(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2工程の後、前記シリコンウェーハに対して結晶性回復のための熱処理を行うことなく、前記シリコンウェーハをエピタキシャル成長装置に搬送して前記第3工程を行う請求項1または2に記載のエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
前記第2工程の後、前記第3工程の前に、前記シリコンウェーハに対して結晶性回復のための熱処理を行う請求項1または2に記載のエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
表層部に厚さ1〜10μmの酸素外方拡散層を備えたシリコンウェーハと、該シリコンウェーハの前記酸素外方拡散層側の表面に形成された、該シリコンウェーハ中に所定元素が固溶してなる改質層と、該改質層上のエピタキシャル層と、を有し、
前記改質層における、前記所定元素の濃度プロファイルの半値幅が100nm以下であり、
前記所定元素が炭素を含む2種以上の元素を含むことを特徴とするエピタキシャルシリコンウェーハ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1および特許文献2に記載された技術は、いずれもエピタキシャル層形成前にモノマーイオンをシリコンウェーハに注入するものである。しかしながら、本発明者らの検討によれば、モノマーイオン注入を施した半導体エピタキシャルウェーハではゲッタリング能力が不十分であり、より強力なゲッタリング能力が求められることがわかった。
【0010】
ここで、撮像素子(CCD、CIS)のデバイス動作に影響する要因の一つとして、Vth(しきい値電圧:Threshold Voltage)の変化が挙げられる。エピタキシャルシリコンウェーハのバルクの単結晶ウェーハ(シリコンウェーハ)中の酸素がエピタキシャル層に拡散すると、サーマルドナー(酸素ドナー)が発生してしまい、これがVthを変化させてしまう原因となる。そのため、エピタキシャル層への酸素の拡散を低減させたエピタキシャルシリコンウェーハの提供が求められている。
【0011】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、より高いゲッタリング能力を発揮することで金属汚染を抑制することができ、かつ、シリコンウェーハからエピタキシャル層への酸素拡散を低減できるエピタキシャルシリコンウェーハおよびその製造方法、並びに、このエピタキシャルシリコンウェーハから固体撮像素子を形成する固体撮像素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らの検討によれば、シリコンウェーハにクラスターイオンを照射することにより、モノマーイオンを注入する場合に比べて、以下の有利な点があることを知見した。すなわち、クラスターイオンを照射した場合、モノマーイオンと同等の加速電圧で照射しても、1原子または1分子あたりのエネルギーは、モノマーイオンの場合より小さくしてシリコンウェーハに衝突し、一度に複数の原子を照射できるため、照射した元素の深さ方向プロファイルのピーク濃度を高濃度とすることができ、ピーク位置をよりシリコンウェーハ表面に近い位置に位置させることができる。その結果エピタキシャルシリコンウェーハのゲッタリング能力が十分に得られることを知見した。また、シリコンウェーハに酸素外方拡散熱処理を施すことで、シリコンウェーハ中の酸素がエピタキシャル層に拡散する現象を抑制できることを知見した。
【0013】
すなわち、本発明のエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法は、シリコンウェーハに酸素外方拡散熱処理を施して、前記シリコンウェーハの表層部に酸素外方拡散層を形成する第1工程と、前記第1工程の後、前記シリコンウェーハにクラスターイオンを照射して、前記シリコンウェーハの前記酸素外方拡散層側の表面に、前記クラスターイオンの構成元素が固溶してなる改質層を形成する第2工程と、前記シリコンウェーハの改質層上にエピタキシャルシリコン層を形成する第3工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
ここで、前記第1工程を行う前の前記シリコンウェーハの酸素濃度が8×10
17〜18×10
17atoms/cm
3(ASTM F121−1979)とすることが好ましい。
【0015】
本発明では、前記第2工程の後、前記シリコンウェーハに対して結晶性回復のための熱処理を行うことなく、前記シリコンウェーハをエピタキシャル成長装置に搬送して前記第3工程を行うことができる。ただし、前記第2工程の後、前記第3工程の前に、前記シリコンウェーハに対して結晶性回復のための熱処理を行うことも好ましい。
【0016】
ここで、前記クラスターイオンが、構成元素として炭素を含むことが好ましく、構成元素として炭素を含む2種以上の元素を含むことがより好ましい。
【0017】
さらに、前記クラスターイオンの照射条件は、炭素1原子あたり加速電圧が50keV/atom以下、クラスターサイズが100個以下、炭素のドーズ量が1×10
16atoms/cm
2以下であることが好ましい。
【0018】
次に、本発明のエピタキシャルシリコンウェーハは、表層部に酸素外方拡散層を備えたシリコンウェーハと、該シリコンウェーハの前記酸素外方拡散層側の表面に形成された、該シリコンウェーハ中に所定元素が固溶してなる改質層と、該改質層上のエピタキシャル層と、を有し、前記改質層における、前記所定元素の濃度プロファイルの半値幅が100nm以下であることを特徴とする。
【0019】
また、前記シリコンウェーハの前記酸素外方拡散層側の表面からの深さが150nm以下の範囲内に、前記改質層における前記濃度プロファイルのピークが位置することが好ましい。
【0020】
さらに、前記改質層における前記濃度プロファイルのピーク濃度が、1×10
15atoms/cm
3以上であることが好ましい。
【0021】
ここで、前記所定元素が炭素を含むことが好ましく、炭素を含む2種以上の元素を含むことがより好ましい。
【0022】
そして、本発明の固体撮像素子の製造方法は、上記いずれか1つの製造方法で製造されたエピタキシャルシリコンウェーハまたは上記いずれか1つのエピタキシャルシリコンウェーハの、酸素外方拡散層側の表面に位置するエピタキシャルシリコン層に、固体撮像素子を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、酸素外方拡散熱処理を施して、シリコンウェーハの表層部に酸素外方拡散層を形成し、このシリコンウェーハにクラスターイオンを照射して、このシリコンウェーハの酸素外方拡散層側の表面に前記クラスターイオンの構成元素からなる改質層を形成したので、この改質層がより高いゲッタリング能力を発揮することで、金属汚染を抑制することができ、かつ、シリコンウェーハからエピタキシャル層への酸素拡散を低減できるエピタキシャルシリコンウェーハを得ることができ、また、このエピタキシャルシリコンウェーハから高品質の固体撮像素子を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、
図1では説明の便宜上、実際の厚さの割合とは異なり、シリコンウェーハ10に対してエピタキシャルシリコン層20の厚さを誇張して示す。
【0026】
(エピタキシャルシリコンウェーハの製造方法)
本発明の一実施形態によるエピタキシャルシリコンウェーハ100の製造方法を
図1に示す。まず、シリコンウェーハ10に酸素外方拡散熱処理を施して、シリコンウェーハ10の表層部に酸素外方拡散層11を形成する第1工程(
図1(A),(B))を行う。次に、このシリコンウェーハ10にクラスターイオン16を照射して、シリコンウェーハ10の酸素外方拡散層11側の表面10Aに、このクラスターイオン16の構成元素が固溶してなる改質層18を形成する第2工程(
図1(C),(D))を行う。その後、シリコンウェーハ10の改質層18上に、エピタキシャルシリコン層20を形成する第3工程(
図1(F))を行う。
図1(F)は、この製造方法の結果得られたエピタキシャルシリコンウェーハ100の模式断面図である。
【0027】
第1工程における酸素外方拡散熱処理は、任意の手法を用いることができ、シリコンウェーハ10表層部の酸素濃度を低減して酸素外方拡散層11を形成する熱処理であればよい。ここで、酸素外方拡散層11とは、熱処理によってシリコン中の格子間酸素が外方拡散され、シリコンウェーハ10の表層部に低酸素濃度層が形成され、酸素析出物などの微小欠陥の発生が抑えられた層である。すなわち、酸素外方拡散熱処理を行うことにより、シリコンウェーハ10の表層部の酸素が外方(シリコンウェーハ10の外部)に拡散され、シリコンウェーハ10中心部の酸素濃度よりも酸素濃度が低下した酸素外方拡散層11がシリコンウェーハ10の表層部に形成される。この酸素外方拡散層11は、低酸素濃度であるために、エピタキシャルシリコン層20への酸素拡散を抑制することができる。後述する第3工程でのエピタキシャル成長処理時の加熱によりシリコンウェーハ10中の酸素が外方拡散する領域深さに相当する厚さとなるまで、酸素外方拡散熱処理を施して酸素外方拡散層11を形成することが望ましく、概ね酸素外方拡散層11の厚さを1〜10μmの範囲内に調整するように熱処理すればよい。
【0028】
この酸素外方拡散熱処理は、例えば、縦型熱処理炉や横型熱処理炉を用いて、シリコンウェーハに対して、1000〜1250℃の温度範囲で1〜5時間の熱処理を施すことにより行うことができる。この場合、熱処理中のガス雰囲気としては、窒素含有ガス雰囲気、水素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気もしくは酸素ガス雰囲気、またはこれらの混合ガス雰囲気で行うことができる。この酸素外方拡散熱処理であれば、複数枚のシリコンウェーハを一度に処理できるため、生産性に優れる。
【0029】
また、上述の高温長時間の熱処理に替えて、急速昇降温熱処理(RTA:Rapid Thermal Anneal)により、酸素外方拡散熱処理を行うこともできる。ランプアニールとも呼ばれるこのRTA処理は、非常に短時間でシリコンウェーハ表層部の酸素を外方拡散(シリコンウェーハ外部に拡散)させて、酸素外方拡散層を形成することができる。RTA処理の条件としては、1000〜1300℃,10分以下であることが好ましい。1000℃よりも低い温度では、シリコンウェーハ表層部に十分な酸素外方拡散層を形成することが困難となる。1300℃超であると、熱処理時にシリコンウェーハにスリップ転位が発生してしまい、デバイス特性に支障をきたす恐れがある。熱処理中のガス雰囲気としては、窒素含有ガス雰囲気、水素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気もしくは酸素ガス雰囲気、またはこれらの混合ガス雰囲気で行うことができる。
【0030】
なお、上述の第1工程において、
図1(B)で形成される酸素外方拡散層は、表面10Aの反対側の面の表層部にも形成される場合があるが、表面10Aの反対側の酸素外方拡散層の記載を説明の便宜上省略し、酸素外方拡散層11側の表面10Aにクラスターイオン16を照射するものとする。また、酸素外方拡散熱処理によって、シリコンウェーハ10の両面の表層部に酸素外方拡散層が形成される場合は、少なくとも片面にクラスターイオン16を照射すればよく、また両面にクラスターイオン16を照射してもよい。
【0031】
ここで、一実施形態で使用するシリコンウェーハ10の酸素濃度は、8×10
17〜18×10
17atoms/cm
3(ASTM F121−1979)であることが好ましく、10×10
17〜16×10
17atoms/cm
3(ASTM F121−1979)であることがより好ましい。シリコンウェーハ10の酸素濃度が18×10
17atoms/cm
3超であると、酸素濃度が高すぎるために、酸素析出過多によりシリコンウェーハそのものの強度低下を招く。その結果、デバイス熱処理工程においてシリコンウェーハの反りやスリップの発生などの問題を生じる恐れがある。一方、シリコンウェーハ10の酸素濃度が8×10
17atoms/cm
3以上であれば、後述するクラスターイオン照射によるゲッタリング能力に加えて、BMDによるイントリンシックゲッタリング(IG)能力を備えることができる。
【0032】
酸素濃度が8×10
17〜18×10
17atoms/cm
3(ASTM F121−1979)であるシリコンウェーハ10は、一般的なCZ法(Czochralski法:チョクラルスキ法)を用いて得たシリコン単結晶インゴットをワイヤーソー等でスライスして作製することができる。一般的なCZ法により得られる低酸素単結晶シリコンインゴットの酸素濃度は3×10
17atoms/cm
3以上であり、この濃度範囲のシリコンウェーハを作製できる。酸素濃度の調整はシリコン単結晶インゴット育成時に設定するルツボ回転速度、チャンバー内の圧力やArガス流量などを調整することにより制御することができる。
【0033】
ここで、本発明の特徴的工程は、
図1(C)に示すクラスターイオンを照射する第2工程である。この工程を採用することの技術的意義を、作用効果とともに説明する。クラスターイオン16を照射した結果形成される改質層18は、クラスターイオン16の構成元素がシリコンウェーハの表面10Aの結晶の格子間位置または置換位置に固溶して局所的に存在する領域であり、ゲッタリングサイトとして働く。その理由は、以下のように推測される。すなわち、クラスターイオンの形態で照射された炭素やボロンなどの元素は、シリコン単結晶の置換位置・格子間位置に高密度で局在する。そして、シリコン単結晶の平衡濃度以上にまで炭素やボロンを固溶すると、重金属の固溶度(遷移金属の飽和溶解度)が極めて増加することが実験的に確認された。つまり、平衡濃度以上にまで固溶した炭素やボロンにより重金属の固溶度が増加し、これにより重金属に対する捕獲率が顕著に増加したものと考えられる。
【0034】
ここで、本発明ではクラスターイオン16を照射するため、モノマーイオンを注入する場合に比べて、より高いゲッタリング能力を得ることができ、さらに回復熱処理も省略することができる。そのため、より高いゲッタリング能力を有するエピタキシャルシリコンウェーハ100を製造することが可能となり、本製法により得られるエピタキシャルシリコンウェーハ100から製造した裏面照射型固体撮像素子は、従来に比べ白傷欠陥発生の抑制が期待できる。
【0035】
なお、本明細書において「クラスターイオン」とは、原子または分子が複数集合して塊となったクラスターに正電荷または負電荷を与え、イオン化したものを意味する。クラスターは、複数(通常2〜2000個程度)の原子または分子が互いに結合した塊状の集団である。
【0036】
本発明者らは、クラスターイオンを照射することにより、高いゲッタリング能力が得られる作用を以下のように考えている。
【0037】
シリコンウェーハに、例えば炭素のモノマーイオンを注入する場合、
図2(B)に示すように、モノマーイオンは、シリコンウェーハを構成するシリコン原子を弾き飛ばし、シリコンウェーハ中の所定深さ位置に注入される。注入深さは、注入イオンの構成元素の種類およびイオンの加速電圧に依存する。この場合、シリコンウェーハの深さ方向における炭素の濃度プロファイルは、比較的ブロードになり、注入された炭素の存在領域は概ね0.5〜1μm程度となる。複数種のイオンを同一エネルギーで同時照射した場合には、軽い元素ほど深く注入され、すなわち、それぞれの元素の質量に応じた異なる位置に注入されるため、注入元素の濃度プロファイルはよりブロードになる。
【0038】
さらに、モノマーイオンは一般的に150〜2000keV程度の加速電圧で注入するが、各イオンがそのエネルギーをもってシリコン原子と衝突するため、モノマーイオンが注入されたシリコンウェーハ表面部の結晶性が乱れ、その後にウェーハ表面上に成長させるエピタキシャル層の結晶性を乱す。また、加速電圧が大きいほど、結晶性が大きく乱れる。そのため、イオン注入後に乱れた結晶性を回復させるための熱処理(回復熱処理)を高温かつ長時間で行う必要がある。
【0039】
一方、シリコンウェーハに、例えば炭素とボロンからなるクラスターイオンを照射する場合、
図2(A)に示すように、クラスターイオン16は、シリコンウェーハに照射されるとそのエネルギーで瞬間的に1350〜1400℃程度の高温状態となり、シリコンが融解する。その後、シリコンは急速に冷却され、シリコンウェーハ中の表面10A近傍に炭素およびボロンが固溶する。すなわち、照射するイオンの構成元素が半導体ウェーハ表面の結晶の格子間位置または置換位置に固溶した層を意味する。シリコンウェーハの深さ方向における炭素およびホウ素の濃度プロファイルは、クラスターイオンの加速電圧およびクラスターサイズに依存するが、モノマーイオンの場合に比べてシャープになり、照射された炭素およびホウ素が局所的に存在する領域(すなわち、改質層)の厚みは概ね500nm以下の領域(例えば50〜400nm程度)となる。なお、クラスターイオンの形態で照射された元素は、エピタキシャル層20の形成過程で多少の熱拡散は起こる。このため、エピタキシャル層20形成後の炭素およびホウ素の濃度プロファイルは、これらの元素が局所的に存在するピークの両側に、ブロードな拡散領域が形成される。しかし、改質層の厚みは大きく変化しない(後述の
図4(A)参照)。その結果、炭素およびボロンの析出領域を局所的にかつ高濃度にすることができる。また、シリコンウェーハの表面10A近傍に改質層18が形成されるため、より近接ゲッタリングが可能となる。その結果、モノマーイオンを注入する場合よりも高いゲッタリング能力を得ることができ、さらに一度のクラスターイオン照射で十分高いゲッタリング能力を得ることができるものと考えられる。なお、クラスターイオンの形態であれば、複数種のイオンを同時に照射することができる。
【0040】
また、クラスターイオン16は一般的に10〜100keV/Cluster程度の加速電圧で照射するが、クラスターは複数の原子または分子の集合体であるため、1原子または1分子あたりのエネルギーを小さくして打ち込むことができるため、シリコンウェーハの結晶へ与えるダメージは小さい。さらに、上記のような注入メカニズムの相違にも起因して、クラスターイオン照射の方がモノマーイオン注入よりもシリコンウェーハ10の結晶性を乱さない。そのため、第2工程の後、シリコンウェーハ10に対して回復熱処理を行うことなく、シリコンウェーハ10をエピタキシャル成長装置に搬送して第3工程を行うことができる(
図1(E))。
【0041】
なお、改質層18は、重金属を固溶するだけでなく、酸素も捕獲することができ、エピタキシャルシリコン層20への酸素拡散を抑制することができる。そのため、改質層18の酸素拡散抑制効果により、撮像素子を形成した場合に、Vthの変動を抑制することもできる。
【0042】
クラスターイオン16は結合様式によって多種のクラスターが存在し、例えば以下の文献に記載されるような公知の方法で生成することができる。ガスクラスタービームの生成法として、(1)特開平9−41138号公報、(2)特開平4−354865号公報、イオンビームの生成法として、(1)荷電粒子ビーム工学:石川順三:ISBN978−4−339−00734−3:コロナ社、(2)電子・イオンビーム工学:電気学会:ISBN4−88686−217−9:オーム社、(3)クラスターイオンビーム基礎と応用:ISBN4−526−05765−7:日刊工業新聞社。また、一般的に、正電荷のクラスターイオンの発生にはニールセン型イオン源あるいはカウフマン型イオン源が用いられ、負電荷のクラスターイオンの発生には体積生成法を用いた大電流負イオン源が用いられる。
【0043】
以下で、クラスターイオンの照射条件について説明する。まず、照射する元素は特に限定されず、炭素、ボロン、リン、砒素などを挙げることができる。しかし、より高いゲッタリング能力を得る観点から、クラスターイオンが、構成元素として炭素を含むことが好ましい。格子位置の炭素原子は共有結合半径がシリコン単結晶と比較して小さいため、シリコン結晶格子の収縮場が形成されるため、格子間の不純物を引き付けるゲッタリング能力が高い。
【0044】
また、構成元素として炭素を含む2種以上の元素を含むことがより好ましい。析出元素の種類により効率的にゲッタリング可能な金属の種類が異なるため、2種以上の元素を固溶させることにより、より幅広い金属汚染に対応できるからである。例えば、炭素の場合、ニッケルを効率的にゲッタリングすることができ、ボロンの場合、銅、鉄を効率的にゲッタリングすることができる。
【0045】
イオン化させる化合物も特に限定されないが、イオン化が可能な炭素源化合物としては、エタン、メタン、二酸化炭素(CO
2)などを用いることができ、イオン化が可能なボロン源化合物としては、ジボラン、デカボラン(B
10H
14)などを用いることができる。例えば、ベンジルとデカボランを混合したガスを材料ガスとした場合、炭素、ボロンおよび水素が集合した水素化合物クラスターを生成することができる。また、シクロヘキサン(C
6H
12)を材料ガスとすれば、炭素および水素からなるクラスターイオンを生成することができる。炭素源化合物としては特に、プロパン、ジベンジル(C
14H
14)などより生成したクラスターC
nH
m(3≦n≦16,3≦m≦10を用いることが好ましい。小サイズのクラスターイオンビームを形成し易い為である。
【0046】
イオン化させる化合物としては、炭素およびドーパント元素(ボロン、リン、砒素、アンチモンなど)の両方を含む化合物とすることも好ましい。このような化合物をクラスターイオンとして照射すれば、1回の照射で炭素およびドーパント元素の両方を固溶させることができるからである。
【0047】
また、クラスターイオンの加速電圧およびクラスターサイズを制御することにより、改質層18における構成元素の深さ方向の濃度プロファイルのピークの位置を制御することができる。本明細書において「クラスターサイズ」とは、1つのクラスターを構成する原子または分子の個数を意味する。
【0048】
本実施形態の第2工程では、高いゲッタリング能力を得る観点から、シリコンウェーハ10の酸素外方拡散層側の表面10Aからの深さが150nm以下の範囲内に、改質層18における構成元素の深さ方向の濃度プロファイルのピークが位置するように、クラスターイオン16を照射する。なお、本明細書において、「構成元素の深さ方向の濃度プロファイル」は、構成元素が2種以上の元素を含む場合は、合計ではなく、それぞれ単独の元素についてのプロファイルを意味するものとする。
【0049】
ピーク位置を当該深さの範囲に設定するために必要な条件として、クラスターイオンとしてC
nH
m(3≦n≦16,3≦m≦10)を用いる場合、炭素1原子あたりの加速電圧は、0keV/atom超え50keV/atom以下とし、好ましくは、40keV/atom以下が望ましい。また、クラスターサイズは2〜100個、好ましくは60個以下、より好ましくは50個以下とする。
【0050】
なお、加速電圧の調整には、(1)静電加速、(2)高周波加速の2方法が一般的に用いられる。前者の方法としては、複数の電極を等間隔に並べ、それらの間に等しい電圧を印加して、軸方向に等加速電界を作る方法がある。後者の方法としては、イオンを直線状に走らせながら高周波を用いて加速する線形ライナック法がある。また、クラスターサイズの調整は、ノズルから噴出されるガスのガス圧力および真空容器の圧力、イオン化する際のフィラメントへ印加する電圧などを調整することにより行うことができる。なお、クラスターサイズは、四重極高周波電界による質量分析またはタイムオブフライト質量分析によりクラスター個数分布を求め、クラスター個数の平均値をとることにより求めることができる。
【0051】
また、クラスターイオンのドーズ量は、イオン照射時間を制御することにより調整することができる。本実施形態では、クラスターイオン16の炭素のドーズ量は1×10
13〜1×10
16atoms/cm
2とし、1×10
14〜5×10
15atoms/cm
2以下であることがより好ましい。1×10
13atoms/cm
2未満の場合、ゲッタリング能力を十分に得ることができない可能性があり、1×10
16atoms/cm
2超えの場合、エピタキシャル表面に大きなダメージを与えるおそれがあるからである。
【0052】
本発明によれば、既述のとおり、RTAやRTOなどの、エピタキシャル装置とは別個の急速昇降温熱処理装置などを用いて回復熱処理を行う必要がない。それは、以下に述べるエピタキシャルシリコン層20を形成するためのエピタキシャル装置内で、エピタキシャル成長に先立ち行われる水素ベーク処理によって、シリコンウェーハ10の結晶性を十分回復させることができるからである。水素ベーク処理の一般的な条件は、エピタキシャル成長装置内を水素雰囲気とし、600℃以上900℃以下の炉内温度でシリコンウェーハ10を炉内に投入し、1℃/秒以上15℃/秒以下の昇温レートで1100℃以上1200℃以下の温度範囲にまで昇温させ、その温度で30秒以上1分以下の間保持するものである。この水素ベーク処理は、本来はエピタキシャル層成長前の洗浄処理によりウェーハ表面に形成された自然酸化膜を除去するためのものであるが、上記条件の水素ベークによりシリコンウェーハ10の結晶性を十分回復させることができる。
【0053】
もちろん第2工程の後、第3工程の前に、エピタキシャル装置とは別個の熱処理装置を用いて回復熱処理を行ってもよい(
図1(E))。この回復熱処理は、900℃以上1200℃以下で10秒以上1時間以下行えばよい。ここで、熱処理温度を900℃以上1200℃以下とするのは、900℃未満では、結晶性の回復効果が得られにくいためであり、一方、1200℃を超えると、高温での熱処理に起因するスリップが発生し、また、装置への熱負荷が大きくなるためである。また、熱処理時間を10秒以上1時間以下とするのは、10秒未満では回復効果が得られにくいためであり、一方、1時間超えでは、生産性の低下を招き、装置への熱負荷が大きくなるためである。
【0054】
このような回復熱処理は、例えば、RTAやRTOなどの急速昇降温熱処理装置や、バッチ式熱処理装置(縦型熱処理装置、横型熱処理装置)を用いて行うことができる。前者は、ランプ照射加熱方式のため、装置構造的に長時間処理には適しておらず、15分以内の熱処理に適している。一方、後者は、所定温度までに温度上昇させるために時間がかかるものの、一度に多数枚のウェーハを同時に処理できる。また、抵抗加熱方式のため、長時間の熱処理が可能である。使用する熱処理装置は、クラスターイオン16の照射条件を考慮して適切なものを選択すればよい。
【0055】
本実施形態の第3工程において、改質層18上に形成するエピタキシャルシリコン層20は、一般的な条件により形成することができる。例えば、水素をキャリアガスとして、ジクロロシラン、トリクロロシランなどのソースガスをチャンバー内に導入し、使用するソースガスによっても成長温度は異なるが、概ね1000〜1200℃の温度範囲の温度でCVD法によりシリコンウェーハ10上にエピタキシャル成長させることができる。エピタキシャルシリコン層20は、厚さが1〜15μmの範囲内とすることが好ましい。1μm未満の場合、シリコンウェーハ10からのドーパントの外方拡散によりエピタキシャルシリコン層20の抵抗率が変化してしまう可能性があり、また、15μm超えの場合、固体撮像素子の分光感度特性に影響が生じるおそれがあるからである。エピタキシャルシリコン層20は裏面照射型固体撮像素子を製造するためのデバイス層となる。
【0056】
(エピタキシャルシリコンウェーハ)
次に、上記製造方法により得られるエピタキシャルシリコンウェーハ100について説明する。一実施形態によるエピタキシャルシリコンウェーハ100は、
図1(F)に示すように、表層部に酸素外方拡散層11を備えたシリコンウェーハ10と、このシリコンウェーハ10の酸素外方拡散層側の表面10Aに形成された、シリコンウェーハ10中に所定元素が固溶してなる改質層18と、改質層18上のエピタキシャルシリコン層20と、を有する。そして、改質層18における所定元素の深さ方向の濃度プロファイルの半値幅Wが100nm以下であることを特徴とする。
【0057】
すなわち、本発明の製造方法によれば、モノマーイオン注入に比べて、クラスターイオンを構成する元素の析出領域を局所的かつ高濃度にすることができるため、上記半値幅Wを100nm以下とすることが可能となった。下限としては10nmと設定することができる。なお、本明細書における「深さ方向の濃度プロファイル」は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)にて測定した深さ方向の濃度分布を意味する。また、「改質層における所定元素の深さ方向の濃度プロファイルの半値幅」は、測定精度を考慮して、エピタキシャル層の厚さが1μm超の場合は、エピタキシャル層を1μmに薄膜化した状態で、SIMSにて所定元素の濃度プロファイルを測定したときの半値幅とする。
【0058】
また、既述のとおり、エピタキシャルシリコンウェーハ100には、酸素外方拡散層11が存在するために、シリコンウェーハ10表層部の酸素濃度がシリコンウェーハ10中心部の酸素濃度に比べて低下している。さらに、エピタキシャルシリコンウェーハ100において、改質層18は重金属の捕獲に加えて、酸素を捕獲するため、エピタキシャルシリコン層20への酸素の拡散を抑制する。そのため、エピタキシャルシリコン層20中の酸素濃度を低下することができ、したがってエピタキシャルシリコン層20中におけるサーマルドナーの形成を低減することができる。このため、このエピタキシャルシリコンウェーハ100による固体撮像素子のVthの変動を抑制することができる。
【0059】
また、所定元素としては、シリコン以外の元素であれば特に限定されないが、炭素または炭素を含む2種以上の元素とすることが好ましいのは既述のとおりである。
【0060】
より高いゲッタリング能力を得る観点から、エピタキシャルシリコンウェーハ100は、シリコンウェーハ10の酸素外方拡散層側の表面10Aからの深さが150nm以下の範囲内に、改質層18における濃度プロファイルのピークが位置することが好ましい。また、濃度プロファイルのピーク濃度が、1×10
15〜1×10
22atoms/cm
3が好ましく、1×10
17〜1×10
21atoms/cm
3の範囲内がより好ましい。
【0061】
また、改質層18の深さ方向厚みは、概ね30〜400nmの範囲内とすることができる。
【0062】
本実施形態のエピタキシャルシリコンウェーハ100によれば、従来に比べ高いゲッタリング能力を発揮することで、金属汚染をより抑制することができ、かつ、シリコンウェーハからエピタキシャル層への酸素拡散を低減することができる。
【0063】
(固体撮像素子の製造方法)
本発明の実施形態による固体撮像素子の製造方法は、上記の製造方法で製造されたエピタキシャルシリコンウェーハまたは上記のエピタキシャルシリコンウェーハ、すなわちエピタキシャルシリコンウェーハ100の酸素外方拡散層側の表面10Aに位置するエピタキシャルシリコン層20に、固体撮像素子を形成することを特徴とする。この製造方法により得られる固体撮像素子は、従来に比べ製造工程の各処理中で発生する重金属汚染の影響を低減でき、従来に比べ白傷欠陥の発生の抑制が期待できる。また、この固体撮像素子は、エピタキシャルシリコン層20の酸素拡散が抑制されているため、Vthの変化を抑制することができる。
【0064】
以上、本発明の代表的な実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
(参考実験例)
まず、クラスターイオン照射とモノマーイオン注入の相違を明らかにするため、以下の実験を行った。
【0066】
(参考例1)
CZ単結晶シリコンインゴットから得た、酸素濃度が15×10
17atoms/cm
3(ASTM F121−1979)であるn型シリコンウェーハ(直径:300mm、厚さ:725μm、結晶方位:<100>、ドーパント:リン、ドーパント濃度:4×10
14atoms/cm
3)を用意した。次に、縦型熱処理装置(日立国際電気製)を使用して、アルゴンガス雰囲気下で、1200℃,1時間の条件で酸素外方拡散熱処理をシリコンウェーハに施して酸素外方拡散層(厚さ:10μm)を形成した。その後、クラスターイオン発生装置(日新イオン機器社製、型番:CLARIS)を用いて、ジベンジル(C
14H
14)より生成、イオン化させたC
5H
5クラスターイオンを、ドーズ量9.0×10
13Clusters/cm
2(炭素のドーズ量4.5×10
14atoms/cm
2)、炭素1原子あたりの加速電圧14.8keV/atomの条件で、シリコンウェーハに照射した。
【0067】
(参考例2)
参考例1と同じシリコンウェーハに対して、クラスターイオン照射に替えて、CO
2を材料ガスとして、炭素のモノマーイオンを生成し、ドーズ量9.0×10
13atoms/cm
2、加速電圧300keV/atomの条件とした以外は、参考例1と同じ条件で、シリコンウェーハに照射した。
【0068】
上記参考例1,2で作製したサンプルについて、SIMSにより測定を行い、
図3に示す炭素の濃度プロファイルを得た。なお、横軸の深さはシリコンウェーハの、イオン照射/注入した側の表面をゼロとしている。この
図3から明らかなように、クラスターイオン照射をした参考例1では、炭素濃度プロファイルがシャープであるが、モノマーイオン注入をした参考例2では、炭素濃度プロファイルがブロードである。また、参考例2に比べて参考例1では、炭素の濃度プロファイルのピーク濃度が高く、ピーク位置もよりシリコンウェーハ表面近傍に位置している。このことから、エピタキシャル層形成後も、炭素の濃度プロファイルの傾向は同様となることが推定される。
【0069】
(実施例1)
CZ単結晶シリコンインゴットから得た、酸素濃度が15×10
17atoms/cm
3(ASTM F121−1979)であるn型シリコンウェーハ(直径:300mm、厚さ:725μm、結晶方位:<100>、ドーパント:リン、ドーパント濃度:4×10
14atoms/cm
3)を用意した。次に、縦型熱処理装置(日立国際電気社製)を使用して、アルゴンガス雰囲気下で、1200℃,1時間の条件で酸素外方拡散熱処理をシリコンウェーハに施して酸素外方拡散層(厚さ:10μm)を形成した。さらに、クラスターイオン発生装置(日新イオン機器社製、型番:CLARIS)を用いて、表1に記載の条件で、シリコンウェーハに照射した。その後、シリコンウェーハをHF洗浄処理した後、枚葉式エピタキシャル成長装置(アプライドマテリアルズ社製)内に搬送し、装置内で1120℃の温度で30秒の水素ベーク処理を施した後、水素をキャリアガス、トリクロロシランをソースガス、ホスフィン(PH
3)をドーパントガスとして1150℃でCVD法により、シリコンウェーハ上にシリコンのエピタキシャル層(厚さ:6μm、ドーパント種類:リン、ドーパント濃度:1×10
15atoms/cm
3)をエピタキシャル成長させ、本発明に従うエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0070】
(実施例2)
シリコンウェーハへの酸素外方拡散熱処理を、縦型熱処理装置の使用に替えて、RTA装置(マトソンサーマルプロダクト社製)を使用し、表1の熱処理条件に変更した以外は、実施例1と同じ条件で、本発明に従うエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0071】
(比較例1,2)
シリコンウェーハへの酸素外方拡散熱処理条件を表1に記載のとおりとし、さらに、クラスターイオン照射に替えて、表1に記載の条件で、炭素のモノマーイオン注入とした以外は、実施例1と同じ条件で、比較例にかかるシリコンエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0072】
(比較例3)
酸素外方拡散熱処理を行わず、かつ、クラスターイオンの照射を行わなかった以外は、実施例1と同じ条件で、比較例にかかるエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0073】
【表1】
【0074】
(評価方法および評価結果)
(1)SIMS測定
代表例として、実施例1および比較例1で作製した各サンプルについてSIMS測定を行い、
図4(A),(B)に示す炭素の濃度プロファイルを得た。なお、横軸の深さはエピタキシャル層の表面をゼロとしている。さらに、実施例1,2および比較例1,2で作製した各サンプルについて、エピタキシャル層を1μmまで薄膜化した後にSIMS測定を行った。このとき得られた炭素の濃度プロファイルの半値幅、ピーク濃度、およびピーク位置(エピタキシャル層を除いたイオン照射/注入した側の表面からのピーク深さ)を表1に示す。
【0075】
(2)ゲッタリング能力評価
実施例1,2および比較例1,2で作製した各サンプルのエピタキシャルシリコンウェーハ表面を、Cu汚染液(1.0×10
12/cm
2)で、スピンコート汚染法を用いて故意に汚染し、引き続き900℃、30分の熱処理を施した。その後、SIMS測定を行った。代表例として、実施例1および比較例1についてのCu濃度プロファイルを、それぞれ炭素濃度プロファイルとともに示す(
図4(A),(B))。他の実施例および比較例については、ゲッタリング能力評価の結果を表1に示す。Cuの濃度プロファイルのピーク濃度を以下のようにそれぞれ分類して、評価基準とした。
◎:1×10
17atoms/cm
3以上
○:7.5×10
16atoms/cm
3以上〜1×10
17atoms/cm
3未満
△:7.5×10
16atoms/cm
3未満
【0076】
(3)酸素濃度測定
作製した実施例1,2および比較例3で作製した各サンプルについてSIMS測定を行い、
図5に示すエピタキシャル層における酸素濃度を得た。なお、横軸の深さはエピタキシャル層の表面をゼロとしている。
【0077】
(4)エピタキシャルシリコンウェーハのBMD評価
実施例1,2で作製した各サンプルのエピタキシャルウェーハついて、イントリンシックゲッタリング能力をそれぞれ評価した。具体的には、顕微鏡観察を行うためにBMDを顕在化させ、かつ、BMDの検出性を高めるために、まず、実施例1,2のエピタキシャルシリコンウェーハを800℃,4時間の熱処理を行った後、引き続き1000℃,16時間の熱処理を行う。その後、各エピタキシャルシリコンウェーハを劈開し、劈開断面を2μmエッチングするようにWrightエッチング溶液により選択エッチングを行った。その後、光学顕微鏡を用いて、基板であるシリコンウェーハ断面の酸素析出物密度を測定した。その結果、シリコンウェーハ内部に1×10
6個/cm
2以上のBMDが形成されていた。
【0078】
(評価結果の考察)
図4(A),(B)から、クラスターイオン照射により、実施例1では、モノマーイオン注入を施した比較例1と比べて、炭素が局所的かつ高濃度に固溶した改質層が形成されることがわかる。そして、表1に示すように、実施例1,2は、炭素の濃度プロファイルの半値幅がいずれも100nm以下であるために、Cuに対して、比較例1,2よりも優れたゲッタリング能力を発揮していることがわかる。
【0079】
また、
図5から、酸素外方拡散熱処理およびクラスターイオン照射の両方を行った実施例1,2は、それら両方を行っていない比較例3と比べて、エピタキシャル層への酸素拡散量が少ないことがわかった。
【0080】
また、実施例1,2で用いたシリコンウェーハ内部に1×10
6個/cm
2以上のBMDが形成されていたのは、シリコンウェーハの酸素濃度が高かったためであると考えられる。このBMD評価の結果から、実施例1,2のエピタキシャルシリコンウェーハには、十分なイントリンシックゲッタリング(IG)能があることがわかる。