(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、比重は、温度によって変化するため、本明細書においては20℃で換算した比重と定義する。
【0021】
<鉛蓄電池>
本実施形態に係る鉛蓄電池は、例えば、電槽、電極(電極板等)、電解液(硫酸等)及びセパレータを備えている。電極及び電解液は、電槽内に収容されている。電極は、セパレータを介して対向する正極(正極板等)及び負極(負極板等)を有している。本実施形態に係る鉛蓄電池としては、液式鉛蓄電池、制御弁式鉛蓄電池等が挙げられ、液式鉛蓄電池が好ましい。
【0022】
正極及び負極は、例えば、セパレータを介して積層されることにより電極群(極板群等)を構成している。正極は、集電体(正極集電体)と、当該集電体に保持された正極材と、を有している。負極は、集電体(負極集電体)と、当該集電体に保持された負極材と、を有している。本実施形態において正極材及び負極材は、例えば、化成後の電極材である。電極材が未化成である場合、電極材(未化成正極材及び未化成負極材)は、その原料等を含有している。集電体は、電極材からの電流の導電路を構成する。鉛蓄電池の基本構成としては、従来の鉛蓄電池と同様の構成を用いることができる。
【0023】
図1(a)は、セパレータを示す正面図であり、
図1(b)は、セパレータの断面図である。
図2は、セパレータ及び電極の断面図である。
図1に示すように、セパレータ10は、平板状のベース部11と、凸状(例えば線状)の複数のリブ12と、ミニリブ13とを備えている。ベース部11は、リブ12及びミニリブ13を支持している。リブ12は、セパレータ10の一方面10aにおいて互いに略平行に配置されている。リブ12の間隔は、例えば3〜15mmである。リブ12の高さ方向の一端はベース部11に一体化して接続されており、リブ12の高さ方向の他端は、正極及び負極のうちの一方の電極14aに接している(
図2参照)。ベース部11は、リブ12の高さ方向において電極14aと対向している。セパレータ10の他方面10bにはリブは配置されておらず、セパレータ10の他方面10bは、正極及び負極のうちの他方の電極14b(
図2参照)と対向又は接している。
【0024】
ミニリブ13は、セパレータ10の幅方向における両側において、セパレータ10の長手方向に延びるように多数本形成されている。ミニリブ13は、鉛蓄電池が横方向に振動した際に、電極の角がセパレータを突き破って短絡することを防止するためにセパレータ強度を向上させる機能を有する。なお、ミニリブ13の高さ、幅、間隔は、何れもリブ12よりも小さいことが好ましい。また、ミニリブ13の断面形状は、リブ12と同一であってもよく、異なっていてもよい。ミニリブ13の断面形状は、半円型であることが好ましい。また、ミニリブ13は形成されていなくてもよい。
【0025】
図3は、袋セパレータ20と袋セパレータ20に収容される電極(例えば負極)14を入れる状態を示す図である。
図1(a)に示すように、袋セパレータ20の作製に用いるセパレータ10は、例えば、長尺のシート状に形成されている。袋セパレータ20は、セパレータ10を適切な長さに切断し、セパレータ10の長手方向に二つ折りにしてその内側に電極14を配置して重ね合せ、両側部をメカニカルシール、圧着又は熱溶着する(例えば、
図3の符号22はメカニカルシール部)。これにより、
図3に示す袋セパレータ20が得られる。
【0026】
ベース部11の厚みTの上限は、優れた充電受け入れ性及び放電特性を得る観点から、0.25mm以下である。厚みTが0.25mmを超えると、充電受け入れ性及び放電特性が低下する傾向がある。ベース部11の厚みTの上限は、更に優れた充電受け入れ性及び放電特性を得る観点から、0.2mm以下が好ましく、0.15mm以下がより好ましい。ベース部11の厚みTの下限は、特に制限はないが、短絡を抑制しやすい観点から、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。
【0027】
リブ12の高さ(ベース部11及び電極14の対向方向の高さ)Hの上限は、更に優れた充電受け入れ性を得る観点から、1.25mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましく、0.75mm以下が更に好ましい。リブ12の高さHの下限は、正極での酸化劣化を抑制する観点から、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、0.5mm以上が更に好ましい。
【0028】
ベース部11の厚みTに対するリブ12の高さHの比率H/Tの下限は、セパレータの耐酸化性に優れる観点から、2以上である。比率H/Tが2以上であると、電極(例えば正極)と接触しない部分を充分に確保できるため、セパレータの耐酸化性が向上すると推測される。
比率H/Tの下限は、セパレータの耐酸化性及び生産性に更に優れる観点から、2.4以上が好ましく、3以上がより好ましい。比率H/Tの上限は、リブの形状保持性に優れる観点、及び、短絡を抑制する観点から、6以下である。比率H/Tが6以下であると、正負極間の距離が充分であることから短絡が抑制されると推測される。また、比率H/Tが6以下であると、鉛蓄電池を組み立てた際にリブが破損することなく、充電受け入れ性等の電池特性が良好に維持されると推測される。比率H/Tの上限は、短絡を抑制しやすい観点、及び、リブの形状保持性に更に優れる観点から、5以下が好ましく、4.5以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。
【0029】
また、リブ12の上底幅B(
図1(b)参照)は、リブの形状保持性及び耐酸化性に優れる観点から、0.1〜2mmが好ましく、0.2〜1mmがより好ましく、0.2〜0.8mmが更に好ましい。リブの下底幅Aは、リブの形状保持性に優れる観点から、0.2〜4mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましく、0.4〜1mmが更に好ましい。上底幅Bと下底幅Aの比率(B/A)は、リブの形状保持性に優れる観点から、0.1〜1が好ましく、0.2〜0.8がより好ましく、0.3〜0.6が更に好ましい。
【0030】
前記セパレータは、正極及び負極の少なくとも一方の電極を包む袋状であることが好ましい。例えば、正極及び負極のうちの一方が袋状のセパレータに収容され、且つ、正極及び負極のうちの他方と交互に積層されている態様が好ましい。例えば、袋状のセパレータを正極に適用した場合、正極集電体の伸びによりセパレータを貫通する可能性があることから、負極が袋状のセパレータに収容されていることが好ましい。
【0031】
鉛蓄電池(液式鉛蓄電池等)に用いるセパレータとしては、正極と負極との電気的な接続を阻止し、且つ、電解液の硫酸イオンを透過させるものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、微多孔性合成樹脂シート、ガラス繊維と耐酸紙を貼りあわせたもの等が挙げられる。微多孔性合成樹脂シート製のセパレータは、ポリオレフィン(ポリエチレン等)を含むことが好ましい。セパレータは、電極(極板等)を積層する工程の際に負極(負極板等)の長さに伴い、切断、2つに折られ、セパレータの両サイドを圧着することで負極を包み込む形であることが好ましい。
【0032】
電解液は、短絡を抑制する観点から、アルミニウムイオンを含む。電解液がアルミニウムイオンを含むことにより、アルミニウムがセパレータの表層部に析出することで、鉛の析出を抑制することから短絡を抑制することができると推測される。
【0033】
(正極材)
[正極活物質]
正極材は、正極活物質を含有している。正極活物質は、正極活物質の原料を含む正極材ペーストを熟成及び乾燥することにより未化成活物質を得た後に化成することで得ることができる。化成後の正極活物質は、β−二酸化鉛(β−PbO
2)を含むことが好ましく、α−二酸化鉛(α−PbO
2)を更に含んでいてもよい。
正極活物質の原料としては、特に制限はなく、例えば鉛粉が挙げられる。鉛粉としては、例えば、ボールミル式鉛粉製造機又はバートンポット式鉛粉製造機によって製造される鉛粉(ボールミル式鉛粉製造機においては、主成分PbOの粉体と鱗片状金属鉛の混合物)が挙げられる。正極活物質の原料として鉛丹(Pb
3O
4)を用いてもよい。未化成の正極材は、主成分として、三塩基性硫酸鉛を含む未化成の正極活物質を含有することが好ましい。
【0034】
正極活物質の平均粒径は、充電受け入れ性及びサイクル特性が更に向上する観点から、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.7μm以上が更に好ましい。正極活物質の平均粒径は、サイクル特性が更に向上する観点から、2.5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1.5μm以下が更に好ましい。正極活物質の前記平均粒径は、化成後の正極材における正極活物質の平均粒径である。正極活物質の平均粒径は、例えば、化成後の正極中央部の正極材における縦10μm×横10μmの範囲の走査型電子顕微鏡写真(1000倍)の画像内における活物質粒子の長辺長さ(最大粒径)の値を算術平均化した数値として得ることができる。
【0035】
正極活物質の含有量は、電池特性(容量、低温高率放電性能、充電受け入れ性、サイクル特性等)に更に優れる観点から、正極材の全質量を基準として、95質量%以上が好ましく、97質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。
【0036】
[正極添加剤]
正極材は、添加剤を更に含有していてもよい。添加剤としては、炭素材料(炭素質導電材)、補強用短繊維等が挙げられる。炭素材料としては、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック(ケッチェンブラック等)、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が挙げられる。補強用短繊維としては、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、炭素繊維等が挙げられる。
【0037】
[正極材の物性]
正極材の比表面積の下限は、充電受け入れ性に更に優れる観点から、3m
2/g以上が好ましく、4m
2/g以上がより好ましく、5m
2/g以上が更に好ましい。正極材の比表面積の上限は、特に制限はないが、実用的な観点及び利用率に優れる観点から、15m
2/g以下が好ましく、13m
2/g以下がより好ましく、12m
2/g以下が更に好ましい。正極材の前記比表面積は、化成後の正極材の比表面積である。正極材の比表面積は、例えば、正極材ペーストを作製する際の硫酸及び水の添加量を調整する方法、未化成活物質の段階で活物質を微細化させる方法、化成条件を変化させる方法等により調整することができる。
【0038】
正極材の比表面積は、例えば、BET法で測定することができる。BET法は、一つの分子の大きさが既知の不活性ガス(例えば窒素ガス)を測定試料の表面に吸着させ、その吸着量と不活性ガスの占有面積とから表面積を求める方法であり、比表面積の一般的な測定手法である。具体的には、以下のBET式に基づいて測定する。
【0039】
下記式(1)の関係式は、P/P
oが0.05〜0.35の範囲でよく成立する。なお、式(1)中、各符号の詳細は下記のとおりである。
P:一定温度で吸着平衡状態であるときの吸着平衡圧
P
o:吸着温度における飽和蒸気圧
V:吸着平衡圧Pにおける吸着量
V
m:単分子層吸着量(気体分子が固体表面で単分子層を形成したときの吸着量)
C:BET定数(固体表面と吸着物質との間の相互作用に関するパラメータ)
【0041】
式(1)を変形する(左辺の分子分母をPで割る)ことにより下記式(2)が得られる。測定に用いる比表面積計では、吸着占有面積が既知のガス分子を試料に吸着させ、その吸着量(V)と相対圧力(P/P
o)との関係を測定する。測定したVとP/P
oより、式(2)の左辺とP/P
oをプロットする。ここで、勾配がsであるとすると、式(2)より下記式(3)が導かれる。切片がiであるとすると、切片i及び勾配sは、それぞれ下記式(4)及び下記式(5)のとおりとなる。
【0046】
式(4)及び式(5)を変形すると、それぞれ下記式(6)及び式(7)が得られ、単分子層吸着量V
mを求める下記式(8)が得られる。すなわち、ある相対圧力P/P
oにおける吸着量Vを数点測定し、プロットの勾配及び切片を求めると、単分子層吸着量V
mが求まる。
【0050】
試料の全表面積S
total(m
2)は、下記式(9)で求められ、比表面積S(m
2/g)は、全表面積S
totalより下記式(10)で求められる。なお、式(9)中、Nは、アボガドロ数を示し、A
CSは、吸着断面積(m
2)を示し、Mは、分子量を示す。また、式(10)中、wは、サンプル量(g)を示す。
【0053】
正極材の多孔度は、正極材中の孔に硫酸が入り込む領域が多くなり容量が増加しやすい観点から、50%以上が好ましく、55%以上がより好ましい。正極材の多孔度の上限に特に制限はないが、正極材中の空孔部への硫酸含浸量が適度あり、活物質同士の結合力を良好に維持できる観点から、70%以下が好ましい。多孔度の上限は、実用的な観点から、60%以下がより好ましい。正極材の前記多孔度は、化成後の正極材の多孔度である。なお、正極材の多孔度は、例えば、水銀ポロシメーター測定から得られる値(体積基準の割合)である。正極材の多孔度は、例えば、正極材ペーストを作製する際に加える希硫酸量によって調整することができる。
【0054】
(負極材)
[負極活物質]
負極活物質は、負極活物質の原料を含む負極材ペーストを熟成及び乾燥することにより未化成活物質を得た後に化成することで得ることができる。化成後の負極活物質としては、海綿状鉛(Spongylead)等が挙げられる。前記海綿状鉛は、電解液中の硫酸と反応して、次第に硫酸鉛(PbSO
4)に変わる傾向がある。負極活物質の原料としては、鉛粉等が挙げられる。鉛粉としては、例えば、ボールミル式鉛粉製造機又はバートンポット式鉛粉製造機によって製造される鉛粉(ボールミル式鉛粉製造機においては、主成分PbOの粉体と鱗片状金属鉛の混合物)が挙げられる。未化成の負極活物質は、例えば、塩基性硫酸鉛及び金属鉛、並びに、低級酸化物から構成される。
【0055】
負極活物質の平均粒径は、充電受け入れ性及びサイクル特性が更に向上する観点から、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.7μm以上が更に好ましい。負極活物質の平均粒径は、サイクル特性が更に向上する観点から、2.5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1.5μm以下が更に好ましい。負極活物質の前記平均粒径は、化成後の負極材における負極活物質の平均粒径である。負極活物質の平均粒径は、例えば、化成後の負極中央部の負極材における縦10μm×横10μmの範囲の走査型電子顕微鏡写真(1000倍)の画像内における活物質粒子の長辺長さ(最大粒径)の値を算術平均化した数値として得ることができる。
【0056】
負極活物質の含有量は、電池特性(容量、低温高率放電性能、充電受け入れ性、サイクル特性等)に更に優れる観点から、負極材の全質量を基準として、93質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましい。
【0057】
[負極添加剤]
負極材は、添加剤を更に含有していてもよい。添加剤としては、スルホン基(スルホン酸基、スルホ基)及びスルホン酸塩基(スルホン基の水素がアルカリ金属で置換された基等)からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する樹脂(スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂);硫酸バリウム;炭素材料(炭素質導電材);補強用短繊維等が挙げられる。スルホン基及びスルホン酸塩基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する樹脂を負極材が含むことにより、充電受け入れ性を更に向上させることができる。
【0058】
スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂としては、ビスフェノール系樹脂、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸塩等が挙げられる。リグニンスルホン酸は、リグニンの分解物の一部がスルホン化された化合物である。リグニンスルホン酸塩としては、例えば、リグニンスルホン酸カリウム及びリグニンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。これらの中でも、充電受入性が更に向上する観点から、ビスフェノール系樹脂が好ましい。
【0059】
ビスフェノール系樹脂は、ビスフェノール系化合物と、アミノアルキルスルホン酸、アミノアルキルスルホン酸誘導体、アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させて得られる樹脂であることが好ましい。
【0060】
ビスフェノール系化合物は、2個のヒドロキシフェニル基を有する化合物である。ビスフェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(以下、「ビスフェノールS」という)等が挙げられる。
【0061】
アミノアルキルスルホン酸としては、アミノメタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、2−メチルアミノエタンスルホン酸等が挙げられる。アミノアルキルスルホン酸誘導体としては、アミノアルキルスルホン酸の水素原子がアルキル基(例えば炭素数1〜5のアルキル基)等で置換された化合物、及び、アミノアルキルスルホン酸のスルホン基(−SO
3H)の水素原子がアルカリ金属(例えばナトリウム又はカリウム)で置換されたアルカリ金属塩などが挙げられる。アミノアリールスルホン酸としては、アミノベンゼンスルホン(4−アミノベンゼンスルホン酸等)、アミノナフタレンスルホンなどが挙げられる。アミノアリールスルホン酸誘導体としては、アミノアリールスルホン酸の水素原子がアルキル基(例えば炭素数1〜5のアルキル基)等で置換された化合物、アミノアリールスルホン酸のスルホン基(−SO
3H)の水素原子がアルカリ金属(例えばナトリウム又はカリウム)で置換されたアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0062】
ホルムアルデヒド誘導体としては、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、トリオキサン等が挙げられる。
【0063】
ビスフェノール系樹脂は、下記式(I)で表される構造単位、及び、下記式(II)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種を有することが好ましい。
【0064】
【化1】
[式(I)中、X
1は、2価の基を示し、A
1は、炭素数1〜4のアルキレン基、又は、アリーレン基を示し、R
11は、アルカリ金属又は水素原子を示し、R
12は、メチロール基(−CH
2OH)を示し、R
13及びR
14は、それぞれ独立にアルカリ金属又は水素原子を示し、n11は、1〜600の整数を示し、n12は、1〜3の整数を示し、n13は、0又は1を示す。]
【0065】
【化2】
[式(II)中、X
2は、2価の基を示し、A
2は、炭素数1〜4のアルキレン基、又は、アリーレン基を示し、R
21は、アルカリ金属又は水素原子を示し、R
22は、メチロール基(−CH
2OH)を示し、R
23及びR
24は、それぞれ独立にアルカリ金属又は水素原子を示し、n21は、1〜600の整数を示し、n22は、1〜3の整数を示し、n23は、0又は1を示す。]
【0066】
式(I)で表される構造単位、及び、式(II)で表される構造単位の比率は、特に制限はなく、合成条件等によって変化し得る。ビスフェノール系樹脂としては、式(I)で表される構造単位、及び、式(II)で表される構造単位のいずれか一方のみを有する樹脂を用いてもよい。
【0067】
X
1及びX
2としては、例えば、アルキリデン基(メチリデン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、sec−ブチリデン基等)、シクロアルキリデン基(シクロヘキシリデン基等)、フェニルアルキリデン基(ジフェニルメチリデン基、フェニルエチリデン基等)などの有機基;スルホニル基が挙げられ、充電受け入れ性に更に優れる観点からはイソプロピリデン基(−C(CH
3)
2−)基が好ましく、放電特性に更に優れる観点からはスルホニル基(−SO
2−)が好ましい。X
1及びX
2は、フッ素原子等のハロゲン原子により置換されていてもよい。X
1及びX
2がシクロアルキリデン基である場合、炭化水素環はアルキル基等により置換されていてもよい。
【0068】
A
1及びA
2としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基;フェニレン基、ナフチレン基等の2価のアリーレン基が挙げられる。前記アリーレン基は、アルキル基等により置換されていてもよい。
【0069】
R
11、R
13、R
14、R
21、R
23及びR
24のアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム及びカリウムが挙げられる。n11及びn21は、サイクル特性及び溶媒への溶解性に更に優れる観点から、5〜300が好ましい。n12及びn22は、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、1又は2が好ましく、1がより好ましい。n13及びn23は、製造条件により変化するが、サイクル特性に更に優れると共にビスフェノール系樹脂の保存安定性に優れる観点から、0が好ましい。
【0070】
スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂(ビスフェノール系樹脂等)の重量平均分子量は、スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂が鉛蓄電池において電極から電解液に溶出することを抑制することによりサイクル特性が向上しやすくなる観点から、3000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、20000以上が更に好ましく、30000以上が特に好ましい。スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂の重量平均分子量は、電極活物質に対する吸着性が低下して分散性が低下することを抑制することによりサイクル特性が向上しやすくなる観点から、200000以下が好ましく、150000以下がより好ましく、100000以下が更に好ましい。
【0071】
スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂の重量平均分子量は、例えば、下記条件のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)により測定することができる。
(GPC条件)
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×10
6、5.80×10
5、2.55×10
5、1.46×10
5、1.01×10
5、4.49×10
4、2.70×10
4、2.10×10
4;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×10
2;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×10
2;キシダ化学株式会社製)
【0072】
スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂を用いる場合、スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂の含有量は、更に優れた充電受け入れ性を得る観点から、負極材の全質量を基準として、固形分換算で0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂の含有量は、更に優れた放電特性を得る観点から、負極材の全質量を基準として、固形分換算で2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましい。
【0073】
炭素材料としては、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック(ケッチェンブラック等)、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が挙げられる。補強用短繊維としては、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、炭素繊維等が挙げられる。
【0074】
[負極材の物性]
負極材の比表面積は、電解液と負極活物質との反応性を高める観点から、0.4m
2/g以上が好ましく、0.5m
2/g以上がより好ましく、0.6m
2/g以上が更に好ましい。負極材の比表面積は、サイクル時の負極の収縮を更に抑制する観点から、2m
2/g以下が好ましく、1.8m
2/g以下がより好ましく、1.5m
2/g以下が更に好ましい。負極材の前記比表面積は、化成後の負極材の比表面積である。負極材の比表面積は、例えば、負極材ペーストを作製する際の硫酸及び水の添加量を調整する方法、未化成活物質の段階で活物質を微細化させる方法、化成条件を変化させる方法等により調整することができる。負極材の比表面積は、例えば、BET法で測定することができる。
【0075】
(集電体)
集電体の製法としては、鋳造方式、エキスパンド方式、打ち抜き方式等が挙げられる。集電体の材質としては、例えば、鉛−カルシウム−錫系合金及び鉛−アンチモン系合金が挙げられる。これらにセレン、銀、ビスマス等を微量添加することができる。例えば、これらの材質を前述の製法で格子状又はメッシュ状に形成することにより集電体を得ることができる。正極及び負極の集電体の材質、製法は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0076】
<鉛蓄電池の製造方法>
本実施形態に係る鉛蓄電池の製造方法は、例えば、電極(正極及び負極)を得る電極製造工程と、前記電極を含む構成部材を組み立てて鉛蓄電池を得る組み立て工程とを備えている。
【0077】
電極製造工程では、例えば、電極材ペースト(正極材ペースト及び負極材ペースト)を集電体(例えば、鋳造格子体、エキスパンド格子体等の集電体)に充填した後に、熟成及び乾燥を行うことにより未化成の電極を得る。正極材ペーストは、例えば、正極活物質の原料(鉛粉等)を含有しており、他の添加剤を更に含有していてもよい。負極材ペーストは、負極活物質の原料(鉛粉等)を含有しており、分散剤として、スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂(ビスフェノール系樹脂等)を含有していることが好ましく、他の添加剤を更に含有していてもよい。
【0078】
正極材を得るための正極材ペーストは、例えば、下記の方法により得ることができる。正極材ペーストを作製するに際しては、化成時間を短縮できる観点から、正極活物質の原料として鉛丹(Pb
3O
4)を用いてもよい。
【0079】
まず、正極活物質の原料に添加剤(補強用短繊維等)を添加して乾式混合することにより混合物を得る。そして、この混合物に硫酸(希硫酸等)及び溶媒(イオン交換水等の水、有機溶媒など)を加えて混練することにより正極材ペーストが得られる。
【0080】
正極材ペーストを集電体(例えば、鋳造格子体、エキスパンド格子体等の集電体)に充填した後に熟成及び乾燥を行うことにより未化成の正極を得ることができる。
【0081】
正極材ペーストにおいて補強用短繊維を用いる場合、補強用短繊維の配合量は、正極活物質の原料(鉛粉等)の全質量を基準として、0.005〜0.3質量%が好ましく、0.05〜0.3質量%がより好ましい。
【0082】
未化成の正極を得るための熟成条件としては、温度35〜85℃、湿度50〜98RH%の雰囲気で15〜60時間が好ましい。乾燥条件は、温度45〜80℃で15〜30時間が好ましい。
【0083】
負極材ペーストは、例えば、下記の方法により得ることができる。まず、負極活物質の原料に添加剤(スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂、補強用短繊維、硫酸バリウム等)を添加して乾式混合することにより混合物を得る。そして、この混合物に硫酸(希硫酸等)及び溶媒(イオン交換水等の水、有機溶媒など)を加えて混練することにより負極材ペーストが得られる。この負極材ペーストを集電体に充填した後に熟成及び乾燥を行うことにより未化成の負極を得ることができる。
【0084】
負極材ペーストにおいて、スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂(ビスフェノール系樹脂等)、炭素材料、補強用短繊維又は硫酸バリウムを用いる場合、各成分の配合量は下記の範囲が好ましい。スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂の配合量は、負極活物質の原料(鉛粉等)の全質量を基準として、樹脂固形分換算で、0.01〜2.0質量%が好ましく、0.05〜1.0質量%がより好ましく、0.1〜0.5質量%が更に好ましく、0.1〜0.3質量%が特に好ましい。炭素材料の配合量は、負極活物質の原料(鉛粉等)の全質量を基準として、0.1〜3質量%が好ましく、0.2〜1.4質量%がより好ましい。補強用短繊維の配合量は、負極活物質の原料(鉛粉等)の全質量を基準として0.05〜0.3質量%が好ましい。硫酸バリウムの配合量は、負極活物質の原料(鉛粉等)の全質量を基準として、0.01〜2.0質量%が好ましく、0.01〜1.0質量%がより好ましい。
【0085】
未化成の負極を得るための熟成条件としては、温度45〜65℃、相対湿度70〜98RH%の雰囲気で15〜30時間が好ましい。乾燥条件は、温度45〜60℃で15〜30時間が好ましい。
【0086】
組み立て工程では、例えば、前記のように作製した未化成の負極及び未化成の正極を、セパレータを介して交互に積層し、同極性の電極の集電部をストラップで連結(溶接等)させて電極群を得る。この電極群を電槽内に配置して未化成電池を作製する。次に、未化成電池に電解液を注入した後、直流電流を通電して電槽化成する。化成後の電解液の比重を適切な比重に調整して鉛蓄電池が得られる。
【0087】
前記電解液は、例えば、硫酸及びアルミニウムイオンを含有しており、硫酸及び硫酸アルミニウム粉末を混合することにより得ることができる。電解液中に溶解させる硫酸アルミニウムは、無水物又は水和物として添加することができる。
【0088】
電解液(アルミニウムイオンを含む電解液)の化成後の比重は下記の範囲であることが好ましい。電解液の比重は、浸透短絡又は凍結を抑制すると共に放電特性に更に優れる観点から、1.25以上が好ましく、1.26以上がより好ましく、1.27以上が更に好ましく、1.275以上が特に好ましい。電解液の比重は、充電受け入れ性及びサイクル特性が更に向上する観点から、1.33以下が好ましく、1.32以下がより好ましく、1.31以下が更に好ましく、1.30以下が特に好ましい。電解液の比重の値は、例えば、浮式比重計、又は、京都電子工業株式会社製のデジタル比重計によって測定することができる。
【0089】
電解液のアルミニウムイオン濃度は、充電受け入れ性及びサイクル特性が更に向上する観点から、電解液の全量を基準として、0.001mol/L以上が好ましく、0.003mol/L以上がより好ましい。電解液のアルミニウムイオン濃度は、充電受け入れ性及びサイクル特性が更に向上する観点から、電解液の全量を基準として、0.1mol/L以下が好ましく、0.05mol/L以下がより好ましく、0.03mol/L以下が更に好ましい。電解液のアルミニウムイオン濃度は、例えば、ICP発光分光分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)により測定することができる。
【0090】
電解液のアルミニウムイオン濃度が前記所定範囲であることにより充電受け入れ性が向上するメカニズムの詳細については明らかではないが、以下のように推測される。すなわち、アルミニウムイオン濃度が前記所定範囲であると、任意の低SOC下において、放電生成物である結晶性硫酸鉛の電解液中への溶解度が上がるため、又は、アルミニウムイオンの高いイオン伝導性により電解液の電極活物質内部への拡散性が向上するためと推測される。
【0091】
電解液のアルミニウムイオン濃度が前記所定範囲であることによりサイクル特性が向上するメカニズムの詳細については明らかではないが、以下のように推測される。アルミニウムイオンが電解液に含まれる場合、アルミニウムがセパレータ内、特に表層部に析出することで、セパレータ内で鉛の析出が抑制され、かつ析出物が成長しにくいことから、浸透短絡が抑制されると考えられる。
【0092】
電槽は、内部に電極(極板等)を収納可能なものである。電槽は、電極を収納しやすい観点から、上面が開放された箱体と、この箱体の上面を覆う蓋体とを有するものが好ましい。なお、箱体と蓋体との接着には、接着剤、熱溶着、レーザ溶着、超音波溶着等を適宜用いることができる。電槽の形状としては、特に限定されるものではないが、電極(板状体である極板等)の収納時に無効空間が少なくなるように方形のものが好ましい。
【0093】
電槽の材質は、特に制限されるものではないが、電解液(希硫酸等)に対し耐性を有するものである必要がある。電槽の材質の具体例としては、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ABS樹脂等が挙げられる。材質がPPであると、耐酸性、加工性(ABS樹脂では電槽と蓋の熱溶着が困難)、コストの面で有利である。
【0094】
電槽が箱体及び蓋体により構成される場合、箱体及び蓋体の材質は、互いに同一の材質であってもよく、互いに異なる材質であってもよいが、無理な応力が発生しない観点から、熱膨張係数の等しい材質が好ましい。
【0095】
化成条件及び硫酸の比重は電極活物質の性状に応じて調整することができる。また、化成処理は、組み立て工程後に実施されることに限られず、電極製造工程における熟成及び乾燥後に実施されてもよい(タンク化成)。
【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
【0097】
<ビスフェノール系樹脂の合成>
ジムロート、メカニカルスターラー及び温度計を装着した500mLセパラブルフラスコに水酸化ナトリウム4.2質量部(0.105mol)及びイオン交換水79.26質量部(4.4mol)を加えた後、150rpm(=min
−1)で5分間撹拌して水酸化ナトリウム水溶液を調製した。この水酸化ナトリウム水溶液に4−アミノベンゼンスルホン酸17.32質量部(0.1mol)を加えた後、25℃にて30分間撹拌して均一な溶液Aを得た。溶液Aにパラホルムアルデヒド9.09質量部(ホルムアルデヒド換算、0.3mol、三井化学株式会社製)を加えた後に5分間撹拌してパラホルムアルデヒドを溶解し、均一な溶液Bを得た。次いで、溶液BにビスフェノールA21.92質量部(0.096mol)及びビスフェノールS1.04質量部(0.004mol)を加えた後、90℃に設定したオイルバスを用いて加熱しながら10時間撹拌して溶液Cを得た。
【0098】
ビスフェノールA及びビスフェノールSを加えた直後(反応開始時)における溶液のpHを下記の測定条件で測定した結果、pHは8.6であった。
(pH測定条件)
試験機:Twin pH(アズワン株式会社製)
校正液:pH6.86(25℃)、pH4.01(25℃)
測定温度:25℃
測定手順:校正液を用いて2点校正を行った。試験機のセンサ部の洗浄を行った後、測定溶液をスポイトで吸い取り、センサ部に0.1〜0.3mL滴下した。画面上に測定終了の表示が現れたときのpHを測定値とした。
【0099】
上記で作製した溶液Cを耐熱容器に移した。溶液Cが入った耐熱容器を、60℃に設定した真空乾燥機に投入し後、1kPa以下の減圧状態で10時間乾燥することによりビスフェノール系樹脂粉末(ビスフェノール・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物)を得た。ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量を下記条件のGPCにより測定した結果、重量平均分子量は53900であった。
【0100】
{GPC条件}
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×10
6、5.80×10
5、2.55×10
5、1.46×10
5、1.01×10
5、4.49×10
4、2.70×10
4、2.10×10
4;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×10
2;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×10
2;キシダ化学株式会社製)
【0101】
<鉛蓄電池の作製>
(実施例1)
[正極板の作製]
正極活物質の原料として、鉛粉及び鉛丹(Pb
3O
4)を用いた(鉛粉:鉛丹=96:4(質量比))。正極活物質の原料と、正極活物質の原料の全質量を基準として0.07質量%の補強用短繊維(アクリル繊維)と、水とを混合して混練した。続いて、希硫酸(比重1.280)を少量ずつ添加しながら混練して、正極材ペーストを作製した。鉛合金からなる圧延シートにエキスパンド加工を施すことにより作製されたエキスパンド格子体にこの正極材ペーストを充填した。次いで、正極材ペーストを温度50℃、湿度98%の雰囲気で24時間熟成した。その後、乾燥して未化成の正極板を作製した。
【0102】
[負極板の作製]
負極活物質の原料として鉛粉を用いた。表1に示す樹脂(ビスフェノール系樹脂)を0.2質量%(固形分換算)、補強用短繊維(アクリル繊維)を0.1質量%、硫酸バリウムを1.0質量%、炭素材料(ファーネスブラック)を0.2質量%含む混合物を前記鉛粉に添加した後に乾式混合した(前記配合量は、負極活物質の原料の全質量を基準とした配合量である)。次に、水を加えた後に混練した。続いて、希硫酸(比重1.280)を少量ずつ添加しながら混練して、負極材ペーストを作製した。鉛合金からなる圧延シートにエキスパンド加工を施すことにより作製されたエキスパンド格子体にこの負極材ペーストを充填した。次いで、負極材ペーストを温度50℃、湿度98%の雰囲気で24時間熟成した。その後、乾燥して未化成の負極板を作製した。
【0103】
[電池の組み立て]
ポリエチレン製のセパレータ(ベース部の厚みTと、リブの高さHとを表1に示す)を袋状に加工するとともに未化成の負極板を収容した。セパレータの一方面に複数の線状のリブ(リブ間隔:7.35mm。リブの上底幅:0.4mm、リブの下底幅:0.8mm)が形成されており、リブが正極板に接するように配置した。次に、未化成の正極板5枚と、前記袋状セパレータに収容された未化成の負極板6枚とを交互に積層した。続いて、キャストオンストラップ(COS)方式で同極性の極板の耳部同士を溶接して極板群を作製した。極板群を電槽に挿入して2V単セル電池(JIS50301規定のB19サイズの単セルに相当)を組み立てた。アルミニウムイオン濃度が0.004mol/Lになるように硫酸アルミニウム無水物を溶解させた比重1.280の希硫酸をこの電池に注入した。その後、50℃の水槽中で、通電電流10Aで16時間化成して鉛蓄電池を得た。
【0104】
[比表面積の測定]
比表面積の測定試料は、下記の手順により作製した。まず、化成した電池を分解して電極板(正極板及び負極板)を取り出して水洗した後、50℃で24時間乾燥した。次に、前記電極板の中央部から電極材(正極材及び負極材)を2g採取して、130℃で30分乾燥して測定試料を作製した。
【0105】
化成後の正極材及び負極材の比表面積は、前記で作製された測定試料を液体窒素で冷却しながら液体窒素温度で窒素ガス吸着量を多点法で測定し、BET法に従って算出した。測定条件を下記のとおりであった。このようにして測定した結果、正極材の比表面積は5m
2/gであり、負極材の比表面積は0.6m
2/gであった。
【0106】
{比表面積の測定条件}
装置:HM−2201FS(Macsorb社製)
脱気時間:130℃で10分
冷却:液体窒素で4分
吸着ガス流量:25mL/分
【0107】
(実施例2〜10、比較例1〜5)
セパレータの種類(ベース部の厚み、リブの高さ)及びアルミニウムイオン濃度を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の方法により鉛蓄電池を作製した。
【0108】
<電池特性の評価>
前記の鉛蓄電池について、5時間率容量、低温高率放電性能、充電受け入れ性能及び浸透短絡評価を下記のとおり測定した。結果を表1に示す。なお、表1中の「−」は、硫酸アルミニウムを配合しなかったことを意味する。
【0109】
(5時間率容量)
作製した電池を、雰囲気温度25℃、5.6Aで定電流放電し、セル電圧が1.75Vを下回るまでの放電持続時間から5時間率容量を算出した。5時間率容量は、比較例1の測定結果を100として相対評価した。
【0110】
(低温高率放電性能)
作製した電池を、雰囲気温度−15℃、150Aで定電流放電し、セル電圧が1.0Vを下回るまでの放電持続時間を測定した。低温高率放電性能は、比較例1の測定結果を100として相対評価した。
【0111】
(充電受け入れ性能)
作製した電池を、雰囲気温度25℃、5.6Aで30分間定電流放電し、6時間放置した後、100Aの制限電流の下、2.33Vで60秒間の定電圧充電し、充電開始から5秒目の電流値を測定した。充電受け入れ性能は、比較例1の測定結果を100として相対評価した。
【0112】
(浸透短絡評価)
作製した電池を、雰囲気温度25℃、1.4Aで定電流放電し、セル電圧が1.75Vに至るまで放電後、雰囲気温度40℃で、10Wのランプに接続して5日間過放電放置した。その後、25℃で25Aの制限電流の下、セル電圧2.33Vで8時間充電した。上記の放電と充電を繰り返して充電時に電流のふらつき(0.3A以上の電流変動)又は末期電流(約8時間後)の高止まり(3A以上)が生じた時点を短絡と判断し、短絡までの繰り返し回数を測定した。浸透短絡評価は、比較例1の測定結果を100として相対評価した。
【0113】
【表1】
【0114】
実施例においては、充電受け入れ性能が比較例1と同等以上であると共に、浸透短絡評価の結果が比較例1よりも優れることが確認された。一方、比較例では、充電受け入れ性能及び浸透短絡評価の少なくとも一方が劣ることが確認された。また、セパレータにおけるベース部の厚みTに対する前記リブの高さHの比率H/Tが2〜6の範囲内であると、充電受け入れ性能及び浸透短絡評価の結果が共に優れることが確認された。