(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記アクリル系共重合体(A)の数平均分子量に対する、上記マクロモノマーの数平均分子量の比率が0.0025〜0.6であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤樹脂組成物。
上記アクリル系共重合体(A)の枝成分としてのマクロモノマーのガラス転移温度は、上記アクリル系共重合体(A)の幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤樹脂組成物。
上記アクリル系共重合体(A)の幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度は−70〜0℃であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の粘着剤樹脂組成物。
上記アクリル系共重合体(A)は、幹成分として、疎水性の(メタ)アクリル酸エステルと、親水性の(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位とを含有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の粘着剤樹脂組成物。
上記アクリル系共重合体(A)は、幹成分として、疎水性の(メタ)アクリル酸エステルと、親水性の(メタ)アクリル酸エステルと、マクロモノマーの末端の重合性官能基とがランダム共重合してなる構成を備えた請求項1〜6の何れかに記載の粘着剤樹脂組成物。
粘着剤樹脂組成物を厚さ150μmのシート状に賦形して、ソーダライムガラス(厚さ0.5mm)とシクロオレフィンポリマーフィルム(厚さ100μm)との間に挟んだ積層体に、紫外線を照射して粘着シートを硬化させた後のヘイズ(JIS K7136)が10%未満であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の粘着剤樹脂組成物。
粘着剤樹脂組成物を厚さ150μmのシート状に賦形して、ソーダライムガラス(厚さ0.5mm)とシクロオレフィンポリマーフィルム(厚さ100μm)との間に挟んだ積層体に、紫外線を照射して粘着シートを硬化させた積層体について、65℃、90%RHの湿熱環境下にて100時間保管した後、23℃、50%RHの室温環境下にて2時間保管した後のヘイズ(JIS K7136)が10%未満であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の粘着剤樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<本粘着剤樹脂組成物>
本発明の実施形態の一例に係る粘着剤樹脂組成物は、アクリル系共重合体(A)と、架橋剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含有する粘着剤樹脂組成物(「本粘着剤樹脂組成物」と称する)である。
【0014】
<アクリル系共重合体(A)>
アクリル系共重合体(A)は、重量平均分子量が5.0×10
4〜5.0×10
5であるグラフト共重合体であり、当該グラフト共重合体の幹成分として(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含有し、当該グラフト共重合体の枝成分としてマクロモノマー由来の繰り返し単位を含有する。
【0015】
(分子量)
アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は5.0×10
4〜5.0×10
5であることが重要である。
アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が5.0×10
4以上であることによって、粘着剤組成物としての耐久性を向上させることができ、また、当該重量平均分子量が5.0×10
5を超えると、例えば80℃程度で加熱溶融(ホットメルト)することが難しくなる一方、当該重量平均分子量が5.0×10
5以下であれば、粘着剤組成物の粘度を適正な範囲とすることができ、例えば塗工性を向上させることができる。
このような観点から、アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、5.0×10
4〜5.0×10
5であることが重要であり、中でも1.2×10
5以上或いは4.5×10
5以下であるのが好ましく、その中でも1.5×10
5以上或いは4.0×10
5以下であるのがより好ましい。
【0016】
(構造)
アクリル系共重合体(A)は、幹成分として(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含有する共重合体成分を備える一方、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体であるのが好ましい。
【0017】
(幹成分)
アクリル系共重合体(A)の幹成分は、(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含有する共重合体成分から構成されるのが好ましい。
【0018】
アクリル系共重合体(A)の幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度は−70〜0℃であるのが好ましい。この際、共重合体成分のガラス転移温度とは、当該共重合体各成分のホモポリマーから得られるポリマーのガラス転移温度と構成比率から、Foxの計算式によって算出される値を意味する。
なお、Foxの計算式とは、以下の式により求められる計算値であり、ポリマーハンドブック〔PolymerHandBook,J.Brandrup,Interscience,1989〕に記載されている値を用いて求めることができる。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
[式中、Wiはモノマーiの重量分率、TgiはモノマーiのホモポリマーのTg(℃)を示す。]
【0019】
アクリル系共重合体(A)の幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度は、室温状態での本粘着剤樹脂組成物の柔軟性や、被着体への本粘着剤樹脂組成物の濡れ性、すなわち接着性に影響するため、本粘着剤樹脂組成物が室温状態で適度な接着性(タック性)を有するためには、当該ガラス転移温度は、−70℃〜0℃であるのが好ましく、中でも−65℃以上−5℃以下、その中でも−60℃以上−10℃以下であるのが特に好ましい。
【0020】
但し、当該共重合体成分のガラス転移温度が同じ温度であったとしても、分子量を調整することにより粘弾性を調整することができる。例えば当該共重合体成分の分子量を小さくすることにより、より柔軟化させることができる。
【0021】
アクリル系共重合体(A)の幹成分を構成する単量体単位である(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート等を挙げることができる。
【0022】
また、アクリル系共重合体(A)の幹成分は、疎水性の(メタ)アクリル酸エステルと、親水性の(メタ)アクリル酸エステルとを構成単位として含有するのが好ましい。
アクリル系共重合体(A)の幹成分が、疎水性モノマーのみから構成されると、湿熱白化する傾向が認められるため、親水性モノマーも幹成分に導入するのが好ましい。
具体的には、上記アクリル系共重合体(A)の幹成分として、疎水性の(メタ)アクリル酸エステルと、親水性の(メタ)アクリル酸エステルと、マクロモノマーの末端の重合性官能基とがランダム共重合してなる共重合体成分を挙げることができる。
【0023】
ここで、上記の疎水性の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどが挙げられる。その他にも、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルなどを挙げることができる。
【0024】
上記の親水性の(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリセロール等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するモノマー、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性モノマーなどを挙げることができる。
【0025】
(枝成分)
アクリル系共重合体(A)は、グラフト共重合体の枝成分として、マクロモノマーを導入することが重要である。
マクロモノマーは、末端に重合性官能基を有する高分子量単量体のことを意味する。本粘着剤樹脂組成物におけるマクロモノマーの数平均分子量は5.0×10
2以上6.0×10
3未満である。
アクリル系共重合体(A)の枝成分として導入されるマクロモノマーの数平均分子量が5.0×10
2以上であれば、マクロモノマーによる凝集力の効果を得ることができる。また、当該マクロモノマーの数平均分子量が6.0×10
3未満であれば、粘着物性を維持しながら適正な粘度にすることができる。よって、前記範囲であれば、室温状態では、十分な保持力を維持することができ、加熱することで流動性を得ることができる。
かかる観点から、当該マクロモノマーの数平均分子量は5.0×10
2以上6.0×10
3未満であることが好ましく、中でも8.0×10
2以上或いは5.5×10
3以下、その中でも1.0×10
3以上或いは4.5×10
3以下であるのがより一層好ましい。
【0026】
また、アクリル系共重合体(A)の数平均分子量に対する、前記マクロモノマーの数平均分子量の比率は、0.0025〜0.6であるのが好ましく、中でも0.005以上或いは0.3以下、その中でも0.008以上或いは0.2以下、その中でも0.01以上或いは0.1以下であるのがさらに好ましい。
【0027】
また、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、上記アクリル系共重合体(A)を構成する共重合体成分のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。
具体的には、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、本粘着剤樹脂組成物の加熱溶融温度(ホットメルト温度)に影響するため、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は30℃〜120℃であるのが好ましく、中でも40℃以上110℃以下、その中でも50℃以上100℃以下であるのがさらに好ましい。
このようなガラス転移温度(Tg)であれば、分子量を調整することにより、優れた加工性や保管安定性を保持できると共に、80℃付近でホットメルトするように調整することができる。
なお、マクロモノマーのガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
【0028】
また、上述のように、室温状態では粘着剤組成物として十分な保持力を有し、適度な温度に加熱した場合に良好な流動性を得ることができるようにするためには、マクロモノマーの含有量を調整することも重要である。
かかる観点から、マクロモノマー由来の繰り返し単位は、アクリル系共重合体(A)中に0.1mol%〜3mol%の割合で含有することが重要であり、中でも0.2mol%以上或いは2.5mol%以下、その中でも0.3mol%以上或いは2mol%以下であるのが好ましい。
【0029】
(マクロモノマーを構成する成分)
前記マクロモノマーを構成する成分としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどを挙げることができる。その他にも、例えば(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリセロール等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するモノマー、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性モノマー、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系モノマー、メトキシエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル等の末端アルコキシアリル化ポリエーテルモノマー、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。中でも、カルボキシル基含有モノマーを含まないのが好ましい。
なお、これらは単独で使用してもよいし、複数を共重合してもよい。
【0030】
(末端の重合性官能基)
マクロモノマーの末端重合性官能基としては、例えば、メタクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基や下記構造式で示される末端重合性官能基などを挙げることができる。
【0032】
(マクロモノマーの製造方法)
マクロモノマーは、公知の方法で製造できる。マクロモノマーの製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法、α−メチルスチレンダイマー等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法、重合性基を化学的に結合させる方、及び熱分解による方法が挙げることができる。これらの中で、マクロモノマーの製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点でコバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。なお、コバルト連鎖移動剤を用いて製造した場合のマクロモノマーの末端重合性官能基は前記(構造式1)の構造を有する。
【0033】
コバルト連鎖移動剤を用いてマクロモノマーを製造する方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法及び懸濁重合法、乳化重合法等の水系分散重合法が挙げられる。
【0034】
(アクリル系共重合体(A)の製造方法)
本粘着剤樹脂組成物において、アクリル系共重合体(A)は、幹成分の構成単位となる(メタ)アクリル酸エステル単量体と、上記のマクロモノマーを共重合することにより得ることができる。
アクリル系共重合体(A)の製造方法としては、1種もしくは2種以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体と、別途調整されたマクロモノマーの混合物を溶液重合法、懸濁重合法及び乳化重合法等、公知の重合方法によって製造することが可能である。本粘着剤樹脂組成物においては、粘着剤樹脂組成物として用いるため、溶液重合法が好ましい。
なお、アクリル系共重合体(A)には、(メタ)アクリル酸エステルを構成単位とした幹成分と、マクロモノマーを枝成分とするグラフト共重合体以外に、(メタ)アクリル酸エステルと、マクロモノマーをそれぞれ構成単位とするブロックポリマーや、(メタ)アクリル酸エステルが単独重合した共重合体などを副生成物として含む。
本発明では、全てグラフト共重合体が生成しているものとしてアクリル系共重合体(A)の分子量およびマクロモノマーの含有量を測定・計算している。
【0035】
<架橋剤(B)>
架橋剤(B)としては、エポキシ架橋剤やイソシアネート架橋剤、オキセタン化合物、シラン化合物、アクリル化合物等からなる架橋剤を適宜選択可能である。中でも、反応性や、得られる硬化物の強度の点で、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0036】
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の紫外線硬化型の多官能モノマー類のほか、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能アクリルオリゴマー類を挙げることができる。
【0037】
架橋剤(B)の含有量は、特に制限されるものではない。目安としては、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.5〜20質量部、中でも1質量部以上或いは15質量部以下、その中でも2質量部以上或いは10質量部以下の割合であるのが好ましい。
架橋剤(B)を上記範囲で含有することで、未架橋状態における粘着シートの形状安定性と、架橋後の粘着シートにおける耐発泡信頼性とを両立させることができる。
【0038】
<光重合開始剤(C)>
光重合開始剤(C)は、前述の架橋剤(B)の架橋反応における反応開始助剤としての機能を果たす。活性エネルギー線を引き金としてラジカルを発生する有機過酸化物や、光重合開始剤等を適宜使用することができる。中でも、光重合開始剤、とくに波長380nm以下の紫外線に感応する光重合開始剤が、架橋反応の制御のしやすさの観点から好ましい。
【0039】
光重合開始剤は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光重合性開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光重合開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光重合開始剤と、に大別される。
【0040】
中でも、開裂型光重合開始剤は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となり、一度励起されると反応開始剤としての機能をもたなくなる。このため、架橋反応が終了した後の粘着シート中に活性種として残存しにくく、粘着シートに予期せぬ光劣化等をもたらす可能性がないため、好ましい。
他方、水素引抜型の光重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線照射によるラジカル発生反応時に、開裂型光重合開始剤のような分解物を生じないので、反応終了後に揮発成分となりにくく、被着体へのダメージを低減させることができる点で有用である。
【0041】
前記開裂型光重合開始剤としては、例えばベンゾインブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシアセトフェノン、ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイドやそれらの誘導体などを挙げることができる。
前記水素引抜型光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−エチルアントラキノン、チオキサンソンやその誘導体などを挙げることができる。
但し、光重合開始剤として前記に挙げた物質に限定するものではない。本粘着剤樹脂組成物は、開裂型光重合開始剤及び水素引抜型光重合開始剤のいずれか一種を使用してもよいし、両者を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
光重合開始剤(C)の含有量は特に制限されるものではない。目安としては、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.1〜5質量部、中でも0.5質量部以上或いは5質量部以下、その中でも1質量部以上或いは3質量部以下の割合で含有するのが好ましい。
光重合開始剤(C)の含有量を上記範囲とすることで、活性エネルギー線に対する適度な反応感度を得ることができる。
【0043】
<その他の成分(D)>
本粘着剤樹脂組成物は、上記以外の成分として、通常の粘着剤組成物に配合されている公知の成分を含有してもよい。例えば、必要に応じて、粘着付与樹脂や、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、老化防止剤、吸湿剤などの各種の添加剤を適宜含有させることも可能である。
また、必要に応じて反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を適宜含有してもよい。
【0044】
<本粘着剤樹脂組成物の物性>
本粘着剤樹脂組成物(未架橋状態)は、JIS Z 0237に準拠して求められる保持力に関し、粘着材樹脂組成物を厚さ150μmのシート状に賦形して、SUS板に面積20mm×20mmで接着させ、40℃の環境下で500gfの荷重をかけたときの落下時間を20分以上とするのが好ましい。
【0045】
本粘着剤樹脂組成物は、厚さ150μmのシート状に賦形して、ソーダライムガラス(厚さ0.5mm)とシクロオレフィンポリマーフィルム(厚さ100μm)との間に挟んだ積層体に、紫外線を照射して粘着シートを硬化させた後のヘイズ(JIS K7136)が10%未満であることが好ましく、5%未満がより好ましい。
【0046】
また、本粘着剤樹脂組成物は、厚さ150μmのシート状に賦形して、ソーダライムガラス(厚さ0.5mm)とシクロオレフィンポリマーフィルム(厚さ100μm)との間に挟んだ積層体に、紫外線を照射して粘着シートを硬化させた積層体について、65℃、90%RHの湿熱環境下にて100時間保管した後、23℃、50%RHの室温環境下にて2時間保管した後のヘイズ(JIS K7136)が10%未満であることが好ましく、5%未満がより好ましい。
【0047】
<用途>
本粘着剤樹脂組成物は、シート成形して粘着シートとして使用する用途に特に適している。
このように本粘着剤樹脂組成物から作製した粘着シート(「本粘着シート」と称する)は、透明で、接着性を備えているばかりか、加熱によって粘着シート内に歪みを残すことなく、貼合面の段差部に追従して隅々まで充填することができ、さらには、取り回し時の作業性を損なうことなく、高温や高湿環境下での耐発泡性を維持することができる。
よって、本粘着シートは、例えばパソコン、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビ、タッチパネル、ペンタブレットなど、LCD、PDP又はELなどの画像表示パネルを用いた平面型画像表示装置において、画像表示パネルに対して保護パネルやタッチパネル等の透明パネル乃至フィルム部材を貼り合わせるのに好適に用いることができる。
【0048】
例えば、携帯電話の表示画面などでは、タッチパネルフィルム等の機能性フィルム上に粘着シートを介して表面保護パネルを積層する構成が採用されている。この際、該保護パネルの裏面には、周縁部に隠蔽用印刷部(厚さ5μm〜80μm程度)が付設され、隠蔽用印刷部の縁に形成される段差部の入隅部内にまで粘着剤が十分に入り込まないと、気泡が残留して画面の視認性が低下することになる。また、段差近傍でフィルム部材が屈曲して外観不良となったり、フィルムの屈曲による残留歪が起点となって、積層した部材間に発泡や剥離が起こったりするおそれがあった。
本粘着シートは、このような5μm〜20μm程度の段差はもちろん、50μm〜80μm程度の段差があっても、段差の隅々まで充填して気泡を残留させることなく貼着することができる。しかも、たとえ被着体の一方が屈曲性をもつフィルム部材であったとしても、当該粘着シートをホットメルトさせることで、表面を歪みなく平滑に均すことが可能であるため、フィルム部材に歪や変形を生じさせずに、部材を貼合一体化することができる、しかも、貼合後に粘着シートを架橋することで、例えば85℃程度の高温環境下においても、粘着シートは流動せずに高凝集力を維持できることから、耐発泡信頼性に極めて優れている。そのため、本粘着シートは、貼合面に高印刷段差などの段差部や凹凸部を備えた画像表示装置構成部材がある場合、特に、凹凸部を備えた部材と屈曲性のフィルム部材とを貼合するのに好適に用いることができる。
【0049】
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0050】
以下に実施例および比較例を示し、本発明の粘着剤樹脂組成物について更に詳細に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
<マクロモノマー(a−1)の合成>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900質量部、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム60質量部、メタクリル酸カリウム10質量部及びメタクリル酸(MMA)12質量部を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08質量部を添加し、更に60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを使用して、MMAを0.24質量部/分の速度で75分間連続的に滴下した。反応溶液を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分10質量%の分散剤1を得た。
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145質量部、硫酸ナトリウム0.1質量部及び分散剤1(固形分10質量%)0.25質量部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、メタクリル酸を100質量部、連鎖移動剤としてビス[(ジフルオロボリル)ジフェニルグリオキシメイト]コバルト(II)を0.004質量部、重合開始剤として1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(パーオクタO、日本油脂株式会社製)0.4質量部を加え、水性懸濁液とした。
次に、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して1時間反応し、さらに重合率を上げるため、90℃に昇温して1時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、ポリマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥して、マクロモノマー(a−1)を得た。このマクロモノマー(a−1)の数平均分子量は2.5×10
3であった。
【0052】
<マクロモノマー(a−2)、(a−3)の製造>
開始剤、連鎖移動剤を表1に示す仕込み量に変更した以外は、マクロモノマー(a−1)と同様の方法で製造した。
【0053】
【表1】
【0054】
(評価方法)
マクロモノマーのガラス転移温度に関しては、示差走査熱量計(株式会社リガク製、DSC SmartRoader)を用いて、窒素雰囲気下、5℃/分の昇温速度で測定した。なお、標準物質としては酸化アルミニウムを使用した。
マクロモノマーの分子量に関しては、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製 HLC−8320)を用いて測定した。(メタ)アクリル系共重合体(A)のテトラヒドロフラン溶液0.2質量%を調整後、TOSO社製カラム(TSKgel SuperHZM−M×HZM−M×HZ2000、TSKguardcolumn
SuperHZ−L)が装着された装置に上記の溶液10μlを注入し、流量:0.35ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤BHT)、カラム温度:40℃の条件で測定し、標準ポリスチレン換算にて数平均分子量(Mn)を算出した。
アクリル系共重合体(A)の分子量に関しては、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製 HLC−8120)を用いて測定した。(メタ)アクリル系共重合体(A)のテトラヒドロフラン溶液0.3質量%を調整後、TOSO社製カラム(TSKgel SuperHM−H4本、TSKguardcolumn SuperH−H)が装着された装置に上記の溶液20μlを注入し、流量:0.6ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤BHT)、カラム温度:40℃の条件で測定し、標準ポリスチレン換算にて数平均分子量(Mw、Mn)を算出した。
【0055】
[製造例1]
(アクリル系共重合体(A)の製法)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、酢酸エチル40質量部、イソプロパノール4.5質量部、マクロモノマー(a−1)15質量部、窒素ガス通気下で85℃に昇温した。85℃に達した後、酢酸エチル20質量部、アクリル酸n−ブチル81質量部、アクリル酸4質量部、ベンゾイルパーオキサイド0.04質量部からなる混合物を4.5時間かけて滴下した。滴下終了後1時間保持した後、パーオクタO0.5質量部と酢酸エチル10質量部からなる混合物を1時間かけて添加した。その後、2時間保持した後、酸化防止剤としてイルガノックス1010を0.5質量部、酢酸エチルを20.5質量部添加後、室温まで冷却してメタアクリル系共重合体(A−1)を得た。
【0056】
得られたアクリル系共重合体(A−1)の重量平均分子量、数平均分子量、アクリル系共重合体(A)の幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度、マクロモノマーの数平均分子量、アクリル系共重合体(A−1)の数平均分子量に対するマクロモノマーの数平均分子量の比率、マクロモノマーのガラス転移温度、及び、アクリル系共重合体(A−1)中のマクロモノマーmol%を、表2に記載した。
【0057】
[製造例2]
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、酢酸エチル10質量部、マクロモノマー(a−2)10質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル15質量部、窒素ガス通気下で85℃に昇温した。85℃に達した後、酢酸エチル20質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル75質量部、ベンゾイルパーオキサイド0.04質量部からなる混合物を4.5時間かけて滴下した。滴下終了後1時間保持した後、パーオクタO0.5質量部と酢酸エチル10質量部からなる混合物を1時間かけて添加した。その後、2時間保持した後、酸化防止剤としてイルガノックス1010を0.5質量部、酢酸エチル36.7質量部を添加後、室温まで冷却してアクリル系共重合体(A−2)を得た。
得られたアクリル系共重合体(A−2)の物性を表2に記載した。
【0058】
[製造例3]
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、酢酸エチル40質量部、イソプロパノール12質量部、マクロモノマー(a−3)10質量部、窒素ガス通気下で85℃に昇温した。85℃に達した後、酢酸エチル20質量部、アクリル酸n−ブチル90質量部、ベンゾイルパーオキサイド0.04質量部からなる混合物を4.5時間かけて滴下した。滴下終了後1時間保持した後、パーオクタO0.5質量部と酢酸エチル10質量部からなる混合物を1時間かけて添加した。その後、2時間保持した後、酸化防止剤としてイルガノックス1010を0.5質量部、酢酸エチル20質量部を添加後、室温まで冷却してメタアクリル系共重合体(A−3)を得た。
得られたアクリル系共重合体(A−3)の物性を表2に記載した。
【0059】
【表2】
【0060】
[実施例1]
製造例1により作製したアクリル系共重合体(A−1)を脱溶剤し、固形樹脂を得た。アクリル系共重合体(A−1)の固形樹脂1kgに対し、架橋剤(B)として、トリメチロールプロパンエポキシアクリレート(B−1)100g、光重合開始剤(C)として、ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイド(C−1)15gを均一混合し、粘着剤樹脂組成物を作製した。
当該粘着剤樹脂組成物を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(各「離型フィルム」と称する)で挟み、ラミネータを用いて当該粘着剤樹脂組成物を厚さ150μmとなるようシート状に賦形して、粘着シート1を作製した。
【0061】
[実施例2]
架橋剤(B)として、グリセリンジメタクリレート(B−2)100gを用いた以外は、実施例1と同様にして粘着シート2を作製した。
【0062】
[実施例3]
製造例2により作製したアクリル系共重合体(A−2)を脱溶剤し、固形樹脂を得た。アクリル系共重合体(A−2)の固形樹脂1kgに対し、架橋剤(B)として、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート(B−3)50g、光重合開始剤(C)として、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンとの混合物(C−2)15gを均一混合し、粘着剤樹脂組成物を作製した。
当該粘着剤樹脂組成物を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(各「離型フィルム」と称する)で挟み、ラミネータを用いて当該粘着剤樹脂組成物を厚さ150μmとなるようシート状に賦形して、粘着シート3(厚さ150μm)を作製した。
【0063】
[実施例4]
製造例3により作製したアクリル系共重合体(A−3)を脱溶剤し、固形樹脂を得た。アクリル系共重合体(A−3)の固形樹脂1kgに対し、架橋剤(B)として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(B−4)150g、光重合開始剤(C)として、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンとの混合物(C−2)15gを均一混合し、粘着剤樹脂組成物を作製した。
当該粘着剤樹脂組成物を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(各「離型フィルム」と称する)で挟み、ラミネータを用いて当該粘着剤樹脂組成物を厚さ150μmとなるようシート状に賦形して、粘着シート4(厚さ150μm)を作製した。
【0064】
[比較例1]
マクロモノマーを有さないアクリル系共重合体を用いて透明両面粘着シート5を作製した。すなわち、アクリル系共重合体(A)として、メタクリル酸メチル20質量部とブチルアクリレート80質量部とをランダム共重合してなるアクリル系共重合体(A−4)(重量平均分子量:4.0×10
5)を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着シート5を作製した。
【0065】
[比較例2]
架橋剤及び光重合開始剤を配合することなく、透明両面粘着シート6を作製した。
すなわち、実施例1で用いたアクリル系共重合体(A−1)のみを、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(各「離型フィルム」と称する)で挟み、ラミネータを用いてアクリル系共重合体(A−1)を厚さ150μmとなるようシート状に賦形し、粘着シート6(厚さ150μm)を作製した。
【0066】
[比較例3]
特許4971529号の実施例3に準じて透明両面粘着シート7を作製した。
すなわち、2−エチルヘキシルアクリレート75質量部と酢酸ビニル20質量部とアクリル酸5質量部とをランダム共重合してなるアクリル系共重合体(A−5)1kgに、架橋剤(B)として、ノナンジオールジアクリレート(B−5)50g、光重合開始剤(C)として、4−メチルベンゾフェノン(C−3)10gを混合添加して粘着剤樹脂組成物を調製した。
当該粘着剤樹脂組成物を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(各「離型フィルム」と称する)で挟み、ラミネータを用いて当該粘着剤樹脂組成物を厚さ150μmとなるようシート状に賦形して、透明両面粘着シート7(厚さ150μm)を作製した。
【0067】
[評価]
(保持力)
実施例及び比較例で作製した厚さ150μmの粘着シート1〜7を40mm×50mmに裁断し、片面の離型フィルムを剥がし、裏打用のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、ダイアホイルS−100、厚さ38μm)をハンドローラで背貼りした後、これを巾25mm×長さ100mmの短冊状に裁断して試験片とした。
次に、残る離型フィルムを剥がして、SUS板(120mm×50mm×厚さ1.2mm)に、貼着面積が20mm×20mmとなるようハンドローラで貼着した。
その後、試験片を40℃の雰囲気下で15分養生させた後、試験片に500gf(4.9N)の錘を垂直方向に取り付けて掛けて静置した後、錘の落下時間(分)を測定した。
30分以内に落下しなかったものについては、SUSと試験片との貼着位置が下方にズレた長さ(mm)、すなわちズレ量を測定した。
【0068】
(全光線透過率、ヘイズ)
粘着シート1〜7の一方の離型フィルムを剥がし、露出した粘着面を、ソーダライムガラス(82mm×53mm×厚さ0.5mm)にロール圧着した。次いで、残る離型フィルムを剥がし、シクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン株式会社製、厚さ100μm)をロール貼合した。その後、オートクレーブ処理(80℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着したものに、365nmの積算光量が2000mJ/cm
2となるように、ソーダライムガラス側から高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射して粘着シートを硬化させ、光学特性評価用積層体を作製した。
上記光学特性評価用積層体について、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH5000)を用いて、JIS K7136に準じてヘイズを測定した。
【0069】
(湿熱環境下保存後のヘイズ)
上記光学特性評価用積層体を、65℃、90%RHの湿熱環境下にて100時間保管した後、23℃、50%RHの室温環境下にて2時間保管して、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH5000)を用いて、JIS K7136に準じてヘイズを測定した。
【0070】
(加工適性)
粘着シート1〜7を、離型フィルムを積層したままトムソン打抜機を用いて50mm×80mmのトムソン刃で100枚カットし、端部の形状を観察した。端部の潰れや糊はみだし、離型フィルムの浮きがみられた枚数が20枚以上だったものを「×」と評価し、20枚未満だったものを「○」と判定した。
【0071】
(保管安定性)
上記加工適性評価で作製した粘着シート1〜7の裁断品を100mm×100mm×厚さ3mmのガラス板間に挟むように積層し、天面のガラス板に1kgの錘を乗せて40℃で65時間静置した。
養生後に粘着シートがつぶれ、糊はみ出しが顕著に見られたものを「×」、糊はみだしがわずかに見られたが、実用性に問題ないものを「○」、糊はみ出しが見られなかったものを「◎」と判定した。
【0072】
(接着力)
粘着シート1〜7の一方の離型フィルムを剥がし、裏打ちフィルムとして50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、ダイアホイルT100、厚さ50μm)を貼合した。
上記積層品を長さ150mm、巾10mmに裁断した後、残る離型フィルムを剥がして露出した粘着面をソーダライムガラスにロール圧着した。貼合品にオートクレーブ処理(80℃,ゲージ圧0.2MPa,20分)を施して仕上げ貼着した後、紫外線を365nmの積算光量が2000mJ/cm
2となるよう照射して粘着シートを硬化し、23℃、50%RHで15時間養生して、剥離力測定試料とした。
上記剥離力測定試料を、23℃40%RHの環境下にて剥離角180°、剥離速度60mm/分で引き剥がしたときのガラスへの剥離力(N/cm)を測定した。
【0073】
(貼合性)
加工性評価にて裁断した粘着シート1〜7の一方の離型フィルムを剥がして露出した粘着面を、周縁部5mmに厚さ80μmの印刷を施したソーダライムガラス(82mm×53mm×厚さ0.5mm)の印刷面に、粘着シートの4辺が印刷段差にかかるようにして真空プレスを用いてプレス圧着した(絶対圧5kPa、温度80℃、プレス圧0.04MPa)。次いで残る離型フィルムを剥がし、シクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン株式会社製、厚さ100μm)をプレス貼合した後、オートクレーブ処理(80℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、積層体を作製した。
作製した積層体を目視観察し、印刷段差近傍で粘着シートが追従せず気泡が残ったものを「×」、フィルムが段差近傍で屈曲し、歪むことによる凹凸ムラが見えたものを「△」、気泡がなく平滑に貼合されたものを「○」と判定した。
【0074】
(耐発泡信頼性)
貼合性評価にて作製した積層体に対して、紫外線を365nmの積算光量が2000mJ/cm
2となるよう照射して粘着シートを硬化した。その後、85℃85%RHの環境下で100時間保管した後の外観を目視観察した。
環境試験後に粘着シートの変形、発泡、剥離が生じたものを「×」、粘着シートの変形、発泡、剥離が生じなかったものを「○」と判定した。
【0075】
【表3】
【0076】
[考察]
実施例1〜4、比較例1〜3の評価結果を表3に示す。
実施例1〜4の透明両面粘着シートは、アクリル系共重合体中のマクロモノマーが凝集成分として寄与する結果、未架橋状態においても高い保持力を示し、加工性や保管安定性に優れるものであった。また加熱により高い流動性を発現することから、凹凸面への追従性に優れるばかりか、被着体の一方がフィルムのような剛性の低い素材であっても段差近傍で屈曲を生じず、平滑な積層体を得ることができた。さらには、積層体とした後に紫外線照射し粘着シートを硬化させることで、高温高湿下等の苛酷な環境試験下においても剥離や発泡、変形を生じず、高い信頼性をもつ積層体を得ることができた。
【0077】
これに対し、比較例1はマクロモノマーを含まないアクリル系共重合体を用いた粘着シートであるため粘着剤としての凝集力が低く、加工性や保管安定性が得られなかった。
比較例2はマクロモノマーを含むアクリル系共重合体のみからなるシートであって、保管安定性や裁断加工性は得られるものの高温下で長期保管すると流動するため、積層体がクリープ変形し、信頼性に劣るものであった。また、紫外線架橋剤を含まない分貼合時の流動性が損なわれた結果、積層体を作製する際印刷段差近傍でフィルムが屈曲し、積層体の平滑性が損なわれる結果となった。
比較例3は紫外線照射によって粘着剤樹脂組成物が一部架橋しているため、保管安定性や裁断加工性には優れるものの、印刷段差を有するガラスとフィルムとを積層する際、フィルム側に印刷段差による凹凸が転写し平滑な積層体が得られないばかりか、印刷段差が交差する角部付近では一部粘着剤が充填しきれず気泡が残る結果となった。また、段差近傍の粘着シートの歪みをきっかけに高温高湿試験下で気泡の成長がみられた。