特許第6361361号(P6361361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6361361ポジ型リフトオフレジスト組成物及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361361
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ポジ型リフトオフレジスト組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20180712BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20180712BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G03F7/023
   G03F7/004 501
   G03F7/40 501
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-160359(P2014-160359)
(22)【出願日】2014年8月6日
(65)【公開番号】特開2016-38431(P2016-38431A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2016年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】平野 禎典
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 秀好
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−256023(JP,A)
【文献】 特開平06−043637(JP,A)
【文献】 特開平06−282067(JP,A)
【文献】 特開平06−157385(JP,A)
【文献】 特開平07−017888(JP,A)
【文献】 特開昭57−111529(JP,A)
【文献】 特開2012−108415(JP,A)
【文献】 特開2012−162642(JP,A)
【文献】 特開2007−052359(JP,A)
【文献】 特開2010−195758(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00050802(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂、
(B)メトキシメチル基又はヒドロキシメチル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物、
(C)キノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤、及び
(E)重量平均分子量180〜800である、アルコキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基を含有しない芳香族ヒドロキシ化合物
を含有することを特徴とするポジ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項2】
(B)成分のメトキシメチル基又はヒドロキシメチル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物の重量平均分子量が300〜10,000であることを特徴とする請求項1記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項3】
(B)成分のメトキシメチル基又はヒドロキシメチル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物が、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部に対し、3〜50質量部含むことを特徴とする請求項1又は2記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項4】
(B)メトキシメチル基又はヒドロキシメチル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物が、下記式で示されるものから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
【化1】
【化2】
【請求項5】
更に、(D)光酸発生剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項6】
(E)成分の芳香族ヒドロキシ化合物が、下記式(1),(2)又は(5)
【化3】

(式中、jは1又は2、k、m、pはそれぞれ0〜3、nは1〜4、qは1〜3、rは2又は3の整数で、m+p+n≦6、k+q≦5、m+q≦5である。)
【化4】

[(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rfはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、又は下記式(6)で示される基であって、Ra、Rb、Rcの少なくとも一つ及びRd、Re、Rfの少なくとも一つはベンゼン環にヒドロキシ基が付加した構造を有する。x、yはそれぞれ0〜3の整数である。)
【化5】

(式中、v、wはそれぞれ0〜3の整数である。)]
で示される化合物から選ばれるものであり、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)100質量部に対し2〜70質量部を配合した請求項1〜5のいずれか1項記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項7】
更に、(F)アルカリ可溶性セルロースを含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項8】
(F)成分のアルカリ可溶性セルロースが、下記構造式(3)
【化6】

[式中、R1は独立に、酸価30〜150mgKOH/gを示す範囲において、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアシル基又は下記構造式(4)
【化7】

(式中、R’は炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。)
で表される有機基であり、かつR1中の上記式(4)で表される有機基の割合が単位グルコース環あたり平均2〜30モル%であり、sは2〜10,000の整数である。]
で表されるものである請求項記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項記載のレジスト組成物を基板に塗布する工程(a)と、次いで加熱処理後、フォトマスクを介して放射線もしくは電子線で露光する工程(b)と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程(c)と、その後、得られたレジストパターンに対し第二の放射線で照射する工程(d)及び/又は120〜220℃で熱処理を行う工程(e)とを有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
上記工程(d)及び/又は(e)の後、基板上に形成したレジストパターン全面にメタル層を形成し、次いでレジストパターンと該パターン上に形成されたメタル層とを剥離することにより基板上にメタルパターンを形成することを特徴とする請求項記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型リフトオフレジスト組成物及びリフトオフレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の基板上にアルミニウム、銅、タンタル等の種々の金属配線パターンを形成する手段として、リフトオフ法が知られている。リフトオフ法は、例えば、基板上にレジスト組成物を塗布し、マスクを介して露光し、現像して基板上にレジストパターンを形成した後、該レジストパターン上及び金属基板上に金属膜をスパッタリング法、蒸着法等により形成し、次いでレジストパターンと該パターン上の金属膜を一緒に剥離して、基板上に金属配線を形成するというものである。このリフトオフ法において用いられる望ましいレジストパターン形状は、レジストパターンの下部(基板接地部分)にマイクログルーブと呼ばれるアンダーカットを有する形状である。
このような形状を有する従来のポジ型リフトオフレジスト組成物の報告としては、特開平8−69111号公報(特許文献1)や特開平10−97066号公報(特許文献2)等においてなされている。両報告は構成成分が異なっているものの、芳香族ヒドロキシ化合物によりアンダーカットを発生させるという点では、共通性を有している。これは、基板近傍にアンダーカットを発生させ、そのサイズをコントロールする上で、芳香族ヒドロキシ化合物が適度なアルカリ溶解速度を有するためである。また、特開2012−108415号公報(特許文献3)においては、アルカリ可溶性セルロース樹脂を添加することにより、更にアンダーカットを大きく形成し、厚い金属膜を成膜することを可能にしている。
しかしながら、従来技術は、成膜中に高温になった場合、パターンが熱の影響で変形してしまい、所望の成膜ができなくなるという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−69111号公報
【特許文献2】特開平10−97066号公報
【特許文献3】特開2012−108415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、120℃以上の高温においても変形のないパターンを形成できるポジ型リフトオフレジスト組成物及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行なった結果、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂、(B)メトキシメチル基又はヒドロキシメチル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物、(C)キノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤を含有する組成物が、アンダーカットが大きく、高耐熱性を有するパターンを形成することを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記の高耐熱性ポジ型リフトオフレジスト組成物及びレジストパターン形成方法を提供する。
〔1〕
(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂、
(B)メトキシメチル基又はヒドロキシメチル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物、
(C)キノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤、及び
(E)重量平均分子量180〜800である、アルコキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基を含有しない芳香族ヒドロキシ化合物
を含有することを特徴とするポジ型リフトオフレジスト組成物。
〔2〕
(B)成分のメトキシメチル基又はヒドロキシメチル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物の重量平均分子量が300〜10,000であることを特徴とする〔1〕記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
〔3〕
(B)成分のメトキシメチル基又はヒドロキシメチル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物が、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部に対し、3〜50質量部含むことを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
〔4〕
(B)メトキシメチル基又はヒドロキシメチル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物が、下記式で示されるものから選ばれる少なくとも1種である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
【化18】
【化19】
〔5〕
更に、(D)光酸発生剤を含有することを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。

(E)成分の芳香族ヒドロキシ化合物が、下記式(1),(2)又は(5)
【化1】

(式中、jは1又は2、k、m、pはそれぞれ0〜3、nは1〜4、qは1〜3、rは2又は3の整数で、m+p+n≦6、k+q≦5、m+q≦5である。)
【化2】

[(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rfはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、又は下記式(6)で示される基であって、Ra、Rb、Rcの少なくとも一つ及びRd、Re、Rfの少なくとも一つはベンゼン環にヒドロキシ基が付加した構造を有する。x、yはそれぞれ0〜3の整数である。)
【化3】

(式中、v、wはそれぞれ0〜3の整数である。)]
で示される化合物から選ばれるものであり、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)100質量部に対し2〜70質量部を配合した〔〜〔5〕のいずれかに記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。

更に、(F)アルカリ可溶性セルロースを含有することを特徴とする〔1〕〜〔〕のいずれかに記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。

(F)成分のアルカリ可溶性セルロースが、下記構造式(3)
【化4】

[式中、R1は独立に、酸価30〜150mgKOH/gを示す範囲において、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアシル基又は下記構造式(4)
【化5】

(式中、R’は炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。)
で表される有機基であり、かつR1中の上記式(4)で表される有機基の割合が単位グルコース環あたり平均2〜30モル%であり、sは2〜10,000の整数である。]
で表されるものである〔〕記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。

〔1〕〜〔〕のいずれかに記載のレジスト組成物を基板に塗布する工程(a)と、次いで加熱処理後、フォトマスクを介して放射線もしくは電子線で露光する工程(b)と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程(c)と、その後、得られたレジストパターンに対し第二の放射線で照射する工程(d)及び/又は120〜220℃で熱処理を行う工程(e)とを有することを特徴とするパターン形成方法。
〔1
上記工程(d)及び/又は(e)の後、基板上に形成したレジストパターン全面にメタル層を形成し、次いでレジストパターンと該パターン上に形成されたメタル層とを剥離することにより基板上にメタルパターンを形成することを特徴とする〔〕記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の高耐熱性ポジ型リフトオフレジスト組成物は、高い耐熱性を必要とするアンダーカット形状を有したパターンを得るために好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ポジ型リフトオフレジスト組成物により形成されるレジストパターンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明に係る高耐熱性ポジ型リフトオフレジスト組成物は、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂、(B)アルコキシアルキル基又はヒドロキシアルキル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物、(C)キノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤を必須成分とする。
(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂については、フェノール類とアルデヒド類の縮合反応生成物として合成することができる。前記フェノール類としては、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール等のキシレノール類、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−エチルフェノール等のアルキルフェノール類、p−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール等のアルコキシフェノール類、p−イソプロペニルフェノール、o−イソプロペニルフェノール等のイソプロペニルフェノール類、ビスフェノールA等のポリヒドロキシフェノール類等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのフェノール類の中では、特にm−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノールが好適に用いられる。
【0009】
前記アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、フルフラール、フリルアクロレイン、ベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのアルデヒド類の中では、入手のしやすさからホルムアルデヒドが好適である。
【0010】
フェノール類とアルデヒド類との縮合反応生成物は、酸性触媒の存在下、公知の方法で製造することができる。その際の酸性触媒としては、塩酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等を使用することができる。このようにして得られた縮合反応生成物は、分画等の処理を施すことによって、低分子領域をカットしたものを用いることもできる。
本発明においては、特にm−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノールのフェノール類から選ばれる複数種の混合フェノールとホルムアルデヒドとの縮合によって得られるノボラック樹脂が好ましい。この場合、ノボラック樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(溶媒テトラヒドロフラン)によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が2,000〜20,000が好ましく、より好ましくは2,500〜15,000の範囲にあるノボラック樹脂が好適に用いられる。
【0011】
(B)アルコキシアルキル基又はヒドロキシアルキル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物については、炭素数2〜12のアルコキシアルキル基又は炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基を有する芳香族ヒドロキシ化合物が挙げられる。この場合、アルコキシ基としては、炭素数1〜6のものが好ましい。かかる化合物としては、下記一般式(I)で示す構造を有する芳香族ヒドロキシ化合物を好適に用いることができる。但し、波線は、隣接する繰り返し単位との結合部位であることを示す。
【化6】

式中、zは1〜3から選ばれる自然数である。RnはRsOH又はRsORtで表され、Rsは、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状構造を有するアルキル基から選ぶことができ、メチル基もしくはエチル基が好適に用いられる。Rtについては、Rsと独立して、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状構造を有するアルキル基から選ぶことができ、メチル基もしくはエチル基が好適に用いられる。
好ましい化合物は、(I)の単位を1〜10個、更に好ましくは2〜5個を、炭素又は炭化水素結合を介して有する構造である。
なお、(B)成分のヒドロキシ化合物の重量平均分子量は180〜10,000が好ましく、より好ましくは300〜10,000である。
【0012】
以下に、具体例を挙げるが、これらに限定されない。なお、Meはメチル基を示す。
【化7】
【0013】
【化8】
【0014】
本発明において、(B)アルコキシアルキル基又はヒドロキシアルキル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物の添加量は、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部に対し、3〜50質量部、好ましくは5〜40質量部、更に好ましくは7〜35質量部である。これらは、単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても構わない。(B)成分が3質量部未満であると、硬化が不十分となり、本発明の効果が得られない場合があり、50質量部を超えると基板近傍に発生する切れ込みが大きくなり、パターン形成が困難となる場合がある。
【0015】
(C)キノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤としては、公知の2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル等、工業的に生産されているものに限らず、下記一般式(1)もしくは(2)で示される化合物又はトリヒドロキシベンゾフェノンもしくはテトラヒドロキシベンゾフェノンから選ばれた化合物のうち、一つもしくは複数のヒドロキシ基の水素原子をナフトキノンジアジドスルホニル基で置換した感光剤を添加する形で用いることができる。
【0016】
【化9】

(式中、jは1又は2、k、m、pはそれぞれ0〜3、nは1〜4、qは1〜3、rは2又は3の整数で、m+p+n≦6、k+q≦5、m+q≦5である。)
【0017】
中でも、フェノール性ヒドロキシ基の65モル%以上がナフトキノンジアジドスルホン酸によりエステル化されていることが、リフトオフパターン形成上好ましい。
本発明において、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部に対する感光性成分(C)の配合量は、10〜55質量部が好ましく、より好ましくは25〜50質量部、最も好ましくは30〜45質量部である。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。(C)成分が10質量部未満であると、現像時に未露光部が現像液に溶解し、膜厚が薄くなる膜べりという現象が生じる場合があり、55質量部を超えると露光時の感度が大幅に悪化し、現実的でない感度となる場合があり、好ましくない。
【0018】
本発明で用いられるポジ型リフトオフレジスト組成物における(D)光酸発生剤は、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド型光酸発生剤等がある。以下に詳述するが、これらは単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0019】
スルホニウム塩はスルホニウムカチオンとスルホネートの塩である。スルホニウムカチオンとしては、例えば、トリフェニルスルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、ジメチル2−ナフチルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4−メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2−オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム等が挙げられ、スルホネートとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4−(4−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等が挙げられ、これらの組み合わせのスルホニウム塩が挙げられる。
【0020】
ヨードニウム塩はヨードニウムカチオンとスルホネートの塩である。ヨードニウムカチオンとしては、例えば、ジフェニルヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、4−tert−ブトキシフェニルフェニルヨードニウム、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム等のアリールヨードニウムカチオンが挙げられ、スルホネートとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4−(4−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等が挙げられ、これらの組み合わせのヨードニウム塩が挙げられる。
【0021】
スルホニルジアゾメタンとしては、例えば、ビス(エチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1−メチルプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2−メチルプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(パーフルオロイソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2−ナフチルスルホニル)ジアゾメタン、4−メチルフェニルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、tert−ブチルカルボニル−4−メチルフェニルスルホニルジアゾメタン、2−ナフチルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、4−メチルフェニルスルホニル−2−ナフトイルジアゾメタン、メチルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、tert−ブトキシカルボニル−4−メチルフェニルスルホニルジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタンとスルホニルカルボニルジアゾメタンが挙げられる。
【0022】
N−スルホニルオキシイミド型光酸発生剤としては、例えば、コハク酸イミド、ナフタレンジカルボン酸イミド、フタル酸イミド、シクロヘキシルジカルボン酸イミド、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド、7−オキサビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸イミド等のイミド骨格と、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等の組合せの化合物が挙げられる。
【0023】
ベンゾインスルホネート型光酸発生剤としては、例えば、ベンゾイントシレート、ベンゾインメシレート、ベンゾインブタンスルホネート等が挙げられる。
ピロガロールトリスルホネート型光酸発生剤としては、例えば、ピロガロール、フロログリシン、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンのヒドロキシル基の全てを、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等で置換した化合物が挙げられる。
【0024】
ニトロベンジルスルホネート型光酸発生剤としては、例えば、2,4−ジニトロベンジルスルホネート、2−ニトロベンジルスルホネート、2,6−ジニトロベンジルスルホネートが挙げられ、スルホネートとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等が挙げられる。またベンジル側のニトロ基をトリフルオロメチル基で置き換えた化合物も同様に用いることができる。
【0025】
スルホン型光酸発生剤の例としては、例えば、ビス(フェニルスルホニル)メタン、ビス(4−メチルフェニルスルホニル)メタン、ビス(2−ナフチルスルホニル)メタン、2,2−ビス(フェニルスルホニル)プロパン、2,2−ビス(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン、2,2−ビス(2−ナフチルスルホニル)プロパン、2−メチル−2−(p−トルエンスルホニル)プロピオフェノン、2−(シクロヘキシルカルボニル)−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、2,4−ジメチル−2−(p−トルエンスルホニル)ペンタン−3−オン等が挙げられる。
【0026】
グリオキシム誘導体型の光酸発生剤としては、例えば、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(トリフルオロメタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(パーフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(シクロヘキシルスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(キシレンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等が挙げられる。
【0027】
また、発生する酸のアニオンについては、一般的には揮発性がないもの、極端に拡散性の高くないアニオンが選ばれる。この場合、好適なアニオンは、例えば、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、4−(4−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンである。
【0028】
上記光酸発生剤の中で、第1の高エネルギー線として、水銀ランプのi線、g線、もしくはブロードバンド光を利用する場合には、ナフタルイミジル、スルホニルオキシイミノ等を好適に用いることができる。また、同様に第1の高エネルギー線として、KrFエキシマーレーザーや水銀の254nm線などの300nm以下の短波長の光源を利用する場合には、スルホニルオキシイミノ、ビススルホニルジアゾメタン等を好適に用いることができる。
【0029】
上記光酸発生剤の添加量としては、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部に対して0〜10質量部、添加する場合には、0.0001〜10質量部、好ましくは0.002〜5質量部である。上記光酸発生剤は単独又は2種以上混合して用いることができる。
光酸発生剤が10質量部を超えると保存安定性が悪くなる場合があり、好ましくない。
【0030】
本発明において、更なる溶解促進成分となる(E)重量平均分子量180〜800である芳香族ヒドロキシ化合物は、ベンゼン環の個数が、好ましくは2〜15個、より好ましくは3〜10個、特に好ましくは3〜7個であり、かつヒドロキシ基の数とベンゼン環の数の比率が、好ましくは0.4〜3.0、より好ましくは0.5〜2.0、最も好ましくは0.6〜1.5である。ヒドロキシ基の数が少ないと、アルカリ現像液に対する溶解速度が小さくなり、所望の切れ込みサイズを得ることができなくなり、多くなりすぎると密着性が低下するおそれがある。また、重量平均分子量が800を超える芳香族ヒドロキシ化合物の場合、本発明の効果を低下してしまうため、適さない。具体的には、重量平均分子量が800を超える芳香族ヒドロキシ化合物を配合した場合、狙いとするアンダーカットが小さくなってしまい、本発明の効果が得られない。本発明においては、ヒドロキシ基の一部がアシル化されていても構わない。その場合、アシル化は定法によって行なうことができる。なお、(E)成分は、上記(C)成分におけるヒドロキシ化合物である場合を除く。
この場合、(E)成分の芳香族ヒドロキシ化合物としては、下記式(1),(2)、更に式(5)で示される化合物が好適に用いられる。
【0031】
【化10】

(式中、jは1又は2、k、m、pはそれぞれ0〜3、nは1〜4、qは1〜3、rは2又は3の整数で、m+p+n≦6、k+q≦5、m+q≦5である。)
【化11】

[(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rfはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、又は下記式(6)で示される基であって、Ra、Rb、Rcの少なくとも一つ及びRd、Re、Rfの少なくとも一つはベンゼン環にヒドロキシ基が付加した構造を有する。x、yはそれぞれ0〜3の整数である。)
【化12】

(式中、v、wはそれぞれ0〜3の整数である。)]
【0032】
本発明において、(E)芳香族ヒドロキシ化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。その配合量は、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部に対して、好ましくは0〜70質量部、(E)成分を添加する場合には、2〜70質量部、より好ましくは5〜60質量部、特に好ましくは10〜50質量部である。
(E)成分が70質量部を超えると切れ込みが大きくなり過ぎ、パターン倒れが生じたり、現像後の膜厚がソフトベーク後の膜厚に比べて、大幅に薄くなる膜べりという現象が生じる場合がある。
【0033】
(F)成分としてのアルカリ可溶性セルロースは、下記構造式(3)
【化13】

[式中、R1は独立に、酸価30〜150mgKOH/gを示す範囲において、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアシル基又は下記構造式(4)
【化14】

(式中、R’は炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。)
で表される有機基であり、かつR1中の上記式(4)で表される有機基の割合が単位グルコース環あたり平均2〜30モル%であり、sは2〜10,000の整数である。]
で表されるアルカリ可溶性セルロースを含有するものである。
【0034】
このアルカリ可溶性セルロースは、導入されたカルボキシアルキル基が酸性では解離せず、それ自身が疎水性で耐酸性を示すが、弱酸性から中性領域では解離するため、水性又はアルカリ性液中で溶解し、また露光光源に対して透明な樹脂バインダーとなる。このアルカリ可溶性セルロースを含有することにより、上記理由によって高感度になり、アンダーカットを大きくすることができる。
【0035】
式(3)において酸価30mgKOH/gに満たない場合、感度向上やアンダーカット促進の効果が少なく、また150mgKOH/gより多いとパターン形成後、残膜量が少なくなる場合がある。
また、R1は独立に、酸価30〜150mgKOH/gを示す範囲において、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアシル基又は上記構造式(4)で表される有機基であり、かつR1中の上記式(4)で表される有機基の割合が単位グルコース環あたり平均2〜30モル%である。
【0036】
1としては、例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基等の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等の炭素数1〜8のアシル基が挙げられる。また、式(4)中のR’としてはエチレン基等の炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基が挙げられる。
【0037】
1中の上記式(4)で表される有機基の割合は、単位グルコース環あたり平均2〜30モル%であるが、特に5〜25モル%が好ましい。上記式(4)で表される有機基の割合が2モル%未満だと現像時のアルカリ液中での溶解性が劣り、30モル%を超えるとアルカリ液中での溶解性が大きくなりすぎ、現像後の膜減りの原因となる。またsは2〜10,000の整数であり、特に100〜5,000が好ましい。
【0038】
式(3)で表されるアルカリ可溶性セルロース(F)の配合量は、(A)成分のアルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部に対して0〜30質量部、配合する場合には2〜30質量部であり、特に5〜20質量部配合するのが好ましい。2質量部未満では、アンダーカット促進の効果が小さく、所望のアンダーカットサイズが得難くなる。一方30質量部を超えると、水性アルカリ液中での組成物の溶解度が増し、残膜性に劣り、またアンダーカットが大きくなりすぎ、パターン形成が困難となる。
【0039】
本発明においては、上記各成分以外に、塗布性を向上するために用いられている界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、ノニオン系、フッ素系、シリコーン系の各種界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の例としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、エフトップEF301,EF303,EF352(株式会社トーケムプロダクツ製)、メガファックF171,F172,F173(DIC株式会社製)、フロラードFC430,FC431(住友スリーエム株式会社製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−381,S−382,SC101,SC102,SC103,SC104,SC105,SC106、サーフィノールE1004,KH−10,KH−20,KH−30,KH−40(旭硝子株式会社製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341,X−70−092,X−70−093(信越化学工業株式会社製)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75,No.95(共栄社化学株式会社製)が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
本発明の界面活性剤の添加量としては、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部に対して2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。
【0040】
更に、本発明のポジ型リフトオフレジスト組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリヒドロキシスチレン等のアルカリ可溶性樹脂、2−ベンゼンアゾ−4−メチルフェノール、4−ヒドロキシ−4’−ジメチルアミノアゾベンゼン等のアゾ化合物やクルクミン等の染料、顔料等の各種配合剤を添加することができる。
【0041】
本発明で用いられる溶剤として、例えば、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸シクロヘキシル、酢酸3−メトキシブチル、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3−エトキシエチルプロピオネート、3−エトキシメチルプロピオネート、3−メトキシメチルプロピオネート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ジアセトンアルコール、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、テトラメチレンスルホン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいものは、酢酸アルキルエステル、乳酸アルキルエステルである。これらの溶剤は単独でも2種以上混合してもよい。
なお、溶剤の使用量は適宜選定されるが、通常アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)100質量部に対し、70〜10,000質量部が好適である。
【0042】
本発明のポジ型リフトオフレジスト組成物を用いたリフトオフ工程におけるレジストパターン形成方法は、定法であれば特に限定されるものでない。Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG等の基板に加え、Au、Ti、W、Cu、Ni−Fe、Ta、Zn、Co、Pb等の金属基板、有機反射防止膜等の基板上にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターブレードコート等の適当な塗布方法により、所望の膜厚になるよう塗布し、ホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜120℃、1〜5分間プリベークする。次いで、紫外線、遠紫外線、電子線等から選ばれる光源、好ましくは300nm以上の露光波長で目的とするパターンを所定のマスクを通じて露光を行う。露光量は1〜1,000mJ/cm2程度、好ましくは10〜800mJ/cm2程度となるように露光することが好ましい。ホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜120℃、1〜3分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。
更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜60分間、好ましくは0.5〜10分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の定法で現像することにより基板上に目的のパターンが形成される。
【0043】
次いで、得られた基板に、第二の紫外線を照射及び/又は加熱処理を行うことができる。第二の紫外線を照射する場合は、10〜800mW/cm2で30〜3,000秒の範囲で露光量を選ぶことができる。この際、照射量が少なすぎると本発明の効果を得ることができずに、金属膜を成膜する際にパターンが変形し易くなるため、好ましくなく、照射量が高すぎると、感光剤成分である(C)キノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤の分解により、発泡する可能性が高くなるため、好ましくない。この際、第二の紫外線照射中に、加熱することもでき、その場合は、50〜150℃の温度範囲から選ぶことができる。その際、加熱温度は、一定でも変化させても構わない。この第二の紫外線照射を行なった後、必要に応じて、120〜220℃で5〜120分間加熱処理しても構わない。なお、第二の紫外線照射を行わなかった場合は、この120〜220℃の温度で5〜120分間の加熱処理を行う必要がある。この加熱処理については、既に所定の温度になった加熱装置中に基板を投入しても構わないし、室温から徐々に加熱し、最終的に所定の温度で加熱処理しても構わない。
最後に、金属膜をスパッタリング法、蒸着法等により形成した後、レジストパターンと該パターン上の金属膜を一緒に剥離して、基板上に金属配線を形成すれば、基板上にメタルパターンを形成する金属配線板が製造できる。
【実施例】
【0044】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0045】
[合成例1]ノボラック樹脂の合成
撹拌機、コンデンサー、温度計を装着した3つ口フラスコにp−クレゾール75.7g(0.7mol)、m−クレゾール32.5g(0.3mol)、37質量%ホルムアルデヒド水溶液52.3g(0.549mol)及び重縮合触媒であるシュウ酸2水和物0.30g(2.40×10-3mol)を仕込み、フラスコをオイルバスに浸し、内温を100℃に保持し、1時間重縮合を行なった。反応終了後、500mLのMIBK(メチルイソブチルケトン)を加え、30分撹拌した後、水層を分離し、MIBK層に抽出された生成物を300mLの純水で5回水洗、分液し、エバポレーターにて4mmHgで150℃の減圧ストリップを行い、重量平均分子量(Mw)8,000のノボラック樹脂(87g)を得た。なお、Mwの測定は、東ソー(株)製、GPCカラム(G−2000H6・2本、G−3000H6・1本、G−4000H6・1本)を用い、流量1.5mL/min.,溶出溶媒THF、カラム温度40℃で行なった。
【0046】
[実施例1〜8、比較例1〜5]
合成例1で得られたアルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部と、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンの66モル%がナフトキノンジアジド−5−スルホン酸でエステル化されたキノンジアジド化合物(東洋合成工業(株)製、NT−200)(II)、アルコキシアルキル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物として、下記式(7)に示す化合物(III)及び式(8)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物(IV)、ヒドロキシアルキル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物として式(10)で示される化合物(VIII)、光酸発生剤として、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン(V)、下記式(9)に示す芳香族ヒドロキシ化合物(VI)、アルカリ可溶性セルロースA(信越化学工業(株)製、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート:酸価92mgKOH/g、カルボキシベンゾイル基20モル%含有)(VII)を表1の配合比で混合し、塗布性向上のため界面活性剤としてX−70−093(信越化学工業(株)製オルガノシロキサンポリマー)を0.1質量部添加し、乳酸エチルと酢酸ブチルの混合比が85質量部と15質量部である溶剤200質量部で溶液とした後、0.2μmのメンブランフィルターでろ過し、ポジ型リフトオフレジスト溶液を調製した。なお、比較例3,4,5については、アルコキシアルキル基を含有する芳香族ヒドロキシ化合物の代わりに、下記式(11)、(12)で示される化合物を、それぞれ(IX)、(X)として用いた。
【0047】
【化15】
【0048】
【化16】
【0049】
【化17】
【0050】
得られたレジスト溶液をSi基板上に塗布し、ホットプレートにて100℃で120秒間のソフトベークを行ない、3μmのレジスト膜を形成した。次いでレチクルを介しi線ステッパーで露光(ニコン社製、NA=0.5)し、120℃で90秒間加熱した後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で100秒間現像後、純水にて30秒間リンスし、乾燥を行なった。その後、ウシオ電機株式会社製UVキュア装置(UMA−802−HC551)により、80mW/cm2、60秒、50℃での処理を行なった。この処理後、耐熱性を確認するために、220℃/1時間のオーブンで熱処理を行い、現像後のパターン形状と比較を行なった。なお、パターン形状については、電子顕微鏡(日立製)にて断面の形状を観察し、図1に示す横方向の切れ込み量(片側)寸法を測定した。結果を表2に示す。図1において、A:ライン幅、B:基板との接地幅、C:アンダーカット幅を示しており(A=B+2C)、切れ込み高さの最大値をHとした。A、B,Hの幅については、当該箇所の場所をSEMの画面で確認し、その場所の切れ込み長さを測定した。
【0051】
更に、実施例8として、実施例4の組成物を用いて、現像処理まで行い、その後、UV照射することなく、室温から150℃まで、オーブンを用いて昇温し、その後、150℃で一時間の熱処理を行なった後、室温まで放冷した。その後、220℃/1時間の熱処理を行い、現像後のパターン形状と比較を行なった。
本発明によれば、120℃以上、特に130℃以上の高温においてもパターン変形のないリフトオフ形状を得ることができる。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【符号の説明】
【0054】
A ライン幅
B 基板との接地幅
C アンダーカット幅
H 基板からの最大切れ込み高さ
図1