(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362905
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】設備ユニット
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20180712BHJP
F21V 29/56 20150101ALI20180712BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20180712BHJP
F21V 33/00 20060101ALI20180712BHJP
F24F 1/00 20110101ALI20180712BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20180712BHJP
【FI】
F24F5/00 A
F21V29/56
F21V29/503
F21V33/00 330
F24F1/00 331
F21Y115:10
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-77406(P2014-77406)
(22)【出願日】2014年4月4日
(65)【公開番号】特開2015-200419(P2015-200419A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信介
(72)【発明者】
【氏名】関根 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 祐二
(72)【発明者】
【氏名】森川 泰成
【審査官】
▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−145045(JP,A)
【文献】
特開2010−086748(JP,A)
【文献】
特開2011−002109(JP,A)
【文献】
特開2009−92310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F21V 29/503
F21V 29/56
F21V 33/00
F24F 1/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
当該筐体に収容された空調装置と、
前記筐体に収容された照明装置と、
前記空調装置および前記照明装置を通りかつ媒体が循環する配管と、を備え、
前記照明装置は、放熱器を有するLED照明装置であり、
前記空調装置は、熱交換フィンを備えるパッシブチルドビームであり、前記配管内の循環する媒体により空気を空調し、
前記配管は、前記照明装置の放熱器に当接するとともに、前記空調装置内部の空気の流通路に配置された熱交換フィンに当接することを特徴とする設備ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備ユニットに関する。例えば、天井に埋め込み配置される設備ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内の内部負荷(電子機器、照明器具、人体発熱等)を除去して、室内空気の温湿度を適切な状態に維持する空調方式として、空気で冷却する全空気方式がある。
【0003】
この全空気方式は、例えば、建物外部に、圧縮機が内蔵された室外機を設置するとともに、室内に、熱交換器が内蔵された室内機を設置する。そして、これら室外機の圧縮機と室内機の熱交換器とで媒体を循環させて冷凍サイクルを行うとともに、熱交換器で媒体と室内空気とで熱交換することで、室内機から室内に冷風を吹き出して、内部負荷を除去する方式である(特許文献1参照)。
【0004】
また、近年、室内の内部負荷の一つである照明器具として、消費電力の観点からLED照明(Light Emitting Diode)が普及してきている。
しかしながら、LED照明は発光効率が高くないため、供給された電力の多くが熱となる。この自己発熱により、LED照明の発光効率がさらに減少する等の特性劣化が発生する。
【0005】
そこで、例えば、器具の裏にヒートシンク(放熱板)を設置しているが、ヒートシンクからの熱が室内(天井内)に放熱され、内部負荷となっている。
この内部負荷の問題を解決するため、例えばLED照明に液体を用いた冷却装置を設置することが提案されている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−152071号公報
【特許文献2】特開2003−92009号公報
【特許文献3】特開2010−272472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、建物からの発熱を極力抑制する、ゼロ・エミッション・ビルディング(ZEB)が提案されている。
しかしながら、以上の全空気方式では、内部負荷からの発熱を空気で撹拌して除去するため、冷却効率が悪くファンなどの搬送動力がかかる。そこで、空気よりも熱容量の高い水等の媒体を用いた空調設備が要求されている。
【0008】
また、LED照明では、冷却装置の放熱器はLED照明の近くに配置されており、結果的に熱が室内(天井内)に放熱されるため、内部負荷の問題は依然として解決されていない。そのため、内部負荷としての照明器具からの熱を効率的に室内から除去することが要求されている。
また、室内の冷房負荷となる発熱源から発熱が室内に拡散されてしまう前に、発熱源においてその発熱を除去すれば、室内の人体がその発熱の影響を受けることは少なくなり、室内に供給する冷房冷気の昇温が可能になって、省エネルギー効果が生じる。
【0009】
本発明は、空調機で効率的に室内の負荷を除去しつつ、内部負荷となる照明装置からの熱を効率的に除去できる設備ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の設備ユニット(例えば、後述の設備ユニット1)は、筐体(例えば、後述の筐体10)と、当該筐体に収容された空調装置(例えば、後述の空調装置20)と、前記筐体に収容された照明装置(例えば、後述の照明装置30)と、前記空調装置および前記照明装置を通りかつ媒体が循環する配管(例えば、後述の配管40)と、を備え、前記空調装置は、当該配管内の循環する媒体により空気を空調することを特徴とする。
【0011】
循環する媒体を用いて空調する空調装置としては、天井を冷却する放射パネル、室内空気の自然対流を利用して冷却空気を供給するパッシブチルドビーム、1次空気を導入して室内空気を強制的に対流させるアクティブチルドビーム、送風機により室内空気を吸引して空調した後に吹き出すファンコイルユニット(FCU)などが挙げられる。
【0012】
また、照明装置としては、LED(Light Emitting Diode)、スタータ型やインバータ式の蛍光灯、白熱灯、ナトリウムランプなどが挙げられる。
また、媒体としては、水や不凍液などの液体や、冷媒ガスが挙げられる。
また、媒体を設備ユニットとヒートポンプなどの熱源機器との間で循環させてもよいし、媒体を熱源機器から設備ユニットに供給し、この設備ユニットで利用した媒体を、熱源機器に直接戻さずに、排熱利用で運転する機器(バイナリー発電機、吸着冷凍機、排熱回収ヒートポンプ、デシカント空調機の再生器など)に供給して再利用してもよい。
【0013】
この発明によれば、配管内に媒体を流通させて、この媒体により空気を冷却して空調装置から室内に吹き出すとともに、この媒体に照明装置の発熱を吸収させる。
つまり、空調装置で媒体を利用すると、媒体の温度は上昇する。しかし、この媒体は、空調装置で温度が上昇した後でも、照明装置の発熱を吸収できる程度に十分に低温である。そこで、本発明の設備ユニットでは、この空調装置で利用した媒体を用いて照明装置を冷却する。このように配管内の媒体により照明装置の熱を吸収するので、内部負荷となる照明装置からの熱を効率的に除去し、かつ、空調機で全空気方式よりも効率的に室内の負荷を除去できる。
【0014】
ところで、配管内の媒体は、ヒートポンプなどの熱源機器で冷却される。このような熱源機器では、往きと還りの媒体の温度差が大きい方が、熱源成績係数を高い値で運転できるので、運転効率が高くなる。
しかしながら、実際に熱源機器を選定する際には、空調機の最大能力に基づいて選定するため、熱源機器の運転時間のほとんどは、往きと還りの媒体の温度差が小さい部分負荷運転となり、運転効率が低下することが多い。
この発明によれば、空調装置と照明装置の冷却システムとを直列につなげた配管内の媒体により、空調装置で熱を吸収し、さらに照明装置の熱を吸収するので、往きと還りの媒体の温度差が大きくなり、熱源機器を高い効率で運転できる。
【0015】
また、空調装置、照明装置、および照明装置の冷却システムを1つの設備ユニットに配置して、1つのモジュールとしたので、天井設置の自由度が高くなり、例えばシステム天井では任意の位置に設置できる。
【0016】
請求項
1に記載の設備ユニットは、前記照明装置は、放熱器(例えば、後述の放熱板33)を有するLED照明装置であり、前記配管は、前記放熱器に当接して配置されることを特徴とする。
【0017】
近年、消費電力を低減するため、LED照明装置が採用されることが多い。このLED照明装置では、発光効率がそれほど高くないため、供給された電力の多くが熱となるが、この熱によりLEDが劣化して発光光量が減少するのを防止するため、LED照明装置では、装置の裏面に放熱器(ヒートシンク)を設置する。
しかしながら、この放熱器から天井内に放熱するので、室内の温度が上昇するうえに、放熱器を設けるために照明装置自体の大きさが大きくなる、という問題があった。
【0018】
そこで、本発明では、配管を放熱器に当接して配置した。よって、配管内の媒体により放熱器を介して照明装置の熱を吸収するので、従来に比べて放熱器を小さくできるうえに、放熱器から室内に放熱するのを抑制できる。
また、LEDの温度が上昇するのを確実に抑制できるので、LEDの性能劣化を防止して、LED照明装置の耐久性が向上する。
【0019】
また、LED照明の固有エネルギー消費効率は、LEDの温度が低下するほど向上するため、少ない電力で多くの照度を得ることができる。
【0020】
請求項
1に記載の設備ユニットは、前記空調装置は、パッシブチルドビームであり、前記配管は、前記空調装置内部の空気の流通路に配置されることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、空調装置をパッシブチルドビームとしたので、送風機などの空気を搬送するための動力が不要であり、設備ユニット1からの発熱量をさらに低減できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、配管内に媒体を流通させて、この媒体により空気を冷却して空調装置から室内に吹き出すとともに、この媒体に照明装置の発熱を吸収させる。つまり、空調装置で媒体を利用すると、媒体の温度は上昇する。しかし、この媒体は、空調装置で温度が上昇した後でも、照明装置の発熱を吸収できる程度に十分に低温である。そこで、本発明の設備ユニットでは、この空調装置で利用した媒体を用いて照明装置を冷却する。このように配管内の媒体により照明装置の熱を吸収するので、内部負荷となる照明装置からの熱を効率的に除去し、かつ、空調機で全空気方式よりも効率的に室内の負荷を除去できる。
また、空調装置と照明装置の冷却システムとを直列につなげた配管内の媒体により、空調装置で熱を吸収し、さらに照明装置の熱を吸収するので、往きと還りの媒体の温度差が大きくなり、熱源機器を高い効率で運転できる。また、空調装置、照明装置、および照明装置の冷却システムを1つの設備ユニットに配置して、1つのモジュールとしたので、天井設置の自由度が高くなり、例えばシステム天井では任意の位置に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る設備ユニットの平面図、側断面図、および見上げ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る設備ユニット1の平面図、側断面図、および見上げ図である。
設備ユニット1は、室2の天井面3に埋め込み配置されている。この設備ユニット1は、箱状の筐体10と、この筐体10に収容されて室内の空気を空調して室内に吹き出す空調装置20と、筐体10に収容された照明装置30と、空調装置20および照明装置30を通りかつ媒体が流通する配管40と、を備える。
【0025】
空調装置20は、パッシブチルドビームである。具体的には、この空調装置20は、筐体10内に形成されたチャンバ21と、筐体10の下面に形成されてチャンバ21に連通する吸込口22および一対の吹出口23と、チャンバ21内に設けられた図示しない熱交換フィンと、チャンバ21内に設けられて外気を吹き出すノズル26と、を備える。
【0026】
一対の吹出口23は、吸込口22を挟んで設けられている。
熱交換フィンは、板状であり、チャンバ21内の吸込口22と吹出口23との間の空気の流通路に設けられている。
ノズル26は、外気を導入する外気導入管25に接続されている。
【0027】
配管40は、空調装置20内部の空気の流通路に配置され、熱交換フィンに当接して延びている。この配管40内の媒体は、図示しないヒートポンプなどの熱源機器で冷却された後、
図1中一点鎖線矢印方向に流れて、空調装置20に供給される。
【0028】
この空調装置20によれば、室内の空気は、以下のように流れる。
すなわち、配管40内の媒体により熱交換フィンが冷却されるとともに、外気導入管25を通して、チャンバ21に空調された外気が適宜導入される。室内の暖かい空気は、
図1中黒矢印で示すように、自然対流により上昇して、吸込口22からチャンバ21内に流入する。その後、この暖かい空気は、熱交換フィンで冷却されて、
図1中白抜き矢印で示すように冷たい空気となり、ノズル26から下方に吹き出す外気からの誘引空気により下降して、吹出口23から室内に流出する。
【0029】
照明装置30は、筐体10の下面に形成された照明開口31と、この照明開口31を通して光を照射するLEDチップ32と、このLEDチップ32の裏面に設けられた放熱器としての放熱板33と、を備える。
【0030】
配管40は、放熱板33に当接して、かつ、放熱板33上をつづら折り状に複数回往復して配置される。この配管40内の媒体は、空調装置20から流出して、
図1中一点鎖線矢印方向に流れて、照明装置30に供給される。この媒体は、照明装置30の放熱板33の熱を吸収し、その後、照明装置30から流出して、図示しない熱源機器に戻る。このように、配管40内の媒体は、熱源機器、空調装置20、照明装置30の順に流れて循環する。
【0031】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)配管40内に媒体を流通させて、この媒体により空気を冷却して空調装置20から室2の室内に吹き出すとともに、この媒体に照明装置30の発熱を吸収させる。
つまり、空調装置20で媒体を利用すると、媒体の温度は上昇する。しかし、この媒体は、空調装置20で温度が上昇した後でも、照明装置30の発熱を吸収できる程度に十分に低温である。そこで、設備ユニット1では、この空調装置20で利用した媒体を用いて照明装置30を冷却する。このように配管40内の媒体により照明装置30の熱を吸収するので、照明装置30からの熱を効率的に除去し、かつ、空調機で全空気方式よりも効率的に室内の負荷を除去できる。
【0032】
空調装置20と照明装置30の冷却システムとを直列につなげた配管40内の媒体により、空調装置20で熱を吸収し、さらに照明装置30の熱を吸収するので、往きと還りの媒体の温度差が大きくなり、熱源機器を高い効率で運転できる。
【0033】
また、空調装置20、照明装置30、および照明装置30の冷却システムである配管40を1つの設備ユニット1に配置して、1つのモジュールとしたので、天井設置の自由度が高くなり、例えばシステム天井では任意の位置に設置できる。
【0034】
(2)配管40を放熱板33に当接して配置した。よって、配管40内の媒体により放熱板33を介して照明装置30の熱を吸収するので、従来に比べて放熱板を小さくできるうえに、放熱板33から室内に放熱するのを抑制できる。
また、LEDの温度が上昇するのを確実に抑制できるので、LEDの性能劣化を防止して、照明装置30の耐久性が向上する。さらに固有エネルギー消費効率が向上し、省電力となる。
【0035】
(3)空調装置をパッシブチルドビームとしたので、送風機などの空気を搬送するための動力が不要であり、設備ユニット1からの発熱量をさらに低減できる。
【0036】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0037】
1…設備ユニット
2…室
3…天井面
10…筐体
20…空調装置
21…チャンバ
22…吸込口
23…吹出口
25…外気導入管
26…ノズル
30…照明装置
31…照明開口
32…LEDチップ
33…放熱板(放熱器)
40…配管