技術分野
SiCエピタキシャルウェハの製造方法及びSiCエピタキシャル成長装置
発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋
上述のように、Cl系ガス及びN系ガス(分子内にN原子を含みかつN原子同士の2重結合、3重結合のいずれも有さない分子で構成される塩基性のガス)をそれぞれ用いることができることについては知られていた。しかしながら、実験室レベルの検討でそれぞれの検討は行われてはいたが、実際の生産現場でそれぞれのガスを用いることは検討されていないのが実状であった。
Cl系ガスについては、Si原料の投入量が多くなければ気相中Si核生成やウェハ表面のSi液滴は発生せず、また低圧化することでCl系ガスを使わなくてもでも気相中Si核生成やウェハ表面のSi液滴を防ぐことができるという実状があり、Cl系ガスは不可欠なものではなく、シラン(SiH
4)のみで足りる場合も多かった。
またN系ガスについては、4インチ以下のエピタキシャルウェハにおいては、面内の温度やガス分圧の不均一性がそれほど大きくなく、3重結合を有する窒素ガスでもキャリアの均一性の十分満足できるエピタキシャルウェハを得ることができていた。そのため、窒素ガスに比べて、SiCエピタキシャルウェハへのドーパント元素の取り込み性も高くなく、かつ扱いにくいN系ガスを敢えて用いることは検討されていなかった。
そのため、SiCエピタキシャルウェハの製造方法において、これらのN系ガスとCl系ガスを同時に用いようとする検討は行われておらず、これらのガスを同時に用いた場合の課題は認識されていなかった。
一方で、近年、本発明者らは、6インチを超えるような大型で、高品質なSiCエピタキシャルウェハを作製する検討を進めている。このような大型のSiCエピタキシャルウェハは、単純に種々のサイズを大きくしただけでは得ることができず、実際に高品質な膜を得るためには課題が多い。4インチのSiCエピタキシャルウェハと比較しても、例えば欠陥の低減や、キャリア密度の均一化という点において課題がある。また、近年スループットを上げることや高耐圧デバイス用の厚膜が求められるようになってきたので、エピ成長速度を上げるためにSi原料の投入量を増やすことが求められるようになってきた。そのため、上述のようなCl系ガス及びN系ガスを用いることに伴う効果がより顕著に期待される。そこで、本発明者らはCl系ガス及びN系ガスを同時に用いて、エピタキシャル膜を作製することについて初めて実際に検討を行った。
その結果、単純に、分子内にN原子を含みかつN原子同士の2重結合、3重結合のいずれも有さない分子で構成される塩基性のN系ガスと、分子内にCl原子を含む分子で構成されるCl系ガスとを混合しただけでは、SiCエピタキシャルウェハを均質、かつ欠陥の少ない状態で作製することが出来なかった。
すなわち本発明者らは、鋭意検討の結果、N系ガスとCl系ガスを混合すると固体生成物が生成され、その固体生成物がSiCエピタキシャルウェハの欠陥となるという課題に初めて到達した。このような問題は、反応空間に同時にN系ガスとCl系ガスを存在させる必要性があるSiCエピタキシャルウェハの製造方法において特に顕著であった。
例えば、非特許文献1には、HClガスを用いることは記載されているが、ドーパントガスを加えることについて記載も示唆もない。
また例えば、非特許文献2には、トリクロロシランガスを用い、キャリアをドープするために窒素を用いることが記載されているが、窒素は3重結合を有し安定的であるため、固体生成物は生成されない。
また特許文献1では、N系ガスを用いることが記載されている。しかしながら、原料ガスとして用いられているガスはシラン(SiH
4)であり、HClガスを同時に用いることも記載されていない。
シランガスに変えて、トリクロロシラン等のクロロシラン化合物を用いることが考えられるが、特許文献1の図1に示すように配管の段階で、二つのガスを混合している。
配管は、一般にステンレス等からなり加熱されていないため、これらのガスを配管内で混合すると、固体生成物が生成され配管内に付着する。付着した固体生成物は、剥離し、SiCエピタキシャルウェハ上にパーティクルとして飛来することが考えられる。飛来した固体生成物起因のパーティクルはSiCエピタキシャルウェハにおける欠陥となり得る。例えば、ウェハ表面に付着した固体生成物起因のパーティクルは、SiCのステップフロー成長を阻害し、パーティクルを起点とした三角欠陥を発生させる。N系ガス、Cl系ガスの使用量や使用回数にも依るが、N系ガスとCl系ガスを混合して導入すると、1個cm
−2以上の表面欠陥が発生してしまっていた。特許文献1に記載された発明からは、固体生成物が形成されるという課題、及び、固体生成物がSiCエピタキシャルウェハの欠陥となるという課題に到達できないことは明らかである。
すなわち、SiCエピタキシャルウェハにおいて、N系ガスとCl系ガスを同時に用いると、固体生成物が生成され、その固体生成物が欠陥となるという課題は、本発明者らが実際に検討を進める中で、初めて見出したものであり、N系ガスとCl系ガスを同時に用いることにより発生する固体生成物に伴う欠陥を抑制することができるSiCエピタキシャルウェハの製造方法及びSiCエピタキシャル成長装置については、何ら提案されていないのが実情であった。
したがって、N系ガスとCl系ガスの混合により発生する固体生成物に伴う欠陥を抑制することができるSiCエピタキシャルウェハの製造方法及びSiCエピタキシャル成長装置が切に求められていた。
本発明は問題に鑑みてなされたものであり、N系ガスとCl系ガスを同時に用いることにより発生する固体生成物に伴う欠陥を抑制することができるSiCエピタキシャルウェハの製造方法及びSiCエピタキシャル成長装置を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋
本発明者らは、鋭意検討の結果、N系ガスとCl系ガスとを、N系ガスとCl系ガスとの混合によって生じる固体生成物の沸点または昇華温度以上の温度で混合することで当該問題を解決できることを見出し、発明を完成させた。
即ち、本発明は、課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【発明の効果】
本発明の一態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、分子内にN原子を含み、かつN原子同士の2重結合、3重結合のいずれも有さない分子で構成される塩基性のN系ガスと、分子内にCl原子を含む分子で構成されるCl系ガスとを用いる。N系ガスは、2重結合、3重結合のいずれも有さないため熱分解におけるエネルギーが小さく、熱分解過程の制御が容易であり、SiCエピタキシャルウェハにおけるドーピングに寄与する活性種を均一に分布させることができる。またCl系のガスは、気相中でのSiの核成長を抑制できる。またウェハの表面でのSi液滴の発生も抑制することもできる。
さらに、本発明の一態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、SiCエピタキシャル成長の反応空間にN系ガスとCl系ガスを分離して導入し、N系ガスとCl系ガスとを、N系ガスとCl系ガスとの混合によって生じる固体生成物の沸点または昇華温度以上で混合する。N系ガスとCl系ガスを分離して導入するため、SiCエピタキシャル成長の反応空間外の配管等でも固体生成物の生成を抑制することができる。また混合する際には、固体生成物の沸点または昇華温度以上の温度で混合するため、反応空間内でも固体生成物の生成を抑制することができる。したがって、固体生成物に伴う欠陥を低減したSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。また反応空間全体の温度を、N系ガスとCl系ガスとの混合によって生じる固体生成物の沸点または昇華温度以上としてもよい。反応空間全体の温度を高めることにより、固体生成物が混合後に発生することを抑制することができ、より固体生成物に伴う欠陥を低減したSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。
本発明の一態様にかかるSiCエピタキシャル成長装置は、成長空間を構成する炉体と、前記炉体内に備えられSiCウェハを載置する載置台と、前記炉体内へガスを導入するガス導入管とを有し、前記ガス導入管が、分子内にN原子を含み、かつN原子同士の2重結合、3重結合のいずれも有さない分子で構成される塩基性のN系ガスを導入するN系ガス導入管と、分子内にCl原子を含む分子で構成されるCl系ガスを導入するCl系ガス導入管とを、互いに分離して有し、前記N系ガス導入管及び前記Cl系ガス導入管の導入口を、前記N系ガスと前記Cl系ガスとの混合によって生じる固体生成物の沸点または昇華温度以上に加熱できる加熱手段とを備える。
上述のように、N系ガス及びCl系ガスを用いることで、欠陥を抑制し、エピタキシャルウェハの均質性を高めることができる。またN系ガス導入管とCl系ガス導入管を分離することにより、炉体内にN系ガスとCl系ガスを分離して導入することができ、SiCエピタキシャル成長の反応空間外の配管等でも固体生成物の生成を抑制することができる。さらに、N系ガス導入管及びCl系ガス導入管の導入口を、N系ガスとCl系ガスとの混合によって生じる固体生成物の沸点または昇華温度以上に加熱できる加熱手段を有するため、炉体内にN系ガス及びClガスが導入された段階で、固体生成物の沸点または昇華温度以上の温度以上となり、固体生成物は固体として存在することができない。そのため、本発明の一態様にかかるSiCエピタキシャル成長装置を用いることで、固体生成物に伴う欠陥を低減したSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。
またガス導入管の導入口と前記載置台の間の温度を、N系ガスとCl系ガスとの混合によって生じる固体生成物の沸点または昇華温度以上とすることができる構成としてもよい。この構成によれば、混合後に固体生成物が発生することも抑制することができ、より固体生成物に伴う欠陥を低減したSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。
またガス導入管の導入口と載置台との距離が、200〜2000mmであってもよい。ガス導入管の導入口と載置台との距離が大きければ、生成した固体生成物がエピタキシャルウェハの表面に落下する前に、気化させることができる。ガス導入管の導入口と載置台との距離は、300〜1000mmであることがより好ましい。距離が大きすぎると、加熱源の大型化が必要となり、装置コスト、ランニングコストの観点で好ましくない。
さらに、ガス導入管が前記載置台の上部に配置された、縦型の炉体構造でもよい。縦型の炉体構造では、反応空間である炉体が大きくなる。反応空間が大きくなると、ウェハの周囲は輻射の影響が大きくなるため、温度を均一に保つことが難しくなる。そのため、ウェハの周囲に至る前に気化することができるN系ガスの効果がより顕著となる。
この発明についての権利主張の範囲[特許請求の範囲]
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この特許公報に記載されている図面[図面の簡単な説明]から抜粋
【図1】本発明の一実施形態であるSiC化学成長装置を模式的に説明する断面模式図である。
【図2】本発明の一実施形態であるSiC化学成長装置を模式的に説明する断面模式図であり、ガス導入管の導入口がテーパーを有する場合のSiC化学気相成長装置の断面模式図である。なお、簡単のために炉体の下部は図示していない。
【図3】本発明の一実施形態であるSiC化学成長装置を模式的に説明する断面模式図であり、ガス導入管及び外管の導入口が共にテーパー形状を有する場合のSiC化学気相成長装置の断面模式図である。なお、簡単のために炉体の下部は図示していない。
【図4】本発明の一実施形態であるSiC化学成長装置を模式的に説明する断面模式図であり、パージガスがガス導入管の周囲に成膜処理前室を介してシャワー状に供給されている場合のSiC化学気相成長装置の断面模式図である。なお、簡単のために炉体の下部は図示していない。
【図5】本発明の一態様に係るSiC化学成長装置を模式的に説明する断面模式図である。
100:SiC化学気相成長装置、10:炉体、20:載置台、21:サセプタ、22:加熱機構、30:ガス導入管、31:N系ガス導入管、32:Cl系ガス導入管、33:Si系ガス導入管、34:C系ガス導入管、35:ガス導入口、36:ガス導入路、37:外管、38:成膜処理前室、40:加熱手段、50:炉体加熱手段、60:ガス排出口、70:炉体上部加熱手段、W:SiCウェハ、K:反応空間、N:N系ガス、Si:Si系ガス、C:C系ガス、Cl:Cl系ガス、p:パージガス
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