特許第6361757号(P6361757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6361757
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】表面測定機用検出器
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20180712BHJP
   G01B 5/28 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G01B5/20 C
   G01B5/28 102
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-33572(P2017-33572)
(22)【出願日】2017年2月24日
【審査請求日】2018年4月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】森井 秀樹
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−200589(JP,A)
【文献】 特開2008−180587(JP,A)
【文献】 特開平06−258003(JP,A)
【文献】 特開2004−077437(JP,A)
【文献】 米国特許第04574625(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00− 5/30
21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触子を先端に備えたアームと、
前記アームを回転可能に支持する回転軸と、
前記アームにおける前記回転軸の前記接触子と反対の側の位置に、一端が接続される伝達部と、
前記伝達部の他端に、一端が接続される弾性部であり、前記接触子に付与される測定力を発生させる弾性部と、
前記弾性部の他端に接続される位置調節部であり、前記アームの長手方向である第一方向、及び前記回転軸の方向である第二方向と直交する第三方向の成分を有する移動方向について、前記弾性部の他端の位置を移動させる位置調節部と、
前記アームと接続される傾き調節部であり、前記弾性部の他端の位置を前記移動方向へ移動させた場合に、前記伝達部と接触可能な位置に配置される接触部を備えた傾き調節部と、
を備えた表面測定機用検出器。
【請求項2】
前記伝達部は、非弾性を有する部材であるか、又は前記弾性部の弾性係数未満の弾性係数を有する部材である請求項1に記載の表面測定機用検出器。
【請求項3】
前記伝達部は、前記接触部と接触した状態において、前記弾性部の他端の位置を前記移動方向へ移動させた場合に屈曲し、かつ、前記接触部と非接触の状態において非屈曲となる請求項1又は2に記載の表面測定機用検出器。
【請求項4】
前記接触部は、前記第一方向について、前記アームと前記伝達部との接続位置から一定の距離を有する位置であり、前記第三方向について、前記アームの位置から一定の距離を有する位置に配置される請求項1から3のいずれか一項に記載の表面測定機用検出器。
【請求項5】
前記第一方向の位置、及び前記第三方向の位置が異なる複数の前記接触部を備えた請求項1から4のいずれか一項に記載の表面測定機用検出器。
【請求項6】
前記接触部は、前記第一方向に沿う曲面であり、前記第三方向の変位を有する任意の形状の曲面を備えた請求項1から5のいずれか一項に記載の表面測定機用検出器。
【請求項7】
前記接触部は、前記第一方向について、前記アームと前記伝達部との接続位置から見て前記回転軸と反対の側の位置に配置される請求項1から6のいずれか一項に記載の表面測定機用検出器。
【請求項8】
前記接触部は、前記第一方向について、前記アームと前記伝達部との接続位置から見て前記回転軸の側の位置に配置される請求項1から6のいずれか一項に記載の表面測定機用検出器。
【請求項9】
前記アームの他端の側の前記第三方向における変位を検出する検出部を備えた請求項1から8のいずれか一項に記載の表面測定機用検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の表面を測定する表面測定機に適用される検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面の形状、及び表面の粗さなどを測定する表面測定機として、表面性状測定機が知られている。被測定物の表面に接触子を接触させる接触式の表面性状測定用の検出器は、テコ式検出器が広く用いられている。テコ式検出器において、接触子を被測定物へ押し当てる測定力を付与する手段として、コイルばね等の弾性体が広く用いられている。
【0003】
一般に、測定力をある程度大きくすることによりアームの跳ねを抑えることができ、被測定物の表面の変位を精度よく測定することが可能である。
【0004】
特許文献1は、触針を有するアームを回転可能に支持し、コイルばねの付勢力を用いて触針における測定力を発生させる表面性状測定機用検出器が記載されている。特許文献1に記載の表面性状測定機用検出器は、コイルばねがアームの軸に平行に設けられている。これにより、表面性状測定機用検出器の小型化を実現している。
【0005】
また、特許文献1に記載の表面性状測定機用検出器は、コイルばねの他端が固定される保持部材と、アームの軸と平行に保持部材を移動させる偏芯ピンとを備えている。そして、偏心ピンを回動させることによりコイルばねがアームの軸に平行に移動する。これにより、アームに発生する測定力は保持部材の移動量と比例し、偏芯ピンの調節量と測定力との関係を線形に近づけている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3959319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、軟らかい被測定物、細い被測定物、及び薄い被測定物などの容易に変形する可能性がある被測定物を測定する場合、測定力を小さくする調節をして、被測定物の変形を回避する必要がある。そして、測定力が小さい範囲の調節を容易にするには、測定力の調節分解能を細かくして、測定力の微調節を可能とする必要がある。
【0008】
特許文献1に記載の表面性状測定機用検出器において、測定力の調節の際の入力に対して線形的に測定力を調節する場合、測定力が小さい範囲の調節分解能を細かくしようとすると、調節範囲の全範囲の調節分解能が細かくなる結果、測定力の最大値が小さくなり、測定力の調節範囲が狭くなってしまう。そうすると、必要とされる最大測定力を得ることが困難である。
【0009】
一方、必要とされる測定力の最大値を得るために調節範囲を広げると、測定力の調節範囲の全範囲において調節分解能が粗くなってしまい、測定力の微調節が困難である。すなわち、任意の調節範囲における高分解能の測定力の調節、及び高い最大測定力を得ることの両立が困難である。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、任意の調節範囲における高分解能の測定力の調節、及び高い最大測定力を得ることの両立を可能とする表面測定機用検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、次の発明態様を提供する。
【0012】
第1態様に係る表面測定機用検出器は、接触子を先端に備えたアームと、アームを回転可能に支持する回転軸と、アームにおける回転軸の接触子と反対の側の位置に、一端が接続される伝達部と、伝達部の他端に、一端が接続される弾性部であり、接触子に付与される測定力を発生させる弾性部と、弾性部の他端に接続される位置調節部であり、アームの長手方向である第一方向、及び回転軸の方向である第二方向と直交する第三方向の成分を有する移動方向について、弾性部の他端の位置を移動させる位置調節部と、アームと接続される傾き調節部であり、弾性部の他端の位置を移動方向へ移動させた場合に、伝達部と接触可能な位置に配置される接触部を備えた傾き調節部と、を備えた表面測定機用検出器である。
【0013】
第1態様によれば、伝達部と接触部とが非接触の場合における低測定力の傾きに対して、伝達部と接触部とが接触している場合における測定力の傾きを大きくする。伝達部と接触部とが非接触の場合は、測定力の調節分解能が高分解能とされ、伝達部と接触部とが接触している場合は、高い最大測定力が得られる。これにより、低測定力の範囲における調節分解能の高分解能、及び高い最大測定力の両立が可能である。
【0014】
接触子は、被測定物の測定対象位置に接触させる触針が含まれていてもよい。
【0015】
弾性部は、弾性体が含まれていてもよい。弾性体の例として、ばねが挙げられる。
【0016】
接触部の構成例として、基端がアームと接続され、先端に接触部が配置される態様が挙げられる。
【0017】
第2態様は、第1態様の表面測定機用検出器において、伝達部は、非弾性を有する部材であるか、又は弾性部の弾性係数未満の弾性係数を有する部材である構成としてもよい。
【0018】
第2態様によれば、伝達部を介して弾性部が発生させた弾性力をアームへ伝達することが可能である。
【0019】
第3態様は、第1態様又は第2態様に記載の表面測定機用検出器において、伝達部は、接触部と接触した状態において、弾性部の他端の位置を移動方向へ移動させた場合に屈曲し、かつ、接触部と非接触の状態において非屈曲となる構成としてもよい。
【0020】
第3態様によれば、伝達部は、接触部と接触した場合の屈曲状態と、接触部と非接触の場合の非屈曲状態との切り替えが可能である。
【0021】
第2態様、及び第3態様の伝達部の例として、金属材料を用いた鋼線が挙げられる。
【0022】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか一態様の表面測定機用検出器において、接触部は、第一方向について、アームと伝達部との接続位置から一定の距離を有する位置であり、第三方向について、アームの位置から一定の距離を有する位置に配置される構成としてもよい。
【0023】
第4態様によれば、第三方向について、弾性部の他端を一定の距離だけ移動させることに起因して、測定力の傾きを変更することが可能である。
【0024】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか一態様の表面測定機用検出器において、第一方向の位置、及び第三方向の位置が異なる複数の接触部を備えた構成としてもよい。
【0025】
第5態様によれば、二種類を超える測定力の傾きを用いた測定力の調節が可能である。
【0026】
第6態様は、第1態様から第5態様のいずれか一態様の表面測定機用検出器において、接触部は、第一方向に沿う曲面であり、第三方向の変位を有する任意の形状の曲面を備えた構成としてもよい。
【0027】
第6態様によれば、連続的に測定力の傾きを変更することが可能である。
【0028】
第7態様は、第1態様から第6態様のいずれか一態様の表面測定機用検出器において、接触部は、第一方向について、アームと伝達部との接続位置の回転軸と反対側の位置に配置される構成としてもよい。
【0029】
第7態様によれば、アームに作用させるトルクの減少を抑制可能である。
【0030】
第8態様は、第1態様から第6態様のいずれか一態様の表面測定機用検出器において、接触部は、第一方向について、アームと伝達部との接続位置の回転軸の側の位置に配置される構成としてもよい。
【0031】
第8態様によれば、測定力調節位置の変位に対してフラットな測定力の調整が可能である。
【0032】
第9態様は、第1態様から第6態様のいずれか一態様の表面測定機用検出器において、アームの他端の側の第三方向における変位を検出する検出部を備えた構成としてもよい。
【0033】
第9態様によれば、アームの他端の側の第三方向における変位に基づく測定力の調整が可能である。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、伝達部と接触部とが非接触の場合における低測定力の傾きに対して、伝達部と接触部とが接触している場合における測定力の傾きを大きくする。伝達部と接触部とが非接触の場合は、測定力の調節分解能が高分解能とされ、伝達部と接触部とが接触している場合は、高い最大測定力が得られる。これにより、低測定力の範囲における調節分解能の高分解能、及び高い最大測定力の両立が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は表面性状測定機の全体構成図である。
図2図2はテコ式検出器の概略構成図である。
図3図3は第一実施形態に係る測定力調節の模式図である。
図4図4は第一実施形態に係る測定力調節における測定力調節位置と測定力との関係を示したグラフである。
図5図5は比較例に係る測定力調節位置と測定力との関係を示したグラフである。
図6図6は第二実施形態に係る測定力調節の模式図である。
図7図7は第二実施形態に係る測定力調節における測定力調節位置と測定力との関係を示したグラフである。
図8図8は第三実施形態に係る測定力調節の模式図である。
図9図9は第三実施形態に係る測定力調節における測定力調節位置と測定力との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について説明する。本明細書では、先に説明した構成と同一の構成には同一の符号を付し、説明を適宜省略することとする。
【0037】
[表面性状測定機の全体構成]
図1は表面性状測定機の全体構成図である。本明細書では、図1に示したX軸方向を表す矢印線が向く方向をX軸方向のプラス方向とする。X軸方向を表す矢印線が向く方向に反対の方向をX軸方向のマイナス方向とする。
【0038】
また、Z軸方向を表す矢印線が向く方向をZ軸方向の上方向とする。Z軸方向を表す矢印線が向く方向に反対の方向をZ軸方向の下方向とする。図1の紙面を裏面から表面に貫く方向をY軸方向のプラス方向とする。
【0039】
図1の紙面を表面から裏面に貫く方向をY軸方向のマイナス方向とする。なお、X軸方向は、X軸方向のプラス方向、及びX軸方向のマイナス方向の総称である。Y軸方向、及びZ軸方向についても同様である。
【0040】
表面性状測定機は、表面測定機の一態様である。X軸方向はアームの長手方向である第一方向に相当する。Y軸方向は第二方向に相当する。Z軸方向は第一方向、及び第二方向と直交する第三方向に相当する。
【0041】
表面形状測定機10は、平板状の測定台12、コラム14、送り装置16、検出器17、及びコンピュータ24を備えている。検出器17は、表面測定機用検出器の一態様である。
【0042】
測定台12の上面12Aには、被測定物がセットされる。図1では、被測定物の図示を省略する。被測定物は図2に符号60を付して図示する。測定台12の上面12Aには、Z軸方向に延びたコラム14が立設される。コラム14は、送り装置16がZ軸方向に昇降自在に取り付けられている。送り装置16は、検出器17がX軸方向に移動自在に取り付けられる。
【0043】
送り装置16をZ軸方向について昇降させるZ軸移動部、及び検出器17をX軸方向へ移動させるX軸方向移動部の図示は省略する。
【0044】
送り装置16は、X軸方向検出センサ22を備えている。X軸方向検出センサ22は、リニアスケール22A、及び読取ヘッド22Bを備えている。リニアスケール22Aは、X軸方向に沿って配置される。読取ヘッド22Bは、X軸方向について、検出器17と一体に移動可能に構成される。X軸方向検出センサ22は、検出器17のX方向の変位を検出する。
【0045】
読取ヘッド22Bは、リニアスケール22Aの値を読み取る。リニアスケール22Aの値は、検出器17のX方向の変位を表している。読取ヘッド22Bは、読み取ったリニアスケール22Aの値をコンピュータ24へ送出する。読取ヘッド22Bは、光学式でもよいし、磁気式でもよい。
【0046】
検出器17は、スタイラス18、及びZ軸方向検出センサ20を備えている。スタイラス18は、アーム32、及び接触子34を備えている。アーム32の先端32Aは、接触子34が取り付けられている。アーム32は、Y軸方向に沿う回転軸30を支点としてY軸の周りを回転可能に支持される。なお、回転軸30の位置におけるアーム32の回転方向は、図2に矢印付きの曲線を用いて図示する。
【0047】
Z軸方向検出センサ20は、スケール20A、及び読取ヘッド20Bを備えている。スケール20Aは、アーム32の基端32Bの回転軌道に沿った形状を有している。読取ヘッド20Bは、アーム32の基端32Bに取り付けられている。Z軸方向検出センサ20は、接触子34のZ軸方向の変位を検出する。
【0048】
読取ヘッド20Bは、スケール20Aの値を読み取る。読取ヘッド20Bは、光学式でもよいし、磁気式でもよい。読取ヘッド20Bは、読み取ったスケール20Aの値をコンピュータ24へ送出する。コンピュータ24は、スケール20Aの読取値を用いて接触子34のZ軸方向の変位を算出される。
【0049】
なお、Z軸方向検出センサ20は、スケール型検出器に代わりに、又はスケール型検出器と併用して、差動変圧器型センサ、静電容量型センサ、及び渦電流型センサのいずれかを用いた変位センサを用いてもよい。
【0050】
変位センサの例として、線形可変差動変圧器、スケール、及びレーザ変位計等が挙げられる。線形可変差動変圧器の例として、LVDTが挙げられる。LVDTは、linear variable differential transformerの省略語である。X軸方向検出センサ22についても同様である。Z軸方向検出センサ20は検出部の一態様である。
【0051】
検出器17は、測定力調節部40を備えている。測定力調節部40は、紐状部材42、弾性部材44、位置調節部46、及び傾き調節部50を備えている。測定力調節部40は、接触子34に付与される測定力を調節する。
【0052】
傾き調節部50はアーム32に取り付けられる。傾き調節部50は、アーム32からX軸方向のプラス方向へ延ばした構造を有している。傾き調節部50の先端50Aは、接触部54を備えている。接触部54は、X軸方向について、アーム32と紐状部材42との接続位置32Dから一定の距離を有する位置に配置される。接触部54は、Z軸方向について、アーム32の位置から一定の距離を有する位置に配置される。
【0053】
接触部54は、紐状部材42と接触する面が曲面となる形状を有している。接触部54の形状の例として、球形状、及びY軸方向に一定の長さを有する円柱形状が挙げられる。接触部54の材料の例として、金属、及び樹脂が挙げられる。
【0054】
傾き調節部50の基端50Bは、アーム32の本体32Cに接続される。測定力調節部40の詳細、及び測定力調節部40を用いた測定力の調節は後述する。
【0055】
コンピュータ24は、データ処理装置37、モニタ38、並びにキーボード、及びマウス等の操作部39を備えている。データ処理装置37は、演算処理部、及び記憶部を備えている。コンピュータ24は、図示しない制御部を備えている。
【0056】
図示しない制御部は、表面形状測定機10を動作させるプログラムを起動して、表面形状測定機10を動作させ、被測定物の測定を実行する。制御部は、オペレータが入力した情報に基づいて、表面形状測定機10を動作させてもよい。
【0057】
制御部は、X軸方向移動部の動作へ指令信号を送出する。X軸方向移動部は、制御部から送出された指令信号に基づいてX軸方向の移動を実行する。制御部は、X軸方向検出センサ22の検出結果を用いて、X軸方向移動部の動作をフィードバック制御してもよい。
【0058】
表面形状測定機10は、図示しないY軸方向移動部を備えている。制御部は、Y軸方向移動部の動作へ指令信号を送出する。Y軸方向移動部は、制御部から送出された指令信号に基づいて、検出器17のY軸方向の移動を実行する。
【0059】
制御部は、Z軸方向移動部の動作へ指令信号を送出する。Z軸方向移動部は、制御部から送出された指令信号に基づいてZ軸方向の移動を実行する。
【0060】
データ処理装置37は、演算処理部を用いて、Z軸方向検出センサ20の検出結果、及びX軸方向検出センサ22の検出結果を用いて、被測定物の平面形状のデータを作成する。データ処理装置37は、被測定物の平面形状のデータを記憶部へ記憶する。
【0061】
図1の符号37Aは、データ処理装置37とZ軸方向検出センサ20とを電気接続する配線を示している。図1の符号37Bは、データ処理装置37とX軸方向検出センサ22とを電気接続する配線を示している。
【0062】
演算処理部はCPU等のプロセッサ、及び周辺回路を用いて構成される。記憶部は、RAM、又はROMなどの半導体素子を用いてもよいし、ハードディスク等の磁気記憶媒体を用いてもよい。
【0063】
なお、CPUは、中央演算装置を表す英語表記である、central processing unitの省略語である。ROMは、読取専用メモリを表す英語表記である、Read Only Memoryの省略語である。RAMは、臨時書き込み読み出しメモリを表す英語表記である、Random Access Memoryの省略語である。
【0064】
モニタ38は、コンピュータ24を用いて生成された被測定物の情報を表示する表示部として機能する。コンピュータ24は、被測定物の測定結果をモニタ38に表示させてもよい。
【0065】
操作部39は、オペレータがデータ処理装置37へ情報入力を行う際のインターフェースとして機能する。操作部39を用いて入力された情報は、データ処理装置37へ送出される。
【0066】
[表面形状測定機の測定手順]
図1に示した表面形状測定機10の測定手順は次のとおりである。測定力調節部40は、予め決められた圧力である測定力を接触子34へ付与し、被測定物の表面に接触子34を押し付ける。接触子34と被測定物とをX軸方向、及びY軸方向に沿って相対移動させる。Z軸方向検出センサ20は、被測定物の起伏に起因して生じる接触子34の変位を電気信号に変換する。
【0067】
Z軸方向検出センサ20は、接触子34の変位を表す電気信号をコンピュータ24へ送出する。コンピュータ24は、接触子34の変位を表す電気信号に基づいて、被測定物における各測定位置に各変位量を対応付けして、被測定物の表面形状のデータを作成する。
【0068】
[検出器の説明]
図2はテコ式検出器の概略構成図である。図2に示した検出器17は、測定力を調節する際に、低測定力範囲における高分解能と、高い最大測定力の両立を実現している。以下に検出器17について詳細に説明する。
【0069】
図2に示した紐状部材42の一端42Aは、アーム32に接続される。紐状部材42の他端42Bは、弾性部材44の一端44Aに接続される。弾性部材44の他端44Bは、位置調節部46と接続される。
【0070】
紐状部材42は、弾性部材44を用いて発生させた弾性力をアーム32へ伝達し、アーム32に測定力を発生させる。弾性部材44は、弾性部材44が発生させた弾性力を紐状部材42へ伝達する。紐状部材42は伝達部の一態様である。弾性部材44は弾性部の一態様である。
【0071】
位置調節部46は、Z軸方向のアーム32の位置を基準として、Z軸方向の上方向に沿って弾性部材44の他端44Bを移動させる。また、Z軸方向のアーム32の位置を基準として、Z軸方向の下方向に沿って弾性部材44の他端44Bを移動させる。
【0072】
位置調節部46は、Z軸方向のアーム32の位置を原点として、弾性部材44の他端44Bの位置をZ軸方向の上方向、又は下方向へ移動させる。位置調節部46は、測定力調節部40の入力部として機能する。図2に符号46Aを付した矢印線は、弾性部材44の他端44Bの移動方向を表している。位置調節部46の構成例として、モータ等の駆動源、及び上下移動機構を備える例が挙げられる。
【0073】
位置調節部46は、Z軸方向の成分を有する移動方向について、弾性部材44の他端44Bの位置を移動させてもよい。
【0074】
図2に示した検出器17は、Z軸方向の下方向へ向かう測定力を接触子34へ付与している状態である。ここでいう測定力は、後述する低測定力の範囲の任意の測定力である。図2に符号62を付して図示した矢印線は、アーム32の紐状部材42との接続位置である、紐状部材42の一端42Aにおける、弾性部材44が発生させた弾性力を表している。
【0075】
また、符号64を付して図示した矢印線は、アーム32の紐状部材42との接続位置である、紐状部材42の一端42Aにおける、弾性部材44が発生させた弾性力の測定力に寄与する成分を表している。
【0076】
弾性力の測定力に寄与する成分は、弾性力のZ軸方向成分である。換言すると、弾性力の測定力に寄与する成分は、アーム32の回転方向に作用する分力である。接触子34は、弾性力のZ軸方向成分64の大きさに比例する大きさを有する測定力であり、Z軸方向の下方向へ向かう測定力が付与される。
【0077】
換言すると、測定力の大きさは、弾性力のZ軸方向成分64の大きさに、回転軸30からアーム32と紐状部材42との接続位置32Dまでの距離を乗算した値を、回転軸30から接触子34までの距離で除算して算出される。なお、アーム32と紐状部材42との接続位置32Dは、弾性力の作用点と読み替えることが可能である。
【0078】
位置調節部46を用いて弾性部材44の他端44Bの位置を、Z方向の上方向へ移動させると、弾性部材44が発生する弾性力62のX軸方向に対する角度が大きくなる。これによって、弾性力のZ軸方向成分64の大きさも大きくなる。そして、測定力の大きさも大きくなる。
【0079】
このようして、位置調節部46を用いて弾性部材44の他端44Bの位置を変えることに起因して、接触子34に付与される測定力の大きさの調節が可能である。図2に示した紐状部材42が接触部54に非接触の範囲では、弾性部材44の他端44Bの位置に対して、測定力は概ね線形に変化する。
【0080】
図2には、アーム32のZ軸方向の位置よりもZ軸方向の上方向へ、弾性部材44の他端44Bの位置を移動させる位置調節部46を例示した。位置調節部46は、アーム32のZ軸方向の位置よりもZ軸方向の下方向へ、弾性部材44の他端44Bの位置を移動させてもよい。かかる態様では、接触子34はZ軸方向の上方向へ向かう測定力が付与される。
【0081】
紐状部材42は、柔軟性を有している。柔軟性は、紐状部材42が接触部54と接触した際に屈曲する紐状部材42の性質である。柔軟性を有する紐状部材42は接触部54と接触した際に屈曲しやすい。
【0082】
紐状部材42は、可撓性を有している。可撓性は、屈曲した紐状部材42が接触部54と非接触となった状態において非屈曲となる紐状部材42の性質である。ここでいう非屈曲には、屈曲する前の状態よりも屈曲しているものの、屈曲する前の状態と同様とみなすことができる実質的な非屈曲が含まれる。
【0083】
可撓性を有する紐状部材42は、屈曲した紐状部材42が接触部54と非接触となった状態において、屈曲させる前の元の形状に復元しやすい。
【0084】
紐状部材42は、非弾性を有する鋼線を適用可能である。非弾性を有する紐状部材42は、紐状部材42における弾性力の変動が少ないので好ましい。なお、紐状部材42は、弾性部材44の弾性係数未満の弾性係数を有してもよい。弾性部材44の例としてコイルばねが挙げられる。コイルばねに代わり、板ばね、ねじりばね等の弾性体を適用してもよい。
【0085】
コイルばねは、コイル部、及び線状部を備えている。線状部はコイル部の両側に備えられる。一方の線状部は、紐状部材42と接続される。他方の線状部は、位置調節部46と接続される。
【0086】
[第一実施形態に係る測定力調節の説明]
図3は第一実施形態に係る測定力調節の模式図である。図3には、紐状部材42が接触部54と接触した状態が図示されている。図2に示した弾性部材44の他端44Bの位置を、更にZ軸方向の上方向へ移動させた場合、図3に示すように、紐状部材42と接触部54とが接触する。
【0087】
更に、弾性部材44の他端44BをZ軸方向の上方向へ移動させた場合、紐状部材42は、接触部54との接触位置において屈曲する。接触部54との接触位置において紐状部材42が屈曲した後は、弾性部材44は、X軸方向に対する角度が図2に示した場合よりも大きくなる。また、弾性部材44を用いて発生させた弾性力62Aの作用点は、接触部54の位置となる。
【0088】
弾性部材44のX軸方向に対する角度が相対的に大きくなると、弾性力のZ軸方向成分64Aの大きさは、図2に示した弾性力のZ軸方向成分64の大きさ以上となる。すなわち、弾性力のZ軸方向の成分は、紐状部材42と接触部54との接触の有無に応じて、傾きが変化する非線形となる。
【0089】
本実施形態に示した測定力調節によれば、測定力調節部40の入力に対して、非線形の測定力を得ることが可能である。測定力調節部40の入力とは、Z軸方向におけるアーム32から弾性部材44の他端44Bまでの距離である。測定力調節部40の入力は、アーム32のZ軸方向の位置を原点とした場合の、Z軸方向における弾性部材44の他端44Bの位置としてもよい。
【0090】
図4は第一実施形態に係る測定力調節における測定力調節位置と測定力との関係を示したグラフである。図4の横軸は測定力調節位置である。測定力調節位置は、図3に示した、Z軸方向の上方向におけるアーム32の位置から弾性部材44の他端44Bの位置まで距離である。単位はミリメートルである。図4の縦軸は、図3に示した接触子34に付与される測定力である。測定力の単位はミリニュートンである。
【0091】
図4に示したグラフでは、測定力調節位置が12.0ミリメートルを境界として、測定力の傾きが変化している。測定力の傾きとは、測定力の値を測定力調節位置の値で除算した値である。換言すると、測定力の傾きは、測定力調節位置を単位長さ変化させた場合の測定力の変化量である。
【0092】
図4に示すように、測定力調節位置が12.0ミリメートル以下の場合は、測定力調節位置の単位長さの変化に対して、測定力の変化が相対的に小さい。測定力調節位置が12.0ミリメートル以下の範囲は、図2に示したように、紐状部材42が接触部54と非接触の状態である。
【0093】
測定力調節位置が12.0ミリメートルの場合は、紐状部材42が接触部54と接触する位置である。
【0094】
測定力調節位置が12.0ミリメートルを超える場合は、測定力調節位置の単位長さの変化に対して、測定力の変化が相対的に大きい。測定力調節位置が12.0ミリメートルを超える範囲は、図3に示したように、紐状部材42が接触部54と接触し、かつ、紐状部材42が接触部54と非接触の場合と比較して、X軸方向に対する弾性部材44の角度が大きくなる状態である。
【0095】
換言すると、測定力調節位置が12.0ミリメートルを超える範囲は、位置調節部46を用いた弾性部材44の他端44Bの変位に対して、弾性力のZ軸方向の成分の作用角度変化が急峻となる。これにより、弾性部材44の他端44Bの変位に対して、測定力の変化が急峻になる。
【0096】
測定力調節位置が12.0ミリメートル以下の範囲は、測定力が5.0ミリニュートン以下の低測定力の範囲である。低測定力の範囲は、測定力を細かく調節することが可能な範囲である、測定力の調節分解能が高分解能の範囲である。
【0097】
図5は比較例に係る測定力調節位置と測定力との関係を示したグラフである。図5は、図4に示した測定力調節位置が12.0ミリメートル以下の範囲における測定力の傾きが、測定力調節位置が12.0ミリメートルを超える範囲に適用される場合を示している。換言すると、図3に示した傾き調節部50を備えていない場合である。
【0098】
図5に示すように、測定力の調節分解能を高分解能化すると、測定力の上限値が制限される。図5に示した例では、測定力の最大値は11.0ミリニュートンである。図3に示した弾性部材44の弾性係数を変更すると、測定力の最大値を大きくすることが可能であるが、測定力調節位置の全領域にわたって、測定力の調節分解能が粗くなってしまう。
【0099】
これに対して、本実施形態に示した検出器17は、図4に示すように、検出器17の最大測定力は40ミリニュートンである。測定力調節位置が12.0ミリメートル以下の範囲の測定力の傾きに対して、測定力調節位置が12.0ミリメートルを超える範囲の測定力の傾きを大きくすることに起因して、測定力の上限値の制限を回避している。
【0100】
また、測定力調節位置が12.0ミリメートル以下の範囲では、測定力の調節分解能の高分解能を実現し、測定力の微調節を可能としている。
【0101】
[第一実施形態に係る測定力調節の作用効果]
第一実施形態に係る測定力調節によれば、接触子34に測定力を付与する測定力調節部40は、紐状部材42、及び弾性部材44、及び傾き調節部50を備える。紐状部材42の一端42Aをアーム32に取り付ける。紐状部材42の他端42Bと弾性部材44の一端44Aとを接続させる。弾性部材44の他端44Bの位置をZ軸方向に移動させる。
【0102】
紐状部材42が傾き調節部50の先端50Aの接触部54に非接触となる、弾性部材44の他端44Bの位置の範囲では、測定力の調節分解能が高分解能とされる。紐状部材42が傾き調節部50の先端50Aの接触部54に接触する、弾性部材44の他端44Bの位置の範囲では、測定力の傾きが大きくなり、高い最大測定力の実現が可能である。
【0103】
これにより、低測定力の範囲における調節分解能の高分解能、及び高い最大測定力の両立が可能である。
【0104】
図4、及び図5に示した測定力調節位置と測定力との関係は一例であり、弾性部材44の弾性係数、及び位置調節部46の調節可能範囲等の条件を変更して、測定力調節位置、及び最大測定力を変更可能である。
【0105】
また、接触部54のZ軸方向の位置を変更することに起因して、測定力調節位置の境界位置を変えることが可能である。更に、接触部54のZ軸方向の位置を変更することに起因して、X軸方向に対する弾性部材44の角度を変えることが可能である。
【0106】
接触部54のZ軸方向の位置を、アーム32と紐状部材42との接続位置32Dに近づけると、X軸方向に対する弾性部材44の角度は相対的に大きくなる。接触部54のZ軸方向の位置を、アーム32と紐状部材42との接続位置32Dから遠ざけると、X軸方向に対する弾性部材44の角度は相対的に小さくなる。
【0107】
アーム32を挟んでZ軸方向の両側に接触部54が配置される場合、アーム32の上側の接触部54の位置と、アーム32の下側の接触部54の位置とは、同一の位置でもよいし、異なる位置でもよい。
【0108】
第一実施形態では、X軸方向について、アーム32と紐状部材42の接続位置32Dの回転軸30と反対の側の位置に、接触部54、及び弾性部材44の他端44Bが配置される態様を例示した。
【0109】
X軸方向について、アーム32と紐状部材42の接続位置32Dの回転軸30の側の位置に、接触部54、及び弾性部材44の他端44Bが配置されてもよい。後述する第二実施形態も同様である。
【0110】
[第二実施形態に係る測定力調節の説明]
図6は第二実施形態に係る測定力調節の模式図である。図6に示した測定力調節部100は、傾き調節部102を備えている。傾き調節部102は、複数の接触部である、第一接触部104、及び第二接触部106を備えている。
【0111】
第一接触部104と第二接触部106とは、X軸方向の位置、及びZ軸方向の位置が異なる。第二接触部106のX軸方向の位置は、第一接触部104のX軸方向の位置よりも、アーム32と紐状部材110との接続位置32Dからの距離が離れた位置である。
【0112】
第二接触部106のZ軸方向の位置は、第一接触部104のZ軸方向の位置よりも、アーム32のZ軸方向の位置からの距離が離れた位置である。紐状部材110は、第一接触部104、及び第二接触部106の両者と接触可能な長さを有している。
【0113】
図6に符号44Cを付して図示した弾性部材は、紐状部材110が第一接触部104、及び第二接触部106と非接触の状態である。符号44Dを付して図示した弾性部材は、紐状部材110が第一接触部104と接触する状態であり、紐状部材110が第二接触部106と非接触の状態である。符号44Eを付して図示した弾性部材は、紐状部材110が第一接触部104、及び第二接触部106と接触する状態である。
【0114】
図6に図示した符号102Aは、傾き調節部102の先端を示している。符号102Bは、傾き調節部102の基端を示している。第一接触部104、及び第二接触部106は、第一方向の位置、及び第三方向の位置が異なる複数の接触部の一態様である。
【0115】
図7は第二実施形態に係る測定力調節における測定力調節位置と測定力との関係を示したグラフである。図7の横軸、及び縦軸は、図4、及び図5と同一である。図7に符号104Aを付した測定力調節位置は、図6に示した第一接触部104のZ軸方向の位置である。図7に符号106Aを付した測定力調節位置は、図6に示した第二接触部106のZ軸方向の位置である。
【0116】
図6に示した測定力調節部100は、図7に示すように、測定力の傾きが三段階に変更可能に構成されている。図7に符号120を付した測定力は、図6に示した紐状部材110が、第一接触部104、及び第二接触部106の両者に非接触となる測定力調節位置の範囲に対応している。本実施形態では、符号120を付した測定力は、低測定力と規定してもよい。
【0117】
図7に符号130を付した測定力は、図6に示した紐状部材110が、第一接触部104と接触し、かつ、第二接触部106に非接触となる測定力調節位置の範囲に対応している。本実施形態では、符号130を付した測定力は中測定力と規定してもよい。
【0118】
図7に符号140を付した測定力の測定力調節位置の範囲は、図6に示した紐状部材110が、第一接触部104、及び第二接触部106と接触する測定力調節位置の範囲である。本実施形態では、符号140を付した測定力は高測定力と規定してもよい。
【0119】
[第二実施形態に係る測定力調節の作用効果]
第二実施形態に係る測定力調節によれば、図6に示した測定力調節部100は、複数のX軸方向に対する弾性部材44の傾斜を用いて、測定力調節位置の変位に対する測定力の複数の相関を構成することが可能である。図6に示した例では、低測定力、中測定力、及び高測定力のそれぞれにおいて、適切な測定力調節の分解能を持つ特性を得ることが可能である。
【0120】
本実施形態では、傾き調節部が二つの接触部を備える態様を例示した。接触部は三つ以上でもよい。測定力の調整分解能、及び最大測定力に応じて、複数の接触部の位置は任意の位置を適用可能である。
【0121】
[第三実施形態に係る測定力調節の説明]
図8は第三実施形態に係る測定力調節の模式図である。第三実施形態では、第一実施形態、及び第二実施形態に示した接触部54を備えた傾き調節部50に代わり、接触部204を備えた傾き調節部202を備えている。
【0122】
図8に示した測定力調節部200は、傾き調節部202を備えている。傾き調節部202は、連続的な面として構成される接触部204を有している。接触部204は、測定力調節部200に必要とされる測定力調節位置に対する測定力の相関を得ることが可能な、任意の曲面を適用することが可能である。接触部204は、第一方向に沿う曲面であり、第三方向の変位を有する任意の形状を有する曲面を有する接触部の一態様である。
【0123】
図8に示した符号32Eは、アーム32と紐状部材210との接続位置を示している。符号202Aは、傾き調節部202の先端を示している。符号202Bは、傾き調節部202の基端を示している。
【0124】
符号44Fは、紐状部材210が接触部204の位置220と接触し、接触部204の位置221、及び接触部204の位置222と非接触の状態における弾性部材を示している。符号62Cは、接触部204の位置220における弾性力を示している。符号64Cは、弾性力62CのZ軸方向の成分である。
【0125】
符号44Gは、紐状部材210が接触部204の位置220、及び接触部204の位置221と接触し、接触部204の位置222と非接触の状態における弾性部材を示している。接触部204の位置221における弾性力、及び弾性力のZ軸方向の成分の図示は省略する。
【0126】
符号44Hは、紐状部材210が接触部204の位置220、接触部204の位置221、及び接触部204の位置222と接触する状態における弾性部材を示している。符号62Dは、接触部204の位置222における弾性力を示している。符号64Dは、弾性力62DのZ軸方向の成分である。
【0127】
図8には、弾性力の作用点が、アーム32と傾き調節部202との接続位置よりも、回転軸30の側の位置に配置される態様を例示した。かかる態様によれば、弾性力の作用点が、アーム32と傾き調節部202との接続位置よりも、Z軸方向検出センサ20の側の位置に配置される態様と比較して、アーム32に対して作用するトルクを減らすことが可能である。
【0128】
アーム32に対して作用するトルクは、回転軸30から弾性力の作用点までの距離に弾性力のZ軸方向成分を乗算して算出される。アーム32に対して作用するトルクを相対的に減らすことに起因して、測定力調整位置の変化に対してフラットな測定力を実現することが容易となる。測定力調整位置の変化に対してフラットな測定力の一例を、図9に符号240を付して図示する。
【0129】
なお、本実施形態においても、X軸方向における測定力調節部200の位置は、アーム32における傾き調節部202の接続位置よりも、Z軸方向検出センサ20の側の位置に配置されてもよい。
【0130】
図8に示した接触部204は、紐状部材210を案内する溝を備える態様が好ましい。かかる態様によれば、紐状部材210が接触部204から外れてしまうことが防止される。
【0131】
また、接触部204は、カムフォロア等の回転機構を備える態様が好ましい。かかる態様によれば、接触部204と紐状部材210との摩擦に起因する、接触部204、及び紐状部材210の磨耗を抑制しうる。これらの変形例は、上述した第一実施形態、及び第二実施形態に適用してもよい。
【0132】
図9は第三実施形態に係る測定力調節における測定力調節位置と測定力との関係を示したグラフである。図9に示したグラフの横軸、及び縦軸は、図4、及び図5に示したグラフと同様である。
【0133】
図9に符号220Aを付した測定力調節位置は、図8に示した接触部204の位置220のZ軸方向の位置である。図9に符号222Aを付した測定力調節位置は、図8に示した接触部204の位置222のZ軸方向の位置である。
【0134】
符号230を付した測定力は、図8に示した紐状部材210が、接触部204の位置220と接触するまでの測定力である。図9に符号240を付した測定力は、図8に示した紐状部材210が、接触部204の位置220と接触してから接触部204の位置222と接触するまでの測定力である。
【0135】
図9に符号250を付した測定力は、図8に示した紐状部材210が、接触部204の位置222と接触した後の測定力である。図8に示した接触部204の形状に対応して、図9に示すように、測定力の傾きを変更することが可能である。
【0136】
[第三実施形態に係る測定力調節の作用効果]
第三実施形態に係る測定力調節によれば、紐状部材210を接触させる接触部204を備えた傾き調節部202を備えることに起因して、測定力調整位置の変位に対して測定力の相関を得る、任意の曲面の形状が採用される。任意の相関に対して、曲面の形状、及び測定力調節位置を設定することが可能である。
【0137】
弾性力の作用点が、アーム32と紐状部材210との接続位置よりも回転軸30の側の位置とされる。弾性力の作用点が、アーム32と紐状部材210との接続位置よりもZ軸方向検出センサ20の側の位置の場合と比較して、アーム32に作用するトルクを減らすことができる。これにより、図9に符号240を付して図示した、測定力調整位置の変化に対してフラットな測定力を実現可能である。
【0138】
かかる態様は、予め測定力が決められている場合において、測定力の微調節を行う場合に有効である。
【0139】
本明細書では、表面性状測定機に適用される検出器を例示したが、本明細書に示した検出器は、粗さ測定機、輪郭測定機、及び真円度測定機などの表面測定機用検出器として適用可能である。
【0140】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0141】
10…表面形状測定機、17…検出器、20…Z軸方向検出センサ、30…回転軸、32…アーム、34…接触子、40,100,200…測定力調節部、42,110,210…紐状部材、44,44C,44D,44E,44F,44G,44H…弾性部材、46…位置調節部、50,102,202…傾き調節部、54,204…接触部、60…被測定物、104…第一接触部、106…第二接触部
【要約】
【課題】任意の調節範囲における高分解能の測定力の調節、及び高い最大測定力を得ることの両立を可能とする表面測定機用検出器を提供する。
【解決手段】 接触子(34)を先端に備えたアーム(32)、アームを回転可能に支持する回転軸(30)、アームにおける回転軸の接触子と反対の側の位置に、一端(42A)が接続される伝達部(42)と、伝達部の他端(42B)に、一端(44A)が接続され、接触子に付与される測定力を発生させる弾性部(44)、弾性部の他端(44B)に接続され、移動方向へ弾性部の他端の位置を移動させる位置調節部(46)、アームと接続され、伝達部と接触可能な位置に配置される接触部(54)を備えた傾き調節部(50)を備えている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9