(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363459
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】金属の浸出方法及びそれを用いた金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 3/06 20060101AFI20180712BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20180712BHJP
C22B 15/00 20060101ALI20180712BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20180712BHJP
C22B 47/00 20060101ALI20180712BHJP
C22B 34/32 20060101ALI20180712BHJP
C22B 19/20 20060101ALI20180712BHJP
C22B 41/00 20060101ALI20180712BHJP
C22B 58/00 20060101ALI20180712BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20180712BHJP
C22B 26/12 20060101ALI20180712BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
C22B3/06
C22B7/00 C
C22B15/00 105
C22B23/00 102
C22B47/00
C22B34/32
C22B19/20 101
C22B41/00
C22B58/00
H01M10/54
C22B26/12
B09B3/00 304Z
【請求項の数】7
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-202011(P2014-202011)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-69706(P2016-69706A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】河村 寿文
【審査官】
國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−055312(JP,A)
【文献】
特開2012−074247(JP,A)
【文献】
特開2012−036420(JP,A)
【文献】
特開2012−001750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 3/00
C22B 23/00
C22B 26/00
C22B 47/00
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)Li、
(2)Li以外の浸出対象の金属、及び、
(3)酸浸出に際して、前記Li以外の浸出対象の金属よりも卑な金属
を含むスクラップから複数の金属を浸出させる方法において、
前記スクラップに対し、酸でLiの60質量%以上を溶解させる工程と、
前記Liの60質量%以上を溶解させることで得られた酸浸出液を固液分離する工程と、
前記固液分離することで得られた残渣に対し、酸で前記(2)及び(3)の金属を溶解させる工程と
を備え、
前記スクラップに対し、酸でLiの60質量%以上を溶解させる工程において、前記スクラップを酸で処理することでLi、前記(2)の金属、及び、前記(3)の金属を溶解させ、次に前記(3)の金属を置換析出させ、続いて前記(2)の金属を再析出させることで、浸出液中にLiの60質量%以上が溶解している金属の浸出方法。
【請求項2】
前記(2)の金属が、Co、Ni、Cu、Zn、Ga及びGeから選択される少なくとも1種又は2種以上であり、前記(3)の金属が、Mn、Fe及びCrから選択される少なくとも1種又は2種以上である請求項1に記載の金属の浸出方法。
【請求項3】
前記スクラップに対し、酸でLiの60質量%以上を溶解させる工程において、前記スクラップを酸で処理することでLi、Co、Ni及びMnを溶解させ、次にMnを置換析出させ、続いてCo及びNiを再析出させることで、浸出液中にLiの60質量%以上が溶解している請求項1又は2に記載の金属の浸出方法。
【請求項4】
前記Liの60質量%以上を溶解させる工程で用いる酸、及び/又は、前記固液分離することで得られた残渣に対し、前記酸で前記(2)及び(3)の金属を溶解させる工程で用いる酸が、無機酸である請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属の浸出方法。
【請求項5】
前記スクラップが、平均粒径1mm以下のスクラップ粉である請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属の浸出方法。
【請求項6】
前記スクラップが、リチウムイオン二次電池用正極材のスクラップである請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属の浸出方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属の浸出方法を用いて、
(1)Li、
(2)Li以外の浸出対象の金属、及び、
(3)酸浸出に際して、前記Li以外の浸出対象の金属よりも卑な金属
を含むスクラップから複数の金属を回収する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の浸出方法及びそれを用いた金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属および金属化合物から金属を回収するのに、通常酸による化学溶解処理を用いることは非常に一般的である。この場合、金属の回収率を上げるためには、可能な限り多くの金属、好ましくは全量の金属を溶解させることが求められる。そのため、強酸下で理論当量の数倍量の酸を使用したり、電位(ORP)平坦化のための過酸化水素水等の助剤を添加するなどの工夫が必要となる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された技術では、リチウムイオン二次電池用正極活物質を代表する物質であるコバルト酸リチウムから効率よくコバルトを回収する技術が開示されている。この技術によれば、重量比でコバルト酸リチウムを1に対し、硫酸を1.47〜1.67、水を0.67〜4.0の割合で希釈した硫酸を用いて、リチウムイオン二次電池用正極活物質を溶解させ、その溶解液を60℃以上に保持し、さらに過酸化水素水を添加して電位をさげ、そこへ硫酸を添加してpHを0.4〜0.8に調整して、全量溶解させている。その後、冷却して硫酸コバルトを析出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−022887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、Liを含んだ混合スクラップから有価物を回収する際、Liが酸に溶解しやすいため、まずLiを含んだ状態で酸溶解し、その後、pH、ORP制御、溶媒抽出或いは電気分解等によって分離する方法が一般に用いられている。しかしながら、当該方法では、Liがそれほど高価ではないにもかかわらず、Liを最終的に分離して回収するための分離操作が必要となっており、回収効率の面で問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、スクラップから有価金属を効率良く回収することを可能にする金属の浸出方法及びそれを用いた金属の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は一側面において、(1)Li、(2)Li以外の浸出対象の金属、及び、(3)酸浸出に際して、前記Li以外の浸出対象の金属よりも卑な金属を含むスクラップから複数の金属を浸出させる方法において、前記スクラップに対し、酸でLiの60質量%以上を溶解させる工程と、前記Liの60質量%以上を溶解させることで得られた酸浸出液を固液分離する工程と、前記固液分離することで得られた残渣に対し、酸で前記(2)及び(3)の金属を溶解させる工程とを備え
、前記スクラップに対し、酸でLiの60質量%以上を溶解させる工程において、前記スクラップを酸で処理することでLi、前記(2)の金属、及び、前記(3)の金属を溶解させ、次に前記(3)の金属を置換析出させ、続いて前記(2)の金属を再析出させることで、浸出液中にLiの60質量%以上が溶解している金属の浸出方法である。
【0008】
本発明の金属の浸出方法は一実施形態において、前記(2)の金属が、Co、Ni、Cu、Zn、Ga及びGeから選択される少なくとも1種又は2種以上であり、前記(3)の金属が、Mn、Fe及びCrから選択される少なくとも1種又は2種以上である。
【0009】
本発明の金属の浸出方法は別の一実施形態において、前記スクラップに対し、酸でLiの60質量%以上を溶解させる工程において、前記スクラップを酸で処理することでLi、Co、Ni及びMnを溶解させ、次にMnを置換析出させ、続いてCo及びNiを再析出させることで、浸出液中にLiの60質量%以上が溶解している。
【0010】
本発明の金属の浸出方法は更に別の一実施形態において、前記Liの60質量%以上を溶解させる工程で用いる酸、及び/又は、前記固液分離することで得られた残渣に対し、
前記酸で
前記(2)及び(3)の金属を溶解させる工程で用いる酸が、無機酸である。
【0011】
本発明の金属の浸出方法は更に別の一実施形態において、前記スクラップが、平均粒径1mm以下のスクラップ粉である。
【0012】
本発明の金属の浸出方法は更に別の一実施形態において、前記スクラップが、リチウムイオン二次電池用正極材のスクラップである。
【0013】
本発明は別の一側面において、本発明の金属の浸出方法を用いて、(1)Li、(2)Li以外の浸出対象の金属、及び、(3)酸浸出に際して、前記Li以外の浸出対象の金属よりも卑な金属を含むスクラップから複数の金属を回収する方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スクラップから有価金属を効率良く回収することを可能にする金属の浸出方法及びそれを用いた金属の回収方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の金属の浸出方法は、(1)Li、(2)Li以外の浸出対象の金属、及び、(3)酸浸出に際して、Li以外の浸出対象の金属よりも卑な金属を含むスクラップから複数の金属を浸出させる方法において、スクラップに対し、酸でLiの60質量%以上を溶解させる工程と、Liの60質量%以上を溶解させることで得られた酸浸出液を固液分離する工程と、固液分離することで得られた残渣に対し、酸で(2)及び(3)の金属を溶解させる工程とを備えた金属の浸出方法である。
また、本発明の金属を回収する方法は、本発明の金属の浸出方法を用いて、(1)Li、(2)Li以外の浸出対象の金属、及び、(3)酸浸出に際して、Li以外の浸出対象の金属よりも卑な金属を含むスクラップから複数の金属を回収する方法である。
このような構成により、スクラップに対して酸浸出によって初めにLiの60質量%以上を溶解分離し、残渣に対してさらに酸浸出するという2段階の酸浸出のみで、(1)Li、(2)Li以外の浸出対象の金属、及び、(3)酸浸出に際して、Li以外の浸出対象の金属よりも卑な金属を含むスクラップから効率的に有価金属を回収することができる。
【0016】
上記スクラップとしては、電子材料、例えば半導体及び電子部品、液晶ディスプレイ、工具コーティング、ガラスコーティング、光ディスク、ハードディスク、太陽電池、リチウムイオン二次電池用正極材等由来のスクラップが挙げられる。また、このスクラップは、溶解の効率を考慮すると、予め破砕して粉状にしておくことが好ましく、平均粒径1mm以下のスクラップ粉であることがより好ましい。
【0017】
前記(2)及び(3)の金属は、それぞれ(2)がLi以外の浸出対象の金属であり、(3)が酸浸出に際して、Li以外の浸出対象の金属よりも卑な金属であれば特に限定されないが、例えば、前記(2)の金属は、Co、Ni、Cu、Zn、Ga及びGeから選択される少なくとも1種又は2種以上であり、前記(3)の金属は、Mn、Fe及びCrから選択される少なくとも1種又は2種以上である。このような構成によれば、まず、スクラップに対する酸浸出(第1段目)によってLiの60質量%以上を溶解分離し、Co、Ni、Mn、Fe等を含む残渣に対してさらに酸浸出(第2段目)することで、(2)の金属よりも卑な金属である(3)の金属であるMn、Fe等がMnO
2、FeO
2等を生成して不溶物となり、(2)の金属であるCo、Niを含む浸出後液から分離される。その後、必要に応じて、(2)の金属であるCo、Niを含む浸出後液からCoとNiとを分離回収する。このように、Liに加えて、Co、Ni、Mn、Fe等を含むスクラップから効率的に有価金属を回収することができる。この場合、スクラップに対し、酸でLiの60質量%以上を溶解させる工程において、スクラップを酸で処理することでLi、Co、Ni及びMnを溶解させ、次にMnを置換析出させ、続いてCo及びNiを再析出させることで、浸出液中にLiの60質量%以上が溶解している。
【0018】
本発明では、第1段目の酸浸出でLiのみを溶解させているが、これは、酸浸出後にLiに加え、Li以外の金属もある程度は溶解しているが、その後に所定のpH領域において、Liとそれぞれ時間をおいて置換して再析出することで、結果としてLiのみが溶解した状態となる。
【0019】
第2段目の酸浸出により生じた浸出後液から金属を回収する方法としては、溶媒抽出法、電解法などが挙げられ、金属として分離するか、あるいは合金として回収することが可能である。
溶媒抽出法では、通常の金属抽出に用いられる抽出剤、例えばジ(2−エチルヘキシル)ホスホリックアシッド(D2EHPA)や、2−エチルヘキシルホスホン酸(PC88A)などの有機リン酸型の酸性抽出剤を適宜pHを調整して有機相に各金属イオンを抽出し、任意の酸で逆抽出を行うことで、分離回収が可能である。
また、電解法では、浸出後液をそのまま電解液として用いて、カソードとアノードとを設置し、定電流にて電解を行うことで、カソードまたはアノード表面に電析させることで回収が可能である。
【0020】
本発明において、前記Liの60質量%以上を溶解させる工程で用いる酸、及び/又は、前記固液分離することで得られた残渣に対し、酸でLi以外の金属を溶解させる工程で用いる酸としては、無機酸を用いることができる。無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、中でも硫酸が好ましい。
【0021】
本発明において、スクラップに対して酸浸出によって初めにLiの60質量%以上を溶解させるが、当該Liの溶解量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更により好ましく、95質量%以上が更により好ましく、典型的には80〜100質量%、より典型的には80〜95質量%である。当該Liの溶解量は、多いほど以降のLiの回収が不要となり、より効率良くスクラップから有価金属を回収することができる。
【0022】
前記Liの60質量%以上を溶解させる工程において用いる酸の添加量は、前記スクラップに含有される全金属分の当量に基づいて、適宜調整する。当該酸の添加量がスクラップに含有される全金属分に対して少なすぎると、Liの溶解が進まない問題が生じる場合がある。また、当該酸の添加量がスクラップに含有される全金属分に対して多すぎると、金属の溶解後の置換が十分進まず、Li以外の金属が再析出せず、結果的に溶解したままとなりLiのみ第1段目の酸浸出で分離することができないおそれがある。
前記Liの60質量%以上を溶解させる工程において用いる酸の添加量は、例えば、前記スクラップに含有される全金属分の0.1当量以上0.6当量未満とすることができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
Li、Ni、Co、Mnの酸化物からなる3元系正極材のスクラップ粉1kgを0.3当量分の硫酸を用いて80℃で処理した。20時間後、Liは97質量%溶解していた。その他の金属は、溶液中に存在していなかった。続いて、当該溶液をろ過し、残渣を0.7当量の硫酸を用いて80℃で処理したところ、NiとCoとがほぼ全量溶解した。また、Mnは残渣化合物として残った。続いて、この液を電解採取することで、NiとCoとを析出分離した。
【0024】
(実施例2)
Li、Ni、Co、Mnの酸化物からなる3元系正極材のスクラップ粉1kgを0.3当量分の硝酸を用いて80℃で処理した。20時間後、Liは95質量%溶解していた。その他の金属は、溶液中に存在していなかった。続いて、当該溶液をろ過し、残渣を0.7当量の硫酸を用いて80℃で処理したところ、NiとCoとがほぼ全量溶解した。また、Mnは残渣化合物として残った。続いて、この液を電解採取することで、NiとCoとを析出分離した。
【0025】
(比較例1)
Li、Ni、Co、Mnの酸化物からなる3元系正極材のスクラップ粉1kgを0.6当量分の硫酸を用いて80℃で処理した。20時間後、Liは98質量%溶解したが、Niが10質量%、Coが5質量%それぞれ溶解していた。このように、Liのみの選択的分離が不十分であった。
【0026】
(比較例2)
Li、Ni、Co、Mnの酸化物からなる3元系正極材のスクラップ粉1kgを0.04当量分の硫酸を用いて80℃で処理した。20時間後、Ni、Co、Mnは0質量%の溶解量であったが、Liが10質量%しか溶解しなかった。