特許第6361720号(P6361720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6361720シリコン単結晶ウェーハの評価方法及び評価装置並びに製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361720
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】シリコン単結晶ウェーハの評価方法及び評価装置並びに製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20180712BHJP
   G01N 21/35 20140101ALI20180712BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C30B29/06 502Z
   G01N21/35
   H01L21/66 M
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-220225(P2016-220225)
(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公開番号】特開2018-76210(P2018-76210A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2017年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】玉置 晋
【審査官】 原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−324654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
H01L 21/64−21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリエーションの評価基準値を定める工程と、
前記評価基準値より小さい評価基準値の下限値を定める工程と、
ストリエーション評価のための熱処理を施すことなくシリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度を測定する工程と、
前記測定された酸素濃度の最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出し、最小値に対する最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する工程と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記下限値未満の場合はストリエーションの発生がないと評価し、前記評価基準値を超える場合はストリエーションの発生があると評価する工程と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記評価基準値未満で前記下限値以上の場合は、ストリエーションを顕在化させる熱処理を施して当該シリコン単結晶ウェーハのX線トポグラフィー画像を取得するとともに、前記取得されたX線トポグラフィー画像を目視観察することによりストリエーションの発生の有無を評価する工程と、を含むシリコン単結晶ウェーハの評価方法。
【請求項2】
ストリエーションの評価基準値を2%〜4%の範囲の値に定める工程と、
ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく、シリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度を、5mm〜10mm間隔で測定する工程と、
前記測定された酸素濃度の最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出し、最小値に対する最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する工程と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記評価基準値未満の場合はストリエーションの発生がないと評価し、前記評価基準値を超える場合はストリエーションの発生があると評価する工程と、を含むシリコン単結晶ウェーハの評価方法。
【請求項3】
ストリエーションの評価基準値を2%〜4%の範囲の値に定める工程と、
前記評価基準値より0.4%〜0.6%小さい評価基準値の下限値を定める工程と、
ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく、シリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度を、5mm〜10mm間隔で測定する工程と、
前記測定された酸素濃度の最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出し、最小値に対する最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する工程と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記下限値未満の場合はストリエーションの発生がないと評価し、前記評価基準値を超える場合はストリエーションの発生があると評価する工程と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記評価基準値未満で前記下限値以上の場合は、ストリエーションを顕在化させる熱処理を施して当該シリコン単結晶ウェーハのX線トポグラフィー画像を取得するとともに、前記取得されたX線トポグラフィー画像を目視観察することによりストリエーションの発生の有無を評価する工程と、を含むシリコン単結晶ウェーハの評価方法。
【請求項4】
ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく、シリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度を、5mm〜10mm間隔で測定する測定手段と、
前記測定された酸素濃度の最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出し、最小値に対する最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する算出手段と、
ストリエーションの評価基準値を2%〜4%の範囲の値に定める入力手段と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記評価基準値未満の場合はストリエーションの発生がないと評価し、前記評価基準値を超える場合はストリエーションの発生があると評価する評価手段と、を含むシリコン単結晶ウェーハの評価装置。
【請求項5】
シリコン単結晶ウェーハを製造する方法であって、
ストリエーションの評価基準値を定める工程と、
前記評価基準値より小さい評価基準値の下限値を定める工程と、
ストリエーション評価のための熱処理を施すことなくシリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度を測定する工程と、
前記測定された酸素濃度の最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出し、最小値に対する最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する工程と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記下限値未満の場合はストリエーションの発生がないと評価し、前記評価基準値を超える場合はストリエーションの発生があると評価する工程と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記評価基準値未満で前記下限値以上の場合は、ストリエーションを顕在化させる熱処理を施して当該シリコン単結晶ウェーハのX線トポグラフィー画像を取得するとともに、前記取得されたX線トポグラフィー画像を目視観察することによりストリエーションの発生の有無を評価する工程と、を含むシリコン単結晶ウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶ウェーハの評価方法及び評価装置並びに製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶ウェーハの酸素析出量の面内均一性を評価する方法として、シリコン単結晶ウェーハの直径方向の酸素濃度測定を行い、シリコン単結晶ウェーハに600℃〜700℃の低温熱処理と、750℃〜1050℃の高温熱処理とを施し、その後更にシリコン単結晶ウェーハの直径方向の酸素濃度測定を行い、シリコン単結晶ウェーハの直径を10mm以上15mm以下の長さ毎に分割した区間のうち、低温熱処理前の酸素濃度と高温熱処理後の酸素濃度の差[Op]の最大値[Op]maxと最小値[Op]minの比[Op]max/[Op]minが1.25以下となる区間の、分割された全区間に占める割合により、シリコン単結晶ウェーハの酸素析出量の面内均一性を評価する方法が知られている。そして、上記比[Op]max/[Op]minが1.25以下となる区間が、分割された全区間の85%以上を占めるシリコン単結晶ウェーハでは、X線トポグラフィーイメージによる、明瞭な析出酸素のストリエーションパターンは認められず、酸素析出量が均一なシリコン単結晶ウェーハが提供できるとされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−147407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、シリコン単結晶ウェーハに、低温熱処理と高温熱処理の2回のストリエーション評価のための熱処理を施すことに加え、低温熱処理前と高温熱処理後に合計2回の酸素濃度測定を行う必要があるため、ストリエーションの評価に長時間を要するという問題がある。なお、本明細書でいうストリエーションとは、ストリエーション評価のための熱処理を施した場合に発生する、ウェーハ面内における酸素析出量の多い領域と、少ない領域とが為す模様をいう。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な工程で精度が高い評価を行うことができるシリコン単結晶の評価方法及び評価装置並びに製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点による本発明は、ストリエーションの評価基準値を定める工程と、
前記評価基準値より小さい評価基準値の下限値を定める工程と、
ストリエーション評価のための熱処理を施すことなくシリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度を測定する工程と、
前記測定された酸素濃度の最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出し、最小値に対する最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する工程と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記下限値未満の場合はストリエーションの発生がないと評価し、前記評価基準値を超える場合はストリエーションの発生があると評価する工程と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記評価基準値未満で前記下限値以上の場合は、ストリエーションを顕在化させる熱処理を施して当該シリコン単結晶ウェーハのX線トポグラフィー画像を取得するとともに、前記取得されたX線トポグラフィー画像を目視観察することによりストリエーションの発生の有無を評価する工程と、を含むシリコン単結晶ウェーハの評価方法によって上記課題を解決する。
【0008】
第2の観点による本発明は、ストリエーションの評価基準値を2%〜4%の範囲の値に定める工程と、
ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく、シリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度を、5mm〜10mm間隔で測定する工程と、
前記測定された酸素濃度の最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出し、最小値に対する最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する工程と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記評価基準値未満の場合はストリエーションの発生がないと評価し、前記評価基準値を超える場合はストリエーションの発生があると評価する工程と、を含むシリコン単結晶ウェーハの評価方法によって上記課題を解決する。
【0009】
の観点による本発明は、ストリエーションの評価基準値を2%〜4%の範囲の値に定める工程と、
前記評価基準値より0.4%〜0.6%小さい評価基準値の下限値を定める工程と、
ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく、シリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度を、5mm〜10mm間隔で測定する工程と、
前記測定された酸素濃度の最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出し、最小値に対する最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する工程と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記下限値未満の場合はストリエーションの発生がないと評価し、前記評価基準値を超える場合はストリエーションの発生があると評価する工程と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記評価基準値未満で前記下限値以上の場合は、ストリエーションを顕在化させる熱処理を施して当該シリコン単結晶ウェーハのX線トポグラフィー画像を取得するとともに、前記取得されたX線トポグラフィー画像を目視観察することによりストリエーションの発生の有無を評価する工程と、を含むシリコン単結晶ウェーハの評価方法によって上記課題を解決する。
【0011】
第4の観点による本発明は、ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく、シリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度を、5mm〜10mm間隔で測定する測定手段と、
前記測定された酸素濃度の最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出し、最小値に対する最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する算出手段と、
ストリエーションの評価基準値を2%〜4%の範囲の値に定める入力手段と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記評価基準値未満の場合はストリエーションの発生がないと評価し、前記評価基準値を超える場合はストリエーションの発生があると評価する評価手段と、を含むシリコン単結晶ウェーハの評価装置により上記課題を解決する。
【0012】
第5の観点による本発明は、シリコン単結晶ウェーハを製造する方法であって、
ストリエーションの評価基準値を定める工程と、
前記評価基準値より小さい評価基準値の下限値を定める工程と、
ストリエーション評価のための熱処理を施すことなくシリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度を測定する工程と、
前記測定された酸素濃度の最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出し、最小値に対する最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する工程と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記下限値未満の場合はストリエーションの発生がないと評価し、前記評価基準値を超える場合はストリエーションの発生があると評価する工程と、
前記算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、前記評価基準値未満で前記下限値以上の場合は、ストリエーションを顕在化させる熱処理を施して当該シリコン単結晶ウェーハのX線トポグラフィー画像を取得するとともに、前記取得されたX線トポグラフィー画像を目視観察することによりストリエーションの発生の有無を評価する工程と、を含むシリコン単結晶ウェーハの製造方法により上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度をFT−IR法により測定し、最小値に対する最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminが、ストリエーションの評価基準値に対して大きいか小さいかによって、ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく、ストリエーションの発生の有無を定量的に評価するので、簡易な工程で精度が高い評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係るシリコン単結晶ウェーハの評価方法を示す工程図である。
図2図1に示す評価方法で評価した各シリコン単結晶ウェーハのX線トポグラフィー画像を示す図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るシリコン単結晶ウェーハの評価方法を示す工程図である。
図4図3に示す評価方法で評価した各シリコン単結晶ウェーハのX線トポグラフィー画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態に係るシリコン単結晶ウェーハの評価方法及び製造方法は、図1に示すように、ストリエーションの評価基準値Sを定める工程ST1と、ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく、シリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度をウェーハの中心部から径方向に、5mm〜10mm間隔及びスポット直径2.5mm〜4.5mmで、FT−IR法により測定する工程ST2と、測定された酸素濃度の最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出する工程ST3と、最小値に対する最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する工程ST4と、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminと評価基準値とを比較する工程ST5と、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが評価基準値S未満の場合は、ストリエーション評価のための熱処理を施した後のストリエーションの発生がないと評価する工程ST6と、評価基準値Sを超える場合は、ストリエーション評価のための熱処理を施した後のストリエーションの発生があると評価する工程ST7と、を含む。本発明者は、本発明を為すにあたって、ウェーハのストリエーションが、ストリエーション評価のための熱処理を施した後のウエーハ面内における酸素析出量の多い領域と少ない領域が為す模様であることから、ウェーハ面内の酸素濃度に関連すると考えた。そこで、ストリエーションのコントラストと、ウエーハ面内の酸素濃度の最大値Oimaxと最小値Oiminとの関連性を調査した結果、ストリエーションのコントラストが、ストリエーション評価のための熱処理を施す前の酸素濃度の最小値に対する最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminと相関性があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
ストリエーションの評価基準値Sを定める工程ST1において、評価基準値Sは、シリコン単結晶ウェーハの仕様等により要求される面内酸素濃度の均一性に応じて適宜の値に設定される。例えば、CMOSイメージセンサに用いられるシリコン単結晶ウェーハについては、他のデバイスに比べて相対的に高い面内酸素濃度の均一性が求められることから、評価基準値Sは、特に限定はされないが2〜4%程度の小さい値に設定される。具体的な評価基準値Sの算出例として、(1)製造されたシリコン単結晶ウェーハのX線画像によるストリエーションの目視判定結果から、「ストリエーションが観察されない」と判定されたウェーハを複数抽出し、(2)次に、(1)の「ストリエーションが観察されない」と判定されたウェーハの“比(Oimax−Oimin)/Oimin“を求め、(3)次に、(2)の“比(Oimax−Oimin)/Oimin“を統計学的に処理して、その平均値と標準偏差を求め、(4)最後に、平均値から+3σ(標準偏差)離れた位置にある“比(Oimax−Oimin)/Oimin“の値を求め、これを評価基準値Sとする。なお、この具体例はあくまで一例であり、例えば標準偏差3σを4σなどにしてもよい。
【0018】
シリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度をFT−IR法(ASTM F−121(1979)に規格されたフーリエ変換赤外分光光度法をいう。)により測定する工程ST2では、ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく、シリコン単結晶ウェーハの面内を、5mm〜10mm間隔及びスポット直径2.5mm〜4.5mmでスキャンする。例えば、直径300mmウェーハを5mm間隔でスキャンすると60箇所前後の測定点となるが、フーリエ変換赤外分光光度計による測定は1時間前後で完了する。本実施形態のFT−IR法による面内酸素濃度の測定にあたっては、従来技術のようにシリコン単結晶ウェーハにストリエーション評価のための熱処理は施さないし、施す必要もない。なお、当該工程ST2の酸素濃度測定において使用される測定法は、FT−IR法にのみ限定されず、他の濃度測定法であってもよい。また、スポット径2.5mm〜4.5mmも一例であって、特に限定される数値ではない。
【0019】
工程ST3では、工程ST2で測定された酸素濃度の測定値のうち最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出する。そして、工程ST4にて、最小値に対する、最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する。この値は、最小値Oiminをベースにした、酸素濃度のばらつき(Oimax−Oimin)の割合を示すものである。なお、図1において、最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出する工程ST3と、比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する工程ST4とを別工程として示しているが、これは本質的なものではなく、これらの工程ST3,ST4を一連の工程として処理してもよい。
【0020】
工程ST5では、工程ST1で決定された評価基準値Sと、工程ST4で算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminとを比較する。そして、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、評価基準値S未満の場合は、工程ST6にてストリエーションの発生がないと評価する。一方、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、評価基準値Sを超える場合は、工程ST7にてストリエーションの発生があると評価する。これら工程ST6及びST7における評価は、仮にストリエーション評価のための熱処理を施した場合のストリエーションの発生の有無を、上述した相関性に基づいて推定評価するものである。
【0021】
ちなみに、評価基準値Sの決定からストリエーションの発生の有無までの一連の工程を、コンピュータで自動計算してもよい。例えば、評価基準値Sを入力するステップ、フーリエ変換赤外分光光度計による測定結果を入力するステップ、その測定値のうちの最大値と最小値とを抽出し、(Oimax−Oimin)/Oiminを算出するステップ、評価基準値Sと比(Oimax−Oimin)/Oiminとを比較するステップ、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、評価基準値S未満の場合は、ストリエーションの発生がない旨を出力する一方、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、評価基準値Sを超える場合は、ストリエーションの発生があると出力するステップを含むコンピュータプログラムを作成し、コンピュータにインストールすることで自動計算することができる。
【0022】
[実施例1]
CMOSイメージセンサなどに用いられる半導体用ウェーハを製造するため、直径300mmのシリコン単結晶インゴットをチョクラルスキー法により育成し、結晶固化率(シリコン原料の重量に対する、育成されたシリコン単結晶の重量割合)が異なる部分で切り出した6枚のシリコン単結晶ウェーハを用意した。これらシリコン単結晶ウェーハを、ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、スポット径3.5mm、5mm間隔で59箇所の酸素濃度をウェーハ中心部から径方向に測定した。そして、測定値の最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出し、比(Oimax−Oimin)/Oimin(比は%表示)を算出し、評価基準値Sを3%に決定して評価を実施した。その結果を表1に示す。また、ここで使用した試料1〜6のX線トポグラフィー画像を図2に示す。なお、各試料1〜6のストリエーションのX線トポグラフィー画像を採取するにあたり、1150℃×1時間及び700℃×5時間及び1000℃×8時間の熱処理をウエーハに施して酸素析出させることにより、ストリエーションを顕在化させた。
【0023】
【表1】
【0024】
《考 察》
評価基準値S=3%としたところ、試料1と6はストリエーションの発生がないと評価され、その他の試料2〜5はストリエーションの発生があると評価された。これに対して、図2に示す各試料1〜6のX線トポグラフィー画像による目視評価は、表1に示す実施例1の評価結果と一致した。すなわち、ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく測定及び算出した比(Oimax−Oimin)/Oiminによるストリエーション評価は、実際にストリエーション評価のための熱処理を施した後のストリエーションの発生の有無と一致した。
【0025】
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態に係るシリコン単結晶ウェーハの評価方法は、図3に示すように、評価基準値S及び評価基準値Sより小さい評価基準値の下限値S−Δsを定める工程ST11と、ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく、シリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度をウェーハの中心部から径方向に、5mm〜10mm間隔及びスポット直径2.5mm〜4.5mmで、FT−IR法により測定する工程ST12と、測定された酸素濃度の最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出する工程ST13と、最小値に対する最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する工程ST14と、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminと評価基準値Sとを比較する工程ST15と、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが評価基準値Sを超える場合は、ストリエーション評価のための熱処理を施した後のストリエーションの発生があると評価する工程ST20と、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、評価基準値S未満である場合に、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminと評価基準値の下限値S−Δsとを比較する工程ST16と、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、評価基準値の下限値S−Δs未満の場合は、ストリエーション評価のための熱処理を施した後のストリエーションの発生がないと評価する工程ST19と、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、評価基準値S未満で評価基準値の下限値S−Δs以上である場合は、当該シリコン単結晶ウェーハのX線トポグラフィー画像を取得する工程ST17と、取得されたX線トポグラフィー画像を目視観察することによりストリエーションの発生の有無を評価する工程ST18と、を含む。
【0026】
評価基準値S及びその下限値S−Δsを定める工程ST11において、評価基準値Sは、シリコン単結晶ウェーハの仕様等により要求される面内酸素濃度の均一性に応じて適宜の値に設定される。例えば、CMOSイメージセンサに用いられるシリコン単結晶ウェーハについては、他のデバイスに比べて相対的に高い面内酸素濃度の均一性が求められることから、評価基準値Sは、特に限定はされないが2〜4%程度の小さい値に設定される。また、評価基準値の下限値S−Δsは、評価基準値Sに近似する範囲で、ストリエーション評価のための熱処理を施した後のストリエーションの発生がないと評価されるおそれがある範囲として決定され、特に限定されないが例えばΔs=0.4%〜0.6%である。なお、具体的な評価基準値Sの算出例としては、上述した第1実施形態と同じである。
【0027】
シリコン単結晶ウェーハの面内の酸素濃度をFT−IR法(ASTM F−121(1979)に規格されたフーリエ変換赤外分光光度法をいう。)により測定する工程ST12では、ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく、シリコン単結晶ウェーハの面内を、5mm〜10mm間隔及びスポット直径2.5mm〜4.5mmでスキャンする。例えば、直径300mmウェーハを5mm間隔でスキャンすると60箇所前後の測定点となるが、フーリエ変換赤外分光光度計による測定は1時間前後で完了する。本実施形態のFT−IR法による面内酸素濃度の測定にあたっては、従来技術のようにシリコン単結晶ウェーハにストリエーションのための熱処理は施さないし、施す必要もない。なお、当該工程ST12の酸素濃度測定において使用される測定法は、FT−IR法にのみ限定されず、他の濃度測定法であってもよい。また、スポット径2.5mm〜4.5mmも一例であって、特に限定される数値ではない。
【0028】
工程ST13では、工程ST12で測定された酸素濃度の測定値のうち最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出する。そして、工程ST14にて、最小値に対する、最大値と最小値の差の比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する。この値は、最小値Oiminをベースにした、酸素濃度のばらつき(Oimax−Oimin)の割合を示すものである。なお、図3において、最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出する工程ST13と、比(Oimax−Oimin)/Oiminを算出する工程ST14とを別工程として示しているが、これは本質的なものではなく、これらの工程ST13,ST14を一連の工程として処理してもよい。
【0029】
工程ST15では、工程ST11で決定された評価基準値Sと、工程ST14で算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminとを比較する。そして、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、評価基準値Sを超える場合は、工程ST20にてストリエーションの発生があると評価する。一方、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、評価基準値S未満の場合は、次の工程ST16に進む。
【0030】
工程ST16では、工程ST11で決定された評価基準値の下限値S−Δsと、工程ST14で算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminとを比較する。そして、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、評価基準値の下限値S−Δs未満である場合は、工程ST19にてストリエーションの発生がないと評価する。これは、本来の評価基準値Sに対して設けられたマージンΔsよりも小さい値であれば、誤差等を考慮してもストリエーションの発生がないと評価できるからである。なお、これら工程ST20及びST19における評価は、仮にストリエーション評価のための熱処理を施した場合のストリエーションの発生の有無を、上述した相関性に基づいて推定評価するものである。
【0031】
一方、工程ST16において、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、評価基準値の下限値S−Δs以上(かつ評価基準値S未満)である場合は、工程ST17において、当該シリコン単結晶ウェーハのX線トポグラフィー画像を取得する。この工程ST17においては、X線トポグラフィー画像からストリエーションの発生の有無を目視評価するために、X線トポグラフィー画像を取得する前に、実際に、酸素析出させてストリエーションを顕在化させる熱処理を施す。このストリエーションを顕在化させるための熱処理は、例えば1150℃×1時間及び700℃×5時間及び1000℃×8時間といった条件を一例として挙げることができるが、この条件に限定されることはなく、ストリエーション評価のための熱処理等と同じ条件としてもよい。そして、工程ST18にて、取得されたX線トポグラフィー画像を目視評価し(評価基準板との目視比較)、ストリエーションの発生がないと判断した場合は、工程ST19にてストリエーションの発生がないと評価する。工程ST18にて、取得されたX線トポグラフィー画像を目視評価し(評価基準板との目視比較)、ストリエーションの発生があると判断した場合は、工程ST20にてストリエーションの発生があると評価する。
【0032】
ちなみに、評価基準値S及びその下限値S−Δsの決定(ST11)から、工程ST17及びST18を除く、ストリエーションの発生の有無までの一連の工程を、コンピュータで自動計算してもよい。この場合、第1実施形態と同様に、例えば、評価基準値S及びその下限値S−Δsを入力するステップ、フーリエ変換赤外分光光度計による測定結果を入力するステップ、その測定値のうちの最大値と最小値とを抽出し、(Oimax−Oimin)/Oiminを算出するステップ、評価基準値Sと比(Oimax−Oimin)/Oiminとを比較するステップ、評価基準値の下限値S−Δsと比(Oimax−Oimin)/Oiminとを比較するステップ、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、評価基準値の下限値S−Δs未満の場合は、ストリエーションの発生がない旨を出力する一方、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、評価基準値Sを超える場合は、ストリエーションが発生があると出力するステップを含むコンピュータプログラムを作成し、コンピュータにインストールすることで自動計算することができる。また、算出された比(Oimax−Oimin)/Oiminが、評価基準値Sとその下限値S−Δsとの間にある場合は、その旨を出力するステップを追加し、該当するシリコン単結晶ウェーハを特定するようにしてもよい。
【0033】
[実施例2]
CMOSイメージセンサなどに用いられる半導体用ウェーハを製造するため、直径300mmのシリコン単結晶インゴットをチョクラルスキー法により育成し、結晶固化率(シリコン原料の重量に対する、育成されたシリコン単結晶の重量割合)が異なる部分で切り出した4枚のシリコン単結晶ウェーハを用意した。これらシリコン単結晶ウェーハを、ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、スポット径3.5mm、5mm間隔で59箇所の酸素濃度をウェーハ中心部から径方向に測定した。そして、測定値の最大値Oimaxと最小値Oiminを抽出し、比(Oimax−Oimin)/Oimin(比は%表示)を算出し、評価基準値Sを3%、下限値S−Δsを2.5%に決定して評価を実施した。その結果を表2に示す。また、ここで使用した試料7〜10のX線トポグラフィー画像を図4に示す。なお、各試料7〜10のストリエーションのX線トポグラフィー画像を採取するにあたり、1150℃×1時間及び700℃×5時間及び1000℃×8時間の熱処理をウエーハに施して酸素析出させることにより、ストリエーションを顕在化させた。
【0034】
【表2】
【0035】
《考 察》
評価基準値S=3%,下限値S−Δs=2.5%としたところ、試料7はストリエーションの発生がないと評価され、その他の試料8〜10はストリエーションの発生があると評価された。試料7の比は2.71であり、評価基準値Sとその下限値S−Δsとの間にあることから、図4に示す試料7のX線トポグラフィー画像(当該画像を取得する前にストリエーションを顕在化させる熱処理を施した。)による目視評価により、ストリエーションの発生があると評価した。なお、その他の試料8〜10は、表2に示す実施例2の評価と図4に示す目視評価が一致した。すなわち、ストリエーション評価のための熱処理を施すことなく測定及び算出した比(Oimax−Oimin)/Oiminによるストリエーション評価は、実際にストリエーション評価のための熱処理を施した後のストリエーションの発生の有無と一致した。
図1
図2
図3
図4