(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の液晶配向剤は、特定重合性化合物、液晶を配向させ得る液晶配向膜を形成する重合体および溶媒を含有する。なお、液晶配向剤とは液晶配向膜を作成するための溶液であり、液晶配向膜とは液晶を所定の方向、例えば垂直方向に配向させるための膜である。以下、本発明の液晶配向剤に含有される各成分について詳細に説明する。
【0040】
<特定重合性化合物>
本発明の液晶配向剤に含有される特定重合性化合物は、下記式[1]で表される。
【0042】
(式[1]中、Cは炭素数10から炭素数30で形成され、芳香環を含有する2価の炭素環含有基であり、この炭素環含有基の1つまたは複数の水素原子はフッ素原子もしくは有機基で置き換えられていてもよい。
S
1、S
1´は、それぞれ独立に、単結合または、炭素数1から炭素数10で形成されるアルキレン基であり、このアルキレン基の1つまたは複数の水素原子は、フッ素原子もしくは有機基で置き換えられていてもよい。また、S
1、S
1´は、次に挙げるいずれかの基が互いに隣り合わない場合において、−CH
2−がこれらの基に置き換えられていてもよい;−O−、−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−、−NH−、−CO−。
P、P
´は、それぞれ独立に、下記式[P−1]〜[P−10]から選ばれる2価の光二量化を起こす基を表す。この2価の光二量化を起こす基の1つまたは複数の水素原子は、有機基で置き換えられていてもよい。
【0043】
【化12】
(式[P−1]〜[P−10]中、*はS
1、S
1´もしくはS
2、S
2´との結合位置を表す。)
【0044】
S
2、S
2´は、それぞれ独立に、単結合または、炭素数1から炭素数10で形成されるアルキレン基であり、このアルキレン基の1つまたは複数の水素原子は、フッ素原子もしくは有機基で置き換えられていてもよい。また、S
2、S
2´は、次に挙げるいずれかの基が互いに隣り合わない場合において、−CH
2−がこれらの基に置き換えられていてもよい;−O−、−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−、−NH−、−CO−。
L、L
´は、それぞれ独立に、下記式[L−1]〜[L−11]から選ばれる1価の光重合性基を表す。)
【0045】
【化13】
(式[L−1]〜[L−11]中、*はS
2、S
2´との結合位置を表す。)
【0046】
式[1]中のCは重合性化合物のコアの部位であり、Cは炭素数10から炭素数30で形成される2価の炭素環含有基(例えば、Cは炭素数10から炭素数30で形成される2価の炭素環)である。ただし、この炭素環含有基の1つまたは複数の水素原子はフッ素原子もしくは有機基で置き換えられていてもよい。有機基としては、例えば、アルキル基(−R)、ヒドロキシル基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、ハロゲン基(−Cl、−Br、−I)、シアノ基(−CN)、ジアルキルアミノ基(−NR
2)、エステル基(−COOR)、ニトロ基(−NO
2)、が挙げられる。2価の炭素環含有基としては、具体的には以下の式[C−1]〜[C−12]のような2価の基が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、その中でも、式[C−2]、[C−5]〜[C−8]、[C−10]から選ばれる2価の基が、入手性、合成の容易性及び、本発明の効果発現の観点から好ましく用いられる。
【0047】
【化14】
(式[C−1]〜[C−12]中、*はS
1、S
1´との結合位置を表す。)
【0048】
式[1]中のS
1、S
1´は重合性化合物のコアの部位であるCと光二量化を起こす部位であるP、P
´を結ぶスペーサー部位であり、単結合もしくは、炭素数1から炭素数10で形成されるアルキレン基である。ただし、このアルキレン基の任意の水素原子はフッ素原子もしくは有機基で置き換えられていてもよい。有機基としては、例えば、ヒドロキシル基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、ハロゲン基(−Cl、−Br、−I)、ジアルキルアミノ基(−NR
2)、エステル基(−COOR)挙げられる。また、置き換えられる水素原子は、1箇所であっても複数の箇所であってもよい。更には、このアルキレン基の1つまたは複数の−CH
2−は、次に挙げるいずれかの結合基が互いに隣り合わない場合において、−CH
2−がこれらの結合基に置き換えられていてもよい;−O−、−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−、−NH−、−NHCONH−、−NH−、−CO−。なお、該結合基で置き換えられる−CH
2−は1箇所であってもよく、該結合基同士が隣り合わなければ複数の箇所であってもよい。これは、S
1、S
1´が、アルキレン基−該結合基という構成もしくは、該結合基−アルキレン基という構成もしくは、アルキレン基−該結合基−アルキレン基という構成もしくは、該結合基−アルキレン基−該当結合基を含んでいてもよいことを意味している。なお、S
1及びS
1´は、同一の構造でも異なっていてもよいが、同一であると合成が容易である。
【0049】
式[1]中のP、P
´は上記式[P−1]〜[P−10]から選ばれる光二量化を起こす基を示す。光二量化を起こす基とは、光の照射によって反応することにより、二量体を形成する官能基である。また、これら1つまたは複数の水素原子は有機基で置換されていてもよい。有機基としては、例えば、アルキル基(−R)、ヒドロキシル基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、ハロゲン基(−Cl、−Br、−I)、シアノ基(−CN)、ジアルキルアミノ基(−NR
2)、エステル基(−COOR)、ニトロ基(−NO
2)が挙げられる。また、その中でも、上記式[P−1]〜[P−3]、[P−5]で表される2価の有機基が、合成の容易性、本発明の効果発現の観点から好ましく用いられる。
【0050】
式[1]中のS
2、S
2´は、光二量化を起こす部位であるP、P
´と光重合性基であるL、L
´を結ぶスペーサー部位であり、単結合もしくは、炭素数1から炭素数10で形成されるアルキレン基である。ただし、このアルキレン基の任意の水素原子はフッ素原子もしくは有機基で置き換えられていてもよい。有機基としては、例えば、ヒドロキシル基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、ハロゲン基(−Cl、−Br、−I)、ジアルキルアミノ基(−NR
2)、エステル基(−COOR)が挙げられる。また、置き換えられる水素原子は、1箇所であっても複数の箇所であってもよい。更には、このアルキレン基の1つまたは複数の−CH
2−は、次に挙げるいずれかの結合基が互いに隣り合わない場合において、−CH
2−がこれらの結合基に置き換えられていてもよい;−O−、−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−、−NH−、−NHCONH−、−NH−、−CO−。なお、該結合基で置き換えられる−CH
2−は1箇所であってもよく、該結合基同士が隣り合わなければ複数の箇所であってもよい。これは、S
2、S
2´が、アルキレン基−該結合基という構成もしくは、該結合基−アルキレン基という構成もしくは、アルキレン基−該結合基−アルキレン基という構成もしくは、該結合基−アルキレン基−該当結合基を含んでいてもよいことを意味している。なお、S
2及びS
2´は同一の構造でも異なっていてもよいが、同一であると合成が容易である。
【0051】
式[1]中のL、L
´は下記式[L−1]〜[L−11]から選ばれる1価の光重合性基を表す。なお、光重合性基とは、光を照射することにより、重合を生じさせる官能基である。
【0052】
【化15】
(式[L−1]〜[L−11]中、*はS
2、S
2´との結合位置を表す。)
【0053】
また、その中でも、式[L−1]、[L−2]で表される1価の光重合性基が、合成の容易性の観点から、そして、式[L−7]で表される1価の光重合性基が、耐熱性の観点から、それぞれ好ましく用いられる。
【0054】
<特定重合性化合物の合成方法>
本発明の式[1]で表される特定重合性化合物を合成する方法は特に限定されないが、次にあげる方法で合成する方法などが挙げられる。
例えば、L
´−S
2´−P
´−S
1´−C−S
1−P−S
2−Lの構造中に、アミド結合(−CONH−)又は逆アミド結合(−HNCO−)をもつ場合には、Cもしくは、S
1、S
1´、もしくは、P、P
´、もしくは、S
2、S
2´、もしくは、L、L
´の末端に酸クロリド基(−COCl)が結合しているものと、Cもしくは、S
1、S
1´、もしくは、P、P
´、もしくは、S
2、S
2´、もしくは、L、L
´の末端にアミノ基(−NH
2)が結合しているものとを、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0055】
例えば、L
´−S
2´−P
´−S
1´−C−S
1−P−S
2−Lの構造中に、エステル結合(−COO−)又は逆エステル結合(−OCO−)をもつ場合には、Cもしくは、S
1、S
1´、もしくは、P、P
´、もしくは、S
2、S
2´、もしくは、L、L
´の末端に酸クロリド基(−COCl)が結合しているものと、Cもしくは、S
1、S
1´、もしくは、P、P
´、もしくは、S
2、S
2´、もしくは、L、L
´の末端にヒドロキシル基(−OH)が結合しているものとを、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0056】
例えばL
´−S
2´−P
´−S
1´−C−S
1−P−S
2−Lの構造中にエーテル結合(−O−)をもつ場合には、Cもしくは、S
1、S
1´、もしくは、P、P
´、もしくは、S
2、S
2´、もしくは、L、L
´の末端にハロゲン基(−F、−Cl、−Br、−I)が結合しているものと、Cもしくは、S
1、S
1´、もしくは、P、P
´、もしくは、S
2、S
2´、もしくは、L、L
´の末端にヒドロキシル基(−OH)が結合しているものとを、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0057】
例えば、L
´−S
2´−P
´−S
1´−C−S
1−P−S
2−Lの構造中にアミノ結合(−NH−)をもつ場合には、Cもしくは、S
1、S
1´、もしくは、P、P
´、もしくは、S
2、S
2´、もしくは、L、L
´の末端にハロゲン基(−F、−Cl、−Br、−I)が結合しているものと、Cもしくは、S
1、S
1´、もしくは、P、P
´、もしくは、S
2、S
2´、もしくは、L、L
´の末端にアミノ基(−NH
2)が結合しているものとを、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0058】
例えば、L
´−S
2´−P
´−S
1´−C−S
1−P−S
2−Lの構造中にカルボニル結合(−CO−)をもつ場合には、Cもしくは、S
1、S
1´、もしくは、P、P
´、もしくは、S
2、S
2´、もしくは、L、L
´の末端にアルデヒド基(−CHO)が結合しているものと、Cもしくは、S
1、S
1´、もしくは、P、P
´、もしくは、S
2、S
2´、もしくは、L、L
´の末端にボロン酸基(−B(OH)
2)が結合しているものとを、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0059】
式[1]で表される特定重合性化合物の具体例としては、下記式で表される重合性化合物が挙げられる。式[1]の具体例である下記式中、S
1、S
1´、S
2、S
2´は、それぞれ独立に、単結合または、炭素数1から炭素10で形成されるアルキレン基であり、このアルキレン基の1つまたは複数の水素原子は、フッ素原子もしくは有機基で置き換えられていてもよい。また、S
2、S
2´は、次に挙げるいずれかの基が互いに隣り合わない場合において、−CH
2−がこれらの基に置き換えられていてもよい;−O−、−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−、−NH−、−CO−。
【0066】
このような本発明の式[1]で表される重合性化合物を含有する液晶配向剤を用いることにより、液晶表示素子の応答速度を、液晶中に重合性化合物を含有させず、且つ、少ない照射量の場合においても、また、より長波長の紫外線照射条件においても、向上させることができる。本発明の式[1]で表される重合性化合物を含有する液晶配向剤を用いることによって、なぜ本発明の課題を解決出来るのかについては必ずしも明らかではないが、概ね以下のように考えられる。本発明の式[1]で表される重合性化合物は、その中心部分に嵩高く芳香環を含む官能基を有するためか、重合性化合物自体の吸収極大が長波長にシフトし、結果として、より長波長の紫外線においても充分に反応し、液晶を固定させることが出来、応答速度が速くなると考えられる。また、式[1]で表される重合性化合物は嵩高い構造の為か、液晶配向膜の成膜時において高温に曝されても、重合性化合物が昇華してしまうことなく膜中に残存する。その結果、少量の紫外線においても充分に反応し、液晶を固定させることが出来ると考えられる。
【0067】
<液晶を配向させ得る液晶配向膜を形成する重合体>
本発明の液晶配向剤が含有する液晶を配向させ得る液晶配向膜を形成する重合体は、基板上に形成された液晶配向膜上の液晶を配向させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ポリイミド前駆体や該ポリイミド前駆体をイミド化させて得られるポリイミドが挙げられる。ポリイミド前駆体としては、ポリアミック酸(ポリアミド酸とも言う)もしくはポリアミック酸エステルが挙げられる。このようなポリイミド前駆体は、ジアミン成分(例えば、後述する液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミンや、光反応性の側鎖を有するジアミン等のジアミン)とテトラカルボン酸二無水物成分(例えば、後述するテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドやテトラカルボン酸ジエステル等)との反応によって得られる。具体的には、ポリアミック酸は、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応によって得られる。ポリアミック酸エステルは、ジアミン成分とテトラカルボン酸ジエステルジクロリドを塩基存在下で反応させる、またはテトラカルボン酸ジエステルとジアミン成分を適当な縮合剤、塩基の存在下にて反応させることによって得られる。また、ポリイミドはこのポリアミック酸を脱水閉環させる、あるいはポリアミック酸エステルを加熱閉環させることにより得られる。かかるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドのいずれも液晶配向膜を得るための重合体として有用である。
【0068】
本発明の液晶配向剤が含有する液晶を配向させ得る液晶配向膜を形成する重合体の具体例としては、例えば、基板上に形成された液晶配向膜上の液晶を基板に対して垂直に配向させることができる重合体が挙げられる。このような、基板上に形成された液晶配向膜上の液晶を基板に対して垂直に配向させることができる重合体としては、液晶を垂直に配向させる側鎖を有する重合体が好ましく、液晶を垂直に配向させる側鎖を有するポリイミド前駆体や該ポリイミド前駆体をイミド化させて得られるポリイミドが挙げられる。
【0069】
液晶を垂直に配向させる側鎖は、液晶を基板に対して垂直に配向させることができる構造であれば限定されないが、例えば、長鎖のアルキル基、長鎖アルキル基の途中に環構造や枝分かれ構造を有する基、ステロイド基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子に置き換えた基などが挙げられる。液晶を垂直に配向させる側鎖は、ポリイミド前駆体又はポリイミド等の重合体の主鎖に直接結合していてもよく、また、適当な結合基を介して結合していてもよい。液晶を垂直に配向させる側鎖としては、例えば下記式(a)で表されるものが挙げられる。
【0071】
(式(a)中l、m及びnはそれぞれ独立に0又は1の整数を表し、R
7は炭素数2〜6のアルキレン基、−O−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、又は炭素数1〜3のアルキレン基−エーテル基を表し、R
8、R
9及びR
10はそれぞれ独立にフェニレン基又はシクロアルキレン基を表し、R
11は水素原子、炭素数2〜24のアルキル基又はフッ素含有アルキル基、1価の芳香環、1価の脂肪族環、1価の複素環、又はそれらからなる1価の大環状置換体を表す。)
【0072】
なお、上記式(a)中のR
7は、合成の容易性の観点からは、−O−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン基−エーテル基が好ましい。
【0073】
また、式(a)中のR
8、R
9及びR
10は、合成の容易性及び液晶を垂直に配向させる能力の観点から、下記表1に示すl、m、n、R
8、R
9及びR
10の組み合わせが好ましい。
【0075】
そして、l、m、nの少なくとも一つが1である場合、式(a)中のR
11は、好ましくは水素原子または炭素数2〜14のアルキル基もしくはフッ素含有アルキル基であり、より好ましくは水素原子または炭素数2〜12のアルキル基もしくはフッ素含有アルキル基である。また、l、m、nがともに0である場合、R
11は、好ましくは炭素数12〜22のアルキル基またはフッ素含有アルキル基、1価の芳香環、1価の脂肪族環、1価の複素環、それらからなる1価の大環状置換体であり、より好ましくは炭素数12〜20のアルキル基またはフッ素含有アルキル基である。
【0076】
液晶を垂直に配向させる側鎖の存在量は、液晶配向膜が液晶を垂直に配向させることができる範囲であれば特に限定されない。但し、前記液晶配向膜を具備する液晶表示素子において、電圧保持率や残留DC電圧の蓄積など、素子の表示特性を損なわない範囲内で、液晶を垂直に配向させる側鎖の存在量は可能な限り少ない方が好ましい。
【0077】
なお、液晶を垂直に配向させる側鎖を有する重合体が液晶を垂直に配向させる能力は、液晶を垂直に配向させる側鎖の構造によって異なるが、一般的に、液晶を垂直に配向させる側鎖の量が多くなると液晶を垂直に配向させる能力は上がり、少なくなると下がる。また、環状構造を有すると、環状構造を有さない場合と比較して、液晶を垂直に配向させる能力が高い傾向がある。
【0078】
また、液晶を垂直に配向させる液晶配向膜を形成する重合体は、光反応性の側鎖を有することが好ましい。光反応性の側鎖を有すると、応答速度をより向上させることができる。光反応性の側鎖とは、紫外線の照射によって反応し、共有結合を形成し得る官能基(以下、光反応性基とも言う)を有する側鎖であり、この能力を有していればその構造は限定されない。光反応性の側鎖としては、例えば光反応性基としてビニル基、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基、シンナモイル基、カルコニル基、クマリン基、マレイミド基などを有する側鎖などが挙げられる。光反応性の側鎖は、ポリイミド前駆体又はポリイミド等の重合体の主鎖に直接結合していてもよく、また、適当な結合基を介して結合していてもよい。光反応性の側鎖としては、例えば下記式(b)で表されるものが挙げられる。
【0080】
(式(b)中、R
12は単結合又は−CH
2−、−O−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−NH−、−CH
2O−、−N(CH
3)−、−CON(CH
3)−、−N(CH
3)CO−、のいずれかを表し、R
13は単結合、又は、非置換またはフッ素原子によって置換されている炭素数1〜20のアルキレン基を表し、アルキレン基の−CH
2−は−CF
2−又は−CH=CH−で任意に置き換えられていてもよく、次に挙げるいずれかの基が互いに隣り合わない場合において、これらの基に置き換えられていてもよい;−O−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−NH−、2価の炭素環、2価の複素環。R
14はビニル基、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基、−N(CH
2CH=CH
2)
2、又は下記式で表される構造を表す。)
【0082】
なお、上記式(b)中のR
12は、通常の有機合成的手法で形成させることができるが、合成の容易性の観点から、−CH
2−、−O−、−COO−、−NHCO−、−NH−、−CH
2O−が好ましい。
【0083】
また、R
13の任意の−CH
2−を置き換える2価の炭素環や2価の複素環の炭素環や複素環としては、具体的には以下のような構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0086】
R
14は、光反応性の観点から、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基、−N(CH
2CHCH
2)
2又は下記式で表される構造であることが好ましい。
【0088】
また、上記式(b)は、より好ましくは下記の構造である。
【0090】
光反応性の側鎖の存在量は、紫外線の照射によって反応し共有結合を形成することにより液晶の応答速度を速めることができる範囲であることが好ましく、液晶の応答速度をより速めるためには、他の特性に影響が出ない範囲で、可能な限り多いほうが好ましい。
【0091】
このような液晶を垂直に配向させる液晶配向膜を形成する重合体を製造する方法は特に限定されないが、例えば、液晶を垂直に配向させる側鎖を有するポリアミック酸を製造する場合は、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分との反応によってポリアミック酸を得る方法において、液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミン又は液晶を垂直に配向させる側鎖を有するテトラカルボン酸二無水物を共重合させる方法が簡便である。また、液晶を垂直に配向させる液晶配向膜を形成する重合体に光反応性の側鎖を含有させる場合は、光反応性の側鎖を有するジアミン又は光反応性の側鎖を有するテトラカルボン酸二無水物を共重合させればよい。
【0092】
液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミンとしては、長鎖のアルキル基、長鎖アルキル基の途中に環構造や枝分かれ構造を有する基、ステロイド基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子に置き換えた基を側鎖として有するジアミン、例えば上記式(a)で表される側鎖を有するジアミンを挙げることができる。より具体的には例えば下記式(2)、(3)、(4)、(5)で表されるジアミンを挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。
【0094】
(式(2)中のl、m、n、R
7〜R
11の定義は、上記式(a)と同じである。)
【0097】
(式(3)及び式(4)中、A
10は−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CH
2−、−O−、−CO−、又は−NH−を表し、A
11は単結合若しくはフェニレン基を表し、aは上記式(a)で表される液晶を垂直に配向させる側鎖と同一の構造を表し、a’は上記式(a)で表される液晶を垂直に配向させる側鎖と同一の構造から水素等の元素が一つ取れた構造である2価の基を表す。)
【0099】
(式(5)中、A
14は、フッ素原子で置換されていてもよい、炭素数3〜20のアルキル基であり、A
15は、1,4−シクロへキシレン基、又は1,4−フェニレン基であり、A
16は、酸素原子、又は−COO−*(ただし、「*」を付した結合手がA
3と結合する)であり、A
17は酸素原子、又は−COO−*(ただし、「*」を付した結合手が(CH
2)a
2と結合する。)である。また、a
1は0、又は1の整数であり、a
2は2〜10の整数であり、a
3は0、又は1の整数である。)
【0100】
式(2)における二つのアミノ基(−NH
2)の結合位置は限定されない。具体的には、側鎖の結合基に対して、ベンゼン環上の2,3の位置、2,4の位置、2,5の位置、2,6の位置、3,4の位置、3,5の位置が挙げられる。なかでも、ポリアミック酸を合成する際の反応性の観点から、2,4の位置、2,5の位置、又は3,5の位置が好ましい。ジアミンを合成する際の容易性も加味すると、2,4の位置、又は3,5の位置がより好ましい。
【0101】
式(2)の具体的な構造としては、下記の式[A−1]〜式[A−24]で示されるジアミンを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0103】
(式[A−1]〜式[A−5]中、A
1は、炭素数2〜24のアルキル基又はフッ素含有アルキル基である。)
【0105】
(式[A−6]及び式[A−7]中、A
2は、−O−、−OCH
2−、−CH
2O−、−COOCH
2−、又は−CH
2OCO−を示し、A
3は炭素数1〜22のアルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルコキシ基である。)
【0107】
(式[A−8]〜式[A−10]中、A
4は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COOCH
2−、−CH
2OCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、又は−CH
2−を示し、A
5は炭素数1〜22のアルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルコキシ基である。)
【0109】
(式[A−11]及び式[A−12]中、A
6は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COOCH
2−、−CH
2OCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CH
2−、−O−、又は−NH−を示し、A
7はフッ素基、シアノ基、トリフルオロメタン基、ニトロ基、アゾ基、ホルミル基、アセチル基、アセトキシ基、又は水酸基である。)
【0111】
(式[A−13]及び式[A−14]中、A
8は、炭素数3〜12のアルキル基であり、1,4−シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体である。)
【0113】
(式[A−15]及び式[A−16]中、A
9は、炭素数3〜12のアルキル基であり、1,4−シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体である。)
【0117】
式(3)で表されるジアミンの具体例としては、下記の式[A−25]〜式[A−30]で示されるジアミンを挙げることが出来るが、これに限るものではない。
【0119】
(式[A−25]〜式[A−30]中、A
12は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CH
2−、−O−、−CO−、又は−NH−を示し、A
13は炭素数1〜22のアルキル基又はフッ素含有アルキル基を示す。)
【0120】
式(4)で表されるジアミンの具体例としては、下記の式[A−31]〜式[A−32]で示されるジアミンを挙げることが出来るが、これに限るものではない。
【0122】
この中でも、液晶を垂直に配向させる能力、液晶の応答速度の観点から、[A−1]、[A−2]、[A−3]、[A−4]、[A−5]、[A−25]、[A−26]、[A−27]、[A−28]、[A−29]、[A−30]のジアミンが好ましい。
【0123】
上記のジアミンは、液晶配向膜とした際の液晶配向性、プレチルト角、電圧保持特性、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0124】
このような液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミンは、ポリアミック酸等の合成に用いるジアミン成分の5〜50モル%となる量を用いることが好ましく、より好ましくはジアミン成分の10〜40モル%が液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミンであり、特に好ましくは15〜30モル%である。このように液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミンを、ポリアミック酸等の合成に用いるジアミン成分の5〜50モル%量を用いると、応答速度の向上や液晶の配向固定化能力の点で特に優れる。
【0125】
光反応性の側鎖を有するジアミンとしては、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基、シンナモイル基、カルコニル基、クマリン基、マレイミド基などの光反応性基を側鎖として有するジアミン、例えば、上記式(b)で表される側鎖を有するジアミンを挙げることができる。より具体的には例えば下記の一般式(6)で表されるジアミンを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0126】
【化44】
(式(6)中のR
12、R
13及びR
14の定義は、上記式(b)と同じである。)
【0127】
式(6)における二つのアミノ基(−NH
2)の結合位置は限定されない。具体的には、側鎖の結合基に対して、ベンゼン環上の2,3の位置、2,4の位置、2,5の位置、2,6の位置、3,4の位置、3,5の位置が挙げられる。なかでも、ポリアミック酸を合成する際の反応性の観点から、2,4の位置、2,5の位置、又は3,5の位置が好ましい。ジアミンを合成する際の容易性も加味すると、2,4の位置、又は3,5の位置がより好ましい。
【0128】
光反応性基を有するジアミンとしては、具体的には以下のような化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0129】
【化45】
(式中、Xは単結合、又は、−O−、−COO−、−NHCO−、−NH−より選ばれる結合基、Yは単結合、又は、非置換またはフッ素原子によって置換されている炭素数1〜20のアルキレン基を表す。)
【0130】
上記光反応性基を有するジアミンは、液晶配向膜とした際の液晶配向性、プレチルト角、電圧保持特性、蓄積電荷などの特性、液晶表示素子とした際の液晶の応答速度などに応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0131】
また、このような光反応性基を有するジアミンは、ポリアミック酸等の合成に用いるジアミン成分の10〜70モル%となる量を用いることが好ましく、より好ましくは20〜60モル%、特に好ましくは30〜50モル%である。
【0132】
なお、ポリアミック酸等は、本発明の効果を損わない限りにおいて、上記液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミンや、光反応性基を有するジアミン以外の、その他のジアミンをジアミン成分として併用することができる。また、液晶を垂直に配向させる必要がない場合には、液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミンの導入量を減らせば良いし、液晶を水平に配向させたい場合は、液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミンを用いなければ良い。
【0133】
その他のジアミンは、具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、2,4−ジアミノベンジルアルコール、4,6−ジアミノレゾルシノール、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ビフェニル、3,3’−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、2,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、2,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−スルホニルジアニリン、3,3’−スルホニルジアニリン、ビス(4−アミノフェニル)シラン、ビス(3−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(4−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(3−アミノフェニル)シラン、4,4’−チオジアニリン、3,3’−チオジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルアミン、3,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2’−ジアミノジフェニルアミン、2,3’−ジアミノジフェニルアミン、N−メチル(4,4’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(3,3’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(3,4’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(2,2’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(2,3’−ジアミノジフェニル)アミン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,4−ジアミノナフタレン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、2,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,5−ジアミノナフタレン、2,6ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,8−ジアミノナフタレン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,2−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4アミノフェニル)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ブタン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、1,4−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,4−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(3−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4−アミノフェニル)イソフタレート、ビス(3−アミノフェニル)イソフタレート、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)イソフタルアミド、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)プロパン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,5−ビス(3−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)へキサン、1,6−ビス(3−アミノフェノキシ)へキサン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,7−(3−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,8−ビス(3−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,9−ビス(3−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−(4−アミノフェノキシ)デカン、1,10−(3−アミノフェノキシ)デカン、1,11−(4−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,11−(3−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,12−(4−アミノフェノキシ)ドデカン、1,12−(3−アミノフェノキシ)ドデカンなどの芳香族ジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノへキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンなどの脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0134】
上記その他のジアミンは、液晶配向膜とした際の液晶配向性、プレチルト角、電圧保持特性、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0135】
ポリアミック酸の合成で上記のジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸二無水物は特に限定されない。具体的には、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、1,3−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、オキシジフタルテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロヘプタンテトラカルボン酸、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、3,4−ジカルボキシ−1−シクロへキシルコハク酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸、ビシクロ[4,3,0]ノナン−2,4,7,9−テトラカルボン酸、ビシクロ[4,4,0]デカン−2,4,7,9−テトラカルボン酸、ビシクロ[4,4,0]デカン−2,4,8,10−テトラカルボン酸、トリシクロ[6.3.0.0<2,6>]ウンデカン−3,5,9,11−テトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドリナフタレン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロへキサン−1,2−ジカルボン酸、テトラシクロ[6,2,1,1,0,2,7]ドデカ−4,5,9,10−テトラカルボン酸、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2:3,5:6ジカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸等が挙げられる。勿論、テトラカルボン酸二無水物も、液晶配向膜にした際の液晶配向性、電圧保持特性、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上併用してもよい。
【0136】
本発明で用いる液晶配向剤中に含有されるポリアミック酸エステルを得るためにジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸エステルは特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
【0137】
脂肪族テトラカルボン酸ジエステルの具体的な例としては1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸ジアルキルエステル、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸ジアルキルエステル、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸ジアルキルエステル、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸ジアルキルエステル、トリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4,7,8−テトラカルボン酸−3,4:7,8−ジアルキルエステル、ヘキサシクロ[6.6.0.12,7.03,6.19,14.010,13]ヘキサデカン−4,5,11,12−テトラカルボン酸−4,5:11,12−ジアルキルエステル、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンー1,2−ジカルボンジアルキルエステルなどが挙げられる。
【0138】
芳香族テトラカルボン酸ジアルキルエステルとしては、ピロメリット酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,3’,4−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテルジアルキルエステル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホンジアルキルエステル、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸ジアルキルエステルなどが挙げられる。
【0139】
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分との反応により、ポリアミック酸を得るにあたっては、公知の合成手法を用いることができる。一般的には、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを有機溶媒中で反応させる方法である。ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分との反応は、有機溶媒中で比較的容易に進行し、かつ副生成物が発生しない点で有利である。
【0140】
上記反応に用いる有機溶媒としては、生成したポリアミック酸が溶解するものであれば特に限定されない。さらに、ポリアミック酸が溶解しない有機溶媒であっても、生成したポリアミック酸が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。なお、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリアミック酸を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−エチル−1−ヘキサノール等が挙げられる。これらの有機溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0141】
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを有機溶媒中で反応させる際には、ジアミン成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌し、テトラカルボン酸二無水物成分をそのまま、または有機溶媒に分散あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸二無水物成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを交互に添加する方法などが挙げられ、これらのいずれの方法を用いてもよい。また、ジアミン成分又はテトラカルボン酸二無水物成分が複数種の化合物からなる場合は、あらかじめ混合した状態で反応させてもよく、個別に順次反応させてもよく、さらに個別に反応させた低分子量体を混合反応させ高分子量体としてもよい。
【0142】
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させる際の温度は、任意の温度を選択することができ、例えば−20℃〜150℃、好ましくは−5℃〜100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができ、例えば反応液に対してジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分との合計量が1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。
【0143】
上記の重合反応における、ジアミン成分の合計モル数に対するテトラカルボン酸二無水物成分の合計モル数の比率は、得ようとするポリアミック酸の分子量に応じて任意の値を選択することができる。通常の重縮合反応と同様に、このモル比が1.0に近いほど生成するポリアミック酸の分子量は大きくなる。あえて好ましい範囲を示すならば0.8〜1.2である。
【0144】
本発明に用いられるポリアミック酸を合成する方法は上記の手法に限定されず、一般的なポリアミック酸の合成方法と同様に、上記のテトラカルボン酸二無水物に代えて、対応する構造のテトラカルボン酸又はテトラカルボン酸ジハライドなどのテトラカルボン酸誘導体を用い、公知の方法で反応させることでも対応するポリアミック酸を得ることができる。
【0145】
ポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステルは、以下に示す(1)〜(3)の方法で合成することができる。
【0146】
(1)ポリアミック酸から合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られるポリアミック酸をエステル化することによって合成することができる。
【0147】
具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
【0148】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジ−t−ブチルアセタール、1−メチル−3−p−トリルトリアゼン、1−エチル−3−p−トリルトリアゼン、1−プロピル−3−p−トリルトリアゼン、4−(4,6−ジメトキシー1,3,5−トリアジンー2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2〜6モル当量が好ましい。
【0149】
上記の反応に用いる溶媒は、ポリマーの溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0150】
(2)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンから合成することができる。
【0151】
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを塩基と有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
【0152】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2〜4倍モルであることが好ましい。
【0153】
上記の反応に用いる溶媒は、モノマーおよびポリマーの溶解性からN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが好ましく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0154】
(3)テトラカルボン酸ジエステルとジアミンからポリアミック酸を合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを重縮合することにより合成することができる。
【0155】
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを縮合剤、塩基、有機溶剤の存在下で0℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃において、30分〜24時間、好ましくは3〜15時間反応させることによって合成することができる。
【0156】
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して2〜3倍モルであることが好ましい。
【0157】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、ジアミン成分に対して2〜4倍モルが好ましい。
【0158】
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して0〜1.0倍モルが好ましい。
【0159】
上記3つのポリアミック酸エステルの合成方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記(1)又は上記(2)の合成法が特に好ましい。
【0160】
上記のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0161】
上記したポリアミック酸やポリアミック酸エステルをイミド化させてポリイミドとする方法としては、ポリアミック酸やポリアミック酸エステルの溶液をそのまま加熱する熱イミド化、ポリアミック酸やポリアミック酸エステルの溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。なお、ポリアミック酸やポリアミック酸エステルからポリイミドへのイミド化率は、必ずしも100%である必要はない。
【0162】
ポリアミック酸やポリアミック酸エステルを溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100℃〜400℃、好ましくは120℃〜250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行うことが好ましい。
【0163】
ポリアミック酸やポリアミック酸エステルの触媒イミド化は、ポリアミック酸やポリアミック酸エステルの溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、−20〜250℃、好ましくは0〜180℃で攪拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどを挙げることができ、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0164】
ポリアミック酸、ポリアミック酸エステルやポリイミドの反応溶液から、生成したポリアミック酸、ポリアミック酸エステルやポリイミドを回収する場合には、反応溶液を貧溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる貧溶媒としてはメタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させたポリマーは濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2〜10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0165】
本発明の液晶配向剤は、上述したように特定重合性化合物と、液晶を配向させ得る液晶配向膜を形成する重合体と、溶媒とを有するものであればよく、その配合割合に特に限定はないが、特定重合性化合物の含有量は、液晶を配向させ得る液晶配向膜を形成する重合体100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、さらに好ましくは5〜30質量部である。また、液晶配向剤に含有させる液晶を配向させ得る液晶配向膜を形成する重合体の含有量は1質量%〜20質量%が好ましく、より好ましくは3質量%〜15質量%、特に好ましくは3〜10質量%である。
【0166】
また、本発明の液晶配向剤は、液晶を配向させ得る液晶配向膜を形成する重合体以外の他の重合体を含有していてもよい。その際、重合体全成分中におけるかかる他の重合体の含有量は0.5質量%〜15質量%が好ましく、より好ましくは1質量%〜10質量%である。
【0167】
液晶配向剤が有する重合体の分子量は、液晶配向剤を塗布して得られる液晶配向膜の強度及び、塗膜形成時の作業性、塗膜の均一性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で5,000〜1,000,000とするのが好ましく、より好ましくは、10,000〜150,000である。
【0168】
<溶媒>
本発明の液晶配向剤が含有する溶媒に特に限定はなく、特定重合性化合物や、液晶を配向させ得る液晶配向膜を形成する重合体等の含有成分を溶解または分散できるものであればよい。例えば、上記のポリアミック酸の合成で例示したような有機溶媒を挙げることができる。中でもN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドは、溶解性の観点から好ましい。勿論、2種類以上の混合溶媒を用いてもよい。
【0169】
また、塗膜の均一性や平滑性を向上させる溶媒を、液晶配向剤の含有成分の溶解性が高い溶媒に混合して使用すると好ましい。塗膜の均一性や平滑性を向上させる溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル、2−エチル−1−ヘキサノールなどが挙げられる。これらの溶媒は複数種類を混合してもよい。これらの溶媒を用いる場合は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜60質量%である。
【0170】
液晶配向剤には、上記以外の成分を含有してもよい。その例としては、液晶配向剤を塗布した際の膜厚均一性や表面平滑性を向上させる化合物、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物などが挙げられる。
【0171】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、F173、R−30(大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子社製)などが挙げられる。これらの界面活性剤を使用する場合、その使用割合は、液晶配向剤に含有される重合体の総量100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0172】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物などが挙げられる。例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタン、3−(N−アリル−N−グリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。また液晶配向膜の膜強度をさらに上げるために2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン、テトラ(メトキシメチル)ビスフェノール等のフェノール化合物を添加してもよい。これらの化合物を使用する場合は、液晶配向剤に含有される重合体の総量100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部である。
【0173】
さらに、液晶配向剤には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
【0174】
この液晶配向剤を基板上に塗布して焼成することにより、液晶を垂直に配向させる液晶配向膜等の液晶を配向させ得る液晶配向膜を形成することができる。本発明の液晶配向剤は、特定重合性化合物を有するため、液晶中に重合性化合物を含有させずに、得られる液晶配向膜を用いた液晶表示素子の応答速度を速いものとすることができる。また、液晶配向剤を用いて液晶配向膜を形成する際に、高温で焼成する場合においても、得られる液晶配向膜を用いた液晶表示素子の応答速度を速いものとすることができる。勿論、液晶中に特定重合性化合物を含有させた場合や、低温(例えば140℃以下)で焼成する場合においても、液晶表示素子の応答速度を速いものとすることができる。
【0175】
この際、用いる基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板などを用いることができる。また、液晶駆動のためのITO(Indium Tin Oxide)電極などが形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミ等の光を反射する材料も使用できる。
【0176】
液晶配向剤の塗布方法は特に限定されず、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェットなどで行う方法や、ディップ、ロールコーター、スリットコーター、スピンナーなどが挙げられる。
【0177】
液晶配向剤を塗布することにより形成された塗膜の焼成温度は限定されず、例えば100〜350℃の任意の温度で行うことができるが、好ましくは120℃〜300℃であり、さらに好ましくは150℃〜250℃である。この焼成はホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などで行うことができる。
【0178】
また、焼成して得られる液晶配向膜の厚みは特に限定されないが、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜100nmである。
【0179】
そして、本発明の液晶表示素子は、対向するように配置された2枚の基板と、基板間に設けられた液晶層と、基板と液晶層との間に設けられ本発明の液晶配向剤により形成された上記液晶配向膜とを有する液晶セルを具備する垂直配向方式等の液晶表示素子である。具体的には、本発明の液晶配向剤を2枚の基板上に塗布して焼成することにより液晶配向膜を形成し、この液晶配向膜が対向するように2枚の基板を配置し、この2枚の基板の間に液晶で構成された液晶層を挟持し、液晶配向膜及び液晶層に電圧を印加しながら紫外線を照射することで作製される液晶セルを具備する垂直配向方式等の液晶表示素子である。このように本発明の液晶配向剤により形成された液晶配向膜を用い、液晶配向膜及び液晶層に電圧を印加しながら紫外線を照射して、特定重合性化合物を重合させると共に、液晶を配向させ得る液晶配向膜を形成する重合体や特定重合性化合物の重合体と、特定重合性化合物とを反応させて、これらを架橋することにより、応答速度に優れた液晶表示素子となる。
【0180】
本発明の液晶表示素子に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されないが、通常は、基板上に液晶を駆動するための透明電極が形成された基板である。具体例としては、上記液晶配向膜で記載した基板と同様のものを挙げることができる。従来の電極パターンや突起パターンが設けられた基板を用いてもよいが、本発明の液晶表示素子においては、液晶配向膜を形成する液晶配向剤として特定重合性化合物を含有する本発明の液晶配向剤を用いているため、片側基板に1から10μmのライン/スリット電極パターンを形成し、対向基板にはスリットパターンや突起パターンを形成していない構造においても動作可能であり、この構造の液晶表示素子によって、製造時のプロセスを簡略化でき、高い透過率を得ることができる。
【0181】
また、TFT型の素子のような高機能素子においては、液晶駆動のための電極と基板の間にトランジスタの如き素子が形成されたものが用いられる。
【0182】
透過型の液晶表示素子の場合は、上記の如き基板を用いることが一般的であるが、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な基板も用いることが可能である。その際、基板に形成された電極には、光を反射するアルミニウムの如き材料を用いることもできる。
【0183】
液晶配向膜は、この基板上に本発明の液晶配向剤を塗布した後焼成することにより形成されるものであり、詳しくは上述したとおりである。
【0184】
本発明の液晶表示素子の液晶層を構成する液晶材料は特に限定されず、従来の垂直配向方式等で使用される液晶材料、例えばメルク社製のMLC−6608やMLC−6609などのネガ型の液晶を用いることができる。
【0185】
この液晶層を2枚の基板の間に挟持させる方法としては、公知の方法を挙げることができる。例えば、液晶配向膜が形成された1対の基板を用意し、一方の基板の液晶配向膜上にビーズ等のスペーサーを散布し、液晶配向膜が形成された側の面が内側になるようにしてもう一方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法が挙げられる。また、液晶配向膜が形成された1対の基板を用意し、一方の基板の液晶配向膜上にビーズ等のスペーサーを散布した後に液晶を滴下し、その後液晶配向膜が形成された側の面が内側になるようにしてもう一方の基板を貼り合わせて封止を行う方法でも液晶セルを作製することができる。このときのスペーサーの厚みは、好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜10μmである。
【0186】
液晶配向膜及び液晶層に電圧を印加しながら紫外線を照射することにより液晶セルを作製する工程は、例えば基板上に設置されている電極間に電圧をかけることで液晶配向膜及び液晶層に電界を印加し、この電界を保持したまま紫外線を照射する方法が挙げられる。ここで、電極間にかける電圧としては例えば5〜30Vp−p、好ましくは5〜20Vp−pである。紫外線の照射量は、例えば1〜60J、好ましくは40J以下であり、紫外線照射量が少ないほうが、液晶表示素子を構成する部材の破壊により生じる信頼性低下を抑制でき、かつ紫外線照射時間を減らせることで製造効率が上がるので好適である。また、照射する紫外線の波長は、例えば、200nm〜400nmである。本発明においては、式[1]で表される重合性化合物を含有する液晶配向剤を用いているため、紫外線の照射条件が、少ない照射量の場合においても、また、より長波長(例えば300〜400nm)の紫外線照射である場合においても、液晶表示素子の応答速度を向上させることができる。
【0187】
このように、液晶配向膜及び液晶層に電圧を印加しながら紫外線を照射すると、特定重合性化合物が反応して重合体を形成し、この重合体により液晶分子が傾く方向が記憶されることで、得られる液晶表示素子の応答速度を速くすることができる。
【0188】
上記では、液晶配向膜を形成する液晶配向剤に特定重合性化合物を含有させて作製された液晶表示素子について説明したが、本発明の液晶表示素子は、液晶にも特定重合性化合物を含有させて作製されたものであってもよい。
【0189】
また、上記液晶配向剤は、PSA型液晶ディスプレイやSC−PVA型液晶ディスプレイ等の垂直配向方式等の液晶表示素子を作製するための液晶配向剤として有用なだけでなく、ラビング処理や光配向処理によって作製される液晶配向膜の用途でも好適に使用できる。
【実施例】
【0190】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0191】
実施例において使用したテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの略号とその構造を以下に示す。
BODA:ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物
CBDA:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
3AMPDA:下記式で表される3,5−ジアミノ−N−(ピリジン−3−イルメチル)ベンズアミド
【0192】
【化46】
【0193】
PCH:1,3−ジアミノ−4−[4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシ]ベンゼン
BEM−S:下記式で表される2−(メタクリロイロキシ)エチル3,5−ジアミノベンゾエート
【0194】
【化47】
【0195】
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ
THF:テトラヒドロフラン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
EtOH: エタノール
RM1:下記式で表される重合性化合物
【0196】
【化48】
【0197】
RM2:下記式で表される重合性化合物
【0198】
【化49】
【0199】
RM3:下記式で表される重合性化合物
【0200】
【化50】
【0201】
RM4:下記式で表される重合性化合物
【0202】
【化51】
【0203】
RM5:下記式で表される重合性化合物
【0204】
【化52】
【0205】
<
1HNMRの測定>
重合性化合物の
1HNMRの測定条件は、以下の通りである。
装置:フーリエ変換型超伝導核磁気共鳴装置(FT−NMR)INOVA−400(Varian製)400MHz
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d
6)、重水素化クロロホルム(CDCl
3)
標準物質:テトラメチルシラン(TMS)
【0206】
また、ポリイミドの分子量測定条件は、以下の通りである。
装置:センシュー科学社製 常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(SSC−7200)、
カラム:Shodex社製カラム(KD−803、KD−805)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N’−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H
2O)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量約900,000、150,000、100,000、30,000)、および、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(分子量 約12,000、4,000、1,000)。
【0207】
また、ポリイミドのイミド化率は次のようにして測定した。ポリイミド粉末20mgをNMRサンプル管(草野科学社製 NMRサンプリングチューブスタンダード φ5)に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d
6、0.05%TMS混合品)1.0mlを添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液を日本電子データム社製NMR測定器(JNW−ECA500)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5〜10.0ppm付近に現れるアミック酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。なお下記式において、xはアミック酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミック酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミック酸のNH基のプロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
イミド化率(%)=(1−α・x/y)×100
【0208】
<重合性化合物の合成>
(実施例1)RM1の合成
【0209】
(合成例1) RM1の前駆体RM1−1の合成
【0210】
【化53】
【0211】
1L三口フラスコに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを34.2g、N,N−ジメチルホルムアミドを600mL、4−クロロブチルアセテートを67.8g、炭酸カリウムを124.4g、ヨウ化カリウムを12.5g加えて、100℃で攪拌した。反応終了後、5Lの水に反応系を注ぎ、1N−HCl水溶液で中和を行い、沈殿物を濾過および乾燥をした。得られた濾過物を1L三口フラスコに入れ、エタノールを600mL、10wt%KOH水溶液を250.0g加えて、還流加熱しながら攪拌した。反応終了後、3Lの水に反応系を注ぎ、1N−HCl水溶液で中和を行い、沈殿物を濾過した。この濾過物を乾燥させ、54.1gの目的物RM1−1(白色固体)を得た(収率97%)。
【0212】
(合成例2) RM1の前駆体RM1−2の合成
【0213】
【化54】
(上記反応式中、Msはメタンスルホニルを表す。)
【0214】
500mL三口フラスコに、RM1−1を22.4g、テトラヒドロフランを200mL、トリエチルアミンを15.8g加えて、系内を0℃にし、メタンスルホニルクロリドを17.9g加えて、室温で攪拌した。反応終了後、1Lの水に反応系を注ぎ、500mlの酢酸エチルを加え、飽和食塩水を用いて抽出を行った。有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥、濾過した後に、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去を行い、31.53gの目的物RM1−2(白色固体)を得た(収率99%)。
【0215】
(合成例3) RM1の前駆体RM3の合成
【0216】
【化55】
(上記反応式中、Msはメタンスルホニルを表す。)
【0217】
300mL三口フラスコに、RM1−2を7.9g、N,N−ジメチルホルムアミドを200mL、trans−p−クマル酸を5.4g、炭酸カリウムを12.4g加えて、100℃で攪拌した。反応終了後、1Lの水に反応系を注ぎ、1N−HCl水溶液で中和を行い、沈殿物を濾過した。この濾過物をメタノールで洗浄し、乾燥させ、9.7gの目的物RM3(白色固体)を得た(収率93%)。
【0218】
(合成例4) RM1の前駆体RM1−4の合成
【0219】
【化56】
【0220】
200mL三口フラスコに、RM3を5.0g、エタノールを50mL、10wt%KOH水溶液を10.0g加えて、還流加熱しながら攪拌した。反応終了後、200mLの水に反応系を注ぎ、1N−HCl水溶液で中和を行い、沈殿物を濾過および、乾燥を行い、4.6gの目的物RM1−4(白色固体)を得た(収率97%)。
【0221】
(合成例5) RM1の合成
【0222】
【化57】
【0223】
200mL三口フラスコに、RM1−4を4.6g、テトラヒドロフランを50mL、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)を2.7g、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を4.0g、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を0.2g加えて、室温で攪拌した。反応終了後、200mLの水に反応系を注ぎ、沈殿物を濾過および、乾燥を行い、6.0gの目的物RM1(白色固体)を得た(収率96%)。得られた固体の
1H−NMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた固体が、目的のRM1であることを確認した。
1H NMR (400 MHz,[D
6]−DMSO):δ7.66−7.69 (d,4H), 7.60−7.64 (d,2H),7.08−7.10 (d,4H), 6.96−6.98 (d,4H), 6.80−6.83 (s,4H), 6.49−6.53 (d,2H), 6.04 (s,2H),5.07 (s,2H), 4.36−4.40 (m,8H), 4.07−4.09 (m,4H), 3.98−4.00 (m,4H), 1.85−1.88 (m,14H), 1.57 (s,6H)
【0224】
(実施例2)RM5の合成
【0225】
(合成例6) RM5の前駆体RM5−1の合成
【0226】
【化58】
【0227】
1L四口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(20g、93.4mmol)、4−クロロブチルアセテート(42.1g、280.2mmol)、炭酸カリウム(77.4g、560.4mmol)、ヨウ化カリウム(7.8g、46.7mmol)及び、ジメチルホルムアミド(500mL)を仕込み、100℃で撹拌した。反応終了後、水(2L)に反応溶液を注ぎ析出した結晶を濾別した。得られた濾過物を1L四口フラスコに入れ、エタノールを600mL、10wt%KOH水溶液を250.0g加えて、還流加熱しながら攪拌した。反応終了後、反応溶液を3Lの水に濃塩酸(510mL)を加えた希塩酸水溶液に注ぎ、析出した沈殿物を濾過、乾燥しRM5−1を得た(24.1g,収率72%)。
【0228】
(合成例7) RM5の前駆体RM5−2の合成
【0229】
【化59】
(上記反応式中、Msはメタンスルホニルを表す。)
【0230】
1L四口フラスコにRM5−1(24.1g、67.2mmol)、メタンスルホニルクロリド(20g,174.7mmol)、トリエチルアミン(17.8g,174.7mmol)及び、テトラヒドロフラン(300mL)を仕込み、0℃に冷却しながら撹拌した。反応終了後、水(2.5L)に反応溶液を注ぎ、析出した結晶を濾別し、乾燥させることでRM5−2を得た(34.6g,収率99%)。
【0231】
(合成例8) RM5の前駆体RM5−3の合成
【0232】
【化60】
(上記反応式中、Msはメタンスルホニルを表す。)
【0233】
1L四口フラスコにRM5−2(34.6g,67.2mmol)、trans−p−クマル酸メチル(22.1g,134.4mmol)、炭酸カリウム(55.7g,403.2mmol)及び、ジメチルホルムアミド(500mL)を加え、100℃で撹拌した。反応終了後、反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。溶媒を留去後、エタノールを600mL、10wt%KOH水溶液を250.0g加えて、還流加熱しながら攪拌した。反応終了後、反応溶液を3Lの水に濃塩酸(510mL)を加えた希塩酸水溶液に注ぎ、析出した沈殿物を濾過、乾燥しRM5−3を得た(35.0g、収率80%)。
【0234】
(合成例9) RM5の合成
【0235】
【化61】
【0236】
1L四口フラスコにRM5−3(35.0g,53.8mmol)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)(21.0g,161.4mmol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(30.9g,161.4mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.7g,5.4mmol)及び、ジメチルホルムアミド(600mL)を仕込み室温撹拌した。反応終了後、水(2L)に反応溶液を注ぎ、析出した結晶を濾別した。得られた結晶を2−イソプロピルアルコールで洗浄し、目的物RM5を得た(42.3g,収率90%)。目的物の
1H−NMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた固体が、目的のRM5であることを確認した。
1H NMR (400 MHz,[D
6]−DMSO):δ7.66−7.69 (d,4H)、7.64−7.62(d,4H)、7.48(d,2H)、7.11−7.08(d,4H)、6.96−6.94(d,4H)、6.48(d,2H)、6.11(s,2H)、5.55(s,2H)、4.36−4.40 (m,8H)、4.07−4.09 (m,4H), 3.98−4.00 (m,4H),1.96(s,6H)、1.85−1.88 (m,8H)
【0237】
<液晶配向剤の調製>
(実施例3)
BODA(8.01g、32.0mmol)、3AMPDA(5.81g、24.0mmol)、PCH(10.66g、28.0mmol)、BEM−S(7.40g、28mmol)をNMP(123.4g)中で混合し、80℃で5時間反応させたのち、CBDA(9.26g、47.2mmol)とNMP(41.1g)を加え、40℃で10時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液(204g)にNMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(20.3g)、およびピリジン(62.8g)を加え、50℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(2700ml)に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(A)を得た。このポリイミドのイミド化率は60%であり、数平均分子量は16000、重量平均分子量は39000であった。
【0238】
得られたポリイミド粉末(A)(6.0g)にNMP(24.0g)を加え、室温にて5時間攪拌して溶解させた。この溶液にNMP(30.0g)、およびBCS(40.0g)を加え、室温にて5時間攪拌することにより液晶配向剤(A1)を得た。
【0239】
また、上記の液晶配向剤(A1)10.0gに対して実施例1で得られた重合性化合物RM1を60mg(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A2)を調製した。
【0240】
(実施例4)
同様に、液晶配向剤(A1)10.0gに対して実施例2で得られた重合性化合物RM5を60mg(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A6)を調製した。
【0241】
(比較例1)
同様に、液晶配向剤(A1)10.0gに対して重合性化合物RM2を60mg(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A3)を調製した。
【0242】
(比較例2)
同様に、液晶配向剤(A1)10.0gに対して重合性化合物RM3を60mg(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A4)を調製した。
【0243】
(比較例3)
同様に、液晶配向剤(A1)10.0gに対して重合性化合物RM4を60mg(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A5)を調製した。
【0244】
<液晶セルの作製>
(実施例5)
実施例3で得られた液晶配向剤(A2)を用いて下記に示すような手順で液晶セルの作製を行った。実施例3で得られた液晶配向剤(A2)を、画素サイズが100μm×300μmでライン/スペースがそれぞれ5μmのITO電極パターンが形成されているITO電極基板のITO面にスピンコートし、80℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、200℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
【0245】
また、液晶配向剤(A2)を電極パターンが形成されていないITO面にスピンコートし、80℃のホットプレートで90秒乾燥させた後、200℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
【0246】
上記の2枚の基板について一方の基板の液晶配向膜上に6μmのビーズスペーサーを散布した後、その上からシール剤(協立化学製XN−1500T)を印刷した。次いで、もう一方の基板の液晶配向膜が形成された側の面を内側にして、先の基板と貼り合せた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルにネガ型の液晶(MLC−6608)を減圧注入法によって注入し、120℃で1時間再配向処理を行い、液晶セルを作製した。
【0247】
得られた液晶セルの応答速度を、下記方法により測定した。その後、この液晶セルに20Vp−pの交流電圧を印加した状態で、この液晶セルの外側から313nmのバンドパスフィルターを通したUVを500mJ又は1000mJ各々照射した。その後、再び応答速度を測定し、UV照射前後での応答速度を比較した。結果を表2に示す。
【0248】
「応答速度の測定方法」
まず、バックライト、クロスニコルの状態にした一組の偏光版、光量検出器の順で構成される測定装置において、一組の偏光版の間に液晶セルを配置した。このときライン/スペースが形成されているITO電極のパターンがクロスニコルに対して45°の角度になるようにした。そして、上記の液晶セルに電圧±4V、周波数1kHzの矩形波を印加し、光量検出器によって観測される輝度が飽和するまでの変化をオシロスコープにて取り込み、電圧を印加していない時の輝度を0%、±4Vの電圧を印加し、飽和した輝度の値を100%として、輝度が10%から90%まで変化するのにかかる時間を応答速度とした。
【0249】
(実施例6)
液晶配向剤(A2)のかわりに液晶配向剤(A6)を用いた以外は実施例5と同様の操作を行って、UV照射前後での応答速度を比較した。
【0250】
(比較例4)
液晶配向剤(A2)のかわりに液晶配向剤(A3)を用いた以外は実施例5と同様の操作を行って、UV照射前後での応答速度を比較した。
【0251】
(比較例5)
液晶配向剤(A2)のかわりに液晶配向剤(A4)を用いた以外は実施例5と同様の操作を行って、UV照射前後での応答速度を比較した。
【0252】
【表2】
【0253】
(実施例7)
液晶セルの外側から313nmのバンドパスフィルターを通したUVを照射するかわりに、液晶セルの外側から365nmのバンドパスフィルターを通したUVを20J照射した以外は実施例5と同様の操作を行って、UV照射前後での応答速度を比較した。結果を表3に示す。
【0254】
(実施例8)
液晶配向剤(A2)のかわりに液晶配向剤(A6)を用いた以外は実施例7と同様の操作を行って、UV照射前後での応答速度を比較した。
【0255】
(比較例6)
液晶配向剤(A2)のかわりに液晶配向剤(A5)を用いた以外は実施例7と同様の操作を行って、UV照射前後での応答速度を比較した。
【0256】
【表3】
【0257】
この結果、表2に示すように、光重合性基と光二量化を起こす基の両方を有する重合性化合物を用いた実施例5,6ではわずか500mJの照射量でかなり応答速度が向上していることがわかる。これは一つの重合性化合物に光重合性基と光二量化を起こす基の両方を有しているため重合性化合物は光反応の感度が非常に高く、また光反応が高い密度で起こるためであると考えられる。一方、実施例5,6と同様な光重合性基または光二量化を起こす基のいずれかをもった重合性化合物を使用した比較例4及び5の結果からは1000mJ程度の照射量では充分に応答速度が速くなっていないことがわかる。これは光重合性基の反応速度が遅いことや、光二量化を起こす光反応基の密度が低いことが原因ではないかと予想される。
【0258】
また、表3に示すように、光二量化を起こす基を2つ有する実施例7,8と光二量化を起こす基を1つしか有していない比較例6の結果から、光二量化を起こす基の数が多いほど、光二量化の起こる光反応基の密度が高くなり、光反応の感度が非常に高くなっていることがわかる。