記の低極性溶媒の割合は体積比で50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
【0081】
中心金属となる金属の塩又は錯体としては、例えば無機酸(例:塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等)の塩、有機酸(例:カルボン酸、スルホン酸)の塩、アンミン錯体、シアノ錯体、ハロゲノ錯体、ヒドロキシ錯体が挙げられる。
【0082】
また、反応温度としては、反応速度を考慮しながら適宜設定すればよいが、用いる溶媒の凝固点以上沸点以下の温度で行うことができる。また、反応時間も特に限定されないが、1秒〜1ヶ月程度とすることができ、反応時間に応じて膜厚を調節することができる。典型的には、1日程度の反応時間で数百nmの厚みに成長し得る。得られたシートは、一般的な方法、例えば、濾過、溶媒除去等によって分離することができる。但し、作製されたシートは非常に薄いので、液中から取り出す間に破断しないようにするべく、大きい容器で作製して取り出しやすいようにする方法、Langmuir-Schaefer法(シートが形成されている液−液界面又は気−液界面に対し基板を平行に近づけ、基板へ移し取る方法)、硬質基板で掬い上げる方法を利用することも可能である。同一基板に対し、Langmuir-Schaefer法を繰り返し適用することで、シートの多積層膜を作成することも可能である。
【0083】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートの厚みは、光吸収能と光電変換特性を高めるとともに、強度向上を図るという観点から平均で0.5nm以上であるのが好ましく、平均で50nm以上であるのがより好ましく、平均で100nm以上であるのが更により好ましい。また、本発明に係るポリマーシートの厚みは、ポリマーシートのキャリア移動過程、若しくはレドックスメディエータ・電解質の移動過程の阻害という理由により平均で100μm以下であるのが好ましく、平均で10μm以下であるのがより好ましく、平均で1μm以下であるのが更により好ましい。本発明において、ポリマーシートの厚みの平均値は原子力間顕微鏡によって測定した値を指す。
【0084】
成長後の金属錯体ポリマーシートを回収後、加熱処理を行うことでシートを平坦化することが可能である。金属錯体ポリマーを反応液中から基板上に置くと、シートが柔軟なためにシワが形成されることが多い。当該シワが光電変換特性に与える影響は明らかとなっていないが、少なくとも基板に対する密着性を阻害したり、シートが破損したりする要因となり得ることから、シワのない平坦な状態で基板上に配置されることが望ましい。この点、基板上に置いた本発明に係る金属錯体ポリマーを加熱処理すると、シワが伸ばされてシートを平坦化することが可能である。加熱処理は、シワの除去に有効な温度でシートの物理化学的性質に悪影響を与えない条件で行えばよいが、そのような条件の一例としては、例えば30〜500℃で10秒〜1週間の加熱処理が挙げられ、典型的には80〜150℃で1日〜5日の加熱処理が挙げられ、より典型的には120℃で3日間の加熱処理が挙げられる。
【0085】
理論によって本発明が限定されることを意図しないが、本発明においては錯形成反応の成長領域を有機相と水相液の界面である二次元平面に制限していることから、配位子化合物であるジピリン誘導体と金属イオンによる錯形成反応が自己組織化現象により連鎖的に平面状に広がっていくものと考えられる。特に、本発明において配位子として使用するジピリン誘導体が有するジピリン部位は、同一平面上で且つ点対称に位置するため、平面状のシートが規則的に成長することができると考えられる。これにより、式(i)若しくは式(iii)で表される三方向ジピリン誘導体であれば、図1に例示するような六角形状の網目構造をもつ錯体ポリマーが成長し、式(iv)で表される六方向ジピリン誘導体であれば、図2に例示するような三角形状の網目構造をもつ錯体ポリマーが成長し、式(v)で表される四方向ジピリン誘導体であれば、図3に例示するような四角形状の網目構造をもつ錯体ポリマーが成長すると推察される。
【0086】
本発明に係る金属錯体ポリマーシートは光電変換特性を有するという特徴の他、水及び有機溶媒に対して不溶性の性質を示すことができる。また、本発明に係る金属錯体ポリマーシートは耐久性(サイクル特性)にも優れているという特徴を有することができる。これは、本発明に係るポリマーシートが平面状に規則正しく配列された重合度の非常に高い錯体ポリマーから形成されており、共役π電子系の広がりも大きいことに起因すると考えられる。
【0087】
<太陽電池>
本発明に係る金属錯体ポリマーシートを光電変換が行われる光吸収層の材料として使用して、太陽電池を作製可能である。典型的には、色素増感太陽電池を作製可能である。本発明に係る太陽電池は一実施形態において、一対の電極と、当該電極間に本発明に係る金属錯体ポリマーシートを備えた光吸収層と、随意的な電解質層とを有する。本発明に係る太陽電池に太陽光などの光が入射されると、光が光電変換特性をもつ光吸収層に吸収され、これにより起電力が電極間に生成される。生成した起電力により、外部回路を通じて一方の電極からもう一方の電極に電流を流すことができる。本発明に係る金属錯体ポリマーシートを用いた太陽電池の積層構造を例示的に示す。
(1)基板/電極/光吸収層/対電極
(2)基板/光吸収層/電解質/対電極
(3)基板/電極/電解質/光吸収層/対電極
(4)基板/電極/電解質/光吸収層/電解質/対電極
【0088】
基板としては、例えば、ガラス、プラスチック、セラミック、樹脂フィルム、シリコン、金属、鏡等の基板が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明または半透明であることが好ましい。
【0089】
電極としては、限定的ではないが、導電性の金属酸化物膜、透光性の金属薄膜等を用いることができ、変換効率向上の観点から、半導体粒子からなるポーラス電極を使用することが好ましい。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体である酸化インジウム錫合金(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、金、白金、銀、銅等が例示でき、とりわけTiO2、SnO2、ZrO2、Ta25、Nb25、SrTiO3、BaTiO3、CaTiO3、KTaO3、WO3及びこれらの酸化物間の複合系などの酸化物半導体が挙げられ、TiO2が好ましい。また、電極の材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。電極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、例えば、10nm〜10μmとすることができ、好ましくは20nm〜1μmとすることができ、より好ましくは50nm〜500nmとすることができる。
【0090】
電解質としては、限定的ではないが、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の化合物が好ましく、例えば、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化リン酸リチウム、トリフルオロ硫酸リチウム、六フッ化砒酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラプロピルアンモニウム等の過塩素酸アンモニウム類、六フッ化リン酸テトラブチルアンモニウム、六フッ化リン酸テトラエチルアンモニウム、六フッ化リン酸テトラプロピルアンモニウム等の六フッ化リン酸アンモニウム類が挙げられる。
【0091】
電解質中には、光電変換効率を高める観点から、種々のレドックスメディエータを適量添加することができる。レドックスメディエータとしては、例えば、遷移金属レドックスメディエータ、有機レドックスメディエータ、無機レドックスメディエータが挙げられる。遷移金属レドックスメディエータとしては、例えば、Cu2+/Cuレドックスメディエータ、Fe3+/Fe2+レドックスメディエータ、[Fe(CN)64+/[Fe(CN)63+レドックスメディエータ、コバルトポリピリジンレドックスメディエータ(例:トリス(2、2’−ビピリジン)コバルト(III/II)([Co(bpy)3]3+/2+)、トリス(4,4’−ジメチル−2、2’−ビピリジン)コバルト(III/II)([Co(dmb)3]3+/2+)、トリス(4、4’−ジ−tert−ブチル−2、2’−ビピリジン)コバルト(III/II)([Co(dtb)3]3+/2+)、及びトリス(1、10−フェナントロリン)コバルト(III/II)([Co(phen)3]3+/2+))等が挙げられる。前記有機レドックスメディエータとしては、例えば、キノン/ヒドロキノンレドックスメディエータ、ポリアニリン、ニトロキシラジカル化合物等が挙げられる。前記無機レドックスメディエータとしては、例えば、I3-/I-レドックスメディエータ、Br3-/Br-レドックスメディエータ、NO2/NOレドックスメディエータ等が挙げられる。
【0092】
本発明に係る太陽電池では、液体電解質、ゲル状電解質及び固体電解質の何れを使用することも可能である。すなわち、本発明によれば、例えば全固体型の色素増感太陽電池を製造することも可能である。
【0093】
本発明に係る太陽電池の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。例えば、建材用、自動車用、インテリア用、鉄道用、船舶用、飛行機用、宇宙機用、家電用、文房具用、携帯電話用、時計用、モバイル端末用、ウェアラブル端末用、玩具用、及び眼鏡用等の用途が挙げられる。また、蓄電池を併設し、夜間での使用を可能にすることも可能である。
【実施例】
【0094】
以下に本発明の実施例(発明例)を比較例と共に示すが、これらは本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。1H NMR測定は、JEOL AL 400型核磁気共鳴分光器(400 MHz)を用いた。スペクトルはテトラメチルシランのピークを0.00 ppm、クロロホルムのピークを7.26 ppmとして較正した。
【0095】
(実施例1)
図4に示す合成手順により金属錯体ナノシートを作製した。
【0096】
<化合物1の合成>
【化24】
【0097】
テトラヒドロフラン/トルエンの15/15mLの混合溶媒中の1,3,5−トリブロモベンゼン(1.26g、4.0mmol)溶液に、4−ホルミルフェニルボロン酸(3.51g、23.4mmol)、Pd(PPh34(693mg、0.6mmol、15mmol%)及びNa2CO3(水5mL中に2.48g、23.4mmol)を添加した。得られた混合液を還流温度で16時間加熱し、n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1(体積比)の混合液を溶離液とした薄層クロマトグラフィ(TLC)により反応の進行を確認した。室温に冷却後、水を加え、混合溶液を酢酸エチルで抽出した。有機相を無水Na2SO4で乾燥し、濾過した。その後、混合物を減圧濃縮し、n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1の混合液(体積比)を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィにより残渣を精製し、化合物1を白色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 10.09 (s, 3H, O=CH), 8.03-8.01 (d, J=8.0, 6H), 7.88-7.86 (d, J=8.0, 6H), 7.91 (s, 3H); FAB-MS (m/z): 390[M]+.
【0098】
<化合物2の合成>
【化25】
【0099】
2.0gのピロール−2−カルボキシアルデヒド、6.0gの水酸化カリウム、及び5mLのヒドラジン一水和物の混合物を100mL容器に入れた。次いで1.7gのエチレングリコールを加えた後、この混合物を150℃で約1.5時間還流した。室温に冷却後、ジエチルエーテルによる抽出、脱イオン水及び塩水による洗浄、無水MgSO4による乾燥、及び減圧蒸留による溶媒除去を行って、淡黄色の生成物(化合物2)を得た(4.20g、収率:82.5%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 7.69 (s, 1H, N-H), 6.50-6.49 (d, 1H, J=4.0), 6.03-6.01 (t, 1H, J=4.0), 5.8 (s, 1H), 2.14 (s, 3H, CH3); FAB-MS (m/z): 81[M]+.
【0100】
<配位子L1の合成>
【化26】
【0101】
化合物1(450mg、1.15mmol)及び化合物2(2−メチルピロール)(0.63mL、7.49mmol)をAr雰囲気下で100mLのCH2Cl2中に溶解した。トリフルオロ酢酸(TFA)を一滴加えると、溶液は淡黄色から鮮紅色に変化した。室温で3時間攪拌を行った。TLC(シリカ、CH2Cl2)によりアルデヒドが完全に消費されたことを確認した後、クロラニル (848.2 mg, 3.45 mmol)のCH2Cl2溶液を加え、15分間攪拌を継続した。反応混合物を水洗し、無水MgSO4による乾燥、濾過、及びエバポレータによる蒸発乾燥を順に行った。得られた粗化合物をアルミナカラムクロマトグラフィ(溶離液:CH2Cl2)で精製したところ、配位子L1が濃黄色の粉末として得られた(230.7mg、収率:24.5%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 7.95 (s, 3H, Ar), 7.81-7.79 (d, J = 8.0 Hz, 6H, Ar), 7.62-7.60 (d, J = 8.0 Hz, 6H, Ar), 6.57-6.56 (d, J = 4.0 Hz, 6H, Ar), 6.20-6.19 (d, J = 4.0 Hz, 6H, Ar), 2.47 (s, 18H, -CH3); 13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ/ppm): 165.18, 146.78, 141.99, 137.88, 135.32, 132.12, 130.51, 128.89, 127.12, 116.54, 112.11, 105.97 (Ar), 18.21 (CH3); FAB-MS (m/z): 817 [M]+.
【0102】
<ナノシートの合成(1):単層シート>
50mMの酢酸亜鉛(II)水溶液30mLをバイアルに入れ、当該酢酸亜鉛(II)水溶液の上に、1mMの配位子L1のジクロロメタン溶液をマイクロシリンジにより極少量(14μL)散布した。20分静置したのち、気−液界面に生成したナノシートをLangmuir-Schaefar法を用いて各種基板に転写した。ナノシートの合成は同一の手順で複数回実施し、複数枚のシートを得た。得られたシートの一つについてAFM像を図5に示す。100μm2を超える大きさのナノシートが形成されていることが分かる。
【0103】
(化学構造)
得られたナノシートの一つについて可視光吸収スペクトルを測定し、次式で表されるジピリン配位子含有単核錯体と比較した(図6)。
【化27】
その結果、単核錯体に見られた波長495nm付近のピークが長波長側の波長500nmにシフトしており、錯体形成が示唆されていた。
また、当該ナノシートを導電性カーボン両面テープ上に貼り付けてサンプルとし、X線光電子スペクトルをULVAC−PHI社のPHI 500 Versa Probeを用いて測定した。X線光源としてAlKα線(15kV、25W又は20kV、100W)を用いて測定した。得られたスペクトルは、C1sのピークが284.6eVとなるようにチャージアップの補正を行った。得られたスペクトルを次式で表されるジピリン配位子(a)及び当該配位子のモノマー錯体(b)のものと比較した。結果を図22に示す。配位子の状態では非等価であったNは、モノマー錯体及びナノシートにおいて等価となったことが理解できる。また、配位子の状態では見られなかったZnがモノマー錯体及びナノシートにおいて確認された。
【化28】
【化29】
これらの結果から、当該ナノシートは配位子L1をもつ錯体ポリマーであり、六角形状の網目分子構造をもつと判断できる。
【0104】
(膜厚)
得られたナノシートの一つをSi−TMS基板上に置き、AFMの探針でナノシートの一部の領域をスクラッチして切り抜き、厚みを図7の右図の矢印の方向に走査して調査した。その結果、シートは平均で約1.2nmの厚みであることが確認された。膜厚測定は膜の端部やシワ部分を避けた平坦な箇所に対して行った。この厚みの値は得られたナノシートが単層であることを示している。
【0105】
(加熱処理の効果)
得られたナノシートの一つをSi−TMS基板上に置き、120℃で3日間乾燥機内で加熱したときのAFM像の変化を図8に示す。加熱処理前には見られていたシワ(代表的には図8の(a)において丸で囲んだ場所に存在する直線上の変色箇所)が加熱処理後にはほとんど消失し、平坦なシートに変化したことが分かる。
【0106】
<ナノシートの合成(2):多層シート>
1mMの配位子L1のジクロロメタン溶液10mLをバイアルに入れ、当該ジクロロメタン溶液の上に、水相と有機相の分離状態が維持されるように純水10mLを静かに重ねた後、更に50mMの酢酸亜鉛(II)水溶液20mLを静かに重ねた。1日静置したところ、水相と有機相の界面に橙色の薄い不溶性シートが形成されたことを確認した。
【0107】
当該シートの膜厚をAFMにより測定したところ、平均で約1000nmの厚みであることが確認された。膜厚測定は膜の端部やシワ部分を避けた平坦な箇所に対して行った。この厚みの値は得られたナノシートが多層であることを示している。
【0108】
(実施例2)
図9に示す合成手順により配位子L2を合成した。
【0109】
<化合物2’>
次式で表されるピロール化合物を和光純薬工業から入手した。
【化30】
【0110】
2.0gのピロール−2−カルボキシアルデヒド、6.0gの水酸化カリウム、及び5mLのヒドラジン一水和物の混合物を100mL容器に入れた。1.7gのエチレングリコールを加えた後、混合物を150℃で約1.5時間還流した。室温に冷却後、ジエチルエーテルによる抽出、脱イオン水及び塩水による洗浄、MgSO4による乾燥、及び減圧蒸留による溶媒除去を行って、淡黄色の生成物(化合物2’)を得た(4.20g、収率:82.5%)。
【0111】
<配位子L2の合成>
【化31】
【0112】
化合物1と化合物2’から、配位子L1と同様の合成手順(図9)に従って、配位子L2を合成した。配位子L2が橙色の粉末として得られた(収率:24.2%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 7.99 (s, 3H, Ar), 7.87-7.85 (d, J = 8.0 Hz, 6H, Ar), 7.46-7.45 7.81-7.79 (d, J = 8.0 Hz, 6H, Ar), 2.33 (s, 18H, -CH3), 2.31-2.27 (q, 12H, -CH2-), 1.31 (s, 18H, -CH3), 1.01-1.96 (t, J = 8.0 Hz, 18H, -CH3); 13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ/ppm): 150.29, 141.89, 140.51, 138.32, 137.01, 136.04, 134.59, 131.33, 130.22, 127.23, 125.05 (Ar), 17.58, 14.88, 14.41, 12.11 (alkyl); FAB-MS (m/z): 1070 [M]+.
【0113】
(実施例3)
図10に示す合成手順により配位子L3を合成した。
【0114】
<化合物3の合成>
【化32】
【0115】
1.57Mのt−BuLiのペンタン溶液(15.9mL)を、−78℃のトリス(4−ブロモフェニルアミン)(2g、24.9mmol)の無水ジエチルエーテル溶液30mLに窒素雰囲気下で滴下した。反応混合物を当該温度を維持したまま1時間攪拌した後、無水DMF(1.92mL、24.9mmol、6当量)を滴下により加えた。生成した反応懸濁液を室温に戻して2時間攪拌した。飽和NH4Clをゆっくり加えることで反応を制御した。有機溶媒を留去した後、水相をジクロロメタンで抽出した。有機相は無水MgSO4による乾燥及びエバポレータによる蒸発乾燥を経た後、n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1(体積比)の混合液を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製し、化合物3を淡黄色の固体として得た(852mg、収率:46%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 9.95 (s, 3H, O=CH), 7.86-7.84 (d, 6H, J = 8.0), 7.26-7.24 (d, 6H, J = 8.0); FAB-MS (m/z): 330 [M]+.
【0116】
<配位子L3の合成>
【化33】
化合物3と実施例1で合成した化合物2から、配位子L1と同様の合成手順(図10)に従って、配位子L3を合成した。配位子L3が茶色の固体として得られた(収率:18.7%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 7.45-7.43 (d, 6H, J = 8.0), 7.24-7.22 (d, 6H, J = 8.0), 6.62-6.61 (d, 6H, J = 4.0), 6.20-6.19 (d, 6H, J = 4.0), 2.46 (s, 18H, CH3); FAB-MS: 756.
【0117】
(実施例4)
図11に示す合成手順により配位子L4を合成した。
【0118】
<化合物4の合成>
【化34】
4−ホルミルフェニルボロン酸(2.002g、13.35mmol)に1.1当量のピナコール(1.806g、15.28mmol)を加えたものをTHF(30mL)及びトルエン(30mL)に溶解させた。すぐさまロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、真空下で乾燥させることによりピナコール保護された4−ホルミルフェニルボロン酸を定量的に得た。保護したものに無水硫酸ナトリウムを加えた後、窒素置換を行った。ジクロロメタンに溶解させ、保護したものに対して2.1当量の2−メチルピロール(2.55mL、29.5mmol)及び触媒量(50μL)のトリフルオロ酢酸(TFA)を加え室温、遮光条件下で3時間撹拌を行った。大気解放したのち1.1当量のクロラニル(3.61g、14.7mmol)を加え室温で5分間撹拌した。5分後、反応混合物を溶媒留去し、アルミナカラムクロマトグラフィ(溶離液:ジクロロメタン)にて分離を行い、化合物4を得た(2.677g、収率:54%)。
1H NMR (CDCl3, 25℃) δ = 7.84 (d, J = 8.05, 2H), 7.46 (d, J = 8.05, 2H), 6.42(d, J = 4.03, 2H), 6.14 (d, J = 4.03, 2H), 2.44 (s, 3H) 1.38 (s, 6H)
【0119】
<配位子L4の合成>
【化35】
【0120】
ヘキサブロモベンゼン(60.2mg、0.109mmol)に15当量の化合物4(819mg、2.19mmol)及び触媒量のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド(Pd(PPh32Cl2、52.0mg、74mmol)、トリフェニルホスフィン(PPh3、113mg、431mmol)、及び6当量の炭酸カリウム(94.1mg、0.68mmol)を加えたものを窒素下でDMSO(30mL)、tert−ブタノール(5mL)及び水(1.5mL)の混合溶媒に溶解させた。反応溶液を凍結脱気した後、90℃、遮光条件下で1週間撹拌した。1週間後、大気解放した反応溶液に塩水及びジクロロメタンを加え、数分撹拌したものをセライト濾過したものから、有機相を分取した。これを水で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。反応生成物をアルミナカラムクロマトグラフィ(溶離液:ジクロロメタン)で大まかに精製したのち、GPCを用いて配位子L4の分取を行った(1.1mg、収率:1%)。
【0121】
(実施例5)
実施例4で合成したジピリン(化合物4)と、ポルフィリン(化合物6)から鈴木カップリングにより配位子L5を合成した(図12)。
【化36】
【0122】
<化合物6の合成>
化合物6の合成を図13の手順に従って行った。ピロール(370μL、5.4mmol)とp−ブロモベンズアルデヒド(1.0g、5.4mmol)を窒素雰囲気下で500mLのCH2Cl2に溶解した。トリフルオロ酢酸(400μL、5.4mmol)を添加し、18時間攪拌した。次いで、クロラニル(1.35g、5.4mmol)を添加し、4時間攪拌した。次いで、Zn(OAc)2(1.0g、5.4mmol)を添加し、1時間攪拌した。反応混合物を水洗し、無水Na2SO4を加えて乾燥させた。溶媒をエバポレータにより留去した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(溶離液は、n−ヘキサン:CH2Cl2=1:1体積比)で精製して、MeOH/CH2Cl2中で再結晶させ、化合物6を得た(0.26g、収率:20%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) : δ/ppm 7.91 (8H, d, J= 4.1 Hz), 8.08 (8H, d, J= 4.1 Hz), 8.95 (8H, s) MS (FAB MS) (m/zcalcd = 993.8); m/zfound : 994.
【0123】
<配位子L5の合成>
化合物6のポルフィリン(150mg、0.15mmol)、化合物4のジピリン(560mg、1.5mmol)、Pd(PPh32Cl2(35mg、0.05mmol)、K2CO3(275mg、2mmol)及びPPh3(170mg、0.65mmol)をDMSO(30mL)及びH2O(0.06mL)(=500:1体積比)の混合溶媒に溶解した。この溶液を凍結脱気(3サイクル)し、80℃、窒素雰囲気下で4日間攪拌した。反応混合物を300mLの水で希釈し、CH2Cl2で抽出した(50mL×6回)。有機相を無水Na2SO4で乾燥させた後、この溶液を減圧濃縮すると紫色の固体を得た。この固体をMeOHで洗浄し、配位子L5を得た(73mg、収率:30%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) : δ/ppm 2.50 (24 H, s), 6.24 (8H, d, J=3.0 Hz), 6.66 (8H, d, J=3.7 Hz), 7.70 (8H, d, J=6.9 Hz), 8.00 (8H, d, J=8.1 Hz), 8.07 (8H, d, J=6.9 Hz), 8.35 (8H, d, J=7.9 Hz), 9.02 (8H, s).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) : δ/ppm 16.39, 117.57, 120.28, 125.00, 126.38, 129.04, 131.59, 131.75, 136.74, 138.13, 139.13, 141.07, 142.93, 150.06, 153.91
【0124】
<ナノシートの合成(3)>
ピリジンを1体積%含有するジクロロメタン10mL中に1.7mgの配位子L5を溶解して、配位子L5のジクロロメタン溶液を作製した。バイアルに入れた当該ジクロロメタン溶液の上に、水相と有機相の分離状態が維持されるように純水10mLを静かに重ねた後、更に0.2mMの酢酸亜鉛(II)水溶液10mLを静かに重ねた。2日間静置したところ、水相と有機相の界面に緑色の薄い不溶性シートが形成された。水相を純水で、有機相をCH2Cl2で希釈した後、水相をピペットで除去した。濾過後、当該シートを純水、MeOH及びCH2Cl2で洗浄し、真空乾燥した。
【0125】
配位子L5と合成したナノシートのX線光電子分光(XPS)のスペクトルチャートを図14図15にそれぞれ示す。配位子L5のXPSにおいては窒素1sのピークが398.0eVと399.7eVの二つ観測されているが、ナノシートのXPSでは398.2eVのピーク強度が大きく観測されている。窒素と亜鉛のスペクトルのピーク面積比を計算したところ配位子L5では窒素:亜鉛=14:1,(計算値 12:1)、ナノシートでは窒素:亜鉛=6:1,(計算値 4:1)となっており、これらのことから合成したナノシートにおける配位子L5の亜鉛イオンの錯形成を確認できる。ここで、窒素のピーク面積比が計算より大きくなっているのは配位子の溶解に用いたピリジンが亜鉛に軸配位子として配位しているためだと考えられる。当該ナノシートは配位子L5をもつ錯体ポリマーであり、四角形状の網目分子構造をもつと判断できる。
【0126】
当該シートの膜厚をAFMにより測定したところ、平均で約20nmの厚みであることが確認された。膜厚測定は膜の端部やシワ部分を避けた平坦な箇所に対して行った。この厚みの値は得られたナノシートが多層であることを示している。
【0127】
(実施例6)
本発明に係るナノシートの光電変換特性を測定するため、以下の手順によりサンプル1〜5のナノシートを作製した。
【0128】
<サンプル1:4層ナノシート>
50mLガラスバイアル中に30mLの酢酸亜鉛(II)水溶液(50mM、Zn(OAc)2・2H2O 0.3292g)を加えた。実施例1に示した配位子L1の7.4×10-5mol/L溶液(7.4×10-4gの配位子を6.0mLジクロロメタン+0.3mL酢酸エチルに溶かす)20μL(4層分のナノシートが形成される量に相当)をガラスバイアル中の水面に静かに散布し、4時間静置してナノシートを形成した。その後SnO2基板をLangmuir−Schaefer法により水面上に1分間接触させることでナノシートを転写した。さらに転写した基板を引き上げた後、純水、エタノール、ジクロロメタンを用いて順に基板を洗浄し、サンプル1を作製した。サンプル1の厚みは約4.8nm以下と推定される)。
【0129】
<サンプル2:多積層ナノシート>
LB膜作成装置(KSV NIMA社社製、形式KSV NIMA Small、以下同様)を用いてナノシートの合成及び積層を行った。初めにLB膜作成装置のトラフ、バリアー及び表面圧測定に用いるウィルヘルミプレートをエタノール及び純水により洗浄し、LB膜作成装置のトラフ中に60mLの酢酸亜鉛(II)水溶液(50mM、 Zn(OAc)2・2H2O 0.6584g)でトラフを満たした。トラフ上の水面から極少量の酢酸亜鉛水溶液を埃やごみと共に取り除き、トラフの面積を69.75cm2に変更した(トラフの最大面積の90%に相当)。その後、実施例1に示した配位子L1の7.5×10-4mol/L溶液(1.27×10-3gの配位子を950μLのジクロロメタン+50μLの酢酸エチルに溶かす)16.5μLをトラフの水面上に静かに散布し、18時間静置してナノシートを形成した。その後、表面圧1.83mN/m(18時間静置後の表面圧)の下で、SnO2基板をLS法(水面に対して平行な状態)により水面上に1分間接触させることでナノシートを転写し、純水、エタノール、ジクロロメタンを用いて順に基板を洗浄した。この過程を6回繰り返すことによりナノシートの多積層化を行い、サンプル2を作製した。サンプル2の平均層数を、可視光吸収の観測を行うことで算出したところ、27であった(単層あたりの吸光度0.00197、サンプルの吸光度0.0530、推定厚み約32nm)。
【0130】
<サンプル3:多積層ナノシート>
LB膜作成装置を用いてナノシートの合成及び積層を行った。初めにLB膜作成装置のトラフ、バリアー及び表面圧測定に用いるウィルヘルミプレートをエタノール及び純水により洗浄し、LB膜作成装置のトラフ中に60mLの酢酸亜鉛(II)水溶液(50mM、 Zn(OAc)2・2H2O 0.6584g)でトラフを満たした。トラフ上の水面から極少量の酢酸亜鉛水溶液を水面上の埃やごみと共に取り除き、トラフの面積を69.75cm2に変更した(トラフの最大面積の90%に相当)。その後、実施例1に示した配位子L1の7.5×10-4mol/L溶液(1.27×10-3gの配位子を950μLのジクロロメタン+50μLの酢酸エチルに溶かす)16.5μLをトラフの水面上に静かに散布し、4時間静置してナノシートを形成した。その後、表面圧1.83mN/m(4時間静置後の表面圧)の下で、SnO2基板をLS法(水面に対して平行な状態)により水面上に1分間接触させることでナノシートを転写し、純水、エタノール、ジクロロメタンを用いて順に基板を洗浄し、トラフの面積を2cm2(基板面積に相当)減少させた。この過程を8回繰り返した。さらに多層化を進めるため、以下の作業を行った。上記と全く同じ工程でトラフの水面上に配位子溶液を静かに散布し(散布量22.0μL)、22時間静置することでナノシートを形成した。その後、表面圧1.83mN/m(22時間静置後の表面圧)の下で、上記工程で得られた多積層ナノシートが形成されたSnO2基板をLS法(水面に対して平行な状態)により水面上に1分間接触させることでナノシートの更なる多積層化を実現した。純水、エタノール、ジクロロメタンを用いて順に基板を洗浄し、トラフの面積を2cm2(基板面積に相当)減少させた。この過程を9回繰り返すことによりサンプル3を得た。サンプル3の平均層数を、可視光吸収の観測を行うことで算出したところ、36であった(単層あたりの吸光度0.00197、サンプルの吸光度0.0720、推定厚み約43nm)。
【0131】
<サンプル4:多積層ナノシート>
LB膜作成装置を用いてナノシートの合成及び積層を行った。初めにLB膜作成装置のトラフ、バリアー及び表面圧測定に用いるウィルヘルミプレートをエタノール及び純水により洗浄し、LB膜作成装置のトラフ中に60mLの酢酸亜鉛(II)水溶液(50mM、 Zn(OAc)2・2H2O 0.6584g)でトラフを満たした。トラフ上の水面から極少量の酢酸亜鉛水溶液を埃やごみと共に取り除き、トラフの面積を69.75cm2に変更した(トラフの最大面積の90%に相当)。その後、実施例1と同じ配位子L1の7.5×10-4mol/L溶液(1.27×10-3gの配位子を950μLのジクロロメタン+50μLの酢酸エチルに溶かす)22.0μLをトラフの水面上に静かに散布し、17時間静置した。その後、表面圧0.45mN/m(17時間静置後の表面圧)の下で、SnO2基板をLS法(水面に対して平行な状態)により水面上に1分間接触させることでナノシートを転写し、純水、エタノール、ジクロロメタンを用いて順に基板を洗浄した。この過程を10回繰り返した。さらに多層化を進めるため、以下の作業を行った。上記と全く同じ工程でトラフの水面上に配位子溶液を静かに散布し(散布量22.0μL)、18時間静置することでナノシートを形成した。その後、表面圧0.45mN/m(18時間静置後の表面圧)の下で上記工程で得られた多積層ナノシートが形成されたSnO2基板をLS法(水面に対して平行な状態)により水面上に1分間接触させることでナノシートの更なる多積層化を実現した。純水、エタノール、ジクロロメタンを用いて順に基板を洗浄した。この過程を16回繰り返すことによりサンプル4を得た。サンプル4の平均層数を、可視光吸収の観測を行うことで算出したところ、73であった(単層あたりの吸光度0.00197、サンプルの吸光度0.143、推定厚み約88nm)。
【0132】
<サンプル5:多層ナノシート>
50mLガラスバイアル中に実施例1と同じ配位子L1のジクロロメタン溶液(1.0×10-4mol/L、8.2×10-4g)を10mL加え、さらに純水10mLを加えて有機層と水層に分離した二相界面を形成させた。2時間静置した後、酢酸亜鉛(II)水溶液(100mM、 Zn(OAc)2・2H2O 0.6584g)を加えた。この状態で4日静置し、界面上でのナノシートの生成を確認した。水層部分を取り除き純水を加える操作を5回行い、さらに有機層部分を取り除き有機層にジクロロメタンを加える操作を2回行った。その後SnO2基板に生成したナノシートを乗せることでサンプル5を得た。サンプル5の平均層数を、可視光吸収の観測を行うことで算出したところ、243であった(単層あたりの吸光度0.00197、サンプルの吸光度0.4796、推定厚み約292nm)。
【0133】
<サンプル6:配位子L5を用いた多層ナノシート>
ピリジンを1体積%含有するジクロロメタン10mL中に1.7mgの配位子L5を溶解して、配位子L5のジクロロメタン溶液を作製した。バイアルに入れた当該ジクロロメタン溶液の上に、水相と有機相の分離状態が維持されるように純水10mLを静かに重ねた後、更に0.2mMの酢酸亜鉛(II)水溶液10mLを静かに重ねた。2日間静置したところ、水相と有機相の界面に緑色の薄い不溶性シートが形成された。水相を純水で、有機相をCH2Cl2で希釈した後、水相をピペットで除去した。濾過後、当該シートを純水、MeOH及びCH2Cl2で洗浄し、真空乾燥した。その後SnO2基板に生成したナノシートを乗せることでサンプル6を得た。ナノシートの厚みは20nmと推測される。
【0134】
<光電流測定手順>
1〜6のすべてのサンプルに対して下記に示す手法で光電流の測定を行った。電解質溶液として過塩素酸テトラブチルアンモニウム(0.10M)及び犠牲試薬トリエタノールアミン(0.05M)の混合溶液12mL(過塩素酸テトラブチルアンモニウム0.4103g及びトリエタノールアミン0.0894g)を調整した。セルに混合溶液を加え、作用電極として当該ナノシートを転写したSnO2基板(サンプル1〜サンプル6のいずれか1つ)、参照電極として銀線ならびに対電極として白金電極を用いた3電極系をセットし、アルゴンガスにより30分バブリングした。
【0135】
その後、作用電極に対して光照射を行い、光電流の観測を行った。光電流の観測は光のon/offを25秒ずつ繰り返すことにより行い、また作用電極への印加電位は銀線基準で0Vで行った。銀線基準で0Vの電位を作用電極に印加しても、トリエタノールアミンの酸化電流が暗電流として流れないことも確認した。サンプル1−5については500nmの単色光を照射した。サンプル6については450nmの単色光を照射した。サンプル1については光電流値の照射波長依存(400nm、450nm、500nm、550nm、600nm)を測定した。サンプル2及び4に関して吸収波長500nmにおける光電流観測を繰り返し行い、耐久度測定を行った。サンプル2、3、4、及び5については500nmの単色光に対する量子収率および外部量子効率の算出を行った。またサンプルが転写されていないSnO2基板に対しても光電流の観測を行い、光電流が観測されないことを明らかとした。光電流はALS 650DT(BAS社製)で検出・データ取得した。光源としてHIGH POWERキセノン光源 MAX302(旭分光株式会社)を利用し、単色光の強度としては同社のカタログ値を採用した。
【0136】
<光電流測定結果>
サンプル1
結果を図23に示す。各波長の光を25秒照射し、光照射終了直前の光電流を測定したところ、400nmの光照射により13.3nAの光電流が、450nmの光照射により17.1nA、500nmの光照射により30.5nA、550nmの光照射により5.0nA、600nmの光照射により0.5nAの光電流が観測された。また、500nmの光照射については、光のon/offに応じて流れる光電流の変化を示すグラフも図24に示す。
【0137】
サンプル2
結果を図25(最初の4回の繰り返し)及び図26(全体)に示す。500nmの光照射による光電流の測定により観測初期(1回目の光照射終了直前)に126nAの光電流が検出された。この際の量子収率は67.2%、外部量子効率は7.77%であった。さらに132回のon/off繰り返し測定の後27.8nAの光電流が観測され、電流量が一定になった。電流値の減少はナノシートの物理的な剥離によるものであり、電極との固定化法を改善することでより安定な光電流が取り出せるものと考えられる。
【0138】
サンプル3
結果を図27に示す。500nmの光照射による光電流の測定により観測初期(1回目の光照射終了直前)に131nAの光電流が検出された。この際の量子収率は52.5%、外部量子効率は8.08%であった。
【0139】
サンプル4
結果を図28(最初の4回の繰り返し)及び図29(全体)に示す。500nmの光照射による光電流の測定により観測初期(1回目の光照射終了直前)に114nAの光電流が検出された。この際の量子収率は24.9%、外部量子効率は7.03%であった。さらに130回のon/off繰り返し測定の後18.1nAの光電流が観測され、電流量が一定になった。電流値の減少はナノシートの物理的な剥離によるものであり、電極との固定化法を改善することでより安定な光電流が取り出せるものと考えられる。
【0140】
サンプル5
結果を図30に示す。500nmの光照射による光電流の測定により観測初期(1回目の光照射終了直前)に0.86nAの光電流が検出された。この際の量子収率は0.079%、外部量子収率は0.053%であった。
【0141】
サンプル6
結果を図31に示す。450nmの光照射による光電流の測定により観測初期(1回目の光照射終了直前)に6.9nAの光電流が検出された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31