特許第6361893号(P6361893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361893
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ブロック共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   C08F293/00
【請求項の数】14
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-536817(P2016-536817)
(86)(22)【出願日】2014年12月9日
(65)【公表番号】特表2017-501262(P2017-501262A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】KR2014012035
(87)【国際公開番号】WO2015084132
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年2月1日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0159994
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0131964
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0175412
(32)【優先日】2014年12月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・クン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・キュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・クォン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ミ・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ノ・ジン・パク
(72)【発明者】
【氏名】セ・ジン・ク
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ヨン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ス・ユン
【審査官】 水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−202723(JP,A)
【文献】 特開2002−145973(JP,A)
【文献】 特開平05−320281(JP,A)
【文献】 特開2000−281737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 251/00−283/00
C08F 283/02−289/00
C08F 291/00−297/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖を有し、下記化学式1で表示される第1ブロックと、前記第1ブロックとは異なる第2ブロックとして、1個以上のハロゲン原子を含む、炭素数6〜13の芳香族構造を有する第2ブロックとを含み、
前記側鎖の鎖形成原子の数(n)は、下記数式1を満足し、
前記鎖形成原子は、炭素であるブロック共重合体:
[数式1]
3nm−1〜5nm−1=nq/(2×π)
数式1で、nは、前記鎖形成原子の数であり、qは、前記ブロック共重合体に対するX線回折分析でピークが観察される最も小さい散乱ベクトル(q)であるか、あるいは最大のピーク面積のピークが観察される散乱ベクトル(q)である。
【化1】
化学式1で、Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは、カルボニル基、−C(=O)−X−または−X−C(=O)−であり、前記でXは、酸素原子又は硫黄原子であり、Yは、前記側鎖である8個〜20個の炭素原子を有する炭化水素鎖が連結されている炭素数6〜13の芳香族構造を含む1価置換基である。
【請求項2】
数式1の散乱ベクトル(q)が1nm−1〜3nm−1の範囲内にあるピークを示す、請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項3】
第1ブロックの体積分率は、0.4〜0.8の範囲内にあり、第2ブロックの体積分率は、0.2〜0.6の範囲内にあり、第1ブロックと第2ブロックの体積分率の和は、1である、請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項4】
化学式1の炭化水素鎖は、芳香族構造に酸素原子または窒素原子を介して連結されている、請求項に記載のブロック共重合体。
【請求項5】
第2ブロックのハロゲン原子は、フッ素原子である、請求項に記載のブロック共重合体。
【請求項6】
化学式1の芳香族構造は、ハロゲン原子を含まない芳香族構造である、請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項7】
化学式1の炭化水素鎖は、芳香族構造に酸素原子または窒素原子を介して連結されている、請求項に記載のブロック共重合体。
【請求項8】
第2ブロックは、下記化学式3で表示される、請求項1に記載のブロック共重合体:
【化2】
化学式3でXは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−S(=O)−、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−C(=O)−X−または−X−C(=O)−であり、前記でXは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−S(=O)−、アルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基であり、Wは、少なくとも1個のハロゲン原子を含む炭素数6〜13のアリール基である。
【請求項9】
数平均分子量が3,000〜300,000の範囲内にある、請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項10】
分散度(Mw/Mn)が1.01〜1.60の範囲内にある、請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項11】
自己組織化された請求項1に記載のブロック共重合体を含む高分子膜。
【請求項12】
GISAXSでインプレーン回折パターンを示す、請求項11に記載の高分子膜。
【請求項13】
自己組織化された請求項1に記載のブロック共重合体を含む高分子膜を基板上に形成することを含む、高分子膜の形成方法。
【請求項14】
基板、及び前記基板の表面に形成されている自己組織化された請求項1に記載のブロック共重合体を含む高分子膜を有する積層体において、前記ブロック共重合体の第1または第2ブロックを除去する段階を含む、パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ブロック共重合体及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロック共重合体は、互いに異なる化学的構造を有する高分子ブロックが共有結合を通じて連結されている分子構造を有する。ブロック共重合体は、相分離によってスフェア(sphere)、シリンダー(cylinder)またはラメラ(lamella)などのような周期的に配列された構造を形成することができる。ブロック共重合体の自己組織化現象によって形成された構造のドメインのサイズは、広範に調節することができ、多様な形態の構造の製作が可能で、高密度の磁気格納媒体、ナノ線製作、量子点または金属点などのような多様な次世代ナノ素子や磁気記録媒体またはリソグラフィなどによるパターン形成などに応用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願は、ブロック共重合体、該ブロック共重合体を含む高分子膜、前記高分子膜の形成方法及びパターン形成方法などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ブロック共重合体は、第1ブロックと、前記第1ブロックとは異なる第2ブロックとを含むことができる。前記で第1または第2ブロックは、後述する側鎖を含むことができる。以下、本明細書で第1及び第2ブロックのうちいずれか1つのブロックだけが側鎖を含む場合に、前記側鎖を含むブロックは、第1ブロックと称することができる。ブロック共重合体は、前記第1及び第2ブロックのみを含むジブロック共重合体であるか、または第1及び第2ブロック以外に他のブロックをさらに含むブロック共重合体であることができる。
【0005】
ブロック共重合体は、共有結合で連結された2つまたはそれ以上の高分子鎖を含むので、相分離が起きるようになる。本出願では、ブロック共重合体が下記パラメータを満足することによって、前記相分離が非常に効果的に起き、それによって、微細相分離(microphase seperation)によるナノスケールの構造を形成することができる。本出願では、分子量などのような前記ブロック共重合体のサイズや、ブロック間の相対的な比率の調節を通じて前記相分離によって形成されるナノ構造の形態及びサイズを自由に調節することができる。本出願のブロック共重合体は、これを通じて球形、シリンダー、ジャイロイド(gyroid)、ラメラ及び反転構造などの相分離構造を多様なサイズで自由に形成することができる。本発明者は、ブロック共重合体が下記パラメータを満足することによって、前記のような自己組織性や相分離特性が大きく向上する点を確認した。好適なパラメータの充足を通じてブロック共重合体が垂直配向性を示すようにすることができることを明らかにした。本出願で用語垂直配向は、ブロック共重合体の配向性を示すものであり、ブロック共重合体によって形成されるナノ構造体の配向が基板方向に垂直な配向を意味することができる。ブロック共重合体の自己組織化された構造を多様な基板の上に水平あるいは垂直に調節する技術は、ブロック共重合体の実際的応用において非常に大きい比率を占める。通常、ブロック共重合体の膜においてナノ構造体の配向は、ブロック共重合体を形成しているブロックのうちいずれのブロックが表面あるいは空気の中に露出するかによって決定される。一般的に多数の基板が極性であり、空気は、非極性であるので、ブロック共重合体のブロックのうちさらに大きい極性を有するブロックが基板にウェッティング(wetting)し、さらに小さい極性を有するブロックが空気との界面でウェッティング(wetting)するようになる。したがって、ブロック共重合体の互いに異なる特性を有するブロックが同時に基板側にウェッティングするようにするために多様な技術が提案されており、最も代表的な技術は、中性表面製作を適用した配向の調節である。しかしながら、本出願の1つの態様では、下記のパラメータを適切に調節するようになれば、ブロック共重合体が中性表面処理などを含む垂直配向を達成するためのものと知られた公知の処理が行われない基板に対しても、垂直配向が可能である。例えば、本出願の1つの態様によるブロック共重合体は、特別な前処理が行われていない親水性表面や、疎水性表面の両方に対しても、垂直配向性を示すことができる。また、本出願の追加的な態様では、前記のような垂直配向を熱的熟成(thermal annealing)によって広い領域に短時間内に誘導することができる。
【0006】
本出願のブロック共重合体は、XRD分析(X線回折分析、X−ray Diffraction analysis)の特定の傾向を示すことができる。
【0007】
すなわち、前記言及したように、ブロック共重合体の少なくとも1つのブロックが側鎖を含む場合に、前記側鎖の鎖形成原子の数(n)は、前記X線回折分析によって求められる散乱ベクトル(q)と下記数式1を満足することができる。
【0008】
[数式1]
3nm−1〜5nm−1=nq/(2×π)
【0009】
数式1で、nは、前記鎖形成原子の数であり、qは、前記ブロック共重合体に対するX線回折分析でピークが観察される最も小さい散乱ベクトル(q)であるか、あるいは最大のピーク面積のピークが観察される散乱ベクトル(q)である。また、数式1でπは、円周率を意味する。
【0010】
本出願で用語鎖形成原子は、ブロック共重合体に結合されている前記側鎖を形成する原子であって、前記鎖の直鎖構造を形成する原子を意味する。前記側鎖は、直鎖型または分岐型であることができるが、鎖形成原子の数は、最も長い直鎖を形成している原子の数だけで計算され、前記鎖形成原子に結合されている他の原子(例えば、鎖形成原子が炭素原子である場合に、その炭素原子に結合している水素原子など)は、計算されない。例えば、分岐型鎖である場合に、前記鎖形成原子の数は、最も長い鎖部位を形成している鎖形成原子の数で計算することができる。例えば、側鎖がn−ペンチル基である場合に、鎖形成原子は、すべて炭素であって、その数は、5であり、側鎖が2−メチルペンチル基である場合にも、鎖形成原子は、すべて炭素であって、その数は5である。前記鎖形成原子としては、炭素、酸素、硫黄または窒素などを例示することができ、好適な鎖形成原子は、炭素、酸素または窒素であるか、または炭素または酸素であることができる。前記鎖形成原子の数は、8以上、9以上、10以上、11以上または12以上であることができる。前記鎖形成原子の数は、また、30以下、25以下、20以下または16以下であることができる。
【0011】
前記数式1の確認のためのXRD分析は、ブロック共重合体試料にX線を透過させた後に、散乱ベクトルによる散乱強度を測定して行うことができる。XRD分析は、ブロック共重合体に対して特別な前処理なしに行うことができ、例えば、ブロック共重合体を好適な条件で乾燥した後、X線に透過させて行うことができる。X線としては、垂直サイズが0.023mmであり、水平サイズが0.3mmであるX線を適用することができる。測定機器(例えば、2D marCCD)を使用して試料から散乱されて出る2D回折パターンをイメージとして得、得られた回折パターンをフィッティング(fitting)して、散乱ベクトル及び半値全幅などを求めることができる。
【0012】
前記回折パターンのフィッティングは、XRD分析によって得られた結果を最小二乗法を適用した数値分析学的な方式で行うことができめ。前記方式では、XRD回折パターンで最小の強度(intensity)を示す部分をベースライン(baseline)として取って、前記での強度(intensity)を0になるようにした状態で前記XRDパターンピークのプロファイルをガウシアンフィッティング(Gaussian fitting)した後、フィッティングされた結果から前記散乱ベクトルと半値全幅を求めることができる。前記ガウシアンフィッティング時にR二乗(R square)は、少なくとも0.9以上、0.92以上、0.94以上または0.96以上である。XRD分析から前記のような情報を得ることができる方式は、公知であり、例えば、オリジン(origin)などの数値解釈プログラムを適用することができる。
【0013】
数式1で導入される散乱ベクトル(q)は、例えば、0.5nm−1〜10nm−1の範囲内の散乱ベクトル(q)であることができる。 他の例示で、数式1で導入される散乱ベクトル(q)は、例えば、0.5nm−1〜10nm−1の範囲内の散乱ベクトル(q)であることができる。前記数式1に導入される散乱ベクトル(q)は、他の例示で、0.7nm−1以上、0.9nm−1以上、1.1nm−1以上、1.3nm−1以上または1.5nm−1以上であることができる。数式1に導入される散乱ベクトル(q)は、他の例示で、9nm−1以下、8nm−1以下、7nm−1以下、6nm−1以下、5nm−1以下、4nm−1以下、3.5nm−1以下または3nm−1以下であることができる。
【0014】
数式1は、ブロック共重合体が自己組織化されて相分離構造を形成した場合に、前記側鎖が含まれているブロック間の間隔(D)と前記側鎖の鎖形成原子の数の関係を示し、側鎖を有するブロック共重合体において前記側鎖の鎖形成原子の数が前記数式1を満足する場合に、前記側鎖が示す結晶性が増大し、それによってブロック共重合体の相分離特性や垂直配向性が大きく向上することができる。前記数式1によるnq/(2×π)は、他の例示で、4.5nm−1以下であってもよい。前記で側鎖が含まれているブロック間の間隔(D、単位:nm)は、数式D=2×π/qで計算することができ、前記でDは、前記ブロック間の間隔(D、単位:nm)であり、π及びqは、数式1で定義された通りである。
【0015】
前記パラメータは、例えば、ブロック共重合体の制御を通じて達成することができる。
例えば、前記パラメータを満足するブロック共重合体は、前記第1ブロックまたは第2ブロックに鎖形成原子を有する側鎖を含むことができる。以下、本明細書では、説明の便宜のために、側鎖が含まれるブロックを第1ブロックと称することができる。
【0016】
例えば、前記言及されたパラメータを満足させるブロック共重合体の第1ブロックと第2ブロックのうち少なくとも一方または両方は、少なくとも芳香族構造を含むことができる。第1ブロックと第2ブロックは、いずれも芳香族構造を含むことができ、このような場合に第1及び第2ブロックに含まれる芳香族構造は、同一であるか、または異なることができる。また、前記言及されたパラメータのうち1つ以上を満足させるブロック共重合体の第1及び第2ブロックうち少なくとも1つは、前記側鎖を含むか、または後述する1つ以上のハロゲン原子を含むことができ、このような側鎖とハロゲン原子は、前記芳香族構造に置換されていてもよい。本出願のブロック共重合体は、2つのブロックを含むか、またはそれ以上のブロックを含むことができる。
【0017】
前述したように、前記ブロック共重合体の第1ブロック及び/または第2ブロックは、芳香族構造を含むことができる。このような芳香族構造は、第1及び第2ブロックのうちいずれか1つのブロックにのみ含まれるか、両ブロックに含まれることができる。両ブロックがいずれも芳香族構造を含む場合に、各ブロックが含む芳香族構造は、互いに同一であるか、または異なることができる。
【0018】
本明細書で用語、芳香族構造、アリール基またはアリレン基(アリーレン基は本明細書中アリレン基とも記す)は、特に別途規定しない限り、ベンゼン環を有するか、2つ以上のベンゼン環が1つまたは2つの炭素原子を共有しながら連結されているか、または任意のリンカーによって連結されている構造を含む化合物またはその誘導体から由来する構造、1価残基または2価残基を意味することができる。前記アリール基またはアリレン基は、例えば、炭素数6〜30、炭素数6〜25、炭素数6〜21、炭素数6〜18または炭素数6〜13のアリール基またはアリーレン基であることができる。アリール基またはアリレン基としては、ベンゼン(benzene)などや、ナフタレン(naphthalene)、アゾベンゼン(azobenzene)、アントラセン(anthracene)、フェナンスレン(phenanthrene)、テトラセン(tetracene)、ピレン(pyrene)またはベンゾピレン(benzopyrene)などから由来する1価または2価残基などをも例示することができる。
【0019】
前記芳香族構造は、ブロック主鎖に含まれている構造であるか、あるいはブロック主鎖に側鎖形態で連結されている構造であることができる。各ブロックが含むことができる芳香族構造の好適な制御を通じて前述したパラメータの調節が可能であることができる。
例えば、前述したパラメータの調節のためにブロック共重合体の第1ブロックには、鎖形成原子が8個以上の鎖が側鎖に連結されていてもよい。本明細書で用語鎖と側鎖は、互いに同一の対象を指称することができる。第1ブロックが芳香族構造を含む場合に、前記鎖は、前記芳香族構造に連結されていてもよい。
【0020】
用語側鎖は、高分子の主鎖に連結された鎖を意味することができる。側鎖は、前記言及したように8個以上、9個以上、10個以上、11個以上または12個以上の鎖形成原子を含む鎖であることができる。前記鎖形成原子の数は、また、30個以下、25個以下、20個以下または16個以下であることができる。鎖形成原子は、炭素、酸素、窒素または硫黄原子であることができ、好適には、炭素または酸素であることができる。
【0021】
側鎖としては、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基のような炭化水素鎖を例示することができる。前記炭化水素鎖の炭素原子のうち少なくとも1つは、硫黄原子、酸素原子または窒素原子に代替されてもよい。
【0022】
側鎖が芳香族構造に連結される場合に、前記鎖は、芳香族構造に直接連結されているか、あるいはリンカーを媒介で連結されていてもよい。前記リンカーとしては、酸素原子、硫黄原子、−NR−、−S(=O)−、カルボニル基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−C(=O)−X−または−X−C(=O)−などを例示することができ、前記でRは、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基またはアリール基であることができ、Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−NR−、−S(=O)−、アルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基であることができ、前記でRは、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基またはアリール基であることができる。好適なリンカーとしては、酸素原子を例示することができる。側鎖は、例えば、酸素原子または窒素原子を媒介で芳香族構造に連結されていてもよい。
【0023】
芳香族構造がブロックの主鎖に側鎖形態で連結されている場合に、前記芳香族構造も前記主鎖に直接連結されているか、またはリンカーを媒介で連結されていてもよい。この場合、リンカーとしては、酸素原子、硫黄原子、−S(=O)−、カルボニル基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−C(=O)−X−または−X−C(=O)−などを例示することができ、前記でXは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−S(=O)−、アルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基であることができる。芳香族構造を主鎖に連結する好適なリンカーとしては、−C(=O)−O−または−O−C(=O)−などを例示することができるが、これに制限されるものではない。
【0024】
他の例示で、ブロック共重合体の第1及び/または第2ブロックに含まれる芳香族構造は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上または5個以上のハロゲン原子を含むことができる。ハロゲン原子の数は、例えば、30個以下、25個以下、20個以下、15個以下または10個以下であることができる。ハロゲン原子としては、フッ素または塩素などを例示することができ、フッ素原子の使用が有利であることができる。このようにハロゲン原子を含む芳香族構造を有するブロックは、他のブロックとの好適な相互作用を通じて効率的に相分離構造を具現することができる。
【0025】
ハロゲン原子を含む芳香族構造としては、炭素数6〜30、炭素数6〜25、炭素数6〜21、炭素数6〜18または炭素数6〜13の芳香族構造を例示することができるが、これに制限されるものではない。
【0026】
ブロック共重合体において第1及び第2ブロックがいずれも芳香族構造を含む場合に、好適な相分離構造の具現のために、第1ブロックは、ハロゲン原子を含まない芳香族構造を含み、第2ブロックは、ハロゲン原子を含む芳香族構造を含むことができる。また、前記第1ブロックの芳香族構造には、前記言及した側鎖が直接または酸素や窒素を含むリンカーを媒介で連結されていてもよい。
【0027】
ブロック共重合体が側鎖を有するブロックを含む場合に、このブロックは、例えば、下記化学式1で表示されるブロックであることができる。
【0028】
【化1】
【0029】
化学式1で、Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−S(=O)−、カルボニル基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−C(=O)−X−または−X−C(=O)−であり、前記でXは、酸素原子、硫黄原子、−S(=O)−、アルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基であり、Yは、8個以上の鎖形成原子を有する鎖が連結された環構造を含む1価置換基である。
【0030】
本出願で用語単結合は、その部位に別途の原子が存在しないことを意味する。例えば、化学式1でXが単結合なら、Yが直接高分子鎖に連結された構造を具現することができる。
【0031】
本明細書で用語アルキル基は、特に別途規定しない限り、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4の直鎖、分岐鎖または環形のアルキル基であることができ、これは、任意に1つ以上の置換基によって置換されていてもよい(但し、前述した側鎖がアルキル基の場合に、前記アルキル基は、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上または12個以上の炭素原子を含むことができ、このアルキル基の炭素原子の数は、30個以下、25個以下、20個以下または16個以下であることができる。)。
【0032】
本明細書で用語アルケニル基またはアルキニル基は、特に別途規定しない限り、炭素数2〜20、炭素数2〜16、炭素数2〜12、炭素数2〜8または炭素数2〜4の直鎖、分岐鎖または環形のアルケニル基またはアルキニル基であることができ、これは、任意に1つ以上の置換基によって置換されていてもよい(但し、前述した側鎖としてのアルケニル基またはアルキニル基は、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上または12個以上の炭素原子を含むことができ、このアルケニル基またはアルキニル基の炭素原子の数は、30個以下、25個以下、20個以下または16個以下であることができる。)。
【0033】
本明細書で用語アルキレン基は、特に別途規定しない限り、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4の直鎖、分岐鎖または環形のアルキレン基であることができ、これは、任意に1つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0034】
本明細書で用語アルケニレン基またはアルキニレン基は、特に別途規定しない限り、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4の直鎖、分岐鎖または環形のアルキレン基であることができ、これは、任意に1つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0035】
また、化学式1でXは、他の例示で、−C(=O)O−または−OC(=O)−であることができる。
【0036】
化学式1でYは、前述した鎖を含む置換基であり、前記は、例えば、炭素数6〜18または炭素数6〜12の芳香族構造を含む置換基であることができる。前記で鎖は、例えば、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上または12個以上の炭素原子を含む直鎖アルキル基であることができる。このアルキル基は、30個以下、25個以下、20個以下または16個以下の炭素原子を含むことができる。このような鎖は、前記芳香族構造に直接または前記言及したリンカーを媒介で連結されていてもよい。
【0037】
第1ブロックは、他の例示で下記化学式2で表示することができる。
【0038】
【化2】
【0039】
化学式2で、Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは、−C(=O)−O−であり、Pは、炭素数6〜12のアリレン基であり、Qは、酸素原子であり、Zは、鎖形成原子が8個以上である前記鎖である。
【0040】
化学式でPは、他の例示で、フェニレンであることができ、Zは、他の例示で、炭素数9〜20、炭素数9〜18または炭素数9〜16の直鎖アルキル基であることができる。前記でPがフェニレンである場合、Qは、前記フェニレンのパラ位置に連結されていてもよい。前記でアルキル基、アリレン基、フェニレン基及び鎖は、任意に1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0041】
ブロック共重合体がハロゲン原子を含む芳香族構造を有するブロックを含む場合に、前記ブロックは、例えば、下記化学式3で表示されるブロックであることができる。
【0042】
【化3】
【0043】
化学式3でXは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−S(=O)−、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−C(=O)−X−または−X−C(=O)−であり、前記でXは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−S(=O)−、アルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基であり、Wは、少なくとも1個のハロゲン原子を含むアリール基である。
【0044】
化学式3でXは、他の例示で、単結合であるか、またはアルキレン基であることができる。
化学式3でWのアリール基は、炭素数6〜12のアリール基であるか、またはフェニル基であることができ、このようなアリール基またはフェニル基は1個以上、2個以上、3個以上、4個以上または5個以上のハロゲン原子を含むことができる。前記でハロゲン原子の数は、例えば、30個以下、25個以下、20個以下、15個以下または10個以下であることができる。ハロゲン原子としては、フッ素原子を例示することができる。
【0045】
化学式3のブロックは、他の例示で、下記化学式4で表示することができる。
【0046】
【化4】
【0047】
化学式4でXは、化学式2で定義した通りであり、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、アルキル基、ハロアルキル基またはハロゲン原子であり、R〜Rが含むハロゲン原子の数は、1個以上である。
【0048】
化学式4でR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のハロアルキル基またはハロゲンであることができ、前記でハロゲンは、塩素またはフッ素であることができる。
【0049】
化学式4でR〜Rの2個以上、3個以上、4個以上、5個以上または6個以上は、ハロゲンを含むことができる。前記ハロゲン数の上限は、特に制限されず、例えば、12個以下、8個以下または7個以下であることができる。
【0050】
ブロック共重合体は、前記のような2種のブロックのうちいずれか一方または両方を他のブロックとともに含むか、または前記2種のブロックのみを含むブロック共重合体であることができる。
【0051】
ブロック共重合体を製造する方式は、特に制限されない。ブロック共重合体は、例えば、LRP(Living Radical Polymerization)方式で重合することができ、その例としては、有機希土類金属複合体を重合開始剤として使用するか、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として使用してアルカリ金属またはアルカリ土金属の塩などの無機酸塩の存在の下に合成する陰イオン重合、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として使用して有機アルミニウム化合物の存在の下に合成する陰イオン重合方法、重合剤御剤として原子移動ラジカル重合剤を利用する原子移動ラジカル重合法(ATRP)、重合剤御剤として原子移動ラジカル重合剤を利用し、且つ電子を発生させる有機または無機還元剤の下で重合を行うARGET(Activators Regenerated by Electron Transfer)原子移動ラジカル重合法(ATRP)、ICAR(Initiators for continuous activato rregeneration)原子移動ラジカル重合法(ATRP)、無機還元剤可逆付加−開裂連鎖移動剤を利用する可逆付加−開裂連鎖移動による重合法(RAFT)または有機テルル化合物を開始剤として利用する方法などがあり、このような方法のうち好適な方法を選択して適用することができる。
【0052】
例えば、前記ブロック共重合体は、ラジカル開始剤及びリビングラジカル重合試薬の存在の下に、前記ブロックを形成することができる単量体を含む反応物をリビングラジカル重合法で重合することを含む方式で製造することができる。ブロック共重合体の製造過程は、例えば前記過程を経て生成された重合生成物を非溶媒内で沈澱させる過程をさらに含むことができる。
【0053】
ラジカル開始剤の種類は、特に制限されず、重合効率を考慮して適宜選択することができ、例えば、AIBN(azobisisobutyronitrile)または2、2’−アゾビス−2、4−ジメチルバレロニトリル(2、2’−azobis−(2、4−dimethylvaleronitrile))などのアゾ化合物や、BPO(benzoyl peroxide)またはDTBP(di−t−butyl peroxide)などのような過酸化物系を使用することができる。
【0054】
リビングラジカル重合過程は、例えば、メチレンクロライド、1、2−ジクロロエタン、コロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、アセトン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、モノグライム、ジグライム、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはジメチルアセトアミドなどのような溶媒内で行われることができる。
【0055】
非溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノールまたはイソプロパノールなどのようなアルコール、エチレングリコールなどのグリコール、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンまたはペトロリウムエーテルなどのようなエーテル系を使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0056】
前記のようなブロック共重合体は、基本的に優れた相分離特性や自己組織化特性を示し、垂直配向性に優れている。本出願人は、前記言及されたブロック共重合体が下記記述するパラメータのうち1つ以上をさらに満足する場合に、前記優れた特性がさらに向上することを確認した。
【0057】
例えば、本出願の1つの態様のブロック共重合体は、疎水性表面上でで斜入射小角X線散乱(GISAXS、Grazing Incidence Small Angle X ray Scattering)のインプレーン(in plane)回折パターンを示す膜を形成することができる。前記ブロック共重合体は、親水性表面上でで斜入射小角X線散乱(GISAXS、Grazing Incidence Small Angle X ray Scattering)でインプレーン回折パターンを示す膜を形成することができる。
【0058】
本出願でGISAXSでインプレーン回折パターンを示すというのは、GISAXS分析時にGISAXS回折パターンでX座標に垂直なピークを示すことを意味することができる。このようなピークは、ブロック共重合体の垂直配向性によって確認される。したがって、インプレーン回折パターンを示すブロック共重合体は、垂直配向性を有する。追加的な例示で、前記GISAXS回折パターンのX座標で確認されるピークは、少なくとも2個以上であることができ、複数のピークが存在する場合に、そのピークの散乱ベクトル(q値)は、整数比を有することを確認することができる。
【0059】
本出願で用語垂直は、誤差を勘案した表現であり、例えば、±10度、±8度、±6度、±4度または±2度以内の誤差を含む意味であることができる。
【0060】
親水性と疎水性の表面上でいずれもインプレーン回折パターンを示す膜を形成することができるブロック共重合体は、垂直配向を誘導するために別途の処理を行わない多様な表面上で垂直配向特性を示すことができる。本出願で用語親水性表面は、純水(purified water)に対する接触角が5度〜20度の範囲内にある表面を意味する。親水性表面の例としては、酸素プラズマ、硫酸またはピラナ溶液で処理されたシリコンの表面を例示することができるが、これに制限されるものではない。本出願で用語疎水性表面は、純水(purified water)に対する常温接触角が50度〜70度の範囲内にある表面を意味する。疎水性表面としては、酸素プラズマで処理したPDMS(polydimethylsiolxane)の表面、HMDS(hexamethyldisilazane)処理したシリコンの表面またはフッ酸(Hydrogen fluoride、HF)処理したシリコンの表面などを例示することができるが、これに制限されるものではない。
【0061】
特に別途規定しない限り、本出願で接触角などのように温度によって変わることができる物性は、常温で測定した数値である。用語常温は、加温されるか、減温されない自然そのままの温度であり、約10℃〜30℃、約25℃または約23℃の温度を意味することができる。
【0062】
親水性または疎水性表面上に形成され、斜入射小角X線散乱(GISAXS)上でインプレーン回折パターンを示す膜は、熱的熟成(thermal annealing)を経た膜であることができる。斜入射小角X線散乱(GISAXS)を測定するための膜は、例えば、前記ブロック共重合体を約0.7重量%の濃度で溶媒(例えば、フルオロベンゼン(flourobenzene)に希釈して製造したコーティング液を約25nmの厚さ及び2.25cmのコーティング面積(横:1.5cm、縦:1.5cm)で当該親水性または疎水性表面にコーティングし、このようなコーティング膜を熱的熟成させて形成することができる。熱的熟成は、例えば、前記膜を約160℃の温度で約1時間維持して行うことができる。斜入射小角X線散乱(GISAXS)は、前記のように形成された膜に約0.12〜0.23度の範囲内の入射角でX線を入射させて測定することができる。公知の測定機器(例えば、2D marCCD)を用いて膜から散乱されて出る回折パターンを得ることができる。前記回折パターンを通じてインプレーン回折パターンの存在有無を確認する方式は公知である。
【0063】
斜入射小角X線散乱(GISAXS)で前述したピークを示すブロック共重合体は、優れた自己組織化特性を示すことができ、そのような特性が目的によって効果的に調節することができる。
【0064】
他の態様で本出願のブロック共重合体は、XRD分析(X線回折分析、X−ray Diffraction analysis)時に所定範囲の散乱ベクトル(q)内で少なくとも1つのピークを示すことができる。
【0065】
例えば、前記ブロック共重合体は、X線回折分析で0.5nm−1〜10nm−1の散乱ベクトル(q)範囲内で少なくとも1つのピークを示すことができる。前記ピークが現われる散乱ベクトル(q)は、他の例示で、0.7nm−1以上、0.9nm−1以上、1.1nm−1以上、1.3nm−1以上または1.5nm−1以上であることができる。前記ピークが現われる散乱ベクトル(q)は、他の例示で、9nm−1以下、8nm−1以下、7nm−1以下、6nm−1以下、5nm−1以下、4nm−1以下、3.5nm−1以下または3nm−1以下であることができる。
【0066】
前記散乱ベクトル(q)の範囲内で確認されるピークの半値全幅(Full width at half maximum、FWHM)は、0.2〜0.9nm−1の範囲内であることができる。前記半値全幅は、他の例示で、0.25nm−1以上、0.3nm−1以上または0.4nm−1以上であることができる。前記半値全幅は、他の例示で、0.85nm−1以下、0.8nm−1以下または0.75nm−1以下であることができる。
【0067】
本出願で用語半値全幅は、最大ピークの強度の1/2の強度を示す位置でのピークの幅(散乱ベクトル(q)の差)を意味することができる。前記半値全幅などを求める方式は、前述した通りである。
【0068】
前記散乱ベクトル(q)の範囲内で前記半値全幅のピークを示すブロック共重合体は、自己組織化に適した結晶性部位を含むことができる。これにより、前記記述した散乱ベクトル(q)の範囲内で確認されるブロック共重合体は、優れた自己組織化特性を示すことができる。
前記パラメータの確認のためのXRD分析を行う方式は、前述した通りである。
【0069】
本出願の1つの態様では、ブロック共重合体の第1ブロックの表面エネルギーと前記第2ブロックの表面エネルギーの差の絶対値が10mN/m以下、9mN/m以下、8mN/m以下、7.5mN/m以下または7mN/m以下であることができる。前記表面エネルギーの差の絶対値は、1.5mN/m、2mN/mまたは2.5mN/m以上であることができる。このような範囲の表面エネルギーの差の絶対値を有する第1ブロックと第2ブロックが共有結合によって連結された構造は、好適な非相溶性による相分離によって効果的な微細相分離(microphase seperation)を誘導することができる。前記で第1ブロックは、例えば、前述した側鎖を有するブロックであることができる。
【0070】
表面エネルギーは、液滴形状分析機(Drop Shape Analyzer、KRUSS社のDSA100製品)を使用して測定することができる。具体的に表面エネルギーは、測定しようとする対象試料(ブロック共重合体または単独重合体)をフルオロベンゼン(flourobenzene)に約2重量%の固形分の濃度で希釈させたコーティング液を基板に約50nmの厚さと4cmのコーティング面積(横:2cm、縦:2cm)で常温で約1時間乾燥させた後、160℃で約1時間熱的熟成(thermal annealing)させた膜に対して測定することができる。熱的熟成を経た前記膜に表面張力(surface tension)が公知されている脱イオン化水を落とし、その接触角を求める過程を5回繰り返して、得られた5個の接触角の数値の平均値を求め、同様に、表面張力が公知されているジヨードメタン(diiodomethane)を落とし、その接触角を求める過程を5回繰り返して、得られた5個の接触角の数値の平均値を求める。その後、求められた脱イオン化水とジヨードメタンに対する接触角の平均値を利用してOwens−Wendt−Rabel−Kaelble方法によって溶媒の表面張力に関する数値(Strom値)を代入して表面エネルギーを求めることができる。ブロック共重合体の各ブロックに対する表面エネルギーの数値は、前記ブロックを形成する単量体だけで製造された単独重合体(homopolymer)に対して前記記述した方法で求めることができる。
【0071】
ブロック共重合体が前述した側鎖を含む場合に、前記側鎖が含まれているブロックは、他のブロックに比べて高い表面エネルギーを有することができる。例えば、ブロック共重合体の第1ブロックが側鎖を含む場合、第1ブロックは、第2ブロックに比べて高い表面エネルギーを有することができる。このような場合に、第1ブロックの表面エネルギーは、約20mN/m〜40mN/mの範囲内にあり得る。前記第1ブロックの表面エネルギーは、22mN/m以上、24mN/m以上、26mN/m以上または28mN/m以上であることができる。前記第1ブロックの表面エネルギーは、38mN/m以下、36mN/m以下、34mN/m以下または32mN/m以下であることができる。このような第1ブロックが含まれ、第2ブロックと前記のような表面エネルギーの差を示すブロック共重合体は、優れた自己組織化特性を示すことができる。
【0072】
ブロック共重合体において第1ブロックと第2ブロックの密度差の絶対値は、0.25g/cm以上、0.3g/cm以上、0.35g/cm以上、0.4g/cm以上または0.45g/cm以上であることができる。前記密度差の絶対値は、0.9g/cm以上、0.8g/cm以下、0.7g/cm以下、0.65g/cm以下または0.6g/cm以下であることができる。このような範囲の密度差の絶対値を有する第1ブロックと第2ブロックが共有結合によって連結された構造は、好適な非相溶性による相分離によって効果的な微細相分離(microphase seperation)を誘導することができる。
【0073】
前記ブロック共重合体の各ブロックの密度は、公知の浮力法を利用して測定することができ、例えば、エタノールのように空気中での質量と密度を知っている溶媒内でのブロック共重合体の質量を分析し、密度を測定することができる。
【0074】
ブロック共重合体が前述した側鎖を含む場合に、前記側鎖が含まれているブロックは、他のブロックに比べて低い密度を有することができる。例えば、ブロック共重合体の第1ブロックが側鎖を含む場合、第1ブロックは、第2ブロックに比べて低い密度を有することができる。このような場合に、第1ブロックの密度は、約0.9g/cm〜1.5g/cm程度の範囲内にあり得る。前記第1ブロックの密度は、0.95g/cm以上であることができる。前記第1ブロックの密度は、1.4g/cm以下、1.3g/cm以下、1.2g/cm以下、1.1g/cm以下または1.05g/cm以下であることができる。このような第1ブロックが含まれ、第2ブロックと前記のような密度差を示すブロック共重合体は、優れた自己組織化特性を示すことができる。前記言及された表面エネルギーと密度は、常温で測定した数値であることができる。
【0075】
ブロック共重合体は、体積分率が0.4〜0.8の範囲内にあるブロックと、体積分率が0.2〜0.6の範囲内にあるブロックとを含むことができる。ブロック共重合体が側鎖を含む場合、前記側鎖を有するブロックの体積分率が0.4〜0.8の範囲内にあり得る。例えば、側鎖が第1ブロックに含まれる場合に、第1ブロックの体積分率が0.4〜0.8の範囲内であり、第2ブロックの体積分率が0.2〜0.6の範囲内にあり得る。第1ブロックと第2ブロックの体積分率の和は、1であることができる。前記のような体積分率で各ブロックを含むブロック共重合体は、優れた自己組織化特性を示すことができる。ブロック共重合体の各ブロックの体積分率は、各ブロックの密度とGPC(Gel Permeation Chromatogrph)によって測定される分子量に基づいて求めることができる。
【0076】
ブロック共重合体の数平均分子量(Mn(Number Average Molecular Weight))は、例えば、3,000〜300,000の範囲内にあり得る。本明細書で用語数平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)を使用して測定した標準ポリスチレンに対する換算数値であり、本明細書で用語分子量は、特に別途規定しない限り、数平均分子量を意味する。分子量(Mn)は、他の例示では、例えば、3000以上、5000以上、7000以上、9000以上、11000以上、13000以上または15000以上であることができる。分子量(Mn)は、さらに他の例示で、250000以下、200000以下、180000以下、160000以下、140000以下、120000以下、100000以下、90000以下、80000以下、70000以下、60000以下、50000以下、40000以下、30000以下または25000以下程度であることができる。ブロック共重合体は、1.01〜1.60の範囲内の分散度(polydispersity、Mw/Mn)を有することができる。分散度は、他の例示で、約1.1以上、約1.2以上、約1.3以上または約1.4以上であることができる。
【0077】
このような範囲でブロック共重合体は、好適な自己組織化特性を示すことができる。ブロック共重合体の数平均分子量などは、目的する自己組織化構造などを勘案して調節することができる。
【0078】
ブロック共重合体が前記第1及び第2ブロックを少なくとも含む場合に、前記ブロック共重合体内で第1ブロック、例えば、前述した側鎖を含むブロックの比率は、10モル%〜90モル%の範囲内にあり得る。
【0079】
本出願は、また、前記ブロック共重合体を含む高分子膜に関する。前記高分子膜は、多様な用途に使用することができ、例えば、多様な電子または電子素子、前記パターンの形成工程または磁気格納記録媒体、フラッシュメモリーなどの記録媒体またはバイオセンサーなどに使用することができる。
1つの例示で、前記高分子膜において前記ブロック共重合体は、自己組織化を通じてスフェア(sphere)、シリンダー(cylinder)、ジャイロイド(gyroid)またはラメラ(lamellar)などを含む周期的構造を具現することができる。このような構造は、垂直配向されていてもよい。例えば、ブロック共重合体において前記第1または第2ブロックまたはそれと共有結合された他のブロックのセグメント内で他のセグメントがラメラ形態またはシリンダー形態などのような規則的な構造を形成していてもよく、このような構造は、垂直配向されていてもよい。
【0080】
本出願の前記高分子膜は、前述したインプレーン回折パターン、すなわちGISAXS分析時にGISAXS回折パターンでX座標に垂直なピークを示すことができる。追加的な例示で、前記GISAXS回折パターンのX座標で確認されるピークは、少なくとも2個以上であることができ、複数のピークが存在する場合に、そのピークの散乱ベクトル(q値)は、整数比を有することを確認することができ。
【0081】
本出願は、また、前記ブロック共重合体を使用して高分子膜を形成する方法に関する。前記方法は、前記ブロック共重合体を含む高分子膜を自己組織化された状態で基板上に形成することを含むことができる。例えば、前記方法は、前記ブロック共重合体またはそれを含むコーティング液を塗布して層を形成し、これを熟成する過程を含むことができる。前記で熟成工程は、熱的熟成(thermal annealing)工程であるか、溶媒熟成(solvent annealing)工程であることができる。
【0082】
熱的熟成は、例えば、ブロック共重合体の相転移温度またはガラス転移温度を基準に行われることができ、例えば、前記ガラス転移温度または相転移温度以上の温度で行われることができる。このような熱的熟成が行われる時間は、特に制限されず、例えば、約1分〜72時間の範囲内で行われることができるが、これは、必要に応じて変更することができる。熱的熟成過程で熱処理温度は、例えば、100℃〜250℃程度であることができるが、これは、使用されるブロック共重合体を考慮して変更することができる。
【0083】
また、前記溶媒熟成工程は、好適な常温の非極性溶媒及び/または極性溶媒内で、約1分〜72時間行われてもよい。
【0084】
本出願は、また、パターン形成方法に関する。前記方法は、例えば、基板及び前記基板の表面に形成されており、自己組織化された前記ブロック共重合体を含む高分子膜を有する積層体において前記ブロック共重合体の第1または第2ブロックを選択的に除去する過程を含むことができる。前記方法は、前記基板にパターンを形成する方法であることができる。例えば、前記方法は、前記ブロック共重合体を含む高分子膜を基板に形成し、前記膜内に存在するブロック共重合体のいずれか1つまたはそれ以上のブロックを選択的に除去した後、基板をエッチングすることを含むことができる。このような方式で、例えば、ナノスケールの微細パターンの形成が可能である。また、高分子膜内のブロック共重合体の形態によって前記方式を用いてナノロッドまたはナノホールなどのような多様な形態のパターンを形成することができる。必要に応じて、パターン形成のために前記ブロック共重合体と他の共重合体あるいは単独重合体などを混合することができる。このような方式に適用される前記基板の種類は、特に制限されず、必要によって選択することができ、例えば、酸化ケイ素などを適用することができる。
【0085】
例えば、前記方式は、高い縦横比を示す酸化ケイ素のナノスケールのパターンを形成することができる。例えば、酸化ケイ素上に前記高分子膜を形成し、前記高分子膜内のブロック共重合体が所定の構造を形成している状態でブロック共重合体のいずれか1つのブロックを選択的に除去した後、酸化ケイ素を多様な方式、例えば、反応性イオンエッチングなどでエッチングしてナノロッドまたはナノホールのパターンなどを含む多様な形態を具現することができる。また、このような方法を用いて縦横比が大きいナノパターンの具現が可能であることができる。
【0086】
例えば、前記パターンは、数十ナノメートルのスケールで具現することができ、このようなパターンは、例えば、次世代情報電子用磁気記録媒体などを含む多様な用途に活用することができる。
【0087】
例えば、前記方式によれば、約10nm〜40nmの幅を有するナノ構造物、例えば、ナノ線が約20nm〜80nmの間隔をもって配置されているパターンを形成することができる。他の例示では、約10nm〜40nmの幅、例えば直径を有するナノホールが約20nm〜80nmの間隔を形成しつつ配置されている構造の具現も可能である。
【0088】
また、前記構造でナノ線やナノホールが大きい縦横比(aspect ratio)を有するようにすることができる。
【0089】
前記方法においてブロック共重合体のいずれか1つのブロックを選択的に除去する方式は、特に制限されず、例えば、高分子膜に適正な電磁気波、例えば、紫外線などを照射して相対的にソフトなブロックを除去する方式を使用することができる。この場合、紫外線の照射条件は、ブロック共重合体のブロックの種類によって決定され、例えば、約254nm波長の紫外線を1分〜60分間照射して行うことができる。
【0090】
紫外線の照射に引き続いて、高分子膜を酸などで処理し、紫外線によって分解されたセグメントをさらに除去する段階を行ってもよい。
選択的にブロックが除去された高分子膜をマスクとして基板をエッチングする段階は、特に制限されず、例えば、CF4/Arイオンなどを使用した反応性イオンエッチング段階を通じて行うことができ、この過程に引き続いて酸素プラズマ処理などによって高分子膜を基板から除去する段階をさらに行うことができる。
【発明の効果】
【0091】
本出願は、自己組織化特性や相分離特性に優れ、多様な用途で効果的に使用されるブロック共重合体及びその用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1図1は、GISAXS回折パターンを示す図である。
図2図2は、GISAXS回折パターンを示す図である。
図3図3は、高分子膜のSEM写真を示す図である。
図4図4は、高分子膜のSEM写真を示す図である。
図5図5は、高分子膜のSEM写真を示す図である。
図6図6は、高分子膜のSEM写真を示す図である。
図7図7は、高分子膜のSEM写真を示す図である。
図8図8は、高分子膜のSEM写真を示す図である。
図9図9は、高分子膜のSEM写真を示す図である。
図10図10は、高分子膜のSEM写真を示す図である。
図11図11は、高分子膜のSEM写真を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下、本出願による実施例及び比較例により本出願を詳しく説明するが、本出願の範囲が下記提示された実施例によって制限されるものではない。
【0094】
1.NMR測定
NMR分析は、三重共鳴5mmプローブ(probe)を有するVarian Unity Inova(500MHz)分光計を含むNMR分光計を使用して常温で行った。NMR測定用溶媒(CDCl)に分析対象物質を約10mg/ml程度の濃度で希釈させて使用し、化学的移動はppmで表現した。
<適用略語>
br=広い信号、s=単一線、d=二重線、dd=二重二重線、t=三重線、dt=二重三重線、q=四重線、p=五重線、m=多重線。
【0095】
2.GPC(Gel Permeation Chromatograph)
数平均分子量(Mn)及び分子量分布は、GPC(Gel permeation chromatography)を使用して測定した。5mLバイアル(vial)に実施例または比較例のブロック共重合体または巨大開始剤などの分析対象物質を入れ、約1mg/mL程度の濃度となるようにTHF(tetrahydro furan)に希釈する。その後、Calibration用標準試料と分析しようとする試料をsyringe filter(pore size:0.45μm)を通じて濾過させた後、測定した。分析プログラムは、Agilent technologies社のChemStationを使用し、試料のelution timeをcalibration curveと比較し、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)をそれぞれ求め、その比率(Mw/Mn)で分子量分布(PDI)を計算した。GPCの測定条件は、下記の通りである。
<GPC測定条件>
機器:Agilent technologies社の1200 series
カラム:Polymer laboratories社のPLgel mixed B 2個使用
溶媒:THF
カラム温度:35℃
サンプル濃度:1mg/mL、200L注入
標準試料:ポリスチレン(Mp:3900000、723000、316500、52200、31400、7200、3940、485)
【0096】
3.GISAXS(Grazing Incidence Small Angle X ray Scattering)
斜入射小角X線散乱(GISAXS)分析は、浦項アクセレーター3Cビームラインを利用して行った。分析対象であるブロック共重合体をフルオロベンゼン(fluorobezene)に約0.7重量%の固形分の濃度で希釈させてコーティング液を製造し、前記コーティング液を基材上に約5nmの厚さでスピンコーティングした。コーティング面積は、2.25cm程度に調整した(横の長さ:1.5cm、縦の長さ:1.5cm)。コーティングされた高分子膜を常温で約1時間乾燥させ、さらに約160℃の温度で約1時間熱的熟成(thermal annealing)させて相分離構造を誘導した。引き続いて、相分離構造が形成された膜を形成した。膜の臨界角と基材の臨界角の間の角度に該当する約0.12度〜0.23度の範囲内の入射角で膜にX線を入射させた後、検出器(2D marCCD)を用いて膜から散乱されて出るX線回折パターンを得た。この際、膜から検出器までの距離は、約2m〜3mの範囲内で膜に形成された自己組織化パターンがよく観察される範囲で選択した。基材としては、親水性表面を有する基材(ピラナ(piranha)溶液で処理され、純水に対する常温接触角が約5度のシリコン基板)または疎水性表面を有する基材(HMDS(hexamethyldisilazane)で処理され、純水に対する常温接触角が約60度のシリコン基板)を使用した。
【0097】
4.XRD分析方法
XRD分析は、浦項アクセレーター4Cビームラインで試料にX線を透過させて散乱ベクトル(q)による散乱強度を測定することによって測定した。試料としては、特別な前処理なしに合成されたブロック共重合体を精製した後に、真空オーブンで約一日間維持することによって乾燥させた粉末状態のブロック共重合体をXRD測定用セルに入れて使用した。XRDパターン分析時には、垂直サイズが0.023mmであり、水平サイズが0.3mmであるX線を利用し、検出器としては、2D marCCDを利用した。散乱されて出る2D回折パターンをイメージとして得た。得られた回折パターンを最小二乗法を適用した数値分析学的な方式で分析し、散乱ベクトル及び半値全幅などの情報を得た。前記分析時には、オリジン(origin)プログラムを適用し、XRD回折パターンで最小の強度(intensity)を示す部分をベースライン(baseline)として取って、前記での強度(intensity)を0になるようにした状態で、前記XRDパターンピークのプロファイルをガウシアンフィッティング(Gaussian fitting)し、フィッティングされた結果から前記散乱ベクトルと半値全幅を求めた。ガウシアンフィッティング時に、R二乗(R square)は、少なくとも0.96以上になるようにした。
【0098】
5.表面エネルギーの測定
表面エネルギーは、液滴形状分析機(Drop Shape Analyzer、KRUSS社のDSA100製品)を使用して測定した。測定しようとする物質(重合体)をフルオロベンゼン(flourobenzene)に約2重量%の固形分の濃度で希釈させてコーティング液を製造し、製造されたコーティング液をシリコンウェーハに約50nmの厚さ及び4cmのコーティング面積(横:2cm、縦:2cm)でスピンコーティングした。コーティング層を常温で約1時間乾燥し、引き続いて約160℃で約1時間熱的熟成(thermal annealing)させた。熱的熟成を経た膜に表面張力(surface tension)が公知されている脱イオン化水を落とし、その接触角を求める過程を5回繰り返して、得られた5個の接触角数値の平均値を求めた。同様に、表面張力が公知されているジヨードメタン(diiodomethane)を落とし、その接触角を求める過程を5回繰り返して、得られた5個の接触角数値の平均値を求めた。求められた脱イオン化水とジヨードメタンに対する接触角の平均値を利用してOwens−Wendt−Rabel−Kaelble方法によって溶媒の表面張力に関する数値(Strom値)を代入して表面エネルギーを求めた。ブロック共重合体の各ブロックに対する表面エネルギーの数値は、前記ブロックを形成する単量体だけで製造された単独重合体(homopolymer)に対して前記記述した方法で求めた。
【0099】
6.体積分率の測定
ブロック共重合体の各ブロックの体積分率は、各ブロックの常温での密度とGPCによって測定された分子量に基づいて計算した。前記で密度は、浮力法を利用して測定し、具体的には、空気中での質量と密度を知っている溶媒(エタノール)内に分析しようとする試料を入れ、その質量を用いて計算した。
【実施例】
【0100】
製造例1.モノマー(A)の合成
下記化学式Aの化合物(DPM−C12)は、次の方式で合成した。250mLのフラスコにヒドロキノン(hydroquinone)(10.0g、94.2mmol)及び1−ブロモドデカン(1−Bromododecane)(23.5g、94.2mmol)を入れ、100mLのアセトニトリル(acetonitrile)にとかした後、過量のカリウムカルボネート(potassium carbonate)を添加し、75℃で約48時間窒素条件の下で反応させた。反応後、残存するカリウムカルボネートをフィルタリングして除去し、反応に使用したアセトニトリルをも除去した。これにDCM(dichloromethane)と水の混合溶媒を添加してウォークアップし、分離した有機層を集めて、MgSOに通過させて脱水した。引き続いて、カラムクロマトグラフィーでDCM(dichloromethane)を使用して白色固体状の目的物(4−ドデシルオキシフェノール)(9.8g、35.2mmol)を約37%の収得率で得た。
【0101】
<NMR分析結果>
H−NMR(CDCl):d6.77(dd、4H);d4.45(s、1H);d3.89(t、2H);d1.75(p、2H);d1.43(p、2H);d1.33−1.26(m、16H);d0.88(t、3H)。
【0102】
フラスコに合成された4−ドデシルオキシフェノール(9.8g、35.2mmol)、メタクリル酸(6.0g、69.7mmol)、DCC(dicyclohexylcarbodiimide)(10.8g、52.3mmol)及びDMAP(p−dimethylaminopyridine)(1.7g、13.9mmol)を入れ、120mLのメチレンクロライドを添加した後、窒素の下で室温で24時間反応させた。反応終了後に、反応中に生成された塩(urea salt)をフィルターで除去し、残存するメチレンクロライドを除去した。カラムクロマトグラフィーでヘキサンとDCM(dichloromethane)を移動相として使用して不純物を除去し、さらに得られた生成物をメタノールと水の混合溶媒(1:1混合)で再結晶し、白色固体状の目的物(7.7g、22.2mmol)を63%の収得率で得た。
【0103】
<NMR分析結果>
H−NMR(CDCl):d7.02(dd、2H);d6.89(dd、2H);d6.32(dt、1H);d5.73(dt、1H);d3.94(t、2H);d2.05(dd、3H);d1.76(p、2H);d1.43(p、2H);1.34−1.27(m、16H);d0.88(t、3H)。
【0104】
【化5】
化学式Aで、Rは、炭素数12の直鎖アルキル基である。
【0105】
製造例2.モノマー(G)の合成
1−ブロモドデカンの代わりに、1−ブロモブタンを使用したことを除いて、製造例1に準ずる方式で下記化学式Gの化合物を合成した。前記化合物のNMR分析結果は、下記の通りである。
【0106】
<NMR分析結果>
H−NMR(CDCl):d7.02(dd、2H);d6.89(dd、2H);d6.33(dt、1H);d5.73(dt、1H);d3.95(t、2H);d2.06(dd、3H);d1.76(p、2H);d1.49(p、2H);d0.98(t、3H)。
【0107】
【化6】
化学式Gで、Rは、炭素数4の直鎖アルキル基である。
【0108】
製造例3.モノマー(B)の合成
1−ブロモドデカンの代わりに、1−ブロモオクタンを使用したことを除いて、製造例1に準ずる方式で下記化学式Bの化合物を合成した。前記化合物に対するNMR分析結果を下記に示した。
<NMR分析結果>
H−NMR(CDCl):d7.02(dd、2H);d6.89(dd、2H);d6.32(dt、1H);d5.73(dt、1H);d3.94(t、2H);d2.05(dd、3H);d1.76(p、2H);d1.45(p、2H);1.33−1.29(m、8H);d0.89(t、3H)。
【0109】
【化7】
化学式Bで、Rは、炭素数8の直鎖アルキル基である。
【0110】
製造例4.モノマー(C)の合成
1−ブロモドデカンの代わりに、1−ブロモデカンを使用したことを除いて、製造例1に準ずる方式で下記化学式Cの化合物を合成した。前記化合物に対するNMR分析結果を下記に示した。
【0111】
<NMR分析結果>
H−NMR(CDCl):d7.02(dd、2H);d6.89(dd、2H);d6.33(dt、1H);d5.72(dt、1H);d3.94(t、2H);d2.06(dd、3H);d1.77(p、2H);d1.45(p、2H);1.34−1.28(m、12H);d0.89(t、3H)。
【0112】
【化8】
化学式Cで、Rは、炭素数10の直鎖アルキル基である。
【0113】
製造例5.モノマー(D)の合成
1−ブロモドデカンの代わりに、1−ブロモテトラデカンを使用したことを除いて、製造例1に準ずる方式で下記化学式Dの化合物を合成した。前記化合物に対するNMR分析結果を下記に示した。
【0114】
<NMR分析結果>
H−NMR(CDCl):d7.02(dd、2H);d6.89(dd、2H);d6.33(dt、1H);d5.73(dt、1H);d3.94(t、2H);d2.05(dd、3H);d1.77(p、2H);d1.45(p、2H);1.36−1.27(m、20H);d0.88(t、3H.)
【0115】
【化9】
化学式Dで、Rは、炭素数14の直鎖アルキル基である。
【0116】
製造例6.モノマー(E)の合成
1−ブロモドデカンの代わりに、1−ブロモヘキサデカンを使用したことを除いて、製造例1に準ずる方式で下記化学式Eの化合物を合成した。前記化合物に対するNMR分析結果を下記に示した。
【0117】
<NMR分析結果>
H−NMR(CDCl):d7.01(dd、2H);d6.88(dd、2H);d6.32(dt、1H);d5.73(dt、1H);d3.94(t、2H);d2.05(dd、3H);d1.77(p、2H);d1.45(p、2H);1.36−1.26(m、24H);d0.89(t、3H)
【0118】
【化10】
化学式Eで、Rは、炭素数16の直鎖アルキル基である。
【0119】
実施例1
製造例1のモノマー(A)2.0gとRAFT(Reversible Addition Fragmentation chain Transfer)試薬であるシアノイソプロピルジチオベンゾエート64mg、ラジカル開始剤であるAIBN(Azobisisobutyronitrile)23mg及びベンゼン5.34mLを10mL Schlenk flaskに入れ、窒素雰囲気の下で常温で30分間撹拌した後、70℃で4時間RAFT(Reversible Addition Fragmentation chain Transfer)重合反応を行った。重合後、反応溶液を抽出溶媒であるメタノール250mLに沈澱させた後、減圧濾過して乾燥させて、桃色の巨大開始剤を製造した。前記巨大開始剤の収得率は、約82.6重量%であり、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、それぞれ、9,000及び1.16であった。巨大開始剤0.3g、ペンタフルオロスチレンモノマー2.7174g及びベンゼン1.306mLを10mL Schlenk flaskに入れ、窒素雰囲気の下で常温で30分間撹拌した後、115℃で4時間RAFT(Reversible Addition Fragmentation chain Transfer)重合反応を行った。重合後、反応溶液を抽出溶媒であるメタノール250mLに沈澱させた後、減圧濾過して乾燥させて、淡い桃色のブロック共重合体を製造した。前記ブロック共重合体の収得率は、約18重量%であり、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)はそれぞれ16,300及び1.13である。前記ブロック共重合体は、製造例1のモノマー(A)から由来する第1ブロックと前記ペンタフルオロスチレンモノマーから由来する第2ブロックを含む。
【0120】
実施例2
製造例1のモノマー(A)の代わりに、製造例3のモノマー(B)を使用することを除いて、実施例1に準ずる方式で巨大開始剤及びペンタフルオロスチレンをモノマーとしてブロック共重合体を製造した。前記ブロック共重合体は、製造例3のモノマー(B)から由来する第1ブロックと前記ペンタフルオロスチレンモノマーから由来する第2ブロックを含む。
【0121】
実施例3
製造例1のモノマー(A)の代わりに、製造例4のモノマー(C)を使用することを除いて、実施例1に準ずる方式で巨大開始剤及びペンタフルオロスチレンをモノマーとしてブロック共重合体を製造した。前記ブロック共重合体は、製造例4のモノマー(C)から由来する第1ブロックと前記ペンタフルオロスチレンモノマーから由来する第2ブロックを含む。
【0122】
実施例4
製造例1のモノマー(A)の代わりに、製造例5のモノマー(D)を使用することを除いて、実施例1に準ずる方式で巨大開始剤及びペンタフルオロスチレンをモノマーとしてブロック共重合体を製造した。前記ブロック共重合体は、製造例5のモノマー(D)から由来する第1ブロックと前記ペンタフルオロスチレンモノマーから由来する第2ブロックを含む。
【0123】
実施例5
製造例1のモノマー(A)の代わりに、製造例6のモノマー(E)を使用することを除いて、実施例1に準ずる方式で巨大開始剤及びペンタフルオロスチレンをモノマーとしてブロック共重合体を製造した。前記ブロック共重合体は、製造例6のモノマー(E)から由来する第1ブロックと前記ペンタフルオロスチレンモノマーから由来する第2ブロックを含む。
【0124】
比較例1
製造例1のモノマー(A)の代わりに、製造例2のモノマー(G)を使用することを除いて、実施例1に準ずる方式で巨大開始剤及びペンタフルオロスチレンをモノマーとしてブロック共重合体を製造した。前記ブロック共重合体は、製造例2のモノマー(G)から由来する第1ブロックと前記ペンタフルオロスチレンモノマーから由来する第2ブロックを含む。
【0125】
比較例2
製造例1のモノマー(A)の代わりに、4−メトキシフェニルメタクリレートを使用することを除いて、実施例1に準ずる方式で巨大開始剤及びペンタフルオロスチレンをモノマーとしてブロック共重合体を製造した。前記ブロック共重合体は、前記4−メトキシフェニルメタクリレートから由来する第1ブロックと前記ペンタフルオロスチレンモノマーから由来する第2ブロックを含む。
【0126】
比較例3
製造例1のモノマー(A)の代わりに、ドデシルメタクリレートを使用することを除いて、実施例1に準ずる方式で巨大開始剤及びペンタフルオロスチレンをモノマーとしてブロック共重合体を製造した。前記ブロック共重合体は、前記ドデシルメタクリレートから由来する第1ブロックと前記ペンタフルオロスチレンモノマーから由来する第2ブロックを含む。
【0127】
前記実施例及び比較例の各巨大開始剤及び製造されたブロック共重合体に対するGPC測定結果を下記表1に整理して記載した。
【0128】
【表1】
【0129】
試験例1.X線回折分析
前記各ブロック共重合体に対して前記言及した方式でXRDパターンを分析した結果は、下記表2に整理して記載した(比較例3の場合、散乱ベクトル0.5nm−1〜10nm−1の範囲内でピークが観察されなかった)。
【0130】
【表2】
【0131】
試験例2.自己組織化特性の評価
実施例または比較例のブロック共重合体をフルオロベンゼン(fluorobezene)に0.7重量%の固形分の濃度で希釈させて製造したコーティング液をシリコンウェーハ上に約5nmの厚さでスピンコーティング(コーティング面積:横×縦=1.5cm×1.5cm)し、常温で約1時間乾燥させた後、さらに約160℃の温度で約1時間熱的熟成(thermal annealing)し、自己組織化された膜を形成した。形成された膜に対してSEM(Scanning electron microscope)イメージを撮影した。図3図7は、実施例1〜5に対して撮影したSEMイメージである。図面から確認されるように、実施例のブロック共重合体の場合、ラインパターンで自己組織化された高分子膜が効果的に形成された。これに対して比較例の場合、好適な相分離が誘導されなかった。例えば、図8は、比較例3に対するSEM結果であり、これから効果的な相分離が誘導されなかったことを確認することができる。
【0132】
試験例3.GISAXS回折パターンの確認
実施例1で製造されたブロック共重合体に対して親水性表面として、純水に対する常温接触角が5度である表面に対して前記記載した方式でGISAXS(Grazing Incidence Small Angle X ray Scattering)を測定した結果は、図1に記載し、疎水性表面として純水に対する常温接触角が60度である表面に対して測定したGISAXS(Grazing Incidence Small Angle X ray Scattering)の結果を図2に示した。図1及び図2からいずれの場合でも、GISAXSでインプレーン回折パターンを示すことを確認することができる。これから、本出願のブロック共重合体は、多様な基材に対して垂直配向性を示すことができることを確認することができる。
【0133】
さらに、実施例1で製造されたブロック共重合体に対して前記のような方式で高分子膜を形成した。高分子膜は、それぞれ純水に対する常温接触角が5度であるピラナ溶液で処理されたシリコン基板、前記接触角が約45度であるシリコンオキシド基板及び前記接触角が約60度であるHMDS(hexamethyldisilazane)処理シリコン基板に形成した。図9図11は、それぞれ前記接触角が5度、45度及び60度に対して形成された高分子膜に対するSEMイメージである。図面から前記ブロック共重合体は、基材の表面特性と関係なく効果的に相分離構造を具現することを確認することができる。
【0134】
試験例4.ブロック共重合体の物性評価
前記製造された各ブロック共重合体の特性を前記言及した方式で評価した結果を下記表3に整理して記載した。
【0135】
【表3】
【0136】
試験例5
実施例1のような方式でブロック共重合体を製造し、且つ単量体と巨大開始剤のモル比の調節を通じて異なる体積分率を有するブロック共重合体を製造した。
製造されたブロック共重合体の体積分率は、下記の通りである。
【0137】
【表4】
【0138】
前記でブロック共重合体の各ブロックの体積分率は、各ブロックの常温での密度とGPC(Gel Permeation chromatograph)によって測定された分子量に基づいて計算した。前記で密度は、浮力法を利用して測定し、具体的には、空気中での質量と密度を知っている溶媒(エタノール)内での質量を用いて計算し、GPCは、前述した方式に従って計算した。
【0139】
前記各サンプルのブロック共重合体をフルオロベンゼン(fluorobezene)に0.7重量%の固形分の濃度で希釈させて製造したコーティング液をシリコンウェーハ上に約5nmの厚さでスピンコーティング(コーティング面積:横の長さ=1.5cm、縦長さ=1.5cm)し、常温で約1時間乾燥させた後、さらに約160℃の温度で約1時間熱的熟成(thermal annealing)して膜を形成した。形成された膜に対して前記記述した方式でGISAXSを測定しGISAXS上にインプレイン回折パターンが確認されることが分かり、これから垂直配向性を有することを予測することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11