(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記逆混合のために、前記反応帯域に供給される流れを少なくとも1つ、及び/又は外部循環で送られる、前記反応帯域からの流れ(循環流)を少なくとも1つ使用する、請求項1に記載の方法。
二相の液状反応混合物において少なくとも1種のアルデヒドを触媒によりアルドール縮合させるための、反応帯域と、そのすぐ上方に存在する沈静帯域とを有する反応器を備え、前記反応帯域と前記沈静帯域が、唯一の反応容器内に存在する装置の使用であって、前記反応帯域は、連続的な水相に分散された有機相を生じさせるための装置を有し、前記沈静帯域は、二相の反応混合物を一体化させ、かつ前記沈静帯域の上部領域における連続的な有機相の形成を可能にする、前記使用。
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒によりアルデヒドをアルドール縮合するための方法、特に、多相反応器においてα,β−不飽和アルデヒドを製造するための方法に関する。
【0002】
従来技術
不飽和アルデヒドは、多様な有機化合物を製造するための出発物質であり、多くの用途で使用される。不飽和アルデヒドは特に水素化によって、飽和アルコールを製造するために使用でき、これはさらに可塑剤、洗浄剤、又は溶剤を製造するための出発物質として使用される。さらに不飽和アルデヒドは選択的水素化によって飽和アルデヒドに、続いて酸化によってカルボン酸にすることができる。
【0003】
不飽和アルデヒドは工業的には、水を脱離させながら、飽和アルデヒドをアルドール縮合することによって製造される。重要なアルドール縮合は、水を脱離させながらn−ブチルアルデヒドを2−エチルヘキセナールにする反応、又は水を脱離させながらn−バレルアルデヒドを2−プロピルヘプテナールにする反応である。使用物質は、直鎖状のアルデヒドに加えて、分枝鎖状のアルデヒドも含有することができ、この分枝鎖状のアルデヒドはそれ自体と、他の分枝鎖状アルデヒドと、又は直鎖状アルデヒドと、アルドール化のもとで縮合可能である。同様に、炭素原子数が異なるアルデヒドは、アルドール化のもと、相互に縮合可能である。アルドール縮合により得られるアルデヒド(2−エチルヘキセナールと2−プロピルヘプテナール、及び/又はこれらの異性体混合物)の水素化生成物2種は、2−エチルヘキサノールと2−プロピルヘプタノール(及び/又はこれらの異性体混合物)であり、広範に(特にアルコール可塑剤として)使用される。
【0004】
アルドール縮合の触媒としては、一般的に塩基(しばしばNaOH)を水に溶かして使用し、ここで水性塩基は、有機の原料混合物/生成物混合物に加えて、第二の液相を形成する。反応の間に放出される水は、より重い水相において増加する。有機の原料と生成物は、比較的軽い有機相を形成する。アルドール縮合の反応温度は通常、80〜180℃の範囲である。この反応は通常、気相が存在する場合には水相と有機相の蒸気圧の合計に相当する高圧下で行い、この圧力は通常、10bar未満である。反応の間に熱が放出されるが、この熱は工程から排出しなければならない。アルドール縮合は通常、高い選択性(95%超)で所望の生成物へと進行する。重要な副反応として、高沸点の副生成物が形成される。さらなる副反応としてあり得るのは、いわゆるカニッツァーロ反応であり、この反応はまた、触媒の消費にもつながる。
【0005】
アルドール縮合に使用する触媒は、基本的に水相に存在するため、この反応も主に、水相で起こる。よって充分に早い反応のためには、原料が相応して良好に水相に溶解性である必要がある。これは、炭素原子数が6個超のアルデヒドについては当てはまらない。この場合、溶剤及び/又は可溶化剤がなければ、しばしば経済的な運転が不可能となるからである。
【0006】
アルドール縮合に使用可能な反応体積は、水相の体積によって特定する。このため、水相の割合ができるだけ大きい反応器を稼働させるのが望ましい。連続的な反応実施の場合はたいてい、このために反応器から排出される水相を、相分離の後、反応器に返送する。このような運転法は例えば、EP 1106596 A2に記載されている。反応の際に生成する水によって水相が希釈されるため、水相の一部は常に工程から排出する必要があり、触媒は補わなければならない。
【0007】
2つの相間での物質交換を充分に保証するためさらに、反応器において、相応して大きな相界面をもたらすのが望ましい。このためには通常、分散装置により機械的なエネルギーを投入する。しかしながらこの混合エネルギーは大きすぎてはならない。と言うのもさもなくば、2つの相の安定的なエマルジョンが生じないからである。このエマルジョンは、反応器から反応混合物を排出後、単純な方法(例えば単純な重力分離器)によらずに、完全に分離できる。
【0008】
従来、アルデヒドをアルドール縮合させるために、様々な種類の反応器が使用されてきた。アルドール縮合は例えば、2つの液相を分散させる撹拌式反応器で行うことができる。このような方法は例えば、DE 927626、及びWO 1993/20034に記載されている。このような方法の欠点は、機械的に影響を受けやすい回転部を用いることにある。さらに、構造的にコストのかかる内部熱交換管を介して、反応熱を排出する必要がある。
【0009】
US 5,434,313には、n−ブチルアルデヒドをアルドール縮合するため、3つの混合循環を直列で用いることが記載されている。ここで混合エネルギーは、循環の3つのポンプによって利用される。滞留時間を向上させるために各容器は、第二循環、及び第三循環に組み込まれている。この反応系の欠点は、管化のためのコストが大きいこと、また循環ポンプが多数必要になることである。
【0010】
US 5,434,313にはさらに、管型反応器においてアルドール縮合を行うことが記載されている。2つの液相をより良好に分散させるため、スタチックミキサー要素、又は充填体が備えられている。熱の排出は、管壁を介して行われるのが望ましい。このコンセプトの欠点は、管長が充分に長くなければならないこと、また排熱にコストがかかることである。
【0011】
EP 1106596 A2では同様に、混合要素を備える管型反応器を用いることが提案されている。管型反応器からの排出物は、2つの液相を分離するため、相分離器に供給される。水相の一部は、その中に溶解された触媒とともに反応器に返送され、残りは排出される。この運転法によって、反応器における過剰な水相が調整され、有機相は水相に分散されて存在する。反応熱は、返送された水相から、外部熱交換器を介して排出される。有機相を充分に分散させるために、高速の流れが、使用する管型反応器内で必要となるが、この流れは、圧力損失をより大きくする。この反応器コンセプトでは、有機原料を逆混合せずに反応させることが有利である。しかしながらこれには欠点が幾つかあり、例えば必要となる管の長さが長いこと、またこれと結合させる混合要素の数が多いことである。さらには有機相を分散させるため、多量のエネルギー投入が必要となり、このためには比較的大きなポンプを用いなければならないので、電力の消費量が多くなる。記載された充填体(例えばSulzerのSMV2、VFF)について典型的な圧力損失は、150mbar/mである。このことから、EP 1106596 A2に記載された方法は出力投入が、液状体積1m
3当たり50〜80kWであることが分かる。
【0012】
本発明の課題は、二相の液状反応混合物において触媒によりアルドール縮合するための、改善された方法を提供することである。この方法は、高い選択性でアルデヒドをアルドール縮合反応させて、不飽和のアルドール縮合生成物(不飽和アルデヒド)にするために適しているのが望ましい。本発明の課題は特に、
・反応器の構造様式がコンパクトであり、
・水相を外部分離器から反応器に返送しなくても、反応器における水相の割合を、容易に大きく調整することができ、
・排熱が容易に行われ、
・有機相の充分な分散を、できるだけ少ないエネルギー投入で可能にする、
触媒によりアルドール縮合を行うための方法を提供することである。
【0013】
意外なことに上記課題は、反応と2つの液相の一体化とを1つの装置において組み合わせると、効果的に解決可能なことが判明した。このために、ゆっくりと上方に貫流させ、完全には混合されない、装置の上部にある沈静帯域を用いて、比較的重い水相の分別を可能にする。この水相は、下方に存在する、完全混合された反応帯域において増加する。
【0014】
本発明の概要
本発明の対象は、二相の液状反応混合物において、反応帯域と、そのすぐ上方に存在する沈静帯域とを備える反応器内で、少なくとも1種のアルデヒドを触媒によりアルドール縮合するための方法であって、前記反応帯域では、触媒を含有する連続的な水相に分散されたアルデヒド含有相が生じ、前記反応帯域からの二相の反応混合物の流れを、沈静帯域に上昇、一体化させることができ、沈静帯域の上部領域では、連続的な有機相が形成される。
【0015】
本発明のさらなる対象は、反応帯域と、そのすぐ上方に存在する沈静帯域とを備える反応器を有する装置の使用であって、前記反応帯域は、連続的な水相に分散された有機相を生じさせるための装置を有し、2相の液状反応混合物を反応させるために、前記沈静帯域によって2相の反応混合物を一体化させ、沈静帯域の上部領域において連続的な有機相を形成することが可能である。
【0016】
本発明の詳細な説明
本発明の範囲において「水相」という用語は、主成分として水を含有する相を意味する。反応混合物中に含有される有機化合物が一定の水混和性を有する限り、水相は、溶解された有機化合物を相応の割合で含有することができる。これに相応して、本発明の範囲において「有機相」という用語は、主成分として有機化合物(例えばアルドール縮合に使用されるアルデヒド、及びアルドール縮合の生成物)を含有する相を言う。
【0017】
本発明による方法によって反応帯域と沈静帯域を、唯一の反応容器内に存在させることが可能になる。
【0018】
本発明による方法は好ましくは、連続的に行う。
【0019】
触媒を含有する水相は、ほぼ水から成る。所望の場合、水相はさらに、水と混和可能な有機溶剤を少なくとも1種、含有することができる。有機溶剤としては例えば、プロパンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、又はジメチルホルムアミドを使用することができる。
【0020】
水相における水及び有機溶剤の割合は、水相の全質量に対して好適には少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%である。
【0021】
好ましい実施態様において水相は、添加された有機溶剤を含有しない。本発明の意味合いにおいて添加された有機溶剤に該当しないのは、水相に溶解されたアルデヒド出発物質、アルドール縮合の生成物、及び反応に伴う不純物である。ここで水相における水の割合は、水相の全質量に対して好適には少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%である。
【0022】
水相は任意で、相転移剤、界面活性剤、若しくは両親媒性試薬、又は表面活性剤を含有することができる。
【0023】
本発明による方法のための触媒は好ましくは、水溶性、塩基性の化合物、例えば水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩、カルボン酸塩、又はこれらの混合物であり、これらをアルカリ金属化合物若しくはアルカリ土類金属化合物の形で使用することができる。アルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム)を使用するのが好ましい。
【0024】
反応帯域において連続的な水相中の触媒の濃度は、好適には0.1〜15質量%の範囲、特に好ましくは0.2〜5質量%の範囲、特に1〜3質量%の範囲である。
【0025】
本発明による方法は、縮合反応可能なアルデヒド若しくはアルデヒド混合物を反応させるために適している。アルデヒドを1種のみ使用する場合、このアルデヒドは2個のα−水素原子を、CO基に隣接して同じ炭素原子に有していなければならない。異なるアルデヒドを2種以上使用する場合、少なくとも1種のアルデヒドは、同じ炭素原子にα−水素原子を2個有していなければならない。
【0026】
本発明による方法に適したアルデヒドは、炭素原子数が1〜15、好ましくは3〜15、特に好ましくは4〜6のアルデヒドである。
【0027】
α−水素原子を2個有する適切なアルデヒドは例えば、アセトアルデヒド、プロパナール、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、3−メチルブチルアルデヒド、n−ヘキサナール、3−メチルペンタナール、4−メチルペンタナール、n−ヘプタナール、n−オクタナール、n−ノナナール、及びn−デカナールである。これらのアルデヒドは、ホモ縮合にも適している。
【0028】
α−水素原子を1個有する適切なアルデヒドは例えば、イソブチルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、2−メチルペンタナール、2−エチルヘキサナール、シクロヘキシルアルデヒドである。
【0029】
本発明による方法に好ましい使用物質は、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、n−ブチルアルデヒドとイソブチルアルデヒドとの混合物、n−バレルアルデヒドと2−メチルブチルアルデヒド及び/又は3−メチルブチルアルデヒドとの混合物である。同様に、C
4アルデヒドとC
5アルデヒドとの混合物も使用できる。これらのアルデヒドは例えば、オレフィンのヒドロホルミル化によって製造できる。
【0030】
1種以上のアルデヒド、又はアルデヒド混合物を用いる場合、各成分は別個に、触媒溶液の流れに給送することができる。同様に、全ての原料を給送前に混合し、一緒に給送することもできる。アルデヒドはさらに、溶液として使用できる。溶剤としては不活性の、触媒溶液にほとんど不溶性の液体(例えば炭化水素:ペンタン、ヘキサン、リグロイン、シクロヘキサン、若しくはトルエンなど)が使用できる。
【0031】
反応帯域
本発明によれば水相は、反応帯域において二相の反応混合物の連続相を形成する。好ましくは反応帯域における水相の体積割合は、反応帯域における二相の反応混合物の全体積に対して少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%である。
【0032】
本発明による方法では、反応帯域における水相の割合が一般的に、同じ反応変換率で沈静帯域を有さない従来技術の完全混合反応器における水相の割合よりもかなり大きい。従来の完全混合反応器では、外部から反応帯域に供給される水流無しでも、連続的な有機相を調整することができると考えられるものの、このことは反応の変換率と選択性の点で、否定的な結果につながるであろう。
【0033】
反応帯域における水相の体積割合は特に、沈静帯域の相応する実施(例えば何らかの構造物及び/又は充填体の体積、種類、環境)によって、水相が反応帯域において連続相となるように調整できる。
【0034】
反応帯域は好ましくは、逆混合されている。特に、水相に関して、また有機相に関して流動逆混合される(すなわち、反応帯域のあらゆる箇所に、水相と有機相に関してほぼ同じ濃度比が存在する)反応帯域を使用する。ここでこの混合は、反応帯域を巨視的に完全混合させるため、また有機相を連続的な水相に分散させて小さな液滴にするために役立つ。逆混合は反応帯域において、工程の選択性に肯定的に作用することが判明した。逆混合によって静的な原料濃度は僅かになるため、高沸点縮合生成物の形成が少なくなる。同様に、循環式逆混合系からの反応熱の排出がより容易になる。例えば外部にある熱交換器によって作業できるからである。
【0035】
本発明による方法の特別な実施態様では、逆混合のために反応帯域に供給される流れを少なくとも1つ、及び/又は反応帯域から外部循環に送られる流れ(循環流)を少なくとも1つ使用する。
【0036】
適切な混合装置は例えば、動的ミキサー(すなわち、混合器具が可動部を有する混合機)、及びスタチックミキサー(すなわち、内部に可動部を有さない、特にインライン原理で稼働する混合機)である。好ましくは、混合ノズル、撹拌機、混合ポンプ、スタチック混合要素、充填体堆積物などから選択される混合装置を少なくとも1種、使用する。適切な撹拌機のタイプは例えば、プロペラ式撹拌機、回転翼式撹拌機、ディスク式撹拌機、プレート式撹拌機、アンカー式撹拌機、傾斜板式撹拌機、十字羽根式撹拌機、螺旋式撹拌機、スクリュー式撹拌機などである。
【0037】
好ましくは、触媒を含有する連続的な水相に分散されたアルデヒド含有相を反応帯域において生成させるため、混合ノズルを少なくとも1つ使用する。この際、ノズルの混合性能によって、少ない出力投入量で行うのが好ましい。反応器に全体で投入される混合性能は好適には、液状体積1m
3当たり最大0.5kW、特に好ましくは液状体積1m
3当たり最大0.3kWである。ここで、EP 1106 596に記載された方法との実質的な相違点は先に述べたように、1m
3当たり50〜80kWの場合に混合性能が、2桁高いことである。
【0038】
反応帯域は好ましくは、ループ式反応器として、又は撹拌槽として形成されている。適切なループ式反応器は例えば、ジェット式反応器(Freistrahlreaktor)、ジェットループ式反応器、噴射ノズル式反応器などである。
【0039】
好ましい態様では反応帯域が、ジェット式反応器として実施されている。ジェット式反応器とその構成は例えば、K. H. Tebel, H.-O. May, Chem.-Ing.-Tech. 60 (1988), Nr. 11 , p. 912〜913、及びそこで引用された文献に記載されており、その内容については、ここで引用により、本願発明に組み込まれるものとする。
【0040】
アルデヒドの供給は、好ましくは反応帯域で、混合器具の混合エネルギーが局所的に高い領域(例えば撹拌機の撹拌翼のそば、又は混合ノズルのノズル端部)で行う。これにより、水性反応帯域においてアルデヒドの良好な分散と混和が行われる。
【0041】
アルデヒドの供給と混和は、アルデヒドを二成分ノズルによって添加すると、特に有利である。適切な二成分ノズルの図は、Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Edition, Volume B 4, p.280, Figure 6, Aにあり、そこでは"two-phase jet nozzle"と呼ばれている。その補遺には、気相と液相から成る二相流が記載されている。しかしながら図示されたノズルは、本発明による方法において液/液の二相流で使用できる。ここで好ましくは水相を、「Liquid」という記載で示された箇所で導入し、有機相を環状の空間に、「Gas」という記載のあるところで送る。
【0042】
或いはアルデヒドを、外部循環で導入した流れに、反応帯域から供給することができる(循環流)。
【0043】
アルデヒドに加えて触媒も、反応帯域に供給することができる。外部循環で供給される流れへの触媒の添加は好ましくは、反応帯域から行う(循環流)。この場合、触媒の供給は好ましくは、循環流に含まれる輸送装置の吸引側(流れに対して上方)で行う。触媒を吸引側(例えば循環ポンプ)に添加する場合、ポンプ内で良好な混和が起こることが有利である。触媒の添加は一般的に、濃縮した水溶液の形で行われる。
【0044】
本発明による方法の好ましい態様では、反応帯域がジェット式反応器として構成されている。この際に、反応混合物の一部を反応帯域から取り出し、ノズルによって反応帯域の上部領域に再度供給する。反応混合物の一部の取り出しは好ましくは、反応帯域の下部領域で、特に底部側端部で行う。これによって環状の流れが、反応帯域に生じる。ノズルとして好適には、二成分混合ノズルを使用する。好適には二成分混合ノズルによって、反応帯域への循環流の供給と、アルデヒドの供給を行う。ノズルは好適には、反応帯域における軸方向に対して下向きに設置されている。好ましい実施態様では、反応帯域の下方端部にじゃま板がある。
【0045】
アルドール縮合で生じる反応熱は適切な実施において、反応帯域で直ちに、統合された熱交換媒体によって排出できる。好ましい実施では、循環に統合された外部熱交換媒体を、排熱のために使用する。
【0046】
この場合に排熱は、反応器を取り囲む循環に統合されている外部熱交換媒体によって、コスト的に有利に行われる。循環流は好適には同時に、ノズルの駆動噴射流(Treibstrahl)をもたらし、ひいては装置の完全混合に役立つ。外部循環の循環ポンプは主に、反応帯域の下部領域から水相を吸引し、これによって安定的なエマルジョン(単純な分別によってはもはや一体化できない)が形成される危険性は、最小化される。
【0047】
沈静帯域
沈静帯域では相の転換が起こる。すなわち反応帯域における、連続的な水相と、分散性有機相とから構成されるエマルジョンが逆転し、沈静帯域における、連続的な有機相と、分散性水相とから構成されるエマルジョンになる。
【0048】
沈静帯域の断面積は、相分離が起こり、水相が向流で分別可能なように、充分に大きく実施されている必要がある。従って、沈静帯域に存在する装置部分の直径は、反応帯域に存在する装置部分の直径とは異なっていてよい。
【0049】
沈静帯域において上方に向いた2つの液相の空塔速度は好ましくは、10mm/秒未満であるのが望ましい。この空塔速度は特に好ましくは、5mm/秒未満であるのが望ましい。ここで速度の記述は、構造物及び/又は充填体を用いた場合でも、空塔に基づいて算出する。
【0050】
好ましい実施において沈静帯域は、構造物及び/又は充填体を有する。充填体は、(規則的な)充填物、又は充填体の堆積物の形で使用できる。よって沈静帯域では、2つの相のより良好な一体化を行うことができる。
【0051】
構造物の例は例えば、濾過板、突出部、カラムトレー、孔板、又は混合装置として使用されるその他の装置である。構造物として適しているのはまた、多管式反応器を形成する、狭く並列に接続された管である。特に好ましいのは、三次元構造化された混合機用充填物、又はデミスタ用充填物である。適切な充填体は例えば、ラシヒリング、鞍型充填物、ポールリング、テラレット、金網リング、又は金網織布である。充填物及び/又は充填体の材料としては、鋼が有利であると実証されている。と言うのも鋼は、その表面特性に基づき、特に一体化をもたらすからである。
【0052】
好ましくは連続的な有機相から、沈静帯域の上部領域において排出物を取り出す。
【0053】
適切な実施態様においては任意で、沈静帯域からの排出物を、アルドール縮合生成物が増加した画分を単離するための後処理にかけることができる。
【0054】
好ましくは、沈静帯域からの排出物を、少なくとも1つのさらなる反応器において反応させる。これにより、アルドール縮合生成物の変換率をさらに上昇させることができる。さらなる反応は特に、1つのさらなる反応器のみで行う。
【0055】
さらなる反応のために好ましくは、流管特性を備える反応器(すなわち、流れ方向において逆混合ができるだけ少ない反応器)を使用する。好ましい変法では、反応器が管状に実施されている。逆混合を避けるため、また反応に対してより大きな表面積を得るために、反応器は好適には構造物(すなわち、規則充填物、例えば板状若しくは織布状の充填物、及び/又は充填体の不規則堆積物)を有する。これらの充填物と充填体は好ましくは、鋼製である。流管特性を有する反応器は、別個の装置として実施されていてよい。特別な実施形態において、流管特性を有する反応器は、逆混合で稼働される第一反応器のすぐ上方に配置されている。
【0056】
さらなる反応に使用する反応器は好ましくは、断熱性で稼働させる。好ましい実施態様において、さらなる反応に使用される反応器は、規則充填物(例えば板状若しくは織布状の規則充填物)、充填物、及び/又は充填体の不規則な堆積物を有する。これらの充填物と充填体は好ましくは、鋼製である。
【0057】
本発明の範囲において「断熱」という用語は、技術的な意味で理解されるべきであり、物理化学的な意味で理解されるべきではない。断熱的な反応実施とは、反応の際に反応混合物から放出される熱量が反応器に吸収され、冷却装置による冷却が行われない手法と理解されるべきである。よって反応熱は、自然な熱伝導と反応器から周辺への放熱により放出される残りの割合は別にして、反応混合物にとともに反応器から排出される。
【0058】
本発明による方法により、反応排出物において高い最終変換率が得られる。ここで反応排出物とは、沈静帯域からの排出物であるか、或いは存在する場合には、アルドール縮合に使用される、流れ方向で最後の反応器からの排出物である。本発明による方法によって好ましくは、アルドール縮合に使用される直鎖状アルデヒドの全質量に対して少なくとも95質量%、好適には少なくとも97質量%の変換率が得られる。
【0059】
沈静帯域及び/又は後反応器から生成物混合体が排出された後、例えば後接続された熱交換器において、冷却を行うことができる。
【0060】
液状の反応排出物は好適には、液/液の分離容器において、触媒相と生成物相に分離する。これは様々な様式の分別容器で、又は遠心分離器で行うことができる。
【0061】
アルドール縮合で生じた水は触媒溶液を希釈してしまうため、常に工程から除去しなければならない。本発明による方法において水の除去は好適には、沈静帯域からの液状排出物のみで行うか、又は存在する場合には、(流れ方向で最後にある)後反応器からの液状排出物のみで行う。液−液の分離後に得られる水性の触媒相は、排水として方法から排出することができる。別の実施態様において、分離した水性触媒相は、任意で部分量を排出し、新たな触媒溶液を適切に補った後、アルドール縮合に返送することもできる。
【0062】
触媒相の分離後に得られる生成物は、公知の方法によって(例えば蒸留により)精製できる。
【0063】
本発明による方法で製造されるアルドール縮合生成物は有利には、水素化により飽和アルコールを製造するために使用できる。こうして得られる飽和アルコールは例えば、可塑剤、洗浄剤、又は溶剤を製造するために用いられる。可塑剤のアルコールのための前段階としては特に、不飽和のC
8〜C
10アルデヒドが適している。アルドール縮合生成物はさらに、選択的な水素化により飽和アルデヒドに、そしてこの飽和アルデヒドは、続いて酸化によりカルボン酸にすることができる。すなわちアルドール縮合生成物は、カルボン酸を製造するために使用できる。不飽和アルデヒドはさらに、その反応性に基づき、多くの合成に使用される。飽和アルデヒドと不飽和アルデヒドの使用分野は、芳香物質としての使用である。