特許第6361518号(P6361518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6361518非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361518
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20180712BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20180712BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/052
【請求項の数】6
【全頁数】116
(21)【出願番号】特願2015-10668(P2015-10668)
(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公開番号】特開2015-159109(P2015-159109A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2017年8月3日
(31)【優先権主張番号】特願2014-9687(P2014-9687)
(32)【優先日】2014年1月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤 脩平
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/003165(WO,A1)
【文献】 特開2000−173650(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/136589(WO,A1)
【文献】 特開2012−064922(JP,A)
【文献】 特開2003−243026(JP,A)
【文献】 特開2009−051800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0566−10/0567
H01G 11/64
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンを吸蔵・放出しうる正極及び負極を備える非水系電解液二次電池用の非水系電解液であって、該非水系電解液が電解質及び非水溶媒とともに、
(I)式(1):
【化1】
(式中、
は、置換基を有していてもよいアリール基であり、
は、1又は2の整数であり、
は、1又は2の整数であり、
が1の場合、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、ただし、nが2の場合、Rは置換基を有していてもよいアリール基であり、
が2の場合、Rは、単結合、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアリーレン基であり、複数存在するAは、同一であっても異なっていてもよく、ただし、nが2の場合、Rは置換基を有していてもよいアリーレン基である)
で表される芳香族カルボン酸エステルと、
(II)フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、ホスホン酸エステル、シアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、式(1)以外の芳香族化合物、式(2):
【化2】
式中、
は、炭素数1以上4以下の炭化水素基であり、
は、エチル基、n−プロピル基又はn−ブチル基である
で表されるカルボン酸エステル、複数のエーテル結合を有する環状化合物、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有することを特徴とする非水系電解液。
【請求項2】
前記式(1)中、aが1である、請求項1に記載の非水系電解液。
【請求項3】
前記式(1)中、Aがフェニル基である、請求項1又は2に記載の非水系電解液。
【請求項4】
前記非水系電解液が、前記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを、0.001質量%以上10質量%以下で含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項5】
前記非水系電解液が、フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、ホスホン酸エステル、シアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、前記式(1)以外の芳香族化合物、前記式(2)で表されるカルボン酸エステル、複数のエーテル結合を有する環状化合物、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を、0.001質量%以上20質量%以下で含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項6】
リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに電解質及び非水溶媒を含む非水系電解液を具備する非水系電解液二次電池であって、該非水系電解液が請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水系電解液であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン等のいわゆる民生用の電源から自動車用等の駆動用車載電源まで広範な用途に、リチウム二次電池等の非水系電解液二次電池が実用化されつつある。しかしながら、近年の非水系電解液二次電池に対する高性能化の要求はますます高くなっており、特に、高容量、低温使用特性、高温保存特性、サイクル特性、過充電時安全性等の種々の電池特性の改善が要望されている。
【0003】
非水系電解液二次電池に用いる電解液は、通常、主として電解質と非水溶媒とから構成されている。非水溶媒の主成分には、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネートやジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル等が用いられている。
【0004】
こうした非水系電解液二次電池の負荷特性、サイクル特性、保存特性等の電池特性を改良したり、過充電時の電池の安全性を高めるために、非水溶媒や電解質、添加剤について種々の検討がなされている。
特許文献1〜10には、電解液中に安息香酸メチル、安息香酸エチル、プロピオン酸フェニル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル等の芳香族エステルを混合することによって、電池のエネルギー密度、長期耐久性、高温保存ガス抑制、低温特性等を向上させる方法が提案されている。
【0005】
特許文献11には、特定のカルボン酸芳香族エステルを添加した電解液を用いることにより、過充電時の電池の安全性を向上させる技術が提案されている。
特許文献12には、特定のカルボン酸芳香族エステル化合物を非水電解液に含有させることで、電池の容量を低下させることなく高温保存時の電池膨れを抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許03463407号公報
【特許文献2】特許03893627号公報
【特許文献3】特開平10−255836号公報
【特許文献4】特開2000−268831号公報
【特許文献5】特開2005−347222号公報
【特許文献6】特許02963898号公報
【特許文献7】特許4051947号公報
【特許文献8】特開2001−297790号公報
【特許文献9】特開2002−033121号公報
【特許文献10】特開2003−338277号公報
【特許文献11】特開2000−058112号公報
【特許文献12】特開2000−173650号公報
【特許文献13】WO2014/003165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜13に記載されている芳香族基とエステル基を合わせ持つ化合物を含有する電解液を用いた非水系電解液二次電池は、化合物の反応性の高さから、初期容量、効率、レート特性及び初期ガス量等の初期の電池特性ならびに高温保存後の容量、効率、レート特性及び過充電時の安全性等の耐久試験後の電池特性を同時に向上させることが困難であるといった問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決すべくされたものであり、非水系電解液二次電池において、初期の電池特性及び耐久試験後の電池特性を同時に改善させる非水系電解液と、この非水系電解液を用いた非水系電解液二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために種々の検討を重ねた結果、特定の芳香族カルボン酸エステルを電解液中に含有させることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、特定の芳香族カルボン酸エステル及び特定の添加剤を電解液中に含有させることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
また、本発明の要旨は、以下に示すとおりである。
(i)金属イオンを吸蔵・放出しうる正極及び負極を備える非水系電解液二次電池用の非水系電解液であって、該非水系電解液が電解質及び非水溶媒とともに、
(I)式(1):
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、
は、置換基を有していてもよいアリール基であり、
は、1又は2の整数であり、
は、1又は2の整数であり、
が1の場合、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、ただし、nが2の場合、Rは置換基を有していてもよいアリール基であり、
が2の場合、Rは、単結合、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアリーレン基であり、複数存在するAは、同一であっても異なっていてもよく、ただし、nが2の場合、Rは置換基を有していてもよいアリーレン基である)
で表される芳香族カルボン酸エステルと、
(II)フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、ホスホン酸エステル、シアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、式(1)以外の芳香族化合物、式(3):
【0013】
【化2】
【0014】
式中、
は、炭素数1以上4以下の炭化水素基であり、
は、エチル基、n−プロピル基又はn−ブチル基である
で表されるカルボン酸エステル、複数のエーテル結合を有する環状化合物、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有することを特徴とする非水系電解液。(ii)前記式(1)中、aが1である、(i)に記載の非水系電解液。
(iii)前記式(1)中、Aがフェニル基である、(i)又は(ii)に記載の非水系電解液。
(iv)前記非水系電解液が、前記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを、0.001質量%以上10質量%以下で含有する、(i)〜(iii)のいずれか1つに記載の非水系電解液。
(v)前記非水系電解液が、フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、ホスホン酸エステル、シアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、前記式(1)以外の芳香族化合物、前記式(2)で表されるカルボン酸エステル、複数のエーテル結合を有する環状化合物、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を、0.001質量%以上20質量%以下で含有する、(i)〜(iv)のいずれか1つに記載の非水系電解液。
(vi) リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに電解質及び非水溶媒を含む非水系電解液を具備する非水系電解液二次電池であって、該非水系電解液が請求項(i)〜(v)のいずれか1つに記載の非水系電解液であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、初期の電池特性と耐久試験後の電池特性に優れた非水系電解液二次電池をもたらすことができる非水系電解液を提供することができ、非水系電解液二次電池の小型化、高性能化及び高安全化を達成することができる。
本発明の非水系電解液を用いて作製された非水系電解液二次電池、及び本発明の非水系電解液二次電池が、初期の電池特性と耐久試験後の電池特性を同時に向上させる作用・原理は明確ではないが、以下のように考えられる。ただし、本発明は、以下に記述する作用・原理に限定されるものではない。
【0016】
通常、特許文献1〜13に代表される芳香族カルボン酸エステル及びカルボン酸芳香族エステルは、正極上で被膜状の構造物を形成することにより電池特性の向上をもたらす。しかし、特許文献1〜10に記載されている芳香環に直接オキシカルボニル基が結合した芳香族カルボン酸エステルや芳香環に直接カルボニルオキシ基が結合したカルボン酸芳香族エステルは、芳香環とカルボニル基の空軌道が重なりあうことで負極での還元副反応が顕著に進行し、Li伝導性の低い被膜が多量に形成される。その結果、高電流密度下の充放電特性や充放電効率が大きく低下し得る。更に、還元副反応が顕著に進行することで、放電容量が大きく低下し得る。
【0017】
また、特許文献11及び12に記載されているフェニル酢酸エステルは、メチレン基を介してカルボニル基と芳香環が近距離に位置するため、前述の化合物と同様、空軌道が重なり合う。その結果、負極での還元副反応が進行し、特許文献1〜10に記載されている化合物と同様に電池特性が低下し得る。
また、特許文献13では、耐還元性に劣る芳香族カルボン酸エステルと特定の添加剤を併用することで、前述の問題点を改善させようとしているが、記載されている芳香族カルボン酸エステルの耐酸化性が低く、通常使用電圧において正極上で副反応を起こし、電池特性が大きく低下し得る。
【0018】
一方、フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、ホスホン酸エステル、シアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、上記式(1)以外の芳香族化合物、上記式(2)で表されるカルボン酸エステル、環状エーテル、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(「(II)群の化合物」ともいう)は、負極上において被膜を形成し、性能を向上させる。しかし、同時に正極上での酸化副反応による劣化も進行するため、これらを添加のみによる電池特性の向上は不十分であった。
【0019】
そのような課題に対し、本発明では、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル及び(II)群の化合物を同時に非水系電解液中に含有させることによって、上記課題を解決できることを見出した。
式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルは、カルボン酸骨格の芳香環とカルボニル基の空軌道の重なりにより、それ単独使用では負極での還元副反応が進行し、Li伝導性の低い被膜が多量に形成されると考えられる。それに対し、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルと(II)群の化合物を同時に用いた場合、(II)群の化合物が負極上に形成する被膜が式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルの還元副反応を抑制する。更に、(II)群の化合物が負極上に被膜を形成する際、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルの一部が取り込まれることで、Li伝導性が高く安定な複合被膜を形成する。また、正極上においては、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルが被膜状の構造物を形成することにより、(II)群の化合物の酸化副反応を抑制する。その結果、電池特性を低下させることなく初期の電池特性と耐久試験後の電池特性を同時に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらの形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
1.非水系電解液
1−1.式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル
本発明の第二の態様は、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを非水系電解液中に含有することを特徴とする。なお、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルにおいては光学異性体の区別はつけないものとし、異性体単独又はこれらの混合として適用することもできる。
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、
は、置換基を有していてもよいアリール基であり、
は、1又は2の整数であり、
は、1又は2の整数であり、
が1の場合、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、ただし、nが2の場合、Rは置換基を有していてもよいアリール基であり、
が2の場合、Rは、単結合、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアリーレン基であり、複数のAは同一であっても異なっていてもよく、ただし、nが2の場合、Rは、置換基を有していてもよいアリーレン基である。)
式(1)において、RとAとが互いに結合して環を形成することはない。
【0023】
式(1)において、aが1の場合、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基(1価の基)又は置換基を有していてもよいアリール基である。
ここで置換基とは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1以上の原子で構成された基(ただし、炭素原子及び水素原子のみで構成された基を除く)を表す。
【0024】
置換基としては、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子);アルコキシ基;ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)で置換されている、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアルコキシ基;シアノ基、イソシアナト基、アルコキシカルボニルオキシ基;アシル基;カルボキシ基;アルコキシカルボニル基;アシルオキシ基;アルキルスルホニル基;アルコキシスルホニル基;ジアルコキシホスファントリイル基;ジアルコキシホスホリル基及びジアルコキシホスホリルオキシ基等が挙げられ、好ましくはハロゲン原子又はハロゲン原子で置換されているアルキル基であり、より好ましくはハロゲン原子又はハロゲン原子で置換されているアルキル基である。上記置換基におけるアルキル基、アルコキシ基(これらは置換基の一部を構成するものも含む)としては、例えば炭素数1以上6以下のものが挙げられ、アルケニル基、アルキニル基としては、炭素数2以上6以下のものが挙げられ、アリール基としては、例えば炭素数6以上12以下のものが挙げられる。
【0025】
脂肪族炭化水素基(1価の基)における炭素数は、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは5以下である。
脂肪族炭化水素基(1価の基)としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
これらのうち、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基等の炭素数1〜5のアルキ
ル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基等の炭素数2〜5のアルケニル基、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基等の炭素数2〜5のアルキニル基等が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基等の炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が更に好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0026】
脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよいが、非置換のものが好ましい。
アリール基は特に限定されないが、炭素数は6以上であることができ、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、また、12以下であることができ、好ましくは11以下、より好ましくは10以下である。
アリール基としては、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、i−プロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、i−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、キシリル基等が挙げられる。ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)又は非置換若しくはハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)置換のアルコキシ基を置換基として有するアリール基も好ましく、例えば、トリフルオロメチルフェニル基、キシリル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、モノフルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ヘキサフルオロフェニル基等が挙げられる。これらのうち、フェニル基、トリル基、tert−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、モノフルオロフェニル基が好ましく、フェニル基、トリル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
【0027】
が1の場合、Rは、好ましくは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基(1価の基)であり、より好ましくは水素原子又は非置換の炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基(1価の基)であり、更に好ましくは水素原子である。ただし、nが2の場合、Rは置換基を有していてもよいアリール基であり、好ましくは非置換のアリール基である。
【0028】
式(1)において、aが2の場合、Rは、単結合、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基(2価の基)又は置換基を有していてもよいアリーレン基である。
脂肪族炭化水素基(2価の基)としては、上記脂肪族炭化水素基(1価)で例示された基に対応する2価の基が挙げられる。中でも、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数1〜5のアルキレン基、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基等の炭素数2〜5のアルケニレン基、エチニレン基、プロピニレン基、1−ブチニレン基、2−ブチニレン基、1−ペンチニレン基及び2−ペンチニレン基等の炭素数2〜5のアルキニレン基等が好ましい。
【0029】
アリーレン基としては、上記アリール基で例示された基に対応する2価の基が挙げられる。中でも、フェニレン基等が好ましい。
が2の場合、Rは、好ましくは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基(2価の基)であり、より好ましくは単結合又は非置換の炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基(2価の基)である。ただし、nが2の場
合、Rは置換基を有していてもよいアリーレン基であり、好ましくは非置換のアリーレン基である。
【0030】
式(1)において、Aは置換基を有していてもよいアリール基である。置換基は、Rで例示した基が挙げられる。アリール基は特に限定されないが、炭素数は、6以上であることができ、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、また、12以下であることができ、好ましくは11以下、より好ましくは10以下である。アリール基としては、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、i−プロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、i−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、キシリル基等が挙げられる。ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)又は非置換若しくはハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)置換のアルコキシ基を置換基として有するアリール基も好ましく、例えば、トリフルオロメチルフェニル基、キシリル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、モノフルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ヘキサフルオロフェニル基が挙げられる。これらのうち、フェニル基、トリル基、tert−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、モノフルオロフェニル基が好ましく、フェニル基、トリル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
【0031】
式(1)において、nは、好ましくは1である。式(1)において、aは、好ましくは1である。
式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとしては、以下の化合物が挙げられる。
≪a=1の場合≫
=1の場合、具体例として挙げられる以下の化合物中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、、フニル基、トリル基、tert−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、モノフルオロフェニル基から選ばれる基であり、R’は、フェニル基、トリル基、tert−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、モノフルオロフェニル基から選ばれるアリール基である。
【0032】
【化4】
【0033】
≪a=2の場合≫
=2の場合、具体例として挙げられる以下の化合物中、Rは、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、エチニレン基、プロピニレン基、1−ブチニレン基、2−ブチニレン基、1−ペンチニレン基及び2−ペンチニレン基から選ばれる炭化水素基である。
【0034】
【化5】
【0035】
これらのうち、負極上での還元副反応が少ない観点で、好ましくは以下の化合物である。
【0036】
【化6】
【0037】
更に、これらのうち、正極上での酸化副反応が少ない観点で、より好ましくは以下の化合物である。
【0038】
【化7】
【0039】
式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。非水系電解液全量(100質量%)中、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルの量(2種以上の場合は合計量)は、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2.5
質量%以下である。上記範囲内にあることにより、本発明の効果が発現しやすく、また、電池の抵抗増大を防ぐことができる。
【0040】
なお、本発明の電解液に、上記化合物を配合する方法は、特に制限されない。上記化合物を直接電解液に添加する方法の他に、電池内又は電解液中において上記化合物を発生させる方法が挙げられる。上記化合物を発生させる方法としては、これらの化合物以外の化合物を添加し、電解液等の電池構成要素を酸化又は加水分解等して発生させる方法が挙げられる。更には、電池を作製して、充放電等の電気的な負荷をかけることによって、発生させる方法も挙げられる。
【0041】
1−2.(II)群の化合物
本発明の第二の態様は、上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとともに、フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、ホスホン酸エステル、シアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、式(1)以外の芳香族化合物、式(2)で表されるカルボン酸エステル、複数のエーテル結合を有する環状化合物、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及び
フルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物((II)群の化合物)を非水系電解液中に含有することを特徴としている。これらを併用することで、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルが引き起こし得る副反応を効率よく抑制できるためである。
【0042】
中でも、フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、ホスホン酸エステル、シアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、式(1)以外の芳香族化合物、式(2)で表されるカルボン酸エステル、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物は、負極上に良質な複合被膜を形成し、初期の電池特性と耐久試験後の電池特性がバランスよく向上するため好ましく、フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、ホスホン酸エステル、シアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、式(1)以外の芳香族化合物、式(2)で表されるカルボン酸エステル、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましく、フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、ホスホン酸エステル、シアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、式(1)以外の芳香族化合物、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が更に好ましく、硫黄含有有機化合物、ホスホン酸エステル、シアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が特に好ましい。理由としては、比較的低分子量の被膜を負極上に形成するこれら化合物は、形成される負極被膜が緻密であることから、効率良く式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルの副反応による劣化を抑制し得ることが挙げられる。このように副反応を効果的に抑制し、また抵抗上昇を抑制し、初期や高温耐久時の副反応抑制による体積変化抑制と高温耐久後の安全性を確保するとともに、またレート特性を向上させ得る。
【0043】
本発明の電解液に、上記化合物を配合する方法は、特に制限されない。上記化合物を直接電解液に添加する方法の他に、電池内又は電解液中において上記化合物を発生させる方法が挙げられる。上記化合物を発生させる方法としては、これらの化合物以外の化合物を添加し、電解液等の電池構成要素を酸化又は加水分解等して発生させる方法が挙げられる。更には、電池を作製して、充放電等の電気的な負荷をかけることによって、発生させる方法も挙げられる。
以下に、(II)群の化合物について説明をする。ただし、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩に関しては、1−3.電解質における説明が適用される。
【0044】
1−2−1.フッ素含有環状カーボネート
フッ素含有環状カーボネートとしては、炭素数2以上6以下のアルキレン基を有する環状カーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられ、例えばエチレンカーボネートのフッ素化物(以下、「フッ素化エチレンカーボネート」と記載する場合がある)、及びその誘導体が挙げられる。エチレンカーボネートのフッ素化物の誘導体としては、アルキル基(例えば、炭素数1以上4以下のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられる。中でもフッ素数1以上8以下のフッ素化エチレンカーボネート、及びその誘導体が好ましい。
【0045】
本発明の電解液において、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとフッ素含有環状カーボネートとを併用することによって、この電解液を用いた電池において、初期ガ
ス量が抑制できる一方で、過充電ガス量が増加することで電池安全性を一層向上させることができる。
フッ素数1〜8個のフッ素化エチレンカーボネート及びその誘導体としては、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(ジフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−5−フルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0046】
中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネートが、電解液に高イオン伝導性を与え、かつ安定な界面保護被膜を容易に形成しやすい点で好ましい。
フッ素化環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。フッ素化環状カーボネートの量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更により好ましくは0.4質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下、最も好ましくは1.5質量%以下である。また、フッ素化環状カーボネートを非水溶媒として用いる場合の配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは10体積%以上であり、また、好ましくは50体積%以下、より好ましくは35体積%以下、更に好ましくは25体積%以下である。
【0047】
また、フッ素含有環状カーボネートとして、不飽和結合とフッ素原子とを有する環状カーボネート(以下、「フッ素化不飽和環状カーボネート」と記載する場合がある)を用いることもできる。フッ素化不飽和環状カーボネートが有するフッ素数は1以上であれば、特に制限されない。フッ素数は6以下とすることができ、好ましくは4以下であり、1又は2がより好ましい。
【0048】
フッ素化不飽和環状カーボネートとしては、フッ素化ビニレンカーボネート誘導体、芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体等が挙げられる。
フッ素化ビニレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0049】
芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレン
カーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0050】
中でも、フッ素化不飽和環状カーボネートとしては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネートが、安定な界面保護被膜を形成するので好ましい。
【0051】
フッ素化不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されない。分子量は、好ましくは50以上、また、250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するフッ素化環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。フッ素化不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。分子量は、より好ましくは100以上であり、また、より好ましくは200以下である。
【0052】
フッ素化不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
フッ素化不飽和環状カーボネート(2種以上の場合は合計量)の量は、電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上で、特に好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。この範囲内であれば、非水系電解液二次電池は十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0053】
上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとフッ素含有環状カーボネートの質量比は、負極上での複合的な界面保護被膜形成の点から、1:99〜99:1であることが好ましく、5:95〜95:5がより好ましく、10:90〜90:10が更に好ましく、20:80〜80:20が特に好ましく、30:70〜70:30が極めて好ましい。この範囲で配合した場合、各添加剤の正負極での副反応を効率よく抑制でき、電池特性が向上する。特に、初期ガス抑制効果及び過充電時の安全性向上に有用である。
【0054】
1−2−2.硫黄含有有機化合物
本発明の電解液は、更に硫黄含有有機化合物を含むことができる。硫黄含有有機化合物は、分子内に硫黄原子を少なくとも1つ有している有機化合物であれば、特に制限されないが、好ましくは分子内にS=O基を有している有機化合物であり、鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状硫酸エステル、環状硫酸エステル、鎖状亜硫酸エステル及び環状亜硫酸エステルが挙げられる。ただしフルオロスルホン酸塩に該当するものは、1−2−2.硫黄含有有機化合物ではなく、後述する電解質であるフルオロスルホン酸塩に包含されるものとする。
【0055】
本発明の電解液において、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルと硫黄含有有機化合物とを併用することによって、この電解液を用いた電池において、初期効率を向上させることができる一方で、過充電ガス量が増加することで電池安全性を一層向上させることができる。
中でも、鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状硫酸エステル、環状硫酸エステル、鎖状亜硫酸エステル及び環状亜硫酸エステルが好ましく、より好ましくはS(=O)基を有する化合物である。
【0056】
これらのエステルは、置換基を有していてもよい。ここで置換基とは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1以上の原子で構成された基であり、好ましくは、炭素原子、水素原子、酸素原子及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1以上の原子で構成された基であり、より好ましくは、炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる群から選ばれる1以上の原子で構成された基である。置換基としては、ハロゲン原子;非置換又はハロゲン置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアルコキシ基;シアノ基;イソシアナト基;アルコキシカルボニルオキシ基;アシル基;カルボキシ基;アルコキシカルボニル基;アシルオキシ基;アルキルスルホニル基;アルコキシスルホニル基;ジアルコキシホスファントリイル基;ジアルコキシホスホリル基及びジアルコキシホスホリルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、好ましくはハロゲン原子;アルコキシ基;非置換又はハロゲン置換の、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基;イソシアナト基;シアノ基;アルコキシカルボニルオキシ基;アシル基;アルコキシカルボニル基;アシルオキシ基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、非置換アルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基;アシル基;アルコキシカルボニル基又はアシルオキシ基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、非置換アルキル基及びアルコキシカルボニル基である。これらの置換基に関する例示及び好ましい例は、後述する式(2−2−1)におけるA12及びA13、ならびに式(2−2−2)におけるA14の定義中の置換基に適用される。
【0057】
更に好ましくは鎖状スルホン酸エステル及び環状スルホン酸エステルであり、中でも、式(2−2−1)で表される鎖状スルホン酸エステル及び式(2−2−2)で表される環状スルホン酸エステルが好ましく、式(2−2−2)で表される環状スルホン酸エステルより好ましい。
1−2−2−1.式(2−2−1)で表される鎖状スルホン酸エステル
【0058】
【化8】
【0059】
(式中、
12は、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下のn21価の炭化水素基であり、
13は、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、
21は、1以上4以下の整数であり、
21が2の場合、A12及びA13は、同一であっても、異なっていてもよい。)
式(2−2−1)において、A12及びA13は一緒になって環を形成しておらず、よって式(2−2−1)は鎖状スルホン酸エステルである。
【0060】
21は、1以上3以下の整数が好ましく、1以上2以下の整数がより好ましく、2が更に好ましい。
12における炭素数1以上12以下のn21価の炭化水素基としては、
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基等の1価の炭化水素基;
アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基等の2価の炭化水素基;
アルカントリイル基、アルケントリイル基、アルキントリイル基及びアレーントリイル基等の3価の炭化水素基;
アルカンテトライル基、アルケンテトライル基、アルキンテトライル基及びアレーンテトライル基等の4価の炭化水素基;
等が挙げられる。
【0061】
これらのうち、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基等の2価の炭化水素基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。これらは、n21が2の場合に対応する。
炭素数1以上12以下のn21価の炭化水素基のうち、1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基等の炭素数1〜5のアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基等の炭素数2以上5以下のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基等の炭素数2以上5以下のアルキニル基が挙げられる。
【0062】
2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数1以上5以下のアルキレン基;ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基等の炭素数2以上5以下のアルケニレン基;エチニレン基、プロピニレン基、1−ブチニレン基、2−ブチニレン基、1−ペンチニレン基及び2−ペンチニレン基等の炭素数2以上5以下のアルキニレン基等が挙げられ、好ましくはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数1〜5のアルキレン基であり、より好ましくはエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数2以上5以下のアルキレン基であり、更に好ましくはトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数3以上5以下のアルキレン基である。
【0063】
3価及び4価の炭化水素基としては、上記1価の炭化水素基に対応する、3価及び4価の炭化水素基が挙げられる。
12における置換基を有していている炭素数1以上12以下のn21価の炭化水素基とは、上記置換基と上記炭素数1以上12以下のn21価の炭化水素基を組み合わせた基を意味する。A12としては、置換基を有さない炭素数1以上5以下のn21価の炭化水素基が好ましい。
【0064】
13における炭素数1以上12以下の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル
基、アルキニル基及びアリール基等の1価の炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
炭素数1以上12以下の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基等の炭素数1〜5のアルキル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基であり、更に好ましくはエチル基、n−プロピル基である。
【0065】
13における置換基を有している炭素数1以上12以下の炭化水素基とは、上記置換基と上記炭素数1以上12以下の炭化水素基を組み合わせた基を意味する。A13としては、置換基を有していてもよい炭素数1以上5以下の炭化水素基が好ましく、より好ましくは置換基を有している炭素数1以上5以下の炭化水素基が好ましく、置換基としてアルコキシカルボニル基を有するアルキル基が更に好ましい。中でも、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、1−メトキシカルボニルエチル基、1−エトキシカルボニルエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−エトキシカルボニルエチル基、1−メトキシカルボニルプロピル基、1−エトキシカルボニルプロピル基、2−メトキシカルボニルプロピル基、2−エトキシカルボニルプロピル基、3−メトキシカルボニルプロピル基、3−エトキシカルボニルプロピル基が好ましく、より好ましくは1−メトキシカルボニルエチル基、1−エトキシカルボニルエチル基である。
【0066】
式(2−2−1)で表される鎖状スルホン酸エステルの含有量(2種以上の場合は合計の含有量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。この範囲内であると、高温保存特性が良好である。
【0067】
1−2−2−2.式(2−2−2)で表される環状スルホン酸エステル
【0068】
【化9】
【0069】
(式中、
14は置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の2価の炭化水素基である。)
14における炭素数1以上12以下の2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基等が挙げられ、好ましくはアルキレン基、アルケニレン基である。
【0070】
炭素数1以上12以下の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数1〜5のアルキレン基;ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン
基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基等の炭素数2〜5のアルケニレン基;
エチニレン基、プロピニレン基、1−ブチニレン基、2−ブチニレン基、1−ペンチニレン基及び2−ペンチニレン基等の炭素数2〜5のアルキニレン基等が挙げられる。
【0071】
これらのうち、好ましくはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数1〜5のアルキレン基及びビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基等の炭素数2〜5のアルケニレン基であり、より好ましくはトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数3〜5のアルキレン基及び1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基等の炭素数3〜5のアルケニレン基であり、更に好ましくはトリメチレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基である。
【0072】
なお、A14における置換基を有していいる炭素数1以上12以下の2価の炭化水素基とは、上記置換基と上記炭素数1以上12以下の2価の炭化水素基を組み合わせた基のことを意味する。A14は、好ましくは置換基を有さない炭素数1以上5以下の2価の炭化水素基である。
式(2−2−2)で表される環状スルホン酸エステルを更に含む本発明の電解液を用いた電池は、初期効率が向上し、かつ過充電ガス量が増加することで電池安全性を一層向上させることができる。式(2−2−2)で表される環状スルホン酸エステルの含有量(2種以上の場合は合計の含有量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.4質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。
硫黄含有有機化合物としては、以下を挙げることができる。
【0073】
≪鎖状スルホン酸エステル≫
フルオロスルホン酸メチル及びフルオロスルホン酸エチル等のフルオロスルホン酸エステル;
メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸2−プロピニル、メタンスルホン酸3−ブチニル、ブスルファン、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸メチル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸エチル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2−プロピニル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸3−ブチニル、メタンスルホニルオキシ酢酸メチル、メタンスルホニルオキシ酢酸エチル、メタンスルホニルオキシ酢酸2−プロピニル及びメタンスルホニルオキシ酢酸3−ブチニル等のメタンスルホン酸エステル;
ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸エチル、ビニルスルホン酸アリル、ビニルスルホン酸プロパルギル、アリルスルホン酸メチル、アリルスルホン酸エチル、アリルスルホン酸アリル、アリルスルホン酸プロパルギル及び1,2−ビス(ビニルスルホニロキシ)エタン等のアルケニルスルホン酸エステル;
メタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、メタンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、メタンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、メタンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル、1,2−エタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、1,2−エタンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、1,2−エタンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、1,2−エタンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル、1,3−プロパンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、1,3−プロパンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、1,3−プロパンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、1,3−プロパンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル、1,3−ブタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、1,3−ブタンジスルホン酸エトキシカルボニ
ルメチル、1,3−ブタンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、1,3−ブタンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル等のアルキルジスルホン酸エステル;
【0074】
≪環状スルホン酸エステル≫
1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−メチル−1,3−プロパンスルトン、2−メチル−1,3−プロパンスルトン、3−メチル−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、2−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、1−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、2−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、3−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、1−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、2−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、3−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン及び1,5−ペンタンスルトン等のスルトン化合物;
メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート等のジスルホネート化合物;
1,2,3−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3H−1,2,3−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、5H−1,2,3−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、1,2,4−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、1,2,5−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、1,2,3−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−2,2−ジオキシド及び1,2,4−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド等の含窒素化合物。
【0075】
1,2,3−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスラン−2,2,3−トリオキシド、3−メトキシ−1,2,3−オキサチアホスラン−2,2,3−トリオキシド、1,2,4−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、1,2,5−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、3−メトキシ−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、1,2,4−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、1,2,5−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド及び1,2,6−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド等の含リン化合物。
【0076】
≪鎖状硫酸エステル≫
ジメチルスルフェート、エチルメチルスルフェート及びジエチルスルフェート等のジアルキルスルフェート化合物。
≪環状硫酸エステル≫
1,2−エチレンスルフェート、1,2−プロピレンスルフェート、1,3−プロピレンスルフェート、1,2−ブチレンスルフェート、1,3−ブチレンスルフェート、1,4−ブチレンスルフェート、1,2−ペンチレンスルフェート、1,3−ペンチレンスルフェート、1,4−ペンチレンスルフェート及び1,5−ペンチレンスルフェート等のアルキレンスルフェート化合物。
【0077】
≪鎖状亜硫酸エステル≫
ジメチルスルファイト、エチルメチルスルファイト及びジエチルスルファイト等のジアルキルスルファイト化合物。
≪環状亜硫酸エステル≫
1,2−エチレンスルファイト、1,2−プロピレンスルファイト、1,3−プロピレンスルファイト、1,2−ブチレンスルファイト、1,3−ブチレンスルファイト、1,4−ブチレンスルファイト、1,2−ペンチレンスルファイト、1,3−ペンチレンスルファイト、1,4−ペンチレンスルファイト及び1,5−ペンチレンスルファイト等のアルキレンスルファイト化合物。
【0078】
これらのうち、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸メチル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸エチル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2−プロピニル、プロパンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、プロパンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル、ブタンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、ブタンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル、1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン、1,2−エチレンスルフェート、1,2−エチレンスルファイト、メタンスルホン酸メチル及びメタンスルホン酸エチルが初期効率向上の点から好ましく、プロパンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、プロパンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル、ブタンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、ブタンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル、1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、1,2−エチレンスルフェート、1,2−エチレンスルファイトがより好ましく、1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトンが更に好ましい。
【0079】
硫黄含有有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
硫黄含有有機化合物の含有量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。この範囲にあると、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0080】
上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルと硫黄含有有機化合物の質量比は、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル:硫黄含有有機化合物が、1:99〜99:1であることが好ましく、5:95〜95:5がより好ましく、10:90〜90:10が更に好ましく、20:80〜80:20が特に好ましく、30:70〜70:30が極めて好ましい。この範囲であれば、電池特性、特に初期特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0081】
1−2−3.ホスホン酸エステル
本発明の電解液は、更にホスホン酸エステルを含むことができる。ホスホン酸エステルは、分子内に少なくともホスホン酸エステル構造を有している有機化合物であれば、特に制限されない。
本発明の電解液において、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとホスホン酸エステルとを併用することによって、この電解液を用いた電池において、初期レート特性が向上できる一方で、保存後の電池容量を向上させることができる。
【0082】
ホスホン酸エステルは、置換基を有していてもよい。ここで置換基とは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群から選ば
れる1以上の原子で構成された基であり、好ましくは、炭素原子、水素原子、酸素原子及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1以上の原子で構成された基である。置換基としては、ハロゲン原子;非置換又はハロゲン置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアルコキシ基;シアノ基;イソシアナト基;アルコキシカルボニルオキシ基;アシル基;アルコキシカルボニル基;アシルオキシ基;アルキルスルホニル基;アルコキシスルホニル基;ジアルコキシホスファントリイル基;ジアルコキシホスホリル基及びジアルコキシホスホリルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、好ましくはハロゲン原子;アルコキシ基;アルコキシカルボニルオキシ基;アシル基;アルコキシカルボニル基及びアシルオキシ基等が挙げられ、より好ましくはハロゲン原子及びアルコキシカルボニル基であり、更に好ましくはアルコキシカルボニル基である。上記アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基及びプロパルギルオキシカルボニル基等が挙げられ、好ましくはエトキシカルボニル基及びプロパルギルオキシカルボニル基である。これらの置換基に関する例示及び好ましい例は、後述する式(2−3−1)におけるA〜A11の定義中の置換基に適用される。
中でも、式(2−3−1)で表されるホスホン酸エステルが好ましい。
【0083】
【化10】
【0084】
(式中、
、A10及びA11は、独立して、非置換又はハロゲン置換の、炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基であり、
32は、0〜6の整数である。)
炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基等のアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基(アリル基)、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基等のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基(プロパルギル基)、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基等のアルキニル基が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ビニル基、2−プロペニル基(アリル基)、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、2−プロピニル基(プロパルギル基)、3−ブチニル基及び4−ペンチニル基が好ましく、メチル基、エチル基、2−プロペニル基(アリル基)及び2−プロピニル基(プロパルギル基)がより好ましく、メチル基、エチル基及び2−プロピニル基(プロパルギル基)が更に好ましい。
式(2−3−1)で表されるホスホン酸エステルとしては以下の化合物を挙げることが
できる。
【0085】
<式(2−3−1)においてn32=0の化合物>
トリメチル ホスホノフォルメート、メチル ジエチルホスホノフォルメート、メチル
ジプロピルホスホノフォルメート、メチル ジブチルホスホノフォルメート、トリエチル ホスホノフォルメート、エチル ジメチルホスホノフォルメート、エチル ジプロピルホスホノフォルメート、エチル ジブチルホスホノフォルメート、トリプロピル ホスホノフォルメート、プロピル ジメチルホスホノフォルメート、プロピル ジエチルホスホノフォルメート、プロピル ジブチルホスホノフォルメート、トリブチル ホスホノフォルメート、ブチル ジメチルホスホノフォルメート、ブチル ジエチルホスホノフォルメート、ブチル ジプロピルホスホノフォルメート、メチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、エチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、プロピル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、ブチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート等。
【0086】
<式(2−3−1)においてn32=1の化合物>
トリメチル ホスホノアセテート、メチル ジエチルホスホノアセテート、メチル ジプロピルホスホノアセテート、メチル ジブチルホスホノアセテート、トリエチル ホスホノアセテート、エチル ジメチルホスホノアセテート、エチル ジエチルホスホノアセテート、エチル ジプロピルホスホノアセテート、エチル ジブチルホスホノアセテート、トリプロピル ホスホノアセテート、プロピル ジメチルホスホノアセテート、プロピル ジエチルホスホノアセテート、プロピル ジブチルホスホノアセテート、トリブチル
ホスホノアセテート、ブチル ジメチルホスホノアセテート、ブチル ジエチルホスホノアセテート、ブチル ジプロピルホスホノアセテート、メチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、エチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、プロピル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、ブチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、アリル ジメチルホスホノアセテート、アリル ジエチルホスホノアセテート、2−プロピニル ジメチルホスホノアセテート、2−プロピニル ジエチルホスホノアセテート等。
【0087】
<式(2−3−1)においてn32=2の化合物>
トリメチル 3−ホスホノプロピオネート、メチル 3−(ジエチルホスホノ)プロピオネート、メチル 3−(ジプロピルホスホノ)プロピオネート、メチル 3−(ジブチルホスホノ)プロピオネート、トリエチル 3−ホスホノプロピオネート、エチル 3−(ジメチルホスホノ)プロピオネート、エチル 3−(ジプロピルホスホノ)プロピオネート、エチル 3−(ジブチルホスホノ)プロピオネート、トリプロピル 3−ホスホノプロピオネート、プロピル 3−(ジメチルホスホノ)プロピオネート、プロピル 3−(ジエチルホスホノ)プロピオネート、プロピル 3−(ジブチルホスホノ)プロピオネート、トリブチル 3−ホスホノプロピオネート、ブチル 3−(ジメチルホスホノ)プロピオネート、ブチル 3−(ジエチルホスホノ)プロピオネート、ブチル 3−(ジプロピルホスホノ)プロピオネート、メチル 3−(ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、エチル 3−(ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、プロピル 3−(ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、ブチル 3−(ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート等。
【0088】
<式(2−3−1)においてn32=3の化合物>
トリメチル 4−ホスホノブチレート、メチル 4−(ジエチルホスホノ)ブチレート、メチル 4−(ジプロピルホスホノ)ブチレート、メチル 4−(ジブチルホスホノ)
ブチレート、トリエチル 4−ホスホノブチレート、エチル 4−(ジメチルホスホノ)ブチレート、エチル 4−(ジプロピルホスホノ)ブチレート、エチル 4−(ジブチルホスホノ)ブチレート、トリプロピル 4−ホスホノブチレート、プロピル 4−(ジメチルホスホノ)ブチレート、プロピル 4−(ジエチルホスホノ)ブチレート、プロピル
4−(ジブチルホスホノ)ブチレート、トリブチル 4−ホスホノブチレート、ブチル
4−(ジメチルホスホノ)ブチレート、ブチル 4−(ジエチルホスホノ)ブチレート、ブチル 4−(ジプロピルホスホノ)ブチレート等。
【0089】
電池特性向上の観点からn32=0、1、2の化合物が好ましく、n32=0、1の化合物がより好ましく、n32=1の化合物が更に好ましく、n32=1の化合物の中でも、A〜A11が飽和炭化水素基である化合物が好ましい。
特にトリメチル ホスホノアセテート、トリエチル ホスホノアセテート、2−プロピニル ジメチルホスホノアセテート、2−プロピニル ジエチルホスホノアセテートが好ましい。
【0090】
ホスホン酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
ホスホン酸エステルの含有量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.7質量%以下である。この範囲であると、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0091】
上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとホスホン酸エステルの質量比は、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル:ホスホン酸エステルが、1:99〜99:1であることが好ましく、5:95〜95:5がより好ましく、10:90〜90:10が更に好ましく、20:80〜80:20が特に好ましく、30:70〜70:30が極めて好ましい。この範囲であれば、電池特性、特に初期特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0092】
1−2−4.シアノ基を有する有機化合物
本発明の電解液は、シアノ基を有する有機化合物を含むことができる。シアノ基を有する有機化合物としては、分子内にシアノ基を少なくとも1つ有している有機化合物であれば、特に制限されないが、好ましくは式(2−4−1)、式(2−4−2)及び式(2−4−3)で表される化合物であり、より好ましくは式(2−4−1)及び式(2−4−2)で表される化合物であり、更に好ましくは、式(2−4−2)で表される化合物である。なお、シアノ基を有する有機化合物が、複数のエーテル結合を有する環状化合物でもある場合、複数のエーテル結合を有する環状化合物に属するものとする。
本発明の電解液において、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとシアノ基を有する有機化合物とを併用することによって、この電解液を用いた電池において、初期の充放電効率が向上する一方で、保存後の充放電効率を向上させることができる。
【0093】
1−2−4−1.式(2−4−1)で表される化合物
−CN (2−4−1)
(式中、Aは炭素数2以上20以下の炭化水素基を示す。)
式(2−4−1)で表される化合物の分子量は、特に制限されない。分子量は、好ましくは55以上であり、より好ましくは65以上、更に好ましくは80以上であり、また、
好ましくは310以下であり、より好ましくは185以下であり、更に好ましくは155以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する式(2−4−1)で表される化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。式(2−4−1)で表される化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0094】
式(2−4−1)中、炭素数2以上20以下の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基等が挙げられ、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、tert−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシ基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等のアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル、1−ペンテニル基等のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基等のアルキニル基;フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、i−プロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、i−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基等のアリール基等が好ましい。
【0095】
中でも、分子全体に対するシアノ基の割合が多く、電池特性向上効果が高いという観点から、炭素数2以上15以下の直鎖又は分岐状のアルキル基及び炭素数2以上4以下のアルケニル基がより好ましく、炭素数2以上12以下の直鎖又は分岐状のアルキル基が更に好ましく、炭素数4以上11以下の直鎖又は分岐状のアルキル基が特に好ましい。
式(2−4−1)で表される化合物としては、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ペンタンニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプタンニトリル、オクタンニトリル、ペラルゴノニトリル、デカンニトリル、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3−メチルクロトノニトリル、2−メチル−2−ブテン二トリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−2−ペンテンニトリル、3−メチル−2−ペンテンニトリル及び2−ヘキセンニトリル等が挙げられる。
【0096】
中でも、化合物の安定性、電池特性、製造面の観点から、ペンタンニトリル、オクタンニトリル、デカンニトリル、ドデカンニトリル及びクロトノニトリルが好ましく、ペンタンニトリル、デカンニトリル、ドデカンニトリル及びクロトノニトリルがより好ましく、ペンタンニトリル、デカンニトリル及びクロトノニトリルが好ましい。
式(2−4−1)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。式(2−4−1)で表される化合物の量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下である。上記範囲であれば、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0097】
1−2−4−2.式(2−4−2)で表される化合物
NC−A−CN (2−4−2)
(式中、
は、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン
原子からなる群より選ばれる1種以上の原子で構成された炭素数1以上10以下の有機基である。)
水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の原子で構成された炭素数1以上10以下の有機基とは、炭素原子及び水素原子から構成される有機基の他に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、又はハロゲン原子を含んでいてもよい有機基を包含する。窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子又はハロゲン原子を含んでいてもよい有機基には、炭素原子及び水素原子から構成される基における骨格の炭素原子の一部が、これらの原子に置換されている有機基、又はこれらの原子で構成された置換基を有する有機基を包含する。
【0098】
式(2−4−2)で表される化合物の分子量は、特に制限されない。分子量は、好ましくは、65以上であり、より好ましくは80以上、更に好ましくは90以上であり、また、好ましくは270以下であり、より好ましくは160以下であり、更に好ましくは135以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する式(2−4−2)で表される化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。式(2−4−2)で表される化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0099】
式(2−4−2)で表される化合物におけるAとしては、アルキレン基又はその誘導体、アルケニレン基又はその誘導体、シクロアルキレン基又はその誘導体、アルキニレン基又はその誘導体、シクロアルケニレン基又はその誘導体、アリーレン基又はその誘導体、カルボニル基又はその誘導体、スルホニル基又はその誘導体、スルフィニル基又はその誘導体、ホスホニル基又はその誘導体、ホスフィニル基又はその誘導体、アミド基又はその誘導体、イミド基又はその誘導体、エーテル基又はその誘導体、チオエーテル基又はその誘導体、ボリン酸基又はその誘導体、ボラン基又はその誘導体等が挙げられる。
【0100】
中でも、電池特性向上の点から、アルキレン基又はその誘導体、アルケニレン基又はその誘導体、シクロアルキレン基又はその誘導体、アルキニレン基又はその誘導体、アリーレン基又はその誘導体が好ましい。また、Aが置換基を有してもよい炭素数2以上5以下のアルキレン基であることがより好ましい。
式(2−4−2)で表される化合物としては、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert−ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2−ジメチルスクシノニトリル、2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,3,3−トリメチルスクシノニトリル、2,2,3,3−テトラメチルスクシノニトリル、2,3−ジエチル−2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,2−ジエチル−3,3−ジメチルスクシノニトリル、ビシクロヘキシル−1,1−ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル−2,2−ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル−3,3−ジカルボニトリル、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジカルボニトリル、2,3−ジイソブチル−2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,2−ジイソブチル−3,3−ジメチルスクシノニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2,3−ジメチルグルタロニトリル、2,4−ジメチルグルタロニトリル、2,2,3,3−テトラメチルグルタロニトリル、2,2,4,4−テトラメチルグルタロニトリル、2,2,3,4−テトラメチルグルタロニトリル、2,3,3,4−テトラメチルグルタロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリル、1,4−ジシアノペンタン、2,6−ジシアノヘプタン、2,7−ジシアノオクタン、2,8−ジシアノノナン、1,6−ジシアノデカン、1,2−ジジアノベンゼン、1,3−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノベンゼン、3,3’−(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’−(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル及び3,9−ビス(2−シアノエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウン
デカン等が挙げられる。
【0101】
これらのうち、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル及び3,9−ビス(2−シアノエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、フマロニトリルが保存特性向上の点から好ましい。更に、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、グルタロニトリル及び3,9−ビス(2−シアノエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンは、保存特性向上効果が特に優れ、また電極での副反応による劣化が少ないためにより好ましい。通常、ジニトリル化合物は、分子量が小さいほど一分子におけるシアノ基の量割合が大きくなり、分子の粘度が上昇する一方、分子量が大きくなるほど、化合物の沸点が上昇する。よって、作業効率の向上の点から、スクシノスクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル及びピメロニトリルが更に好ましい。
【0102】
式(2−4−2)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。式(2−4−2)で表される化合物の量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下の濃度で含有させる。上記範囲を満たした場合は、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
1−2−4−3.式(2−4−3)で表される化合物
【0103】
【化11】
【0104】
(式中、
は、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の原子で構成された炭素数1以上12以下の有機基であり、n43は0以上5以下の整数である。)
水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の原子で構成された炭素数1以上12以下の有機基とは、炭素原子及び水素原子から構成される有機基の他に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子又はハロゲン原子を含んでいてもよい有機基を包含する。窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子又はハロゲン原子を含んでいてもよい有機基には、炭素原子及び水素原子から構成される基における骨格の炭素原子の一部が、これらの原子に置換されている有機基、又はこれらの原子で構成された置換基を有する有機基を包含する。
【0105】
上記n43は0以上5以下、好ましくは0以上3以下、より好ましくは0以上1以下の整数であり、特に好ましくは0である。
また、上記Aは、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる1種以上の原子で構成された炭素数1以上12以下の有機基であることが好ましく、水素原子、炭素原子及び酸素原子からなる群より選ばれる1種以上の原子で構成された炭素数1以上12以下の有機基であることがより好ましく、置換基を有していても
よい炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基であることが更に好ましい。
【0106】
ここで置換基とは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の原子で構成された基のことを表す。
置換基としては、ハロゲン原子;非置換又はハロゲン置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基;イソシアナト基;アルコキシカルボニルオキシ基;アシル基;カルボキシル基;アルコキシカルボニル基;アシルオキシ基;アルキルスルホニル基;アルコキシスルホニル基;ジアルコキシホスファントリイル基;ジアルコキシホスホリル基及びジアルコキシホスホリルオキシ基等が挙げられ、好ましくはハロゲン原子;アルコキシ基又は非置換もしくはハロゲン置換のアルキル基であり、より好ましくはハロゲン原子又は非置換もしくはハロゲン置換のアルキル基であり、更に好ましくは非置換のアルキル基である。
【0107】
上記脂肪族炭化水素基は、特に制限されないが、炭素数は1以上であることができ、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、また、12以下であることができ、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。
脂肪族炭化水素基としては、n43に応じて、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、アルカンペンタイル基、アルカンテトライル基、アルケントリイル基、アルケンテトライル基、アルケンペンタイル基、アルケンテトライル基、アルキントリイル基、アルキンテトライル基、アルキンペンタイル基及びアルキンテトライル基等が挙げられる。
【0108】
これらのうち、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、アルカンペンタイル基及びアルカンテトライル基等の飽和炭化水素基がより好ましく、アルカントリイル基が更に好ましい。
更に、上記式(2−4−3)で表される化合物は式(2−4−3’)で示される化合物であることがより好ましい。
【0109】
【化12】
【0110】
(式中、A及びAは、上記Aと同義である。)
また、上記A及びAは、置換基を有していていもよい炭素数1以上5以下の炭化水素基であることがより好ましい。
炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラエチレン基、ペンタメチレン基、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、エチニレン基、プロピニレン基、1−ブチニレン基、2−ブチニレン基、1−ペンチニレン基及び2−ペンチニレン基等が挙げられる。
【0111】
これらのうち、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラエチレン基、ペンタメチレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基がより好ましい。
上記A及びAは、互いに同一でなく、異なることが好ましい。
式(2−4−3)で表される化合物の分子量は、特に制限されない。分子量は、好ましくは、90以上であり、より好ましくは120以上、更に好ましくは150以上であり、また、好ましくは450以下であり、より好ましくは300以下であり、更に好ましくは250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する式(2−4−3)で表され
る化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。式(2−4−3)で表される化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
式(2−4−3)で表される化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0112】
【化13】
【0113】
【化14】
【0114】
【化15】
【0115】
【化16】
【0116】
【化17】
【0117】
【化18】
【0118】
これらのうち、
【0119】
【化19】
【0120】
が保存特性向上の点から好ましい。
シアノ基を有する有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
式(2−4−3)で表される化合物の量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下の濃度で含有させる。この範囲にあると、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0121】
上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとシアノ基を有する有機化合物の質量比は、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル:シアノ基を有する有機化合物が、1:99〜99:1であることが好ましく、5:95〜95:5がより好ましく、10:90〜90:10が更に好ましく、20:80〜80:20が特に好ましく、30:70〜70:30が極めて好ましい。この範囲であれば、電池特性、特に初期特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0122】
1−2−5.イソシアネート基を有する有機化合物
本発明の電解液は、イソシアネート基を有する有機化合物を含むことができる。イソシアネート基を有する有機化合物は、分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有する有機化合物であれば、特に制限されないが、イソシアネート基の数は、一分子中、好ましくは1以上4以下、より好ましくは2以上3以下、更に好ましくは2である。
【0123】
本発明の電解液において、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとイソシアネート基を有する化合物とを併用することによって、この電解液を用いた電池において、初期ガスの発生を抑制できる一方で、保存後の電池容量を向上させることができる。
イソシアネート基を有する有機化合物は、好ましくは、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキレン基とアルキレン基が連結した構造、芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基とアルキレン基が連結した構造、エーテル構造(−O−)、エーテル構造(−O−)とアルキレン基が連結した構造、カルボニル基(−C(=O)−)、カルボニル基とアルキレン基とが連結した構造、スルホニル基(−S(=O)−)、スルホニル基とアルキレン基とが連結した構造又はこれらがハロゲン化された構造等を有する化合物にイソシアネート基が結合した化合物であり、より好ましくは、直鎖状或いは分岐状のアルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキレン基とアルキレン基が連結した構造、芳香族炭化水素基又は芳香族炭化水素基とアルキレン基が連結した構造にイソシアネート基が結合した化合物であり、更に好ましくは、シクロアルキレン基とアルキレン基が連結した構造にイソシアネート基が結合した化合物である。イソシアネート基を有する有機化合物の分子量は特に制限されない。分子量は、好ましくは80以上であり、より好ましくは115以上、更に好ましくは170以上であり、また、300以下であり、より好ましくは230以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するイソシアネート基を有する有機化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。イソシアネート基を有する有機化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。また、市販品を用いてもよい。
【0124】
イソシアネート基を有する有機化合物としては、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ターシャルブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネートヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、エチニルイソシアネート、プロパルギルイソシアネート、フェニルイソシアネート、フロロフェニルイソシアネート等のイソシアネート基を1個有する有機化合物;
モノメチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトプロパン、1,4−ジイソシアナト−2−ブテン、1,4−ジイソシアナト−2−フルオロブタン、1,4−ジイソシアナト−2,3−ジフルオロブタン、1,5−ジイソシアナト−2−ペンテン、1,5−ジイソシアナト−2−メチルペンタン、1,6−ジイソシアナト−2−ヘキセン、1,6−ジイソシアナト−3−ヘキセン、1,6−ジイソシアナト−3−フルオロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−3,4−ジフルオロヘキサン、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−1,1’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−3,3’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−
4,4’−ジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジイルビス(
メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、カルボニルジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトブタン−1,4−ジオン、1,5−ジイソシアナトペンタン−1,5−ジオン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート等のイソシアネート基を2個有する有機化合物;
等が挙げられる。
【0125】
これらのうち、モノメチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]
ヘプタン−2,5−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート等のイソシアネート基を2個有する有機化合物が保存特性向上の点から好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビシクロ[
2.2.1]ヘプタン−2,5−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートがより好ましく、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビシクロ
[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジイルビス(メチルイソシアネート)が更に好ましい。
【0126】
イソシアネート基を有する有機化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物から誘導される三量体化合物、又はそれに多価アルコールを付加した脂肪族ポリイソシアネートであってもよい。例えば、式(2−5−1)〜(2−5−4)の基本構造で示されるビウレット、イソシアヌレート、アダクト及び二官能のタイプの変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0127】
【化20】
【0128】
(式中、R51〜R54及びR54’は、独立して、2価の炭化水素基(例えば、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基)であり、R53’は、独立して、3価の炭化水素基である。)
分子内に少なくとも2個のイソシアネート基を有する有機化合物には、ブロック剤でブロックして保存安定性を高めた、いわゆるブロックイソシアネートも含まれる。ブロック剤には、アルコール類、フェノール類、有機アミン類、オキシム類、ラクタム類を挙げることができ、具体的には、n−ブタノール、フェノール、トリブチルアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルエチルケトキシム、ε−カプロラクタム等を挙げることができる。
【0129】
イソシアネート基を有する有機化合物に基づく反応を促進し、より高い効果を得る目的で、ジブチルスズジラウレート等のような金属触媒や、1,8-ジアザビシクロ[5.4
.0]ウンデセン-7のようなアミン系触媒等を併用することも好ましい。
イソシアネート基を有する有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
【0130】
イソシアネート基を有する有機化合物の量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好まし
くは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。この範囲であれば、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0131】
上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとイソシアネート基を有する有機化合物の質量比は、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル:イソシアネート基を有する有機化合物が、1:99〜99:1であることが好ましく、5:95〜95:5がより好ましく、10:90〜90:10が更に好ましく、20:80〜80:20が特に好ましく、30:70〜70:30が極めて好ましい。この範囲であれば、電池特性、特に初期特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0132】
1−2−6.ケイ素含有化合物
本発明の電解液は、ケイ素含有化合物を含むことができる。ケイ素含有化合物は、分子内に少なくとも1つのケイ素原子を有する化合物であれば、特に制限されない。本発明の電解液において、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル絵とケイ素含有化合物を併用することによって、初期ハイレート放電容量を向上させる一方で、保存後の容量を向上させることができる。
ケイ素含有化合物としては、式(2−6)で表される化合物が好ましい。
【0133】
【化21】
【0134】
(式中、
61、R62及びR63は、独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数10以下の炭化水素基であり、
61は、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1個の原子を含む有機基である。)
炭化水素基については、式(I)における炭化水素基の例示及び好ましい例が適用される。R61、R62及びR63は、好ましくは水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tertert−ブチル基、フェニル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0135】
61は、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1個の原子を含む有機基であり、好ましくは、酸素原子又はケイ素原子を少なくとも含む有機基である。ここで、有機基とは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1個以上の原子で構成された基のことを表す。有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、CN基、イソシアナト基、フルオロ基、アルキルスルホン酸基及びトリアルキルシリル基等が挙げられる。なお、1価の有機基の一部はハロゲン原子で置換されていてもよい。また、有機基の炭素数は、1以上であることができ、好ましくは3以上、より好ましくは5以上であり、また、15以下であることができ、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。
【0136】
これらのうち、アルキルスルホン酸基、トリアルキルシリル基、ホウ酸基、リン酸基及び亜リン酸基が好ましい。
ケイ素含有化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリメトキシシリル)、ホウ酸トリス(トリエチルシリル)、ホウ酸トリス(トリエトキシシリル)、ホウ酸トリス(ジメチルビニルシリル)及びホウ酸トリス(ジエチルビニルシリル)等のホウ酸化合物; リン酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリエチルシリル)、リン酸トリス(トリプロピルシリル)、リン酸トリス(トリフェニルシリル)、リン酸トリス(トリメトキシシリル)、リン酸トリス(トリエトキシシリル)、リン酸トリス(トリフエノキシシリル)、リン酸トリス(ジメチルビニルシリル)及びリン酸トリス(ジエチルビニルシリル)等のリン酸化合物;
亜リン酸トリス(トリメチルシリル)、亜リン酸トリス(トリエチルシリル)、亜リン酸トリス(トリプロピルシリル)、亜リン酸トリス(トリフェニルシリル)、亜リン酸トリス(トリメトキシシリル)、亜リン酸トリス(トリエトキシシリル)、亜リン酸トリス(トリフエノキシシリル)、亜リン酸トリス(ジメチルビニルシリル)及び亜リン酸トリス(ジエチルビニルシリル)等の亜リン酸化合物;
メタンスルホン酸トリメチルシリル、テトラフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル等のスルホン酸化合物;
ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジフェニルテトラメチルジシラン及び1,1,2,2−テトラフェニルジシラン等のジシラン化合物;
等が挙げられる。
【0137】
これらのうち、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリル)、亜リン酸トリス(トリメチルシリル)、メタンスルホン酸トリメチルシリル、テトラフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、1,2−ジフェニルテトラメチルジシラン及び1,1,2,2−テトラフェニルジシランが好ましく、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリル)、亜リン酸トリス(トリメチルシリル)及びヘキサメチルジシランがより好ましい。
【0138】
なお、これらケイ素含有化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ケイ素含有化合物(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。この範囲であれば、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0139】
上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとケイ素含有化合物(2種以上の場合は合計量)の質量比は、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル:ケイ素含有化合物が、1:99〜99:1であることが好ましく、5:95〜95:5がより好ましく、10:90〜90:10が更に好ましく、20:80〜80:20が特に好ましく、30:70〜70:30が極めて好ましい。この範囲であれば、電池特性、特に初期特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0140】
1−2−7.式(1)以外の芳香族化合物
本発明の電解液は、式(1)以外の芳香族化合物を含むことができる。式(1)以外の芳香族化合物としては、分子内に芳香環を少なくとも1つ有している式(2)以外の有機化合物であれば、特に制限されないが、好ましくは式(2−7−1)及び式(2−7−2
)で表される芳香族化合物である。
【0141】
【化22】
【0142】
(式中、置換基X71はハロゲン原子、ハロゲン原子又はヘテロ原子を有していてもよい有機基を表す。ヘテロ原子を有していてもよい有機基とは、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖又は環状の飽和炭化水素基、カルボン酸エステル構造を有する基、カーボネート構造を有する基、リン原子を有する基、硫黄原子を有する基、ケイ素原子を有する基を示す。また、それぞれの置換基は更にハロゲン原子、炭化水素基、芳香族基、ハロゲン含有炭化水素基、ハロゲン含有芳香族基等で置換されていてもよい。また置換基X71の数n71は1以上6以下であり、複数の置換基を有する場合それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよく、また環を形成していてもよい。)
中でも、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖又は環状の飽和炭化水素基、カルボン酸エステル構造を有する基、カーボネート構造を有する基が電池特性の観点から好ましい。より好ましくは炭素数3以上12以下の直鎖又は分岐鎖又は環状の飽和炭化水素基、カルボン酸エステル構造を有する基である。
【0143】
置換基X71の数n71は好ましくは1以上5以下であり、より好ましくは1以上3以下であり、更に好ましくは1以上2以下であり、特に好ましくは1である。
71はハロゲン原子、ハロゲン原子又はヘテロ原子を有していてもよい有機基を表す。
ハロゲン原子として、塩素、フッ素等が挙げられ、好ましくはフッ素である。
【0144】
ヘテロ原子を有さない有機基として、炭素数3以上12以下の直鎖状、分岐状、環状の飽和炭化水素基が挙げられ、直鎖状、分岐状のものは環構造を持つものも含まれる。炭素数1以上12以下の直鎖状、分岐状、環状の飽和炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、等が挙げられる。炭素数は好ましくは3以上12以下、より好ましくは3以上10以下、更に好ましくは3以上8以下、更により好ましくは3以上6以下、最も好ましくは3以上5以下である。
【0145】
ヘテロ原子を有する有機基を構成するヘテロ原子として、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等が挙げられる。酸素原子を有するものとして、カルボン酸エステル構造を有する基、カーボネート構造を有する基等が挙げられる。硫黄原子を有するものとして、スルホン酸エステル構造を有する基等が挙げられる。リン原子を有するものとして、リン酸エステル構造を有する基、ホスホン酸エステル構造を有する基等が挙げられる。ケイ素原子を有するものとして、ケイ素―炭素構造を有する基等が挙げられる。
【0146】
式(2−7−1)で表される芳香族化合物としては、例えば以下が挙げられる。
71がハロゲン原子又はハロゲン原子を有していてもよい有機基であるものとして、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフ
ルオライド等が挙げられ、好ましくはフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼンである。より好ましくはフルオロベンゼンである。
【0147】
71が炭素数1以上12以下の炭化水素基であるものとして、
2,2−ジフェニルプロパン、1,4−ジフェニルシクロヘキサン、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、シス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、シス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼン等が挙げられ、好ましくは2,2−ジフェニルプロパン、1,4−ジフェニルシクロヘキサン、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、シス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、シス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼンであり、より好ましくは2,2−ジフェニルプロパン、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロヘキサン、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼンであり、更に好ましくはシクロヘキシルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼンである。
【0148】
71がカルボン酸エステル構造を有する基であるものとして、
酢酸フェニル、酢酸ベンジル、酢酸2−フェニルエチル、酢酸3−フェニルプロピル、酢酸4−フェニルブチル、プロピオン酸フェニル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸2−フェニルエチル、プロピオン酸3−フェニルプロピル、プロピオン酸4−フェニルブチル、酪酸フェニル、酪酸ベンジル、酪酸2−フェニルエチル、酪酸3−フェニルプロピル、酪酸4−フェニルブチル、フェニル酢酸フェネチル、2,2−ビス(4−アセトキシフェニル)プロパン等が挙げられ、好ましくは酢酸2−フェニルエチル、酢酸3−フェニルプロピル、プロピオン酸2−フェニルエチル、プロピオン酸3−フェニルプロピル、2,2−ビス(4−アセトキシフェニル)プロパンであり、より好ましくは酢酸2−フェニルエチル、酢酸3−フェニルプロピルである。
【0149】
71がカーボネート構造を有する基であるものとして、
2,2−ビス(4−メトキシカルボニルオキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−メトキシカルボニルオキシフェニル)シクロヘキサン、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、2−tert−ブチルフェニルメチルカーボネート、2−tert−ブチルフェニルエチルカーボネート、ビス(2−tert−ブチルフェニル)カーボネート、4−tert−ブチルフェニルメチルカーボネート、4−tert−ブチルフェニルエチルカーボネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)カーボネート、ベンジルメチルカーボネート、ベンジルエチルカーボネート、ジベンジルカーボネート等が挙げられ、好ましくは2,2−ビス(4−メトキシカルボニルオキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−メトキシカルボニルオキシフェニル)シクロヘキサン体、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネートであり、より好ましくはジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネートであり、更に好ましくはメチルフェニルカーボネートである。
【0150】
71がスルホン酸エステル構造を有する基であるものとして、
メチルフェニルスルホネート、エチルフェニルスルホネート、ジフェニルスルホネート、フェニルメチルスルホネート、2−tert−ブチルフェニルメチルスルホネート、4−tert−ブチルフェニルメチルスルホネート、シクロヘキシルフェニルメチルスルホネート等が挙げられ、好ましくはメチルフェニルスルホネート、ジフェニルスルホネート、2−tert−ブチルフェニルメチルスルホネート、4−tert−ブチルフェニルメチ
ルスルホネート、シクロヘキシルフェニルメチルスルホネートであり、より好ましくはメチルフェニルスルホネート、2−tert−ブチルフェニルメチルスルホネート、4−tert−ブチルフェニルメチルスルホネート、シクロヘキシルフェニルメチルスルホネートである。
【0151】
71がケイ素−炭素構造を有する基であるものとして、
トリメチルフェニルシラン、ジフェニルシラン、ジフェニルテトラメチルジシラン等が挙げられ、好ましくはトリメチルフェニルシランである。
71がリン酸エステル構造を有する基であるものとして、
トリフェニルホスフェート、トリス(2−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(3−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2−tert−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(3−tert−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(4−tert−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(3−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(4−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、ジエチル(4−メチルベンジル)ホスホネート等が挙げられ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリス(2−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(3−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2−tert−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(3−tert−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(4−tert−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(3−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(4−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、であり、より好ましくはトリス(2−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(4−シクロヘキシルフェニル)ホスフェートである。
【0152】
71がホスホン酸エステル構造を有する基であるものとして、
ジメチルフェニルホスホネート、ジエチルフェニルホスホネート、メチルフェニルフェニルホスホネート、エチルフェニルフェニルホスホネート、ジフェニルフェニルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロフェニル)−ホスホネート、ジメチルベンジルホスホネート、ジエチルベンジルホスホネート、メチルフェニルベンジルホスホネート、エチルフェニルベンジルホスホネート、ジフェニルベンジルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネート、ジエチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネート等が挙げられ、好ましくはジメチルフェニルホスホネート、ジエチルフェニルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロフェニル)-ホスホネート、ジメチルベンジルホスホネート、ジエチルベンジルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネート、ジエチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネートであり、より好ましくはジメチルフェニルホスホネート、ジエチルフェニルホスホネート、ジメチルベンジルホスホネート、ジエチルベンジルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネート、ジエチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネートである。
【0153】
また、式(2−7−1)で表される芳香族化合物としては、上記芳香族化合物のフッ素化体も含まれる。具体的には、トリフルオロメチルベンゼン、2−フルオロトルエン、3−フルオロトルエン、4−フルオロトルエン、トリフルオロメチルベンゼン、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の炭化水素基を有するものの部分フッ素化物;2−フルオロフェニルアセテート、4−フルオロフェニルアセテート等のカルボン酸エステル構造を有するものの部分フッ素化物;トリフルオロメトキシベンゼン、2−フルオロアニソール、3−フルオロアニソール、4−フルオロアニソール、2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール、4−トリフルオロメトキシアニソール等
のエーテル構造を有するものの部分フッ素化物等が挙げられ、好ましくはトリフルオロメチルベンゼン、2−フルオロトルエン、3−フルオロトルエン、4−フルオロトルエン、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の炭化水素基を有するものの部分フッ素化物;2−フルオロフェニルアセテート、4−フルオロフェニルアセテート等のカルボン酸エステル構造を有するものの部分フッ素化物;トリフルオロメトキシベンゼン2−フルオロアニソール、4−フルオロアニソール、2,4−ジフルオロアニソール、4−トリフルオロメトキシアニソール等のエーテル構造を有するものの部分フッ素化物等であり、より好ましくは2−フルオロトルエン、3−フルオロトルエン、4−フルオロトルエン、等の炭化水素基を有するものの部分フッ素化物;2−フルオロフェニルアセテート、4−フルオロフェニルアセテート等のカルボン酸エステル構造を有するものの部分フッ素化物;トリフルオロメトキシベンゼン、2−フルオロアニソール、4−フルオロアニソール、2,4−ジフルオロアニソール、4−トリフルオロメトキシアニソール等のエーテル構造を有するものの部分フッ素化物等である。
【0154】
式(2−7−1)で表される芳香族化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。式(2−7−1)で表される芳香族化合物の量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下、特に好ましくは4質量%以下である。上記範囲内にあることにより、本発明の効果が発現しやすく、また、電池の抵抗増大を防ぎやすい。
【0155】
上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルと式(2−7−1)で表される芳香族化合物(2種以上の場合は合計量)の質量比は、1:99〜99:1が好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、20:80〜80:20が特に好ましい。この範囲であると、電池特性が低下せずに過充電特性を向上させることができる。
【0156】
【化23】
【0157】
(式中、R11〜R15は、独立して、水素、ハロゲン又は非置換もしくはハロゲン置換の炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、R16及びR17は、独立して、炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、R11〜R17のうち少なくとも2つが一緒になって環を形成していてもよく、ただし、式(2−7−2)は、(A)及び(B):
(A)R11〜R15のうち少なくとも1つは、ハロゲン又は非置換もしくはハロゲン置換の炭素数1以上20以下の炭化水素基である、
(B)R11〜R17の炭素数の合計は、3以上20以下である、のうち少なくとも一方の条件を満たす)
で表される芳香族化合物である。R11〜R17のうち少なくとも2つが一緒になって環を形成している場合、R11〜R17のうち2つが一緒になって環を形成していることが好ましい。
【0158】
16及びR17は、独立して、炭素数1以上12以下の炭化水素基(例えば、アルキル基、アリール基)であり、R16とR17は一緒になって環(例えば、炭化水素基である環式基)を形成していてもよい。初期効率及び溶解性や保存特性向上の観点から、R16及びR17は、好ましくは炭素数1以上12以下の炭化水素基であるか、R16とR17が一緒になって形成した炭化水素基である環式基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基であるか、R16とR17が一緒になって形成した炭化水素基である5〜8員の環式基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、R16とR17が一緒になって形成したシクロヘキシル基、シクロペンチル基、であり、最も好ましくはメチル基、エチル基、R16とR17が一緒になって形成したシクロヘキシル基である。
【0159】
11〜R15は、独立して、水素、ハロゲン又は非置換もしくはハロゲン置換の炭素数1以上20以下の炭化水素基(例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基)であり、これらのうち2つは一緒になって環(例えば、炭化水素基である環式基)を形成していてもよい。初期効率及び溶解性や保存特性向上の観点から、好ましくは水素、フッ素、非置換もしくはハロゲン置換の炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、より好ましくは水素、フッ素、非置換もしくはフッ素置換の炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、更に好ましくは水素、フッ素、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−ヘキシル基、tert−ヘプチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、トリフルオロメチル基、ノナフルオロtert−ブチル基、1−メチル−1−フェニル−エチル基、1−エチル−1−フェニル−プロピル基であり、特に好ましくは水素、フッ素、tert−ブチル基、1−メチル−1−フェニル−エチル基であり、最も好ましくは水素、tert−ブチル基、1−メチル−1−フェニル−エチル基である。
【0160】
11〜R15のいずれか1つとR16が一緒になって環(例えば、炭化水素基である環式基)を形成してもよい。好ましくはR11とR16とが一緒になって環(例えば、炭化水素基である環式基)を形成してしている。この場合、R17は、アルキル基であることが好ましい。R17がメチル基で、R11とR16が一緒になって環を形成した化合物として、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダン、2,3−ジヒドロ1,3−ジメチル−1−(2−メチル−2−フェニルプロピル)−3−フェニル−1H−インダン等が挙げられる。
【0161】
式(2−7−2)は、(A)及び(B):
(A)R11〜R15のうち少なくとも1つは、ハロゲン又は非置換もしくはハロゲン置換の炭素数1以上20以下の炭化水素基である、
(B)R11〜R17の炭素数の合計は、3以上20以下である、
のうち少なくとも一方の条件を満たす。
【0162】
式(2−7−2)は、通常の電池動作電圧範囲内における正極上での酸化抑制の点から、(A)を満たしていることが好ましく、電解液への溶解性の点から、(B)を満たしていることが好ましい。式(2−7−2)は、(A)と(B)の両方を満たしていてもよい。
(A)について、R11〜R15のうち少なくとも1つが、ハロゲン又は非置換もしくはハロゲン置換の炭素数1以上20以下の炭化水素基であれば、他は水素原子であっても、環を形成していてもよい。電解液への溶解性の観点から、非置換もしくはハロゲン置換の炭化水素基の炭素数は1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、更に好ましくは1以上3以下、更により好ましくは1又は2、最も好ましくは1である。
【0163】
(B)について、R11〜R17の炭素数の合計は3以上20以下であれば、R11
17のうち少なくとも2つが一緒になって環を形成していてもよい。R11〜R17のうち少なくとも2つが一緒になって環を形成している場合、炭素数の合計の算出にあたっては、環を形成する炭素のうち、R11〜R17に相当しない炭素(R11〜R15については、これらが結合しているベンゼン環を構成する炭素、R16及びR17については、ベンジル位の炭素)はカウントしないこととする。炭素数の合計は、電解液への溶解度の点から、好ましくは3以上14以下であり、より好ましくは3以上10以下である。例えば、R17がメチル基で、R11とR16が一緒になって環を形成している化合物として1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダン、2,3−ジヒドロ1,3−ジメチル−1−(2−メチル−2−フェニルプロピル)−3−フェニル−1H−インダン等が挙げられるが、これは(B)の条件を満たす。
【0164】
式(2−7−2)で表される芳香族化合物としては、以下が挙げられる。
16及びR17が、独立して、炭素数1以上20以下の炭化水素基であり(ただし、R16及びR17の合計は炭素数3以上20以下である)、R11〜R15が水素である化合物((B)を満たす)。
2,2−ジフェニルブタン、3,3−ジフェニルペンタン、3,3−ジフェニルヘキサン、4,4−ジフェニルヘプタン、5,5−ジフェニルオクタン、6,6−ジフェニルノナン、1,1−ジフェニル−1,1−ジtert−ブチル−メタン。
【0165】
【化24】
【0166】
16及びR17が一緒になって環を形成しており、R11〜R15が水素である化合物((B)を満たす)。
1,1−ジフェニルシクロヘキサン、1,1−ジフェニルシクロペンタン、1,1−ジフェニル−4−メチルシクロヘキサン。
下記の化合物であってもよい(上記例示の化合物と重複する場合があるが、構造式で示すこととする)。
【0167】
【化25】
【0168】
11〜R15のうち少なくとも1つがハロゲン又は非置換もしくはハロゲン置換の炭素数1以上20以下の炭化水素基である化合物((A)を満たす)。
1,3−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン。
下記の化合物であってもよい(上記例示の化合物と重複する場合があるが、構造式で示すこととする)。
【0169】
【化26】
【0170】
17が炭素数1以上20以下の炭化水素基(例えば、炭素数1以上20以下のアルキル基であり、好ましくはメチル基)であり、R11とR16が一緒になって環を形成している化合物((B)を満たす)。
1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダン。
下記の化合物であってもよい(上記例示の化合物と重複する場合があるが、構造式で示すこととする)。
【0171】
【化27】
【0172】
中でも、初期の負極上での還元性の観点から好ましいのは、
2,2−ジフェニルブタン、3,3−ジフェニルペンタン、1,1−ジフェニル−1,1−ジtert−ブチル−メタン、1,1−ジフェニルシクロヘキサン、1,1−ジフェニルシクロペンタン、1,1−ジフェニル−4−メチルシクロヘキサン、1,3−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダンである。
【0173】
下記の化合物も好ましいものとして挙げられる(上記好ましい化合物と重複する場合があるが、構造式で示すこととする)。
【0174】
【化28】
【0175】
より好ましいのは、
2,2−ジフェニルブタン、1,1−ジフェニルシクロヘキサン、1,1−ジフェニル−4−メチルシクロヘキサン、1,3−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダンである。
【0176】
下記の化合物もより好ましいものとして挙げられる(上記より好ましい化合物と重複する場合があるが、構造式で示すこととする)。
【0177】
【化29】
【0178】
更に好ましいのは1,1−ジフェニルシクロヘキサン、1,1−ジフェニル−4−メチルシクロヘキサン、1,3−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダンである。
下記の化合物も更に好ましいものとして挙げられる(上記更に好ましい化合物と重複する場合があるが、構造式で示すこととする)。
【0179】
【化30】
【0180】
特に好ましいのは1,1−ジフェニルシクロヘキサン、1,3−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダンであり、下記の構造式で表される。
【0181】
【化31】
【0182】
最も好ましくは1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダン化合物であり、以下の構造式で表される。
【0183】
【化32】
【0184】
式(2−7−2)で表される芳香族化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。非水系電解液全量(100質量%)中、式(2−7−2)で表される芳香族化合物の量(2種以上の場合は合計量)は、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2.5質量%以
下である。上記範囲内にあることにより、本発明の効果が発現しやすく、また、電池の抵抗増大を防ぐことができる。
【0185】
【化33】
【0186】
(式(2)中、Rは炭素数1以上4以下の炭化水素基を表し、Rはエチル基、n−プロピル基又はn−ブチル基である。)
上記Rにおける炭素数1以上4以下の炭化水素基は特に限定されないが、炭素数は、通常1以上、好ましくは2以上であり、通常4以下、好ましくは3以下である。具体的な炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜3のアルケニル基、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等の炭素数2〜4のアルキニル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が更に好ましく、エチル基、n−プロピル基が特に好ましい。
【0187】
上記Rはエチル基、n−プロピル基又はn−ブチル基であり、好ましくはエチル基、n−プロピル基、より好ましくはエチル基である。
上記式(2)で表されるカルボン酸エステルとしては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸n−ブチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸n−プロピル、イソ酪酸n−ブチル、吉草酸エチル、吉草酸n−プロピル、吉草酸n−ブチル、ヒドロアンゲリカ酸エチル、ヒドロアンゲリカ酸n−プロピル、ヒドロアンゲリカ酸n−ブチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸n−プロピル、イソ吉草酸n−ブチル、ピバル酸エチル、ピバル酸n−プロピル、ピバル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピ
ル、メタクリル酸n−ブチル、クロトン酸エチル、クロトン酸n−プロピル、クロトン酸n−ブチル、3−ブテン酸エチル、3−ブテン酸n−プロピル、3−ブテン酸n−ブチル、4−ペンテン酸エチル、4−ペンテン酸n−プロピル、4−ペンテン酸n−ブチル、3−ペンテン酸エチル、3−ペンテン酸n−プロピル、3−ペンテン酸n−ブチル、2−ペンテン酸エチル、2−ペンテン酸n−プロピル、2−ペンテン酸n−ブチル、2−プロピン酸エチル、2−プロピン酸n−プロピル、2−プロピン酸n−ブチル、3−ブチン酸エチル、3−ブチン酸n−プロピル、3−ブチン酸n−ブチル、2−ブチン酸エチル、2−ブチン酸n−プロピル、2−ブチン酸n−ブチル、4−ペンチン酸エチル、4−ペンチン酸n−プロピル、4−ペンチン酸n−ブチル、3−ペンチン酸エチル、3−ペンチン酸n−プロピル、3−ペンチン酸n−ブチル、2−ペンチン酸エチル、2−ペンチン酸n−プロピル、2−ペンチン酸n−ブチル等が挙げられる。
【0188】
これらのうち、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸n−ブチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸n−プロピル、イソ酪酸n−ブチル、吉草酸エチル、吉草酸n−プロピル、吉草酸n−ブチル、ヒドロアンゲリカ酸エチル、ヒドロアンゲリカ酸n−プロピル、ヒドロアンゲリカ酸n−ブチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸n−プロピル、イソ吉草酸n−ブチル、ピバル酸エチル、ピバル酸n−プロピル、ピバル酸n−ブチルが初期特性向上の点から好ましく、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸n−ブチル、吉草酸エチル、吉草酸n−プロピル、吉草酸n−ブチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸n−プロピル、イソ吉草酸n−ブチルが好ましく、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸n−ブチル、吉草酸エチル、吉草酸n−プロピル、吉草酸n−ブチルがより好ましく、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸n−ブチルが更に好ましい。
【0189】
式(2)で表されるカルボン酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
式(2)で表されるカルボン酸エステルの量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下であることができ、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下、更により好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。また、式(2)で表されるカルボン酸エステルを非水溶媒として用いる場合の配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは10体積%以上、更により好ましくは20体積%以上であり、また、50体積%以下で含有させることができ、より好ましくは45体積%以下、更に好ましくは40体積%以下である。
【0190】
上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルと式(2)で表されるカルボン酸エステルの質量比は、負極上での複合的な界面保護被膜形成の点から、1:99〜99:1であることが好ましく、5:95〜95:5がより好ましく、10:90〜90:10が更に好ましく、20:80〜80:20が特に好ましく、30:70〜70:30が極めて好ましい。この範囲で配合した場合、各添加剤の正負極での副反応を効率よく抑制でき、電池特性が向上する。特に、初期抑制及び過充電時の安全性向上に有用である。
【0191】
1−2−9.複数のエーテル結合を有する環状化合物
複数のエーテル結合を有する環状化合物としては、分子内に複数のエーテル結合を有する環状化合物であれば、特に限定されないが、好ましくは式(2−9)で表される化合物
である。複数のエーテル結合を有する環状化合物は、電池の高温保存特性の向上に寄与するものであり、本発明の電解液においては、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルと併用することで、良好な初期特性を保持することができる。
【0192】
【化34】
【0193】
(式中、
15〜A20は、独立して、水素原子、フッ素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1以上5以下の炭化水素基を表す。n101は1以上4以下の整数であり、n101が2以上の整数の場合は、複数のA17及びA18は同一であっても異なっていてもよい。)
尚、A15〜A20から選ばれる2つが互いに結合して環を形成してもよい。この場合、A17及びA18で環構造を形成することが好ましい。また、A15〜A20の炭素数の総和が、好ましくは0以上8以下、より好ましくは0以上4以下、更に好ましくは0以上2以下、特に好ましくは0以上1以下である。
【0194】
置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、そして、シアノ基、イソシアナト基、エーテル基、カーボネート基、カルボニル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニル基、ホスファントリイル基及びホスホリル基等が挙げられる。これらのうち、好ましくはハロゲン原子、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、そして、イソシアナト基、シアノ基、エーテル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基であり、より好ましくは、ハロゲン原子で置換されていないアルキル基、シアノ基及びエーテル基である。
【0195】
式(2−9)中、n101は1以上3以下の整数であることが好ましく、1以上2以下の整数であることがより好ましく、n101が2であることが更に好ましい。
15〜A20における炭素数1以上5以下の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基等の1価の炭化水素基;
アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基等の2価の炭化水素基;等が挙げられる。これらのうち、アルキル基、アルキレン基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0196】
炭化水素基の具体例としては、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基等の炭素数1以上5以下のアルキル基;
ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基等の炭素数2以上5以下のアルケニル基;
エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基等の炭素数2以上5以下のアルキニル基;
メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数1以上5以下のアルキレン基;
ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基等の炭素数2以上5以下のアルケニレン基;
エチニレン基、プロピニレン基、1−ブチニレン基、2−ブチニレン基、1−ペンチニレン基及び2−ペンチニレン基等の炭素数2以上5以下のアルキニレン基等が挙げられる。これらのうち、好ましくはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数1以上5以下のアルキレン基であり、より好ましくはエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数2以上5以下のアルキレン基であり、更に好ましくはトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数3以上5以下のアルキレン基である。
【0197】
15〜A20における水素原子、フッ素原子又は炭素数1以上5以下の炭化水素基とは、水素原子、フッ素原子又は上記置換基と上記炭素数1以上5以下の炭化水素基を組み合わせた基のことを表し、好ましくは水素原子、置換基を有さない炭素数1以上5以下の炭化水素基及びアルキレン基の炭素鎖の一部がエーテル基で置換されたエーテル構造を有するアルキレン基であり、より好ましくは水素原子である。
複数のエーテル結合を有する環状化合物としては、例えば以下の化合物を挙げることができる。
【0198】
【化35】
【0199】
【化36】
【0200】
【化37】
【0201】
【化38】
【0202】
【化39】
【0203】
【化40】
【0204】
中でも、
【0205】
【化41】
【0206】
等の化合物が好ましい。
【0207】
【化42】
【0208】
がより好ましい。
複数のエーテル結合を有する環状化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。複数のエーテル結合を有する環状化合物の量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。上記範囲を満たした場合は、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0209】
1−3.電解質
電解質は特に制限なく、電解質として公知のものを任意に用いることができる。リチウム二次電池の場合は、通常リチウム塩が用いられる。具体的には、LiPF、LiBF4、LiClO、LiAlF、LiSbF、LiTaF、LiWF等の無機リチウム塩;LiWOF等のタングステン酸リチウム類;HCOLi、CHCOLi、CHFCOLi、CHFCOLi、CFCOLi、CFCHCOLi、CFCFCOLi、CFCFCFCOLi、CFCFCFCFCOLi等のカルボン酸リチウム塩類;FSOLi、CHSOLi、CHFSOLi、CHFSOLi、CFSOLi、CFCFSOLi、CFCFCFSOLi、CFCFCFCFSOLi等のスルホン酸リチウ
ム塩類;LiN(FCO)、LiN(FCO)(FSO)、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CFSO)(CSO)等のリチウムイミド塩類;LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO等のリチウムメチド塩類;リチウムビス(マロナト)ボレート、リチウムジフルオロ(マロナト)ボレート等のリチウム(マロナト)ボレート塩類;リチウムトリス(マロナト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(マロナト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(マロナト)ホスフェート等のリチウム(マロナト)ホスフェート塩類;その他、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBFCF、LiBF、LiBF、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO等の含フッ素有機リチウム塩類;リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート等のリチウムオキサラトボレート塩類;
リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート等のリチウムオキサラトホスフェート塩類;等が挙げられる。
【0210】
中でも、LiPF、LiSbF、LiTaF、FSOLi、CFSOLi、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiBFCF、LiBF、LiPF(CF、LiPF(C3、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、等が出力特性やハイレート充放電特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点から特に好ましい。
【0211】
非水系電解液中のこれらの電解質の濃度は、本発明の効果を損なわない限り、その含有量は特に制限されないが、電解液の電気伝導率を良好な範囲とし、良好な電池性能を確保する点から、非水系電解液中のリチウムの総モル濃度は、好ましくは0.3mol/L以上、より好ましくは0.4mol/L以上、更に好ましくは0.5mol/L以上であり、また、好ましくは3mol/L以下、より好ましくは2.5mol/L以下、更に好ましくは2.0mol/L以下である。この範囲であれば、荷電粒子であるリチウムが少なすぎず、また粘度を適切な範囲とすることができるため、良好な電気伝導度を確保しやすくなる。
【0212】
2種以上の電解質を併用する場合、少なくとも1種は、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩であることも好まく、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩であることもより好ましい。これらのうちリチウム塩が好ましい。モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩は、0.01質量%以上であることができ、好ましくは0.1質量%以上であり、また、20質量%以下であることができ、好ましくは10質量%以下である。
【0213】
電解質として、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる1種以上と、それ以外の塩の1種以上を含むことが好ましい。それ以外の塩としては、上記で例示したリチウム塩が挙げられ、特
に、LiPF、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiBFCF、LiBF、LiPF(CF、LiPF(Cが好ましく、LiPFが更に好ましい。それ以外の塩は、電解液の電導度と粘度の適切なバランスを確保する観点から0.01質量%以上であることができ、好ましくは0.1質量%以上であり、また、20質量%以下であることができ、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0214】
電解質の合計量は、良好な電池性能を確保する点から、非水系電解液中、好ましくは0.3mol/L以上、より好ましくは0.4mol/L以上、更に好ましくは0.5mol/L以上であり、また、好ましくは3mol/L以下、より好ましくは2.5mol/L以下、更に好ましくは2.0mol/L以下、特に好ましくは1.5mol/L以下である。
【0215】
1−3−1.モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、それぞれ、分子内に少なくとも1つのモノフルオロリン酸又はジフルオロリン酸構造を有する塩であれば、特に制限されない。本発明の電解液において、上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩から選ばれる1種以上とを併用することにより、電池の初期充放電後の体積変化を著しく抑制し、過充電時安全性の一層の向上を図ることができる。また、併用によって、電池の初期不可逆容量を小さくし、放電保存特性を向上させることもできる。これと同時に、電池は優れた高温サイクル特性を有することができる。
【0216】
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩におけるカウンターカチオンは、特に制限されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、NR121122123124(式中、R121〜R124は、独立して、水素原子又は炭素数1以上12以下の有機基である)で表されるアンモニウム等が挙げられる。上記アンモニウムのR121〜R124で表わされる炭素数1以上12以下の有機基は特に制限されず、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR121〜R124は、独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は窒素原子含有複素環基等が好ましい。カウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、中でもリチウムが好ましい。
【0217】
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩としては、モノフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸ナトリウム、ジフルオロリン酸カリウム等が挙げられ、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウムが好ましく、ジフルオロリン酸リチウムがより好ましい。
【0218】
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩から選ばれる1種以上の量(2種以上の場合は合計量)は、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、また、5質量%以下であることができ、好ましくは3質量
%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。この範囲内であると、初期不可逆容量向上の効果が顕著に発現される。
【0219】
上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとモノフルオロリン酸塩及び塩から選ばれる1種以上(2種以上の場合は合計量)の質量比は、1:99〜99:1が好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、20:80〜80:20が特に好ましい。この範囲であると、他の電池特性を低下せずに目的である特性を向上させることができる。
【0220】
1−3−2.ホウ酸塩
ホウ酸塩は、分子内にホウ素原子を少なくとも1つ有している塩であれば、特に制限されない。ただしシュウ酸塩に該当するものは、1−3−2.ホウ酸塩ではなく、後述する1−3−3.シュウ酸塩に包含されるものとする。本発明の電解液において、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとホウ酸塩とを併用することによって、初期特性及び保存特性も改善され、更に、過充電時安全性に優れた電池が得られる。
【0221】
ホウ酸塩におけるカウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ルビジウム、セシウム、バリウム等が挙げられ、中でもリチウムが好ましい。
ホウ酸塩としては、リチウム塩が好ましく、含ホウ酸リチウム塩も好適に使用することができる。例えばLiBF、LiBFCF、LiBF、LiBF、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO等が挙げられる。中でも、LiBFが初期充放電効率と高温サイクル特性等を向上させる効果がある点からより好ましい。
【0222】
ホウ酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ホウ酸塩の量(2種以上の場合は合計量)は、0.05質量%以上であることができ、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.4質量%以上であり、また、10.0質量%以下であることができ、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.0質量%以下である。この範囲内であると、電池負極の副反応が抑制され抵抗を上昇させにくい。
【0223】
上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとホウ酸塩の質量比は、1:99〜99:1が好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、20:80〜80:20が特に好ましい。この範囲であると、電池中での正負極上副反応を抑制し、電池の抵抗を上昇させにくい。
また、電解質としてホウ酸塩とLiPFを用いた場合、非水電解液中のLiPFのモル含有量に対するホウ酸塩のモル含有量の比は、0.001以上12以下が好ましく、0.01〜1.1がより好ましく、0.01〜1.0が更に好ましく、0.01〜0.7がより好ましい。この範囲であると、電池中での正負極上副反応を抑制し、電池の充放電効率が向上する。
【0224】
1−3−3.シュウ酸塩
シュウ酸塩は、分子内に少なくとも1つのシュウ酸構造を有する化合物であれば、特に制限されない。本発明の電解液において、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとシュウ酸塩とを併用することによって、初期特性及び保存特性も改善された電池が得られる。
【0225】
シュウ酸塩としては、式(9)で表される金属塩が好ましい。この塩は、オキサラト錯体をアニオンとする塩である。
【0226】
【化43】
【0227】
(式中、
は、周期表における1族、2族及びアルミニウム(Al)からなる群より選ばれる元素であり、
は、遷移金属、周期表の13族、14族及び15族からなる群より選ばれる元素であり、
91は、ハロゲン、炭素数1以上11以下のアルキル基及び炭素数1以上11以下のハロゲン置換アルキル基からなる群より選ばれる基であり、
a及びbは正の整数であり、
cは0又は正の整数であり、
dは1〜3の整数である。)
は、本発明の電解液をリチウム二次電池に用いたときの電池特性の点から、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムが好ましく、リチウムが特に好ましい。
【0228】
は、リチウム二次電池に用いる場合の電気化学的安定性の点で、ホウ素及びリンが特に好ましい。
91としては、フッ素、塩素、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、ペンタフルオロエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、フッ素、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0229】
式(9)で表される金属塩としては、以下が挙げられる。
リチウムジフルオロオキサラトボレート及びリチウムビス(オキサラト)ボレート等のリチウムオキサラトボレート塩類;
リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート等のリチウムオキサラトホスフェート塩類;
これらのうち、リチウムビス(オキサラト)ボレート及びリチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェートが好ましく、リチウムビス(オキサラト)ボレートがより好ましい。
【0230】
シュウ酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
シュウ酸塩の量(2種以上の場合は合計量)は、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質
量%以下である。この範囲にあると、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0231】
上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとシュウ酸塩の質量比は、1:99
〜99:1が好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、20:80〜80:20が特に好ましい。この範囲であると、電池の正負極上での副反応をバランスよく抑制し、電池特性を向上させやすい。
【0232】
1−3−4.フルオロスルホン酸塩
フルオロスルホン酸塩としては、分子内に少なくとも1つのフルオロスルホン酸構造を有している塩であれば、特に制限されない。本発明の電解液において、上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとフルオロスルホン酸塩とを併用することにより、初期特性及び保存特性も改善された電池が得られる。
【0233】
フルオロスルホン酸塩におけるカウンターカチオンは、特に制限されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム及び、NR131132133134(式中、R131〜R134は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上12以下の有機基である)で表されるアンモニウム等が挙げられる。R131〜R134に関する例示及び好ましい例については、上記1−2−2におけるR131〜R134が適用される。カウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、中でもリチウムが好ましい。
【0234】
フルオロスルホン酸塩としては、フルオロスルホン酸リチウム、フルオロスルホン酸ナトリウム、フルオロスルホン酸カリウム、フルオロスルホン酸ルビジウム、フルオロスルホン酸セシウム等が挙げられ、フルオロスルホン酸リチウムが好ましい。リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド等のフルオロスルホン酸構造を有するイミド塩もフルオロスルホン酸塩として使用することができる。
【0235】
フルオロスルホン酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
フルオロスルホン酸塩の含有量(2種以上の場合は合計量)は、0.05質量%以上であることができ、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.4質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。この範囲内であると、電池中での副反応が少なく、抵抗を上昇させにくい。
【0236】
上記式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとフルオロスルホン酸塩の質量比は、1:99〜99:1が好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、20:80〜80:20が特に好ましい。この範囲であると、電池中での副反応を適切に抑制し、高温耐久特性を低下させにくい。
【0237】
1−4.非水溶媒
本発明における非水溶媒について特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることが可能である。具体的には、フッ素原子を有していない環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状及び鎖状カルボン酸エステル、エーテル系化合物、スルホン系化合物等が挙げられる。
【0238】
また、本明細書において、非水溶媒の体積は25℃での測定値であるが、エチレンカーボネートのように25℃で固体のものは融点での測定値を用いる。
1−4−1.フッ素原子を有していない環状カーボネート
フッ素原子を有していない環状カーボネートとしては、炭素数2〜4のアルキレン基を有する環状カーボネートが挙げられる。
【0239】
炭素数2〜4のアルキレン基を有する、フッ素原子を有していない環状カーボネートの具体的な例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートが挙げられる。中でも、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
フッ素原子を有していない環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0240】
フッ素原子を有していない環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、1種を単独で用いる場合の配合量は、非水溶媒100体積%中、5体積%以上、より好ましくは10体積%以上である。この範囲とすることで、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。また、95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、更に好ましくは85体積%以下である。この範囲とすることで、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池の負荷特性を良好な範囲としやすくなる。
【0241】
1−4−2.鎖状カーボネート
鎖状カーボネートとしては、炭素数3〜7の鎖状カーボネートが好ましく、炭素数3〜7のジアルキルカーボネートがより好ましい。
鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、tert−ブチルメチルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、tert−ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。
【0242】
中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネートが好ましく、特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と記載する場合がある)も好適に用いることができる。
【0243】
フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。
フッ素化鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート及びその誘導体、フッ素化エチルメチルカーボネート及びその誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート及びその誘導体等が挙げられる。
【0244】
フッ素化ジメチルカーボネート及びその誘導体としては、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。
フッ素化エチルメチルカーボネート及びその誘導体としては、2−フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、2−フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2−ジフル
オロエチルフルオロメチルカーボネート、2−フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
【0245】
フッ素化ジエチルカーボネート及びその誘導体としては、エチル−(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、2,2−ジフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’,2’−ジフルオロエチルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
【0246】
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。鎖状カーボネートの配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、更に好ましくは15体積%以上である。このように下限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。また、鎖状カーボネートは、非水溶媒100体積%中、90体積%以下、より好ましくは85体積%以下であることが好ましい。このように上限を設定することにより、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0247】
1−4−3.環状カルボン酸エステル
環状カルボン酸エステルとしては、炭素数が3〜12のものが好ましい。
具体的には、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトン等が挙げられる。中でも、ガンマブチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
【0248】
環状カルボン酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
環状カルボン酸エステルの配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上である。この範囲であれば、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、環状カルボン酸エステルの配合量は、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である。このように上限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0249】
1−4−4.エーテル系化合物
エーテル系化合物としては、一部の水素がフッ素にて置換されていてもよい炭素数3〜10の鎖状エーテル、及び炭素数3〜6の環状エーテルが好ましい。
炭素数3〜10の鎖状エーテルとしては、
ジエチルエーテル、ジ(2−フルオロエチル)エーテル、ジ(2,2−ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(2−フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、エチル−n−プロピルエーテル、エチル(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,
3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2−フルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2−フルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2,2,2−トリフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−プロピルエーテル、(n−プロピル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(2−フルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2−フルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0250】
炭素数3〜6の環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙げられる。
中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点で好ましく、特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンである。
【0251】
エーテル系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
エーテル系化合物の配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、更に好ましくは15体積%以上、また、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下、更に好ましくは50体積%以下である。この範囲であれば、鎖状エーテルのリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすく、負極活物質が炭素質材料の場合、鎖状エーテルがリチウムイオンと共に共挿入されて容量が低下するといった事態を回避しやすい。
【0252】
1−4−5.スルホン系化合物
スルホン系化合物としては、炭素数3〜6の環状スルホン、及び炭素数2〜6の鎖状スルホンが好ましい。1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが好ましい。
炭素数3〜6の環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;
ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。
【0253】
中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも含めて「スルホラン類」と記載する場合がある)が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキル基で置換されたものが好ましい。
【0254】
中でも、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン、2−フルオロスルホラン、3−フルオロスルホラン、2,2−ジフルオロスルホラン、2,3−ジフルオロスルホラン、2,4−ジフルオロスルホラン、2,5−ジフルオロスルホラン、3,4−ジフルオロスルホラン、2−フルオロ−3−メチルスルホラン、2−フルオロ−2−メチルスルホラン、3−フルオロ−3−メチルスルホラン、3−フルオロ−2−メチルスルホラン、4−フルオロ−3−メチルスルホラン、4−フルオロ−2−メチルスルホラン、5−フルオロ−3−メチルスルホラン、5−フルオロ−2−メチルスルホラン、2−フルオロメチルスルホラン、3−フルオロメチルスルホラン、2−ジフルオロメチルスルホラン、3−ジフルオロメチルスルホラン、2−トリフルオロメチルスルホラン、3−トリフルオロメチルスルホラン、2−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、3−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、5−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン等が、イオン伝導度が高く、入出力特性が高い点で好ましい。
【0255】
また、炭素数2〜6の鎖状スルホンとしては、
ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、n−プロピルエチルスルホン、ジ−n−プロピルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、n−ブチルエチルスルホン、tert−ブチルメチルスルホン、tert−ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(トリフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル−n−プロピルスルホン、ジフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−tert−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−tert−ブチルスルホン等が挙げられる。
【0256】
中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、tert−ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−tert−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−tert−ブチルスルホン等がイオン伝導度が高く、入出力特性が高い点で好ましい。
【0257】
スルホン系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
スルホン系化合物の配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは0.3体積%以上、より好ましくは1体積%以上、更に好ましくは5体積%以上であり、また、好ましくは40体積%以下、より好ましくは35体積%以下、更に好ましくは30体積%以下である。この範囲であれば、サイクル特性や保存特性等の耐久性の向上効果が得られやすく、また、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避することができ、非水系電解液二次電池の充放電を高電流密度で行う場合に、充放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0258】
1−4−6.非水溶媒の組成
本発明の非水溶媒として、上記例示した非水溶媒1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
例えば、非水溶媒の好ましい組合せの1つとして、フッ素原子を有していない環状カーボネートと鎖状カーボネートを主体とする組合せが挙げられる。
【0259】
中でも、非水溶媒に占めるフッ素原子を有していない環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計が、好ましくは70体積%以上、より好ましくは80体積%以上、更に好ま
しくは90体積%以上であり、かつ環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計に対するフッ素原子を有していない環状カーボネートの割合が好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、更に好ましくは15体積%以上であり、また、好ましくは50体積%以下、より好ましくは35体積%以下、更に好ましくは30体積%以下、特に好ましくは25体積%以下である。
【0260】
これらの非水溶媒の組み合わせを用いると、これを用いて作製された電池のサイクル特性と高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量及び高負荷放電容量)のバランスが良くなることがある。
例えば、フッ素原子を有していない環状カーボネートと鎖状カーボネートの好ましい組み合わせとしては、
エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0261】
フッ素原子を有していない環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組み合わせの中で、鎖状カーボネートとして非対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものが更に好ましく、特に、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートといったエチレンカーボネートと対称鎖状カーボネート類と非対称鎖状カーボネート類を含有するものが、サイクル特性と大電流放電特性のバランスが良いので好ましい。
【0262】
中でも、非対称鎖状カーボネート類がエチルメチルカーボネートであるのが好ましく、又、鎖状カーボネートのアルキル基は炭素数1〜2が好ましい。
これらのエチレンカーボネートと鎖状カーボネート類との組み合わせに、更にプロピレンカーボネートを加えた組み合わせも、好ましい組み合わせとして挙げられる。
プロピレンカーボネートを含有する場合には、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの体積比は、99:1〜40:60が好ましく、特に好ましくは95:5〜50:50である。更に、非水溶媒全体に占めるプロピレンカーボネートの割合は、好ましくは0.1体積%以上、より好ましくは1体積%以上、更に好ましくは2体積%以上、また、好ましくは20体積%以下、より好ましくは8体積%以下、更に好ましくは5体積%以下である。
【0263】
この濃度範囲でプロピレンカーボネートを含有すると、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートとの組み合わせの特性を維持したまま、更に低温特性が優れることがあるので好ましい。
非水溶媒中にジメチルカーボネートを含有する場合は、全非水溶媒中に占めるジメチルカーボネートの割合が、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、更に好ましくは25体積%以上、特に好ましくは30体積%以上であり、また、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、更に好ましくは75体積%以下、特に好ましくは、70体積%以下となる範囲で含有させると、電池の負荷特性が向上することがある。
【0264】
中でも、ジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを含有し、ジメチルカーボネートの含有割合をエチルメチルカーボネートの含有割合よりも多くすることにより、電解液の電気伝導度を維持できながら、高温保存後の電池特性が向上することがあり好まし
い。
全非水溶媒中に占めるジメチルカーボネートのエチルメチルカーボネートに対する体積比(ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート)は、電解液の電気伝導度の向上と保存後の電池特性を向上させる点で、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.5以上が更に好ましい。上記体積比(ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート)は、低温での電池特性を向上の点で、40以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、8以下が特に好ましい。
【0265】
上記フッ素原子を有していない環状カーボネートと鎖状カーボネートを主体とする組合せにおいては、環状カルボン酸エステル類、鎖状カルボン酸エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、含硫黄有機溶媒、含燐有機溶媒、芳香族含フッ素溶媒等、他の溶媒を混合してもよい。
【0266】
1−5.助剤
本発明の電解液電池において、上記化合物以外に、目的に応じて適宜助剤を用いてもよい。助剤としては、以下に示される炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート及びその他の助剤等が挙げられる。
【0267】
1−5−1.炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート
炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」と記載する場合がある)としては、炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を有する環状カーボネートであれば、特に制限はなく、任意の不飽和カーボネートを用いることができる。なお、芳香環を有する環状カーボネートも、不飽和環状カーボネートに包含されることとする。
【0268】
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、芳香環又は炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類、カテコールカーボネート類等が挙げられる。
ビニレンカーボネート類としては、 ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5−ジビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5−ジアリルビニレンカーボネート、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0269】
芳香環又は炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5−ジエチニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−エチニルエチレンカーボネート、4−ビニル−5−エチニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−エチニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、4−フェニル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−フェニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−メチル−5−アリルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0270】
中でも、特に併用するのに好ましい不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニル
ビニレンカーボネート、4,5−ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5−ジアリルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−ビニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−メチル−5−アリルエチレンカーボネート、4−アリル−5−ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5−ジエチニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−エチニルエチレンカーボネート、4−ビニル−5−エチニルエチレンカーボネートが挙げられる。また、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートは更に安定な界面保護被膜を形成するので好ましく、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネーがより好ましい。
【0271】
不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、80以上、より好ましくは85以上であり、また、好ましくは、250以下であり、より好ましくは150以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する不飽和環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。
【0272】
不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、不飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。不飽和環状カーボネートの配合量は、非水系電解液100質量%中、好ましくは、0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。この範囲内であれば、非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0273】
1−5−2.その他の助剤
本発明の電解液には、公知のその他の助剤を用いることができる。その他の助剤としては、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物;亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、ジメチルホスフィン酸メチル、ジエチルホスフィン酸エチル、トリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド等の含燐化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
【0274】
その他の助剤の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その他の助剤は、非水系電解液100質量%中、好ましくは、0.01質量%以
上であり、また、5質量%以下である。この範囲であれば、その他助剤の効果が十分に発現させやすく、高負荷放電特性等の電池の特性が低下するといった事態も回避しやすい。その他の助剤の配合量は、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、また、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0275】
2.電池構成
本発明の電解液電池は、非水系電解液二次電池の中でも二次電池用、例えばリチウム
二次電池用の電解液として用いるのに好適である。以下、本発明の電解液を用いた非水系電解液二次電池について説明する。
本発明の電解液電池は、公知の構造を採ることができ、典型的には、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出可能な負極及び正極と、上記の本発明の電解液とを備える。
【0276】
2−1.負極
以下に負極に使用される負極活物質について述べる。負極活物質としては、電気化学的に金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。具体例としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
【0277】
<負極活物質>
負極活物質としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、
(1)天然黒鉛、
(2)人造炭素質物質及び人造黒鉛質物質を400〜3200℃の範囲で1回以上熱処
理した炭素質材料、
(3)負極活物質層が少なくとも2種以上の異なる結晶性を有する炭素質からなり、かつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
(4)負極活物質層が少なくとも2種以上の異なる配向性を有する炭素質からなり、かつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
から選ばれるものが、初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスがよく好ましい。また、(1)〜(4)の炭素質材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0278】
上記(2)の人造炭素質物質及び人造黒鉛質物質としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ及びこれらピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物及びこれらの炭化物、又は炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれらの炭化物等が挙げられる。
【0279】
負極活物質として用いられる合金系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、リチウム単体、リチウム合金を形成する単体金属及び合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の化合物のいずれであってもよく、特に制限されない。リチウム合金を形成する単体金属及び合金としては、13族及び14族の金属・半金属元素(即ち炭素を除く)を含む材料であることが好ましく、より好ましくはアルミニウム、ケイ素及びスズ(以下、「特定金属元素」と略記する場合がある)の単
体金属及びこれら原子を含む合金又は化合物である。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0280】
特定金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子を有する負極活物質としては、いずれか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素からなる合金、1種又は2種以上の特定金属元素とその他の1種又は2種以上の金属元素とからなる合金、ならびに、1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物、及びその化合物の酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の複合化合物が挙げられる。負極活物質としてこれらの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、電池の高容量化が可能である。
【0281】
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金又は非金属元素等の数種の元素と複雑に結合した化合物も挙げられる。具体的には、例えばケイ素やスズでは、これらの元素と負極として動作しない金属との合金を用いることができる。例えば、スズの場合、スズとケイ素以外で負極として作用する金属と、更に負極として動作しない金属と、非金属元素との組み合わせで5〜6種の元素を含むような複雑な化合物も用いることができる。
【0282】
これらの負極活物質の中でも、電池にしたときに単位質量当りの容量が大きいことから、いずれか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素の合金、特定金属元素の酸化物、炭化物、窒化物等が好ましく、特に、ケイ素及び/又はスズの金属単体、合金、酸化物や炭化物、窒化物等が、単位質量当りの容量及び環境負荷の観点から好ましい。
【0283】
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、特に制限されないが、高電流密度充放電特性の点からチタン及びリチウムを含有する材料が好ましく、より好ましくはチタンを含むリチウム含有複合金属酸化物材料が好ましく、更にリチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する場合がある)である。即ちスピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物を、非水系電解液二次電池用負極活物質に含有させて用いると、出力抵抗が大きく低減するので特に好ましい。
【0284】
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンが、他の金属元素、例えば、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されているものも好ましい。
上記金属酸化物が、式(A)で表されるリチウムチタン複合酸化物であり、式(A)中、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6であることが、リチウムイオンのドープ・脱ドープの際の構造が安定であることから好ましい。
【0285】
LiTi (A)
[式(A)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表わす。]
上記の式(A)で表される組成の中でも、
(a)1.2≦x≦1.4、1.5≦y≦1.7、z=0
(b)0.9≦x≦1.1、1.9≦y≦2.1、z=0
(c)0.7≦x≦0.9、2.1≦y≦2.3、z=0
の構造が、電池性能のバランスが良好なため特に好ましい。
【0286】
上記化合物の特に好ましい代表的な組成は、(a)ではLi4/3Ti5/3、(b)ではLiTi、(c)ではLi4/5Ti11/5である。また、Z≠0の構造については、例えば、Li4/3Ti4/3Al1/3が好ましいものとし
て挙げられる。
【0287】
<炭素質材料の物性>
負極活物質として炭素質材料を用いる場合、以下の物性を有するものであることが望ましい。
【0288】
(X線パラメータ)
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、0.335nm以上であることが好ましく、また、通常0.360nm以下であり、0.350nm以下が好ましく、0.345nm以下が更に好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、1.0nm以上であることが好ましく、中でも1.5nm以上であることが更に好ましい。
【0289】
(体積基準平均粒径)
炭素質材料の質量基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)であり、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましく、7μm以上が特に好ましく、また、通常100μm以下であり、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましく、25μm以下が特に好ましい。
【0290】
体積基準平均粒径が上記範囲を下回ると、不可逆容量が増大して、初期の電池容量の損失を招くことになる場合がある。また、上記範囲を上回ると、塗布により電極を作製する際に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。
【0291】
(ラマンR値、ラマン半値幅)
炭素質材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値であり、通常0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.1以上が更に好ましく、また、通常1.5以下であり、1.2以下が好ましく、1以下が更に好ましく、0.5以下が特に好ましい。
【0292】
また、炭素質材料の1580cm−1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常10cm−1以上であり、15cm−1以上が好ましく、また、通常100cm−1以下であり、80cm−1以下が好ましく、60cm−1以下が更に好ましく、40cm−1以下が特に好ましい。
ラマンR値及びラマン半値幅は、炭素質材料表面の結晶性を示す指標であるが、炭素質材料は、化学的安定性の観点から適度な結晶性が有し、かつ充放電によってLiが入り込む層間のサイトを消失しない、即ち充電受入性が低下しない程度の結晶性であることが好ましい。なお、集電体に塗布した後のプレスによって負極を高密度化する場合には、電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなるため、それを考慮することが好ましい。ラマンR値又はラマン半値幅が上記範囲であると、負極表面に好適な被膜を形成して保存特性やサイクル特性、負荷特性を向上させることができるとともに、非水系電解液との反応に伴う効率の低下やガス発生を抑制することができる。
【0293】
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(日本分光社製ラマン分光器)を用いて、試料を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させることにより行なう。得られるラマンスペクトルについて、1580cm−1付近のピークPAの強度IAと、1
360cm−1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出する。
【0294】
また、上記のラマン測定条件は、次のとおりである。
・アルゴンイオンレーザー波長 :514.5nm
・試料上のレーザーパワー :15〜25mW
・分解能 :10〜20cm−1
・測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
・ラマンR値、ラマン半値幅解析:バックグラウンド処理
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
【0295】
(BET比表面積)
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値であり、通常0.1m・g−1以上であり、0.7m・g−1以上が好ましく、1.0m・g−1以上が更に好ましく、1.5m・g−1以上が特に好ましく、また、通常100m・g−1以下であり、25m・g−1以下が好ましく、15m・g−1以下が更に好ましく、10m・g−1以下が特に好ましい。
【0296】
BET比表面積の値が上記範囲であると、電極表面へのリチウムの析出を抑制することができる一方、非水系電解液との反応によるガス発生を抑制することができる。
BET法による比表面積の測定は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調製した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。
【0297】
(円形度)
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。炭素質材料の粒径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は1に近いほど望ましく、また、0.1以上が好ましく、中でも0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.85以上が更に好ましく、0.9以上が特に好ましい。高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど、充填性が向上し、粒子間の抵抗を抑えることができるため、高電流密度充放電特性は向上する。従って、円形度が上記範囲のように高いほど好ましい。
【0298】
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製FPIA)を用いて行う。試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が3〜40μmの範囲の粒子について測定する。
【0299】
円形度を向上させる方法は、特に制限されないが、球形化処理を施して球形にしたものが、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので好ましい。球形化処理の例としては、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子をバインダーもしくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法等が挙げられる。
【0300】
(タップ密度)
炭素質材料のタップ密度は、通常0.1g・cm−3以上であり、0.5g・cm−3以上が好ましく、0.7g・cm−3以上が更に好ましく、1g・cm−3以上が特に好
ましく、また、2g・cm−3以下が好ましく、1.8g・cm−3以下が更に好ましく、1.6g・cm−3以下が特に好ましい。タップ密度が上記範囲であると、電池容量を確保することができるとともに、粒子間の抵抗の増大を抑制することができる。
【0301】
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cmのタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の質量と試料の質量からタップ密度を算出する。
【0302】
(配向比)
炭素質材料の配向比は、通常0.005以上であり、0.01以上が好ましく、0.015以上が更に好ましく、また、通常0.67以下である。配向比が、上記範囲であると、優れた高密度充放電特性を確保することができる。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
【0303】
配向比は、試料を加圧成型してからX線回折により測定する。試料0.47gを直径17mmの成型機に充填し58.8MN・m−2で圧縮して得た成型体を、粘土を用いて測定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットしてX線回折を測定する。得られた炭素の(110)回折と(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(004)回折ピーク強度で表わされる比を算出する。
【0304】
X線回折測定条件は次のとおりである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
【0305】
(アスペクト比(粉))
炭素質材料のアスペクト比は、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ましく、5以下が更に好ましい。上記範囲であると、極板化時のスジ引きを抑制し、更に均一な塗布が可能となるため、優れた高電流密度充放電特性を確保することができる。なお、上記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
【0306】
アスペクト比の測定は、炭素質材料の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行う。厚さ50μm以下の金属の端面に固定した任意の50個の黒鉛粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の炭素質材料粒子の最長となる径Aと、それと直交する最短となる径Bを測定し、A/Bの平均値を求める。
【0307】
<負極の構成と作製法>
電極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
また、合金系材料を用いる場合には、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法も用いられる。
【0308】
(集電体)
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。
集電体の厚さは、電池容量の確保、取扱い性の観点から、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。
【0309】
(集電体と負極活物質層との厚さの比)
集電体と負極活物質層の厚さの比は特に制限されないが、「(非水系電解液注液直前の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以下が更に好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上が更に好ましく、1以上が特に好ましい。集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲であると、電池容量を確保することができるとともに、高電流密度充放電時における集電体の発熱を抑制することができる。
【0310】
(結着剤)
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、ポリイミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0311】
負極活物質に対するバインダーの割合は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、0.6質量%以上が特に好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、8質量%以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲であると、電池容量と負極電極の強度を十分に確保することができる。
【0312】
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下が更に好ましい。また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する割合は、通常1質量%以上で
あり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましく、また、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下が更に好ましい。
【0313】
(スラリー形成溶媒)
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、ならびに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系溶媒としては、水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
【0314】
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0315】
(増粘剤)
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限されないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0316】
更に増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下が更に好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲であると、電池容量の低下や抵抗の増大を抑制できるとともに、良好な塗布性を確保することができる。
【0317】
(電極密度)
負極活物質を電極化した際の電極構造は特に制限されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上が更に好ましく、1.3g・cm−3以上が特に好ましく、また、2.2g・cm−3以下が好ましく、2.1g・cm−3以下がより好ましく、2.0g・cm−3以下が更に好ましく、1.9g・cm−3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲であると、負極活物質粒子の破壊を防止して、初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を抑制することができる一方、電池容量の低下や抵抗の増大を抑制することができる。
【0318】
(負極板の厚さ)
負極板の厚さは用いられる正極板に合わせて設計されるものであり、特に制限されないが、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは通常15μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、また、通常300μm以下、好ましくは280μm以下、より好ましくは250μm以下が望ましい。
【0319】
(負極板の表面被覆)
また、上記負極板の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム
、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0320】
2−2.正極
<正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質について述べる。
(組成)
正極活物質としては、電気化学的に金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出可能なものであれば特に制限されないが、例えば、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物が挙げられる。
【0321】
リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、LiCoO等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiNiO等のリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMnO、LiMn、LiMnO等のリチウム・マンガン複合酸化物、LiNi1/3Mn1/3Co1/3、LiNi0.5Mn0.3Co0.2等のリチウム・ニッケル・マンガン・コバル
ト複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の元素で置換したもの等が挙げられる。置換されたものとしては、LiNi0.5Mn0.5、LiNi0.85Co0.10Al0.05、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiNi0.45Co0.10Al0.45、LiMn1.8Al0.2、LiMn1.5Ni0.5等が挙げられる。
【0322】
リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、LiFePO、LiFe(PO、LiFeP等のリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の元素で置換したもの等が挙げられる。
【0323】
また、正極活物質にリン酸リチウムを含ませると、連続充電特性が向上するので好ましい。リン酸リチウムの使用に制限はないが、上記の正極活物質とリン酸リチウムを混合して用いることが好ましい。使用するリン酸リチウムの量は上記正極活物質とリン酸リチウムの合計に対し、下限が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、上限が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0324】
(表面被覆)
また、上記正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
【0325】
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加、
乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加後、加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により該正極活物質表面に付着させることができる。なお、炭素を付着させる場合には、炭素質を、例えば、活性炭等の形で後から機械的に付着させる方法も用いることもできる。
【0326】
表面付着物質の量としては、該正極活物質に対して質量で、下限として好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、上限として、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下で用いられる。表面付着物質により、正極活物質表面での電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができるが、その付着量が少なすぎる場合その効果は十分に発現せず、多すぎる場合には、リチウムイオンの出入りを阻害するため抵抗が増加する場合がある。
本発明においては、正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものも「正極活物質」ともいう。
【0327】
(形状)
正極活物質の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が挙げられる。また、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成していてもよい。
【0328】
(タップ密度)
正極活物質のタップ密度は、好ましくは0.5g/cm以上、より好ましくは0.8g/cm以上、更に好ましくは1.0g/cm以上である。該正極活物質のタップ密度が上記範囲であると、正極活物質層形成時に必要な分散媒量及び導電材や結着剤の必要量を抑えることができ、結果正極活物質の充填率及び電池容量を確保することができる。タップ密度の高い複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。タップ密度は一般に大きいほど好ましく、特に上限はないが、好ましくは4.0g/cm以下、より好ましくは3.7g/cm以下、更に好ましくは3.5g/cm以下である。上記範囲であると負荷特性の低下を抑制することができる。
なお、本発明では、タップ密度は、正極活物質粉体5〜10gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、ストローク約20mmで200回タップした時の粉体充填密度(タップ密度)g/ccとして求める。
【0329】
(メジアン径d50)
正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは0.8μm以上、最も好ましくは1.0μm以上であり、上限は、好ましくは30μm以下、より好ましくは27μm以下、更に好ましくは25μm以下、最も好ましくは22μm以下である。上記範囲であると、高タップ密度品が得られ、電池性能の低下を抑制できる一方、電池の正極作製、即ち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化して薄膜状に塗布する際に、スジ引き等の問題を防止することができる。ここで、異なるメジアン径d50をもつ該正極活物質を2種以上混合することで、正極作製時の充填性を更に向上させることができる。
【0330】
なお、本発明では、メジアン径d50は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定される。粒度分布計としてHORIBA社製LA−920を用いる場合、測定の際に用いる分散媒として、0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24を設定して測定される。
【0331】
(平均一次粒子径)
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、該正極活物質の平均一次粒子径としては、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上であり、上限は、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下、最も好ましくは2μm以下である。上記範囲であると、粉体充填性及び比表面積を確保し、電池性能の低下を抑制することができる一方、適度な結晶性が得られることによって、充放電の可逆性を確保することができる。
【0332】
なお、本発明では、一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
【0333】
(BET比表面積)
正極活物質のBET比表面積は、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.2m/g以上、更に好ましくは0.3m/g以上であり、上限は50m/g以下、好ましくは40m/g以下、更に好ましくは30m/g以下である。BET比表面積が上記範囲であると、電池性能を確保できるとともに、正極活性物質の塗布性を良好に保つことができる。
なお、本発明では、BET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調製した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値で定義される。
【0334】
(正極活物質の製造法)
正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えば、遷移金属の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法等が挙げられる。
【0335】
正極の製造のために、上記の正極活物質を単独で用いてもよく、異なる組成の1種以上とを、任意の組み合わせ又は比率で併用してもよい。この場合の好ましい組み合わせとしては、LiCoOとLiNi0.33Co0.33Mn0.33等のLiMn若しくはこのMnの一部を他の遷移金属等で置換したものとの組み合わせ、あるいは、LiCoO若しくはこのCoの一部を他の遷移金属等で置換したものとの組み合わせが挙げられる。
【0336】
<正極の構成と作製法>
以下に、正極の構成について述べる。本発明において、正極は、正極活物質と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製することができる。正極活物質を用いる正極の製造は、常法により行うことができる。即ち、正極活物質と結着剤、ならびに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成されることにより正極を得ることができる。
【0337】
正極活物質の、正極活物質層中の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上、特に好ましくは84質量%以上である。また上限は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。上記範囲であると、正極活物質層中の正極活物質の電気容量を確保できるとともに、正極の強度を保つことができる。塗布、
乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、下限として好ましくは1.5g/cm以上、より好ましくは2g/cm、更に好ましくは2.2g/cm以上であり、上限としては、好ましくは5g/cm以下、より好ましくは4.5g/cm以下、更に好ましくは4g/cm以下の範囲である。上記範囲であると、良好な充放電特性が得られるとともに、電気抵抗の増大を抑制することができる。
【0338】
(導電材)
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。導電材は、正極活物質層中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また上限は、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有するように用いられる。上記範囲であると、十分な導電性と電池容量を確保することができる。
【0339】
(結着剤)
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であればよいが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0340】
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、上限は、通常80質量%以下、好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。結着剤の割合が低すぎると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう場合がある。一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる場合がある。
【0341】
(スラリー形成溶媒)
スラリーを形成するための溶媒としては、正極活物質、導電材、結着剤及び必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。水系媒体としては、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機系媒体としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケ
トン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【0342】
特に水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。更に増粘剤を添加する場合には、活物質に対する増粘剤の割合は、0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、上限としては5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下の範囲である。上記範囲であると、良好な塗布性が得られるとともに、電池容量の低下や抵抗の増大を抑制することができる。
【0343】
(集電体)
正極集電体の材質としては特に制限されず、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
【0344】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。薄膜の厚さは任意であるが、集電体としての強度及び取扱い性の観点から、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、また上限は、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。
【0345】
また、集電体の表面に導電助剤が塗布されていることも、集電体と正極活物質層の電子接触抵抗を低下させる観点で好ましい。導電助剤としては、炭素や、金、白金、銀等の貴金属類が挙げられる。
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(電解液注液直前の片面の正極活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)の値が20以下であることが好ましく、より好ましくは15以下、最も好ましくは10以下であり、下限は、0.5以上が好ましく、より好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上の範囲である。この範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。上記範囲であると、高電流密度充放電時の集電体の発熱を抑制し、電池容量を確保することができる。
【0346】
(電極面積)
本発明の電解液を用いる場合、高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、二次電池の外装の表面積に対する正極の電極面積の総和が面積比で15倍以上とすることが好ましく、更に40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である
。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
【0347】
(正極板の厚さ)
正極板の厚さは特に限定されないが、高容量かつ高出力の観点から、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは、集電体の片面に対して下限として、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上で、上限としては、好ましくは500μm以下、より好ましくは450μm以下である。
【0348】
(正極板の表面被覆)
また、上記正極板の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
2−3.セパレータ
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
【0349】
セパレータの材料や形状については特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、更に好ましくはポリオレフィン、特に好ましくはポリプロピレンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用したり、積層されたものを使用してもよい。2種以上を任意の組み合わせで積層したものの具体例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンの順で積層された三層セパレータ等が挙げられる。
【0350】
セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、8μm以上が更に好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下が更に好ましい。上記範囲であると、絶縁性及び機械的強度を確保できる一方、レート特性等の電池性能及びエネルギー密度を確保することができる。
更に、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上が更に好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下が更に好ましい。空孔率が、上記範囲であると、絶縁性及び機械的強度を確保できる一方、膜抵抗を抑え良好なレート特性を得ることができる。
【0351】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。平均孔径が、上記範囲であると、短絡を防止ししつつ、膜抵抗を抑え良好なレート特性を得ることができる。一方、無機物の材料としては、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。
【0352】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。上記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて上記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤として多孔層を形成させることが挙げられる。
【0353】
2−4.電池設計
<電極群>
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の質量が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。電極群占有率が、上記範囲であると、電池容量を確保できるとともに内部圧力の上昇に伴う充放電繰り返し性能や高温保存等の特性低下を抑制し、更にはガス放出弁の作動を防止することができる。
【0354】
<集電構造>
集電構造は、特に制限されないが、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。電極群が上記の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。一枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が上記の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0355】
<外装ケース>
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に制限されない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0356】
金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
【0357】
<保護素子>
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(PositiveTemperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等を使用することができる。上記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【実施例】
【0358】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
本実施例に使用した式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルの構造を以下に示す。
【0359】
【化44】
【0360】
また、その他使用した化合物の構造を以下に示す。
【0361】
【化45】
【0362】
<実施例1−1及び比較例1−1〜1−3>
[実施例1−1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(「EC」ともいう)、エチルメチルカーボネート(「EMC」ともいう)及びジエチルカーボネート(「DEC」ともいう)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPFを1.2mol/Lの割合で溶解させて基本電解液とした。更に、かかる基本電解液に対して、添加剤として化合物(2−1)0.5質量%及びトリエチルホスホノアセテート(「MP1」ともいう)0.5質量%を添加して実施例1−1の非水系電解液を調製した。
【0363】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0364】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0365】
[二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0366】
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をエタノール浴中に浸し、そのときの浮力から初期電池体積を求めた(アルキメデスの原理)。その後、ガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で3Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.40VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.40VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、電池をエタノール浴中に浸して体積を測定し、初期電池体積からの変化分を初期ガス量とした。その後、0.2Cで3Vまで放電し、これを初期0.2C容量とした。更に、0.2Cで4.40VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.5Cで3Vまで放電し、これを初期0.5C容量とした。そして、初期0.2C容量に対する初期0.5C容量の割合を求め、これを初期レート特性(%)とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0367】
[高温保存耐久試験]
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.2Cで4.40VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、85℃、1日間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、25℃において0.2Cで3Vまで放電させた。
【0368】
[高温保存耐久試験後の電池特性評価]
高温保存耐久試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3Vまで再度放電し、これを回復0.2C容量とした。
上記作製した非水系電解液二次電池を用いて、初期の電池特性評価、高温保存耐久試験及び高温保存耐久試験後の電池特性評価を実施した。評価結果を、比較例1−1を100.0%としたときの相対値で表1に示す。以下も同様とする。
【0369】
[比較例1−1]
実施例1−1の電解液において、化合物(2−1)及びMP1を含まない電解液を用いた以外、実施例1−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例1−2]
実施例1−1の電解液において、MP1を含まない電解液を用いた以外、実施例1−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0370】
[比較例1−3]
実施例1−1の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、実施例1−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0371】
【表1】
【0372】
表1より、本発明にかかる実施例1−1の非水系電解液を用いると、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル及びホスホン酸エステルが同時に添加されていない場合(比較例1−1)に比べ、初期レート特性に優れており、かつ高温保存耐久試験後の回復0.2C容量も優れる。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の電池特性に優れた電池を提供することができる。
【0373】
なお、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを単独で用いた場合(比較例1−2)、初期レート特性は比較例1−1よりも向上するが、初期ガス量が実施例1−1よりも増加する。更に、回復0.2C容量は比較例1−1よりも向上するが、その改善効果は小さく、実施例1−1に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
【0374】
また、ホスホン酸エステルを単独で用いた場合(比較例1−3)、初期レート特性は比較例1−1よりも向上するが、初期ガス量が実施例1−1よりも増加する。更に、回復0.2C容量は比較例1−1よりも向上するが、その改善効果は小さく、実施例1−1に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
このことから、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとホスホン酸エステルを同時に用いることで、その相乗効果により電池特性が特異的に改善されることが確認できる。
【0375】
<実施例2−1及び比較例2−1〜2−3>
[実施例2−1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPFを1.2mol/Lの割合で溶解させて基本電解液とした。更に、かかる基本電解液に対して、添加剤として化合物(2−1)0.5質量%及びモノフルオロエチレンカーボネート(「MP2」ともいう)0.5質量%を添加して実施例2−1の非水系電解液を調製した。
【0376】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0377】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0378】
[二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0379】
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をエタノール浴中に浸し、そのときの浮力から初期電池体積を求めた(アルキメデスの原理)。その後、ガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、非水系電解液二次電池をエタノール浴中に浸して体積を測定し、初期電池体積からの変化分を初期ガス量とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0380】
[高温保存耐久試験]
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、85℃、1日間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、25℃において0.2Cで3.0Vまで放電させた。
【0381】
[高温保存耐久試験後の過充電特性評価]
高温保存耐久試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、エタノール浴中に浸し、そのときの浮力から過充電前電池体積を求めた。その後、45℃において0.2Cで5.0Vまで定電流による過充電を行った。十分に冷却させた電池をエタノール浴中に浸して体積を測定し、過充電前電池体積からの変化分を過充電ガス量とした。
【0382】
なお、過充電ガス量が多いほど、過充電等の異常により内圧が異常に上昇したときにこ
れを感知して安全弁を作動させる電池では、安全弁を早めに作動させることができる。その結果、過充電時の電池安全性を担保できる。
上記作製した非水系電解液二次電池を用いて、初期の電池特性評価、高温保存耐久試験及び高温保存耐久試験後の過充電特性評価を実施した。評価結果を、比較例2−1を100.0%としたときの相対値で表2に示す。以下も同様とする。
【0383】
[比較例2−1]
実施例2−1の電解液において、化合物(2−1)及びMP2を含まない電解液を用いた以外、実施例2−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例2−2]
実施例2−1の電解液において、MP2を含まない電解液を用いた以外、実施例2−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0384】
[比較例2−3]
実施例2−1の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、実施例2−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0385】
【表2】
【0386】
表2より、本発明にかかる実施例2−1の非水系電解液を用いると、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル及びフッ素含有環状カーボネートが同時に添加されていない場合(比較例2−1)に比べ、初期ガス量が少なく、かつ高温保存耐久試験後の過充電ガス量が多い。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の過充電特性評価に優れた電池を提供することができる。
【0387】
なお、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを単独で用いた場合(比較例2−2)、初期ガス量は比較例2−1よりも増加する。更に、過充電ガス量は比較例2−1よりも増加するが、その改善効果は小さく、実施例2−1に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
また、フッ素含有環状カーボネートを単独で用いた場合(比較例2−3)、初期ガス量は比較例2−1よりも減少するが、その改善効果は小さく、実施例2−1に比べて劣る。更に、過充電ガス量は、比較例2−1よりも減少する。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
このことから、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとフッ素含有環状カーボネートを同時に用いることで、その相乗効果により電池特性が特異的に改善されることが確認できる。
【0388】
<実施例3−1及び比較例3−1〜3−3>
[実施例3−1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPFを1.2mol/Lの割合で溶解させて基本電解液とした。更に、かかる基本電解液に対して、添加剤として化合物(2−1)0.5質量%及びフルオロスルホン酸リチウム(「MP3」ともいう)0.5質量%を添加して実施例3−1の非水系電解液を調製した。
【0389】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0390】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0391】
[二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0392】
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、1Cで3.0Vまで放電し、これを初期1C容量とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0393】
[高温保存耐久試験]
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、85℃、1日間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、25℃において0.2Cで3.0Vまで放電させた。
【0394】
[高温保存耐久試験後の電池特性評価]
高温保存耐久試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4
.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、これを回復0.2C容量とした。
上記作製した非水系電解液二次電池を用いて、初期の電池特性評価、高温保存耐久試験及び高温保存耐久試験後の電池特性評価を実施した。評価結果を、比較例3−1を100.0%としたときの相対値で表3に示す。以下も同様とする。
【0395】
[比較例3−1]
実施例3−1の電解液において、化合物(2−1)及びMP3を含まない電解液を用いた以外、実施例3−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例3−2]
実施例3−1の電解液において、MP3を含まない電解液を用いた以外、実施例3−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0396】
[比較例3−3]
実施例3−1の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、実施例3−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0397】
【表3】
【0398】
表3より、本発明にかかる実施例3−1の非水系電解液を用いると、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル及びフルオロスルホン酸塩が同時に添加されていない場合(比較例3−1)に比べ、初期1C容量に優れており、かつ高温保存耐久試験後の回復0.2C容量も優れる。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の電池特性に優れた電池を提供することができる。
【0399】
なお、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを単独で用いた場合(比較例3−2)、初期1C容量は比較例3−1よりも向上するが、その改善効果は小さく、実施例3−1に比べて劣る。更に、回復0.2C容量は比較例3−1よりも向上するが、その改善効果は小さく、実施例3−1に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
【0400】
また、フルオロスルホン酸塩を単独で用いた場合(比較例3−3)、初期1C容量は比較例3−1よりも向上するが、その改善効果は小さく、実施例3−1に比べて劣る。更に、回復0.2C容量は比較例3−1よりも向上するが、その改善効果は小さく、実施例3−1に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
このことから、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとフルオロスルホン酸塩を同時に用いることで、その相乗効果により電池特性が特異的に改善されることが確認できる。
【0401】
<実施例4−1及び比較例4−1〜4−3>
[実施例4−1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPFを1.2mol/Lの割合で溶解させて基本電解液とした。更に、かかる基本電解液に対して、添加剤として化合物(2−1)0.5質量%及び1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(「MP4」ともいう)0.5質量%を添加して実施例4−1の非水系電解液を調製した。
【0402】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0403】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0404】
[二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0405】
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をエタノール浴中に浸し、そのときの浮力から初期電池体積を求めた(アルキメデスの原理)。その後、ガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、電池をエタノール浴中に浸して体積を測定し、初期電池体積からの変化分を初期ガス量とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0406】
[高温保存耐久試験]
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、85℃、1日間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、25℃において0.2Cで3.0Vまで放電させた。
【0407】
[高温保存耐久試験後の電池特性評価]
高温保存耐久試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、これを回復0.2C容量とした。
上記作製した非水系電解液二次電池を用いて、初期の電池特性評価、高温保存耐久試験及び高温保存耐久試験後の電池特性評価を実施した。評価結果を、比較例4−1を100.0%としたときの相対値で表4に示す。以下も同様とする。
【0408】
[比較例4−1]
実施例4−1の電解液において、化合物(2−1)及びMP4を含まない電解液を用いた以外、実施例4−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例4−2]
実施例4−1の電解液において、MP4を含まない電解液を用いた以外、実施例4−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0409】
[比較例4−3]
実施例4−1の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、実施例4−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0410】
【表4】
【0411】
表4より、本発明にかかる実施例4−1の非水系電解液を用いると、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル及びイソシアネート基を有する有機化合物が同時に添加されていない場合(比較例4−1)に比べ、初期ガス量が少なく、かつ高温保存耐久試験後の回復0.2C容量も優れる。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の電池特性に優れた電池を提供することができる。
【0412】
なお、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを単独で用いた場合(比較例4−2)、初期ガス量は比較例4−1よりも増加する。更に、回復0.2C容量は比較例4−1よりも増加するが、その改善効果は小さく、実施例4−1に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
また、イソシアネート基を有する有機化合物を単独で用いた場合(比較例4−3)、初期ガス量は比較例4−1よりも減少するが、実施例4−1に比べて劣る。更に、回復0.2C容量は比較例4−1よりも向上するが、その改善効果は小さく、実施例4−1に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
このことから、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとイソシアネート基を有する有機化合物を同時に用いることで、その相乗効果により電池特性が特異的に改善されることが確認できる。
【0413】
<実施例5−1及び比較例5−1〜5−3>
[実施例5−1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPFを1.2mol/Lの割合で溶解させて基本電解液とした。更に、かかる基本電解液に対して、添加剤として化合物(2−1)0.5質量%及びアジポニトリル(「MP5」ともいう)0.5質量%を添加して実施例5−1の非水系電解液を調製した。
【0414】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0415】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0416】
[二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0417】
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.5Cで3.0Vまで放電し、この時の充電容量に対する放電容量の割合を求め、これを初期0.5C効率(%)とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0418】
[高温保存耐久試験]
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、85℃、1日間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、25℃において0.2Cで3.0Vまで放電させた。
【0419】
[高温保存耐久試験後の電池特性評価]
高温保存耐久試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.05Cで3.0Vまで再度放電し、この時の充電容量に対する放電容量の割合を求め、これを回復0.05C効率(%)とした。
上記作製した非水系電解液二次電池を用いて、初期の電池特性評価、高温保存耐久試験及び高温保存耐久試験後の電池特性評価を実施した。評価結果を、比較例5−1を100.0%としたときの相対値で表5に示す。以下も同様とする。
【0420】
[比較例5−1]
実施例5−1の電解液において、化合物(2−1)及びMP5を含まない電解液を用いた以外、実施例5−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0421】
[比較例5−2]
実施例5−1の電解液において、MP5を含まない電解液を用いた以外、実施例5−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例5−3]
実施例5−1の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、実施例5−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0422】
【表5】
【0423】
表5より、本発明にかかる実施例5−1の非水系電解液を用いると、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル及びシアノ基を有する有機化合物が同時に添加されていない場合(比較例5−1)に比べ、初期0.5C効率の低下が無く、かつ高温保存耐久試験後の回復0.05C効率も優れる。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の電池特性に優れた電池を提供することができる。
【0424】
なお、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを単独で用いた場合(比較例5−2)、初期0.5C効率は比較例5−1よりも低下する。更に、回復0.05C効率は比較例5−1よりも低下する。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
また、シアノ基を有する有機化合物を単独で用いた場合(比較例5−3)、初期0.5C効率は比較例5−1よりも低下する。更に、回復0.05C効率は比較例5−1よりも向上するが、その改善効果は小さく、実施例5−1に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
このことから、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとシアノ基を有する有機化合物を同時に用いることで、その相乗効果により電池特性が特異的に改善されることが確認できる。
【0425】
<実施例6−1及び比較例6−1〜6−3>
[実施例6−1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPFを1.2mol/Lの割合で溶解させて基本電解液とした。更に、かかる基本電解液に対して、添加剤として化合物(2−1)0.5質量%及びヘキサメチルジシラン(「MP6」ともいう)0.5質量%を添加して実施例6−1の非水系電解液を調製した。
【0426】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0427】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0428】
[二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0429】
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、1Cで3.0Vまで放電し、これを初期1C容量とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0430】
[高温保存耐久試験]
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、85℃、1日間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、25℃において0.2Cで3.0Vまで放電さ
せた。
【0431】
[高温保存耐久試験後の電池特性評価]
高温保存耐久試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.05Cで3.0Vまで再度放電し、これを回復0.05C容量とした。また、この時の充電容量に対する放電容量の割合を求め、これを回復0.05C効率(%)とした。
上記作製した非水系電解液二次電池を用いて、初期の電池特性評価、高温保存耐久試験及び高温保存耐久試験後の電池特性評価を実施した。評価結果を、比較例6−1を100.0%としたときの相対値で表6に示す。以下も同様とする。
【0432】
[比較例6−1]
実施例6−1の電解液において、化合物(2−1)及びMP6を含まない電解液を用いた以外、実施例6−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0433】
[比較例6−2]
実施例6−1の電解液において、MP6を含まない電解液を用いた以外、実施例6−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例6−3]
実施例6−1の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、実施例6−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0434】
【表6】
【0435】
表6より、本発明にかかる実施例6−1の非水系電解液を用いると、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル及びケイ素含有化合物が同時に添加されていない場合(比較例6−1)に比べ、初期1C容量に優れており、かつ高温保存耐久試験後の回復0.05容量及び回復0.05C効率も優れる。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の電池特性に優れた電池を提供することができる。
【0436】
なお、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを単独で用いた場合(比較例6−2)、初期1C容量は比較例6−1よりも向上するが、その改善効果は小さく、実施例6−1に比べて劣る。更に、回復0.05C容量は比較例6−1よりも向上するが、実施例6−1に比べて劣る。また、回復0.05C効率は比較例6−1よりも低下する。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
【0437】
また、ケイ素含有化合物を単独で用いた場合(比較例6−3)、初期1C容量は比較例6−1よりも向上するが、その改善効果は小さく、実施例6−1に比べて劣る。更に、回復0.05C容量は比較例6−1よりも低下する。また、回復0.05C効率は比較例6−1よりも向上するが、その改善効果は小さく、実施例6−1に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
このことから、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとケイ素含有化合物を同時に用いることで、その相乗効果により電池特性が特異的に改善されることが確認できる。
【0438】
<実施例7−1及び比較例7−1〜7−3>
[実施例7−1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPFを1.2mol/Lの割合で溶解させて基本電解液とした。更に、かかる基本電解液に対して、添加剤として化合物(2−1)0.5質量%及びリチウムテトラフルオロボレート(「MP7」ともいう)0.5質量%を添加して実施例7−1の非水系電解液を調製した。
【0439】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0440】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0441】
[二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0442】
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.40VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、1Cで3.0Vまで放電し、これを初期1C容量とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0443】
[高温保存耐久試験]
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、85℃、1日間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、25℃において0.2Cで3.0Vまで放電させた。
【0444】
[高温保存耐久試験後の電池特性評価]
高温保存耐久試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、この時の充電容量に対する放電容量の割合を求め、これを回復0.2C効率(%)とした。
【0445】
[高温保存耐久試験後の過充電特性評価]
高温保存耐久試験後の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した。その後、45℃において0.2Cで5.0Vまで定電流による過充電を行った。その後、十分に冷却させた電池の開回路電圧(OCV)を測定し、これを過充電後OCVとした。
【0446】
なお、過充電試験後の電池のOCVは、主に正極の電位を反映している。すなわち、過充電時後のOCVが低いと、正極の充電深度が低い状態であることを表す。通常、正極の充電深度が深くなると正極からの金属溶出や酸素放出が起こり、電池の熱暴走の起点となる。よって、過充電後のOCVを低くすることで、過充電時の電池安全性を担保できる。
上記作製した非水系電解液二次電池を用いて、初期の電池特性評価、高温保存耐久試験、高温保存耐久試験後の電池特性評価及び高温保存耐久試験後の過充電特性評価を実施した。評価結果を、比較例7−1を100.0%としたときの相対値で表7に示す。なお、過充電後OCVは、比較例7−1からの差分で示す。以下も同様とする。
【0447】
[比較例7−1]
実施例7−1の電解液において、化合物(2−1)及びMP7を含まない電解液を用いた以外、実施例7−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例7−2]
実施例7−1の電解液において、MP7を含まない電解液を用いた以外、実施例7−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0448】
[比較例7−3]
実施例7−1の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、実施例7−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0449】
【表7】
【0450】
表7より、本発明にかかる実施例7−1の非水系電解液を用いると、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル及びホウ酸塩が同時に添加されていない場合(比較例7−1
)に比べ、初期1C容量に優れており、かつ高温保存耐久試験後の回復0.2C効率に優れる。また、高温保存耐久試験後の過充電後OCVは比較例7−1に比べて低いことから、より安全性に優れている。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の電池特性・安全性に優れた電池を提供することができる。
【0451】
なお、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを単独で用いた場合(比較例7−2)、初期1C容量は比較例7−1よりも向上するが、その改善効果は小さく、実施例7−1に比べて劣る。更に、過充電後OCVは比較例7−1よりも低下するが、実施例7−1に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
【0452】
また、ホウ酸塩を単独で用いた場合(比較例7−3)、初期1C容量は比較例7−1よりも向上するが、その改善効果は小さく、実施例7−1に比べて劣る。更に、回復0.2C効率は比較例7−1よりも低下する。また、過充電後OCVは比較例7−1よりも低下するが、実施例7−1に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
このことから、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとホウ酸塩を同時に用いることで、その相乗効果により電池特性が特異的に改善されることが確認できる。
【0453】
<実施例8−1及び比較例8−1〜8−3>
[実施例8−1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジメチルカーボネート(「DMC」ともいう)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPFを1.0mol/Lの割合で溶解させて基本電解液とした。更に、かかる基本電解液に対して、添加剤として化合物(2−1)0.5質量%及び1,3−プロパンスルトン(「MP8」ともいう)0.5質量%を添加して実施例8−1の非水系電解液を調製した。
【0454】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0455】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0456】
[二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シー
ト状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0457】
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.2VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.2VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで放電し、この時の充電容量に対する放電容量の割合を求め、これを初期0.2C効率(%)とした。
【0458】
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
[高温保存耐久試験]
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.2Cで4.2VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、85℃、1日間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、25℃において0.2Cで3.0Vまで放電させた。
【0459】
[高温保存耐久試験後の過充電特性評価]
高温保存耐久試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.2VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、エタノール浴中に浸し、そのときの浮力から過充電前電池体積を求めた(アルキメデスの原理)。その後、45℃において0.5Cで5.0Vまで定電流による過充電を行った。十分に冷却させた電池をエタノール浴中に浸して体積を測定し、過充電前電池体積からの変化分を過充電ガス量とした。
【0460】
なお、過充電ガス量が多いほど、過充電等の異常により内圧が異常に上昇したときにこれを感知して安全弁を作動させる電池では、安全弁を早めに作動させることができる。その結果、過充電時の電池安全性を担保できる。
上記作製した非水系電解液二次電池を用いて、初期の電池特性評価、高温保存耐久試験及び高温保存耐久試験後の過充電特性評価を実施した。評価結果を、比較例8−1を100.0%としたときの相対値で表8に示す。以下も同様とする。
【0461】
[比較例8−1]
実施例8−1の電解液において、化合物(2−1)及びMP8を含まない電解液を用いた以外、実施例8−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例8−2]
実施例8−1の電解液において、MP8を含まない電解液を用いた以外、実施例8−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0462】
[比較例8−3]
実施例8−1の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、実施例8−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0463】
【表8】
【0464】
表8より、本発明にかかる実施例8−1の非水系電解液を用いると、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル及び硫黄含有有機化合物が同時に添加されていない場合(比較例8−1)に比べ、初期0.2C効率に優れており、かつ高温保存耐久試験後の過充電ガス量が多い。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の過充電特性評価に優れた電池を提供することができる。
【0465】
なお、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを単独で用いた場合(比較例8−2)、初期0.2C効率は比較例8−1と変化は無い。更に、過充電ガス量は比較例8−1よりも増加するが、その改善効果は小さく、実施例8−1に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
また、硫黄含有有機化合物を単独で用いた場合(比較例8−3)、初期0.2C効率は比較例8−1よりも増加するが、その改善効果は小さく、実施例8−1に比べて劣る。更に、過充電ガス量は比較例8−1よりも増加するが、その改善効果は小さく、実施例8−1に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
このことから、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルと硫黄含有有機化合物を同時に用いることで、その相乗効果により電池特性が特異的に改善されることが確認できる。
【0466】
<実施例9−1及び比較例9−1〜9−6>
[実施例9−1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジメチルカーボネート(DMC)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPFを1.0mol/Lの割合で溶解させて基本電解液とした。更に、かかる基本電解液に対して、添加剤として化合物(2−1)0.5質量%及びプロピオン酸エチル(「MP9」ともいう)0.5質量%を添加して実施例9−1の非水系電解液を調製した。
【0467】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0468】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結
着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0469】
[二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0470】
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで放電し、これを初期0.2C容量とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0471】
[高温保存耐久試験]
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、85℃、1日間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、25℃において0.2Cで3.0Vまで放電させた。
【0472】
[高温保存耐久試験後の過充電特性評価]
高温保存耐久試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.2VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、エタノール浴中に浸し、そのときの浮力から過充電前電池体積を求めた(アルキメデスの原理)。その後、45℃において0.5Cで5.0Vまで定電流による過充電を行った。十分に冷却させた電池をエタノール浴中に浸して体積を測定し、過充電前電池体積からの変化分を過充電ガス量とした。
【0473】
なお、過充電ガス量が多いほど、過充電等の異常により内圧が異常に上昇したときにこれを感知して安全弁を作動させる電池では、安全弁を早めに作動させることができる。その結果、過充電時の電池安全性を担保できる。
上記作製した非水系電解液二次電池を用いて、初期の電池特性評価、高温保存耐久試験及び高温保存耐久試験後の過充電特性評価を実施した。評価結果を、比較例9−1を100.0%としたときの相対値で表9に示す。以下も同様とする。
【0474】
[実施例9−2]
実施例9−1の電解液において、MP9の代わりにプロピオン酸n−プロピル(「MP9’」ともいう)0.5質量%を添加した電解液を用いた以外、実施例9−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例9−1]
実施例9−1の電解液において、化合物(2−1)及びMP9を含まない電解液を用いた以外、実施例9−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施し
た。
【0475】
[比較例9−2]
実施例9−1の電解液において、MP9を含まない電解液を用いた以外、実施例9−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例9−3]
実施例9−1の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、実施例9−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0476】
[比較例9−4]
実施例9−2の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、実施例9−2と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例9−5]
実施例9−1の電解液において、MP9の代わりにプロピオン酸メチル(「MP」ともいう)0.5質量%を添加した電解液を用いた以外、実施例9−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0477】
[比較例9−6]
比較例9−5の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、比較例9−5と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0478】
【表9】
【0479】
表9より、本発明にかかる実施例9−1〜9−2の非水系電解液を用いると、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル及び式(2)で表されるカルボン酸エステルが同時に添加されていない場合(比較例9−1)に比べ、初期0.2C容量に優れており、かつ高温保存耐久試験後の過充電ガス量が多い。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の過充電特性評価に優れた電池を提供することができる。
【0480】
なお、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを単独で用いた場合(比較例9−2)、初期0.2C容量は比較例9−1よりも低下する。更に、過充電ガス量は比較例9
−1よりも増加するが、その改善効果は小さく、実施例9−1〜9−2に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
また、式(2)で表されるカルボン酸エステルを単独で用いた場合(比較例9−3〜9−4)、過充電ガス量は比較例9−1よりも減少してしまい、実施例9−1に比べて明らかに劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
【0481】
なお、式(2)で表されるカルボン酸エステルの範囲に含まれない芳香族化合物及び式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを同時に添加した場合(比較例9−5)、初期0.2C容量は比較例9−1よりも減少してしまい、実施例9−1〜9−2に比べて明らかに劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
このことから、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルと式(2)で表されるカルボン酸エステルを同時に用いることで、その相乗効果により電池特性が特異的に改善されることが確認できる。
【0482】
<実施例10−1及び比較例10−1〜10−3>
[実施例10−1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジメチルカーボネート(DMC)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPFを1.0mol/Lの割合で溶解させて基本電解液とした。更に、かかる基本電解液に対して、添加剤として化合物(2−1)0.5質量%及びジフルオロリン酸リチウム(「MP10」ともいう)0.5質量%を添加して実施例10−1の非水系電解液を調製した。
【0483】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0484】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0485】
[二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0486】
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をエタノール浴中に浸し、そのときの浮力から初期電池体積を求めた(アルキメデスの原理)。その後、ガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.2VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.2VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、非水系電解液二次電池をエタノール浴中に浸して体積を測定し、初期電池体積からの変化分を初期ガス量とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0487】
[高温保存耐久試験]
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.2Cで4.2VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、85℃、1日間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、25℃において0.2Cで3.0Vまで放電させた。
【0488】
[高温保存耐久試験後の過充電特性評価]
高温保存耐久試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.2VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、エタノール浴中に浸し、そのときの浮力から過充電前電池体積を求めた(アルキメデスの原理)。その後、45℃において0.5Cで5.0Vまで定電流による過充電を行った。十分に冷却させた電池をエタノール浴中に浸して体積を測定し、過充電前電池体積からの変化分を過充電ガス量とした。
【0489】
なお、過充電ガス量が多いほど、過充電等の異常により内圧が異常に上昇したときにこれを感知して安全弁を作動させる電池では、安全弁を早めに作動させることができる。その結果、過充電時の電池安全性を担保できる。
上記作製した非水系電解液二次電池を用いて、初期の電池特性評価、高温保存耐久試験及び高温保存耐久試験後の過充電特性評価を実施した。評価結果を、比較例10−1を100.0%としたときの相対値で表10に示す。以下も同様とする。
【0490】
[比較例10−1]
実施例10−1の電解液において、化合物(2−1)及びMP10を含まない電解液を用いた以外、実施例10−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例10−2]
実施例10−1の電解液において、MP10を含まない電解液を用いた以外、実施例10−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0491】
[比較例10−3]
実施例10−1の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、実施例10−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0492】
【表10】
【0493】
表10より、本発明にかかる実施例10−1の非水系電解液を用いると、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル及びジフルオロリン酸リチウムが同時に添加されていない場合(比較例10−1)に比べ、初期ガス量が少なく、かつ高温保存耐久試験後の過充電ガス量が多い。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の過充電特性評価に優れた電池を提供することができる。
【0494】
なお、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを単独で用いた場合(比較例10−2)、初期ガス量は比較例10−1よりも増加する。更に、過充電ガス量は比較例10−1よりも増加するが、その改善効果は小さく、実施例10−1に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
また、ジフルオロリン酸リチウムを単独で用いた場合(比較例10−3)、初期ガス量は比較例10−1よりも減少するが、その改善効果は小さく、実施例10−1に比べて劣る。更に、過充電ガス量は比較例10−1よりも減少する。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
このことから、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとジフルオロリン酸リチウムを同時に用いることで、その相乗効果により電池特性が特異的に改善されることが確認できる。
【0495】
<実施例11−1及び比較例11−1〜11−3>
[実施例11−1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジメチルカーボネート(DMC)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPFを1.0mol/Lの割合で溶解させて基本電解液とした。更に、かかる基本電解液に対して、添加剤として化合物(2−1)0.5質量%及びリチウムビス(オキサラト)ボレート(「MP11」ともいう)0.5質量%を添加して実施例11−1の非水系電解液を調製した。
【0496】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0497】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚
さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0498】
[二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0499】
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をエタノール浴中に浸し、そのときの浮力から初期電池体積を求めた(アルキメデスの原理)。その後、ガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.2VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.2VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで放電し、この時の充電容量に対する放電容量の割合を求め、これを初期0.2C効率(%)とした。その後、0.2Cで4.2VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、非水系電解液二次電池をエタノール浴中に浸して体積を測定し、初期電池体積からの変化分を初期ガス量とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0500】
[高温保存耐久試験]
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.2Cで4.2VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、85℃、1日間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、25℃において0.2Cで3.0Vまで放電させた。
【0501】
[高温保存耐久試験後の電池特性評価]
高温保存耐久試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.2VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、この時の充電容量に対する放電容量の割合を求め、これを回復0.2C効率(%)とした。
上記作製した非水系電解液二次電池を用いて、初期の電池特性評価、高温保存耐久試験及び高温保存耐久試験後の電池特性評価を実施した。評価結果を、比較例11−1を100.0%としたときの相対値で表11に示す。以下も同様とする。
【0502】
[比較例11−1]
実施例11−1の電解液において、化合物(2−1)及びMP11を含まない電解液を用いた以外、実施例11−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0503】
[比較例11−2]
実施例11−1の電解液において、MP11を含まない電解液を用いた以外、実施例11−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例11−3]
実施例11−1の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、実施例11−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0504】
【表11】
【0505】
表11より、本発明にかかる実施例11−1の非水系電解液を用いると、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル及びシュウ酸塩が同時に添加されていない場合(比較例11−1)に比べ、初期0.2C効率に優れており、かつ高温保存耐久試験後の回復0.2C効率に優れる。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の電池特性評価に優れた電池を提供することができる。
【0506】
なお、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルを単独で用いた場合(比較例11−2)、初期0.2C効率は比較例11−1と変化は無い。更に、回復0.2C効率は比較例11−1と変化は無い。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
また、シュウ酸塩を単独で用いた場合(比較例11−3)、初期0.2C効率は比較例11−1と変化は無い。更に、回復0.2C効率は比較例11−1と変化は無い。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
このことから、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとシュウ酸塩を同時に用いることで、その相乗効果により電池特性が特異的に改善されることが確認できる。
【0507】
<実施例12−1〜12−2及び比較例12−1〜12−4>
[実施例12−1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPFを1.2mol/Lの割合で溶解させた。そして、添加剤としてモノフルオロエチレンカーボネート(MP2)5.0質量%を溶解させて基本電解液とした。更に、化合物(2−1)1.0質量%を添加して実施例12−1の非水系電解液を調製した。
【0508】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0509】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結
着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0510】
[二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0511】
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、45℃、72時間の条件下で放置した。その後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.35VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.35VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで放電し、これを初期0.2C容量とした。更に、0.2Cで4.35VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.5Cで3.0Vまで放電し、これを初期0.5C容量とした。そして、初期0.2C容量に対する初期0.5C容量の割合を求め、これを初期レート特性(%)とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0512】
[高温保存耐久試験]
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.2Cで4.35VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、60℃、7日間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、25℃において0.2Cで3.0Vまで放電させた。
【0513】
[高温保存耐久試験後の電池特性評価]
高温保存耐久試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.35VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、これを回復0.2C容量とした。更に、0.2Cで4.35VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.5Cで3.0Vまで放電し、これを回復0.5C容量とした。そして、回復0.2C容量に対する回復0.5C容量の割合を求め、これを保存後レート特性(%)とした。
上記作製した非水系電解液二次電池を用いて、初期の電池特性評価、高温保存耐久試験及び高温保存耐久試験後の電池特性評価を実施した。評価結果を、比較例12−1を100.0%としたときの相対値で表12に示す。以下も同様とする。
【0514】
[実施例12−2]
実施例12−1の電解液において、更に1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダン(「MP12」ともいう)3.0質量%を加えた電解液を用いた以外、上記の評価を実施した。
【0515】
[比較例12−1]
実施例12−1の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、実施例12−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例12−2]
実施例12−2の電解液において、化合物(2−1)を含まない電解液を用いた以外、実施例12−2と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0516】
[比較例12−3]
実施例12−1の電解液において、化合物(2−1)の代わりに化合物(3−1)1.0質量%用いた以外、実施例12−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
[比較例12−4]
実施例12−2の電解液において、化合物(2−1)の代わりに化合物(3−1)1.0質量%用いた以外、実施例12−2と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0517】
【表12】
【0518】
表12より、本発明にかかる実施例12−1の非水系電解液を用いると、フッ素含有環状カーボネートを単独で用いた場合(比較例12−1)に比べ、初期レート特性に優れており、かつ高温保存耐久試験後の保存後レート特性も優れる。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の電池特性に優れた電池を提供することができる。
更に、本発明にかかる実施例12−2の非水系電解液を用いると、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステル及び式(1)以外の芳香族化合物が同時に添加されていない場合(比較例12−1)に比べ、初期レート特性に優れており、かつ高温保存耐久試験後の保存後レート特性も優れる。また、その改善効果は実施例12−1よりも優れている。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の電池特性が更に優れた電池を提供することができる。
【0519】
なお、式(1)以外の芳香族化合物及びフッ素含有環状カーボネートを同時に添加した場合(比較例12−2)、初期レート特性は比較例12−1よりも低下する。更に、保存後レート特性は比較例12−1よりも向上するが、その改善効果は小さく、実施例12−2に比べて劣る。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかである。
【0520】
また、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルの範囲に含まれない芳香族化合物をフッ素含有環状カーボネート及び式(1)以外の芳香族化合物と同時に用いた場合(比較例12−3)、初期レート特性は比較例12−1よりも向上するが、保存後のレート特性が低下する。よって、本発明にかかる電解液を用いた電池の方が優れた特性であること
は明らかである。
このことから、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルと式(1)以外の芳香族化合物を同時に用いることで、その相乗効果により電池特性が特異的に改善されることが確認できる。
【0521】
<実施例13−1及び比較例13−1>
[実施例13−1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPFを1.2mol/Lの割合で溶解させた。そして、添加剤としてモノフルオロエチレンカーボネート(MP2)5.0質量%を溶解させて基本電解液とした。更に、化合物(2−2)3.0質量%を添加して実施例13−1の非水系電解液を調製した。
【0522】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ21μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0523】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ12μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0524】
[二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0525】
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、45℃、72時間の条件下で放置した。その後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.35VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.35VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで放電し、これを初期0.2C容量とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0526】
[高温保存耐久試験]
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.2Cで4.35VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、エタノール浴中に浸し、そのときの浮力から高温保存耐久試験前電池体積を求めた。(アルキメデスの原理)その後、60℃、7日間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、高温保存耐久試験前後の体積変化から保存ガス量を求めた。次に、25℃において0.2Cで3.0Vまで放電させ、高温保存耐久試験後に残存している容量を測定し、初期0.2C容量に対する割合を求め、これを残存率(%)とした。
【0527】
[高温保存耐久試験後の電池特性評価]
高温保存耐久試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.35VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、この時の充電容量に対する放電容量の割合を求め、これを回復0.2C効率(%)とした。
上記作製した非水系電解液二次電池を用いて、初期の電池特性評価、高温保存耐久試験及び高温保存耐久試験後の電池特性評価を実施した。評価結果を、比較例13−1を100.0%としたときの相対値で表13に示す。以下も同様とする。
【0528】
[比較例13−1]
実施例13−1の電解液において、化合物(2−2)を含まない電解液を用いた以外、実施例13−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
【0529】
【表13】
【0530】
表13より、本発明にかかる実施例13−1の非水系電解液を用いると、フッ素含有環状カーボネートを単独で用いた場合(比較例13−1)に比べ、初期0.2C容量に優れており、かつ保存ガス量、残存率及び高温保存耐久試験後の回復0.2C効率に優れる。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の電池特性に優れた電池を提供することができる。
このことから、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとフッ素含有環状カーボネート同時に用いることで、その相乗効果により電池特性が特異的に改善されることが確認できる。
【0531】
<実施例14−1及び比較例14−1>
[実施例14−1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPFを1.2mol/Lの割合で溶解させた。そして、添加剤としてモノフルオロエチレンカーボネート(MP2)5.0質量%、1,3−プロパンスルトン(MP8)2.0質量%及びアジポニトリル(MP5)3.0質量%を溶解させて基本電解液とした。更に、化合物(2−2)2.0質量%を添加して実施例14−1の非水系電解液を調製した。
【0532】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ21μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0533】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ12μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0534】
[二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0535】
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、45℃、72時間の条件下で放置した。その後、0.2Cの定電流で3Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.35VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.35VまでCCCV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3Vまで放電し、これを初期0.2C容量とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0536】
[高温保存耐久試験]
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.2Cで4.35VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、60℃、7日間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、25℃において0.2Cで3Vまで放電させ、高温保存耐久試験後に残存している容量を測定し、初期0.2C容量に対する割合を求め、これを残存率(%)とした。
【0537】
[高温保存耐久試験後の電池特性評価]
高温保存耐久試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.35VまでCCCV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3Vまで再度放電し、高温保存耐久試験後の電池容量を測定し、初期0.2C容量に対する割合を求め、これを回復率(%)とした。
上記作製した非水系電解液二次電池を用いて、初期の電池特性評価、高温保存耐久試験及び高温保存耐久試験後の電池特性評価を実施した。評価結果を、比較例14−1を100.0%としたときの相対値で表14に示す。以下も同様とする。
【0538】
[比較例14−1]
実施例14−1の電解液において、化合物(2−2)の代わりに化合物(3−1)2.4質量%用いた以外、実施例14−1と同様にして非水系電解液二次電池を作製し、上記の評価を実施した。
なお、実施例14−1で添加した化合物(2−2)と比較例14−1で添加した化合物(3−1)は等物質量である。
【0539】
【表14】
【0540】
表14より、本発明にかかる実施例14−1の非水系電解液を用いると、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルの範囲に含まれない芳香族化合物、フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物及びシアノ基を有する有機化合物を同時に用いた場合(比較例14−1)に比べ、初期0.2C容量に優れており、かつ残存率及び高温保存耐久試験後の回復率に優れる。すなわち、初期の電池特性及び高温保存耐久試験後の電池特性に優れた電池を提供することができる。
【0541】
このことから、式(1)で表される芳香族カルボン酸エステルとフッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物又はシアノ基を有する有機化合物を同時に用いることで、その相乗効果により電池特性が特異的に改善されることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0542】
本発明によれば、初期の電池特性と耐久試験後の電池特性に優れた非水系電解液二次電池をもたらすことができる非水系電解液を提供することができ、非水系電解液二次電池の小型化、高性能化及び高安全化を達成することができる。本発明の非水系電解液及び非水系電解液二次電池は、公知の各種の用途に用いることが可能である。具体例としては、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、負荷平準化用電源、自然エネルギー貯蔵電源、リチウムイオンキャパシタ等を挙げることができる。