(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に同一層中に結着樹脂、電荷発生材料、電子輸送材料、及び正孔輸送材料を含有する単層型感光層( 以下、単に「感光層」ともい
う。) を有し、前記感光層は、電荷発生材料としてCuKα線を用いた粉末X 線回折において、回折角2θ±0.2°が27.2°に明瞭なピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、及びポリビニルアセタール樹脂を含有する層である。
【0013】
<オキシチタニウムフタロシアニン>
本発明の電子写真感光体は、感光層中に、CuKα線を用いた粉末X線回折において、回折角2θ±0.2°が27.2°に明瞭なピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として単一成分として含有するものでもよいし、結晶型の異なるオキシチタニウムフタロシアニンや、その他の電荷発生物質との混合物として含有することも可能である。
【0014】
該オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°〜9.7°に、明瞭な回折ピークを有することが好ましく、電子写真感光体特性に面から、9.6°、24.1°、27.2°、又は9.5°、9.7°、24.1°、27.2°に主たる回折ピークを有することが好ましく、分散時の安定性の面からは26.2°付近にはピークを有さないことが好ましい。上述したオキシチタニウムフタロシアニンのなかでも、7.3°、9.6°、11.6°、14.2°、18.0°、24.1°及び27.2°、又は7.3°、9.5°、9.7°、11.6°、14.2°、18.0°、24.2°及び27.2°に主たる回折ピークを有することがより好ましい。
【0015】
これらの結晶型は主として、アモルファス、又は低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンから結晶変換することによって製造される。これらの結晶型は準安定型の結晶型であり、製造方法の違いにより様々な結晶型、粒子形状を示し、電荷発生能力、帯電性、暗減衰などの電子写真感光体としての特性も製造方法に依存していることが知られている。
前述のCuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる明瞭な回折ピークを有するD型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニンの製造法としては、フタロシアニン結晶前駆体を、化学的処理後に有機溶媒に接触して得られることが好ましい。
【0016】
本発明において化学的処理とは、単に物理的な力(例えば、機械的磨砕等)を用いてアモルファスオキシチタニウムフタロシアニン、又は低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを得る方法ではなく、溶解、反応等の化学的現象を用いてアモルファス、もしくは低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを調整する処理方法のことである。
化学的処理の具体的な例としては、フタロシアニン結晶前駆体を強酸中に溶解して行なうアシッドペースティング法、又は強酸中で分散状態を経るアシッドスラリー法、ジクロロチタニルフタロシアニンにフェノール、アルコールを付加させた後に脱離させてオキシチタニウムフタロシアニンを得る方法等の化学的処理方法があげられ、より安定的なアモルファス、低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを得るにはアシッドペースト法がより好ましい。
【0017】
アシッドペースト法、アシッドスラリー法とは、顔料を強酸に溶解もしくは、懸濁、分散させた溶液を調整し、その調整した溶液を、強酸と均一に混じり、顔料がほとんど溶解しない媒体中(例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類など)に放出し、再顔料化させることにより顔料を改質する方法である。
【0018】
アシッドスラリー法、アシッドペースト法には濃硫酸、有機スルホン酸、有機ホスホン酸、トリハロゲン化酢酸等の強酸が使用される。これら強酸は、強酸単独、もしくは強酸同士の混合使用、又は強酸と有機溶媒の組み合わせ等で用いることが可能である。強酸の種類はフタロシアニン結晶前駆体の溶解性を考慮すると、トリフルオロ酢酸などのトリハロゲン化酢酸や、濃硫酸が好ましく、生産コストを考慮すると、濃硫酸がより好ましい。
【0019】
強酸にフタロシアニン結晶前駆体を溶解させる温度は、公知文献に掲載されている温度条件で溶解させることが可能であるが、温度が高すぎると前駆体のフタロシアニン環が開環し、分解してしまうことから、5℃以下が好ましく、得られる電子写真感光体に及ぼす影響を考慮すると0℃以下がより好ましい。
用いる強酸の量は、任意の量で用いることが可能であるが、少なすぎるとフタロシアニン結晶前駆体の溶解性が悪くなることから、フタロシアニン結晶前駆体1質量部に対して5質量部以上、溶液中の固形分濃度が高すぎると撹拌効率が低下することから15質量部以上が好ましく、より好ましくは20質量部以上である。また、強酸使用量が多すぎると、廃棄酸量が増えることから、100質量部以下が好ましく、また生産効率を考慮すると50質量部以下がより好ましい。
【0020】
得られたフタロシアニン結晶前駆体の酸溶液を放出する媒体の種類としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等の鎖状エーテルなどが挙げられ、公知の方法同様に、放出媒体は単一種で用いても、2種類以上を混合して使用してもよい。用いる媒体種により再顔料化された際の粒子形状、結晶状態等が変化し、この履歴が後に得られる最終結晶の電子写真感光体特性に影響を与えることから、好ましくは、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の低級アルコール類が好ましく、生産性、コストの面から水がより好ましい。
【0021】
フタロシアニン結晶前駆体の濃硫酸溶液を放出媒体に放出し、再顔料化されたオキシチタニウムフタロシアニンは濾別によりウエットケーキとして濾別されるが、このウエットケーキは放出媒体中に存在した、濃硫酸の硫酸イオン等の不純物を多く含むことから、再顔料化された後に、洗浄媒体で洗浄を行なう。洗浄を行なう媒体は、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、酢酸ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液等のアルカリ性水溶液、希塩酸、希硝酸、希酢酸等の酸性水溶液、イオン交換水等の水などが挙げられるが、顔料中に残存したイオン性物質は電子写真感光体特性に悪影響を与える場合が多いことから、イオ
ン交換水等のイオン性の物質を取り除いた水が好ましい。
【0022】
通常、アシッドペースト法、アシッドスラリー法より得られるオキシチタニウムフタロシアニンは明確な回折ピークを有さないアモルファスか、ピークは有するが、その強度が非常に弱く、半価幅の非常に大きいピークを有する低結晶性のものである。通常、アシッドペースト法、アシッドスラリー法により得られたアモルファスオキシチタニウムフタロシアニン、又は低結晶性のオキシチタニウムフタロシアニンを有機溶媒に接触させることにより、本発明の電子写真感光体に用いることが出来るCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを得ることが出来る。
【0023】
通常有機溶媒との接触は水の存在下で行われる。水はアシッドペースト法、アシッドスラリー法により得られた含水ケーキ中に含まれたものを用いても、アシッドペースト法、アシッドスラリー法後に得られた含水ケーキをいったん乾燥させ、結晶変換時に新たに水を追加して用いてもよいが、乾燥させてしまうと顔料と水との親和性が低下することから、乾燥させずにアシッドペースト法、アシッドスラリー法により得られた含水ケーキ中に含まれたものを用いて行なうのが好ましい。
【0024】
結晶変換に用いることが出来る溶媒としては、水と相溶性のある溶媒、水と非相溶の溶媒のいずれでも可能である。水と相溶性のある溶媒の好適な例としてはテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテルが挙げられる。また、水と非相溶の溶媒の好適な例としては、トルエン、ナフタレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロトルエン、o−ジクロロトルエン、ジクロロフルオロベンゼン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、ニトロベンゼン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、アセトフェノン等の置換芳香族系溶媒が挙げられ、中でも環状エーテル、クロロトルエン、ハロゲン化炭化水素溶媒、芳香族炭化水素系溶媒が得られた結晶の電子写真特性が良好でありこの好ましく、テトラヒドロフラン、o−ジクロロベンゼン、1,2−ジクロロトルエン、ジクロロフルオロベンゼン、トルエン、ナフタレンが、得られた結晶の分散時の安定性という点でより好ましい。結晶変換後得られた結晶は、乾燥工程を行なうことになるが、乾燥方法は送風乾燥、加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の公知の方法で乾燥することが可能である。
【0025】
結着樹脂と前記オキシチタニウムフタロシアニンとの配合比(質量)は、電荷発生効率の観点から、感光層中のバインダー樹脂100質量部に対して前記オキシチタニウムフタロシアニンが通常10質量部以上、好ましくは50質量部以上、また、分散性の観点から、通常500質量部以下、好ましくは300質量部以下の範囲である。
【0026】
<ポリビニルアセタール樹脂>
本発明の電子写真感光体は、感光層中にポリビニルアセタール樹脂を、全電荷発生材料100質量部に対して、1〜500質量部含有するものである。前記ポリビニルアセタール樹脂と上記全電荷発生材料との配合割合は、結晶安定性や分散性の観点から、全電荷発生材料100質量部に対して、ポリビニルアセタール樹脂を10質量部以上の比率で配合することが好ましく、30質量部以上の割合で配合することがより好ましい。一方、電気特性の観点から、全電荷発生材料100質量部に対して、前記ポリビニルアセタール樹脂を400質量部以下の割合で配合することが好ましく、200質量部以下の割合で配合することがより好ましい。
【0027】
ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられるが、分散性の観点から、下記構造式で表される
構造単位を含むことが好ましい。
【0029】
Rは、水素原子、アルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の直鎖のアルキル基、イソプロピル基、tertブチル基、イソブチル基等の分岐のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等の環状アルキル基、クロロメチル基、フッ化メチル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。機械的特性と感光層形成用塗布液に対する溶解性を勘案すれば、アルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜8がさらに好ましく、炭素数1〜4が特に好ましい。この中でも合成の観点から、直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましい。置換基を有していてもよいアリール基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0030】
ポリビニルアセタール樹脂は、前記フタロシアニンの分散性を考慮して、水酸基を含有することが好ましく、水酸基の含有量は、50mol%以下が好ましく、40mol%以下がよりに好ましく、30mol%以下が特に好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量については、結着樹脂との相溶性の観点から、150,000以下が好ましく、100,000以下が更に好ましく、50,000以下が特に好ましい。結晶安定性や分散性の観点から、5,000以上が好ましく、10,000以上が更に好ましい。
また、感光層塗布液の溶媒として使用するエーテル系溶剤に溶解するものが好ましい。前記ポリビニルアセタール樹脂は単一成分として含有するものでもよいし、構造や分子量が異なるものを混合物として含有することも可能である。
【0031】
[導電性支持体]
導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO( インジウム− スズ酸化物) 等
の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでも良い。
【0032】
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合には、陽極酸化処理、化成皮膜処理等を施してから用いても良い。陽極酸化処理を施した場合には、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい(以下、陽極酸化処理によってできた層をアルマイト層と称することがある)。導電性支持体の表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、導
電性支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでも良い。
【0033】
[下引き層]
導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。
下引き層としては、樹脂単独、あるいは、樹脂に金属酸化物等の粒子や有機顔料等を分散したもの等が用いられる。下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1 種の金属
元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。このように、一種類の粒子のみを用いても良いし複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理が施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
【0034】
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径として1nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましくは、10nm以上50nm以下である。
下引き層は、金属酸化物粒子を結着樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられる結着樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化
した形で使用できるが、中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示すので好ましい。
【0035】
特に本発明の単層型感光体においては、積層型感光体を構成する電荷発生層を下引き層の代用とすることもできる。この場合は、フタロシアニン顔料、アゾ顔料やペリレン顔料を結着樹脂中に分散して塗布したもの等が好適に用いられる。この場合、特に接着性や電気特性が優れる場合があり、好ましい。結着樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂類が好ましく用いられ、特にはポリビニルブチラール樹脂が好ましく用いられる。
【0036】
結着樹脂に対する粒子や顔料等の分散剤の添加比は任意に選べるが、10質量%以上、500質量% 以下の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性から0.1μmから25μmが好ましい。また下引き層には、公知の酸化防止剤等を添加しても良い。下引き層として、構成の異なる層をいくつか設けることも可能である。
【0037】
[感光層]
本発明における単層型感光層では、結着樹脂中に正孔輸送材料、電子輸送材料やその他の材料を溶解した液に、電荷発生材料が分散される。電荷発生材料、電荷輸送材料、その他材料と結着樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを導電性支持体上に( 下引き層を設ける場合は下引き層上に、アルマイト層を設ける場合はアルマイト層上
に、) 塗布、乾燥して得ることができる。
【0038】
<結着樹脂>
感光層に使用される結着樹脂は、膜強度確保のために使用される。例えば、ブタジエン
樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタ
クリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物
の重合体及び共重合体
、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂
、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリ
コン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられ
る。中でも、電気特性及び分散性の観点から、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート
樹脂が好ましい。これらの結着樹脂は、適当な硬化剤を用いて熱、光等により架橋させて
用いることもできる。これらの結着樹脂は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上
を任意の組み合わせで用いても良い。以下に結着樹脂の構造を例示する。以下の構造は本
発明をより具体的にするために例示するものであり、本発明の概念を逸脱しない限りは下
記構造に限定されるものではない。
【0040】
<正孔輸送材料>
本発明における感光層は、正孔輸送材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体
、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖、もしくは側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中で、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、或いはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。なお、併用するこれらの正孔輸送材料の数にも特に制限はない。
【0044】
感光層を構成する結着樹脂と上記正孔輸送材料との配合割合は任意であるが、通常は結着樹脂100質量部に対して正孔輸送材料を20質量部以上の比率で配合する。中でも、残留電位低減の観点からは、結着樹脂100質量部に対して正孔輸送材料を30質量部以上の割合で配合することが好ましく、更に繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点からは、正孔輸送材料を40質量部以上の割合で配合することがより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点からは、結着樹脂100質量部に対して正孔輸送材料を200質量部以下の割合で配合することが好ましく、更に正孔輸送材料と結着樹脂との相溶性の観点からは、正孔輸送材料を150質量部以下の割合で配合することが好ましい。なお、複数の正孔輸送材料を用いる場合は、それらの正孔輸送材料の合計が上記範囲内になるようにする。
【0045】
<電子輸送材料>
電子輸送材料としては、従前公知の材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質や、従前公知の環状ケトン化合物が挙げられる。例えば下記式(I)〜(XI)の構造からなる化合
物を例示できる。
【0048】
感光層中の結着樹脂と電子輸送材料との割合は、同一層中の結着樹脂100質量部に対して、通常、電子輸送材料を5質量部以上で使用する。残留電位低減の観点から10質量部以上が好ましく、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から20質量部以上がより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点から、通常、電荷輸送材料を100質量部以下で使用する。電子輸送材料と結着樹脂との相溶性の観点から80質量部以下が好ましい。
【0049】
感光層を構成する結着樹脂と上記電荷輸送材料(電子輸送材料及び/ 又は正孔輸送材
料)との配合割合は任意であるが、通常は結着樹脂100質量部に対して電荷輸送材料を20質量部以上の比率で配合する。中でも、残留電位低減の観点からは、結着樹脂100質量部に対して電荷輸送材料を30質量部以上の割合で配合することが好ましく、更に繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点からは、電荷輸送材料を40質量部以上の割合で配合することがより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点からは、結着樹脂100質量部に対して電荷輸送材料を200質量部以下の割合で配合することが好ましく、更に電荷輸送材料と結着樹脂との相溶性の観点からは、電荷輸送材料を150質量部以下の割合で配合することが好ましい。なお、複数の電荷輸送材料を用いる場合は、それらの電荷輸送材料の合計が上記範囲内になるようにする。
【0050】
感光層の膜厚は通常5〜50μm、より好ましくは10〜45μmで使用される。またこの場合にも成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えばシリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていてもよい。
【0051】
<金属酸化物粒子>
分散安定性向上のための分散補助剤として、金属酸化物粒子を使用することが好ましい。金属酸化物の一次粒子径は、分散性や塗布性の観点から、1〜100nmが好ましく、3〜50nmがより好ましく、5〜30nmが更に好ましい。金属酸化物粒子は、どんな表面処理をされても良いが、分散性や感光体の環境依存性を考慮すると、疎水化処理されているものが好ましい。金属酸化物粒子としては、前述した下引き層に用いる金属酸化物と同様のものを用いることができるが、特に分散性の面からシリカ粒子が特に好ましい。
【0052】
該シリカ粒子の平均一次粒子径は、分散性の観点から、平均一次粒子径は1nm以上であり、2nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、5nm以上が特に好ましい。分散安定性や塗布性の観点から、100nm以下であり、50nm以下がより好ましく3
0nm以下が更に好ましい。
シリカ粒子の含有量は、分散性の観点から、下限は、電荷発生材料全体の10wt%以上であり、20wt%以上であることが好ましい。塗布性の観点から、上限は、電荷発生材料全体の300wt%以下、200wt%以下であることが好ましく、150wt%以下が特に好ましい。シリカ粒子の含有量が3wt%より少ない場合は、分散安定化の効果が小さい。300wt%より多い場合は、シリカ粒子の凝集し、分散安定性や塗布性が悪くなる。
【0053】
シリカ粒子の真球度は、表面処理の観点から、通常、0.95以上、好ましくは0.96以上、より好ましくは0.98以上である。真球度が大きいほど、シリカの表面積が小さく、表面処理しやすくなり、疎水化等目的の特性を得やすくなる。
シリカ粒子の密度は、分散安定性の観点から、下限は通常、1.5g/cm
3以上、好ま
しくは1.8g/cm
3以上、より好ましくは2.0g/cm
3以上である。また、分散安定性の観点から、上限は通常、3.0g/cm
3以下、好ましくは2.8g/cm
3以下、より好ましくは2.5g/cm
3以下である。
【0054】
前記シリカ粒子は、反応性有機珪素化合物で表面処理されていることが好ましい。表面処理は、乾式法および湿式法で製造することができる。乾式法では、表面処理剤を、金属酸化物粒子と混合することによって金属酸化物粒子に被覆させ、必要に応じて加熱処理を行うことで製造できる。湿式法では、金属酸化物粒子と、適当な溶媒に本発明の表面処理剤を混合したものを、均一に付着されるまでよく攪拌するか、メディアによって混合し、その後乾燥し、必要に応じて加熱処理を行うことで製造することができる。
【0055】
反応性有機ケイ素化合物としては、シランカップリング剤、シラン処理剤、シロキサン化合物等があるが、シラン処理剤が好ましい。シラン処理剤の中でも、炭素数が1〜3のアルキル基を有するシラン処理剤が好ましい。そのようなシラン処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルシラン等が挙げられる。
【0056】
その他の電荷発生物質としては、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム等の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられるが、有機系光導電材料の方が好ましく、中でも特に有機顔料が好ましい。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。これらの中でも、混合状態として用いる染顔料としては、光感度の面から、特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料が好ましい。電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、通常はこれらの有機顔料の微粒子を、各種の結着樹脂で結着した分散層の形で使用する。
【0057】
<電荷発生材料>
前記オキシチタニウムフタロシアニン以外の電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニン及び金属含有フタロシアニンが使用される。金属含有フタロシアニンの具体的な例としては、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各種結晶型が使用される。特に、感度の高い結晶型であるA型(別称β型)、B型(別称α型)、等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒド
ロキシガリウムフタロシアニン、G型,I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。
【0058】
なお、これらのフタロシアニンのうち、A型(β型)、B型(α型)、オキシチタニウムフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。
電荷発生物質として、無金属フタロシアニン化合物、又は金属含有フタロシアニン化合物を用いた場合は比較的長波長のレーザー光、例えば、780nm近辺の波長を有するレーザー光に対して高感度の感光体が得られる。また、モノアゾ、ジアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料を用いた場合には、白色光、又は660nm近辺の波長を有するレーザー光、もしくは比較的短波長のレーザー光(例えば、380nm〜500nmの範囲の波長を有するレーザー光)に対して十分な感度を有する感光体を得ることができる。
【0059】
フタロシアニン化合物は単一の化合物のものを用いてもよいし、幾つかの混合又は混晶状態のものを用いてもよい。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態における混合状態としては、それぞれの構成要素を後から混合したものを用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に磨砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
【0060】
一方、電荷発生物質としてアゾ顔料を使用する場合には、光入力用光源に対して感度を有するものであれば従前公知の各種のアゾ顔料を使用することが可能であるが、各種のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。好ましいアゾ顔料の例を以下に示す。
【0062】
結着樹脂と全電荷発生材料との配合比(質量)は、電荷発生効率の観点から、感光層中の全結着樹脂100質量部に対して前記オキシチタニウムフタロシアニンが通常1質量部以上、好ましくは2質量部以上、また、分散性の観点から、通常200質量部以下、好ましくは50質量部以下の範囲である。
<その他の層、材料>
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、最表面の層にはフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでいても良い。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいても良い。
【0063】
感光層の上に、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減したりする目的で保護層を設けても良い。保護層の膜厚は任意に選ぶことができるが、電気特性や画像等考慮し、感光層より膜厚が小さいものが好ましい。
[電子写真感光体の調製方法]
本実施の形態が適用される電子写真感光体の調製方法は特に限定されないが、通常、この感光体を構成する層は、電子写真感光体の感光層形成方法として公知な、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ノズル塗布法、バーコート法、ロールコート法、ブレード塗布法等により支持体上に塗布して形成される。これらの中でも生産性の高さから浸漬塗布方法が好ましい。
該層の形成方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を順次塗布する等の公知の方法が適用できる。
【0064】
[画像形成装置]
<カートリッジ、画像形成装置>
次に、本発明の電子写真感光体を用いたドラムカートリッジ、画像形成装置について、装置の一例を示す
図1に基づいて説明する。
【0065】
図1において、1はドラム状感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1はその回転過程で帯電手段3により、その表面に正又は負の所定電位の均一帯電を受け、ついで露光部4において像露光手段により潜像形成のための露光が行われる。形成された静電潜像は、次に現像手段5でトナー現像され、そのトナー現像像がコロナ転写手段6により給紙部から給送された転写体(紙など)7に順次転写されていく。像転写された転写体はついで定着手段8に送られ、像定着され、機外へプリントアウトされる。像転写後の感光体1の表面はクリーニング手段9により転写残りのトナーが除去され、除電手段10により除電されて次の画像形成のために清浄化される。
【0066】
本発明の電子写真感光体を使用するのにあたって、帯電器としては、図−1記載のコロトロン、スコロトロンなどのコロナ帯電器の他に、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電手段を用いてもよい。直接帯電手段の例としては、帯電ローラー、帯電ブラシ等の接触帯電器などが挙げられる。直接帯電手段として、気中放電を伴うもの、あるいは気中放電を伴わない注入帯電いずれも可能である。また、帯電時に印可する電圧としては、直流電圧だけの場合、及び直流に交流を重畳させて用いることもできる。
【0067】
露光はハロゲンランプ、蛍光灯、レーザー(半導体、He−Ne)、LED、感光体内部露光方式等が用いられるが、デジタル式電子写真方式として、レーザー、LED、光シャッターアレイ等を用いることが好ましい。波長としては780nmの単色光の他、600〜700nm領域のやや短波長寄りの単色光を用いることができる。
現像行程はカスケード現像、1成分絶縁トナー現像、1成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や湿式現像方式などが用いられる。トナーとしては、粉
砕トナーの他に、懸濁造粒、懸濁重合、乳化重合凝集法等のケミカルトナーを用いることができる。特に、ケミカルトナーの場合には、4〜8μ程度の小粒径のものが用いられ、形状も球形に近いものから、ポテト状の球形から外れたものも使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化には好適に用いられる。
【0068】
転写行程はコロナ転写、ローラー転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法が用いられる。定着は熱ローラー定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着、IH定着、ベルト定着、IHF定着などが用いられ、これら定着方式は単独で用いても良く、複数の定着方式を組み合わせた形で使用してもよい。
クリーニングにはブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラークリーナー、ブレードクリーナー、などが用いられる。
【0069】
除電工程は、省略される場合も多いが、使用される場合には、蛍光灯、LED等が使用さ
れ、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーが使用される場合が多い。
これらのプロセスのほかに、前露光工程、補助帯電工程のプロセスを有してもよい。
本発明においては、上記ドラム状感光体1、帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9等の構成要素の内の複数のものをドラムカートリッジとして一体に結合して構成し、このドラムカートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。例えば、帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9の内、少なくとも1つをドラム状感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化とすることが出来る。
【実施例】
【0070】
以下、実施例に基づき本実施の形態を更に具体的に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り、以下に示した実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例及び参考例中の
「部」の記載は、特に指定しない限り「質量部」を示す。
<感光体ドラムの製造>
(実施例1)
CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.2゜に強い回折ピークを示し、
図2に示す粉末X線回折スペクトルを有するオキシチタニウムフタロシアニン(以下CGM−1とする)を1,2−ジメトキシエタンに加え、サンドグラインドミルにて分散処理を行ない、顔料分散液を作製した。こうして得られた顔料分散液を、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名#6000C) の1,2−ジメトキ
シエタン溶液に加え、固形分濃度4.0%の分散液を作製した。この分散液を、外径30mm、長さ244mm、肉厚0.75mmのアルミニウム合金よりなるシリンダー上に、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように浸漬塗布した後、乾燥して下引き層を形成した。
【0071】
次に、前記オキシチタニウムフタロシアニン(CGM−1)を1,2−ジメトキシエタンと共にサンドグラインドミルにより分散し、固形分濃度3.6質量%の分散液を得た。日本アエロジル(株)製の商品名AEROSIL R972をテトラヒドロフランとともに分散し、固形分濃度4質量%の分散液を得た。次に、積水化学(株)製の商品名エスレックKS−10を1,2−ジメトキシエタンに溶解し、固形分濃度10質量%溶解液を得た。
【0072】
一方、下記構造の正孔輸送材料(CTM−1)、電子輸送材料(ETM−2)と、下記構造を繰り返し単位を有する結着樹脂(Z)とをテトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒で溶解し、レベリング剤としてシリコーンオイルを結着樹脂100に対して0.05質量部加え、これに上記の分散液2種と溶解液1種を、ホモジナイザーにより均一になるように混合し、固形分濃度24質量%の塗布液を得た。このように調製した塗布液を、上述の下引き層上に、乾燥後の膜厚が35μmになるように浸漬塗布して感光層を形成し、単
層型感光体Aを得た。各材料の組成比は表−1に示す。
【0073】
【化9】
【0074】
(実施例2)
実施例1と同様の各材料を用い、表−1に記載の組成比で塗布液を作製し、膜厚25μmの単層型感光体Bを得た。
(実施例3)
日本アエロジル(株)製の商品名AEROSIL R972を除いた以外は、実施例2と同様に実施し、単層型感光体Cを得た。
【0075】
(実施例4)
正孔輸送材料(CTM−2)、電子輸送材料(ETM−2)を用いた他は、表−1に記載の組成で実施例3と同様に実施し、単層型感光体Dを得た。
【0076】
【化10】
【0077】
(比較例1)
実施例2からKS10を除いた以外は、実施例2と同様に実施し、単層型感光体Eを得た。
(比較例2)
実施例4からKS10及びR972を除いた以外は、実施例4と同様に実施し、単層型感光体Fを得た。
【0078】
作製した感光体A〜Fについて、以下の電気特性試験及び画像評価試験を行い、これらの結果を表−2にまとめた。
<電気特性試験>
電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置( 電子写真学会編、
「続電子写真技術の基礎と応用」、コロナ社1996年発行、404頁〜405頁) を
使用し、上記感光体ドラムを一定回転数100pmで回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行なった。その際、感光体の初期表面電位が+700になるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを1.0μJ/cm
2で露光したときの露光後表面電位(以下、VLと呼ぶことがある)と半減露光量(以下、E/2と呼ぶ)を測定した。VL測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を60msとした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%で行なった。また、塗布液の保存安定性を確認するため、塗布液調液直後と4日間常温にて保管した塗布液を塗布した感光体について、E/2の比較を実施し、E/2の調液直後4日間保存後の差(以下、ΔE/2と呼ぶ)を表−2に示した。
【0079】
<画像評価試験>
上記単層型感光体Aを、正帯電で使用される市販のレーザープリンタHL−6180DW(ブラザー製)のドラムカートリッジ(DR−51J)に装着し、ハーフトーン画像濃度と白ベタ印字による黒点を確認した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
以上の結果より、本発明の構成を満たすことにより、安定な塗布液を得ることができ、また電気特性良好な電子写真感光体及び画像特性良好な画像形成装置を得ることができることがわかった。