(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記計測手段は、前記第1発振回路における発振周波数と、前記第2発振回路における発振周波数とを交互に計測するように構成してあることを特徴とする請求項1記載の透磁率センサ。
前記第1発振回路及び第2発振回路の構成部材は、前記第1コイル及び第2コイルを除いて共通であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の透磁率センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のトナーセンサは、差動トランス方式を採用しており、駆動コイルと差動コイルとが近傍に位置している場合、トナーの影響が両方に及ぶので、トナーが駆動コイル及び差動コイルに与える影響を完全になくすことは困難である。また、扁平コイルを含めて発振回路を構成した場合、磁性体が近づいた場合のインダクタンスの結合度合の変化が少なく、このような扁平コイルをアナログ回路で動作させることは困難である。
【0006】
特許文献2では、第一発振回路及び第二発振回路からの発振波を計測し、その計測値が所定値に達した時間を計測し、計測した時間に基づいて、蓄積された発振波の位相ズレを検出しているので、検出するプロセスが複雑であるという問題がある。
特許文献2では、高透磁率材料に巻いたコイルを使用しており発振周波数が低いので、同じ分解能を得るための時間を短くできるため、位相ズレを検出する方式が有利であるが、扁平コイルを用いる場合には不利となる。
また、特許文献2は、回転軸のトルクを磁気的に検出するための技術であり、トナーの濃度を検出するセンサへの適用は開示も示唆もされていない。
【0007】
2個のコイルを用いて透磁率を検出するセンサでは、一方のコイルで発生する磁束によって他方のコイルが影響を受けることを抑止するために、2個のコイルを水平方向に離隔させて配置する構成が一般的である。具体的には、一方のコイルは被検出物(磁性体)の近傍に配して透磁率の変化の影響を受けやすくし、他方のコイルは被検出物(磁性体)から遠ざけて配して透磁率の変化の影響を受けにくくする。このような水平方向にわたる複数のコイルの配置によれば、センサの小型化を図れないという問題がある。
【0008】
また、複数のコイルのインダクタンスの変化に応じて、透磁率を検出するようにしているが、この検出には多数の回路部品を用いている。回路部品には特性のばらつきが存在し、しかも回路部品は検出環境の影響を受け易いので、高精度の検出を図れないという問題がある。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、小型かつ簡単な構成であっても、高精度に被検出物の透磁率の変化を検出できる透磁率セン
サを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る透磁率センサは、被検出物の透磁率を検出する透磁率センサにおいて、前記被検出物から磁気を受ける第1コイルを含んで発振する第1発振回路と、前記被検出物から磁気を受ける第2コイルを含んで発振する第2発振回路と、前記第1発振回路及び第2発振回路夫々における発振周波数を計測する計測手段と、該計測手段にて計測した発振周波数の差分を算出する算出手段と、該算出手段にて算出した差分を透磁率に変換する変換手段とを備えることを特徴とする。ここで、「磁気を受ける」とは、被検出物と磁気的に結合することを意味する。
【0011】
本発明の透磁率センサにあっては、被検出物の近傍に配した第1コイルを含む第1発振回路の発振周波数と、被検出物の近傍に第1コイルとは被検出物への距離を異ならせて配した第2コイルを含む第2発振回路の発振周波数とを、計測手段で計測する。算出手段は、計測手段が計測した両発振周波数の差分を算出し、変換手段は、算出手段が算出した差分を透磁率に変換する。被検出物の透磁率が大きくなるとコイルのインダクタンスが増えて、そのコイルを含む発振回路の発振周波数は低下する。ここで、被検出物に近い方のコイルは透磁率の変化に応じたインダクタンスの変化量が大きくなるので、発振回路での発振周波数の変動も大きくなる。よって、被検出物からの距離を異ならせて配した2つのコイルを用いて、夫々の発振回路による発振周波数の差分から透磁率を検出することができる。この際、2つのコイルとして、基板へのパターニング印刷により形成されたコイルなどの扁平コイルを使用でき、構成は小型化する。
扁平コイル等、インダクタンスの小さいコイルの場合には発振周波数が高い。結果としてコンピュータのクロックが発信周波数より低いので、周波数測定の場合には同じ分解能を得るための測定時間を短くし、さらに測定時間を一定とすることができる。
また、発振周波数の計測、発振周波数の差分の算出、差分から透磁率への変換の一連の処理を、マイクロコンピュータなどを用いてソフトウェアにて行えて部品点数を削減できるとともに、部品における特性のばらつきを受けることが少なく、検出精度は高い。
【0012】
本発明に係る透磁率センサは、前記計測手段は、前記第1発振回路における発振周波数と、前記第2発振回路における発振周波数とを交互に計測するように構成してあることを特徴とする。
【0013】
本発明の透磁率センサにあっては、第1発振回路における発振周波数の計測と、第2発振回路における発振周波数の計測とを、切り替えながら交互に行う。よって、一方の発振回路における発振周波数の計測時に、他方の発振回路は発振していないので、一方の発振回路における発振周波数の計測値は、他方の発振回路の発振の影響を受けない。したがって、両発振回路における正確な発振周波数を計測でき、透磁率の検出精度は高い。
【0014】
本発明に係る透磁率センサは、前記第1コイル及び第2コイルは、同軸状に配されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の透磁率センサにあっては、第1コイル及び第2コイルが同軸状に配されている。よって、コイルの配置に要する面積は小さくて済み、透磁率センサの小型化を図れる。
【0016】
本発明に係る透磁率センサは、前記第1発振回路及び第2発振回路の構成部材は、前記第1コイル及び第2コイルを除いて共通であることを特徴とする。
【0017】
本発明の透磁率センサにあっては、第1発振回路と第2発振回路とにおいて、第1コイル及び第2コイルを除く他の構成部材は共通としている。よって、第1発振回路及び第2発振回路夫々で計測される発振周波数は、コイル以外の異なる構成部材による特性のばらつきの影響を受けず、正確な値が計測される。よって、透磁率の検出精度は高い。
【0018】
本発明に係る透磁率センサは、その一面に前記第1コイルが配され、その他面に前記第2コイルが配されている基板を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の透磁率センサにあっては、基板の一面に第1コイルが形成され、基板の他面に第2コイルが形成されている。よって、簡単な構成にて、第1コイル及び第2コイルの同軸状配置を実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、小型かつ簡単な構成であっても、高精度に被検出物の透磁率を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1及び
図2は、本発明の透磁率センサの構成を示す斜視図及び断面図である。
【0024】
図1及び
図2において、10は扁平矩形状の基板である。基板10の一端部の一面(下面)には第1コイル1が形成されている(
図2参照)。また、基板10の一端部の他面(上面)には、第1コイル1と同軸をなして、第2コイル2が形成されている。これらの第1コイル1及び第2コイル2は、例えば、基板10への銅箔パターンの印刷により形成される。
【0025】
基板10の他端部の上面には、他端から一部を突出させてコネクタ3が実装されている。基板10の中央部の上面には、後述する各種の処理を行うマイクロコンピュータからなる電子チップ4が実装されている。さらに、電子チップ4の近傍には、回路部品5が実装されている。回路部品5は、第1コイル1または第2コイル2と発振回路を構成するためのコンデンサなどを含んでいる。本発明の透磁率センサ20は、以上のような構成をなす。
【0026】
図3は、本発明の透磁率センサ20の現像ユニットへの取り付け例を示す断面図である。
図3において30は、現像ユニットの内外を仕切る隔壁である。隔壁30には、凹部31が形成されており、この凹部31に嵌め込まれるように、ケース21に収納された状態で透磁率センサ20が現像ユニットに取り付けられる。なお、コネクタ3の先端部はケース21から突出している。
【0027】
この際、
図1及び
図2に示した基板10の下面側が隔壁30側になるように、透磁率センサ20が現像ユニットの隔壁30に取り付けられる。よって、第1コイル1が第2コイル2よりも、現像ユニット内に近い位置、言い換えると現像ユニット内の現像剤に近い位置に配されることになる。透磁率センサ20が取り付けられた凹部31は、シール32にて封止されている。
【0028】
図4は、本発明の透磁率センサ20の機能構成を示すブロック図である。
図4において、
図1及び
図2と同一または同様な部分には同一の符号を付している。
【0029】
第1コイル1と回路部品5の一部とにより、第1発振回路6が構成されており、第2コイル2と回路部品5の一部とにより、第2発振回路7が構成されている。本発明の透磁率センサ20にあっては、第1発振回路6と第2発振回路7とにおいて、第1コイル1及び第2コイル2を除く他の構成部材は共通としている。よって、第1発振回路6及び第2発振回路7夫々で計測される発振周波数は、異なる構成部材による特性のばらつきの影響を受けず、正確な値が計測される。よって、透磁率の検出精度は高い。
【0030】
また、電子チップ4は、第1発振回路6及び第2発振回路7夫々における発振周波数を計測する計測部41と、計測部41で計測した発振周波数の差分を算出する算出部42と、算出部42にて算出した差分を透磁率に変換する変換部43とを機能的に有している。
【0031】
図5は、本発明の透磁率センサ20の一構成例を示す回路図である。
図5において、コイルL1及びコイルL2は夫々、前述した第1コイル1及び第2コイル2に該当する。また、マイクロコンピュータU1は、前述した電子チップ4に相当する。
【0032】
コイルL1の一端は、マイクロコンピュータU1の第6端子に接続され、コイルL2の一端は、マイクロコンピュータU1の第3端子に接続されている。コイルL1の他端及びコイルL2の他端はコンデンサC1を介してトランジスタQ1のベースに接続されている。トランジスタQ1のベース、コレクタ間には抵抗R2が設けられ、トランジスタQ1のベース、エミッタ間にはコンデンサC2が設けられている。トランジスタQ1のコレクタは、マイクロコンピュータU1の第2端子に接続されているとともに、抵抗R3を介して接地されている。
【0033】
マイクロコンピュータU1の第1端子には、電源電圧Vddの入力端子が接続されている。電源電圧Vddの入力端子は、抵抗R1を介してトランジスタQ1のエミッタに接続されている。抵抗R1とトランジスタQ1のエミッタとの間にはコンデンサC3の一端が接続され、コンデンサC3の他端は接地されている。電源電圧Vddの入力端子と前記第1端子との間にはコンデンサC6の一端が接続され、コンデンサC6の他端は接地されている。マイクロコンピュータU1の第8端子には、接地用の端子が接続されている。
【0034】
マイクロコンピュータU1の第7端子には、抵抗R4を介して、透磁率に相当する検出電圧Voutを出力する出力端子が接続されている。該出力端子と抵抗R4との間にはコンデンサC7の一端が接続され、コンデンサC7の他端は接地されている。マイクロコンピュータU1の第5端子には、抵抗R6を介して、オフセット制御を行うための制御電圧Vcontを入力する入力端子が接続されている。マイクロコンピュータU1の第5端子と抵抗R6との間にはコンデンサC4の一端が接続され、コンデンサC4の他端は接地されている。
【0035】
コイルL1、2個のコンデンサC2及びC3並びにトランジスタQ1にて、前述した第1発振回路6(コルピッツ発振回路)が構成され、コイルL2、2個のコンデンサC2及びC3並びにトランジスタQ1にて、前述した第2発振回路7(コルピッツ発振回路)が構成されている。そして、マイクロコンピュータU1の切り替え動作(マイクロコンピュータU1の第3端子及び第6端子で切り替え動作を行っている)により、第1発振回路6と第2発振回路7とが所定時間ずつ交互に発振するようになっている。
【0036】
次に、本発明の透磁率センサ20の動作について説明する。
図6は、本発明の透磁率センサ20の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0037】
第1発振回路6と第2発振回路7とを、交互に所定時間ずつ発振させ、夫々の発振における発振周波数を計測部41にて計測する。所定時間は、例えば2msである。この際、
図6に示すように、第1発振回路6を発振させてその発振周波数を計測する期間では第2発振回路7を発振させず、また、第2発振回路7を発振させてその発振周波数を計測する期間では第1発振回路6を発振させない。よって、互いに発振の影響を受けることなく、発振周波数を計測するので、その計測値は精度が高い。
【0038】
所定時間(例えば2ms)ずつの発振周波数の計測を終了すると、第1発振回路6における(第1コイル1に由来する)計測された発振周波数と、第2発振回路7における(第2コイル2に由来する)計測された発振周波数との差分を、算出部42にて算出する。そして、変換部43により、算出した差分を透磁率に変換し、透磁率の変化量を求める。現像ユニットに取り付けられた透磁率センサ(トナーセンサ)20では、トナーの濃度を検出する。
【0039】
また、第1発振回路6を発振させて、その発振周波数を計測する期間では、それ以前の第1発振回路6と第2発振回路7の計測値(例えばA′とB′)の差分を、算出部42にて算出し、変換部43により、算出した差分を透磁率に変換し、透磁率の変化量を求めるので、各発振回路の発振周波数の計測開始のタイミングで透磁率の変化量の更新が順次行われる。
【0040】
本発明において下記のような利点があげられる。使用されるトナーの種類によっては、トナー濃度の制御範囲が変わる場合がある。この場合、例えばマイクロコンピュータU1の未使用端子を利用して、この未使用端子の電圧レベルを外部から制御することで、トナー濃度の制御範囲を、使用するトナーに適切な範囲になるように調節するオフセット機能を与えることができる。
【0041】
また近年は、電子写真方式によっては高画質を得るためにトナー自体の粒径も小さくなる傾向にある。また、不要なトナーの量を極力減らして低コスト、軽量化の傾向にあり、結果として検出できる透磁率の変化が小さくなる傾向にある。小さくなった透磁率の変化を正確に検知するためには小さい透磁率の変化を大きくするために増幅等の方法で測定感度を大きくする必要がある。この場合、透磁率の変化に直線性がなくなり、正確な透磁率の測定ができないことがある。本発明によれば、線形補正等のソフトウェアを利用した方法を用いることにより、悪くなった直線性を改善することが可能になり、透磁率の変化を正確に把握できることが可能になる。
【0042】
なお、
図5には一例として端子を8個有するマイクロコンピュータを記載したが、この構成に限定されるものではない。必要な場合には異なる端子数のマイクロコンピュータを使用し透磁率の変化などの情報をシリアル通信などの手段で、上位の制御側に伝達し、また上位側からの制御信号を受けることも可能である。
【0043】
以下、上述したような手順により、透磁率を検出できる(トナー濃度を検出できる)原理を説明する。
【0044】
被検出物の透磁率が大きくなった場合、被検出物の近傍に配されたコイルのインダクタンスは、この透磁率の変動に応じて増加する。この結果、そのコイルを含む発振回路の発振周波数は低下する。ここで、被検出物からの距離を異ならせて2個のコイルを配置している場合、何れのコイルもインダクタンスが増加して、何れの発振回路も発振周波数は低下する。但し、被検出物に近い方のコイルは、遠い方のコイルに比べて、透磁率の変化の影響を強く受けるので、上記の場合、インダクタンスの増加量が大きくなり、発振周波数の低下量も大きくなる。よって、2個のコイル夫々を含む2つの発振回路における発振周波数には、透磁率の変化の程度に応じた分の差異が生じることになる。このように、両発振周波数の差分と透磁率との間には相関関係が存在するので、本発明では、両発振回路の発振周波数の差分に基づいて被検出物の透磁率を検出することが可能である。
【0045】
前述した実施の形態における透磁率センサ20では、第1コイル1が上記の被検出物に近い方のコイルに該当し、第2コイル2が上記の被検出物に遠い方のコイルに該当する。
【0046】
現像ユニット内の現像剤は、トナーと磁性体(鉄粉)とを混合させたものである。複写の際には、用紙にトナーが付着されて磁性体はほとんど付着されない。よって、複写処理が進むにつれて、トナーの量は減少していくが磁性体の量はほとんど変化しないので、現像剤の透磁率は増加する。よって、現像ユニット内の透磁率とトナーの濃度とには、反比例的な相関関係が存在する。本発明では、上述したように被検出物(現像剤)の透磁率を検出できるので、検出した現像ユニット内の現像剤の透磁率に基づきトナーの濃度を検出できる。
【0047】
上述した実施の形態では、同軸状に基板10に配した2個のコイル(第1コイル1及び第2コイル2)のインダクタンスの変化を、マイクロコンピュータ(電子チップ4)に内蔵された発振器の正確なクロック信号で駆動される2つの発振回路(第1発振回路6及び第2発振回路7)における発振周波数の差分として検出し、その差分(発振周波数の変化量)をマイクロコンピュータにて演算処理して透磁率の変化を検出している。ここで、2個のコイル夫々を交互に発振回路に接続させて、夫々所定時間にわたって交互にマイクロコンピュータにて発振周波数を計測し、その差分を算出して透磁率の変化を検出している。
【0048】
本実施の形態では、第1コイル1及び第2コイル2を基板10の上下面に同軸状に配しているので、コイルの配置に必要な面積を低減でき、水平方向での狭小化を図れる。また、基板10に導体パターンを印刷してコイルを形成するようにしたので、高さ方向における低背化を図れる。さらに、マイクロコンピュータを用いて各種の処理を行うようにしたので、部品点数を低減できて、回路部品を実装する面積は少なくて済む。以上のことから、透磁率センサの大幅な小型化を実現できる。
【0049】
2つの発振回路における発振周波数の計測を交互に行うようにしているので、一方のコイルを含む発振回路の計測が他方のコイルで発生する磁束(他方のコイルでのインダクタンス変化)の影響を受けないため、正確な発振周波数を計測することができ、この結果、高い精度にて透磁率を検出することが可能である。
【0050】
本実施の形態では、2つの発振回路を構成するトランジスタとコンデンサを共通とし、コイルを発振回路それぞれに配置したので、部品の数を少なくすることができて、コストダウンがはかれる。又部品数が少ないため部品特性のばらつきを低減でき、さらに温度変化、ノイズといった外乱の影響を受け難く、正確な測定が可能となる。
【0051】
マイクロコンピュータを用いてソフトウェアにより種々の処理を行うようにしたので、ハードウェアとしての回路部品の点数を減少できて、回路部品における特性のばらつきの影響を受けることが少なくなる。また、ソフトウェアにて処理するので、環境(温度、湿度など)の影響を受けにくくなる。よって、検出される透磁率の精度を高めることができる。
【0052】
また、設定されるトナーの濃度が異なる場合にあっても、ソフトウェアの内容を変更するのみで簡単に対応できる。よって、トナー濃度の異なる設定値ごとの管理が不要であるため、大量生産が容易となって、低コスト化を図ることができる。
【0053】
次に、本発明例と従来例との特性(トナー濃度の検出)の比較について説明する。本発明例の透磁率センサ(トナーセンサ)は、前述した
図1及び
図2に示した構成を有し、前述した
図3に示すように現像ユニットに取り付けられている。
【0054】
図7は、従来例の透磁率センサの現像ユニットへの取り付け例を示す断面図である。
図7において、
図3と同一または同様な部分には同一番号を付している。
【0055】
基板10の一端部の上面側には差動トランス51が設けられている。差動トランス51は、交流の発振信号が印加される駆動コイル、並びに駆動コイルに結合した差動コイル(基準コイル及び検知コイル)から構成されている。隔壁30には、差動トランス51に対向する位置に孔33が形成されており、孔33から差動トランス51の一部(検知コイル側)が突出し、検知コイルが現像ユニット内の現像剤に直接触れるようになっている。基板10の他端部の下面には、他端から一部を突出させてコネクタ3が形成されており、基板10の中央部の下面には、各種の回路部品5が実装されている。このような構成をなす透磁率センサが、ケース21に収納された状態で隔壁30の凹部31に取り付けられている。
【0056】
従来例の透磁率センサでは、差動トランス51が突出しているため、ケース21の形状が複雑になるという不都合があるとともに、本発明例と比べて構成が大型である。また、隔壁30に孔33が形成されているため、現像剤が漏れる虞がある。
【0057】
図8は、本発明例と従来例とにおけるトナー濃度の検出感度特性を示すグラフである。
図8において、横軸はトナー濃度を表し、縦軸は透磁率の検出結果としての出力電圧を表している。また、
図8中の(a)、(b)は夫々、本発明例、従来例の特性を示している。
【0058】
本発明例と従来例とを比較した場合、本発明例では、トナー濃度の変化に対して出力電圧がリニアに変動していく部分が従来例に比べて広くなっている。よって、本発明例の検出精度は、従来例の検出精度より優れていることが分かる。
【0059】
図9は、本発明例と従来例とにおけるオフセット制御を行うための制御電圧特性を示すグラフである。
図9において、横軸は印加する制御電圧を表し、縦軸は出力電圧を表している。また、
図9中の(a)、(b)は夫々、本発明例、従来例の特性を示している。
【0060】
本発明例と従来例とを比較した場合、従来例では制御電圧の変化に対して出力電圧が一部でしかリニアに変動していないのに対して、本発明例では、制御電圧の変化に対して出力電圧が全体にわたってリニアに変動している。よって、本発明例におけるオフセット制御の精度は、従来例の精度より優れていることが分かる。
【0061】
ところで、上述した実施の形態では、ケース21内に収納した状態で透磁率センサ20を現像ユニットに取り付けることとしたが、本発明では現像剤が漏れる虞がないため、ケース21は必ずしも設けなくて良い。このような場合には、基板10の複数箇所に切欠きを形成し、この切欠きに現像ユニットの爪を引っ掛けて透磁率センサ20を現像ユニットに取り付けるか、または、両面テープにより基板10及び隔壁30を接着させて透磁率センサ20を現像ユニットに取り付けるようにすれば良い。
【0062】
上述した実施の形態では、基板10の上面及び下面に夫々導体パターンを印刷して、第1コイル1及び第2コイル2を同軸状に形成するようにしたが、第1コイル1及び第2コイル2の形成手法は、これに限らず、他の手法であっても良い。以下、これらの他の手法について変形例として説明する。
【0063】
(第1変形例)
図10は、第1変形例におけるコイルの構成を示す斜視図である。
図10において、
図1及び
図2と同一または同様な部材には同一番号を付している。なお、
図10では、基板10の上下面を
図1と逆にして図示している。第1変形例では、基板10の下面に、例えば銅箔のパターン印刷により、第1コイル1と第2コイル2とを同心円状に形成している。基板10の上面には、コイルは形成されておらず、上述した実施の形態と同様な電子チップ4、回路部品5及びコネクタ3が実装されている。
【0064】
(第2変形例)
図11は、第2変形例における透磁率センサの構成を示す断面図である。
図11において、
図1及び
図2と同一または同様な部材には同一番号を付している。第2変形例では、基板10の下面に、例えば銅箔のパターン印刷により、第1コイル1と第2コイル2とを、絶縁層を挟んで同軸状に積層させて形成している。また、基板10の上面には、コイルは形成されておらず、上述した実施の形態と同様な電子チップ4、回路部品5及びコネクタ3が実装されている。第1コイル1及び第2コイル2は、電子チップ4及び回路部品5の実装位置の直下に形成されている。よって、透磁率センサの構成の更なる小型化を図ることができる。なお、
図11に示す構成とは異なり、上記第1変形例に述べたような同心円状の第1コイル1及び第2コイル2を、電子チップ4及び回路部品5の実装位置の直下に形成するようにしても良い。
【0065】
(第3変形例)
図12は、第3変形例における透磁率センサの構成を示す断面図である。
図12において、
図1及び
図2と同一または同様な部材には同一番号を付している。第3変形例では、基板10の一端部の下面に、別部品の空心コイルを実装して第1コイル1を形成し、基板10の一端部の上面に、第1コイル1と同軸をなして、別部品の空心コイルを実装して第2コイル2を形成している。基板10の上面の残りの領域には、上述した実施の形態と同様な電子チップ4、回路部品5及びコネクタ3が実装されている。
【0066】
(第4変形例)
図13は、第4変形例における透磁率センサの構成を示す断面図である。
図13において、
図1及び
図2と同一または同様な部材には同一番号を付している。第4変形例では、基板10の一端部の上面に、別部品の2個の空心コイルを積層実装して第1コイル1及び第2コイル2を形成している。基板10の上面の残りの領域には、上述した実施の形態と同様な電子チップ4、回路部品5及びコネクタ3が実装されている。なお、
図13に示す構成とは異なり、基板10の下面に、上記のような2個の空心コイルの積層構成をなす第1コイル1及び第2コイル2を形成するようにしても良い。
【0067】
(第5変形例)
図14は、第5変形例における透磁率センサの構成を示す断面図である。
図14において、
図1及び
図2と同一または同様な部材には同一番号を付している。第5変形例では、基板10の一端部の下面に、複数のチップコイルを実装して第1コイル1を形成し、基板10の一端部の上面に、第1コイル1と同軸をなして、複数のチップコイルを実装して第2コイル2を形成している。基板10の上面の残りの領域には、上述した実施の形態と同様な電子チップ4、回路部品5及びコネクタ3が実装されている。
【0068】
本発明においては、第1コイル及び第2コイルを静電シールドで覆ってもよい。本発明に記載のコイルは空芯コイルを使用しており、コイル近傍に誘電率の近いものがあると静電容量の変化により測定値がばらつく場合がある。このような場合にはコイルを銅等からなるシールド部材で覆うことで、外部からの影響を抑えることができる。但し、本発明の透磁率センサの場合には、透磁率の変化、即ち、磁力線の変化によりシールド部材に渦電流が発生し、この渦電流により透磁率センサに測定誤差が生じることが考えられる。よって、渦電流への対策を考慮したシールド部材を設けることが必要である。
【0069】
図15A−Cは、本発明の透磁率センサに適したシールド部材の構成を示す平面図である。
図15Aに示す例では、複数の櫛歯を同一方向に延設させた形状をなす銅製のシールド部材61を、基板10に形成したコイル60の上方に設けている。シールド部材61は接地している。また、
図15Bに示す例では、複数の櫛歯を交互に逆方向きに延設させた形状をなす銅製のシールド部材62を、基板10に形成したコイル60の上方に設けている。シールド部材62は接地している。このような構成のシールド部材を設けることにより、渦電流を低減できる。
【0070】
図15Cは、環状のシールド部材を示している。銅製のリングの一部を欠損してC字状にしたシールド部材63が、基板10に形成したコイル60の外周側に設けられている。シールド部材63は接地している。シールド部材63を設けることにより、渦電流を低減することが可能である。この
図15Cの例では、コイル60と同一平面にシールド部材63を設けるため、透磁率センサの薄肉化を図れる、但し、
図15A,Bに示すようなコイル60を上から覆う形態に比べて、シールド効果は小さい。
【0071】
なお、上記のようなシールド部材は、基板10の両面側に設けても良く、現像ユニットとは反対側の面にのみ設けても良い、また、上述したようにシールド部材は接地することが好ましいが、接地していなくても効果は得られる。
【0072】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。