(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判別手段は、前記サイズデータとして前記有用鉱含有粒子の外周長データおよび当該有用鉱含有粒子が含有する前記有用鉱の外周現出長データを用い、前記外周長データに対する前記外周現出長データの割合を求めて、前記単体鉱と前記露出鉱と前記包含鉱を判別する
ことを特徴とする請求項2記載のデータ処理装置。
請求項6記載のデータ処理方法により前記一覧表形式に纏めた前記分布状態に基づいて、前記鉱石試料と同成分の処理対象物に対して選鉱または製錬を行う際の処理条件を決定する処理条件決定ステップ
を備えることを特徴とする処理条件決定方法。
前記処理対象物に対して溶媒による浸出を行って前記処理対象物に含まれる目的鉱物の回収を行うのに先立ち、前記有用鉱が前記粒子外周面へ露出する程度が前記処理対象物の前記溶媒に対する前記有用鉱の浸出性を評価する指標として用いられる
ことを特徴とする請求項7記載の処理条件決定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の鉱物分析技術においては、以下に述べるような難点がある。
【0007】
例えば、貴金属製錬においては、製錬過程で青化浸出を経ることがある。さらに具体的には、金含有鉱石から金を回収する貴金属製錬においては、金含有鉱石に対して破砕・磨鉱を行った後に比重選鉱や浮遊選鉱等の選鉱を行って鉱石中の金成分を濃縮し、濃縮産物中の金をシアン溶液等の溶媒に浸出させ(青化浸出)、得られた浸出液から電解採取を利用して金を回収する(乾式製錬)、といったことが行われる。このように製錬過程で青化浸出を行う場合には、目的鉱物含有鉱石の鉱物性状として、目的鉱物の溶媒への浸出性を評価することが、製錬結果物の品位向上や実収率向上等を図る上では非常に重要となる。
ところが、特許文献1に開示された分析方法では、単体鉱と結合鉱を分割評価しているが、それだけでは目的鉱物の溶媒への浸出性を適切に評価することができない。つまり、目的鉱物の溶媒への浸出性を評価するためには、単に単体鉱と結合鉱を分けるだけでは足りず、目的鉱物が単体鉱として存在しているか、他の鉱物と結合している場合には目的鉱物の一部が鉱物粒子の外周面に露出しているか、鉱物粒子に完全に包含されているのか等を区別する情報と、そのサイズと含有量比等に関する情報とによって、鉱物粒子外周の表面状態を把握することが必要となる。
したがって、特許文献1に開示された分析方法では、鉱物粒子外周の表面状態の把握が困難であり目的鉱物の溶媒への浸出性の評価に適しているとは言えないことから、必ずしも製錬結果物の品位向上や実収率向上等が十分に図れないおそれがある。
【0008】
また、近年では非特許文献1に開示されたような自動鉱物分析装置が用いられることから、この自動鉱物分析装置による採取データを基に鉱物粒子外周の表面状態を把握して目的鉱物の溶媒への浸出性を評価し得るようにすることが望ましい。ところが、自動鉱物分析装置による採取データは、鉱物粒子外周の表面状態の把握を想定したものではないため、そのままでは直ちに目的鉱物の溶媒への浸出性を評価することができず、有益な評価結果を得るための何らかの適切なデータ処理を行うことが必要となる。
【0009】
そこで、本発明は、目的鉱物を含有する鉱石の鉱物性状として鉱物粒子外周の表面状態を把握することを可能にするデータ処理装置、データ処理プログラム、データ処理方法、処理条件決定方法および鉱物分析結果の出力データ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたものである。
本発明の第1の態様は、
鉱石試料を構成する各鉱物粒子について鉱物分析装置で得られた分析結果データを取得するデータ取得手段と、
前記分析結果データに基づき前記各鉱物粒子の中から有用鉱を含有する鉱物粒子を有用鉱含有粒子として抽出するとともに、前記有用鉱含有粒子が前記有用鉱のみからなる単体鉱であるか、前記有用鉱の一部が粒子外周面に露出してなる露出鉱であるか、または前記有用鉱が粒子外周面に全く露出しない包含鉱であるかを判別する判別手段と、
前記分析結果データに基づき少なくとも前記有用鉱含有粒子についての前記鉱石試料中におけるサイズ別の分布状態を前記単体鉱と前記露出鉱と前記包含鉱との別が識別可能な態様の一覧表形式に纏めるデータ編集手段と、
前記一覧表形式により前記分布状態についてのデータ出力を行うデータ出力手段と、
を備えることを特徴とするデータ処理装置である。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のデータ処理装置において、
前記データ取得手段は、前記分析結果データとして、少なくとも前記各鉱物粒子が含有する鉱物の種類に関する鉱物種データおよびサイズに関するサイズデータを取得し、
前記判別手段は、前記有用鉱含有粒子についての前記鉱物種データおよび前記サイズデータに基づき、当該サイズデータから前記有用鉱含有粒子にて前記有用鉱が占めるサイズの割合を求め、当該割合を所定閾値と比較することで、当該有用鉱含有粒子が前記単体鉱であるか前記露出鉱であるか前記包含鉱であるかを判別する
ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載のデータ処理装置において、
前記判別手段は、前記サイズデータとして前記有用鉱含有粒子の外周長データおよび当該有用鉱含有粒子が含有する前記有用鉱の外周現出長データを用い、前記外周長データに対する前記外周現出長データの割合を求めて、前記単体鉱と前記露出鉱と前記包含鉱を判別する
ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか1態様に記載のデータ処理装置において、
前記鉱物分析装置は、X線分析を利用した自動鉱物分析装置である
ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第5の態様は、
コンピュータを、
鉱石試料を構成する各鉱物粒子について鉱物分析装置で得られた分析結果データを取得するデータ取得手段、
前記鉱物種データに基づき前記各鉱物粒子の中から有用鉱を含有する鉱物粒子を有用鉱含有粒子として抽出するとともに、前記有用鉱含有粒子が前記有用鉱のみからなる単体鉱であるか、前記有用鉱の一部が粒子外周面に露出してなる露出鉱であるか、または前記有用鉱が粒子外周面に全く露出しない包含鉱であるかを判別する判別手段、
前記分析結果データに基づき少なくとも前記有用鉱含有粒子についての前記鉱石試料中におけるサイズ別の分布状態を前記単体鉱と前記露出鉱と前記包含鉱との別が識別可能な態様の一覧表形式に纏めるデータ編集手段、および、
前記一覧表形式により前記分布状態についてのデータ出力を行うデータ出力手段、
として機能させることを特徴とするデータ処理プログラムである。
【0015】
本発明の第6の態様は、
鉱石試料を構成する各鉱物粒子について鉱物分析装置で得られた分析結果データを取得するデータ取得ステップと、
前記分析結果データに基づき前記各鉱物粒子の中から有用鉱を含有する鉱物粒子を有用鉱含有粒子として抽出するとともに、前記有用鉱含有粒子が前記有用鉱のみからなる単体鉱であるか、前記有用鉱の一部が粒子外周面に露出してなる露出鉱であるか、または前記有用鉱が粒子外周面に全く露出しない包含鉱であるかを判別する判別ステップと、
前記分析結果データに基づき少なくとも前記有用鉱含有粒子についての前記鉱石試料中におけるサイズ別の分布状態を前記単体鉱と前記露出鉱と前記包含鉱との別が識別可能な態様の一覧表形式に纏めるデータ編集ステップと、
を備えることを特徴とするデータ処理方法である。
【0016】
本発明の第7の態様は、
第6の態様に記載のデータ処理方法により前記一覧表形式に纏めた前記分布状態に基づいて、前記鉱石試料と同成分の処理対象物に対して選鉱または製錬を行う際の処理条件を決定する処理条件決定ステップ
を備えることを特徴とする処理条件決定方法である。
【0017】
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載の処理条件決定方法において、
前記処理対象物に対して溶媒による浸出を行って前記処理対象物に含まれる目的鉱物の回収を行うのに先立ち、前記有用鉱が前記粒子外周面へ露出する程度が前記処理対象物の前記溶媒に対する前記有用鉱の浸出性を評価する指標として用いられる
ことを特徴とする。
【0018】
本発明の第9の態様は、
鉱石試料を構成する各鉱物粒子について鉱物分析装置で得られた分析結果データに基づき、前記各鉱物粒子が含有する有用鉱の前記鉱石試料中における分布状態についてデータ出力を行う際に用いられる鉱物分析結果の出力データ構造であって、
少なくとも前記有用鉱を含有する鉱物粒子として前記各鉱物粒子の中から抽出された有用鉱含有粒子について、当該有用鉱含有粒子が前記有用鉱のみからなる単体鉱であるか、前記有用鉱の一部が粒子外周面に露出してなる露出鉱であるか、または前記有用鉱が粒子外周面に全く露出しない包含鉱であるかを識別可能な態様で、前記分布状態がサイズ別の一覧表形式で表されてなる
ことを特徴とする鉱物分析結果の出力データ構造である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、目的鉱物を含有する鉱石の鉱物性状として鉱物粒子外周の表面状態を容易かつ適切に把握することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
ここでは、以下のような項分けをして説明を行う。
1.分析対象物
2.システム構成
2−1.自動鉱物分析装置
2−2.データ処理装置
3.データ処理方法の手順
4.鉱物分析結果の出力データ構造
4−1.出力データ構造の概要
4−2.出力データ構造の一具体例
4−3.出力データ構造の利用形態(処理条件決定方法)
5.本実施形態の効果
6.変形例等
【0022】
<1.分析対象物>
先ず、本実施形態における分析対象物について説明する。
本実施形態では、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、モリブデン等の非鉄金属または金、銀等の貴金属の製錬を行う場合において、目的の元素を含むとして採掘された鉱石または製錬の過程で得られる金属製錬中間物等の試料(以下、これらの試料を「鉱石試料」と総称する。)を、分析処理の対象物とする。
【0023】
鉱石試料は、鉱物粒子が集合して構成されている。さらに詳しくは、鉱石試料は、鉱物粒子が樹脂に包埋処理されて構成され、粗研磨、中間研磨、仕上げ研磨、最終研磨の各研磨工程を順に経た後、その平滑な研磨面が被分析面とされる。
【0024】
鉱石試料を構成する鉱物粒子には、一粒子が単一鉱物種で構成された鉱物粒子である単体鉱と、一粒子が複数鉱物種で構成された鉱物粒子である結合鉱(片刃鉱)とがある。
単体鉱と結合鉱のいずれにおいても、鉱物粒子を構成する鉱物種は、目的の元素を得るために有用である有用鉱と、目的の元素を得るためには不用な不用鉱とに分類することができる。非鉄金属製錬における有用鉱の例としては、黄銅鉱(Chalcopyrite:CuFeS
2)、輝銅鉱(Chalcocite:Cu
2S)、斑銅鉱(Bornite:Cu
5FeS
4)、輝水鉛(Molybdenite:MoS
2)等が挙げられる。また、貴金属製錬における有用鉱の例としては、自然金(Native gold:Au)、エレクトラム(Electrum:Au・Ag固溶体)等が挙げられる。不用鉱の例としては、黄鉄鉱(Pyrite:FeS
2)、脈石(Gangue)、珪酸塩鉱物、酸化鉱物等が挙げられる。さらに具体的には、例えば、金製錬を行う場合であれば、自然金が代表的な有用鉱となる。
このような有用鉱を含有する鉱物粒子を、以下の説明では「有用鉱含有粒子」と称す。つまり、鉱石試料を構成する鉱物粒子としては、有用鉱含有粒子とそれ以外の鉱物粒子が存在することになる。
【0025】
ここで、鉱物粒子とその鉱物粒子を構成する鉱物との関係について簡単に説明する。
図1は、鉱物粒子とそこに含まれる鉱物の関係を模式的に示す説明図である。なお、図例は、鉱物粒子が結合鉱である場合の一具体例を示している。
例えば、結合鉱については、複数種類の鉱物(グレイン)51,52,53,54によって一つの鉱物粒子(パーティクル)50が構成される。また、鉱物粒子50を構成する各鉱物51,52,53,54は、その一部が鉱物粒子50の外周面に露出している露出鉱51,52と、鉱物粒子50の外周面に全く露出せず完全に包含されている包含鉱53,54とに区別される。
なお、単体鉱については、一粒子が単一鉱物種で構成されることから、そこに含まれる鉱物(グレイン)がそのまま鉱物粒子(パーティクル)を構成することになる。
【0026】
以上に説明した鉱物粒子によって構成される鉱石試料については、各鉱物粒子に含まれる鉱物の種類を特定する定性分析(同定)や含有量を特定する定量分析等を行って、その鉱物性状がどのようなものであるかを把握することが必要である。なぜならば、各鉱物粒子の鉱物性状が選鉱または製錬によって得られる結果物の品位および実収率に大きな影響を及ぼすからである。具体的には、各鉱物粒子に含まれる鉱物種とその含有量が結果物の品位に大きな影響を及ぼし、各鉱物粒子の粒度および単位分離度(ある鉱物種全体に対する単体鉱の割合)が実収率(有用鉱物の精鉱への回収率)に大きな影響を及ぼす。
しかも、特に貴金属製錬においては、有用鉱含有粒子の鉱物性状として、鉱物粒子外周の表面状態を把握して目的鉱物の溶媒への浸出性を評価することが、製錬結果物の品位向上や実収率向上等を図る上では非常に重要となる。なぜならば、貴金属製錬においては、製錬過程で青化浸出を経ることが多いからである。
故に、本実施形態においては、鉱石試料を分析処理の対象物とし、その分析処理を行うことで当該鉱石試料を構成する各鉱物粒子の鉱物性状を把握可能にするのである。
【0027】
<2.システム構成>
次に、本実施形態において鉱石試料に対する分析処理を行う分析システムについて説明する。
図2は、本実施形態で用いる鉱物分析システムの概略構成例を示すブロック図である。
本実施形態で用いる鉱物分析システムは、自動鉱物分析装置1とデータ処理装置2とを備えており、これらが通信可能に接続されて構成されている。なお、このような鉱物分析システムにおいては、データ処理装置2が、本発明に係るデータ処理装置に相当し、本発明に係るデータ処理プログラムを実行し、本発明に係るデータ処理方法を使用し、本発明に係る処理条件決定方法を使用し、本発明に係る鉱物分析結果の出力データ構造によるデータ出力を行う。
【0028】
<2−1.自動鉱物分析装置>
自動鉱物分析装置1は、分析対象物となる鉱石試料に対して分析処理(定性分析および定量分析)を行って、その結果である分析結果データを出力するものである。具体的には、MLAやQEMSCANと呼ばれる、エネルギー分散型X線分析装置が付随した走査型電子顕微鏡による自動鉱物分析装置を用いる。
【0029】
自動鉱物分析装置1は、例えば以下に述べる手順で鉱石試料に対する分析処理を自動的に行う。先ず、自動鉱物分析装置1は、走査型電子顕微鏡により鉱石試料の被分析面の反射電子(BackScattered Electron:BSE)像を取得し、そのBSE像を画像解析することで鉱石試料を構成する各鉱物粒子の分離識別を行うとともに、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray Spectrometry:EDS)により各鉱物粒子からEDSスペクトルを取得する。そして、取得したEDSスペクトルを予めデータベースに登録されている鉱物種別のスペクトルパターンと対比させて、各鉱物粒子に含まれる鉱物種の同定を行う。さらには、BSE像を画像解析することで、各鉱物粒子のサイズや当該鉱物粒子に含まれる鉱物のサイズ等を定量的に特定する。その後、自動鉱物分析装置1は、このようにして得た鉱石試料に対する分析処理(定性分析および定量分析)の結果を、分析結果データとしてデータ処理装置2に対して出力する。
【0030】
自動鉱物分析装置1が出力する分析結果データは、各鉱物粒子のそれぞれに関する鉱物粒子単位のデータであるパーティクルデータと、当該鉱物粒子に含まれる鉱物に関する鉱物単位のデータであるグレインデータとから構成されている。
各グレインデータには、当該グレインデータによって特定される鉱物の種類、鉱物サイズ(例えば円相当径(粒子の投影面積と同じ面積の円の直径)の大きさ)、重量割合、鉱物粒子の外周に現出する部分のサイズ(例えば外周現出長)、同一粒子内における異種鉱物の結合割合等の各情報が含まれている。
各パーティクルデータには、当該パーティクルデータによって特定される鉱物粒子の粒子サイズ(例えば円相当径の大きさ)、当該鉱物粒子に含まれる各鉱物の粒子外周面への現出(露出)割合、当該鉱物粒子に含まれる各鉱物の重量割合等の各情報が含まれている。
つまり、グレインデータとパーティクルデータとから構成される分析結果データには、少なくとも各鉱物粒子が含有する鉱物の種類に関する鉱物種データと、重量、大きさ、長さ等の各サイズに関するサイズデータと、が含まれることになる。また、サイズデータについては、鉱物粒子のサイズおよび各鉱物そのもののサイズの他に、各鉱物の鉱物粒子外周への現出サイズ(例えば外周現出長)や現出(露出)割合等が含まれることになる。
【0031】
このような構成の分析結果データについては、ある一つの試料について自動鉱物分析装置1で分析を行うと数千から数万のグレインデータおよびパーティクルデータが得られるため、その試料の鉱物性状を容易かつ的確に把握可能にすべく適切なデータ処理を行うことが必要となる。
【0032】
<2−2.データ処理装置>
自動鉱物分析装置1と接続するデータ処理装置2は、自動鉱物分析装置1から出力される分析結果データを受け取って、その分析結果データに対するデータ処理を行うものである。具体的には、データ処理装置2としては、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard disk drive)、通信I/F(interface)部等を有する情報処理部10、ディスプレイ装置やプリンタ装置等の情報出力部20、キーボードやマウス等の情報入力部30といったハードウエア資源を組み合わせて構成されたコンピュータを用いる。
【0033】
また、データ処理装置2は、情報処理部10のCPUがHDDから所定プログラムを読み出して実行することで、当該情報処理部10がデータ取得手段11、判別手段12、データ編集手段13およびデータ出力手段14として機能するようになっている。
【0034】
データ取得手段11は、自動鉱物分析装置1から出力される分析結果データを受け取ることで、当該分析結果データを取得するものである。取得する分析結果データは、自動鉱物分析装置1での鉱物分析の結果、すなわち鉱石試料を構成する各鉱物粒子についての定性分析および定量分析の結果を特定するものであり、既に説明したようにグレインデータとパーティクルデータとから構成され、少なくとも各鉱物粒子が含有する鉱物の種類に関する鉱物種データおよびサイズに関するサイズデータが含まれている。なお、自動鉱物分析装置1からのデータ取得の具体的な態様(データフォーマットや通信形式等)は、予め定められたものであれば、特に限定されるものではない。
【0035】
判別手段12は、データ取得手段11で取得した分析結果データによって分析結果が特定される各鉱物粒子について、その中から鉱物種データに基づき有用鉱を含有する鉱物粒子を有用鉱含有粒子として抽出するものであり、さらには、抽出した有用鉱含有粒子が有用鉱のみからなる単体鉱であるか、有用鉱の一部が粒子外周面に露出してなる露出鉱であるか、または有用鉱が粒子外周面に全く露出しない包含鉱であるかを、鉱物種データおよびサイズデータに基づき所定関数を用いて判別するものである。判別手段12が用いる「所定関数」とは、鉱物種データおよびサイズデータについて定められた通りの処理を実行して結果を返す一連の命令群のことをいうが、その詳細については後述する「3.データ処理方法の手順」にて説明する。
【0036】
データ編集手段13は、データ取得手段11で取得した分析結果データに基づき、少なくとも有用鉱含有粒子についての鉱石試料中におけるサイズ(例えば円相当径の大きさ)別の分布状態を、単体鉱と露出鉱と包含鉱との区別が識別可能な態様の一覧表形式に纏めるものである。なお、データ編集手段13は、少なくとも有用鉱含有粒子について分布状態を纏めるものであればよく、したがって有用鉱含有粒子に加え有用鉱含有粒子以外の鉱物粒子について分布状態を纏めるものであってもよい。また、データ編集手段13が纏める「一覧表形式」とは、ある事柄についてその大要が一目でわかるようにした表形式のことをいい、より詳しくは鉱物粒子の鉱石試料中における分布状態(どのサイズのものがどの程度の量あるか)を一目でわかるようにしたものをいうが、その具体例については後述する「4.鉱物分析結果の出力データ構造」にて説明する。
【0037】
データ出力手段14は、データ編集手段13が纏めた一覧表形式の分布状態についてのデータ出力を行うものである。データ出力は、例えば一覧表形式で作成された画像データを情報出力部20へ送信することによって行うが、これに限定されるものではなく、他の例としてコンピュータ読み取り可能な記録媒体への書き込みによって行うことも考えられる。
【0038】
これらの各手段11〜14は、情報処理部10が所定プログラムを実行することによって実現される。換言すると、この所定プログラムは、コンピュータとしてのハードウエア資源を備えるデータ処理装置2を各手段11〜14として機能させるものであり、本発明に係るデータ処理プログラムの一実施形態に相当するものである。
このようなデータ処理プログラムについては、データ処理装置2の情報処理部10にインストールされて用いられることになる。その場合に、データ処理プログラムは、情報処理部10へのインストールに先立ち、データ処理装置2で読み取り可能な記録媒体に格納されて提供されるものであってもよいし、あるいはデータ処理装置2と接続する通信回線を通じて当該データ処理装置2へ提供されるものであってもよい。
なお、各手段11〜14としての機能を実現させるデータ処理プログラムは、その全てが専用に開発されたものであってもよいが、関係データベース管理システムや表計算ソフトウエア等の一般的な汎用ソフトウエアプログラムを少なくとも一部に活用して構築したものであると、ユーザビリティ向上や開発コスト抑制等の点で好ましい。
【0039】
<3.データ処理方法の手順>
次に、以上のように構成された分析システムを用いて行う分析処理について、特にデータ処理装置2が実行するデータ処理方法の手順に着目しつつ、詳しく説明する。なお、以下の説明では、金製錬を行う場合において、鉱石試料をMLAと呼ばれる自動鉱物分析装置1で分析し、その分析結果である分析結果データに対して、データ処理装置2が行う場合を例に挙げる。
図3は、本実施形態で分析結果データに対して行うデータ処理の手順を例示するフローチャートである。
【0040】
データ処理装置2は、自動鉱物分析装置1から出力される分析結果データをデータ取得手段11で取得すると(ステップ101、以下ステップを「S」と略す。)、その分析結果データに対するデータ処理を開始する。データ処理の開始にあたり、先ず、データ取得手段11は、取得した分析結果データを、例えば米国マイクロソフト社の「MICROSOFT ACCESS(登録商標)」のような関係データベース管理システム(Relational DataBase Management System:RDBMS)で処理可能なデータ形式となるように、データエクスポートする(S102)。そして、データ取得手段11は、取得した分析結果データに含まれるパーティクルデータとグレインデータとについて、関連付けられるもの同士の結合を行う(S103)。具体的には、パーティクルデータID等の識別情報を利用して、ある鉱物粒子のパーティクルデータと、当該鉱物粒子が含有する各鉱物のグレインデータとを、互いに関連付ける。さらに、データ取得手段11は、パーティクルデータとグレインデータとを結合した後の分析結果データについて、例えば米国マイクロソフト社の「MICROSOFT EXCEL(登録商標)」のような表計算ソフトウエアで処理可能なデータ形式となるように、データエクスポートを行う(S104)。これにより、分析結果データを構成する各データ要素(データ値等)については、必要に応じて演算処理を行ったり表形式に纏めたりすることが可能となる。
【0041】
その後、データ処理装置2では、データエクスポート後の分析結果データを用いて、判別手段12が単体鉱と露出鉱と包含鉱の判別を行う。そのために、判別手段12は、先ず、例えば表計算ソフトウエアのフィルタリング機能を用いて、データエクスポート後の分析結果データから、ある一つのグレインデータを、注目グレインについてのグレインデータとして抽出する(S105)。
【0042】
ここで、注目グレインのグレインデータの一具体例について、簡単に説明する。
図4は、本実施形態における注目グレインについてのグレインデータの一具体例を示す説明図である。
図例のように、注目グレインのグレインデータは、グレインの識別情報である「Grain ID」、グレインの鉱物種である「Group Name」、鉱石試料中におけるグレインの重量割合(すなわち定量分析値)である「Wt%」、グレインの円相当径である「Grain EC Diameter(micron)」、パーティクルの外周長に対するグレインの外周現出長の割合である「Free Surface%」、そのグレインを含有するパーティクルの識別情報である「Particle ID」、および、そのパーティクルの円相当径である「Particle EC Diameter(micron)」から構成されている。
つまり、注目グレインのグレインデータは、少なくともグレインの鉱物種データである「Group Name」と、グレインのサイズデータである「Wt%」、「Grain EC Diameter(micron)」および「Free Surface%」とを含んで構成されている。
【0043】
このような構成のグレインデータを抽出すると、判別手段12は、
図3に示すように、先ず、そのグレインデータの「Group Name」を基に、そのグレインデータによって特定されるグレイン(鉱物)が有用鉱であるか否かを判断する(S106)。この判断は、グレインデータの「Group Name」で特定される鉱物種が有用鉱に該当するか否かによって行えばよい。例えば、金製錬の場合であれば、「金(Gold)」が有用鉱となる。なお、どの鉱物種が有用鉱に該当するかについては、予め設定されていれば、適宜設定したものであっても構わない。したがって、金製錬の場合に上記以外の鉱物を有用鉱と判断することもあり得る。
【0044】
この判断の結果、注目グレインが有用鉱に該当しない場合は、次に処理すべき未処理の注目グレインがあるか否かを判断するまで(S114)、以下に説明する各処理ステップをパスする。
【0045】
注目グレインが有用鉱に該当すれば、判別手段12は、続いて、そのグレインデータによって特定されるグレイン(鉱物)を含有するパーティクル(鉱物粒子)について、予め設定されている所定関数を用い、単体鉱であるか露出鉱であるか包含鉱であるかの判別を行う。詳しくは、判別手段12は、所定関数による一連の命令群に従いつつ、主としてグレインのサイズデータに基づき、パーティクルに対するそのグレインの占めるサイズ割合を所定閾値と比較することで、単体鉱であるか露出鉱であるか包含鉱であるかの判別を行う。
【0046】
さらに具体的には、判別手段12は、注目グレインのグレインデータの「Free Surface%」を基に、パーティクルの外周長に対して、そのグレインデータによって特定されるグレイン(鉱物)のパーティクル外周に現出する長さがどのくらいの割合であるかを認識した上で、その割合を予め設定されている所定閾値の上限値(以下、単に「上限閾値」という。)および下限値(以下、単に「下限閾値」という。)と比較し、その割合が上限閾値以上であるか、上限閾値より小さく下限閾値より大きい範囲内にあるか、または下限閾値以下であるかを判断する(S107)。上限閾値は例えば「100%」と、下限閾値は例えば「0%」と、それぞれを設定することが考えられるが、必ずしもこれに限定されることはなく、データ処理の目的や分析対象となった鉱石試料等に応じて適宜設定されたものであれば構わない。
【0047】
この判断の結果、パーティクルの外周長に対するグレインの外周現出長の割合が上限閾値以上であれば(具体的には、「割合値=100%」)、そのグレインによってパーティクルの外周表面の全体が占められているか、またはそれと同等に扱えるとみなし、判別手段12は、注目グレインを含むパーティクルが当該注目グレインのみからなる単体鉱であると判別する(S108)。
【0048】
また、パーティクルの外周長に対するグレインの外周現出長の割合が上限閾値より小さく下限閾値より大きい範囲内にあれば(具体的には、「0%<割合値<100%」)、パーティクルの外周表面の全部ではなく一部のみがそのグレインによって占められていることになるので、判別手段12は、注目グレインを含むパーティクルが当該注目グレインと他グレインとが結合してなるとともに、当該注目グレインの一部がパーティクル外周面に露出してなる露出鉱であると判別する(S109)。
【0049】
また、パーティクルの外周長に対するグレインの外周現出長の割合が下限閾値以下であれば(具体的には、「割合値=0%」)、そのグレインがパーティクルの外周表面に全く現れていないか、またはそれと同等に扱えると考えられることから、判別手段12は、注目グレインを含むパーティクルが当該注目グレインと他グレインとが結合してなるとともに、当該注目グレインがパーティクル外周面に全く露出しない包含鉱であると判別する(S110)。
【0050】
ところで、露出鉱と包含鉱とは、いずれも注目グレインと他グレインとが結合してなるものであるが、その結合相手である他グレインが複数の鉱物種に及ぶ場合もあり得る。そのような場合には、複数種の結合相手鉱を含むパーティクルを一つの露出鉱または包含鉱として取り扱うよりも、当該結合相手鉱の種類別の複数の露出鉱または包含鉱が集まったものとして取り扱ったほうが、その後に選鉱や製錬等を行う上では有効なことがある。
このことから、判別手段12は、注目グレインを含むパーティクルが露出鉱または包含鉱であると判別した場合には、そのパーティクルにおける結合相手鉱が複数種に及ぶか否かを判断し(S111)、複数種に及ぶと判断したら後述するような結合相手鉱の分配処理を行う(S112)。なお、結合相手鉱が複数種に及ぶか否かの判断は、注目グレインのグレインデータの「Particle ID」と、その注目グレインと同一パーティクル中に存在する相手鉱物のグレインデータの「Group Name」と、に基づいて行えばよい。
【0051】
露出鉱または包含鉱の分配処理(S112)は、結合相手鉱のサイズデータに基づき、パーティクル中で各種の結合相手鉱が占めるサイズ割合に応じて行うことが考えられる。
ここで、
図4に示した注目グレインを含むパーティクルを例に挙げて、結合相手鉱のサイズ割合に応じた分配処理について詳しく説明する。かかるパーティクルは、パーティクル径が「46.1μm」であり、注目グレインである金粒のグレイン径が「4.7μm」であり、さらにその金粒の「Free Surface%」が「4.1%」であり100%より小さく0%より大きい範囲内にあることから、判別手段12によって露出鉱と判別されるものである。
図5は、本実施形態における露出鉱の分配処理の一具体例を示す説明図である。
露出鉱の分配処理にあたり、判別手段12は、先ず、注目グレインを含むパーティクルにおける全てのグレインについて、それぞれのサイズデータとして「Free Surface%」を抽出する。図例は、注目グレインである金(Gold)の他に、その結合相手鉱の一つである硫砒鉄鉱(arsenopyrite)の「Free Surface%」が「6.7%」、結合相手鉱の他の一つである硫化鉱物(Sulphides)の「Free Surface%」が「11.3%」、結合相手鉱のさらに他の一つである脈石(Gangue)の「Free Surface%」が「77.8%」であった場合を示している。
このように、各種の結合相手鉱について「Free Surface%」を全て抽出したら、判別手段12は、続いて、それぞれの間のサイズ割合を算出する。つまり、判別手段12は、パーティクルにおけるサイズ割合を、結合相手鉱のみの間のサイズ割合(分配率)に変換するのである。図例では、結合相手鉱として硫砒鉄鉱(arsenopyrite)、硫化鉱物(Sulphides)および脈石(Gangue)が存在することから、硫砒鉄鉱(arsenopyrite)について「6.7/(6.7+11.3+77.8)=0.07」、硫化鉱物(Sulphides)について「11.3/(6.7+11.3+77.8)=0.12」、脈石(Gangue)について「77.8/(6.7+11.3+77.8)=0.81」という分配率を算出した場合を示している。
このようにして分配率を求めたら、判別手段12は、その後、分配処理の対象となった露出鉱について、求めた分配率に応じて分配したものとして取り扱う。具体的には、図例の場合であれば、注目グレインである金粒(Gold)を含み、その「Free Surface%」の値から露出鉱であると判別されたパーティクルについて、この露出鉱のうち、7.0%分を金粒(Gold)と硫砒鉄鉱(arsenopyrite)とが結合した露出鉱、12.0%分を金粒(Gold)と硫化鉱物(Sulphides)とが結合した露出鉱、81.0%分を金粒(Gold)と脈石(Gangue)とが結合した露出鉱として、以降のデータ処理を行う。
【0052】
以上のような一連の処理を指示する命令群である所定関数を用いつつ、判別手段12は、注目グレインを含むパーティクルが単体鉱であるか露出鉱であるか包含鉱であるかの判別を行うのである。
【0053】
判別手段12が単体鉱と露出鉱と包含鉱の判別を行うと、その後、データ処理装置2では、
図3に示すように、データ編集手段13が粒子サイズの抽出・記録処理を行う(S113)。この粒子サイズの抽出・記録処理は、少なくとも有用鉱含有粒子についての鉱石試料中におけるサイズ別の分布状態を単体鉱と露出鉱と包含鉱との別が識別可能な態様の一覧表形式に纏めるために、データ編集手段13が行うものである。具体的には、データ編集手段13は、判別手段12による単体鉱と露出鉱と包含鉱の判別結果を踏まえつつ、その判別がされたパーティクルおよびその含まれる各グレインについて「Particle EC Diameter(micron)」、「Wt%」、「Grain EC Diameter(micron)」等の各サイズデータを抽出し、その抽出結果を予め設定された一覧表形式フォーマットのデータテーブルの該当箇所に記録(プロット)していく。なお、ここでいう「一覧表形式」は、データ編集手段13が纏める「一覧表形式」と同義であり、その具体例については後述する「4.鉱物分析結果の出力データ構造」にて説明する。
【0054】
そして、データ処理装置2では、判別手段12およびデータ編集手段13が以上のような注目グレインに対する一連の処理(S105〜S113)を、分析結果データ中に未処理のグレインが存在しなくなるまで(S114)繰り返し行う。未処理のグレインがなくなれば、自動鉱物分析装置1から取得した分析結果データに関しては、少なくとも有用鉱含有粒子についての鉱石試料中におけるサイズ別の分布状態を単体鉱と露出鉱と包含鉱との別が識別可能な態様の一覧表形式に纏めるためのデータ処理が完了したことになる。
【0055】
その後、データ処理装置2では、データ編集手段13が纏めた一覧表形式の分布状態についてのデータ出力をデータ出力手段14が行う(S115)。このデータ出力結果を参照することで、データ処理装置2の利用者は、少なくとも有用鉱含有粒子について、単体鉱と露出鉱と包含鉱との別を識別しつつ、鉱石試料中におけるサイズ別の分布状態を容易に把握できるようになる。
【0056】
<4.鉱物分析結果の出力データ構造>
次に、以上のような手順のデータ処理方法を経て出力される一覧表形式の出力結果、すなわちデータ処理装置2が出力する鉱物分析結果の出力データ構造について説明する。
【0057】
<4−1.出力データ構造の概要>
鉱物分析結果の出力データ構造は、自動鉱物分析装置1による鉱石試料の定性分析および定量分析の結果をデータ出力するためのものであり、さらに詳しくは鉱石試料を構成する各鉱物粒子が含有する鉱物の当該鉱石試料中における分布状態をデータ出力する際に用いられるものである。ここでいう「分布状態」とは、どの種類の鉱物がどの程度の重量割合で鉱石試料中に存在しているかを示す状態のことであり、より具体的には各鉱物粒子が含有する鉱物の鉱物種と重量割合との関係のことである。
ただし、本実施形態においては、データ出力を利用者にとって把握容易な形で行うべく、各鉱物粒子が含有する鉱物の鉱石試料中における分布状態を鉱物粒子のサイズ(例えば粒子径の大きさ)別の一覧表形式に表して出力するとともに、少なくとも有用鉱含有粒子について当該有用鉱含有粒子が単体鉱であるか露出鉱であるか包含鉱であるかを識別可能な態様の一覧表形式に表して出力する。この一覧表形式における単体鉱と露出鉱と包含鉱との別は、既に説明したように、所定関数を用いて判別された結果に相当するものである。
【0058】
図6は、本実施形態における鉱物分析結果の出力データ構造のフォーマットの一例を示す説明図である。
図例のように、本実施形態における鉱物分析結果の出力データ構造は、一覧表形式の各行(縦方向)が鉱物粒子のサイズ(例えば粒子径の大きさ[単位:μm])別に分類されており、当該一覧表形式の列方向(横方向)が鉱物粒子の状態別に分類されてなる、二次元マトリクス状テーブル構造に形成されている。さらに詳しくは、列方向(横方向)については、鉱物粒子の状態として、当該鉱物粒子が「単体鉱」であるか、他グレインと結合した「結合鉱」であるかによって分類されている。そして、「結合鉱」については、。その結合相手鉱の鉱物種別(例えば「硫砒鉄鉱」、「黄銅鉱」、「黄鉄鉱」、「その他硫化鉱物」、「脈石」の別)に、それぞれ「露出鉱」と「包含鉱」との別が分類されている。つまり、一覧表形式の列方向(横方向)は、「単体鉱」と「露出鉱」と「包含鉱」との別が識別可能となるように分類されているのである。
【0059】
このような一覧表形式に形成された出力データ構造において、行方向および列方向の各項目によって特定される欄(フィールド)には、その欄に該当する鉱物(グレイン)の重量割合(すなわち定量分析値)である「Wt%」の値が集計された形で記録(プロット)される。
【0060】
具体的には、例えば「3.データ処理方法の手順」で説明したS107の判断ステップで単体鉱と判断されたグレインであれば、
図6に示すフォーマットの出力データ構造において、そのグレインの粒子径が該当する行と「単体鉱」の列が交差する欄に、そのグレインの重量割合が加算されて記録される
また、例えばS107の判断ステップで露出鉱と判断され、かつ、S111の判断ステップで結合相手鉱が1種類であると判断されたグレインであれば、
図6に示すフォーマットの出力データ構造において、そのグレインの粒子径が該当する行と「相手鉱−露出」の列が交差する欄に、そのグレインの重量割合が加算されて記録される。
また、例えばS107の判断ステップで露出鉱と判断され、かつ、S111の判断ステップで結合相手鉱が複数種類であると判断されたグレインであれば、
図6に示すフォーマットの出力データ構造において、そのグレインの重量割合とS112の分配処理ステップで求めた結合相手鉱物別の分配率との積が、そのグレインの粒子径が該当する行とそれぞれの結合相手鉱の「露出」の列が交差する欄に、加算されて記録される。
また、例えばS107の判断ステップで包含鉱と判断され、かつ、S111の判断ステップで結合相手鉱が1種類であると判断されたグレインであれば、
図6に示すフォーマットの出力データ構造において、そのグレインの粒子径が該当する行と「相手鉱−包含」の列が交差する欄に、そのグレインの重量割合が加算されて記録される。
また、例えばS107の判断ステップで包含鉱と判断され、かつ、S111の判断ステップで結合相手鉱が複数種類であると判断されたグレインであれば、
図6に示すフォーマットの出力データ構造において、そのグレインの重量割合とS112の分配処理ステップで求めた結合相手鉱物別の分配率との積が、そのグレインの粒子径が該当する行とそれぞれの結合相手鉱の「包含」の列が交差する欄に、加算されて記録される。
【0061】
図7は、本実施形態における鉱物分析結果の出力データ構造のフォーマットの他の例を示す説明図である。
図例の鉱物分析結果の出力データ構造は、上述した出力データ構造(例えば
図6参照)に対して必要に応じて付随するものであり、「露出鉱」と判別された有用鉱含有粒子の一種類について、その露出鉱が含有する有用鉱の分布状態を纏めてデータ出力する際に用いられるものである。なお、ここでいう「分布状態」は、上述した出力データ構造の場合とは異なり、露出鉱中における有効鉱の分布状態である。また、ここでは「露出鉱」について分布状態を纏めた例を挙げているが、露出鉱と同様に他グレインが結合してなる「包含鉱」についても、付随出力するデータ構造を全く同様に構成することが考えられる。
図例は、「金粒(Gold)」と「脈石(Gangue)」とが結合してなる露出鉱において、その露出鉱中にどのサイズの「金粒(Gold)」がどの程度の重量割合で存在しているかを示すためのものである。より具体的には、図例の鉱物分析結果の出力データ構造は、一覧表形式の各行(縦方向)が露出鉱(パーティクル)のサイズ(例えば粒子径の大きさ[単位:μm])別に分類されており、当該一覧表形式の列方向(横方向)が有用鉱のサイズ(例えば鉱物径の大きさ[単位:μm])別に分類されてなる、二次元マトリクス状テーブル構造に形成されている。
【0062】
このような一覧表形式に形成された出力データ構造において、行方向および列方向の各項目によって特定される欄(フィールド)には、その欄に該当する有用鉱(グレイン)の重量割合(すなわち定量分析値)である「Wt%」の値が集計された形で記録(プロット)される。
【0063】
具体的には、例えば「金粒(Gold)」と「脈石(Gangue)」のみで構成された露出鉱であれば、
図7に示すフォーマットの出力データ構造において、金粒サイズの列と粒子サイズの行が交差する欄に、金粒の重量割合が加算されて記録される。
また、例えば「金粒(Gold)」と「脈石(Gangue)」、さらにはその他の鉱物を含んで構成された露出鉱であれば、
図7に示すフォーマットの出力データ構造において、金粒サイズの列と粒子サイズの行が交差する欄に、金粒の重量割合と「3.データ処理方法の手順」で説明したS112の分配処理ステップで求めた分配率との積が加算されて記録される。
【0064】
なお、
図6および
図7を用いて説明した鉱物分析結果の出力データ構造は、いずれも本実施形態におけるフォーマット例に過ぎず、データ処理装置2が出力する鉱物分析結果の出力データ構造がこれに限定されるものではない。つまり、データ処理装置2が出力する鉱物分析結果の出力データ構造は、少なくとも有用鉱含有粒子について、当該有用鉱含有粒子が単体鉱であるか露出鉱であるか包含鉱であるかを識別可能な態様で、当該有用鉱含有粒子の鉱石試料中における分布状態をサイズ別の一覧表形式で表してなるものであればよく、例えば
図6または
図7のフォーマット例に対して、行方向と列方向とを入れ替えたものや、行方向または列方向における結合相手鉱物種やサイズ等の項目が増減されたもの等であっても構わない。
【0065】
<4−2.出力データ構造の一具体例>
ここで、鉱物分析結果の出力データ構造について、具体例を挙げて説明する。
ここでは、金含有鉱石を鉱石試料とし、その鉱石試料に対して、「2.システム構成」で説明した構成の分析システムを用いて分析処理を行った場合を例に挙げる。さらに詳しくは、鉱物分析システムを構成する自動鉱物分析装置1として米国FEI社製の「MLA650FEG」を用いて分析処理を行った。そして、その分析結果である分析結果データに対して、「2.システム構成」で説明した構成の分析システムを用いつつ、「3.データ処理方法の手順」で説明した手順のデータ処理を行い、そのデータ処理の結果を「4−1.出力データ構造の概要」で説明したフォーマット例の出力データ構造でデータ出力した。
【0066】
図8は、本実施形態における鉱物分析結果の出力データ構造の一具体例を示す説明図である。
この具体例によれば、「金粒(Gold)」については、鉱石試料中に「単体鉱」として存在する重量割合がトータルで「19.5%」、「硫砒鉄鉱」と結合するもののうち「露出鉱」として存在する重量割合がトータルで「6.8%」であり「包含鉱」として存在する重量割合がトータルで「4.4%」、「黄銅鉱」と結合するもののうち「露出鉱」として存在する重量割合がトータルで「0.0%」であり「包含鉱」として存在する重量割合がトータルで「0.2%」、「黄鉄鉱」と結合するもののうち「露出鉱」として存在する重量割合がトータルで「14.5%」であり「包含鉱」として存在する重量割合がトータルで「6.2%」、「その他硫化鉱物」と結合するもののうち「露出鉱」として存在する重量割合がトータルで「10.9%」であり「包含鉱」として存在する重量割合がトータルで「0.1%」、「脈石」と結合するもののうち「露出鉱」として存在する重量割合がトータルで「36.7%」であり「包含鉱」として存在する重量割合がトータルで「0.7%」であり、これらを全て集計すると「100%」となる。
【0067】
<4−3.出力データ構造の利用形態(処理条件決定方法)>
次いで、以上のような鉱物分析結果の出力データ構造の利用形態について、具体的に説明する。
【0068】
本実施形態における鉱物分析結果の出力データ構造は、例えば鉱石試料に対して選鉱または製錬を行う際の処理条件を決定するために利用することが考えられる。鉱石試料を構成する各鉱物粒子の鉱物性状は、選鉱または製錬によって得られる結果物の品位および実収率に大きな影響を及ぼすからである。
【0069】
例えば、ある鉱石試料について鉱物性状を把握するための分析処理を行った後に、その鉱石試料と同成分の鉱石または金属製錬中間物等(以下、これらを「処理対象物」と総称する。)に対して、目的鉱物を得るために青化浸出を経て製錬を行う場合を考える。その場合には、「2.システム構成」で説明した構成の分析システムを用いて「3.データ処理方法の手順」で説明した手順のデータ処理を行い、そのデータ処理の結果を「4−1.出力データ構造の概要」で説明した出力データ構造で出力した後、処理対象物に対して製錬を開始する前に、出力データ構造の内容(すなわち、一覧表形式に纏めた鉱物分布状態)に基づいて、当該製錬を行う際の処理条件を決定することになる。つまり、鉱物分析結果について出力データ構造による出力後、製錬を開始する前に、当該出力データ構造の内容に基づく処理条件決定ステップを経るのである。なお、ここで決定する「処理条件」としては、例えば青化浸出に先立って行う粉砕の条件(粉砕後粒径等)が挙げられるが、これに限定されるものではなく製錬を行う上で有用な処理条件であれば他のものであっても該当し得る。また、「処理条件」は、必ずしも製錬に関するものに限られず、製錬に先立って行う選鉱に関するものであってもよい。浮遊選鉱等については、鉱物粒子の表面状態(目的鉱物が単体鉱として存在しているか、他の鉱物と結合している場合には目的鉱物の一部が鉱物粒子の外周面に露出しているか、鉱物粒子に完全に包含されているのか等の別)が、結果物の品位向上や実収率向上等に大きな影響を及ぼすからである。
【0070】
この点について、さらに具体的に説明する。例えば、
図8に示した内容のデータ処理結果が得られた場合を例に挙げる。
かかるデータ処理結果は、少なくとも目的鉱物を含有する有用鉱については、その有用鉱が単体鉱であるか否かの他に、単体鉱でない場合には露出鉱であるか、または包含鉱であるか、これらの別を識別可能な態様の一覧表形式に纏めた出力データ構造を有している。つまり、単に単体鉱と結合鉱を分けているだけに止まらず、目的鉱物が単体鉱として存在しているか、他の鉱物と結合している場合には目的鉱物の一部が鉱物粒子の外周面に露出しているか、鉱物粒子に完全に包含されているのか等の別に関する情報と、そのサイズと含有量比等に関する情報とについて、把握可能な出力データ構造を有しているのである。
そのため、かかるデータ処理結果を基にすれば、例えば目的鉱物である「金粒(Gold)」について、その目的鉱物を青化浸出およびその後の乾式製錬によって取り出す場合であっても、それぞれの粒子サイズ別の単体鉱と露出鉱と包含鉱との割合が分かるので、鉱物粒子外周の表面状態を容易に、かつ、正しく把握することができ、これにより目的鉱物の溶媒への浸出性を適切に評価することができる。換言すると、ある処理対象物について、そこに含まれる目的鉱物(有価金属等)を回収するために、後工程において所定の溶媒による浸出を行うことが想定されている場合に、その処理対象物に対して溶媒による浸出を行って目的鉱物の回収を行うのに先立ち、かかるデータ処理結果を、有用鉱が粒子外周面へ露出する程度が処理対象物の溶媒に対する有用鉱の浸出性を評価する指標として用いることで、目的鉱物の溶媒への浸出性を適切に評価することができるのである。
【0071】
具体的には、
図8に示した結果からは、処理対象物中において、金粒の約20%は単体鉱として存在しており、その他は脈石、黄鉄鉱、硫砒鉄鉱中に存在していることわかる。さらに、包含鉱については、粒子径50μm以上の大きさの割合が高いことがわかる。
このような結果が得られた場合には、後工程で金を効率よく溶媒に浸出するために、粒子径50μm以上の包含鉱を磨鉱し、露出鉱または単体鉱とする必要があると判断することができる。つまり、青化浸出およびその後の乾式製錬の品位向上が期待できるように、上述したデータ処理結果に基づいて、処理対象物に対して青化浸出および乾式製錬を行う際の処理条件を決定するのである。
【0072】
以上のような処理条件決定は、MLAやQEMSCAN等の自動鉱物分析装置1からのデータ出力結果だけを基にしても、行うことが非常に困難である。ところが、本実施形態の「2.システム構成」で説明した構成の分析システムを用いて、「3.データ処理方法の手順」で説明した手順のデータ処理を行い、そのデータ処理の結果を「4−1.出力データ構造の概要」で説明した出力データ構造で出力すれば、その出力データ構造が単に単体鉱と結合鉱を分けているだけに止まらず単体鉱と露出鉱と包含鉱との別を識別し得るようになっており、これにより例えば目的鉱物の溶媒への浸出性を評価することができるので、上述したような処理条件決定を適切かつ容易に行うことが可能となる。
【0073】
なお、ここでは、出力データ構造の利用形態として、処理対象物に対して行う製錬の処理条件決定に反映させる場合を例に挙げたが、その他にも、選鉱とその後に行う製錬との双方の処理条件を決定するために利用したり、または選鉱の処理条件だけを決定するために利用することも考えられる。つまり、本実施形態における処理条件決定ステップは、選鉱または製錬を行う際の処理条件を決定するものであればよい。
【0074】
<5.本実施形態の効果>
本実施形態で説明したデータ処理装置2、当該データ処理装置2の特徴的な機能を実現するデータ処理プログラム、当該データ処理装置2を用いて実行するデータ処理方法および処理条件決定方法、並びに、当該データ処理装置2による鉱物分析結果の出力データ構造によれば、以下のような効果が得られる。
【0075】
本実施形態によれば、鉱物分析の分析結果データに対するデータ処理にあたり、鉱石試料を構成する各鉱物粒子の中から有用鉱含有粒子を抽出するとともに、その有用鉱含有粒子が有用鉱のみからなる単体鉱であるか、有用鉱の一部が粒子外周面に露出してなる露出鉱であるか、または有用鉱が粒子外周面に全く露出しない包含鉱であるかを判別する。そして、その判別結果を識別可能な態様の一覧表形式に纏めて、少なくとも有用鉱含有粒子の鉱石試料中におけるサイズ別の分布状態についてデータ出力を行う。つまり、単に単体鉱と結合鉱を分けているだけに止まらず、他の鉱物と結合している場合には目的鉱物の一部が鉱物粒子の外周面に露出しているか、鉱物粒子に完全に包含されているのかについても識別可能にして、鉱物粒子外周の表面状態を容易に把握し得るようにしている。したがって、そのデータ出力の結果を基にすれば、例えば目的鉱物を取り出すために青化浸出を経て乾式製錬を行う場合であっても、その目的鉱物の溶媒への浸出性を適切に評価することが可能となり、青化浸出および乾式製錬等によって得られる結果物の品位や実収率等の向上を適切かつ容易に図り得るようになる。
【0076】
しかも、本実施形態によれば、有用鉱含有粒子が単体鉱であるか露出鉱であるか包含鉱であるかの判別を、所定関数による一連の命令群に従いつつ、各鉱物粒子が含有する鉱物の鉱物種データおよびサイズデータに基づいて行う。つまり、単体鉱と露出鉱と包含鉱との判別を、主としてサイズデータ等の数値データを基準にして客観的かつ定量的に行うことになり、光学顕微鏡の観察者が目視で行う場合のように当該観察者の主観が入り込む余地がない。したがって、判別基準が観察者(熟練観察者か否かの違い等)によってばらついてしまうことがなく、例えば多数の鉱物が結合した結合鉱や結合した鉱物の一部が微量である結合鉱等であっても一定の分析結果が得られるので、鉱物分析結果に対する精度向上および信頼性向上を図り得るようになる。
【0077】
その上、本実施形態によれば、単体鉱と露出鉱と包含鉱との判別を、所定関数による一連の命令群に従いつつ、主としてサイズデータ等の数値データを基準にして客観的かつ定量的に行うので、データ処理対象となる自動鉱物分析装置1からの分析結果データ(すなわち自動鉱物分析装置1における採取データ)が主に数値データによって構成されるものであっても、その分析結果データ(採取データ)に対する一貫性を十分に確保することができる。
【0078】
その他にも、本実施形態によれば、単体鉱と露出鉱と包含鉱との判別にあたり、有用鉱含有粒子にて有用鉱が占めるサイズの割合を求め、そのサイズ割合を所定閾値と比較することで、当該判別を行っている。つまり、単体鉱と露出鉱と包含鉱との判別を所定閾値という予め設定された一律の判別基準に従って行うので、その判別結果が客観的かつ定量的なものとなる。
【0079】
特に、本実施形態では、単体鉱と露出鉱と包含鉱との判別処理のためのサイズデータとして、グレインデータの「Free Surface%」を用いている。つまり、有用鉱含有粒子の外周長データに対する有用鉱の外周現出長データの割合を求め、その割合を所定閾値と比較することで単体鉱と露出鉱と包含鉱とを判別している。したがって、自動鉱物分析装置1から出力される分析結果データをそのまま用いて判別処理を行うことができるので、当該判別処理の処理負荷軽減やこれに伴う迅速化等も期待できる。
【0080】
<6.変形例等>
以上に、本発明の一実施形態について説明したが、上記の開示内容は、本発明の例示的な実施形態を示すものである。すなわち、本発明の技術的範囲は、上記の例示的な実施形態に限定されるものではない。
【0081】
例えば、本実施形態では、金含有鉱石から金を回収する貴金属製錬において、青化浸出を経た後に乾式製錬を行って、目的鉱物である金を取り出す場合を例に挙げている。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、非鉄金属製錬にも適用可能である。例えば、銅製錬についてはSX−EW法等の湿式製錬が採用されることがあり、そのような場合には目的鉱物を含有する鉱石の鉱物性状として鉱物粒子外周の表面状態を把握することが製錬結果物の品位向上や実収率向上等に非常に重要だからである。
【0082】
また、本実施形態では、単体鉱と露出鉱と包含鉱との判別処理のためのサイズデータとして、グレインデータの「Free Surface%」を用いた場合を例に挙げている。ただし、判別処理のため用いるサイズデータは、これに限定されることはなく、他の種類のサイズデータを用いることも可能である。他の種類のサイズデータとしては、例えば、各鉱物の重量割合(Wt%)、面積割合、同一粒子中における異種鉱物の結合割合(boundary)等が挙げられる。これらのサイズデータのいずれかを用いた場合であっても、本実施形態の場合と同様に数値データを基準にすることになるので、単体鉱と露出鉱と包含鉱との判別処理を客観的かつ定量的に行うことが可能となる。なお、どの種類のサイズデータを用いるかについては、データ処理の目的や分析対象物である鉱石試料の種類等に応じて、適宜使い分けることが考えられる。
【0083】
また、本実施形態では、有用鉱含有粒子中で有用鉱が占めるサイズの割合を求め、そのサイズ割合を所定閾値と比較することで、単体鉱と露出鉱と包含鉱との判別を行う場合を例に挙げている。ただし、単体鉱と露出鉱と包含鉱との判別処理は、主として鉱物のサイズデータに基づいて行うものであればよく、これに限定されることはない。具体的には、例えばサイズ割合ではなく、有用鉱含有粒子のサイズとこれに含有される鉱物のサイズとの差分を求め、そのサイズ差分を所定閾値と比較することで、単体鉱と露出鉱と包含鉱との判別を行うことも考えられる。
【0084】
また、本実施形態では、データ処理装置2が出力する鉱物分析結果の出力データ構造として、例えば
図6または
図7に示したフォーマット例を挙げている。ただし、鉱物分析結果の出力データ構造は、有用鉱含有粒子が単体鉱であるか露出鉱であるか包含鉱であるかを識別可能な態様で、当該有用鉱含有粒子の鉱石試料中における分布状態をサイズ別の一覧表形式で表してなるものであれば、これに限定されるものではない。つまり、鉱物分析結果の出力データ構造は、そのフォーマット例が特定の形式に限定されるものではなく、また例えば不用鉱の単体鉱に関する情報といった有用鉱含有粒子とは関係ない他の情報を含むものであってもよい。さらに、鉱物分析結果の出力データ構造におけるサイズ別表記についても、本実施形態では鉱物粒子(パーティクル)の粒子サイズ別に表記する場合を例に挙げたが、鉱物(グレイン)のサイズ別に表記するようにしても構わない。
【0085】
また、本実施形態では、鉱物分析結果を上述した出力データ構造に纏めるために、データ処理装置2がRDBMSや表計算ソフトウエア等を利用する場合を例に挙げている。このようにすれば、一般的な汎用ソフトウエアプログラムを活用しつつ、データ処理装置2が実行するデータ処理プログラムを構築することが実現可能となる。ただし、必ずしもこれに限定されることはなく、データ処理装置2が実行するデータ処理プログラムは、その全てが専用に開発されたものであっても構わない。
【0086】
また、本実施形態では、データ処理装置2が自動鉱物分析装置1から分析結果データを受け取って、その分析結果データに対してデータ処理を行って、上述した鉱物分析結果の出力データ構造によるデータ出力を行う場合を例に挙げている。ただし、データ処理装置2が取得する分析結果データは、必ずしも自動鉱物分析装置1から直接的に受け取るものでなくてもよい。例えば、データ処理装置2に対しては、MLAやQEMSCAN等の自動鉱物分析装置1で得られた分析結果データを、当該データ処理装置2における情報入力部30を利用して入力しても構わない。さらには、MLAやQEMSCAN等の自動鉱物分析装置1にはカテゴライズされないタイプの走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)やX線分析装置等、すなわち自動鉱物分析装置1とは異なるタイプの鉱物分析装置で得られた分析結果データを入力し、データ処理装置2でのデータ処理の対象とすることも考えられる。