(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ウエハを一括してモールド(ウエハモールド)することができ、特に、大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性を有し、同時に、モールド後において低反り性及び良好なウエハ保護性能を与え、更に、モールド工程を良好に行うことができ、ウエハレベルパッケージに好適に用いることができる樹脂組成物及び樹脂フィルムを提供すること、また該樹脂フィルムによりモールドされた半導体装置、及びその半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、下記(A)、(B)及び(C)成分を含有することを特徴とする樹脂組成物を提供する。
(A)下記組成式(1)で表される構成単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000であるシリコーン樹脂、
【化1】
[式中、R
1〜R
4はそれぞれ独立に炭素数1〜8の1価炭化水素基を示す。但し、R
3とR
4は同時にメチル基であることはなく、mとnはそれぞれ独立に0〜300の整数、R
5〜R
8は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10の2価炭化水素基を示す。また、a、bは共に正数で、a+b=1である。Xは下記一般式(2)で示される2価の有機基である。
【化2】
(式中、Vは
【化3】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。R
9及びR
10はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。hは0、1及び2のいずれかである。)]
(B)下記一般式(7)で示されるフェノール化合物、
【化4】
(式中、Yは、炭素原子又は炭素数2〜20の4価の炭化水素基であり、R
13〜R
16はそれぞれ独立に炭素数1〜8の1価炭化水素基又は水素原子を示す。)
(C)フィラー。
【0007】
このような樹脂組成物であれば、フィルム状に形成することが可能であるため、ウエハを一括してモールド(ウエハモールド)でき、かつ、大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性能、密着性、低反り性、ウエハ保護性、及び信頼性に優れたものとなり、ウエハレベルパッケージに好適に用いることができる樹脂組成物となる。
【0008】
また、前記(B)成分の量が、前記(A)成分100質量部に対して5〜50質量部であり、全質量に対する前記(C)成分の質量分率が、50〜90質量%であることが好ましい。
【0009】
このような樹脂組成物であれば、フィルム状に形成することが容易であるため、ウエハを容易に一括してモールド(ウエハモールド)でき、かつ、大口径、薄膜ウエハに対して更に良好なモールド性能、密着性、低反り性、ウエハ保護性、及び信頼性に優れたものとなり、ウエハレベルパッケージに更に好適に用いることができる樹脂組成物となる。
【0010】
更に、ウエハへの密着性、ウエハ保護性が一層良好となるため、エポキシ樹脂硬化促進剤を含有することが好ましく、ウエハレベルパッケージに更に好適に用いることができる。また、エポキシ樹脂を配合することで、密着性、保護性を更に向上させることができる。
【0011】
前記フィラーとしてはシリカであることが好ましい。フィラーがシリカであれば、ウエハ保護性を更に向上させることができ、耐熱性、耐湿性、強度等を更に向上させ、信頼性を上げることができるため好都合である。
【0012】
本発明は、更に前記樹脂組成物を用いて形成された樹脂フィルムを提供する。
【0013】
フィルム状に形成された樹脂フィルムであれば、大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性能を有するものとなり、ウエハを一括してモールドする際に、樹脂を流し込む必要がないため、ウエハ表面への充填不良等の問題を生じさせることがない。また、前記樹脂組成物を用いて形成された樹脂フィルムであれば、ウエハに対する密着性、ウエハ保護性を同時に併せ持つウエハモールド材となる。
【0014】
この場合、例えば、剥離フィルム又は保護フィルムとするフィルム上に樹脂組成物をコートした樹脂形成フィルムを2つ以上用意し、該樹脂形成フィルムから剥離フィルム又は保護フィルムをそれぞれ剥離し、露呈した樹脂形成フィルム相互を重ね合わせる工程を有することにより、樹脂フィルムを製造することができる。
【0015】
更に、本発明は、前記樹脂フィルムを半導体ウエハに貼り付け、該半導体ウエハをモールドする工程と、前記樹脂フィルムを加熱硬化する工程と、該モールドされた半導体ウエハを個片化する工程とを有する半導体装置の製造方法を提供する。
【0016】
このように、前記樹脂フィルムでモールドされた半導体ウエハは反りが少なく十分に保護されたものとなるので、これを個片化することで歩留まりよく高品質な半導体装置を製造することができる。
【0017】
また、更に、本発明は、前記樹脂フィルムを加熱硬化した加熱硬化皮膜でモールドされた半導体ウエハを個片化してなり、前記加熱硬化皮膜を有するものであることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0018】
このように、樹脂フィルムを加熱硬化した加熱硬化皮膜でモールドされた半導体ウエハは反りが少なく十分に保護されたウエハであり、これを個片化することで得られる半導体装置は反りのない高品質な半導体装置とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の樹脂組成物は、フィルム状に加工することが可能であるため、大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性能を有するものとなる。また、密着性、低反り性、ウエハ保護性に優れ、ウエハを一括してモールドすることが可能となるため、ウエハレベルパッケージに好適に用いることができる樹脂フィルムとなる。
また、本発明の半導体装置及びその製造方法であれば、歩留まりよく高品質な半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
前述のように、最近において、ウエハ表面への充填不良等の問題を生じさせずにウエハを一括してモールドすることができ、モールド後において密着性、低反り性及び良好なウエハ保護性能を有するウエハモールド材の開発が望まれていた。
【0021】
そこで、本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記(A)シリコーン樹脂と(B)特定構造を有するフェノール化合物を組み合わせることでウエハへの密着性、硬化後の低反り性に優れた樹脂組成物を与えることを見出し、更に下記(C)フィラーがウエハ保護性並びに硬化後の樹脂組成物の信頼性を向上させるため、これらの成分からなる樹脂組成物より得られた樹脂フィルムが、ウエハに対する密着性、ウエハ保護性を同時に併せ持つウエハモールド材となることを見出して、本発明を完成させたものである。
【0022】
以下、本発明の樹脂組成物並びにそれから得られる樹脂フィルム(複合フィルム)、半導体装置及びその製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の樹脂組成物は、
(A)シリコーン樹脂、
(B)特定構造を有するフェノール化合物、
(C)フィラー
を含有する。
【0023】
<樹脂組成物>
[(A)シリコーン樹脂]
本発明において、(A)成分のシリコーン樹脂はフィルム形成能を与えるものとして機能する。
また、得られた樹脂フィルムをウエハモールド材として用いた場合、ウエハへの密着性、低反り性、良好なモールド性を与える。
【0024】
この(A)成分のシリコーン樹脂は、下記組成式(1)で表される構成単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000であるシリコーン樹脂である。
【化5】
[式中、R
1〜R
4はそれぞれ独立に炭素数1〜8の1価炭化水素基を示す。但し、R
3とR
4は同時にメチル基であることはなく、mとnはそれぞれ独立に0〜300の整数、R
5〜R
8は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10の2価炭化水素基を示す。また、a、bは共に正数で、a+b=1である。Xは下記一般式(2)で示される2価の有機基である。
【化6】
(式中、Vは
【化7】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。R
9及びR
10はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。hは0、1、及び2のいずれかである。)]
【0025】
本発明のシリコーン樹脂は、上記式(1)で表される繰返し単位を含有し、テトラヒドロフランを溶出溶媒としてGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000〜500,000、好ましくは5,000〜200,000である重合体である。a、bは共に正数であり、a+b=1である。各単位はランダムに結合していても、ブロック重合体として結合していてもよい。
【0026】
上記式(1)において、mとnはそれぞれ独立に0〜300の整数であり、好ましくはmは0〜200、特に0〜100、nは0〜200、特に0〜100である。また、Xは上記式(2)で示される2価の有機基である。R
1〜R
4は、互いに独立に、炭素数1〜8、好ましくは1〜6の1価炭化水素基であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられ、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基などが挙げられる。中でもメチル基及びフェニル基が原料の入手の容易さから好ましい。但し、R
3とR
4は同時にメチル基ではない。
【0027】
上記式(2)において、R
9とR
10は互いに独立に、炭素数1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基又はアルコキシ基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基、メトキシ基、及びエトキシ基などが挙げられる。hは0、1又は2であり、好ましくは0である。
【0028】
上記式(2)において、Vは、下記に示す基のいずれかより選ばれる2価の基である。pは0又は1である。
【化8】
【0029】
a、bは正数で、a+b=1であるが、好ましくは0.05≦a≦0.80、特に0.10≦a≦0.70、好ましくは0.20≦b≦0.95、特に0.30≦b≦0.90である。
【0030】
[(A)シリコーン樹脂の製造方法]
本発明のシリコーン樹脂は、下記一般式(3)、下記一般式(4)、下記一般式(5)及び下記一般式(6)で表される化合物から選択される化合物を用いて金属触媒存在下、付加重合することにより製造することができる。
【化9】
【化10】
(式中、R
1〜R
4はそれぞれ独立に炭素数1〜8の1価炭化水素基を示す。但し、R
3とR
4は同時にメチル基であることはなく、mとnはそれぞれ独立に0〜300の整数である。)
【化11】
(式中、Vは
【化12】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。R
9及びR
10はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。hは0、1及び2のいずれかである。また、R
11は水素原子又はメチル基を示し、gは0〜7の整数である。)
【化13】
(式中、R
3とR
4はそれぞれ独立に炭素数1〜8の1価炭化水素基を示す。但し、R
3とR
4は同時にメチル基であることはなく、qとrはそれぞれ独立に0〜300の整数である。また、R
12は水素原子又はメチル基を示し、kは0〜7の整数である。)
【0031】
金属触媒は、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H
2PtCl
4・xH
2O、H
2PtCl
6・xH
2O、NaHPtCl
6・xH
2O、KHPtCl
6・xH
2O、Na
2PtCl
6・xH
2O、K
2PtCl
4・xH
2O、PtCl
4・xH
2O、PtCl
2、Na
2HPtCl
4・xH
2O(式中、xは0〜6の整数が好ましく、特に0又は6が好ましい)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(例えば、米国特許第3,220,972号に記載のもの);塩化白金酸とオレフィンとの錯体(例えば、米国特許第3,159,601号明細書、米国特許第3,159,662号明細書、及び米国特許第3,775,452号明細書に記載のもの);白金黒やパラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィン錯体;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(所謂ウィルキンソン触媒);及び、塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン(特にビニル基含有環状シロキサン)との錯体を使用することができる。
【0032】
触媒の使用量は触媒量であればよく、白金族金属として、反応に供する原料化合物の総量に対して0.0001〜0.1質量%、好ましくは0.001〜0.01質量%であることが好ましい。付加反応は溶剤が存在しなくても実施可能であるが、必要に応じて溶剤を使用してもよい。溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤が好ましい。反応温度は、触媒が失活せず、かつ、短時間で重合の完結が可能である温度であればよく、例えば40〜150℃、特に60〜120℃が好ましい。反応時間は、重合物の種類及び量により適宜選択すればよく、例えば0.5〜100時間、特に0.5〜30時間が好ましい。溶剤を使用した場合には、反応終了後に減圧留去に供して溶剤を留去する。
【0033】
反応方法は特に制限されるものではないが、例えば、式(3)で表される化合物と、式(4)で表される化合物と、式(5)で表される化合物と、式(6)で表される化合物とを反応させる場合、先ず、式(5)及び式(6)で表される化合物を混合して加温した後、前記混合液に金属触媒を添加し、次いで式(3)及び式(4)で表される化合物を0.1〜5時間かけて滴下するのがよい。
【0034】
各化合物の配合比は、上記式(3)及び式(4)で表される化合物が有するヒドロシリル基のモル数の合計と、上記式(5)及び式(6)で表される化合物が有するアルケニル基のモル数の合計が、アルケニル基の合計モル数に対するヒドロシリル基の合計モル数が0.67〜1.67、好ましくは0.83〜1.25となるように配合するのがよい。重合体の重量平均分子量はo−アリルフェノールのようなモノアリル化合物、又は、トリエチルヒドロシランのようなモノヒドロシランやモノヒドロシロキサンを分子量調整剤として使用することにより制御することが可能である。
【0035】
なお、樹脂中のシロキサン量は、30〜80質量%であるとフィルムの形成性、モールド性能、低反り性の点で好ましい。
【0036】
[(B)特定構造を有するフェノール化合物]
(B)成分は、下記一般式(7)で示されるフェノール化合物である。
【化14】
(式中、Yは、炭素原子又は炭素数2〜20の4価の炭化水素基であり、R
13〜R
16はそれぞれ独立に炭素数1〜8の1価炭化水素基又は水素原子を示す。)
【0037】
上記式(7)において、Yは炭素原子又は炭素数2〜20の4価の炭化水素基であるが、直鎖状、分岐状の飽和炭化水素基であることが好ましく、構造中、環状炭化水素基、芳香族基を有しても構わない。
【0038】
具体的には、炭素原子、
【化15】
のいずれかより選ばれる4価の炭化水素基である。更に、具体例の中で、下記の4価の炭化水素基が特に好ましい。
【化16】
【0039】
一般式(7)としては、下記のものが挙げられるが、これに限られるものではない。
【化17】
【0040】
また、式(7)において、R
13〜R
16は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を選択することが望ましい。
【0041】
(B)成分は、シリコーン樹脂(A)と熱によって架橋反応をするための成分である。(B)成分を加えることで、樹脂のウエハへの密着性、保護性、信頼性がより向上する。また、本発明において、(B)成分のフェノール化合物は、本発明組成物の硬化収縮を著しく低下するものであり、結果として、本発明組成物でモールドされたウエハの反りを劇的に低減する。上記のフェノール化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。(B)成分におけるOH当量は96〜200が好ましい。
【0042】
(B)成分のフェノール化合物の配合量は特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して5〜50質量部であるのがよく、好ましくは5〜40質量部である。フェノール化合物の配合量が上記範囲内であれば、樹脂組成物の密着性、保護性が更に向上する。また、該樹脂組成物の硬化物は信頼性に優れた硬化物となるため好ましい。
【0043】
[(C)フィラー]
(C)成分は、本発明の樹脂組成物に、ウエハ保護性を与え、更に、耐熱性、耐湿性、強度等を向上させ、信頼性を上げることができる。フィラーとしては、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、結晶シリカ粉末等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩又は亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物等を挙げることができる。これらのフィラーは1種単独で混合しても、2種以上を併せて混合してもよい。これらの中でも溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末が好ましい。前記シリカ粉末としては、例えば、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ等の補強性シリカ;石英等の結晶性シリカが挙げられる。具体的には、日本アエロジル社製のAerosil R972、R974、R976;(株)アドマテックス製のSE−2050、SC−2050、SE−1050、SO−E1、SO−C1、SO−E2、SO−C2、SO−E3、SO−C3、SO−E5、SO−C5;信越化学工業(株)製のMusil120A、Musil130A等が例示される。
【0044】
フィラーの平均粒径は、特に限定されないが、0.01μm以上20μm以下が好ましく、特には0.01μm以上10μm以下が好ましい。無機充填剤の平均粒子径が上記下限値以上であれば、無機充填剤が凝集しにくくなり、強度が高くなるため好ましい。また上記上限値以下であれば、チップ間への樹脂の流動性が高くなり、充填性が良好になるため好ましい。なお、平均粒径はレーザー光回折法による粒度分布測定装置によって求めることができ、質量平均値D
50(即ち、累積質量が50%となるときの粒子径又はメジアン径)として測定することができる。
【0045】
フィラーの含有量は、本発明の樹脂組成物の総質量に対し50質量%以上90質量%以下、好ましくは60質量%以上85質量%以下とすることが好ましい。フィラーの含有量が上記上限値以下であればフィルム系性能が高くなり、樹脂の流動性が高くなり、充填性が良好となるため好ましい。また、上記下限値以上であれば、十分に効果を奏する。
【0046】
エポキシ樹脂
また、本発明の樹脂組成物には、ウエハへの密着性、保護性を向上させる目的でエポキシ樹脂を添加することもできる。エポキシ樹脂はシリコーン樹脂(A)と共にフェノール化合物(B)と架橋反応するため、樹脂のウエハへの密着性、保護性、信頼性がより向上する。
エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、又はそれらに水素添化したもの、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂等が挙げられ、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。これらの市販品としては、例えば、商品名で、jER1001(三菱化学製)、エピクロン830S(DIC製)、jER517(三菱化学製)、EOCN103S(日本化薬製)等が挙げられる。
エポキシ樹脂の配合量は、配合する場合、(A)成分100質量部に対して1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部であるのがよい。
【0047】
エポキシ樹脂硬化促進剤
また、本発明の樹脂組成物は、更にエポキシ樹脂硬化促進剤を含有することができる。エポキシ樹脂硬化促進剤を含有することにより、硬化反応を適切かつ均一に進めることができる。エポキシ樹脂硬化促進剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部であるのがよい。
エポキシ樹脂硬化促進剤は、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、及びこれらの化合物のエチルイソシアネート化合物、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5(DBN)、DBUの有機酸塩、DBUのフェノール樹脂塩、DBU誘導体のテトラフェニルボレート塩等のDBU系化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−エトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート等のトリオルガノホスフィン類、四級ホスホニウム塩、トリエチレンアンモニウム・トリフェニルボレート等の第三級アミン、及びそのテトラフェニルホウ素酸塩等が挙げられる。上記エポキシ樹脂硬化促進剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0048】
難燃剤
本発明の組成物は難燃性の向上を目的として、難燃剤を含んでもよい。難燃剤としては、リン系難燃剤が挙げられ、ハロゲン原子を含有せずに難燃性を付与するものであるが、その例としてはホスファゼン化合物、リン酸エステル化合物、リン酸エステルアミド化合物等が挙げられる。ホスファゼン化合物やリン酸エステルアミド化合物は、分子内にリン原子と窒素原子を含有しているため、特に高い難燃性が得られる。難燃剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して5〜30質量部が好ましい。
【0049】
シランカップリング剤
本発明の樹脂組成物はシランカップリング剤を含んでもよい。シランカップリング剤を含むことにより、樹脂組成物の被接着体への密着性を更に高めることができる。シランカップリング剤としては、エポキシシランカップリング剤、芳香族含有アミノシランカップリング剤等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の接着剤組成物の総質量の0.01質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
【0050】
また、本発明の樹脂組成物は、上記以外の成分を含んでいてもよい。例えば、シリコーン樹脂(A)と特定構造を有するフェノール化合物(B)の相溶性を向上するため、あるいは樹脂組成物の貯蔵安定性又は作業性等の各種特性を向上するために、各種添加剤を適宜添加してもよい。例えば、脂肪酸エステル、グリセリン酸エステル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の内部離型剤、フェノール系、リン系、もしくは硫黄系酸化防止剤等を添加することができる。その他の任意成分は、無溶剤で本発明の樹脂組成物に添加してもよいが、有機溶剤に溶解又は分散し、溶液又は分散液として調製してから添加してもよい。
【0051】
有機溶剤
溶剤は樹脂組成物の分散液を調製するための溶剤として以下に説明する有機溶剤を使用することができる。この有機溶剤としては、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、好ましくはメチルエチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。その使用量は、樹脂組成物の固形分濃度が50〜80質量%になるようにすることが好ましい。
【0052】
<樹脂フィルム>
本発明の樹脂組成物はフィルム状に形成されることが好ましい。このような樹脂フィルムであれば、特に、大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性を有するものとなり、ウエハを一括してモールドする際に、樹脂を流し込む必要がない。そのため、従来のトランスファー成形で生じうるワイヤ変形、ウエハ表面への充填不良や、圧縮成形法で生じうる成形範囲の制御の難しさ、液状封止樹脂の流動性と物性の問題は根本的に解消することができる。
【0053】
更に、樹脂フィルムの厚みは、特に制限はないが、50μm以上1,000μm以下であることが好ましく、更には80〜700μmがより好ましい。このような厚みであれば、低反り性、保護性に優れる樹脂フィルムとなるため好ましい。
【0054】
従って、本発明は、前記樹脂組成物から形成される樹脂フィルムを提供する。該樹脂フィルムとして、例えば、本発明の樹脂組成物から形成される樹脂フィルムと、該樹脂フィルムを被覆する保護層とを有する保護層付き樹脂フィルムが挙げられる。該保護層は、後に説明するものを用いることができる。以下、本発明の樹脂フィルムの製造方法の一例について説明する。
【0055】
(樹脂フィルムの製造方法)
予め本発明の(A)シリコーン樹脂、(B)特定構造を有するフェノール化合物、(C)フィラー、必要に応じて、その他の任意成分、及び有機溶剤を混合して液状に調整した樹脂組成物溶液を作製し、該樹脂組成物溶液をリバースロールコータ、コンマコータ等を用いて、所望の厚さになるように保護層(保護フィルム、剥離フィルム)に塗布する。前記樹脂組成物溶液が塗布された保護層をインラインドライヤに通し、80〜160℃で2〜20分間かけて有機溶剤を除去することにより乾燥させ、次いでロールラミネーターを用いて別の保護層と圧着し、積層することにより、本発明の樹脂フィルムを得ることができる。
なお、圧着条件としては、特に制限はないが、温度50〜100℃、線圧0.5〜5kgf/cm、速度0.1〜5m/minでラミネートすることが好ましい。
また、別の態様として、上記樹脂フィルム(保護層/樹脂組成物フィルム/保護層)を2つ以上用意し、それぞれの樹脂フィルムから保護層を剥離して、両樹脂フィルム同士を積層させることで、多層の樹脂フィルムから形成される複合フィルムを得ることもできる。積層の際は、30〜120℃で加温しながらフィルム同士を積層させることが好ましい。
【0056】
保護層(保護フィルム/剥離フィルム)
前記保護層は、本発明の樹脂組成物からなる樹脂フィルムの形態を損なうことなく剥離できるものであれば特に限定されないが、ウエハ用の保護フィルム及び剥離フィルムとして活用するものであり、通常、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、離型処理を施したポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。また、剥離力は50〜300mN/minが好ましく、厚さは25〜150μm、好ましくは38〜125μmである。
【0057】
(モールドされるウエハ)
本発明の樹脂フィルムにより一括してモールドされるウエハとしては、特に制限されないが、表面に半導体素子(チップ)が積載されたウエハであっても、表面に半導体素子が作製された半導体ウエハであってもよい。本発明の樹脂フィルムは、モールド前にはこのようなウエハ表面に対する充填性が良好であり、また、モールド後には低反り性を有し、このようなウエハの保護性に優れる。また、本発明の樹脂フィルムは特に制限されないが、直径8インチ以上、例えば、直径8インチ(200mm)、12インチ(300mm)又はそれ以上といった大口径のウエハや薄膜ウエハをモールドするのに好適に用いることができる。
また、薄型ウエハとしては、厚さ5〜300μmに薄型加工されたウエハに用いることが好ましい。
【0058】
(ウエハのモールド方法)
本発明の樹脂フィルムを用いたウエハのモールド方法については、特に限定されないが、例えば、樹脂フィルム上に貼られた一方の保護層を剥がし、(株)タカトリ製の真空ラミネーター(製品名:TEAM−300)を用いて、真空チャンバー内を真空度50〜1,000Pa、好ましくは50〜500Pa、例えば100Paに設定し、80〜200℃、好ましくは80〜130℃、例えば100℃で他方の保護層が貼られた樹脂フィルムを上記ウエハに一括して密着させ、常圧に戻した後、上記ウエハを室温まで冷却して上記真空ラミネーターから取り出し、他方の保護層を剥離することで行うことができる。
また、半導体チップが積層されたウエハに対しては、コンプレッションモールド装置や真空ダイヤフラムラミネーターと平坦化のための金属板プレスを備えた装置等を好適に使用することができる。例えば、コンプレッションモールド装置としては、アピックヤマダ(株)製の装置(製品名:MZ−824−01)を使用することができ、半導体チップが積層された300mmシリコンウエハをモールドする際は、100〜180℃、成型圧力100〜300kN、クランプタイム30〜90秒、成型時間5〜20分で成型が可能である。
また、真空ダイヤフラムラミネーターと平坦化のための金属板プレスを備えた装置としては、ニチゴー・モートン(株)製の装置(製品名:CVP−300)を使用することができ、ラミネーション温度100〜180℃、真空度50〜500Pa、圧力0.1〜0.9PMa、ラミネーション時間30〜300秒でラミネートした後、上下熱板温度100〜180℃、圧力0.1〜3.0MPa、加圧時間30〜300秒で樹脂成型面を平坦化することが可能である。
モールド後、120〜220℃で15〜180分間の条件で樹脂フィルムを加熱することにより、樹脂を硬化することができる。
【0059】
<半導体装置>
更に、本発明では前記樹脂フィルムを加熱硬化した加熱硬化皮膜でモールドされた半導体ウエハを個片化した、加熱硬化皮膜を有する半導体装置を提供する。モールドされたウエハは、ダイシングテープなどの半導体加工用保護テープにモールド樹脂面、或いは、ウエハ面が接するように貼られ、ダイサーの吸着テーブル上に設置され、このモールドされたウエハは、ダイシングブレードを備えるダイシングソー(例えば、DISCO製、DFD6361)を使用して切断される。ダイシング時のスピンドル回転数及び切断速度は適宜選択すればよいが、通常、スピンドル回転数25,000〜45,000rpm、切断速度10〜50mm/secである。また、個片化されるサイズは半導体パッケージの設計によるが、概ね2mm×2mm〜30mm×30mm程度である。
本発明により、反りが少なく十分に保護されたウエハをダイシングブレード等を用いたダイシングにより個片化することで得られる半導体装置は、歩留まりのよい高品質な半導体装置となる。
【0060】
<半導体装置の製造方法>
また、本発明では両面に保護層を形成された樹脂フィルムの一方の保護層を樹脂フィルムから剥離し、表面に露出した樹脂フィルムを半導体ウエハに貼り付け、他方の保護層を樹脂フィルムから剥離して半導体ウエハをモールドする工程と、モールドされた半導体ウエハを個片化する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法をも提供する。
【実施例】
【0061】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を更に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0062】
[合成例1〜3]
合成例において、各重合体の重量平均分子量は、GPCカラム TSKgel Super HZM−H(東ソー社製)を用い、流量0.6ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0063】
実施例、比較例において使用した化合物を以下に示す。
【化18】
【0064】
[合成例1]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物147g(0.35モル)及び上記式(S−2)で示される化合物27.9g(0.15モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.0gを投入し、上記式(S−3)で示される化合物77.8g(0.4モル)及び上記式(S−4)で示される化合物(x=40)276.7g(0.1モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は45,000であった。これを樹脂(1)とし、実施例、比較例に供した。なお、樹脂(1)中に含まれるシロキサン量は58質量%である。なお、樹脂(1)における構成単位比は、仕込み量により、a=0.2、b=0.8である。
【0065】
[合成例2]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物210g(0.5モル)を加えた後、トルエン2,100gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.0gを投入し、上記式(S−3)で示される化合物77.8g(0.4モル)及び上記式(S−4)で示される化合物(x=100)361.9g(0.1モル)を2時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は48,000であった。これを樹脂(2)とし、実施例に供した。なお、樹脂(2)中に含まれるシロキサン量は69質量%である。なお、樹脂(2)における構成単位比は、仕込み量により、a=0.2、b=0.8である。
【0066】
[合成例3]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物105g(0.25モル)及び上記式(S−2)で示される化合物46.5g(0.25モル)を加えた後、トルエン1,000gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.5gを投入し、上記式(S−3)で示される化合物77.8g(0.40モル)及び上記式(S−4)で示される化合物(x=8)70.6g(0.10モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は35,000であった。これを樹脂(3)とし、実施例に供した。なお、樹脂(3)中に含まれるシロキサン量は39質量%である。なお、樹脂(3)における構成単位比は、仕込み量により、a=0.2、b=0.8である。
【0067】
[比較合成例1]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、上記式(S−5)で示される化合物151g(0.35モル)及び上記式(S−2)で示される化合物27.9g(0.15モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.0gを投入し、上記式(S−3)で示される化合物77.8g(0.4モル)及び上記式(S−4)で示される化合物(x=40)276.7g(0.1モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は38,000であり、これを樹脂(4)とし、比較例に供した。なお、樹脂(4)中に含まれるシロキサン量は57質量%である。
【0068】
[実施例1〜6及び比較例1〜3]
<樹脂組成物の調製>
下記表1に記載した組成で、(A)上記合成例1〜3で合成したシリコーン樹脂(上記樹脂(1)〜(3))、(B)特定構造を有するフェノール化合物、(C)フィラー及び任意成分を配合した。更に固形成分濃度が65質量%となる量のシクロペンタノンを添加し、ボールミルを使用して撹拌し、混合及び溶解分散して、樹脂組成物の分散液を調製した。なお、表1中の配合量を示す数値の単位は「質量部」である。比較例1は本発明のシリコーン樹脂(A)とは異なるシリコーン樹脂(上記樹脂(4))を含む樹脂組成物である。比較例2は、本発明以外のフェノール化合物であるフェノールノボラック樹脂を含む樹脂組成物である。比較例3は(C)フィラーを含まない樹脂組成物である。
【0069】
(樹脂フィルムの形成)
フィルムコーターとしてダイコーターを用い、上記E7304を剥離フィルム(1)として用いて、表1の実施例1に示す樹脂組成物を剥離フィルム上に塗布した。次いで、100℃に設定された熱風循環オーブン(長さ4m)を5分間で通過させることにより、膜厚100μmの樹脂フィルムを上記剥離フィルム(1)上に形成した。
次に樹脂フィルムの上から、ポリエチレンフィルム(厚さ100μm)をラミネートロールを用いて線圧力10N/cm,100℃で貼り合わせて、剥離フィルム(1)/樹脂フィルム/保護フィルムからなる積層フィルム(1)を作製した。
また、剥離フィルム(1)の代りに上記E7302を剥離フィルム(2)として用いる以外は上記と同様にして剥離フィルム(2)/樹脂フィルム/保護フィルムからなる積層フィルム(2)を作製した。
更に、得られた積層フィルム(1),(2)のそれぞれのポリエチレンフィルム(保護フィルム)を取り除き、樹脂フィルム同士を重ね合わせ、60℃に加温された熱ロールラミネーターに投入し、膜厚が200μmの樹脂フィルムを有する剥離フィルム(1)/樹脂フィルム/剥離フィルム(2)からなる複合フィルムを形成した。
【0070】
実施例1と同様の方法にて、表1の他の樹脂組成物を用いて膜厚が200μmの樹脂フィルムを有する複合フィルムを作製した。
なお、実施例6では、同様の方法で、膜厚が500μmの樹脂フィルムを作製した。
【0071】
樹脂組成物の調製に用いた各成分を下記に示す。
(B)特定構造を有するフェノール化合物
・P−1(OH当量:114)
【化19】
・P−2(OH当量:119)
【化20】
・P−3(OH当量:144)
【化21】
【0072】
(C)フィラー
・シリカ(アドマテックス製、平均粒径5.0μm)
その他の成分
・EOCN−103S(商品名)(日本化薬(株)製エポキシ樹脂、エポキシ当量:209〜219)
・キュアゾール2P4MHZ(商品名)(四国化成工業(株)製、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール)
・P−4(4官能フェノールノボラック樹脂、OH当量:117)
【化22】
【0073】
剥離フィルム(1):E7304(商品名)(東洋紡績(株)製ポリエステル、厚さ75μm、剥離力200mN/50mm)
剥離フィルム(2):E7302(商品名)(東洋紡績(株)製ポリエステル、厚さ75μm、剥離力90mN/50mm)
保護フィルム:ポリエチレンフィルム(厚さ100μm)
【0074】
【表1】
【0075】
[樹脂フィルムのウエハへのモールド]
ウエハ厚み100μmの直径12インチ(300mm)シリコンウエハを用意した。実施例1〜6及び比較例1〜3の複合フィルムについて、剥離フィルム(2)を剥離し、真空ラミネーター((株)タカトリ製、製品名:TEAM−300M)を用いて、真空チャンバー内を真空度250Paに設定し、110℃で、樹脂フィルムを一括して上記シリコンウエハに貼り付けた。常圧に戻した後、上記シリコンウエハを25℃に冷却して上記真空ラミネーターから取り出し、残りの剥離フィルム(1)を剥離した。
得られた樹脂フィルム付ウエハは、イナートオーブンにて、180℃,2時間加熱することにより樹脂の硬化を行った。
【0076】
[評価1:ウエハ反り量]
樹脂フィルム硬化後のウエハ反り量をレーザー(東朋テクノロジー(株)製、FLX−3300−T)測定し、得られた値を表2に示す。
なお、反り量が大きく、本装置で測定できなかった場合は、定規(JIS 1級)を用いて測定した値を示した。
【0077】
[評価2:ウエハサポート性]
ウエハサポート性はウエハの端を支持した際のウエハのたわみ量を定規(JIS 1級)で測定し、20mm以内を良好とし、20mmを超えた場合を不良と判断した結果を表2に示す。
【0078】
[評価3:密着力]
各樹脂フィルム(25μm)を真空フィルムラミネーター(温度:100℃、圧力:100Pa、TEAM−100、(株)タカトリ製)を用いて、直径6インチ半導体ウエハ(厚み625μm、信越化学工業(株)製)に貼り合わせた。次いで、ダイシングブレードを備えるダイシングソー(DAD685、DISCO社製)を使用して2mm×2mm角の大きさに切断した。別途用意した、15mm×15mm角のシリコンウエハ(ベース基板)上に、樹脂フィルムを介して150℃、50mNの荷重にて2mm×2mm角のチップ貼り合わせた。その後、180℃にて2時間加熱して樹脂フィルムを硬化させ、試験片を得た。試験片は各5個ずつ製造し、以下の接着力測定試験に供した。
【0079】
ボンドテスター(Dage series 4000−PXY:Dage社製)を用いて、半導体チップ(2mm×2mm)がベース基板(15mm×15mm角のシリコンウエハ)から剥離する時にかかる抵抗力を測定し、樹脂フィルム層の密着力を評価した。テスト条件は、テストスピード200μm/sec、テスト高さ50μmで行った。結果を表2に示す。表2に示される数値は、各々5個の試験体における測定値の平均であり、数値が高いほど接着シートの接着力が高いことを示す。
【0080】
[評価4:信頼性]
硬化後の樹脂フィルム付ウエハをダイシングブレードを備えるダイシングソー(DAD685、DISCO社製、スピンドル回転数は40,000rpm、切断速度は20mm/sec)を使用して10mm×10mm角の試験片を得た。得られた試験片(各10片づつ)をヒートサイクル試験(−25℃で10分間保持、125℃で10分間保持を1,000サイクル繰り返す)に供し、ヒートサイクル試験後の樹脂フィルムのウエハからの剥離状態を超音波検査により確認した。全く剥離を生じなかったものを良好、1つでも剥離を生じたものを不良として判定した結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
以上の結果、本発明の樹脂組成物から得られる樹脂フィルムは、比較例と比べて全体的にウエハ反り量が少なく、ウエハサポート性、密着性、信頼性に優れることがわかった。
【0083】
以上説明したように、本発明の樹脂組成物であれば、フィルム状に形成することが可能であるためウエハを一括してモールド(ウエハモールド)できるものであり、大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性を有するものであることが示された。また、本発明の樹脂組成物より得られる樹脂フィルムは、低反り性及びウエハ保護性に優れ、密着性、信頼性にも優れることが示された。
【0084】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。