特許第6361664号(P6361664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361664
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】光硬化性インクジェットインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20180712BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20180712BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20180712BHJP
   C08F 220/36 20060101ALI20180712BHJP
   B32B 3/14 20060101ALI20180712BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180712BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C09D11/30
   B41M5/00 120
   C08F220/20
   C08F220/36
   B32B3/14
   B32B27/30 Z
   G02B1/04
【請求項の数】13
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2015-550952(P2015-550952)
(86)(22)【出願日】2014年11月26日
(86)【国際出願番号】JP2014081213
(87)【国際公開番号】WO2015080142
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2017年5月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-246163(P2013-246163)
(32)【優先日】2013年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】小野 浩平
(72)【発明者】
【氏名】杉原 克幸
(72)【発明者】
【氏名】廣田 敬幸
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−160300(JP,A)
【文献】 特表2010−520939(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/047523(WO,A1)
【文献】 特表2008−527136(JP,A)
【文献】 特開2009−238890(JP,A)
【文献】 特開平04−255703(JP,A)
【文献】 特開2013−014739(JP,A)
【文献】 特開2011−256271(JP,A)
【文献】 特開2013−068896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/30
B32B 3/14
B32B 27/30
B41M 5/00
C08F 220/20
C08F 220/36
G02B 1/04
DWPI(Thomson Innovation)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つのベンゼン環および下記有機基群aから選ばれる少なくとも1つの基からなり、前記ベンゼン環同士の結合はすべて1つの前記基を介してなされている骨格構造と、前記ベンゼン環に結合する下記有機基群dから選ばれる少なくとも1つの基とを有する化合物(A2)3〜60重量%と下記式(7)または(8)で表される化合物(B)1〜60重量%とを含む光硬化性インクジェットインク。
[有機基群a]
【化1】
(R1、R2およびR3は独立して水素または炭素数1〜5のアルキル基であり、*はベンゼン環の結合位置を示す。)
[有機基群d]
【化2】
(R7は独立して炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、R6およびR8は独立して水素またはメチル基であり、iは1〜5の整数であり、nは0〜5の整数である。)
【化3】
(Xは、炭素数1〜5の二価の有機基または酸素原子であり、R18およびR19は、下記有機基群cから選ばれる基である。)
[有機基群c]
【化4】
(R20およびR23は独立して炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、R2122およびR24は独立して水素またはメチル基であり、k、lおよびmは独立して1〜5の整数である。)
【請求項2】
化合物(A2)が下記式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物である請求項1に記載の光硬化性インクジェットインク。
【化5】
(R9、R10およびR11の少なくとも一つが、記有機基群bから選ばれる基であり、残りが水酸基または炭素数1〜5のアルキル基である。)
[有機基群b]
【化11】
(R4およびR7は独立して炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、R5、R6およびR8は独立して水素またはメチル基であり、hは0〜5の整数であり、iおよびjは独立して1〜5の整数である。)
【化6】
(R12、R13およびR14の少なくとも一つが、上記有機基群bから選ばれる基であり、残りが水酸基または炭素数1〜5のアルキル基である。)
【化7】
(R15、R16およびR17のうち少なくとも一つが、上記有機基群bから選ばれる基であり、残りが水酸基または炭素数1〜5のアルキル基である。)
【請求項3】
化合物(A2)が下記式(4)〜(6)のいずれかで表される化合物である請求項1に記載の光硬化性インクジェットインク。
【化8】
【請求項4】
化合物(A2)が下記式(5)で表される化合物である請求項1に記載の光硬化性インクジェットインク。
【化9】
【請求項5】
化合物(B)が、m−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールEO 変性(メタ)アクリレートまたはパラクミルフェノールEO 変性(メタ)アクリレートである請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項6】
さらに、光重合開始剤(C)を含む請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項7】
さらに、溶媒(D)、または化合物(A2)および化合物(B)以外の(メタ)アクリレートモノマー(H)を含む請求項1〜6のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項8】
さらに界面活性剤(F)を含む請求項1〜7のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインクを光硬化させて得られるマイクロレンズ。
【請求項10】
撥液性硬化膜上に請求項9に記載のマイクロレンズが形成されてなる積層体。
【請求項11】
波長589nmの光に対する屈折率が1.55以上である基板上に、波長589nmの光に対する屈折率が1.55以上の撥液性硬化膜が形成され、該撥液性硬化膜上に請求項9に記載のマイクロレンズが形成されてなる積層体。
【請求項12】
請求項10または11に記載の積層体を有する光学部品。
【請求項13】
請求項12に記載の光学部品を含む映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示装置などの光学機器に内蔵されるバックライトユニットの部材である導光板の製造に好適に用いられる光硬化性インクジェットインクに関する。更に詳しくは、本発明は、導光板を製造する際に使用されるマイクロレンズおよび、マイクロレンズの形状を制御するために用いられる撥液性硬化膜に使用される光硬化性インクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
かねてより、映像表示装置用導光板に形成されるマイクロレンズは、金型を使った射出成形により形成されていた。しかし、この方法を用いて少量多品種のマイクロレンズを製造する際には、製品設計に応じた金型を作り直す必要があり、製造工程数の増加が問題となっていた。
【0003】
近年、設計自由度の高い製造方法としてインクジェット法を用いて、直接、基板表面上にマイクロレンズを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0004】
このようなインクジェット法を用いたマイクロレンズの製造方法は、パソコンなどにより容易に印刷するマイクロレンズのパターンを変更することができるため、少量多品種の生産に対しても製造工程数が変わらず、製造コストを抑えることができる等の点から期待されている。
【0005】
導光板に使用する基板としては、以前より、アクリル樹脂系基板(以下「PMMA基板」という。)が使用されてきたが、基板の軽量化、耐湿化および耐熱化の観点から、最近では、PMMA基板よりも屈折率の高いポリカーボネート樹脂系基板(以下「PC基板」という。)、ポリスチレン樹脂系基板(以下「PS基板」という。)およびアクリル・スチレン共重合体ポリマー基板(以下「MS基板」という。)などを用いた導光板の開発が進められている。
【0006】
導光板において光を良好に取り出すためには、マイクロレンズ、マイクロレンズの形状を制御する撥液性硬化膜および基板の屈折率が、いずれも同程度であることが望まれる。なぜならば、撥液性硬化膜の屈折率が基板の屈折率より低い場合、基板と撥液性硬化膜との界面に屈折率差が生じ、浅い入射角度の光がより全反射を起こし易くなるため、光の取り出し効率が低くなるといった問題があるからである。同様のことが、撥液性硬化膜の屈折率とマイクロレンズの屈折率との関係にも言える。したがって、これらの問題を解決するためには、基板と同程度の屈折率を有するマイクロレンズおよび撥液性硬化膜を形成する必要がある。
【0007】
さらに、このマイクロレンズ、マイクロレンズの形状を制御する撥液性硬化膜には、できるだけ黄色味が抑えられ、高い光透過率の硬化物が求められる。なぜならば、この硬化物の黄色味が高いと、導光板が黄色味がかり高品質な画質が得られなくなるおそれがあり、より高い光の取り出し効率を得るためには、高い光透過率が必要だからである。
【0008】
PMMA基板に使用されてきたインクジェットインクを、屈折率の高いPC基板、PS基板およびMS基板に用いると光の取り出し効率が低くなる為、より屈折率の高い硬化物が得られるインクジェットインクが求められる。
【0009】
屈折率の高い組成物として分子中にフルオレン骨格を有するモノマーを用いた組成物(例えば、特許文献3〜5参照)、分子中にホスフィンオキシドを有するモノマーを用いた組成物(例えば、特許文献6参照)および分子中にビスフェノールA骨格を有するモノマーを用いた組成物(例えば、特許文献7〜8参照)が知られている。
【0010】
しかし、これらの組成物はインクジェット吐出可能であったとしても、硬化物の屈折率が高い組成物は黄色味が強く、硬化物の黄色味が低い組成物は屈折率が低いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−180605号公報
【特許文献2】特開2004−240294号公報
【特許文献3】特開平6−220131号公報
【特許文献4】特許第3797223号公報
【特許文献5】特開2008−081572号公報
【特許文献6】国際公開2010−004959号パンフレット
【特許文献7】特許第03547307号公報
【特許文献8】特開2012−242464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような状況下で、光硬化性に優れ、高屈折率であり、かつ黄色味が抑えられた光硬化物が得られるインクジェットインクが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
鋭意検討した結果、本発明者らは、ある特定の構造のアクリレートを用いることで光硬化性に優れ、高屈折率であり、黄色味が低い光硬化物が得られるインクジェットインクを開発することに成功した。
【0014】
本発明は以下の項を含む。
[1]少なくとも3つのベンゼン環および下記有機基群aから選ばれる少なくとも1つの基からなり、前記ベンゼン環同士の結合はすべて1つの前記基を介してなされている骨格構造と、前記ベンゼン環に結合する下記有機基群dから選ばれる少なくとも1つの基とを有する化合物(A2)3〜60重量%と下記式(7)または(8)で表される化合物(B)1〜60重量%とを含む光硬化性インクジェットインク。
[有機基群a]
【0015】
【化1】
(R1、R2およびR3は独立して水素または炭素数1〜5のアルキル基であり、*はベンゼン環の結合位置を示す。)
[有機基群d]
【0016】
【化2】
(R7は独立して炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、R6およびR8は独立して水素またはメチル基であり、iは1〜5の整数であり、nは0〜5の整数である。)
【0017】
【化3】
(Xは、炭素数1〜5の二価の有機基または酸素原子であり、R18およびR19は、下記有機基群cから選ばれる基である。)
[有機基群c]
【0018】
【化4】
(R20およびR23は独立して炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、R2122およびR24は独立して水素またはメチル基であり、k、lおよびmは独立して1〜5の整数である。)
[2]化合物(A2)が下記式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物である[1]に記載の光硬化性インクジェットインク。
【0019】
【化5】
(R9、R10およびR11の少なくとも一つが、記有機基群bから選ばれる基であり、残りが水酸基または炭素数1〜5のアルキル基である。)
[有機基群b]
【化11】
4およびR7は独立して炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、R5、R6およびR8は独立して水素またはメチル基であり、hは0〜5の整数であり、iおよびjは独立して1〜5の整数である。)
【0020】
【化6】
(R12、R13およびR14の少なくとも一つが、上記有機基群bから選ばれる基であり、残りが水酸基または炭素数1〜5のアルキル基である。)
【0021】
【化7】
(R15、R16およびR17のうち少なくとも一つが、上記有機基群bから選ばれる基であり、残りが水酸基または炭素数1〜5のアルキル基である。)
[3]化合物(A2)が下記式(4)〜(6)のいずれかで表される化合物である[1]に記載の光硬化性インクジェットインク。
【0022】
【化8】
[4]化合物(A2)が下記式(5)で表される化合物である[1]に記載の光硬化性インクジェットインク。
【0023】
【化9】
[5]化合物(B)が、m−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールEO 変性(メタ)アクリレートまたはパラクミルフェノールEO 変性(メタ)アクリレートである[1]〜[4]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
[6]さらに、光重合開始剤(C)を含む[1]〜[5]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
[7]さらに、溶媒(D)、または化合物(A2)および化合物(B)以外の(メタ)アクリレートモノマー(H)を含む[1]〜[6]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
[8]さらに界面活性剤(F)を含む[1]〜[7]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
[9][1]〜[8]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインクを光硬化させて得られるマイクロレンズ。
[10]撥液性硬化膜上に[9]に記載のマイクロレンズが形成されてなる積層体。
[11]波長589nmの光に対する屈折率が1.55以上である基板上に、波長589nmの光に対する屈折率が1.55以上の撥液性硬化膜が形成され、該撥液性硬化膜上に[9]に記載のマイクロレンズが形成されてなる積層体。
[12][10]または[11]に記載の積層体を有する光学部品。
[13][12]に記載の光学部品を含む映像表示装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明のインクジェットインクは、吐出性および光硬化性に優れ、得られる光硬化物は高屈折率であり、かつ黄色味が低い。
【0025】
また、これらの光硬化物は、マイクロレンズとしてもマイクロレンズの形状を制御できる撥液性硬化膜としても好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両者又は一方を示すために用いられる。「屈折率」は、波長589nmの光に対する値である。また、マイクロレンズを形成するインクのことを「レンズインク」と呼び、マイクロレンズの形状を制御できる撥液性硬化膜を形成するインクのことを「表面処理剤」と呼ぶことがある。
1.光硬化性インクジェットインク
本発明の光硬化性インクジェットインク(以下「本発明のインク」ともいう。)は、少なくとも3つのベンゼン環および下記有機基群aから選ばれる少なくとも1つの基からなり、前記ベンゼン環同士の結合はすべて1つの前記基を介してなされている骨格構造と、前記ベンゼン環に結合する下記有機基群bから選ばれる少なくとも1つの基とを有する化合物(A)を含有する。
[有機基群a]
【0027】
【化10】
(R1、R2およびR3は独立して水素または炭素数1〜5のアルキル基であり、*はベンゼン環の結合位置を示す。)
[有機基群b]
【0028】
【化11】
(R4およびR7は独立して炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、R5、R6およびR8は独立して水素またはメチル基であり、hは0〜5の整数であり、iおよびjは独立して1〜5の整数である。)
本発明のインクジェットインクは下記式(7)または(8)で表される化合物(B)、および光重合開始剤(C)をさらに含んでもよい。
【0029】
【化12】
(Xは、炭素数1〜5の二価の有機基または、酸素原子であり、R18およびR19は、下記有機基群cから選ばれる。)
[有機基群c]
【0030】
【化13】
(R20およびR23は独立して炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、R21、R22およびR24は独立して水素またはメチル基であり、k、lおよびmは独立して1〜5の整数である。)
本発明のインクは、粘度調整のため、溶媒(D)、または化合物(A)および化合物(B)以外の(メタ)アクリレートモノマー(E)を含んでもよい。また、表面張力の調整、または硬化膜に撥液性をもたせるために界面活性剤(F)を含んでもよい。また、必要に応じてラジカル重合性基含有化合物(G)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤および熱硬化性化合物などを含んでもよい。
【0031】
本発明のインクは、光線透過率の観点からは無色が好ましいが、発明の効果を妨げない範囲で着色されていてもよい。この場合、得られる硬化膜等の色が黄色味を帯びることが好ましくないため、例えば、青色に着色されていてもよい。また、硬化膜等の状態を検査する際に基板との識別を容易にするために、着色剤を含んでもよい。
1.1 化合物(A)
化合物(A)は、少なくとも3つのベンゼン環および下記有機基群aから選ばれる少なくとも1つの基からなり、前記ベンゼン環同士の結合はすべて1つの前記基を介してなされている骨格構造と、前記ベンゼン環に結合する下記有機基群bから選ばれる少なくとも1つの基とを有する化合物である。
[有機基群a]
【0032】
【化14】
(R1、R2およびR3は独立して水素または炭素数1〜5のアルキル基であり、*はベンゼン環の結合位置を示す。)
[有機基群b]
【0033】
【化15】
(R4およびR7は独立して炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、R5、R6およびR8は独立して水素またはメチル基であり、hは0〜5の整数であり、iおよびjは独立して1〜5の整数である。)
前記骨格構造は、少なくとも3つのベンゼン環および下記有機基群aから選ばれる少なくとも1つの基からなる。すなわち、前記骨格構造はベンゼン環および有機基群aから選ばれる基以外の構造部位を含まない。なお、化合物(A)は前記骨格構造および下記有機基群bから選ばれる基以外の構造部位を含むことができ、たとえば前記骨格構造に含まれるベンゼン環に結合する水酸基、アルキル等の基を有していてもよい。
【0034】
また、前記骨格構造において、ベンゼン環同士の結合はすべて1つの前記基を介してなされている。つまり、各ベンゼン環とその他のベンゼン環との結合はすべて有機基群aから選ばれる基によってなされている。したがって、前記骨格構造は、ベンゼン環同士が直接結合するビフェ二ル結合などは含まない。また、各ベンゼン環と他のベンゼン環とは1つの前記基のみを介して結合されており、2つ以上の基によっては結合されていない。化合物(A)は、前記骨格構造に含まれるベンゼン環に結合した水素原子を有機基群bから選ばれる基により置き換えてなる構造を有する。
【0035】
そのような化合物の中でも、基(b−1)を有する化合物であることが好ましく、ベンゼン環同士がプロパン‐2,2‐ジイル基またはエタン‐1,1,1‐トリイル基で結合されている化合物であるとより好ましい。さらに、化合物(A)は式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物であることが好ましく、式(4)〜(6)のいずれかで表される化合物であるとインクが低粘度であり、高屈折率な硬化膜が得られるためより好ましい。
【0036】
【化16】
(R9、R10およびR11のうち少なくとも一つが上記有機基群bから選ばれる基であり、残りが水酸基または炭素数1〜5のアルキル基である。)
【0037】
【化17】
(R12、R13およびR14のうち少なくとも一つが、上記有機基群bから選ばれる基であり、残りが水酸基または炭素数1〜5のアルキル基である。)
【0038】
【化18】
(R15、R16およびR17のうち少なくとも一つが、上記有機基群bから選ばれる基であり、残りが水酸基または炭素数1〜5のアルキル基である化合物。)
【0039】
【化19】
このような化合物は既存の多価フェノールの水酸基にアクリロイル基を有する化合物を付加させることにより合成することができる。
【0040】
既存の多価フェノールとして、TrisP−PA(商品名:本州化学工業(株))、TrisP−HAP(商品名:本州化学工業(株))、TrisP−TC(商品名:本州化学工業(株))、BIP−BZ(商品名:旭有機材工業(株))、BIP−PHBZ(商品名:旭有機材工業(株))、3PC(商品名:旭有機材工業(株))、TEP−TPA(商品名:旭有機材工業(株))およびビスフェノールM(商品名:三井化学ファイン(株))が挙げられる。
【0041】
アクリロイル基を付加させる方法は、特に限定されず既存の方法により合成することができる。例えば、アクリル酸を用いる脱水エステル化法、エステルを反応させて新たなエステルを得るエステル交換法、アクリル酸クロライドを用いる方法、アクリル酸無水物を用いる方法およびイソシアネート基を有するアクリレートを付加する方法が挙げられ、中でも反応性が高く安価に合成できるアクリル酸クロライドを用いる方法が望ましい。
【0042】
化合物(A)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0043】
本発明のインクジェットインクにおいて、化合物(A)の含有量は、該インクの総量の3〜60重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがより好ましい。化合物(A)の含有量が前記範囲であると、黄色味を抑えられ、高屈折率な硬化膜が得られやすくなる。
1.2.化合物(B)
化合物(B)は、下記式(7)または(8)で表せられるアクリレートモノマーである。
【0044】
【化20】
(Xは、炭素数1〜5の有機基または酸素原子であり、R18およびR19は下記有機基群cから選ばれる基である。)
[有機基群c]
【0045】
【化21】
(R20およびR23は独立して炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、R21、R22およびR24は独立して水素またはメチル基であり、k、lおよびmは独立して1〜5の整数である。)
化合物(B)の具体例として、m−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールEO 変性(メタ)アクリレートおよびパラクミルフェノールEO 変性(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
化合物(B)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0047】
本発明のインクジェットインクにおいて、化合物(B)の含有量は、該インクの総量の1〜60重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがより好ましい。化合物(B)の含有量が前記範囲であると、インクが低粘度であり、インク硬化膜の屈折率を高くすることが容易である。
1.3.光重合開始剤(C)
光重合開始剤(C)は、紫外線または可視光線の照射によりラジカルまたは酸を発生する化合物であれば特に限定されないが、アシルフォスフィンオキサイド系開始剤、オキシフェニル酢酸エステル系開始剤、ベンゾイルギ酸系開始剤およびヒドロキシフェニルケトン系開始剤が好ましく、これらの中でも特にアシルフォスフィンオキサイド系開始剤,オキシフェニル酢酸エステル系開始剤およびベンゾイルギ酸系開始剤が、インクの光硬化性および得られる硬化膜等の光線透過率などの観点からより好ましい。
【0048】
光重合開始剤(C)の具体例としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4'−イソプロピルプロピオフェノン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4'−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4'−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'−ジ(メトキシカルボニル)−4,4'−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4'−ジ(メトキシカルボニル)−4,3'−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4'−ジ(メトキシカルボニル)−3,3'−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2−(4'−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3',4'−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2',4'−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2'−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4'−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2'−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4'−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3'−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルフォリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−1−プロパノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジル−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、オキシ−フェニル−酢酸2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェニル−酢酸2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、ベンゾイルギ酸メチル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸エステル、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン2−(O−ベンゾイルオキシム)]、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−エタノン−1−(O−アセチルオキシム)を挙げることができる。
【0049】
これらの中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−1−プロパノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、オキシ−フェニル−酢酸2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェニル−酢酸2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、ベンゾイルギ酸メチル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸エステルが好ましい。
【0050】
光重合開始剤(C)の市販品としては、Irgacure184、Irgacure651、Irgacure127、Irgacure1173、Irgacure500、Irgacure2959、Irgacure754、IrgacureMBF、IrgacureTPO(商品名、BASFジャパン(株))などが好ましい。
【0051】
これらの中でも、Irgacure754、IrgacureMBF、IrgacureTPOを用いると、得られる硬化膜等の光線透過率が最も高くなるため、より好ましい。
【0052】
本発明のインクに用いられる光重合開始剤(C)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0053】
本発明のインクジェットインクにおいて、光重合開始剤(C)の含有量は、好ましくは該インクの総量の1〜15重量%以上であり、他材料とのバランスを考慮し該インクの総量の1〜10重量%以上であることがより好ましく、紫外線に対する光硬化性により優れ、高い光線透過性を有する硬化膜が得られやすくなる点において該インクの総量の1〜8重量%であることがさらに好ましい。
1.4.溶媒(D)
本発明のインクは、インクジェット吐出性を調整する目的で有機溶媒等の溶媒(D)を含有してもよい。溶媒(D)を用いると、インクの粘度や表面張力の微調整が可能であり、インクジェット吐出性を調整できるため好ましい。
【0054】
溶媒(D)としては、特に制限されないが、沸点が100℃〜300℃の有機溶媒であることが好ましい。
【0055】
沸点が100〜300℃である有機溶媒の具体例としては、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸i−プロピル、乳酸メチル、乳酸プロピル、ジオキサン、3−メトキシブタノール、3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トルエン、キシレン、アニソール、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンおよびジメチルイミダゾリジノンが挙げられる。
【0056】
本発明のインクに用いられる溶媒(D)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0057】
本発明のインクにおいて、溶媒(D)の含有量は、該インク総重量に対し、好ましくは30〜85重量%、より好ましくは40〜80重量%、さらに好ましくは50〜75重量%である。溶媒(D)の含有量が前記範囲であると、光硬化性が良くなる。
1.5.化合物(A)および化合物(B)以外の(メタ)アクリレートモノマー(E)
本発明のインクは、インクジェット吐出性を調整する目的で化合物(A)および化合物(B)以外の(メタ)アクリレートモノマー(E)を含有してもよい。(メタ)アクリレートモノマー(E)を用いると、インクの粘度や表面張力の微調整が可能であり、インクジェット吐出性を調整できる。
【0058】
(メタ)アクリレートモノマー(E)は、特に制限されないが、25℃での粘度が、好ましくは0.1〜70mPa・sであり、より好ましくは0.1〜50mPa・sである。
【0059】
(メタ)アクリレートモノマー(E)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、5−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチル(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、シクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、チオグリシジル(メタ)アクリレート、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、およびフェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0060】
(メタ)アクリレートモノマー(E)が、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であると、得られる組成物をインクジェット吐出可能な粘度に調整可能であり、高い屈折率および高い光透過率のバランスのとれた硬化膜等を作製することができるため好ましい。
【0061】
(メタ)アクリレートモノマー(E)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0062】
本発明のインクにおいて、(メタ)アクリレートモノマー(E)の含有量は、該インク総重量に対し、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは1〜70重量%、さらに好ましくは1〜60重量%である。(メタ)アクリレートモノマー(E)の含有量が前記範囲であると、当該インクから得られる硬化膜の高い光線透過率を損なわない範囲で屈折率を調整できる。
1.6.界面活性剤(F)
本発明のインクが界面活性剤(F)を含有すると、得られる硬化膜の表面撥液性が高くなり、硬化膜上に微小でパターンサイズの制御されたマイクロレンズを形成することができる。
【0063】
界面活性剤(F)の具体例としては、ポリフローNo.45、ポリフローKL−245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(商品名、共栄社化学工業(株))、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK342、BYK344、BYK346(商品名、ビックケミー・ジャパン(株))、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(商品名、信越化学工業(株))、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(商品名、セイミケミカル(株))、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(商品名、(株)ネオス)、EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(商品名、三菱マテリアル(株))、メガファックF−171、メガファックF−177、メガファックF−475、メガファックR−08、メガファックR−30(商品名、DIC(株))、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、およびアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩を挙げることができる。
【0064】
また、界面活性剤(F)が反応性基を有する界面活性剤であると、形成された硬化膜等から界面活性剤がブリードアウトしにくく、その硬化膜上に形成するマイクロレンズのレンズ径のばらつきが小さくなるため、より好ましい。
【0065】
前記反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、オキシラン基およびオキセタニル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基であることが、硬化性が高いインクを得る点等から好ましい。
【0066】
反応性基として(メタ)アクリロイル基を有する界面活性剤の具体例としては、RS-72K(商品名、DIC(株))、BYK UV 3500、BYK UV 3570(商品名、ビックケミー・ジャパン(株))、TEGO Rad 2200N、TEGO Rad 2250、TEGO Rad 2300およびTEGO Rad 2500(商品名、エボニック デグサ ジャパン(株))を挙げることができる。
【0067】
また、反応性基としてオキシラン基を有する界面活性剤としては、RS−211K(商品名、DIC(株))等を挙げることができる。
【0068】
本発明のインクに用いられる界面活性剤(F)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0069】
本発明のインクにおいて、界面活性剤(F)の含有量は、該インク総重量に対し、好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.9重量%、さらに好ましくは0.1〜0.8重量%である。界面活性剤(F)の含有量が前記範囲であると、インクの光硬化性および得られる硬化膜表面の撥液性により優れる。
1.7.紫外線吸収剤
本発明のインクは、得られる硬化膜等がバックライトなどの光によって劣化することを防止するために、紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0070】
紫外線吸収剤の具体例としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン化合物、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物、および2−エトキシ−2'−エチルオキサリック酸ビスアニリド等のシュウ酸アニリド化合物が挙げられる。
【0071】
本発明のインクに用いられる紫外線吸収剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
1.8.酸化防止剤
本発明のインクジェットインクは、得られる硬化膜等の酸化を防止するために、酸化防止剤を含有してもよい。
【0072】
酸化防止剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル等のヒンダードフェノール化合物、n−ブチルアミン、トリエチルアミンおよびジエチルアミノメチルメタクリレート等のアミン化合物が挙げられる。
【0073】
本発明のインクに用いられる酸化防止剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
1.9.重合禁止剤
本発明のインクは、保存安定性を向上させるために重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤の具体例としては、4−メトキシフェノール、ヒドロキノンおよびフェノチアジンが挙げられる。これらの中でもフェノチアジンを用いると、長期の保存においても粘度の増加が小さいインクが得られるため好ましい。
【0074】
本発明のインクに用いられる重合禁止剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
1.10.熱硬化性化合物
本発明のインクは、当該インクから得られる硬化膜の光線透過率と屈折率に影響を与えない範囲で強度を向上させるため、もしくは基板との密着性を向上させるために熱硬化性化合物を含んでもよい。前記熱硬化性化合物としては、熱硬化させることが可能な官能基を有する化合物であれば特に限定されず、エポキシ化合物、エポキシ硬化剤、ビスマレイミド、フェノール樹脂、フェノール性水酸基を含有する樹脂、メラミン樹脂およびシランカップリング剤などが挙げられる。
【0075】
前記熱硬化性化合物は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0076】
本発明のインクにおいて、熱硬化性化合物の含有量は、該インク総重量に対し、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜8重量%、さらに好ましくは1〜6重量%である。熱硬化性化合物の含有量が前記範囲であると、より高強度の硬化膜が得られる。
【0077】
(1)エポキシ化合物
本発明のインクがエポキシ化合物を含有すると、当該インクより得られる硬化膜等の強度を向上させることができる。
【0078】
前記エポキシ化合物は、1分子中に少なくとも1つの下記式(9−1)または式(9−2)で表される構造を有する化合物であれば、特に限定されない。
【0079】
【化22】
エポキシ化合物の具体例は、ノボラック型(フェノールノボラック型およびクレゾールノボラック型)、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、トリスフェノールメタン型、水添ビスフェノールA型、水添ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、テトラフェニロールエタン型、ビキシレノール型およびビフェノール型のエポキシ樹脂、脂環式および複素環式エポキシ樹脂、ならびに、ジシクロペンタジエン骨格やナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂であり、好ましくはノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型およびトリスフェノールメタン型のエポキシ樹脂である。
【0080】
エポキシ化合物としては公知の方法で製造したエポキシ樹脂を用いてもよいし、また市販品を用いてもよい。
【0081】
市販品の例としては、jER828、同834、同1001、同1004(いずれも商品名:三菱化学(株))、エピクロン840、同850、同1050、同2055、(いずれも商品名:DIC(株))、エポトートYD−011、同YD−013、同YD−127、同YD−128(いずれも商品名:新日鐵化学(株))、D.E.R.317、同331、同661、同664(いずれも商品名:ダウ・ケミカル日本(株))、アラルダイト6071、同6084、同GY250、同GY260(いずれも商品名:ハンツマン・ジャパン(株))、スミ−エポキシESA−011、同ESA−014、同ELA−115、同ELA−128(いずれも商品名:住友化学工業(株))、A.E.R.330、同331、同661および同664(いずれも商品名:旭化成イーマテリアルズ(株))等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;
jER152、154(いずれも商品名:三菱化学(株))、D.E.R.431、同438(いずれも商品名:ダウ・ケミカル日本(株))、エピクロンN−730、同N−770、同N−865(いずれも商品名:DIC(株))、エポトートYDCN−701、同YDCN−704(いずれも商品名:新日鐵化学(株))、アラルダイトECN1235、同ECN1273、同ECN1299(いずれも商品名:ハンツマン・ジャパン(株))、XPY307、EPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306(いずれも商品名:日本化薬(株))、スミ−エポキシESCN−195X、同ESCN−220(いずれも商品名:住友化学工業(株))、A.E.R.ECN−235および同ECN−299(いずれも商品名:旭化成イーマテリアルズ(株))等のノボラック型エポキシ樹脂;
エピクロン830(商品名:DIC(株))、jER807(商品名:三菱化学(株))、エポトートYDF−170(商品名:新日鐵化学(株))、YDF−175、YDF−2001、YDF−2004およびアラルダイトXPY306(いずれも商品名:ハンツマン・ジャパン(株))等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;
エポトートST−2004、同ST−2007および同ST−3000(いずれも商品名:新日鐵化学(株))等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;
セロキサイド2021P(商品名:(株)ダイセル)、アラルダイトCY175および同CY179(いずれも商品名:ハンツマン・ジャパン(株))等の脂環式エポキシ樹脂;
YL−6056、YX−4000、YL−6121(いずれも商品名:三菱化学(株))等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;
EBPS−200(商品名:日本化薬(株))、EPX−30(商品名:(株)ADEKA)およびEXA−1514(商品名:DIC(株))等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;
jER157S(商品名:三菱化学(株))等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;
YL−931(商品名:三菱化学(株))およびアラルダイト163(商品名:ハンツマン・ジャパン(株))等のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;
アラルダイトPT810(商品名:ハンツマン・ジャパン(株))およびTEPIC(商品名:日産化学工業(株))等の複素環式エポキシ樹脂;
HP−4032、EXA−4750およびEXA−4700(いずれも商品名:DIC(株))等のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;
HP−7200、HP−7200HおよびHP−7200HH(いずれも商品名:DIC(株))等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;
テクモアVG3101L(商品名:三井化学(株))、YL−933(商品名:三菱化学(株))、EPPN−501およびEPPN−502(いずれも商品名:日本化薬(株))等のトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0082】
これらの中でも、jER828、同834、同1001、同1004(いずれも商品名:三菱化学(株))、TECHMORE VG3101L(商品名:(株)プリンテック)、EPPN−501およびEPPN−502(いずれも商品名:日本化薬(株))を用いると、当該インクより得られる硬化膜は高い強度を有するため好ましい。
【0083】
本発明のインクに用いられうるエポキシ樹脂は、1種であっても、2種以上であってもよい。
(2)エポキシ硬化剤
本発明のインクがエポキシ硬化剤を含んでいると、得られる硬化膜の強度をより向上させることができる。エポキシ硬化剤としては、酸無水物系硬化剤およびポリアミン系硬化剤などが好ましい。
【0084】
酸無水物系硬化剤としては、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、およびスチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0085】
ポリアミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジシアンジアミド、ポリアミドアミン(ポリアミド樹脂)、ケチミン化合物、イソホロンジアミン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチルジフェニルメタン、およびジアミノジフェニルスルフォンなどが挙げられる。
【0086】
本発明のインクに用いられうるエポキシ硬化剤は1種の化合物でも、2種以上の化合物の混合物でもよい。
【0087】
(3)ビスマレイミド
本発明のインクがビスマレイミド化合物を含んでいると、得られる硬化膜の強度をより向上させることができる。ビスマレイミド化合物としては、特に制限されないが、例えば、下記式(10)で表される化合物が好ましい。下記式(10)で表されるビスマレイミド化合物は、例えばジアミンと酸無水物とを反応させて得ることができる。
【0088】
【化23】
式(10)中、R25およびR27はそれぞれ独立して水素またはメチルであり、R26は下記式(11)で表される二価の基である。
【0089】
【化24】
式(11)中、R28およびR29はそれぞれ独立して、連続しない(隣り合わない)任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜18のアルキレン、置換基を有してもよい芳香環を有する二価の基、または置換基を有してもよいシクロアルキレンである。前記置換基としては、例えば、カルボキシル、ヒドロキシ、炭素数1〜5のアルキル、および炭素数1〜5のアルコキシが挙げられる。耐熱性の高い硬化膜等が得られる点で、R28およびR29はそれぞれ独立して下記群(12)から選ばれる1種の二価の基であることが好ましい。
【0090】
【化25】
式(11)中、Yは下記群(13)から選ばれる1種の二価の基である。
【0091】
【化26】
ビスマレイミドは1種でも、2種以上の混合物でもよい。
(4)フェノール樹脂またはフェノール性水酸基を含有する樹脂
本発明のインクがフェノール樹脂またはフェノール性水酸基を含有する樹脂を含んでいると、得られる硬化膜の強度をより向上させることができる。フェノール樹脂としては、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とアルデヒド類との縮合反応により得られるノボラック樹脂が好ましく用いられ、フェノール性水酸基を含有する樹脂としては、ビニルフェノールの単独重合体(水素添加物を含む)、および、ビニルフェノールとこれと共重合可能な化合物とのビニルフェノール系共重合体(水素添加物を含む)などが好ましく用いられる。
【0092】
フェノール性水酸基を有する芳香族化合物の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−キシレノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ホドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、テルペン骨格含有ジフェノール、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトールおよびβ−ナフトールが挙げられる。
【0093】
アルデヒド類の具体例としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フラフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒドおよびアセトアルデヒドが挙げられる。
【0094】
ビニルフェノールと共重合可能な化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸又はその誘導体、スチレン又はその誘導体、無水マレイン酸、酢酸ビニルおよびアクリロニトリルが挙げられる。
【0095】
フェノール樹脂の具体例としては、レヂトップPSM−6200(商品名;群栄化学(株))、ショウノールBRG−555(商品名;昭和電工(株))、フェノール性水酸基を含有する樹脂の具体的な例としては、マルカリンカーM S−2G、マルカリンカーCST70およびマルカリンカーPHM−C(いずれも商品名;丸善石油化学(株))が挙げられる。
【0096】
本発明のインクに用いられるフェノール樹脂、またはフェノール性水酸基を含有する樹脂は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0097】
(5)メラミン樹脂
本発明のインクがメラミン樹脂を含んでいると、得られる硬化膜の強度をより向上させることができる。メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合により製造される樹脂であれば特に限定されず、メチロールメラミン、エーテル化メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、メチロールベンゾグアナミン、およびエーテル化メチロールベンゾグアナミン等の縮合物などが挙げられる。これらの中でも、得られる硬化膜の耐薬品性が良好となる点で、エーテル化メチロールメラミンの縮合物が好ましい。
【0098】
メラミン樹脂の具体例としては、ニカラックMW−30、MW−30HM、MW−390、MW−100LMおよびMX−750LM(商品名、三和ケミカル(株))が挙げられる。
【0099】
本発明のインクに用いられうるメラミン樹脂は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0100】
(6)シランカップリング剤
本発明のインクがシランカップリング剤を含有すると、得られる硬化膜の基板への密着性を向上させることができる。シランカップリング剤の具体例としては、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、および3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらの中でも3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランは、重合性反応基を有しており他成分と共重合することができるので好ましい。
【0101】
本発明のインクに用いられうるシランカップリング剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
1.11.熱重合開始剤
本発明のインクは、加熱工程によりインクの硬化性を向上させるために熱重合開始剤を含んでもよい。熱重合開始剤の具体例としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイルおよび過酸化ジ−t−ブチルが挙げられる。これらの中でも2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、および2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が好ましい。
【0102】
本発明のインクに用いられうる熱重合開始剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
1.12.インクの粘度
本発明のインクの、E型粘度計で測定した25℃における粘度は1.0〜30mPa・sであることが好ましい。粘度がこの範囲であると、本発明のインクをインクジェット法で塗布する場合に、インクジェット装置による吐出性が良好となる。25℃における本発明のインクの粘度は、より好ましくは2.0〜25mPa・sであり、さらに好ましくは4.0〜20mPa・sである。
1.13.インクの調製方法
本発明のインクは、原料となる各成分を公知の方法により混合することで調製することができる。
【0103】
特に、本発明のインクは、前記(A)成分ならびに必要に応じて(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、熱硬化性化合物および熱重合開始剤等を混合し、得られた溶液を例えば超高分子量ポリエチレン(UPE)製のメンブレンフィルターを用いてろ過して脱気することにより調製されることが好ましい。このようにして調製されたインクは、インクジェット法による塗布時の吐出性に優れる。
1.14.インクの保存
本発明のインクは、5〜30℃で保存すると保存中の粘度増加が小さく、保存安定性が良好となる。
1.15.インクジェット法によるインクの塗布
本発明のインクは、公知のインクジェット法を用いて塗布することができる。インクジェット法としては、例えば、インクに力学的エネルギーを作用させてインクをインクジェットヘッドから吐出させるピエゾ方式、およびインクに熱エネルギーを作用させてインクを吐出させるサーマル方式が挙げられる。
【0104】
インクジェットヘッドとしては、例えば、金属および/または金属酸化物などからなる発熱部を有するものが挙げられる。金属および/または金属酸化物の具体例としては、例えば、Ta、Zr、Ti、Ni、Al等の金属およびこれらの金属の酸化物が挙げられる。
【0105】
本発明のインクを用いて塗布を行う際に用いる好ましい塗布装置としては、例えば、インクが収容されるインク収容部を有するインクジェットヘッド内のインクに、塗布信号に対応したエネルギーを与え、前記エネルギーによりインク液滴を発生させながら、前記塗布信号に対応した塗布(描画)を行う装置が挙げられる。
【0106】
前記インクジェット塗布装置は、インクジェットヘッドとインク収容部とが分離されているものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いてもよい。また、インク収容部はインクジェットヘッドに対し分離可能または分離不能に一体化されて、キャリッジに搭載されるものでもよく、装置の固定部位に設けられてもよい。後者の場合、インク供給部材、例えばチューブを介してインクジェットヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。
【0107】
インクジェットヘッドは加熱してもよく、加熱温度としては80℃以下が好ましく、50℃以下であることがより好ましい。その加熱温度における本発明のインクの粘度は、1.0〜30mPa・sであることが好ましい。
1.16.インクの用途
本発明のインクは、光硬化性に優れ、高い屈折率および高透明性をもつ硬化膜等を形成することができるので、バックライト装置等に使用される高屈折率の基板を用いた導光板等の製造に好適に用いられる。
【0108】
具体的には本発明のインクは、撥液性硬化膜形成用のインクおよびマイクロレンズ形成用等のインクとして用いることができる。
【0109】
本発明のインクが撥液性硬化膜形成用のインクである場合、本インクは下記式(15)および(16)のいずれかで表される化合物(A1)と界面活性剤(F)とを含むことが好ましい。
【0110】
【化27】
(R30、R31およびR32のうち少なくとも一つが、下記有機基群dから選ばれる基であり、残りが水酸基または炭素数1〜5のアルキル基である。)
【0111】
【化28】
(R33、R34およびR35のうち少なくとも一つが、下記有機基群dから選ばれる基であり、残りが水酸基または炭素数1〜5のアルキル基である。)
[有機基群d]
【0112】
【化29】
(R7は独立して炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、R6およびR8は独立して水素またはメチル基であり、iは1〜5の整数であり、nは0〜5の整数である。)
前記化合物(A1)は上記化合物(A)の中の一部の化合物である。なお、前記式(b−4)は、上記有機基群bの式(b−2)と式(b−1)においてh=0の場合の式とを合わせた式である。
【0113】
化合物(A1)の含有量は好ましくは3〜60重量%、より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%であり、界面活性剤(F)の含有量は好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.9重量%、さらに好ましくは0.1〜0.8重量%である。前記化合物(A1)および界面活性剤(F)の含有量が前記範囲であると、黄色味が抑えられ、高屈折率であり、表面の撥液性に優れた撥液性硬化膜が得られやすい。
【0114】
化合物(A1)としては上記式(5)および(6)のいずれかで表される化合物であることが好ましく、式(5)で表される化合物であることがより好ましい。
【0115】
撥液性硬化膜形成用のインクである場合、硬化性の観点から、本インクは前記化合物(A1)と界面活性剤(F)の他に、さらに、光重合開始剤(C)を含むことが好ましい。光重合開始剤(C)については前述のとおりである。
【0116】
撥液性硬化膜形成用のインクである場合、黄色味の低下およびインクジェット吐出性の観点から、本インクは前記化合物(A1)と界面活性剤(F)の他に、さらに、溶媒(D)、または化合物(A1)以外の(メタ)アクリレートモノマー(G)を含むことが好ましい。溶媒(D)については前述のとおりである。(メタ)アクリレートモノマー(G)の具体例および含有量等については(メタ)アクリレートモノマー(E)と同様である。
【0117】
本発明のインクがマイクロレンズ形成用のインクである場合、本インクは、少なくとも3つのベンゼン環および下記有機基群aから選ばれる少なくとも1つの基からなり、前記ベンゼン環同士の結合はすべて1つの前記基を介してなされている骨格構造と、前記ベンゼン環に結合する下記有機基群dから選ばれる少なくとも1つの基とを有する化合物(A2)と下記式(7)または(8)で表される化合物(B)とを含むことが好ましい。
[有機基群a]
【0118】
【化30】
(R1、R2およびR3は独立して水素または炭素数1〜5のアルキル基であり、*はベンゼン環の結合位置を示す。)
[有機基群d]
【0119】
【化31】
(R7は独立して炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、R6およびR8は独立して水素またはメチル基であり、iは1〜5の整数であり、nは0〜5の整数である。)
【0120】
【化32】
(Xは、炭素数1〜5の二価の有機基または酸素原子であり、R18およびR19は、下記有機基群cから選ばれる基である。)
[有機基群c]
【0121】
【化33】
(R20およびR23は独立して炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、R2122およびR24は独立して水素またはメチル基であり、k、lおよびmは独立して1〜5の整数である。)
前記化合物(A2)は上記化合物(A)の中の一部の化合物である。
【0122】
化合物(A2)の含有量は好ましくは3〜60重量%、より好ましくは5〜40重量%であり、化合物(B)の含有量は好ましくは1〜60重量%、より好ましくは5〜40重量%である。前記化合物(A2)および化合物(B)の含有量が前記範囲であるとインクが低粘度になり、黄色味が抑えられ、高屈折率であり、屈折率の高いマイクロレンズが得られやすい。
【0123】
化合物(A2)としては上記式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物であることが好ましく、さらに上記式(4)〜(6)のいずれかで表される化合物であることが好ましく、式(5)で表される化合物であることがより好ましい。
【0124】
化合物(B)は、m−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールEO 変性(メタ)アクリレートまたはパラクミルフェノールEO 変性(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0125】
マイクロレンズ形成用のインクである場合、硬化性の観点から、本インクは前記化合物(A2)と化合物(B)の他に、さらに、光重合開始剤(C)を含むことが好ましい。光重合開始剤(C)については前述のとおりである。
【0126】
マイクロレンズ形成用のインクである場合、黄色味の低下およびインクジェット吐出性の観点から、本インクは前記化合物(A2)と化合物(B)の他に、さらに、溶媒(D)、または化合物(A2)および化合物(B)以外の(メタ)アクリレートモノマー(H)を含むことが好ましい。溶媒(D)については前述のとおりである。(メタ)アクリレートモノマー(H)の具体例および含有量等については(メタ)アクリレートモノマー(E)と同様である。
2.硬化膜等
本発明の撥液性硬化膜およびマイクロレンズは、上述した本発明のインクを硬化させることで得られる。上述した本発明のインクをインクジェット法により塗布した後に、該インクに紫外線や可視光線等の光を照射して硬化させることで得られる撥液性硬化膜やマイクロレンズが好ましい。
【0127】
本発明のインクより得られた撥液性硬化膜およびマイクロレンズは、その厚みが0.5μmの場合に、波長400nmにおける光線透過率が好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。
【0128】
本発明のインクより得られた撥液性硬化膜およびマイクロレンズは、屈折率が好ましくは1.55以上、より好ましくは1.55〜1.65、さらに好ましくは1.56〜1.60である。
【0129】
なお、本発明において、撥液性硬化膜およびマイクロレンズの屈折率は、屈折率測定装置FE−3000(商品名:大塚電子(株))を用いて測定した値であり、硬化膜の波長400nmでの光透過率は、透過率測定装置V−670(商品名:日本分光(株))を用いて測定した値である。
【0130】
本発明のインクに紫外線や可視光線等を照射する場合の照射する光の量(露光量)は、本発明のインクの組成に依存するが、ウシオ電機(株)製の受光器UVD−365PDを取り付けた積算光量計UIT−201で測定して、100〜5,000mJ/cm2が好ましく、300〜4,000mJ/cm2がより好ましく、500〜3,000mJ/cm2がさらに好ましい。また、照射する紫外線や可視光線等の波長は、200〜500nmが好ましく、250〜450nmがより好ましい。
【0131】
なお、以下に記載する露光量はウシオ電機(株)製の受光器UVD−365PDを取り付けた積算光量計UIT−201で測定した値である。
【0132】
なお、露光機としては、無電極ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプおよびハロゲンランプ等を搭載し、200〜500nmの範囲で、紫外線や可視光線等を照射する装置であれば特に限定されない。
【0133】
前記マイクロレンズのレンズ径は特に限定されないが、通常10〜100μmが好ましく、20〜60μmがさらに好ましい。また、レンズ高さについても特に限定されないが、通常0.5〜20μmが好ましく、2〜15μmがさらに好ましい。
3.積層体
本発明のインクから得られる撥液性硬化膜は基板上に形成され、基板と硬化膜との積層体を構成する。また、本発明のインクから得られるマイクロレンズは硬化膜上に形成され、硬化膜とマイクロレンズとの積層体または基板と硬化膜とマイクロレンズとの積層体を構成する。このような積層体としては、たとえば、波長589nmの光に対する屈折率が1.55以上である基板上に、波長589nmの光に対する屈折率が1.55以上の撥液性硬化膜が形成され、該撥液性硬化膜上に本発明のインクから得られるマイクロレンズが形成されてなる積層体が挙げられる。好ましくは、本発明のインクから得られる撥液性硬化膜上に本発明のインクから得られるマイクロレンズが形成され、基板と該硬化膜と該マイクロレンズとの積層体を構成する。さらには、本発明のインクから得られる硬化膜が好適に使用される導光板は、基板上に本発明のインクから得られる撥液性硬化膜が形成され、該硬化膜上に本発明のインクから得られるマイクロレンズが形成された積層体である。
3.1.基板
前記基板は、インクが塗布される対象となり得るものであれば特に限定されず、その形状は平板状に限られず、曲面状であってもよい。
【0134】
前記基板としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)などからなるポリエステル系樹脂基板、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどからなるポリオレフィン系樹脂基板、ポリ塩化ビニル系樹脂基板、フッ素系樹脂基板、PMMA基板、PC基板、PS基板、MS基板、ポリアミド、ポリカーボネートおよびポリイミドなどからなる有機高分子フィルム、セロハンからなる基板、およびガラス基板が挙げられる。
【0135】
この中でも特に、PC基板、PS基板、MS基板等の屈折率が1.55以上、より好ましくは1.55〜1.65である基板であると、基板と本発明のインクから得られる撥液性硬化膜との界面の屈折率差が小さくなるため、好ましい。
【0136】
基板の厚みは特に限定されないが、通常、10μm〜10mmであり、使用する目的により適宜調整される。
3.2.導光板
前記導光板としては、屈折率が1.55以上、より好ましくは1.55〜1.65である基板上に本発明のインクから得られた撥液性硬化膜が形成され、該硬化膜上に屈折率が1.55以上、より好ましくは1.55〜1.65である本発明のインクから得られたマイクロレンズが形成された積層体であることが好ましい。このような構成とすると、前記硬化膜は屈折率を1.55以上にすることができることから、基板と撥液性硬化膜との間の界面および撥液性硬化膜とマイクロレンズとの間の界面における屈折率差を小さくすることができるため、導光板に入射した光の各界面における反射を抑制することができ、効率よく光を取り出すことができる。
4.光学部品
本発明の光学部品は、本発明のインクより得られる硬化物が形成されたものであれば、特に制限されないが、光の取り出し効率や輝度などの点から、前記導光板であることが好ましい。
5.映像表示装置
本発明の映像表示装置は、前記光学部品を含む。このため、液晶ディスプレイなどの表示特性に優れる映像表示装置に好適に用いることができる。
【実施例】
【0137】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0138】
なお、以下では、実施例および比較例で得られたインクジェットインクをレンズインクと呼ぶことにする。
[製造例1]アクリレートA−1(式(4)で表わされる化合物)の製造例
100mLの三つ口フラスコに温度計、滴下漏斗を備え付け、該フラスコにTrisP−HAP(商品名:本州化学工業(株))9.19g(30mmol)、トリエチルアミン9.21g(91mmol)、THF40mlを仕込み、撹拌し溶解した。これに、氷浴下でアクリル酸クロライド8.24g(91mmol)をTHF10mlに溶解した溶液を、滴下漏斗を用いて30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を50℃に上げて3時間撹拌した後、温度を下げ反応をとめた。反応液を室温になるまで放冷後、未反応のアクリル酸クロライドを氷水でクエンチした。その後。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で分液し、アクリル酸クロライドの分解物であるアクリル酸を除去した。続いて、エバポレーターでTHFを除去し、式(4)で表される3官能アクリレート化合物(アクリレートA−1)13.81gを得た。
【0139】
【化34】
[製造例2]アクリレートA−2(式(5)で表わされる化合物)の製造例
100mLの三つ口フラスコに温度計、滴下漏斗を備え付け、該フラスコにTrisP−PA(商品名:本州化学工業(株))12.74g(30mmol)、トリエチルアミン9.21g(91mmol)、THF40mlを仕込み、撹拌し溶解した。これに、氷浴下でアクリル酸クロライド8.24g(91mmol)をTHF10mlに溶解した溶液を、滴下漏斗を用いて30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を50℃に上げて3時間撹拌した後、温度を下げ反応をとめた。反応液を室温になるまで放冷後、未反応のアクリル酸クロライドを氷水でクエンチした。その後。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で分液し、アクリル酸クロライドの分解物であるアクリル酸を除去した。続いて、エバポレーターでTHFを除去し、式(5)で表される3官能アクリレート化合物(アクリレートA−2)17.01gを得た。
【0140】
【化35】
[製造例3]アクリレートA−3(式(6)で表わされる化合物)の製造例
100mLの三つ口フラスコに温度計、滴下漏斗を備え付け、該フラスコにTrisP−TC(商品名:本州化学工業(株))14.42g(30mmol)、トリエチルアミン9.21g(91mmol)、THF40mlを仕込み、撹拌し溶解した。これに、氷浴下でアクリル酸クロリド8.24g(91mmol)をTHF10mlに溶解した溶液を、滴下漏斗を用いて30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を50℃に上げて3時間撹拌し、温度を下げ反応をとめた。反応液を室温になるまで放冷後、未反応のアクリル酸クロライドを氷水でクエンチした。その後。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で分液し、アクリル酸クロライドの分解物であるアクリル酸を除去した。続いて、エバポレーターでTHFを除去し、式(6)で表される3官能アクリレート化合物(アクリレートA−3)18.71gを得た。
【0141】
【化36】
[製造例4]アクリレートA−4(式(14)で表わされる化合物)の製造例
100mLの三つ口フラスコに温度計、滴下漏斗を備え付け、該フラスコにTrisP−PA(商品名:本州化学工業(株))12.74g(30mmol)、THF40mlジウラリン酸ジブチルスズ85.0mg(135mmol)、カレンズAOI12.74g(30mmol)(商品名:昭和電工(株)、イソシアネート基を有するアクリレート)を仕込み、撹拌し溶解した。反応温度を50℃に上げて3時間撹拌した後、温度を下げ反応をとめた。反応液を室温になるまで放冷後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で分液し、有機層を抽出した。続いて、エバポレーターでTHFを除去し、下記構造で表される3官能アクリレート化合物(アクリレートA−4)23.51gを得た。
【0142】
【化37】
(実施例1)レンズインク1の調製
化合物(A2)として、上記製造例1で製造したアクリレートA−1と、化合物(B)として、m−フェノキシベンジルアクリレートであるPOB−A(商品名:共栄社化学(株))と、光重合開始剤(C)として、オキシ−フェニル−酢酸2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステルとオキシ−フェニル−酢酸2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルとの混合物であるIRGACURE754(商品名:BASF、以後「Ir754」と略す。)と、(メタ)アクリルモノマー(E)として、テトラヒドロフルフリルアクリレートであるライトアクリレートTHF−A(商品名:共栄社化学(株)、以後「THF−A」と略す。)とを下記組成割合にて混合し、PTFE製のメンブレンフィルター(0.2μm)でろ過し、ろ液(レンズインク1)を得た。
【0143】
(A2)アクリレートA−1 2.00g
(B)POB−A 1.00g
(C)Ir754 0.49g
(H)THF−A 4.00g
E型粘度計(東機産業(株) 商品名:TV−22、以下同じ)を用い、25℃におけるレンズインク1の粘度を測定した結果、15.6mPa・sであった。
(実施例2)レンズインク2の調製
化合物(A2)として、上記製造例1で製造したアクリレートA−1の代わりに上記製造例2で製造したアクリレートA−2を用いて、下記組成割合としたこと以外は実施例1と同様にしてレンズインク2を調製した。
【0144】
(A2)アクリレートA−2 2.00g
(B)POB−A 1.00g
(C)Ir754 0.49g
(H)THF−A 4.00g
E型粘度計を用い、25℃におけるレンズインク2の粘度を測定した結果、18.4mPa・sであった。
(実施例3)レンズインク3の調製
化合物(A2)として、上記製造例1で製造したアクリレートA−1の代わりに上記製造例3で製造したアクリレートA−3を用いて、下記組成割合としたこと以外は、実施例1と同様にしてレンズインク3を調製した。
【0145】
(A2)アクリレートA−3 2.00g
(B)POB−A 1.00g
(C)Ir754 0.49g
(H)THF−A 4.00g
E型粘度計を用い、25℃におけるレンズインク3の粘度を測定した結果、19.5mPa・sであった。
(実施例4)レンズインク4の調製
化合物(A2)として、上記製造例1で製造したアクリレートA−1の代わりに上記製造例3で製造したアクリレートA−4を用いて、下記組成割合としたこと以外は、実施例1と同様にしてレンズインク4を調製した。
【0146】
(A2)アクリレートA−4 2.00g
(B)POB−A 1.00g
(C)Ir754 0.42g
(H)THF−A 3.00g
E型粘度計を用い、25℃におけるレンズインク4の粘度を測定した結果、25.3mPa・sであった。
(実施例5)レンズインク5の調製
化合物(B)としてPOB−Aの代わりにO−フェニルフェノールEO変性アクリレートであるアロニックスM−106(商品名:東亞合成(株)、以後「M−106」と略す。)を用いて、下記組成割合としたこと以外は、実施例1と同様にして、レンズインク5を調製した。
【0147】
(A2)アクリレートA−1 2.00g
(B)M−106 1.00g
(C)Ir754 0.49g
(H)THF−A 4.00g
E型粘度計を用い、25℃におけるレンズインク5の粘度を測定した結果、21.1mPa・sであった。
(比較例1)レンズインク6の調製
化合物(A2)であるアクリレートA−1の代わりに、フルオレン骨格を持つアクリレートであるオグソールEA−0200(商品名:大阪ガスケミカル(株)、以後「EA−0200」と略す。)を用いて、下記組成割合としたこと以外は実施例1と同様にして、レンズインク6を調製した。
【0148】
EA−0200 2.00g
POB−A 1.00g
Ir754 0.49g
THF−A 4.00g
E型粘度計を用い、25℃におけるレンズインク7の粘度を測定した結果、18.2mPa・sであった。
(比較例2)レンズインク7の調製
化合物(A2)であるアクリレートA−1の代わりに、ホスフィンオキサイド骨格を持つアクリレートであるFRM−1000(商品名:日本化薬(株))を用いて、下記組成割合としたこと以外は実施例1と同様にして、レンズインク7を調製した。
【0149】
FRM−1000 2.00g
POB−A 1.00g
Ir754 0.49g
THF−A 4.00g
E型粘度計を用い、25℃におけるレンズインク8の粘度を測定した結果、9.8mPa・sであった。
(比較例3)レンズインク8の調製
化合物(A2)であるアクリレートA−1の代わりに、ビスフェノールF骨格を持つアクリレートであるアロニックスM−208(商品名:東亞合成(株)、以後「M−208」と略す。)を用いて、下記組成割合としたこと以外は実施例1と同様にして、レンズインク8を調製した。
【0150】
M−208 2.00g
Ir754 0.49g
THF−A 5.00g
E型粘度計を用い、25℃におけるレンズインク8の粘度を測定した結果、13.1mPa・sであった。
(比較例4)レンズインク9の調製
化合物(A2)であるアクリレートA−1の代わりに、ビスフェノールA骨格を持つアクリレートであるM−211B(商品名:東亞合成(株)、以後「M−211B」と略す。)を用いて、下記組成割合としたこと以外は実施例1と同様にして、レンズインク9を調製した。
【0151】
M−211B 2.00g
Ir754 0.49g
THF−A 5.00g
E型粘度計を用い、25℃におけるレンズインク10の粘度を測定した結果、15.9mPa・sであった。
(比較例5)レンズインク10の調製
化合物(A2)であるアクリレートA−1を用いず、下記組成割合としたこと以外は実施例1と同様にして、レンズインク10を調製した。
【0152】
POB−A 2.00g
Ir754 0.49g
THF−A 5.00g
E型粘度計を用い、25℃におけるレンズインク10の粘度を測定した結果、4.8mPa・sであった。
【0153】
(インクジェットインクおよび光硬化物の評価)
上記で得られたレンズインク1〜10について、インクジェット吐出性、その光硬化物に対して、光硬化性、硬化膜の屈折率、硬化膜の光透過率および硬化膜の黄色味(b*)を評価した。
【0154】
各評価方法は以下のとおりである。評価結果を表1に示す。
【0155】
【表1】
(インクジェット吐出法)
各実施例および比較例で得られたレンズインク1〜10を、それぞれインクジェットカートリッジに注入し、これをインクジェット装置(FUJIFILM Dimatix Inc.のDMP−2831(商品名))に装着し、吐出電圧(ピエゾ電圧)20Vで、ヘッド温度はインクまたは組成物の粘度に応じ適宜調整し、駆動周波数5kHz、塗布回数1回の吐出条件で、印刷解像度を512dpiに設定し、4cm角のガラス基板の中央部分にレンズインクを3cm角のパターン状に塗布した。UV照射装置((株)ジャテックのJ−CURE1500(商品名))を用いて1000mJ/cm2のUV光を露光し膜が硬化(パターン表面に指触跡が残らない)するか確認した。1000mJ/cm2の露光で膜が硬化しないものはさらに1000mJ/cm2露光し(総露光量2000mJ/cm2)、それでも膜が硬化しないものはさらに1000mJ/cm2露光し(総露光量3000mJ/cm2)、光硬化させた。このようにして、レンズインクの硬化膜が形成されたガラス基板を得た。
(インク吐出性の評価)
このようにして得られた3cm角の硬化膜パターンの乱れ、印刷のかすれを観察して、インクジェットインクおよび組成物の吐出性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0156】
A:パターンの形成ができ、パターンの乱れ、印刷のかすれが全くない
B:パターンの形成はできるが、パターンの乱れ、印刷のかすれが多い
C:パターンの形成ができない(インクまたは組成物をうまく吐出できない)
(光硬化性の評価)
上記で得られた3cm角の硬化膜パターンが形成された基板の硬化膜表面を指触し、硬化膜パターンの表面状態を顕微鏡観察した。評価基準は以下のとおりである。
【0157】
A:1000mJ/cm2のUV露光量でパターン表面に指触跡が残らない
B:1000mJ/cm2のUV露光量ではパターン表面に指触跡が残るが、2000mJ/cm2のUV露光量ではパターン表面に指触跡が残らない
C:2000mJ/cm2のUV露光量ではパターン表面に指触跡が残るが、3000mJ/cm2のUV露光量ではパターン表面に指触跡が残らない
(硬化膜の屈折率・光透過率の評価)
上記で得られた3cm角の硬化膜パターンが形成された基板を用い、硬化膜パターンの屈折率および波長400nmでの光透過率および黄色味(b*)を測定した。
【0158】
硬化膜パターンの屈折率は、屈折率測定装置FE−3000(商品名:大塚電子(株))を用いて測定した。光透過率および黄色味は、透過率測定装置V−670(日本電子(株))を用いて測定した。
【0159】
黄色味は、b*の値が0.30以上の硬化膜を黄色味が高いと判断した。
(表面処理剤の調製)
レンズを形成するためには、撥液性の硬化膜が必要である。ガラス基板上に撥液性硬化膜を形成するための表面処理剤を調製した。フルオレン骨格を持つアクリレートであるEA−0200と、光重合剤Ir754と、有機溶媒として2−ヒドロキシイソ酪酸メチルと(三菱ガス化学(株)、以後「HBM」と略す。)、テトラヒドロフルフリルアクリレートであるTHF−Aと、界面活性剤としてアクリロイル基を有するTegorad2200N(商品名:エボニック デグサ ジャパン(株))を下記組成割合で混合し、PTFE製のメンブレンフィルター(0.2μm)でろ過し、ろ液(以下、このろ液を表面処理剤Aとよぶ)を得た。
【0160】
EA−0200 10.00g
Ir754 2.00g
HBM 51.80g
THF−A 10.00g
Tegorad2200N 0.20g
E型粘度計を用い、25℃における表面処理剤Aの粘度を測定した結果、4.9mPa・sであった。
(マイクロレンズの形成および評価)
ガラス基板を、PC基板に替え、吐出電圧(ピエゾ電圧)を18V、ヘッド温度を28℃に変更した以外は前記インクジェット吐出法と同様の条件で表面処理剤Aを塗布し、光硬化した後、得られた硬化膜上にレンズインク1〜10を前記インクジェット吐出法と同様の条件でドットパターン状に塗布し、それぞれマイクロレンズを形成した。上記のようにして得られたマイクロレンズ(ドットパターン)の形状を光学式顕微鏡BX51(商品名:OLYMPUS(株))を用いて観察したところ、上記いずれの組み合わせにおいても、得られたマイクロレンズの形状はほぼ真円であった。マイクロレンズを真上から観察したレンズは円形であることが理想である。
【0161】
表1および上記マイクロレンズの評価結果からわかるように、実施例1〜5で得られたインク(レンズインク1〜5)はインクジェット吐出性および光硬化性に優れ、また、その硬化物は、高屈折率、高透明性であり、黄色味が抑えられており、さらに良好な形状のマイクロレンズを形成できるため、光硬化性インクジェット用インクとして好適に用いられる。それに対し、レンズインク6および7は、光硬化後の黄色味が高く、光硬化性インクジェット用インクとして不適である。また、レンズインク8、9および10は、光硬化後の黄色味が低いが屈折率も低く、さらにレンズインク10は光硬化性の点でも劣るので、光硬化性インクジェット用インクとして不適である。
【0162】
本発明に係る実施例1〜5で得られたレンズインク1〜5は、光硬化性インクジェット用インクとして最適な特性を持っているので産業上有効である。