(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記積層膜において、前記高屈折率材料が酸化ニオブまたは酸化タンタルであり、前記低屈折率材料が酸化ケイ素である、請求項4に記載の両面低反射膜付ガラス基板の製造方法。
前記積層膜において、前記高屈折率材料が、窒化ケイ素であり、前記低屈折率材料がSiとSnとの混合酸化物、SiとZrとの混合酸化物、SiとAlとの混合酸化物のいずれかを含む、請求項4に記載の両面低反射膜付ガラス基板の製造方法。
前記積層膜は、前記高屈折率材料からなる膜と、前記低屈折率材料からなる膜と、が交互に2層以上6層以下積層されている、請求項4〜6のいずれかに記載の両面低反射膜付ガラス基板の製造方法。
前記フッ素含有有機ケイ素化合物は、ポリフルオロポリエーテル基、ポリフルオロアルキレン基及びポリフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有する、請求項9に記載の両面低反射膜付ガラス基板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、タブレット型PC(Personal Computer)やスマートフォン(以下、「スマートフォン等」ともいう)等のモバイル機器、あるいは、液晶テレビやタッチパネルなどのディスプレイ装置(以下、本明細書において、これらを総称して、『ディスプレイ装置等』とする。)に対しては、ディスプレイである表示面の保護ならびに美観を高めるためのカバーガラス(保護ガラス)が用いられることが多くなっている。
これらカバーガラスには、両面に低反射膜が形成されたガラス基板が使用される。これにより、ディスプレイ装置等の表示面での光の反射を抑制でき、表示の視認性をより高めることが可能になる。
【0003】
特許文献1,2には、ガラス基板の両面に同時に低反射膜を成膜する方法が開示されている。
図1、2は、これら従来の低反射膜の成膜手順である、両面同時成膜を示した模式図であり、
図1は成膜実施時の状態、
図2は成膜後の状態を示している。
これらの方法では、成膜時に保持する都合上、ガラス基板の外周部には低反射膜を成膜できないため、製品よりも寸法が大きいガラス基板を準備し、製品サイズより外側の位置で基板を保持して両面に低反射膜を成膜した後、所定の寸法に切断して、製品としてのガラス基板を得る。
図3は、上記両面同時成膜で作製された両面低反射膜付ガラス基板の切断線の例を示した模式図である。
なお、特許文献1,2に記載の方法では、低反射膜の成膜にスパッタ法を使用している。スパッタ法、蒸着法等の乾式成膜法には、塗布法等の湿式成膜法に対し、屈折率等の物性が異なる膜を複数積層して多層化することでより低反射化できること、膜の硬度が大きく、耐擦傷性に優れること等の特性上の利点がある。また、乾式成膜法であれば、湿式成膜法と比較して膜厚の制御性が良く、安定的に成膜できるという製法上のメリットもある。
【0004】
上記のディスプレイ装置等に対しては、薄型デザインによる差異化や移動のための負担の減少のため、軽量・薄型化が要求されている。そのため、表示面の保護用に使用されるカバーガラスも薄くすることが要求されている。同時にカバーガラスの強度を確保するため、化学強化処理によってガラス表面に圧縮応力層を形成させ、強化されたカバーガラスが用いられることもある(特許文献3参照)。なお、特許文献3では、化学強化処理により、ガラス表面に圧縮応力層が形成されているが、物理強化処理により、ガラス表面に圧縮応力層が形成する場合もある。
【0005】
しかしながら、強化されたガラス基板は、圧縮応力層の形成後に所望の寸法に切断することが困難であることから、最初に所望の製品サイズに切断してから、物理強化処理あるいは化学強化処理を施し、その後、低反射膜の成膜を行う。この低反射膜の成膜において全面成膜を行う場合、基板保持の観点から、特許文献1,2に記載されたもののような、両面同時成膜方法を適用することができず、乾式成膜法を用いて一方の表面に低反射膜を成膜した後、ガラス基板を反転させてガラス基板の他方の表面に低反射膜を成膜する手順を採用する必要がある。
【0006】
図4は、従来の低反射膜を片面ずつ成膜する場合の手順を示した模式図であり、片面成膜実施時の状態を示している。
図4において、ガラス基板10の一方の面(図中、左側の面)の外周部には、印刷により遮光部20が形成されている。ガラス基板10の非表示面側、すなわち、遮光部20が形成された面を保持冶具50で保持した状態で、ディスプレイ装置等のカバーガラスとして使用する際の表示面側、すなわち、遮光部がない面側から低反射膜を成膜する。
図5は、ガラス基板10の表示面側に低反射膜30aを成膜した後の状態を示している。次に、
図6に示すように、ガラス基板10を反転させて、遮光部20が形成されたガラス基板10の非表示面側に低反射膜を全面成膜する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について図面を参照して説明する。
まず始めに本発明に到った経緯を示す。
低反射膜の外周部に色ムラが生じる理由について、本願発明者は鋭意検討した結果、乾式成膜法を用いて、一方の表面に低反射膜を成膜する際、ガラス基板の裏面側への膜材料のまわり込みが起こり、ナノメートルオーダーのサイズ(以下、ナノサイズともいう)の粒子が基板裏面側の外周部に付着し、散乱光を生じさせるのが原因であることを見出した。なお、このように基板の裏面側にまわり込んだ粒子を、裏まわり粒子ともいう。
【0020】
ガラス基板の表示面側は直接視認できる重要な面であるため、一般的に、極力、表示面と基板保持冶具とが接触しないようにガラス基板の保持手段を工夫した上で、まず、表示面側への全面成膜を行う。
例えば、ガラス基板の非表示面側を保持し(
図5)、表示面側へ低反射膜を成膜したところ、遮光部20が形成されたガラス基板10の非表示面の外周部にナノサイズの粒子40aが付着しているのが確認された(
図6)。この粒子40aは、
図4に示す手順で、ガラス基板10の表示面側に低反射膜を成膜する際、ガラス基板10の裏面側、すなわち、遮光部20が形成されたガラス基板10の非表示面側へ成膜材料の一部がまわり込み、ガラス基板10の非表示面の外周部に付着したものであることがわかった。
但し、
図6において、ガラス基板10の非表示面の外周部に付着したナノサイズの粒子40aは、次の工程である非表示面側への低反射膜成膜の際に、該粒子40a上にも低反射膜30bが成膜されるため、問題となることはない。
図7は、従来の方法(片面ずつ成膜)で作製された両面低反射膜付ガラス基板を示した模式図である。
【0021】
続いてガラス基板10の非表示面側に低反射膜を成膜する際にも、上述したガラス基板10の裏面側への成膜材料のまわり込みが同様に発生する。
図7のナノサイズの粒子40bは、ガラス基板10の裏面側、すなわち、ガラス基板10の表示面側へ成膜材料の一部がまわり込み、ガラス基板10の表示面側に先に成膜された低反射膜30aの外周部上に付着したものである。
この結果、先に成膜された低反射膜30a上に付着したナノサイズの粒子40bが散乱光を生じさせて、
図8に示すように、ガラス基板10の表示面の外周部に色ムラ80を生じさせることが明らかになった。なお、色ムラ80はガラス基板10の端面から10mm程度までの範囲の基板外周部に生じることが多い。
【0022】
これに対して、本発明の積層体の製造方法では、
図9に示すように、ガラス基板10の表示面側を保持冶具50で保持した状態で、まず、ディスプレイ装置等のカバーガラスとして使用する際の非表示面側、すなわち、遮光部20が形成された面側に低反射膜を全面成膜し、続いて表示面側に低反射膜を全面成膜する。
図10は、ガラス基板10の非表示面側に低反射膜30aを成膜した後の状態を示している。
【0023】
このとき、ガラス基板10の裏面側、すなわち、表示面の外周部にナノサイズの粒子40aが付着しているのが確認された(
図11)。この粒子40aは、
図9、
図10に示す手順で、ガラス基板10の非表示面側に低反射膜を成膜する際、ガラス基板10の裏面側、すなわち、ガラス基板10の表示面側へ成膜材料の一部がまわり込み、ガラス基板10の表示面の外周部に付着したものである。
次に、
図11に示すように、ガラス基板10を反転させて、ガラス基板10の表示面側に低反射膜を全面成膜する。すなわち、先の手順で低反射膜30aが成膜されたガラス基板10の非表示面側を保持冶具50で保持した状態で、ガラス基板10の表示面側に低反射膜を成膜する。
その結果、表示面側への低反射膜成膜の際に、該粒子40a上にも低反射膜30bが成膜されて、先にガラス基板10の表示面の外周部に付着したナノサイズの粒子40aは、低反射膜中に取り込まれるため、問題となることはない。
図12は、本発明の方法で作製された両面低反射膜付ガラス基板を示した模式図である。
【0024】
図12に示すように、ガラス基板10の表示面に低反射膜30bを成膜する際にも、ガラス基板10の裏面側、ガラス基板10の非表示面側への成膜材料のまわり込みが起こり、ガラス基板10の非表示面の外周部にナノサイズの粒子40bが付着する。
この場合、先に成膜した低反射膜30a上にナノサイズの粒子40bが付着した状態となるが、ガラス基板10の非表示面側であるため、粒子40bが散乱光を生じさせたとしても表示面から視認されることはなく、
図13に示すように、ガラス基板10の表示面の外周部に色ムラを生じない。
【0025】
ガラス基板10の遮光部20が形成されている面は、該ガラス基板をモバイル機器やディスプレイ装置のカバーガラスとして使用する際、非表示面(表示面に対する裏面)となる。非表示面に遮光部20を形成することで、モバイル機器やディスプレイ装置等の配線部を表示面側からは見えないようにでき、また遮光部のあるデザインとすることで意匠性を高めることができる。なお、図示した態様では、ガラス基板の外周部に、外枠状に遮光部が形成されているが、遮光部は非表示面の一部にのみ形成されればよく、遮光部の形状は必ずしも外枠状には限られない。たとえば、モバイル機器やディスプレイ装置としてのデザインによっては、一部の辺のみ、または辺の一部のみに形成することができる。
【0026】
なお、遮光部の形成には、印刷法を利用できる。たとえばスクリーン印刷、あるいは、インクジェット印刷を用いることが、生産コストや、印刷精度の観点から好ましい。
ガラス基板の保持手段としては、全面成膜に対応可能なものであれば種々の冶具が利用可能であるが、たとえば先行文献特開2012−89837号に記載のガラス基板保持手段が冶具として好適に用いられる。
また、ガラス基板10の表示面側に低反射膜を全面成膜するのに不都合がない限り、他の手段、例えば、静電チャック、両面テープなどの粘着物での固定でガラス基板を保持してもよい。この点については、ガラス基板の非表示面側に低反射膜を全面成膜する際も同様である。
【0027】
以下、本発明の積層体の製造方法についてさらに記載する。
ガラス基板
本発明において、積層体の製造には、予め化学強化処理が施されたガラス基板を用いることが好ましい。但し、化学強化処理が施されていないガラス基板も積層体の製造に用いることができる。
化学強化処理が施されたガラス板基板では、イオン交換により基板表面のイオン半径が小さなアルカリ金属イオン(典型的にはLiイオン、Naイオン)が、イオン半径のより大きいアルカリイオン(典型的にはKイオン)に交換されている。これにより、基板表面に圧縮応力層が形成されている。
したがって、ガラス基板は、アルカリ成分を含有するガラスで構成され、たとえば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス等が挙げられる。これらの中でも、価格、および、化学強化処理を施した場合の強化特性の観点から、アルミノシリケートガラスまたはソーダライムガラスが好ましい。
【0028】
また、積層体の製造に用いるガラス基板は以下に示す条件を満たすことが好ましい。
すなわち、積層体の製造に用いるガラス基板の表面圧縮応力(以下、CSともいう)が400MPa以上1200MPa以下であることが好ましく、700MPa以上900MPa以下であることがより好ましい。CSが400Pa以上であれば、実用上の強度として十分である。またCSが1200MPa以下であれば、自身の圧縮応力に耐えることができ、自然に破壊してしまう懸念が無い。ディスプレイ装置等のカバーガラスとして使用する場合は、CSが700MPa以上850MPa以下であることが特に好ましい。
さらに積層体の製造に用いるガラス基板の応力層の深さ(以下、DOLともいう)は15〜50μmが好ましく、20〜40μmがより好ましい。DOLが15μm以上であれば、ガラスカッターなどの鋭利な冶具を使用しても容易にキズがついて破壊される懸念がない。またDOLが40μm以下であれば、基板自身の圧縮応力に耐えることができ、自然に破壊してしまう懸念がない。ディスプレイ装置等のカバーガラスとして使用する場合は、DOLが25μm以上、35μm以下であることが特に好ましい。
【0029】
また、積層体の製造に用いるガラス基板の寸法は、積層体の用途に応じて適宜選択できる。モバイル機器のカバーガラスとして使用する場合は、30mm×50mm〜300×400mmで、厚さが0.1〜2.5mmであり、ディスプレイ装置のカバーガラスとして使用する場合は50mm×100mm〜2000×1500mmで、厚さが0.5〜4mmである。
【0030】
低反射膜
低反射膜の材料は特に限定されるものではなく、光の反射を抑制できる材料であれば各種材料を利用できる。例えば低反射膜としては、高屈折率材料からなる膜と、低屈折率材料からなる膜と、を積層した構成とすることができる。ここでいう高屈折率材料からなる膜とは、波長550nmでの屈折率が1.9以上の材料からなる膜であり、低屈折率材料からなる膜とは、波長550nmでの屈折率が1.6以下の材料からなる膜である。
高屈折率材料からなる膜と低屈折率材料からなる膜とは、それぞれ1層ずつ含む形態であってもよいが、それぞれ2層以上含む構成であってもよい。高屈折率材料からなる膜と低屈折率材料からなる膜とをそれぞれ2層以上含む場合には、高屈折率材料からなる膜と、低屈折率材料からなる膜と、を交互に積層させた積層膜であることが好ましい。
特に反射防止性能を高めるためには、低反射膜は複数の層が積層された積層体であることが好ましく、例えば該積層体は全体で2層以上6層以下の層が積層されていることが好ましく、2層以上4層以下の層が積層されていることがより好ましい。ここでの積層体は、上記の様に高屈折率材料からなる膜と低屈折率材料からなる膜とを積層した積層体であることが好ましく、高屈折率材料からなる膜、低屈折率材料からなる膜各々の層数を合計したものが上記範囲であることが好ましい。
【0031】
高屈折率材料からなる膜、低屈折率材料からなる膜の材料は特に限定されるものではなく、要求される反射防止の程度や生産性等を考慮して選択できる。高屈折率材料からなる膜を構成する材料としては、例えば窒化ケイ素、インジウム酸化物、スズ酸化物、ニオブ酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、タンタル酸化物、アルミニウム酸化物、亜鉛酸化物等の金属酸化物から選択された1種以上を好ましく利用できる。低屈折率材料からなる膜を構成する材料としては、酸化ケイ素(SiO
2)、SiとSnとの混合酸化物を含む材料、SiとZrとの混合酸化物を含む材料、SiとAlとの混合酸化物を含む材料から選択された1種以上を好ましく利用できる。
高屈折率材料からなる膜としては生産性や、屈折率の程度から、酸化ニオブ層または酸化タンタル層から選択されたいずれか一方からなることが好ましい。この場合、低屈折率材料からなる膜は、酸化ケイ素からなることが好ましい。
また、膜材料の硬さと表面粗さの観点からは、高屈折率材料からなる膜は、窒化ケイ素からなることが好ましく、低屈折率材料からなる膜が、SiとSnとの混合酸化物を含む材料、SiとZrとの混合酸化物を含む材料、SiとAlとの混合酸化物を含む材料、のいずれかからなることが好ましい。
【0032】
本発明の積層体の製造法では、低反射膜を成膜方法としては乾式成膜法を用いる。乾式成膜法である限り特に限定されるものではなく、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法等の各種乾式成膜法を利用可能である。但し、膜厚の安定性や生産性の観点から、スパッタリング法の使用が好ましい。スパッタリング法としては、たとえばパルススパッタリング法、ACスパッタリング法、デジタルスパッタリング法等の各種スパッタリング法を使用できる。
【0033】
本発明の方法で製造される積層体を、ディスプレイ装置等のカバーガラスとして使用する場合、ガラス基板の表示面側の低反射膜上(
図12に示す積層体の低反射膜30b上)に防汚膜を成膜することが好ましい。防汚膜の成膜法としては、真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレート法、スパッタ法、プラズマCVD法等の乾式法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレー法等の湿式法のどちらも使用できる。但し、耐擦傷性の観点から、乾式成膜法を用いることが好ましい。
なお、ガラス基板の表示面側の低反射膜上に防汚膜を成膜する場合は、
図11に示すように、先の手順で低反射膜30aが成膜されたガラス基板10の非表示面側を保持冶具50で保持した状態で、ガラス基板10の表示面側の低反射膜30b上に防汚膜を成膜する。
【0034】
防汚膜の構成材料は、防汚性、撥水性、撥油性を付与できる材料から適宜選択できる。具体的には、たとえば、フッ素含有有機ケイ素化合物が挙げられる。フッ素含有有機ケイ素化合物としては、防汚性、撥水性および撥油性を付与するものであれば特に限定されず使用できる。
【0035】
このようなフッ素含有有機ケイ素化合物としては例えば、ポリフルオロポリエーテル基、ポリフルオロアルキレン基及びポリフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有するフッ素含有有機ケイ素化合物を好ましく利用できる。なお、ポリフルオロポリエーテル基とは、ポリフルオロアルキレン基とエーテル性酸素原子とが交互に結合した構造を有する2価の基のことである。
【0036】
このポリフルオロポリエーテル基、ポリフルオロアルキレン基及びポリフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有するフッ素含有有機ケイ素化合物の具体例としては、下記一般式(I)〜(V)で表される化合物等が挙げられる。
【化1】
式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状のポリフルオロアルキル基(アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等)、Xは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等)、R1は加水分解可能な基(例えば、アミノ基、アルコキシ基等)又はハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、mは1〜50、好ましくは1〜30の整数、nは0〜2、好ましくは1〜2の整数、pは1〜10、好ましくは1〜8の整数である。
【0037】
C
qF
2q+1CH
2CH
2Si(NH
2)
3 (II)
ここで、qは1以上、好ましくは2〜20の整数である。
一般式(II)で表される化合物としては例えば、n−トリフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)プロピルシラザン(n−CF
3CH
2CH
2Si(NH
2)
3)、n−ヘプタフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)ペンチルシラザン(n−C
3F
7CH
2CH
2Si(NH
2)
3)等を例示できる。
【0038】
C
q'F
2q'+1CH
2CH
2Si(OCH
3)
3 (III)
ここで、q'は1以上、好ましくは1〜20の整数である。
一般式(III)で表される化合物としては、2−(パーフルオロオクチル)エチルトリメトキシシラン(n−C
8F
17CH
2CH
2Si(OCH
3)
3)等を例示できる。
【0039】
【化2】
式(IV)中、R
f2は、−(OC
3F
6)
s−(OC
2F
4)
t−(OCF
2)
u−(s、t、uはそれぞれ独立に0〜200の整数)で表わされる2価の直鎖状ポリフルオロポリエーテル基であり、R
2、R
3は、それぞれ独立に炭素原子数1〜8の一価炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等)である。X
2、X
3は独立に加水分解可能な基(例えば、アミノ基、アルコキシ基、アシロキシ基、アルケニルオキシ基、イソシアネート基等)またはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、d、eは独立に1〜2の整数であり、c、fは独立に1〜5(好ましくは1〜2)の整数であり、aおよびbは独立に2または3である。
化合物(IV)が有するR
f2においてs+t+uは、20〜300であることが好ましく、25〜100であることがより好ましい。また、R
2、R
3としては、メチル基、エチル基、ブチル基がより好ましい。X
2、X
3で示される加水分解性基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。また、aおよびbはそれぞれ3が好ましい。
【0040】
【化3】
式(V)中、vは1〜3の整数であり、w、y、zはそれぞれ独立に0〜200の整数であり、hは1または2であり、iは2〜20の整数であり、X
4は加水分解性基であり、R
4は炭素数1〜22の直鎖または分岐の炭化水素基であり、kは0〜2の整数である。w+y+zは、20〜300であることが好ましく、25〜100であることがより好ましい。また、iは2〜10であることがより好ましい。X
4は、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。R
4としては、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましい。
【0041】
また、市販されているポリフルオロポリエーテル基、ポリフルオロアルキレン基及びパーフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有するフッ素含有有機ケイ素化合物として、KP−801(商品名、信越化学工業株式会社製)、KY178(商品名、信越化学工業株式会社製)、KY−130(商品名、信越化学工業株式会社製)、KY185(商品名、信越化学工業株式会社製)、オプツ−ル(登録商標)DSXおよびオプツール(登録商標)AES(いずれも商品名、ダイキン工業株式会社製)などが好ましく使用できる。
【0042】
なお、フッ素含有有機ケイ素化合物は、大気中の水分との反応による劣化抑制などのためにフッ素系溶媒等の溶媒と混合して保存されているのが一般的であるが、これらの溶媒を含んだまま成膜工程に供すると、得られた薄膜の耐久性等に悪影響を及ぼすことがある。
このため、後述する手順にしたがって、真空蒸着法により防汚膜を成膜する場合は、加熱容器で加熱を行う前に予め溶媒除去処理を行ったフッ素含有有機ケイ素化合物用いることが好ましい。また、溶媒で希釈されていない(溶媒を添加していない)フッ素含有有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。例えば、フッ素含有有機ケイ素化合物溶液中に含まれる溶媒の濃度として1mol%以下のものが好ましく、0.2mol%以下のものがより好ましい。溶媒を含まないフッ素含有有機ケイ素化合物を用いることが特に好ましい。
なお、上記フッ素含有有機ケイ素化合物を保存する際に用いられている溶媒としては、例えば、ポリフルオロヘキサン、メタキシレンヘキサフルオライド(C
6H
4(CF
3)
2)、ハイドロフロオロポリエーテル、HFE7200/7100(商品名、住友スリーエム社製、HFE7200はC
4F
9C
2H
5、HFE7100はC
4F
9OCH
3で表わされる)等が挙げられる。
【0043】
フッ素系溶媒を含むフッ素含有有機ケイ素化合物溶液からの溶媒(溶剤)の除去処理は、例えばフッ素含有有機ケイ素化合物溶液を入れた容器を真空排気することにより行うことができる。
真空排気を行う時間については、排気ライン、真空ポンプ等の排気能力、溶液の量等により変化するため限定されるものではないが、例えば10時間程度以上真空排気することにより行うことができる。
【0044】
上述したように、本発明の積層体の製造法では、防汚膜の成膜法としては、真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレート法、スパッタ法、プラズマCVD法等の乾式法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレー法等の湿式法のどちらも使用できる。但し、耐擦傷性の観点から、乾式成膜法を用いることが好ましい。上記で例示したフッ素含有有機ケイ素化合物で防汚膜を成膜する場合、真空蒸着法の使用が好ましい。
【0045】
真空蒸着法を使用する場合、上記溶媒の除去処理は、防汚膜を成膜する成膜装置の加熱容器にフッ素含有有機ケイ素化合物溶液を導入後、昇温する前に室温で加熱容器内を真空排気することにより行うこともできる。また、加熱容器に導入する前に予めエバポレーター等により溶媒除去を行っておくこともできる。
ただし、前述の通り溶媒含有量が少ない、または含まないフッ素含有有機ケイ素化合物は溶媒を含んでいるものと比較して、大気と接触することにより劣化しやすい。
このため、溶媒含有量の少ない(または含まない)フッ素含有有機ケイ素化合物の保管容器は容器中を窒素等の不活性ガスで置換、密閉したものを使用し、取り扱う際には大気への暴露、接触時間が短くなるようにすることが好ましい。
具体的には、保管容器を開封後は直ちに防汚膜を成膜する成膜装置の加熱容器にフッ素含有有機ケイ素化合物を導入することが好ましい。そして、導入後は、加熱容器内を真空にするか、窒素、希ガス等の不活性ガスにより置換することにより、加熱容器内に含まれる大気(空気)を除去することが好ましい。大気と接触することなく保管容器(貯蔵容器)から本製造装置の加熱容器に導入できるように、例えば貯蔵容器と加熱容器とが、バルブ付きの配管により接続されていることがより好ましい。
そして、加熱容器にフッ素含有有機ケイ素化合物を導入後、容器内を真空または不活性ガスで置換した後には、直ちに成膜のための加熱を開始することが好ましい。
【0046】
本発明において、ガラス基板の表示面側の低反射膜上に成膜する防汚膜の膜厚は特に限定されないが、2〜20nmであることが好ましく、2〜15nmであることがより好ましく、2〜10nmであることがさらに好ましい。膜厚が2nm以上であれば、防汚膜によって低反射膜面上が均一に覆われた状態となり、擦り耐性の観点で実用に耐えるものとなる。また膜厚が20nm以下であれば、基板表面の反応サイトと未反応の防汚膜分子が基板に付着した状態が避けられ、積層体としてのヘイズ等の光学特性が良好である。
【0047】
(積層体)
本発明の方法により製造される積層体は、ガラス基板の両面に低反射膜が成膜されているため、ディスプレイ装置等のカバーガラスとして使用する場合の表示面での光の反射を抑制されている。
このため、後述する実施例に記載の手順で測定される視感反射率が3%以下であり、好ましくは2%以下であり、より好ましくは、1%以下である。
このため、後述する実施例に記載の手順で測定される視感透過率が93%以上であり、好ましくは、95%以上であり、より好ましくは、96%以上である。
なお、ガラス基板の表示面側の低反射膜上に防汚膜が成膜されている場合も上記の視感反射率および視感透過率を満たす。
【実施例】
【0048】
以下に、例を用いて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。なお、例1〜例4は実施例、例5〜例6は比較例である。
【0049】
(例1)
以下の手順により、ガラス基板の両面に低反射膜が全面成膜された両面低反射膜付基板を製造した。
ガラス基板として、化学強化処理が施されたガラス基板(旭硝子株式会社製 ドラゴントレイル(登録商標))を用いた。
この強化基板は寸法が600mm×400mm、厚さ2mmで、化学強化の度合いはCSが730MPa、DOLが30μmであった。
ガラス基板の一方の面の外周部には、スクリーン印刷により、外枠状に遮光部を形成し、該遮光部が形成された側の面をガラス基板の非表示面とした。具体的には、ガラス基板の一方の面の四辺の外周部に、2cm幅で以下の手順で黒枠状に印刷を施して遮光部を形成した。まず、インク(帝国インキ製造株式会社製、GLSHF(製品名))を用いて、スクリーン印刷機によって5μmの厚みに塗布した。その後乾燥機で150℃で10分間保持して乾燥させた。次にインク(帝国インキ製造株式会社製、GLSHF(製品名))を用いてスクリーン印刷機によって乾燥させた第1の層の上に5μmの厚みに塗布した。その後乾燥機で150℃で40分間時間保持して乾燥させた。このようにして、ガラス基板の一方の面にの外周部に遮光部を形成した。
次に、
図9に示すように、ガラス基板10の表示面側を保持冶具50で保持した状態で、遮光部20が形成されたガラス基板10の非表示面に、以下の手順により低反射膜を全面成膜した。
まず、アルゴンガスに10体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、酸化ニオブターゲット(AGCセラミックス株式会社製、商品名NBOターゲット)を用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm
2、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、の一方の面上に、高屈折率材料からなる膜として、厚さ14nmの酸化ニオブ(Nb
2O
5、以下ニオビアともいう)からなる膜を全面成膜した。
次いで、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm
2、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、酸化ニオブ(ニオビア)膜上に、低屈折率材料からなる膜として、厚さ30nmの酸化ケイ素(SiO
2、以下シリカともいう)からなる膜を全面成膜した。
次いで、アルゴンガスに10体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、酸化ニオブターゲット(AGCセラミックス株式会社製、商品名NBOターゲット)を用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm
2、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、酸化ケイ素(シリカ))膜上に、高屈折率材料からなる膜として、厚さ110nmの酸化ニオブ(ニオビア)からなる膜を全面成膜した。
次いで、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm
2、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、酸化ニオブ(ニオビア)膜上に、低屈折率材料からなる膜として、厚さ80nmの酸化ケイ素(シリカ)からなる膜を全面成膜した。
このようにして、酸化ニオブ(ニオビア)膜と酸化ケイ素(シリカ)膜とが、交互に総計4層積層された低反射膜を全面成膜した。
その後、
図11に示すように、ガラス基板10を反転させて、ガラス基板10の表示面側を保持冶具50で保持した状態で、外枠20が形成されたガラス基板10の非表示面に、上記と同様の手順で、酸化ニオブ(ニオビア)膜と酸化ケイ素(シリカ)膜とが、交互に総計4層積層された低反射膜を全面成膜した。
このようにして、ガラス基板の両面に低反射膜が全面成膜された積層体を得た。
【0050】
(例2)
本例では、4層目の酸化ケイ素(シリカ)膜の厚さを85nmとした以外は、例1と同様の手順で、ガラス基板の両面(表示面、非表示面)に、酸化ニオブ(ニオビア)膜と酸化ケイ素(シリカ)膜とが、交互に総計4層積層された低反射膜を全面成膜した。
次いでガラス基板の表示面側の低反射膜上に防汚膜を以下の手順により成膜した。
まず、蒸着材料のフッ素含有有機ケイ素化合物として、KY185(商品名、信越化学工業株式会社製)を加熱容器内に導入した。その後、加熱容器内を真空ポンプで10時間以上脱気して溶液中の溶媒除去を行ってフッ素含有有機ケイ素化合物被膜形成用の組成物とした。
次いで、上記フッ素含有有機ケイ素化合物膜形成用の組成物が入った加熱容器を270℃まで加熱した。270℃に到達した後、温度が安定するまで10分間その状態を保持した。
そして、真空チャンバ内に設置した、ガラス基板の両面に低反射膜が全面成膜された積層体の、表示面側の低反射膜に対して、フッ素含有有機ケイ素化合物膜形成用の組成物が入った加熱容器と接続されたノズルから、フッ素含有有機ケイ素化合物膜形成用の組成物を供給し、成膜を行った。
成膜の際には、真空チャンバ内に設置した水晶振動子モニタにより膜厚を測定しながら行い、表示面側の低反射膜上に形成したフッ素含有有機ケイ素化合物膜の膜厚が7nmになるまで成膜を行った。
フッ素含有有機ケイ素化合物膜が7nmになった時点でノズルから原料の供給を停止し、その後真空チャンバから製造された積層体を取り出した。
取り出された積層体は、ホットプレートに膜面を上向きにして設置し、大気中で100℃、60分間熱処理を行った。
このようにして、ガラス基板の両面に低反射膜が成膜され、さらに表示面側に防汚層が作成された積層体を得た。
【0051】
(例3)
本例では、1層目の酸化ニオブ(ニオビア)膜の厚さを13nmとし、2層目の酸化ケイ素(シリカ)膜の厚さを35nmとし、3層目の酸化ニオブ(ニオビア)膜の厚さを120nmとし、4層目の酸化ケイ素(シリカ)膜の厚さを80nmとした以外は、例1と同様の手順で、ガラス基板の両面(表示面、非表示面)に、酸化ニオブ(ニオビア)膜と酸化ケイ素(シリカ)膜とが、交互に総計4層積層された低反射膜を全面成膜した。
次に、蒸着材料のフッ素含有有機ケイ素化合物として、KY185(商品名、信越化学工業株式会社製)の代わりに、オプツ−ル(登録商標)DSX(ダイキン工業株式会社製)を使用した以外は例2と同様の手順で、表示面側の低反射膜上に防汚膜を成膜した。
【0052】
(例4)
本例では、1層目の酸化ニオブ(ニオビア)膜の厚さを13nmとし、2層目の酸化ケイ素(シリカ)膜の厚さを35nmとし、3層目の酸化ニオブ(ニオビア)膜の厚さを120nmとし、4層目の酸化ケイ素(シリカ)膜の厚さを80nmとした以外は、例1と同様の手順で、ガラス基板の両面(表示面、非表示面)に、酸化ニオブ(ニオビア)膜と酸化ケイ素(シリカ)膜とが、交互に総計4層積層された低反射膜を全面成膜した。
次に、蒸着材料のフッ素含有有機ケイ素化合物として、KY185(商品名、信越化学工業株式会社製)の代わりに、KY178(商品名、信越化学工業株式会社製)を使用した以外は例2と同様の手順で、表示面側の低反射膜上に防汚膜を成膜した。
【0053】
(例5)
図4に示すように、ガラス基板10の外枠20が形成された非表示面側を保持冶具50で保持した状態で、ガラス基板の表示面側に低反射膜を成膜した後、
図6に示すように、ガラス基板10を反転させて、ガラス基板10の表示面側を保持冶具50で保持した状態で、外枠20が形成されたガラス基板10の非表示面側に低反射膜を成膜した以外は、例1と同様の手順で、ガラス基板の両面(表示面、非表示面)に、酸化ニオブ(ニオビア)膜と酸化ケイ素(シリカ)膜とが、交互に総計4層積層された低反射膜を全面成膜した。
【0054】
(例6)
本例では、1層目の酸化ニオブ(ニオビア)膜の厚さを13nmとし、2層目の酸化ケイ素(シリカ)膜の厚さを35nmとし、3層目の酸化ニオブ(ニオビア)膜の厚さを120nmとし、4層目の酸化ケイ素(シリカ)膜の厚さを80nmとした以外は、例5と同様の手順で、ガラス基板の両面(表示面、非表示面)に、酸化ニオブ(ニオビア)膜と酸化ケイ素(シリカ)膜とが、交互に総計4層積層された低反射膜を全面成膜した。
次に、例3と同様の手順で、蒸着材料のフッ素含有有機ケイ素化合物として、オプツ−ル(登録商標)DSX(ダイキン工業株式会社製)を使用して、表示面側の低反射膜上に防汚膜を成膜した。
【0055】
上記の手順で得られた積層体について、以下の評価を実施した。
(視感透過率)
分光光度計(島津製作所製、装置名:SolidSpec−3700)を用いて、積層体の分光透過率を測定し、その分光透過率から、JIS Z8701において規定されている刺激値Yを算出した。そして、この刺激値Yを視感透過率とした。
(視感反射率)
分光光度計(島津製作所社製、形式:SolidSpec−3700)により、積層体の反射率を測定し、その反射率から、視感反射率(JIS Z8701:1999において規定されている反射の刺激値Y)を求めた。
(反射の色ムラ)
積層体を蛍光灯下(1500Lx)で表示面側から見たときに、基板の端部が変色して見えるものは×、見えないものは○として評価した。
(水接触角)
接触角計(協和界面科学製;PCA−1)により測定した。具体的には純水を1μLスポイトにより成膜済み基板に滴下し、液滴の映像から3点法により接触角を求めた。
結果を下記表に示す。
【表1】
表1から明らかなように、いずれも例も視感反射率および視感透過率は良好な結果であった。但し、表示面側から低反射膜を成膜した例5、6では、積層体の表示面の端部に色ムラが認められた。
また、表示面側の低反射膜上に防汚膜を成膜した例2〜4、例6は、水接触角が高く、撥水性の効果が確認された。