特許第6362125号(P6362125)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6362125二種のバインダーを含む正極活物質スラリー及びこれから製造された正極
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362125
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】二種のバインダーを含む正極活物質スラリー及びこれから製造された正極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20180712BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20180712BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20180712BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20180712BHJP
【FI】
   H01M4/139
   H01M4/13
   H01M4/62 Z
   H01M4/58
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-508513(P2017-508513)
(86)(22)【出願日】2015年10月2日
(65)【公表番号】特表2017-524235(P2017-524235A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】KR2015010466
(87)【国際公開番号】WO2016053059
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2017年2月14日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0133019
(32)【優先日】2014年10月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ド・ファ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ウォン・イ
(72)【発明者】
【氏名】サン・フン・チェ
【審査官】 式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−223895(JP,A)
【文献】 特開2005−123047(JP,A)
【文献】 特開2009−245925(JP,A)
【文献】 特開平09−213337(JP,A)
【文献】 特開2004−047460(JP,A)
【文献】 特開2011−258333(JP,A)
【文献】 特開2007−294461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
H01M 10/05−10/0587
H01G 11/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質;第1バインダー、第2バインダー及び有機溶媒を含み、
前記第1バインダーがフッ素系バインダーで、
前記第2バインダーがブタジエンゴム系バインダーであり、
前記第1バインダーと第2バインダーは9:1から7:3の重量比を有しており、
前記正極活物質がリチウム鉄リン酸塩系正極活物質であり、
固形粉の濃度が55%から65%であることを特徴とする正極活物質スラリー。
【請求項2】
前記正極活物質は、下記式(1)で表されるリチウム鉄リン酸塩系正極活物質であることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質スラリー:
[化学式1]
Li1+aFe1−x(PO4−b)X (1)
前記式(1)で、
Mは、Al、Mg、Ni、Co、Mn、Ti、Ga、V、Nb、Zr、Ce、In、Zn、Yまたはこれらの組み合わせであり、
Xは、F、S、Nまたはこれらの組み合わせであり、
aは−0.5≦a≦0.5で、
bは0≦b≦0.1であり、
xは0≦x≦0.5である。
【請求項3】
前記正極活物質は、LiFePO、LiFeMnPO、LiFeMgPO、LiFeNiPO、LiFeAlPOまたはLiFeCoNiMnPOであることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質スラリー。
【請求項4】
前記正極活物質は、正極活物質スラリーの全体固形粉の含量に対し50重量%から65重量%で含まれることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質スラリー。
【請求項5】
前記第1バインダーは、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF−co−HEP)、クロロトリフルオロエチレン(CFTF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質スラリー。
【請求項6】
前記第2バインダーは、スチレン−ブタジエンゴム及びニトリル−ブタジエンゴムからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質スラリー。
【請求項7】
前記第2バインダーは、正極活物質スラリーの全体100重量部に対し20重量部から30重量部で含まれることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質スラリー。
【請求項8】
前記正極活物質スラリーは、導電材をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の正極活物質スラリー。
【請求項9】
前記有機溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質スラリー。
【請求項10】
前記正極活物質スラリーは、粘度が5,000から20,000cpsであることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質スラリー。
【請求項11】
請求項1に記載の正極活物質スラリーから形成された正極活物質層を含む正極。
【請求項12】
請求項11に記載の正極、負極、及び前記正極と負極の間に介在されている分離膜を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2014年10月2日付韓国特許出願第10−2014−0133019号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、二種の互いに異なるバインダーを一定の割合で含む、固形粉の濃度が高くて粘度の低い正極活物質スラリー、これから形成された正極活物質層を含む正極、及び前記正極を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、電子産業、移動通信を含む各種の情報通信などのコミュニケーション産業の急速な発展とともに、電子機器の軽薄短小化の要求に応え、ノートパソコン、ネットブック、タブレットPC、携帯電話、スマートホン、PDA、デジタルカメラ、カムコーダーなどのような携帯用電子製品及び通信端末機器が広く普及されており、よって、これら機器の駆動電源である電池の開発に対しても関心が高くなっている。
【0004】
さらに、水素電気自動車やハイブリッド自動車、燃料電池自動車のような電気自動車の開発に伴い、高性能、大容量、高密度及び高出力、高安定性を有する電池の開発に大きな関心が集中されており、速い充放電速度の特性を有する電池の開発もまた大きなイシューとなっている。
【0005】
化学エネルギーを電気エネルギーに変える装置である電池は、基本構成材料の種類と特徴に従って一次電池、二次電池、燃料電池、そして太陽電池などに仕分けられる。
【0006】
このうち一次電池は、マンガン電池、アルカリ電池、水銀電池などのように非可逆反応を介してエネルギーを生産するので、容量は大きいがリサイクルができないという欠点があって、エネルギーの非効率性、環境汚染などのような各種の問題点を内在している。
【0007】
二次電池には、鉛蓄電池、ニッケル−メタルハイドライド電池、ニッケル−カドミウム電池、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、リチウム金属電池などがあり、化学エネルギーと電気エネルギーの可逆的相互変換を利用して充電と放電を繰り返すことができる化学電池であって、可逆反応により作動するのでリサイクルができるという利点がある。
【0008】
このような、二次電池の中でリチウム二次電池が活発に研究されており、前記リチウム二次電池は、正極(positive electrode)、負極(negative electrode)、分離膜(separator)及び電解質(electrolyte)の基本的な構成要素を有する。
【0009】
前記正極と負極は、酸化/還元などのエネルギーの変換と保存が発生する電極であって、それぞれ陽と陰の電位を有することになる。分離膜は、正極と負極の間に位置して電気的な絶縁を維持し、電荷の移動通路を提供する。さらに、電解質は電荷伝達の媒介体の役割を担う。
【0010】
一方、前記正極は、正極活物質を含む正極活物質スラリーを正極集電体上に塗布して乾燥することにより製造することができ、このとき、前記正極活物質スラリーは、正極活物質にバインダー及び有機溶媒を添加して混合した流動性を有する混合物である。
【0011】
リチウム二次電池の容量などの電池性能は、用いられる正極活物質に最も大きな影響を受ける。電池性能を向上させるためには、正極活物質が適宜高い数値でローディングできながらも、集電体上に均一で安定的な厚さの層で形成されなければならない。このような課題を解決するためには、前記正極活物質スラリーの固形粉の含量、粘度などの調節が重要であるといえる。
【0012】
特に、リチウム鉄リン酸塩系正極活物質を用いる場合は、前記リチウム鉄リン酸塩系正極活物質の粒子の大きさが小さくてカーボンコーティングされた比表面積が広いことから、これを含む正極活物質スラリー内の固形粉の濃度が低いため(固形粉が45%水準)、多量の有機溶媒(例えば、NMP)を添加して粘度を適宜合わせることにより前記課題を解決している。しかし、有機溶媒を多量で用いる場合は乾燥後にも乾燥しきれない部分が発生し得るので、高ローディング(high−loading)が不可能で乾燥速度などの工程速度が増加するようになって生産性が低下する問題がある。さらに、前記正極活物質スラリーの保管時にスラリーの相安定性が低下し、これを利用して正極活物質層を形成する際に層の厚さ及びローディング偏差が発生することがあり、前記有機溶媒の有害性のため環境に優しくない問題がある。
【0013】
前記のような背景の下で、本発明者たちは正極活物質スラリー内の固形粉の濃度を高めることにより、有害性物質である有機溶媒の使用量を減らすことができる正極活物質スラリーの研究中、リチウム鉄リン酸塩系正極活物質にバインダーとしてフッ素系バインダーとブタジエンゴム系バインダーを一定の割合で混合して用いることにより、正極活物質スラリー内の固形粉の含量を高めることができる点を確認することで本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、二種の互いに異なるバインダーを一定の割合で含む、固形粉の濃度が高くて粘度の低い正極活物質スラリーを提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、前記正極活物質スラリーから形成された正極活物質層を含む正極を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、前記正極、負極、及び前記正極と負極の間に介在されている分離膜を含むリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため、本発明は、正極活物質;第1バインダー、第2バインダー及び有機溶媒を含み、前記第1バインダーがフッ素系バインダーで、前記第2バインダーがブタジエンゴム系バインダーであり、前記第1バインダーと第2バインダーは9:1から7:3の重量比を有することを特徴とする正極活物質スラリーを提供する。
【0018】
さらに、本発明は、前記正極活物質スラリーから形成された正極活物質層を含む正極を提供する。
【0019】
併せて、本発明は、前記正極、負極、及び前記正極と負極の間に介在されている分離膜を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る正極活物質スラリーは、二種の互いに異なるバインダーを一定の割合で含むことにより、有機溶媒の含量は減らすことができながらも、固形粉の濃度が高くて粘度は低い特性を有することができるので、高ローディングが容易であり、長時間の保存時にも前記正極活物質スラリーの相安定性に優れるといえる。
【0021】
さらに、有害性の高い前記有機溶媒の使用量を減らすことができるので、相対的に環境に優しく、コストが節減されるので、経済的利点が発生することができる。
【0022】
併せて、本発明に係る正極は、前記正極活物質スラリーから形成された正極活物質層を含むことにより、前記正極活物質層の厚さが一定でローディング偏差が大幅に減少することができるので、これを含むリチウム二次電池の特性に優れるといえる。
【0023】
本明細書の次の図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するものであり、前述した発明の概要とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を担うものなので、本発明はそのような図面に記載されている事柄にのみ限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池のC−rate容量特性を比較分析した結果グラフである。
図2】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の寿命特性を比較分析した結果グラフである。
図3】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の電極面抵抗特性を比較分析した結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に対する理解を助けるため、本発明をさらに詳しく説明する。
【0026】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的且つ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0027】
本発明は、有害性物質である有機溶媒の含量が低く、固形粉の濃度が高くて粘度が低いため、高ローディング(high loading)が可能で相安定性に優れた正極活物質スラリーを提供する。
【0028】
本発明の一実施形態に係る前記正極活物質スラリーは、正極活物質;第1バインダー、第2バインダー及び有機溶媒を含み、前記第1バインダーがフッ素系バインダーで、前記第2バインダーがブタジエンゴム系バインダーであり、前記第1バインダーと第2バインダーは9:1から7:3の重量比を有することを特徴とする。
【0029】
さらに、本発明に係る前記正極活物質スラリーは、固形粉の濃度が55%から65%であり、粘度が5,000cpsから20,000cpsであることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る前記正極活物質スラリーは、後述するところのように、リチウム鉄リン酸塩系正極活物質を含むとともに二種の互いに異なるバインダーを一定の割合で含むことにより、有機溶媒の使用量は減らすことができ、前述した固形粉の濃度及び粘度特性を呈することができるので、正極活物質層を容易に形成することができる。
【0031】
前記正極活物質は、下記式(1)で表されるリチウム鉄リン酸塩系正極活物質であり得る:
[化学式1]
Li1+aFe1−x(PO4−b)X (1)
前記式(1)で、Mは、Al、Mg、Ni、Co、Mn、Ti、Ga、V、Nb、Zr、Ce、In、Zn、Yまたはこれらの組み合わせであり、Xは、F、S、Nまたはこれらの組み合わせであり、aは−0.5≦a≦0.5で、bは0≦b≦0.1であり、xは0≦x≦0.5である。
【0032】
好ましくは、前記正極活物質は、LiFePO、LiFeMnPO、LiFeMgPO、LiFeNiPO、LiFeAlPOまたはLiFeCoNiMnPOであってよい。
【0033】
前記正極活物質スラリーの全体固形粉の含量に対し、50重量%から65重量%で含まれ得る。
【0034】
具体的に、一般に、リチウム鉄リン酸塩系正極活物質は粒子の大きさが小さくてカーボンコーティングされた比表面積が広いことから、これを含む正極活物質スラリーの固形粉の濃度が低いため、多量の有機溶媒を添加して正極活物質層を形成させるに適した粘度を合わせることになる。よって、正極活物質スラリー内で相対的に正極活物質の含量は低くて有機溶媒の含量が高いため、高ローディング(high loading)時には乾燥しきれない部分が発生し得るので、高ローディングが不可能で乾燥工程の時間が増加して生産性が低下することがあり、前記正極活物質スラリーの相安定性が低下してこれから形成された正極活物質層の厚さ及びローディング偏差が発生し得る。本発明に係る前記正極活物質スラリーは、前述したところのように、第1バインダー及び第2バインダーを混合して用いることにより、前記正極活物質スラリー内の全体固形粉の濃度を高めて粘度を低めることができるので、従来の正極活物質スラリーに比べて相対的に正極活物質の含量(固形粉基準)を高めることができながらも、有害性物質である有機溶媒の使用量は減らすことができるので、前記のような問題を解決することができる。
【0035】
前記第1バインダーは、正極活物質スラリー内で正極活物質層及び正極活物質層の間;及び正極活物質層及び正極集電体の間に密着力を高める役割を担うものであって、フッ素系バインダーであってよい。具体的には、前記第1バインダーは、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF−co−HEP)、クロロトリフルオロエチレン(CFTF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群より選択される1種以上であってよい。好ましくは、前記第1バインダーはポリビニリデンフルオリドであってよい。
【0036】
前記第2バインダーは、正極活物質スラリー内で分散剤の役割を担うものであって、前記正極活物質スラリーの全体100重量部に対し20重量部から30重量部で含まれ得る。前記第2バインダーはブタジエンゴム系バインダーであってよく、具体的に前記第2バインダーは、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴムまたはこれらの組み合わせであってよい。
【0037】
さらに、本発明に係る前記第1バインダー及び第2バインダーは、前述したところのように、9:1から7:3の重量比で前記正極活物質スラリーに含まれてよく、好ましくは、8:2から7:2の重量比を有することができる。もし、前記第1バインダー及び第2バインダーの重量比が9:1を外れて第1バインダーの割合がさらに高くなる場合は、これを含む正極活物質スラリー内で固形粉濃度の増加の程度が僅かなので、固形粉濃度の増加による効果が表れないことがある。一方、前記第1バインダー及び第2バインダーの重量比が7:3を外れて第1バインダーの割合がさらに低くなる場合は、これを含む正極活物質スラリーの粘度が低くなりすぎて、前記正極活物質スラリーを正極集電体上にコーティングするとき、前記コーティングが不安定になり得る。
【0038】
前記有機溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)またはこれらの組み合わせであり得る。
【0039】
一方、本発明に係る前記正極活物質スラリーは、導電材をさらに含むことができる。
【0040】
このとき、前記導電材は、当該電池のその他の要素と副反応を誘発することなく、導電性を有するものであれば特に制限されないが、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック(super−p)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファネースブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを用いることができる。前記導電材は、前記正極活物質の全体重量に対し0.05重量%から5重量%で用いられ得るが、これに制限されるものではない。
【0041】
また、本発明に係る前記正極活物質スラリーは、前述した有効成分(正極活物質、第1バインダー、第2バインダー及び有機溶媒)以外に、必要に応じて充填剤のような添加剤をさらに含むことができる。
【0042】
前記充填剤は正極の膨張を抑える成分であって、必要に応じて使用有無を決めることができ、当該電池に化学的変化を誘発することなく、繊維状材料であれば特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質であり得る。
【0043】
さらに、本発明は、前記正極活物質スラリーから形成された正極活物質層を含む正極を提供する。
【0044】
本発明の一実施形態に係る前記正極に含まれている正極活物質層は、前記正極活物質スラリーから形成されることにより前記正極活物質層の厚さが一定になることができ、正極全般に正極活物質のローディング量の偏差が著しく低いといえる。
【0045】
本発明に係る前記正極は、正極集電体の少なくとも一面上に前記正極活物質スラリーを塗布し、乾燥して製造することができる。
【0046】
前記正極集電体は、一般に3μmから500μmの厚さのものを用いることができ、当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば特に制限されるものではないが、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタンまたは銀などで表面処理したものなどが用いられ得る。
【0047】
前記塗布は特に制限されることなく、当業界に通常知られている方法によって行うことができ、例えば、前記正極活物質スラリーを前記正極集電体の少なくとも一面上に噴射または分配させたあと、ドクターブレード(doctor blade)などを使って均一に分散させて行うことができる。以外にも、ダイキャスティング(die casting)、コンマコーティング(comma coating)、スクリーンプリンティング(screen printing)などの方法を介して行うことができる。
【0048】
前記乾燥は特に制限されるものではないが、50℃から200℃の真空オーブンで1日以内に熱処理して行うことであり得る。このときの熱処理は、直接的に熱を加えること、及び熱風乾燥などの間接的に熱を加えることを全て含むことができる。
【0049】
併せて、本発明は、前記正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【0050】
本発明の一実施形態に係る前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、及び前記正極と負極の間に介在されている分離膜、及び電解質を含むことを特徴とする。
【0051】
前記負極は、負極集電体の少なくとも一面上に負極活物質スラリーを塗布し、乾燥して製造することができ、このときの前記負極活物質スラリーは、負極活物質以外にバインダー、導電材及び充填剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0052】
前記負極活物質は特に制限されることなく、当業界に通常知られている、リチウムイオンが挿入及び脱離可能な炭素材、リチウム金属、ケイ素または錫などを用いることができる。好ましくは前記炭素材を用いることができ、炭素材には低結晶状炭素及び高結晶状炭素などが全て用いられ得る。前記低結晶状炭素には軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)を挙げることができ、前記高結晶状炭素には天然黒鉛、キッシュ黒鉛(kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso−carbon microbeads)、液晶ピッチ(mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素を挙げることができる。
【0053】
前記負極集電体は、前述した正極集電体と同じか含まれるものであってよく、前記導電材及び充填剤は前述した通りであってよく、必要に応じて有機溶媒を用いることができる。このとき、前記有機溶媒は前述した通りであってよい。
【0054】
前記バインダーは、ビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF−co−HEP)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)及びフッ素ゴムからなる群より選択される1種以上のものであり得る。
【0055】
前記塗布及び乾燥は、前述した通りであってよい。
【0056】
前記分離膜は、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜であってよく、一般に、0.01μmから10μmの気孔直径、5μmから300μmの厚さを有するものであってよい。このような分離膜には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して用いることができ、または、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0057】
さらに、前記電解質は、電解質に通常用いられる有機溶媒及びリチウム塩を含むことができ、特に制限されるものではない。
【0058】
前記リチウム塩の陰イオンには、F、Cl、I、NO、N(CN)、BF、ClO、PF、(CFPF、(CFPF、(CFPF、(CFPF、(CF、CFSO、CFCFSO、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFCOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO、CFCO、CHCO、SCN及び(CFCFSOからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0059】
前記有機溶媒には、代表的に、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジメタルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビニレンカーボネート、スルホラン、ガンマ−ブチロラクトン、プロピレンスルファイト及びテトラヒドロフランからなる群より選択される1種以上のものであり得る。
【0060】
特に、前記カーボネート系有機溶媒のうち環状カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートは高粘度の有機溶媒であって、誘電率が高くて電解質内のリチウム塩をよく解離させるので好ましく用いられてよく、このような環状カーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の線形カーボネートを適した割合で混合して用いれば、高い電気伝導率を有する電解液を製造することができるので、さらに好ましく用いられてよい。
【0061】
さらに、前記電解質は、必要に応じて充放電特性、難燃性特性などの改善のため、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノン、N,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどをさらに含むことができる。場合によっては、不燃性を与えるため、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含むことができ、高温保存特性を向上させるため二酸化炭酸ガスをさらに含むこともでき、FEC(fluoro−ethylene carbonate)、PRS(propene sulfone)、FPC(fluoro−propylene carbonate)などをさらに含むことができる。
【0062】
本発明に係るリチウム二次電池は、正極と負極の間に分離膜を配置して電極組立体を形成し、前記電極組立体は、円筒状電池ケースまたは角形電池ケースに入れたあと、電解質を注入して製造することができる。または、前記電極組立体を積層したあと、これを電解質に含浸させて得られた結果物を電池ケースに入れ、密封して製造することもできる。
【0063】
本発明で用いられる電池ケースは、当分野で通常用いられるものが採用されてよく、電池の用途に伴う外形に制限がなく、例えば、缶を用いた円筒状、角形、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などとなり得る。
【0064】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに用いられ得るだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく用いられ得る。前記中大型デバイスの好ましい例には、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これらだけに限定されるものではない。
【0065】
以下、実施例及び実験例によって本発明をさらに詳しく説明する。ところが、下記実施例及び実験例は本発明を例示するためのものであって、これらだけに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0066】
実施例1
1)正極活物質スラリーの製造
LiFePOにポリビニリデンフルオリド、スチレン−ブタジエンゴム、デンカブラック及びNMPを添加し、混合して正極活物質スラリーを製造した。このとき、前記ポリビニリデンフルオリド及びスチレン−ブタジエンゴムは8:2の重量比で用いた。製造された正極活物質スラリーの固形粉の濃度は64%、粘度は19,500cpsであった。
【0067】
2)リチウム二次電池の製造
前記製造された正極活物質スラリーを20μm厚さのアルミニウム薄膜に塗布し、130℃で12時間の間真空乾燥して正極活物質層が形成された正極を製造した。
【0068】
天然黒鉛96重量%にカーボンブラック系導電材1重量%、カルボキシメチルセルロース(CMC)1.5重量%、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)1.5重量%を混合して負極活物質スラリーを製造し、これを銅ホイルに150μmの厚さに塗布したあと、圧延及び乾燥して負極を製造した。
【0069】
前記実施例1−1)で製造した正極及び前記負極を3×4cmの大きさに打抜きしたあと、1M LiPF及び2重量%のVC(vinyl chloride)が溶解されているカーボネート系電解液を注入してポリマーセルタイプの試験用モノセルを製作した。
【0070】
実施例2
正極活物質スラリーの製造時に、前記ポリビニリデンフルオリド及びスチレン−ブタジエンゴムを7:3の重量比で用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して試験用モノセルを製作した。一方、製造された正極活物質スラリーの固形粉の濃度は64%、粘度は15,000cpsであった。
【0071】
比較例1
正極活物質スラリーの製造時に、スチレン−ブタジエンゴムを用いずにポリビニリデンフルオリドだけを用い、NMPを二倍の量で用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して試験用モノセルを製作した。一方、製造された正極活物質スラリーの固形粉の濃度は46%、粘度は20,000cpsであった。
【0072】
比較例2
正極活物質スラリーの製造時に、前記ポリビニリデンフルオリド及びスチレン−ブタジエンゴムを9.5:0.5の重量比で用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して試験用モノセルを製作した。一方、製造された正極活物質スラリーの固形粉の濃度は46%、粘度は18,000cpsであった。
【0073】
実験例1
前記実施例1及び2と比較例1及び2の各正極活物質スラリーの固形粉の濃度及び粘度を比較分析するため、それぞれの固形粉の濃度及び粘度を測定した。
【0074】
前記固形粉の濃度は、前記各正極活物質スラリーを固形粉測定器を用いて150℃で固形粉が0.01%まで飽和(saturation)されるまで乾燥する方法を介して測定し、前記粘度はブルックス(Brooks)粘度測定計4番ピンを用いて常温で測定した。結果を下記表1に示した。
【0075】
【表1】
【0076】
前記表1に示されているところのように、本発明に係る二種のバインダーを混合して用いた実施例1及び実施例2の正極活物質スラリーは、少ない有機溶媒(NMP)を用いるにもかかわらず、多量の有機溶媒(NMP)を用いた比較例1の正極活物質スラリーに比べて相対的に高い固形粉の濃度及び低い粘度を表した。
【0077】
さらに、二種のバインダーを混合して用いたが、本発明に係る二種バインダーの適した混合の割合を外れる割合で用いた比較例2の正極活物質スラリーは、粘度特性は多少低い数値を見せたが、固形粉の濃度が不良であった。
【0078】
これは、本発明に係る二種のバインダーを含む正極活物質スラリーは、有害な有機溶媒の少量の使用でも優れた固形粉の濃度特性及び粘度特性を表すことができるので、有機溶媒の使用減少によるコスト節減の効果があり、環境に優しいといえる。
【0079】
実験例2
前記実施例1及び2と比較例1及び2で製作した各モノセルの容量特性を比較分析した。結果を図1に示した。
【0080】
前記各電池を25℃で0.2C、0.5C、1.0C、1.5C、2.0Cの割合でレート特性を確認し、C−rateの測定基準は1Cを基準に計算した。充電は、CC/CVで0.5Cの速度で充電した後、2.5VまでCCで0.2C、0.5C、1.0C、1.5C、2.0Cの速度でそれぞれ放電し、放電容量を測定して容量特性を分析した。
【0081】
図1に示されているところのように、本発明に係る正極活物質スラリーを含む実施例1及び実施例2のモノセルが、比較例1及び比較例2に比べて類似した容量特性を表すことができることを確認した。
【0082】
これは、本発明に係る実施例1及び2の正極活物質スラリーが、二種のバインダーを混合して用いることにより、少量の有機溶媒の使用にもかかわらず前記正極活物質スラリーの相安定性に優れることができるので、これを利用して製造された正極を用いたモノセルが、従来の正極活物質スラリーを用いた比較例1のモノセルに似た性能を有する効果があることを示す。
【0083】
実験例3
前記実施例1及び2と比較例1で製作した各リチウム二次電池の寿命特性を比較分析した。結果を図2に示した。
【0084】
各電池を25℃で0.5C充電及び0.5C放電の条件下で250回の充放電を繰り返し、繰返し回数に伴う容量退化度を測定した。
【0085】
図2に示されているところのように、本発明に係る正極活物質スラリーを含む実施例1及び実施例2のモノセルが、比較例1に比べて類似した寿命特性を表すことができることを確認した。
【0086】
これは、本発明に係る実施例1及び2の正極活物質スラリーが、二種のバインダーを混合して用いることにより、少量の有機溶媒の使用にもかかわらず前記正極活物質スラリーの相安定性に優れることができるので、これを利用して製造された正極を用いたモノセルが、従来の正極活物質スラリーを用いた比較例1のモノセルに似た性能を有する効果があることを示す。
【0087】
実験例4
前記実施例1及び2と比較例1及び2で製作した各リチウム二次電池の面抵抗特性を比較分析した。結果を図3に示した。
【0088】
電極の面抵抗は4−probe測定器を用い、前記各正極を5cm×5cmに打抜きして常温で測定した。
【0089】
図3に示されているところのように、本発明に係る正極活物質スラリーを含む実施例1及び実施例2のモノセルが、比較例1及び比較例2に比べて多少優れた面抵抗特性を表すことができることを確認した。
【0090】
これは、本発明に係る実施例1及び2の正極活物質スラリーが、二種のバインダーを混合して用いることにより、少量の有機溶媒の使用にもかかわらず前記正極活物質スラリーの相安定性に優れ、ローディング及び厚さの偏差が最小化された正極活物質層を形成することができるので、これを用いたモノセルが従来の正極活物質スラリーを用いた比較例1のモノセルより優れた面抵抗特性を表すことができることを意味する。
【0091】
さらに、二種のバインダーの混合の割合において、本発明に係る範囲内の割合に調節される場合、さらに優れた効果を表すことができることを意味する。
図1
図2
図3