(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
スープやリゾット、ラーメン等、液体が多く、かつ、粘性がある成分を多く含むチルド食品や冷凍食品のような飲食物を加熱調理する場合、電気コンロやガスコンロ等の加熱調理器を用いていわゆる鍋炊き調理をするのが一般的である。これらの加熱調理器は、熱量を調整することができるため、沸騰調理時に液体部分が吹きこぼれないように泡の上昇をコントロールしながら調理することができる。
【0003】
それに対し、電子レンジ調理では、熱量を随時調整することが困難であるため、飲食物の液体部分が沸騰と共に固形物を抱きかかえながら泡となって容器内を上昇していき、容器開口部よりも高くなると容器外へ吹きこぼれたり、また、突沸により生じた大きな泡が破裂することで飲食物の液体部分が容器外へ飛散したりして電子レンジ庫内を汚すなどの問題があった。そのため、吹きこぼれや飛散を防止するために、調理時間を短くしたり、吹きこぼれが起きない範囲で繰り返し加熱調理したりする必要があるため、充分な調理ができず、手間がかかるという問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するため、容器のふちの高さを高くする方法が考案されている(例えば特許文献1)。しかしながら、一般に家庭用に販売されている電子レンジは、庫内の高さがある程度決まっているため、無制限に高くすることはできない。また、容器のふちの高さが高くなることで喫食しづらくなったり、容器棚に収納しづらくなったりするという問題があった。また、特許文献1には、容器の高くなった部分を取り外せるようにして、喫食時の問題を解決する方法が記載されているが、このように構成した場合には、容器を再利用することができなくなるという問題があった。
【0005】
また、蓋を使用する方法が考案されている(例えば特許文献2)。しかしながら、蓋が密閉の場合、電子レンジ調理時に発生する蒸気により、容器内の内圧が高まり、容器内の飲食物が暴発する危険性がある。また、容器内の内圧が高まるのを防止するために蒸気を逃がす孔などを設けたとしても、蓋と容器内の飲食物の液面が近い場合には、その孔から飲食物の液体および固形物が漏れ出す危険性がある。これを防止するためには、蓋自体の高さを高くする必要があるが、電子レンジ庫内の高さによって蓋自体の高さは制限を受ける。特許文献2では、蓋の内部に中空部を形成し、該中空部を形成する上方壁と下方壁のそれぞれに、前記中空部に連通する通孔を設けてなる吹きこぼれ防止蓋が記載されている。しかしながら、このような構成では、吹きこぼれは防止できるものの、下方壁の通孔より中空部に液体と共に吹きこぼれた固形物が、容器内に戻らずに加熱され、蓋が汚れたり、食感にムラが出たりするという問題があった。
【0006】
また、蓋とキャップと容器とからなる電子レンジ調理器が知られている(例えば、特許文献3)。特許文献3には、容器、蓋、キャップからなる電子レンジ調理器であって、容器と蓋、蓋とキャップがそれぞれ嵌合し、蓋は、環状の蓋凹部を有し、蓋凹部の中心が開口し、側面に蒸気排出溝を有し、蓋開口部及び蓋蒸気排出溝より、容器内の蒸気の排出が行われることを特徴とする電子レンジ調理器が記載されている。しかしながら、このような構成では、蓋の形状やキャップ構造などが複雑となり、また、吹きこぼれを防止するためには、蓋だけでなくキャップが必要となるという問題があった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1aを示す斜視図である。
【
図2】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1aを示す上面図である。
【
図3】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1aを示すA−A’線断面図である。
【
図4】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1aを容器に嵌合した状態を示す断面図である。
【
図5】蓋を用いないときの電子レンジ調理状態を示す図である。
【
図6】突起部を有さない蓋を用いたときの電子レンジ調理状態を示す図である。
【
図7】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1aを用いたときの電子レンジ調理状態を示す図である。
【
図8】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1bを示す斜視図である。
【
図9】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1bを示す上面図である。
【
図10】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1bを示すB−B’線断面図である。
【
図11】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1bを容器に嵌合した状態を示す断面図である。
【
図12】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1cを示す斜視図である。
【
図13】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1dを示す斜視図である。
【
図14】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1eを示す斜視図である。
【
図15】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器3aを示す斜視図である。
【
図16】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器3aを構成する容器2aを示す上面図である。
【
図17】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器3aを構成する容器2aを示すC−C’線断面図である。
【
図18】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器3aを構成する蓋1aと容器2aとを嵌合した状態を示すC−C’線断面図である。
【
図19】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器3b示す斜視図である。
【
図20】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器3bを構成する容器2bを示す上面図である。
【
図21】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器3bを構成する容器2bを示すD−D’線断面図である。
【
図22】第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器3bを構成する蓋1bと容器2bとを嵌合した状態を示すD−D’線断面図である。
【
図23】第二の実施形態にかかる電子レンジ調理器一体型食品4の電子レンジ調理時における状態を示す断面図(その1)である。
【
図24】第二の実施形態にかかる電子レンジ調理器一体型食品4の電子レンジ調理時における状態を示す断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1〜4は、第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1aの説明図である。
図1は斜視図、
図2は上面図、
図3はA−A’線断面図、
図4は容器に嵌合した状態を示すA−A’線断面図である。
【0014】
図1〜3で示すように、蓋1aは、蓋天面100と、蓋外周部120と、蓋天面100と蓋外周部120とをつなぐ蓋側面110とからなる略円錐台形の形状であり、蓋天面100の中央付近が下方向に押し出されて成形された突起部140と蓋天面100上に設けられた蒸気排出孔170を具備する。突起部140は、非開口の突起先端部150と、蓋−突起境界部160が囲む開口面と、突起先端部150と蓋−突起境界部160とをつなぐ側面とからなる略逆円錐台の形状で、蓋中心180を含む形で配置される。蒸気排出孔170は、略楕円形状の孔で構成される。蒸気排出孔170は、蓋天面100上の蓋−突起境界部160周辺に4つ配置される。蒸気排出孔170は、蓋中心180に対してそれぞれが等距離の点を含む位置に設けられ、近接する蒸気排出孔170同士の距離が等距離である。向かい合う蒸気排出孔170同士が蓋中心180に対して点対称の位置を含む位置に設けられる。
【0015】
蓋1aの材質は、電子レンジ調理が可能であれば特に問わない。例えば、ガラスや陶器の他、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、結晶化ポリエチレンテレフタレート、ポリサルホンなどプラスチック材料が挙げられる。成形の容易さを考慮するとプラスチック素材が好ましく、特にポリプロピレンが耐熱性も高く好ましい。このことは、後述する蓋1b〜1d、容器2aおよび2bについても同様である。
【0016】
蓋1aの成形方法については、特に限定されない。例えば、蓋1aの材質がガラスである場合には、押型成形、吹型成形、鋳型成形などが挙げられる。また、蓋1aの材質がプラスチック素材の場合には、熱成形、射出成形などが挙げられる。このことは、後述する蓋1b〜1d、容器2aおよび2bも同様である。蓋1aの形状については、図示したような略円錐台形でなくてもよく、容器に合わせて当業者が適宜設定できる。このことは、後述する蓋1b〜1dについても同様である。
【0017】
突起部140は、蓋1aと一体で成形され、蓋天面100上の中央が下方向に凹んだ形状で形成されている。また、蓋1aに部材を接着させることで突起部140を設けてもよい。接着の手間を考えると突起部140は蓋1aと一体で成形されることが好ましく、特に材質がポリプロピレンの場合には、ポリプロピレンシートを熱成形することで簡単に蓋1aを成形することができる。これにより、複数の蓋を重ねあわせることができるので、搬送や保管に便利である。
【0018】
また、突起部140の形状については、図示するような略逆円錐台形状ではなくてもよく、容器や蓋の形状にあわせて電子レンジ調理時の泡の上昇を遮ることができるように当業者が適宜設計できる。しかしながら、突起部140について図示されたように突起部の水平方向の横断面の面積が、突起部先端に近づくほど小さくなるように設計されることにより、泡の上昇する力を蓋全体に分散しやすいという効果が得られる。
【0019】
突起部140は、蓋天面100の中央に蓋中心180を含む形で1つ配置されている。突起部140の配置については、特に限定はしないが、蓋1aのように突起部を1つ具備するものに関しては、泡の上昇を効率よく抑え、力を均等に蓋に拡散するために蓋の中心を含む位置に設けられることが好ましい。また、突起部140の数についても、1つに限定されず、2つ以上設けてもよい。以上のことは、突起部141〜144についても同様である。
【0020】
突起先端部150は非開口であるが、ここで言う非開口とは、完全な開口ではないという意味で、突起部が泡の上昇を抑えうる範囲で小孔が開いていてもよい。しかしながら、突起先端部が完全な非開口である方がより好ましい。突起先端部150の形状は、図示したような平坦形状以外でもよく、例えば下方向に先端が尖った形状や下方向に湾曲した形状、上方向に湾曲した形状でもよい。比較的飲食物液部の粘性が低いものにたいしては、上昇する泡を破泡しやすくするために下方向に先端の尖った形状や下方向に湾曲した形状が好ましい。飲食物液部の粘性が高いものに関しては、泡の上昇をしっかり抑えるために平坦な形状や上方向に湾曲した構造が好ましい。
【0021】
突起先端部150は、
図4で示すように、蓋1aを容器に嵌合したときに飲食物液面より上方に配置される。仮に突起先端部150が飲食物液面よりも下方に配置された場合、泡の上昇を抑えることができない。また、仮に突起先端部150の位置が蓋天面100に近い位置に配置された場合には、蒸気排出孔170と泡との距離が近くなり、蒸気排出孔170より飲食物の液体部分が漏れ出す危険性がある。突起先端部150の位置は、容器および蓋の形状や容器内の飲食物液面の位置により好ましい条件が変化するため、特に限定されないが、蒸気排出孔170がある位置から10mm以上、特に好ましくは20mm以上下方向に設けられることが好ましい。
【0022】
突起先端部150の面積は、蓋開口部130の面積に対し、約7%となるように設計されている。突起先端部150の面積については、突起先端部150の形状、容器および蓋1aの形状および容器内の飲食物液面の位置により好ましい条件が変化するため、特に限定されないが、蓋1aと容器が接触する面に対して1〜80%になるように設定することが好ましい。1%を切ると泡の上昇を抑えることが難しく、80%を越えると上昇を抑えられた泡の行き場がなくなり、かえって蒸気排出孔170より飲食物の液体部分が吹きこぼれやすくなる。また、複数の突起先端部150を具備する場合には、突起先端部150の総面積が1〜80%となるように設計すればよい。以上のことは、突起先端部151〜154についても同様である。
【0023】
蒸気排出孔170は、略楕円形であり、蓋天面上100上に4つ配置されているが、蒸気排出孔の形状や数については蒸気が排出されればよく、当業者が適宜設定できる。蒸気が効率よく排出されるためには蒸気排出孔を2つ以上配置することが好ましい。ただし、蒸気排出孔の配置位置については、少なくとも突起先端部の位置よりも上方に配置する必要があり、蓋の中でできるだけ突起先端部よりも高い位置に配置することが好ましい。また、蒸気排出孔170は、蓋天面100上の蓋−突起境界部160周辺に4つ配置され、蓋中心180に対してそれぞれが等距離であり、近接する蒸気排出孔170同士の距離が等距離であり、向かい合う蒸気排出孔170同士が蓋中心180に対して対称の位置に配置される。このように蒸気排出孔を蓋−突起境界部周辺に均等に配置することで蒸気が容器内から均等に排出されるだけでなく、泡が突起部を押し上げる力を均等に蓋全体に逃がすことができる。
【0024】
蒸気排出孔170の総面積については、蓋開口面130の面積に対して約10%となるように設計されている。蒸気排出孔の総面積については、容器および蓋の形状、蒸気排出孔の形状、数等により好ましい条件が変化するため、特に限定はしないが、蓋と容器が接触する面に対して1〜50%になるように設定することが好ましい。1%を切ると蒸気がスムーズに排出されず、容器内の蒸気圧が高くなる。50%を越えると飲食物の液体部の飛び散りを防止できにくくなる。
【0025】
図4で示すように、蓋1aは容器と隙間なく内接する形で嵌合可能である。したがって第一の実施形態にかかる容器は、容器1のように少なくとも容器の水平方向の断面積の一部が蓋1aの開口部130の面積よりも小さいか、容器2のように蓋1aを内接させるために容器内部に蓋1aを乗せるための部位を具備する。容器2のような蓋を乗せるための部位がある容器では、蓋外周部120にフランジ等をつけることもできる。容器と内接することで電子レンジ調理時に容器壁面を上昇した泡が蓋壁面を上昇していき、蓋と容器の接着を強固にするため、蓋が外れにくくなる。なお、蓋1aは蓋1bのような容器と嵌合するための特別な構成を備えていないが、このような場合でも、電子レンジ調理時において外れない程度に固定されていれば、嵌合しているといえる。
【0026】
図5〜7は電子レンジ調理時の状態を示した図であり、
図5は蓋を用いない場合の電子レンジ調理状態、
図6は突起部を有さない蓋を用いたときの電子レンジ調理状態、
図7は第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1aを用いた場合の電子レンジ調理状態を示した図である。
【0027】
図5で示すように、蓋を用いないで電子レンジ調理した場合では、飲食物の液体部分が沸騰し始める沸騰初期は容器壁面を伝って泡が上昇していき、容器内で飲食物が対流し始める沸騰中期になると泡がドーム型に盛り上がり始め、対流がさらに大きくなる沸騰後期になるとさらに泡が盛り上がり、表面張力を超える力が加わると飲食物の液体部分が容器外に吹きこぼれる。この他、大きな気泡がつぶれる際に飲食物の液体部分の一部が容器外に飛び散る。
【0028】
また、
図6で示すように、突起部を有さない蓋を用いた場合では、沸騰初期は、容器壁面及び蓋壁面を伝わって泡が上昇していき、沸騰中期になると、蓋を用いない場合と同様に泡がドーム型に盛りあがり、沸騰後期になると蓋の高さが低い場合には、飲食物の液体部分が盛り上がった泡の一部が蒸気排出孔より漏れ出し、容器外に吹きこぼれる。よって突起部を有さない蓋を用いる場合には、泡の上昇に対抗するため、蓋自体の高さを高くする必要がある。しかしながら、家庭用の電子レンジは、高さがある程度決まっているため、蓋自体の高さは制限される。
【0029】
一方、
図7で示すように、蓋1aを用いた場合には、沸騰初期、沸騰中期は蒸気排出孔のみを具備した蓋と同様に容器壁面及び蓋壁面を伝わって泡が上昇し、容器内で対流が始まると泡がドーム型に盛り上がっていくが、沸騰後期には、蓋1aに具備された突起部140の突起先端部150によって泡の上昇が抑えられため、抑えられた泡はやがて破泡し、蒸気として蒸気排出孔170より排出される。このとき、泡と蒸気排出孔170の間に空間を保つことで、蒸気の排出がスムーズになり、また、破泡した際、飲食物の液体部分の容器外への飛び散りをふせぐことができる。このように突起部140を設けることで蓋自体の高さを低くすることが出来る。
【0030】
以上のように第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋1aを用いることにより、電子レンジ調理時の飲食物の液体部分の吹きこぼれや飛び散りを防止できる。
【0031】
次に
図8〜14を参照して、第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋の変形例である蓋1b〜1eについて説明する。
【0032】
図8〜11は、第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋の変形例である蓋1bを説明した図である。
図8は斜視図、
図9は上面図、
図10はB−B’線断面図、
図11は蓋1bを容器に嵌合した状態を示す断面図である。
【0033】
図8〜10で示すように、蓋1bは、その形状は
図1〜3で示した蓋1aとほぼ同様であるが、蓋外周部121が容器と嵌合できる構造となっている。
蓋1bの蓋外周部121は、蓋最外周121aと、蓋最外周121aから容器を覆うように立ち上がる蓋外周側面121cと、容器の縁と密着する蓋外周フランジ121bと、蓋外周側面121c上に容器と蓋1bとを嵌合するために容器側に向けて蓋外周側面部121cを窪ませて形成された蓋外周窪み部121dとを具備する。蓋外周窪み部121dは、蓋外周側面121c上に略等間隔で配置される。
図11で示すように、容器の縁が蓋外周フランジ121bの内側で密着し、蓋外周フランジ121bと蓋外周窪み部121dの内側の空間で固定されることで、容器と蓋が嵌合する。
【0034】
蓋と容器が嵌合する機構としては、
図8〜11で示した以外の機構でもよく、容器に合わせて嵌合できるような構造であればよい。容器と嵌合することによって、蓋の突起部が泡の上昇を抑える際に受ける力によって蓋が容器から外れることなく調理することが可能となる。また、調理後の持ち運びの際も飲食物の液体部分が飛び出す可能性が低く、安全性が高い。
【0035】
図12は、第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋の変形例である蓋1cを示す斜視図である。
【0036】
図12で示すように、蓋1cは、ドーム形状の蓋であり、蓋中央が下方向に湾曲して窪んだ突起部142と、蓋天面102上の蓋−突起境界部162周辺で非開口の突起先端部152よりも上側の位置に3つの蒸気排出孔172を具備する。蒸気排出孔172は、蓋天面102に円の一部を残した円弧状に切り込みを入れ、切り込み部分を容器内側に折り曲げることで形成されている。蒸気排出孔172は、蓋中心182に対してそれぞれが等距離であり、近接する蒸気排出孔172同士の距離が等距離に配置されている。図示していないが、蓋1cは、容器に隙間なく内接する形で嵌合される。
【0037】
図12で示すように、第一の実施形態にかかる蓋の形状はドーム状であってもよい。このように蓋側面がない形状のものは、蒸気排出孔の配置位置は、突起先端部よりも上方で且つ泡が届かないできるだけ上方の位置に配置することが好ましい。また、蒸気排出孔172は、完全な孔ではなく、蓋の一部を内側に折り曲げることで形成されており、この場合、容器内側に折り曲げた部分により蒸気排出孔からの飲食物の液体部分の飛び散りを防ぐことができる。
【0038】
図13は、第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋の変形例である蓋1dを示す斜視図である。
【0039】
図13で示すように、蓋1dは、正角錐台の形状であり、蓋の蓋天面103の中央に下方向に正角柱状に窪んだ突起部143と蓋天面103上に正方形の4つの蒸気排出孔173を具備する。蒸気排出孔173は、蓋−突起部境界部163を囲む正方形の開口面の対角線上に蓋中心線183に対してそれぞれが等距離になるように配置されている。図示していないが、蓋1dは、容器に隙間なく内接する形で嵌合される。
【0040】
容器の開口面が正方形のものであれば、
図13で示した蓋1dのように蓋開口面133を正方形にすることで、容器と蓋とを密接することができる。正方形に限らずに容器の形状にあわせて容器と密接するように蓋の形状を適宜設定することができる。例えば、容器開口面が8角形のものであれば、蓋開口面が8角形になるように蓋を設計すればよい。また、
図13で示すように突起部143の形状は、蓋開口面133の形状に合わせて、上昇する泡を均等に抑えられるように正角柱状に設計している。さらに、
図13で示すように蒸気排出孔173は、蒸気を蓋から均等に排出できるように蓋−突起部境界部163を囲む正方形の開口面の対角線上に蓋中心183に対してそれぞれが等距離になるように配置されている。このように突起部の形状や蒸気排出孔の配置位置について、蓋の形状に合わせて適宜設定できる。
【0041】
図14は、第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器を構成する蓋の変形例である蓋1eを示す斜視図である。
【0042】
図14で示すように、蓋1eは、円板状の形状であり、3つの円筒形の突起部144と7つの円形の蒸気排出孔174を具備する。突起部144は、突起先端部154が非開口であり、蓋中心184に対してそれぞれが等距離であり、近接する蒸気排出孔174同士の距離が等距離の位置に蓋天面104の裏側の面で蓋と接着する形で配置されている。蒸気排出孔174は、1つが蓋中心184を含む形で配置され、残りの6つは蓋中心184に対して等距離であり、隣り合う蒸気排出孔174同士が等距離となるように配置され、且つ突起部144の1つを囲む3つの蒸気排出孔174は、突起部144の中心から等距離になるように配置されている。図には示していないが蓋1eは、容器に隙間なく内接する形で嵌合される。
【0043】
図14で示すように、第一の実施形態にかかる蓋の形状は、平板状でもよい。この場合、蓋を容器に嵌合したときに突起先端部154が容器内の飲食物液面よりも上方になるような位置に調整される必要がある。また、蓋1eの突起部144のように突起部を蓋に直接接着する形で具備してもよい。
【0044】
蓋1eのように突起部が複数ある場合には、必ずしも蓋の中心に突起部を配置する必要はなく、泡の上昇を均等に抑えられるような位置に突起部を配置することが好ましい。例えば、蓋1eでは、突起部154を3つ具備し、それぞれの突起部154は、蓋中心184からの距離が等距離であり、近接する突起部154同士が等距離の位置に配置されている。このように蓋の中心に対して均等な位置に配置することで泡の上昇を均等に抑えることができる。また、突起部が2つの場合には、突起部同士が蓋中心に対して対称の位置になるように配置することが好ましい。また、突起部が4つ以上ある場合には、突起部それぞれが蓋中心からの距離が等距離であり、近接する突起部同士が等距離の位置に配置するだけでなく、蓋の中心に突起部を1つ配置し、残りの突起部を近接する突起部同士が等距離であり、蓋中心からの距離も等距離になるように配置することもできる。
【0045】
蓋1eのように突起部が複数配置され、蓋中心に配置されていないものに関しては、蓋中心に蒸気排出孔を設けてもよく、蒸気排出孔は、蓋全体に対して均等で且つ突起部周辺で突起部の中心から等距離であり、近隣する蒸気排出孔同士の距離も等距離になるように配置することが好ましい。そうすることで泡の上昇により突起部が受ける力を蓋全体に均等に逃がすことができ、蒸気排出もスムーズに行うことができる。
【0046】
続いて、第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器3aについて、
図15〜18を用いて説明する。
【0047】
図15〜18は第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器3aを示す図である。
図15は電子レンジ調理器3aの斜視図、
図16は容器2aの上面図、
図17は容器2aのC−C’線断面図、
図18は容器2aに蓋1aを嵌合した状態のC−C’線断面図である。蓋1aについては、
図1〜3を用いて説明しているため、容器2aについて、及び、蓋1aと容器2aとの配置について説明する。
【0048】
図15〜17で示すように、容器2aは、容器開口部200と、容器底面210と、容器開口部200と容器底面210とをつなぐ容器側面220と、からなる逆円錐台形の容器である。また、容器の内側に蓋1aを隙間なく容器に乗せるための蓋設置部240を具備している。蓋設置部240は、容器の一部を容器外方向に水平に曲げることで成形されている。よって
図18で示すように、蓋1aは、蓋設置部240に乗せることで、容器2aと隙間なく内接する形で嵌合できる。なお、この状態では蓋1aは容器2aとしっかり固定されている訳ではないが、後述するように電子レンジ調理時にずれることがないため、この場合にも蓋1aと容器2aは嵌合しているということができる。
【0049】
電子レンジ調理器の容器の形状については、
図15〜17で示すような略逆円錐台形以外の形状であってもよい。蓋1aと容器2aのように蓋と容器が内接する場合には、少なくとも容器の水平方向の断面積の一部が容器の開口部の面積よりも小さいか、蓋を内接させるために容器内部に蓋設置部240のような蓋を乗せるための部位を具備することが必要となる。蓋設置部240のような構造であれば、蓋1aの蓋外周部120にフランジをつけることで、容器と蓋の接合を強くすることができる。
また、蓋を容器に隙間なく内接できれば、蓋を乗せるための部位は、蓋設置部240のような構造に限られない。
【0050】
図19〜22は第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器3bを示した図である。
図19は電子レンジ調理器3bの斜視図、
図20は電子レンジ調理器3bを構成する容器2bの上面図、
図21は容器2bのD−D’線断面図、
図22は容器2bに蓋1bを嵌合した状態のD−D’線断面図である。
蓋1bについては、
図8〜10で説明しているため、容器2bについて、及び、蓋1bと容器2bとの設置について説明する。
【0051】
図19〜21で示すように、容器2bは、容器開口部201と、容器底面211と、容器開口部201と容器底面211とをつなぐ容器側面221と、からなる逆円錐台形の容器である。また、容器開口部201は、容器最外周201bを容器外側に折り曲げて形成され、蓋接触面201aを具備する。よって、
図22で示すように蓋1bの蓋外周フランジ121bと容器2bの蓋接触面201aが密着し、折り曲げられて形成された容器2bの蓋開口部201が、蓋1bの蓋外周フランジ部121bと蓋外周窪み部121dの内側の空間で固定されることで容器2bと蓋1bが嵌合する。
【0052】
図19〜22で示すように、第一の実施形態にかかる容器と蓋は嵌合する形で設置されていてもよい。蓋と容器が嵌合する場合には、容器全体の形状は特に限定されないが、
図8〜10や
図19〜21で示すような蓋と容器の構造に限らず、当業者にとって周知の方法で蓋と容器を嵌合すればよい。
【0053】
図23は、第二の実施形態にかかる電子レンジ調理器一体型食品4の電子レンジ調理時における状態を示す断面図である。
【0054】
図23(a)、(b)に示すように、電子レンジ調理器一体型食品4は、蓋1a’と容器2aとからなる電子レンジ調理器3a’に、固形飲食物410と液状飲食物420とからなる飲食物400が内包されたものである。ここで、蓋1a’は、蓋1aの蓋突起部140が下方向にさらに延伸されたものであり、その他の構成は蓋1aと同様である。そして、
図23(a)、(b)いずれの場合においても、蓋突起部140’先端部は飲食物400の最上部よりも上方に位置している。
【0055】
飲食物400は、冷凍食品やチルド食品等の飲食物からなり、スープ、リゾット、ラーメン、スープパスタ、カレーなど、喫食時において粘性の高い液体を多く含む飲食物からなる。固形飲食物410は、飲食物400のうち固形性を示す部位であり、具体的には具材や麺、米、などが挙げられる。また、液状飲食物420は、飲食物400のうち粘性を帯びた液状の部位であり、具体的には各種飲食物のスープなどが挙げられる。
【0056】
飲食物400が冷凍食品である場合には、調理開始時においては凍結しているために固形飲食物410であるが、調理時の加熱により溶解することで液状飲食物420に変化するものも含まれる。また、飲食物400がチルド食品の場合には、調理開始時においてはゼリー状に固められて固形飲食物410であるが、調理時の加熱により液状飲食物420に変化するものも含まれる。
【0057】
図23(a)、(b)における電子レンジ調理器一体型食品4は、電子レンジ調理時において、電子レンジ調理器3a’に飲食物400が直接内包された状態である。なお、飲食物400は、電子レンジ調理器一体型食品4の販売時等においては必ずしも電子レンジ調理器3a’に内包されている必要はなく、一体として販売されていればよい。また、飲食物400は、電子レンジ調理器3a’に内包されて販売されている場合においても、さらに個包装等されていてもよいが、電子レンジ調理時においては、個包装から排出され電子レンジ調理器3a’に直接内包されて、蓋1a’と容器2aとが嵌合された状態でセットされる。
【0058】
以下、電子レンジ調理器一体型食品4が電子レンジ調理される様子について、簡単に説明する。
図23(a)は、液状部分が比較的多く、固形飲食物410の最上部よりも液状飲食物420の最上部が上方に到達している例である。このような場合、
図7を用いて説明したときと同様、電子レンジ調理により飲食物液面が泡等となって上昇しても、蓋突起部140’によって泡の上昇が抑えられ、吹きこぼれや飛び散りが防止できる。
【0059】
一方、
図23(b)は、固形部分が比較的多く、固形飲食物410の最上部が液状飲食物420の最上部よりも上方に到達している例である。このような場合、液状飲食物420がより少ないので、そもそも泡の上昇による吹きこぼれや飛び散りは起きにくいが、もし泡が上昇した場合でも、
図23(a)のときと同様、蓋突起部140’により泡の上昇が抑えられるので、吹きこぼれや飛び散りが防止できる。
【0060】
また、飲食物400が冷凍食品やチルド食品の場合には、電子レンジ調理開始時には凍結していたりゼリー状に固められていたりすることで、
図23(b)のように固形飲食物410が大きい場合や、飲食物400が全て固形飲食物410となる場合がある。この場合、調理中に固形飲食物410の一部が溶解し、液状飲食物420に変化する。このような場合でも、飲食物400の最上部が調理中に蓋突起部140’の先端よりも下方に来るような構成とすることで、
図23(a)のような状態となり、上記同様泡の上昇が抑えられ、吹きこぼれや飛び散りが防止できる。
【0061】
さらに、飲食物400が冷凍食品やチルド食品の場合に、
図24のように、調理開始時においては固形飲食物410の最上部の方が蓋突起部140’の先端よりも上方に来ている場合がある。このような場合でも、調理中の溶解により、
図23(a)のように飲食物400の最上部が蓋突起部140’の先端よりも下方に来るような構成とすることで、蓋突起部140’により泡の上昇が抑えられ、吹きこぼれや飛び散りが防止できる。
【0062】
なお、本願発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、上記各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されたり、幾つかの構成要件が異なる形態にして組み合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され得るものである。
【0063】
例えば、第二の実施形態では、飲食物400は電子レンジ調理器3a’と一体として販売されると述べたが、このような態様に限定されることはなく、例えば第一の実施形態で示した電子レンジ調理器3a〜3bのように、飲食物とは別個の商品として流通し、これら電子レンジ調理器に対応する飲食物を入れて調理するという態様でもよい。逆に、第一の実施形態にかかる電子レンジ調理器3a〜3bと飲食物400とを一体とした電子レンジ調理器一体型食品としてもよい。
【0064】
また、飲食物400としては、電子レンジ調理直前に所定量の水を注加するようなものでもよい。この場合、水の注加後に飲食物400の最上部が蓋嵌合時の蓋突起部140’よりも下方となるよう調整されていればよい。