(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361906
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】配線基板の製造方法及び支持材付き積層体
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 N
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-2375(P2014-2375)
(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公開番号】特開2014-150250(P2014-150250A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-1727(P2013-1727)
(32)【優先日】2013年1月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森下 和夫
(72)【発明者】
【氏名】服部 清男
(72)【発明者】
【氏名】西田 貴紀
【審査官】
ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/060657(WO,A1)
【文献】
特表2013−541856(JP,A)
【文献】
特開2011−129563(JP,A)
【文献】
特開2010−118635(JP,A)
【文献】
特開2009−246357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリプレグAを挟んだ両側に、銅箔Aと銅箔Bとを有するピーラブル銅箔を配置し、さらに両側にプリプレグBと銅箔Cとを配置して積層し、支持材付き積層体を形成する工程(1)を有し、前記工程(1)では、プリプレグAとして、プリプレグBよりも薄いものを使用する配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1のプリプレグAを挟んだ両側に、銅箔Aと銅箔Bとを有するピーラブル銅箔を配置し、さらに両側にプリプレグBと銅箔Cとを配置して積層し、支持材付き積層体を形成する工程(1)と、前記支持材付き積層体の銅箔Cから銅箔Bに到る層間接続孔を形成する工程(2)と、前記支持材付き積層体の層間接続孔及び銅箔B上に銅めっきを形成することにより、前記銅箔Cと銅箔Bとを接続する層間接続と、前記銅箔C及び銅めっきを有する導体層と、を形成する工程(3)と、を有する配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、工程(1)では、ピーラブル銅箔の大きさが、このピーラブル銅箔の両側に配置されるプリプレグA、Bより小さい配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項において、工程(1)では、ピーラブル銅箔が、このピーラブル銅箔の両側に積層されるプリプレグA、Bからはみ出さないように構成される配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項において、工程(1)では、ピーラブル銅箔の周囲が、このピーラブル銅箔の両側に積層されるプリプレグA、Bによりシールされる配線基板の製造方法。
【請求項6】
プリプレグAを挟んだ両側に、銅箔Aと銅箔Bとを有するピーラブル銅箔を配置し、さらに両側にプリプレグBと銅箔Cとを配置して積層した支持材付き積層体であって、前記プリプレグAの厚さが、前記プリプレグBよりも薄い支持材付き積層体。
【請求項7】
請求項6において、ピーラブル銅箔の大きさが、このピーラブル銅箔の両側に配置されるプリプレグA、Bより小さい支持材付き積層体。
【請求項8】
請求項6又は7において、ピーラブル銅箔が、このピーラブル銅箔の両側に積層されるプリプレグA、Bからはみ出さないように構成される支持材付き積層体。
【請求項9】
請求項6から8の何れか1項において、ピーラブル銅箔の周囲が、このピーラブル銅箔の両側に積層されるプリプレグA、Bによりシールされる支持材付き積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法及び支持材付き積層体に関し、特にはコアレス工法を用いた配線基板の製造方法及びコアレス工法に用いる支持材付き積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、配線基板の薄型化に伴い、銅張り積層板をコアとして用いて多層化を行なうビルドアップ工法では対応が困難となっている。一方、コアとして銅張り積層板を用いなければ薄型化に対応できるが、この場合は、剛性が小さいため、製造プロセスでのハンドリングが困難となり、作業性が悪い。そこで、作業性を確保しつつ、薄型化に対応すべく、製品としての配線基板自体を構成しない支持材を用いて製造プロセスを途中まで進めた後、この支持材を分離してから最終プロセスまで進めて配線基板を製造する、いわゆるコアレス工法が用いられるようになった。
【0003】
このようなコアレス工法としては、
図1に示すように、支持材7として銅張り積層板8を用い、この銅張り積層板8の銅箔A1上に、一回り小さい銅箔B2、プリプレグB6、銅箔C4の順に配置して構成し、熱プレスすることで、銅箔B2の外周部がプリプレグB6でシールされた支持材付き積層体11を形成し、さらに回路、層間接続、絶縁層等を形成して多層化した後、支持材付き積層体11の外周部を切断線14で切断除去することで、積層体17から支持材7である銅張り積層板8を分離除去し、この積層体17から配線基板を製造する方法がある(特許文献1)。
【0004】
また、絶縁樹脂上に、キャリア銅箔付きの極薄銅箔(厚さ1〜5μm)を、極薄銅箔を上側にして重ねて積層した後、表面の極薄銅箔上にパターン銅めっきを行い、その上にプリプレグと銅箔を重ねて配置し、積層することによって支持材付き積層体を形成し、さらに層間接続を形成した後、極薄銅箔とキャリア銅箔との間で、支持材であった絶縁樹脂から積層体を分離除去し、この積層体から配線基板を製造する方法がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5029911号公報
【特許文献2】特許第4273895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、支持材として銅張り積層板を用いる必要があること、また、積層体と支持材とを分離する際に、切断除去する余白(外周部)が、積層体の端部から約15mm程度と大きく、材料コスト面で問題がある。
【0007】
また、特許文献2の方法では、支持材付きの積層体を形成する際に、支持材となる絶縁樹脂の両側に、キャリア銅箔付き極薄銅箔を積層し、パターン銅めっきを行い、さらにプリプレグと銅箔を積層し、層間接続を形成する必要があり、積層の回数が多いため、作業性の問題がある。また、支持材となる絶縁樹脂とキャリア銅箔の両者が、製品となる積層体から分離除去されるので、材料の無駄が多い問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、コアレス工法において、切断除去する余白を少なして材料コストが低減でき、しかも作業性のよい配線基板の製造方法及び支持材付き積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プリプレグAを挟んだ両側に、銅箔Aと銅箔Bとを有するピーラブル銅箔を配置し、さらに両側にプリプレグBと銅箔Cとを配置して積層し、支持材付き積層体を形成する工程(1)を有
し、前記工程(1)では、プリプレグAとして、プリプレグBよりも薄いものを使用する配線基板の製造方法である。また、本発明は、プリプレグAを挟んだ両側に、銅箔Aと銅箔Bとを有するピーラブル銅箔を配置し、さらに両側にプリプレグBと銅箔Cとを配置して積層した支持材付き積層体
であって、前記プリプレグAの厚さが、前記プリプレグBよりも薄い支持材付き積層体である。
【0010】
本発明によれば、銅箔Aと銅箔Bとを有するピーラブル銅箔を用いて支持材付き積層体を形成するため、支持材側の銅箔Aとその上に形成した配線基板の基となる積層体との分離を、銅箔Aと銅箔Bの剥離性を利用して行なうことができる。このため、支持材と積層体との分離の際、従来技術である特許文献1のように、積層体の外周部全体を大きく切断する必要がなく、材料の無駄や手間を省くことができる。しかも、プリプレグAを挟んだ両側に、銅箔Aと銅箔Bとを有するピーラブル銅箔を配置し、さらに両側にプリプレグBと銅箔Cとを配置して積層するだけで、支持材と配線基板の基になる積層体とを同時に形成できるので、構成作業が容易になる。
【0011】
本発明は、上記のように、プリプレグAを挟んだ両側に、銅箔Aと銅箔Bとを有するピーラブル銅箔を配置し、さらに両側にプリプレグBと銅箔Cとを配置して積層し、支持材付き積層体を形成する工程(1)に加えて、前記支持材付き積層体の銅箔Cから銅箔Bに到る層間接続孔を形成する工程(2)と、前記支持材付き積層体の層間接続孔及び銅箔B上に銅めっきを形成することにより、前記銅箔Cと銅箔Bとを接続する層間接続と、前記銅箔C及び銅めっきを有する導体層と、を形成する工程(3)と、を有する配線基板の製造方法である。
【0012】
本発明によれば、支持材付き積層体によって、製造プロセスでのハンドリングに耐え得る剛性が得られるため、薄型化が求められる配線基板を製造する場合でも、作業性が大幅に改善される。また、製品としての配線基板自体を構成しない支持材を用いて製造プロセスを途中まで進めた後、この支持材を分離してから最終プロセスまで進めて配線基板を製造する、いわゆるコアレス工法が容易となる。
【0013】
上記の配線基板の製造方法の工程(1)又は上記の支持材付き積層体において
、プリプレグAとして、プリプレグBよりも薄いものを使用する。つまり、支持材となるプリプレグAのガラスクロスが薄ければ、ガラスクロスによる凹凸が小さいので、ガラスクロスの凹凸が、配線基板の基になる積層体の銅箔Bに転写し難くなり、銅箔Bを用いた微細回路形成の際に有利となる。
【0014】
上記の配線基板の製造方法の工程(1)又は上記の支持材付き積層体において、好ましくは、ピーラブル銅箔の大きさが、このピーラブル銅箔の両側に積層されるプリプレグA、Bより小さい。これにより、ピーラブルの外周からプリプレグA、Bがはみ出すように構成することができ、ピーラブル銅箔の端部をプリプレグA、Bの樹脂でシールすることが可能になる。このため、製造プロセスでのハンドリング等で銅箔Aと銅箔Bが剥離したり、銅箔Aと銅箔Bとの間に処理液等が入り込むのを抑制でき、作業性が向上する。なお、プリプレグA、Bは、ピーラブル銅箔よりも5mm大きい程度でよいので、銅箔Aと銅箔Bとの間で分離する際は、端部を5mm程度切断すればよく、切断の手間や材料の無駄が少ない。
【0015】
上記の配線基板の製造方法の工程(1)又は上記の支持材付き積層体において、好ましくは、ピーラブル銅箔が、このピーラブル銅箔の両側に積層されるプリプレグA、Bからはみ出さないように構成される。これにより、ピーラブルの外周を、確実にプリプレグA、Bで覆うことが可能になる。このため、作業性が向上する。
【0016】
上記の配線基板の製造方法の工程(1)又は上記の支持材付き積層体において、好ましくは、3層ピーラブル銅箔の周囲が、このピーラブル銅箔の両側に積層されるプリプレグA、Bによりシール(密封)される。これにより、製造プロセスでのハンドリング等で銅箔Aと銅箔Bが剥離したり、銅箔Aと銅箔Bとの間に処理液等が入り込むのを確実に抑制でき、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コアレス工法において、切断除去する余白を少なして材料コストが低減でき、しかも作業性のよい配線基板の製造方法及び支持材付き積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来の配線基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
【
図2】本実施の形態の配線基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
【
図3】本実施の形態の配線基板の製造方法の一部を表すフロー図又は本実施の形態の支持材付き積層体の断面図である。
【
図4】本実施の形態の配線基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
【
図5】本実施の形態の配線基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
【
図6】本実施の形態の配線基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
【
図7】本実施の形態の配線基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
【
図8】本実施の形態の配線基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
【
図9】本実施の形態の配線基板の製造方法の一部を表すフロー図又は本実施の形態の支持材付き積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態の一例である配線基板の製造方法について、
図2〜
図9を用いて以下に説明する。
【0020】
本実施の形態の配線基板の製造方法は、プリプレグA5を挟んだ両側に、銅箔A1と銅箔B2とを有するピーラブル銅箔3を配置し、さらに両側にプリプレグB6と銅箔C4とを配置して積層し、支持材付き積層体11を形成する工程(1)と、前記支持材付き積層体11の銅箔C4から銅箔B2に到る層間接続穴12を形成する工程(2)と、前記支持材付き積層体11の層間接続穴12及び銅箔B2上に銅めっき13を形成することにより、前記銅箔C4と銅箔B2とを接続する層間接続18と、前記銅箔C4及び銅めっき13を有する導体層19と、を形成する工程(3)と、を有する。
【0021】
図2及び
図3に示すように、本実施の形態の配線基板の製造方法の工程(1)では、プリプレグA5を挟んだ両側に、銅箔A1と銅箔B2とを有するピーラブル銅箔3を配置し、さらに両側にプリプレグB6と銅箔C4とを配置して積層し、支持材付き積層体11を形成する。具体的には、プリプレグA5、ピーラブル銅箔3、プリプレグB6及び銅箔C4を準備し、プリプレグA5の両側に、ピーラブル銅箔3、プリプレグB6、銅箔C4の順に配置し、これらの材料を熱プレスにより接着させる。ピーラブル銅箔3とは、キャリアとなる銅箔A1の片側に、物理的に剥離可能な銅箔B2を設けた2層構造を有する銅箔である。ピーラブル銅箔3は、配線基板において用いられる、公知のキャリア付き銅箔を用いることができる。本実施の形態の配線基板の製造方法において、プリプレグA5とその両側に積層されたピーラブル銅箔3の銅箔A(キャリア)までが支持材7となり、ピーラブル銅箔3の銅箔B2から上層側が配線基板の基となる積層体17となる。支持材7は、製造プロセス中でのみ用いられるが、製品としての配線基板を構成する材料としては用いられないものである。プリプレグA5、B6としては、配線基板において一般的に用いられる絶縁材を用いることができ、例えば、ガラスクロスにエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂等を含浸させたものが挙げられる。銅箔C4としては、配線基板に一般的に用いられる銅箔を用いることができる。積層とは、熱プレスにて加熱・加圧することで、プリプレグ中の絶縁樹脂を溶融・硬化させて、銅箔を接着させることである。
【0022】
このように、本実施の形態の配線基板の製造方法では、銅箔Aと銅箔Bとを有するピーラブル銅箔を用いて支持材付き積層体を形成するため、支持材側の銅箔Aとその上に形成した配線基板の基となる積層体との分離を、銅箔Aと銅箔Bの剥離性を利用して行なうことができる。このため、支持材と積層体との分離の際、従来技術である特許文献1のように、積層体の外周部全体を大きく切断する必要がなく、材料の無駄や手間を省くことができる。しかも、プリプレグAを挟んだ両側に、銅箔Aと銅箔Bとを有するピーラブル銅箔を配置し、さらに両側にプリプレグBと銅箔Cとを配置して積層するだけで、支持材と配線基板の基になる積層体とを同時に形成できるので、構成作業が容易になる。したがって、コアレス工法において、切断除去する余白を少なして材料コストが低減でき、しかも作業性のよい配線基板の製造方法を提供することができる。
【0023】
図4に示すように、本実施の形態の配線基板の製造方法の工程(2)では、支持材付き積層体11の銅箔C4から銅箔B2に到る層間接続穴12を形成する。具体的には、コンフォーマルマスク法により、銅箔C4にエッチングで層間接続穴12の予定箇所に開口を設け、その開口にレーザーを照射し、プリプレグB6を除去する。層間接続穴12とは、絶縁材であるプリプレグB6の両側に配置された銅箔C4と銅箔B2を導通させて層間接続18を形成するための穴である。この層間接続穴12の形成方法としては、上記のコンフォーマルマスク法以外にも、銅箔C4に開口を設けずに、銅箔C4とプリプレグB6とを除去する、ダイレクトレーザ法を用いてもよい。
【0024】
図5に示すように、本実施の形態の配線基板の製造方法の工程(3)では、支持材付き積層体11の層間接続穴12及び銅箔C4上に銅めっき13を形成することにより、銅箔C4と銅箔B2とを接続する層間接続18と、銅箔C4及び銅めっき13を有する導体層19と、を形成する。具体的には、工程(2)で形成された層間接続穴12内を銅めっき13で充填させ、かつ銅箔C4表面上にも銅めっき13を形成し、導体層19を形成する。つまり、本実施の形態において、導体層19は、銅箔C4と銅めっき13の2層で形成される。
【0025】
図6に示すように、本実施の形態の配線基板の製造方法の工程(4)では、銅箔B2を含む積層体17を、支持材7である銅箔A1から分離する。具体的には、支持材7の一部である銅箔A1と、配線基板の基になる積層体17の一部である銅箔B2とは、剥離性を有しているので、容易に剥離することができる。なお、支持材付き積層体11の端部に、熱プレスを用いた積層によって、プリプレグA5、B6の絶縁樹脂が流れ出して硬化している場合でも、例えば、
図5の切断線14のところで、支持材付き積層体11の端部(外周)を5mm程度切断することで剥離が可能である。このため、従来に比べて材料の無駄が少ない。
【0026】
図7に示すように、本実施の形態の配線基板の製造方法の工程(5)では、銅箔C4及び銅めっき13を有する導体層19と、銅箔B2を回路加工し、内層回路15を形成する。具体的には、配線基板の製造に一般に用いられるエッチングレジストを導体層19と銅箔B2に形成し、公知のサブトラクト法で形成できる。
【0027】
図8に示すように、本実施の形態の配線基板の製造方法では、内層回路15上に、プリプレグC10、銅箔D9の順に配置し、積層する。さらに層間接続(図示しない。)を設け、めっき処理及び回路加工を行なうことで上層回路(図示しない。)を形成する。
【0028】
本実施の形態の配線基板の製造方法によれば、支持材付き積層体11によって、製造プロセスでのハンドリングに耐え得る剛性が得られるため、薄型化が求められる配線基板16を製造する場合でも、作業性が大幅に改善される。また、製品としての配線基板16自体を構成しない支持材7を用いて製造プロセスを途中まで進めた後、この支持材7を分離してから最終プロセスまで進めて配線基板16を製造する、いわゆるコアレス工法が容易となる。
【0029】
本発明の実施形態の一例である支持材付き積層体について、
図3を用いて以下に説明する。
【0030】
本実施の形態の支持材付き積層体11は、プリプレグA5を挟んだ両側に、銅箔A1と銅箔B2とを有するピーラブル銅箔3を配置し、さらに両側にプリプレグB6と銅箔C4とを配置して積層した支持材付き積層体11である。
【0031】
本実施の形態の支持材付き積層体11によれば、銅箔A1と銅箔B2とを有するピーラブル銅箔3を用いて支持材付き積層体11を形成するため、支持材7側の銅箔A1とその上に形成した配線基板16の基となる積層体17との分離を、銅箔A1と銅箔B2の剥離性を利用して行なうことができる。このため、支持材7と積層体17との分離の際、従来のように、積層体17の外周部全体を切断する必要がなく、材料の無駄や手間を省くことができる。しかも、プリプレグA5を挟んだ両側に、銅箔A1と銅箔B2とを有するピーラブル銅箔3を配置し、さらに両側にプリプレグB6と銅箔C4とを配置して積層するだけで、支持材7と配線基板16の基になる積層体17とを同時に形成できるので、構成作業が容易になる。したがって、コアレス工法において、切断除去する余白を少なして材料コストが低減でき、しかも作業性のよい支持材付き積層体を提供することができる。
【0032】
上記実施の形態の配線基板の製造方法の工程(1)又は支持材付き積層体において、好ましくは、プリプレグAとして、プリプレグBよりも薄いガラスクロスを用いたものを使用する。つまり、支持材となるプリプレグAが薄ければ、ガラスクロスによる凹凸が小さいので、ガラスクロスの凹凸が、配線基板の基になる積層体の銅箔Bに転写し難くなり、銅箔Bを用いた微細回路形成の際に有利となる。
【0033】
上記実施の形態の配線基板の製造方法の工程(1)又は支持材付き積層体において、好ましくは、
図9Aに示すように、ピーラブル銅箔3の大きさが、このピーラブル銅箔3の両側に積層されるプリプレグA5、B6より小さい。これにより、ピーラブル銅箔3の外周からプリプレグA5、B6がはみ出すように構成することができ、ピーラブル銅箔3の端部をプリプレグA5、B6の樹脂でシール(
図9Bのシール部20)することが可能になる。このため、製造プロセスでのハンドリング等で銅箔A1と銅箔B2が剥離したり、銅箔A1と銅箔B2との間に処理液等が入り込むのを抑制でき、作業性が向上する。なお、プリプレグA5、B6は、ピーラブル銅箔3よりも5mm大きい程度でよいので、銅箔A1と銅箔B2との間で分離する際は、端部を5mm程度切断すればよく(
図9Cの切断線14)、切断の手間や材料の無駄が少ない。
【0034】
上記実施の形態の配線基板の製造方法の工程(1)又は支持材付き積層体において、好ましくは、
図9Aに示すように、ピーラブル銅箔3が、このピーラブル銅箔3の両側に積層されるプリプレグA5、B6からはみ出さないように構成される。これにより、ピーラブル銅箔3の外周を、確実にプリプレグA5、B6で覆うことが可能になる(
図9Bのシール部20)。このため、作業性が向上する。
【0035】
上記実施の形態の配線基板の製造方法の工程(1)又は支持材付き積層体において、好ましくは、
図9Bに示すように、ピーラブル銅箔3の周囲が、このピーラブル銅箔3の両側に積層されるプリプレグA5、B6によりシールされる(シール部20)。これにより、製造プロセスでのハンドリング等で銅箔A1と銅箔B2が剥離したり、銅箔A1と銅箔B2との間に処理液等が入り込むのを確実に抑制でき、作業性が向上する。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は本実施例に限定されない。
【0037】
図9Aに示すように、プリプレグA5として、GEA−679FG(日立化成株式会社製、商品名。公称厚み30μm)、ピーラブル銅箔3として、厚さ35μmのキャリア銅箔A1に、厚さ3μmの極薄銅箔B2が貼り合わされた3FD−P3/35(古河サーキットフォイル株式会社製、商品名)、プリプレグB6として、GEA−679FG(日立化成株式会社製、商品名。公称厚み60μm)、銅箔C4として、MT−18S5DH(三井金属鉱業株式会社製、商品名。厚さ5μm)を構成した。このように、プリプレグA5として、プリプレグB6よりも薄いものを使用した。また、ピーラブル銅箔3の大きさが、このピーラブル銅箔3の両側に積層されるプリプレグA5、B6よりも、縦横とも5mm程度小さいものを準備し、ピーラブル銅箔3が、このピーラブル銅箔3の両側に積層されるプリプレグA、Bからはみ出さないように構成した。
【0038】
次に、
図9Bに示すように、熱プレスで加熱・加圧して支持材付き積層体11を形成した。このとき、支持材付き積層体11の端部に、熱プレスを用いた積層によって、プリプレグA5の絶縁樹脂が流れ出して硬化し、ピーラブル銅箔3の端部がシール(シール部20)されていた。
【0039】
図9Cに示すように、支持材付き積層体11の銅箔C4をエッチングで除去することで、直径60〜80μmのコンフォーマルマスク用の開口を形成し、銅箔C4を除去した開口にレーザーを照射し、プリプレグB6を除去して層間接続穴12を形成した。
【0040】
図9Cに示すように、銅めっき処理を行ない、層間接続穴12内をフィルドめっきを用いた銅めっき13で充填し、層間接続18と導体層19を形成した。
【0041】
図9Cに示すように、層間接続18を形成した支持材付き積層体11の外周の端部を切断線14で切断し、ピーラブル銅箔3の銅箔A1と銅箔B2の間から積層体17を分離した。このとき、支持体付き積層体11の端部を5mm程度切断すればよく、切断の手間や材料の無駄は少なかった。このときの積層体17のサイズは、縦600mm、横510mmであった。
【0042】
図7に示すように、エッチングにて導体層19を回路加工することで、内層回路15を形成した。
【0043】
図8に示すように、内層回路15上に、プリプレグC10として、GEA−679FG(日立化成株式会社製、製品名。公称厚み30μm)、銅箔D9として、MT−18S5DH(三井金属鉱業株式会社製、製品名。厚さ5μm)の順に配置し、熱プレスで加熱・加圧することで、プリプレグC10と銅箔D9を接着させ、配線基板16を作製した。
【0044】
(比較例)
図1Aに示すように、支持材として銅張り積層板8(日立化成株式会社製、商品名、MCL−E−679FG、全体厚さ0.2mm、銅箔厚さ12μm)を用い、この銅張り積層板8の銅箔A1上に、一回り小さい銅箔B2(3EC−M3−VLP、古河サーキットフォイル株式会社製、商品名。厚さ18μm)、プリプレグB6(GEA−679FG、日立化成株式会社製、製品名。公称厚み60um)、銅箔C4(MT−18S5DH、三井金属鉱業株式会社製、製品名。厚さ5μm)の順に配置して構成した。次に、
図1Bに示すように、熱プレスを用いて積層することで、銅箔B2の外周部がプリプレグA5でシールされた支持材付き積層体11を形成した。次に、
図1Cに示すように、層間接続穴12、層間接続18となる銅めっき13を形成した後、支持材付き積層体11の外周部を切断線14で切断除去することで、積層体17から支持材7である銅張り積層板8を分離除去した。このときの積層体17のサイズは、最大でも、縦510mm、横410mmであった。次に、実施例と同様にして、この積層体17から配線基板を製造した。
【0045】
実施例と比較例で作製した、支持材と分離した後の積層体の面積比と製品取数を比較した。この結果を、表1に示す。実施例は、面積比と製品取数にて比較すると、比較例(従来工法)に対して何れも増加した。
【0046】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の配線基板の製造方法及び支持材付き積層体は、コアレス工法において、切断除去する余白を少なして材料コストが低減でき、しかも作業性がよいため、産業上有効である。
【符号の説明】
【0048】
1:銅箔A
2:銅箔B
3:ピーラブル銅箔
4:銅箔C
5:プリプレグA
6:プリプレグB
7:支持材
8:銅張り積層板
9:銅箔D
10:プリプレグC
11:支持材付き積層体
12:層間接続穴
13:銅めっき
14:切断線
15:内層回路
16:配線基板
17:積層体
18:層間接続
19:導体層
20:シール部