特許第6362907号(P6362907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362907
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】積層円形板状物の加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/00 20060101AFI20180712BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20180712BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B24B9/00 601H
   B24B49/12
   H01L21/304 601Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-77870(P2014-77870)
(22)【出願日】2014年4月4日
(65)【公開番号】特開2015-199140(P2015-199140A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】小松 淳
(72)【発明者】
【氏名】湊 浩吉
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−093333(JP,A)
【文献】 特開2012−238658(JP,A)
【文献】 特開2010−127920(JP,A)
【文献】 特開2014−060324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/00
B24B 49/12
H01L 21/304
G01B 11/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の径を有する第一円形板状物の表面に該第一の径以下の第二の径を有する第二円形板状物が接着剤を介して積層された積層円形板状物の加工方法であって、
積層円形板状物を保持する保持面を有する回転可能な保持テーブルの該保持面において該第一円形板状物側を保持して該第二円形板状物を露出させる保持ステップと、
該保持ステップを実施した後、該第二円形板状物の外周縁の位置を検出する検出ステップと、
該検出ステップで検出した該第二円形板状物の該外周縁の位置に基づいて、回転する切削ブレードを該第二円形板状物に切り込ませつつ積層円形板状物を保持した該保持テーブルを回転させることで、該第二円形板状物の外周縁に沿って円形加工を施す切削ステップと、を備え、
該円形板状物は、前記第二円形板状物の外周側に該接着剤のはみだしを有し、
該検出ステップでは、撮像手段を用いて、該第二円形板状物の陰に隠れて該接着剤が画像に写らないように、該保持テーブルの回転軸に対して光軸が傾斜した角度で該第二円形板状物の外周部分を撮像し、撮像画像に基づいて前記外周縁の位置を検出する
加工方法。
【請求項2】
前記検出ステップでは、前記第二円形板状物の3点以上の外周縁位置を検出し、
前記切削ステップを実施する前に、該検出ステップで検出した3点以上の該外周縁位置に基づいて該第二円形板状物の中心位置を算出し、算出した該第二円形板状物の中心位置と該保持テーブルの回転中心位置との間のずれを算出する算出ステップを備え、
該切削ステップでは、該算出ステップで算出されたずれを補正するよう前記切削ブレードと前記保持テーブルとを前記保持面と平行な方向に相対移動させつつ切削を遂行する、
請求項1に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層円形板状物を加工する加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外周部分が丸く面取りされたウェーハなどの円形板状物を研削して薄化すると、外周部分にシャープエッジが形成され、円形板状物に欠けなどが生じやすくなる場合がある。そこで、円形板状物の外周部分にシャープエッジが形成されるのを防ぐために、円形板状物の外周に沿って切削してトリミングする加工方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。また、複数のウェーハが接着剤で接着されて構成される貼り合わせウェーハにおいては、接着剤が外周側にはみ出していることもあり、この場合は、トリミングにより接着剤を除去する必要がある。
【0003】
トリミング時に、円形板状物を保持する保持テーブルの回転軸と円形板状物の中心とが一致していれば、保持テーブルの回転軸から所定距離離れた位置に切削ブレードを位置付けて円形板状物に切り込ませ、保持テーブルを回転させることにより、円形板状物の中心から一定距離離れた位置を外周に沿って切削することができる。円形板状物の中心と保持テーブルの回転軸とを一致させるために、例えば、円形板状物を仮置きテーブルに仮置きして円形板状物の中心を所定の位置に位置決めしてから保持テーブルに搬送することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−273053号公報
【特許文献2】特開2004−207459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、サブストレイトなどの第一円形板状物の上に第一円形板状物より小径のウェーハなどの第二円形板状物が積層された積層円形板状物においては、第二円形板状物に対する第一円形板状物の貼り付け位置にばらつきがあるために、第一円形板状物の中心と第二円形板状物の中心とが一致していない場合がある。この場合は、保持テーブルの回転軸と第一円形板状物の中心とが一致するように積層円形板状物を保持テーブルに保持したとしても、保持テーブルの回転軸と第二円形板状物の中心とが一致せず、第二円形板状物の中心から一定距離離れた所望の位置をトリミングできないという問題がある。接着剤の除去を目的とするトリミングの場合にも、同様の問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題にかんがみなされたもので、第一円形板状物の上に第一円形板状物の径以下の径を有する第二円形板状物が積層されて構成された積層円形板状物を加工するにあたり、第二円形板状物の外周縁に沿って所望の位置を切削できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加工方法は、第一の径を有する第一円形板状物の表面に該第一の径以下の第二の径を有する第二円形板状物が接着剤を介して積層された積層円形板状物の加工方法であって、積層円形板状物を保持する保持面を有する回転可能な保持テーブルの該保持面において該第一円形板状物側を保持して該第二円形板状物を露出させる保持ステップと、該保持ステップを実施した後、該第二円形板状物の外周縁の位置を検出する検出ステップと、該検出ステップで検出した該第二円形板状物の該外周縁の位置に基づいて、回転する切削ブレードを該第二円形板状物に切り込ませつつ積層円形板状物を保持した該保持テーブルを回転させることで、該第二円形板状物の外周縁に沿って円形加工を施す切削ステップと、を備え該円形板状物は、前記第二円形板状物の外周側に該接着剤のはみだしを有し、該検出ステップでは、撮像手段を用いて、該第二円形板状物の陰に隠れて該接着剤が画像に写らないように、該保持テーブルの回転軸に対して光軸が傾斜した角度で該第二円形板状物の外周部分を撮像し、撮像画像に基づいて前記外周縁の位置を検出する
【0008】
前記検出ステップでは、前記第二円形板状物の3点以上の外周縁位置を検出し、前記切削ステップを実施する前に、該検出ステップで検出した3点以上の該外周縁位置に基づいて該第二円形板状物の中心位置を算出し、算出した該第二円形板状物の中心位置と該保持テーブルの回転中心位置との間のずれを算出する算出ステップを備え、該切削ステップでは、該算出ステップで算出されたずれを補正するよう前記切削ブレードと前記保持テーブルとを前記保持面と平行な方向に相対移動させつつ切削を遂行することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る加工方法によれば、検出ステップで検出した第二円形板状物の外周縁の位置に基づいて、第二円形板状物の外周縁に沿って切削ブレードを第二円形板状物に切り込ませて円形加工するため、第一円形板状物の中心と第二円形板状物の中心とがずれていても、第二円形板状物の外周縁に沿って所望の位置を切削することができる。
【0010】
また、撮像手段を用いて、保持テーブルの回転軸に対して光軸が傾斜した角度から第二円形板状物の外周部分を撮像し、撮像画像に基づいて記外周縁の位置を検出することにより、第二円形板状物の外に接着剤がはみ出している場合であっても、第二円形板状物の外周縁の位置を正確に検出することができる。
【0011】
第二円形板状物の3点以上の外周縁位置を検出し、保持テーブルの回転軸と第二円形板状物の中心との間のずれを算出してそのずれを補正するように切削ブレードと保持テーブルとを保持面と平行な方向に相対移動させつつ切削すれば、第二円形板状物の中心から一定の距離の位置を正確に切削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】保持ステップを示す側面図。
図2】検出ステップを示す側面図。
図3】検出ステップの別の例を示す側面図。
図4】算出ステップを示す平面図。
図5】切削ステップを示す側面図。
図6】切削ステップを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す積層円形板状物10は、サブストレイトやウェーハなどの第一の径を有する円板状の第一円形板状物11と、ウェーハなどの第二の径を有する円板状の第二円形板状物12とを備え、例えば第一円形板状物11の表面111に第二円形板状物12の表面121が接着剤13によって貼着され積層されている。第一円形板状物11の中心軸と、第二円形板状物12の中心軸とは、ほぼ一致しているが、貼り合わせ精度の影響などにより完全には一致していないことがある。第二円形板状物12には、外周部分が丸型に面取りされた面取り部12aが形成されており、裏面122のうち面取り部12aの内周側には平坦面12bが形成されている。また、面取り部12aと平坦面12bとの境界が外周縁12cとなっており、面取り部12aは、最大径部分である先端部12dを有している。第二円形板状物12の第二の径(面取り部12aの最大径)は、第一円形板状物11の第一の径以下であり、第二円形板状物12の外周側に接着剤13がはみ出している。このような積層円形板状物10に対して、第二円形板状物12の外周縁に沿って切削加工を行う。以下の本実施例では、第二円形板状物12の裏面研削に際して第二円形板状物の外周の面取り部を除去する場合について説明する。なお、他の実施形態では第二円形板状物の裏面が第一円形板状物に貼着され、表面が上方に露出する場合もある。
【0014】
(1)保持ステップ
まず、保持テーブル20で積層円形板状物10を保持する。保持テーブル20は、XY平面に平行な保持面21を備え、保持面21に垂直な±Z方向に平行な回転軸29を中心として回転可能となっている。回転軸29は、保持面21の中心を通っている。保持ステップでは、第一円形板状物11の裏面112側を下(−Z方向)に向けて積層円形板状物10を保持テーブル20の保持面21に載置し、保持面21において第一円形板状物11の裏面112を吸引保持する。保持テーブル20に保持された積層円形板状物10は、第一円形板状物11の裏面112が保持テーブル20の保持面21に接触して保持され、第二円形板状物12の裏面122が上(+Z方向)側に露出する。
【0015】
(2)検出ステップ
保持ステップを実施した後、積層円形板状物10が保持テーブル20に保持された状態で、第二円形板状物12の外周縁12cの水平方向の位置(XY平面内における位置)を検出する。例えば、図2に示す撮像手段30を用いて第二円形板状物12の外周縁12cの位置を検出する。撮像手段30は、第二円形板状物12の裏面122よりも上方(+Z方向側)でかつ、第二円形板状物12の外周縁12cよりも保持テーブル20の回転軸29に近い位置に配置され、光軸39が±Z方向に対して所定の角度αを有し、第二円形板状物12の外周部分を外周縁の内側から斜めに撮影する。なお、検出ステップでは、接着剤13が画像に写ったとしても、光量調整や画像処理などにより接着剤13を除去可能である場合は、接着剤13が完全に隠れる角度で撮像しなくてもよい。
【0016】
角度αは、第二円形板状物12の外側にはみ出した接着剤13が第二円形板状物12の陰に隠れて撮像手段30が撮影する画像に写らないように設定される。例えば、撮像手段30の光軸が保持テーブル20の回転軸29に平行な方向(±Z方向)に一致している状態から撮像を開始し、撮像手段30を徐々に傾けていき、取得した画像にはみだした接着剤13が写らなくなった時点で撮像手段30の動きを止めることで、角度αを設定することができる。
【0017】
このようにして保持テーブル20の回転軸に対して光軸が傾斜した撮像手段30が撮像した画像を解析することにより、第二円形板状物12の外周縁12cを検出する。撮像手段30が撮像した画像には、はみ出した接着剤13が写っていないため、第二円形板状物12の外周縁12cを鮮明に検出することができる。
【0018】
こうして検出される検出点37の位置は、撮像手段30の光軸が第二円形板状物12の面取り部12aの表面と接する位置であり、検出した位置に基づいて、保持テーブル20の回転軸29と、第二円形板状物12の外周縁12cとの間のXY平面内における距離を算出する。
【0019】
図3に示すように、背圧センサ40を用いて、第二円形板状物12の外周縁の位置を検出する構成であってもよい。背圧センサ40は、ノズル41から−Z方向に向けてエアなどの流体48を噴射し、ノズル41内における流体48の圧力を測定する。ノズル41を−Z方向に動かしていき、ノズル41と測定対象物との間の距離が近づくと、ノズル41内における流体48の圧力が高くなることを利用して、測定対象物の表面の高さ(±Z方向における位置)を、測定対象物に接触することなく測定する。背圧センサ40は、非接触式高さ位置検出手段の一例である。
【0020】
このようにして第二円形板状物12の裏面122の高さ位置を測定しながら、背圧センサ40を、保持テーブル20の回転軸29に近い側から、積層円形板状物10の面方向に沿って保持テーブル20の径方向外側へ向けて移動させる。すると、最初のうちは、背圧センサ40によって測定される高さはほぼ一定であるが、背圧センサ40の測定位置が第二円形板状物12の面取り部12aに達すると、背圧センサ40によって測定される高さが−Z方向に変化する。そこで、背圧センサ40によって測定される高さが変化し始めたときの背圧センサ40の測定位置に基づいて、保持テーブル20の回転軸29と、第二円形板状物12の外周縁12cとの間のXY平面内における距離を算出する。高さが変化し始めたときの測定位置に基づいて外周縁12cの位置を検出するので、第二円形板状物12の外に接着剤13がはみ出していても、外周縁の位置を正確に検出することができる。
【0021】
なお、非接触式高さ位置検出手段は、背圧センサ40に限らず、例えばレーザハイト計であってもよい。レーザハイト計は、レーザ光を測定対象物に照射し、測定対象物に当たって反射した反射光を受光することにより、測定対象物までの距離を測定する。
【0022】
このように、第二円形板状物12の裏面122の高さを非接触で測定することにより、接着剤13の影響による測定誤差の発生を防ぐことができる。なお、非接触式高さ位置検出手段は、保持テーブル20に対して径方向に相対移動させることができるものであればよく、上述したように非接触式高さ位置検出手段自体を移動させる構成であってもよいし、非接触式高さ位置検出手段は移動させず、保持テーブル20を移動させる構成であってもよい。
【0023】
検出ステップでは、保持テーブル20の回転軸29と第二円形板状物12の外周縁12cとの間の距離を計測した後、保持テーブル20を回転させる。保持テーブル20が所定の角度回転したら回転を停止し、保持テーブル20の回転軸29と第二円形板状物12の外周縁12cとの間の距離をもう一度計測する。計測終了後、保持テーブル20を更に回転させ、所定の角度回転したら回転を停止し、保持テーブル20の回転軸29と第二円形板状物12の外周縁12cとの間の距離を更にもう一度計測する。このようにして、保持テーブル20の回転軸29と第二円形板状物12の外周縁との間の距離を少なくとも3回計測する。なお、保持テーブル20が回転せずに、撮像手段30や非接触式高さ検出手段が第二円形板状物12の外周に沿って移動して計測を行う構成としてもよい。
【0024】
(3)算出ステップ
次に、検出ステップで計測した保持テーブル20の回転軸29と第二円形板状物12の外周縁12cとの間の距離と、計測時における保持テーブル20の回転角度とに基づいて、検出した第二円形板状物12の外周縁12cの位置を算出する。例えば、保持テーブル20の回転軸29と第二円形板状物12の裏面122との交点を原点として外周縁のXY座標を算出する。少なくとも3回計測するので、少なくとも3つの座標が算出される。
【0025】
次に、算出ステップでは、図4に示すように、検出ステップで算出した第二円形板状物12の外周縁12cの位置に基づいて、保持テーブル20の回転軸29と第二円形板状物12の中心との間のずれを算出する。
【0026】
第二円形板状物12の3箇所の外周縁の位置に基づき、第二円形板状物12の中心位置を算出することができる。例えば、下記数式(1)、数式(2)及び数式(3)により、検出ステップで算出した第二円形板状物12の外周縁12cの3つの位置A(X1,Y1),B(X2,Y2),C(X3,Y3)を通る円の中心点O’(XC,YC)と半径Rとを算出する。
【0027】
【数1】
【0028】
【数2】
【0029】
【数3】
【0030】
次に、下記数式(4)及び数式(5)により、原点Oと中心点O’との間の距離dと、線分OO’がX軸となす角度φとを算出する。
【0031】
【数4】
【0032】
【数5】
【0033】
距離dは、保持テーブル20の回転軸29と第二円形板状物12の中心との間の距離(ずれ)を表し、角度φは、保持テーブル20の回転軸29から見た保持テーブル20の所定方向(X軸方向)に対する第二円形板状物12の中心の方向を表す。
【0034】
(4)切削ステップ
次に、図5に示すように、保持テーブル20に積層円形板状物10が保持された状態で、保持テーブル20を回転させ、切削手段50を用いて第二円形板状物12の外周部分を切削する。切削手段50は、スピンドル52の先端に切削ブレード51が装着されて構成されており、スピンドル52は、±Y方向に平行でかつ保持テーブル20の回転軸29と交わる回転軸59を中心として回転することにより切削ブレード51を回転させる。
【0035】
そして、検出ステップで検出した第二円形板状物12の外周縁12cの位置に基づいて、保持テーブル20の回転角度に応じて、保持テーブル20の径方向である±Y方向に切削ブレード51を移動させて切り込み位置を調整し、切削ブレード51を−Z方向に移動させて第二円形板状物12に切り込ませつつ、保持テーブル20を回転させることにより、第二円形板状物12の外周縁12cに沿って切削する。このときの切削ブレード51の切込み深さは、第二円形板状物12の仕上げ厚みに至る深さである。
【0036】
例えば、第二円形板状物12の外周縁12cから距離eだけ内側の位置から面取り部12aの最外周の先端部12dまでの所定幅を切削除去したい場合、算出ステップで算出した第二円形板状物12の外周縁の半径R(図4参照)から距離eを差し引いた差(R−e)を半径rとし、算出ステップで算出した第二円形板状物12の外周縁の中心点O’から半径rの位置に除去すべき所定幅以上の刃厚の切削ブレードの一側面を位置付けて切り込ませ、切削すればよい。保持テーブル20の回転角度をθとすると、図6に示すように、保持テーブル20の回転軸29から見た第二円形板状物12の中心の方向が+X方向となす角度は、(θ+φ)である。そこで、例えば下記数式6により、保持テーブル20の回転軸29と切削ブレード51の切り込み位置との間の距離yを算出する。第二円形板状物12の1回転で切削除去できない刃厚の切削ブレードを使用する場合、即ち第二円形板状物12の外周縁12cから距離eだけ内側の位置から面取り部12aの最外周の先端部12dまでの所定幅より薄い厚みの切削ブレードを使用する場合には、外周縁12や外周縁の中心点O’から半径rの位置にその切削ブレードを切り込ませた後、保持テーブル20を必要回数回転させるとともに切削ブレードを外周方向に移動させながら切削することを繰り返し、所定幅のトリミングを行う。
【0037】
【数6】
【0038】
保持テーブル20の回転に伴って角度θが変化するので、距離yも変化する。距離yの変化に追随するように切削ブレード51を±Y方向に移動させながら切削することにより、第二円形板状物12の外周縁を外周に沿って切削する。このように、算出ステップで算出されたずれを補正するように切削ブレード51と保持テーブル20とを保持面21の面方向と平行な方向に相対移動させながら切削することにより、第二円形板状物12の中心が積層円形板状物10全体の中心からずれている場合であっても、第二円形板状物12の中心から一定の距離の位置を正確に切削し、面取り部12aを除去することができる。
【0039】
なお、切削ステップでは、保持テーブル20の回転角度に応じて切削ブレード51の±Y方向の位置を変化させるのではなく、保持テーブル20の回転角度にかかわらず、切削ブレード51の±Y方向の位置を一定に保つようにしてもよい。
【0040】
例えば、算出ステップで算出した外周縁12cの半径Rから、原点Oと中心点O’との間の距離dを差し引いた差(R−d)を算出し、切削ブレード51を、保持テーブル20の回転軸29から距離(R−d)だけ離れた位置に位置付ける。距離(R−d)は、保持テーブル20の回転軸29と外周縁12cとの距離の最小値であるから、この状態で保持テーブル20を回転させてその外周側の切削を行えば、切削ブレード51を移動させなくても、面取り部12aを完全に除去することができる。この場合は、刃厚が厚いタイプの切削ブレードを用いたり、保持テーブル20を複数回回転させ切削ブレード51を外周側に移動させたりしながら切削を行う。保持テーブル20の回転角度に応じて切削ブレード51の位置を複雑な制御によって変える必要がないので、制御が容易となる。
【0041】
また、算出ステップを省略し、検出ステップで検出した、保持テーブル20の回転軸29と外周縁12cとの距離の中から最も小さいものを選択し、保持テーブル20の回転軸29と外周縁12cとの距離の最小値とみなし、その外周縁12cに切削ブレード51を位置付けてもよい。そうすることにより、第二円形板状物12の中心点や半径を求めるための複雑な計算をする必要がなくなる。
【0042】
その場合は、本当の最小値は、実測値のうちの最小値より小さいと考えられるため、実測値の中の最小値より保持テーブル20の回転軸29に近い位置に切削ブレード51を位置付けて保持テーブル20を複数回回転させ切削ブレード51を外周側に移動させながら切削を行ったり、刃厚の厚い切削ブレードを用いて切削を行ったりすれば、面取り部12aを完全に除去することができる。
【0043】
また、実測値のうちの最小値ではなく、実測値の平均値や、実測値のうちの最大値を基準として、切削ブレード51を位置付けてもよい。その場合は、最小値を用いる場合と比較して、保持テーブル20の回転軸29と外周縁12cとの距離の最小値との差が大きくなるため、その分を考慮して、保持テーブル20の回転軸29に近い位置に切削ブレード51を位置付けて保持テーブル20を複数回回転させながら切削ブレード51を外周側に移動させたり、刃厚の厚い切削ブレードを用いて切削を行ったりすればよい。
【0044】
(5)研削ステップ
以上のようにして第二円形板状物12の外周縁12cに沿ってトリミングが行われた後、第二円形板状物12の裏面122に回転する研削砥石を接触させて研削し、第二円形板状物12が所望の厚みに形成された時点で研削を終了する。第二円形板状物12は、外周縁cの外側がトリミングにより除去されているため、外周部分にシャープエッジが形成されるのを防ぐことができる。
【0045】
上記実施例では、第二円形板状物12の裏面研削に際して第二円形板状物の外周の面取り部を除去する場合について説明したが、本発明は面取り部の除去に限定されず、例えば第二円形板状物12の外周縁にはみ出した接着剤を除去する場合等、他の実施形態にも好適である。他の実施例では、切削ステップにおける切削ブレードの切り込み深さは適宜設定する。
【符号の説明】
【0046】
10…積層円形板状物、
11…第一円形板状物、111…表面、112…裏面、
12…第二円形板状物、121…表面、122…裏面、
12a…面取り部、12b…平坦面、12c…外周縁、12d…先端部
13…接着剤、17…外周縁、
20…保持テーブル、21…保持面、29…回転軸、
30…撮像手段、37…検出点、39…光軸、
40…背圧センサ、41…ノズル、48…流体、
50…切削手段、51…切削ブレード、52…スピンドル、59…回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6