特許第6363550号(P6363550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6363550金属化合物粒子群の製造方法、金属化合物粒子群及び金属化合物粒子群を含む蓄電デバイス用電極
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363550
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】金属化合物粒子群の製造方法、金属化合物粒子群及び金属化合物粒子群を含む蓄電デバイス用電極
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/86 20130101AFI20180712BHJP
   H01G 11/46 20130101ALI20180712BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20180712BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20180712BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20180712BHJP
   C01G 51/00 20060101ALI20180712BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20180712BHJP
【FI】
   H01G11/86
   H01G11/46
   H01M4/485
   H01M4/131
   C01G23/00 B
   C01G51/00 A
   H01G11/06
【請求項の数】25
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-74270(P2015-74270)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-115912(P2016-115912A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2018年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-254432(P2014-254432)
(32)【優先日】2014年12月16日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度 独立行政法人科学技術振興機構産学共同実用化開発事業産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504358517
【氏名又は名称】有限会社ケー・アンド・ダブル
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】花輪 洋宇
(72)【発明者】
【氏名】湊 啓裕
(72)【発明者】
【氏名】爪田 覚
(72)【発明者】
【氏名】石本 修一
(72)【発明者】
【氏名】直井 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】直井 和子
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−351608(JP,A)
【文献】 特開2013−135214(JP,A)
【文献】 特開2013−073854(JP,A)
【文献】 特開2007−160151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/86
C01G 23/00
C01G 51/00
H01G 11/06
H01G 11/46
H01M 4/131
H01M 4/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスの電極に用いる金属化合物粒子群の製造方法であって、
金属化合物粒子の前駆体とカーボン源とを複合化して第一の複合材料を得る工程と、
前記第一の複合材料を非酸化雰囲気下で熱処理することによって、金属化合物粒子を生成し、該金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料を得る工程と、
前記第二の複合材料を酸素雰囲気下で熱処理することによって、カーボンを除去して金属化合物粒子群を得る工程と、
を有する金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項2】
前記金属化合物粒子群を得る工程の熱処理によって、金属化合物粒子が三次元網目構造に結合された請求項1に記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項3】
前記第二の複合材料を得る工程の熱処理温度は、600〜950℃である請求項1又は2に記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項4】
前記第二の複合材料を得る工程の熱処理時間は、1〜20分である請求項1乃至3いずれかに記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項5】
前記第二の複合材料を得る工程の前に、第一の複合材料を200〜500℃の非酸化雰囲気下で熱処理する予備加熱工程をさらに有する請求項1乃至4いずれかに記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項6】
前記金属化合物粒子群を得る工程の熱処理温度は、350〜800℃である請求項1乃至5いずれかに記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項7】
前記金属化合物粒子群を得る工程の熱処理温度を、前記予備加熱工程の熱処理温度と同等以上の温度とした請求項に記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項8】
前記金属化合物粒子群を得る工程によって、カーボンの残存量を金属化合物粒子群の5重量%未満とした請求項1乃至7いずれかに記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項9】
前記第一の複合材料を得る工程は、
旋回する反応容器内で、金属化合物粒子の材料源とカーボン源とを含む溶液にずり応力と遠心力を加えてメカノケミカル反応する処理である請求項1乃至8いずれかに記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項10】
前記金属化合物粒子の材料源が、チタン源とリチウム源であり、金属化合物粒子の前駆体がチタン酸リチウムの前駆体である請求項9に記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項11】
前記溶液に含まれるチタン源がチタンアルコキシドであり、前記溶液にチタンアルコキシドと錯体を形成する反応抑制剤がさらに含まれている請求項9又は10に記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項12】
前記第一の複合材料を得る工程は、
金属化合物粒子の材料源とカーボン源とを含む溶液をスプレードライする処理である請求項1乃至8いずれかに記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項13】
前記溶液は、カーボン源を添加した後に、金属化合物粒子の材料源を添加して得られる請求項12に記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項14】
前記第一の複合材料を得る工程は、
金属化合物粒子の材料源とカーボン源とを含む溶液を攪拌する処理である請求項1乃至8いずれかに記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項15】
前記カーボン源がポリマーである請求項14に記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項16】
前記金属化合物粒子の材料源は、その二次粒子の平均粒子径が500nm以下である請求項14又は15に記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項17】
第二の複合材料は、金属化合物粒子とカーボンとの混合割合が重量比で95:5〜30:70である請求項1乃至16いずれかに記載の金属化合物粒子群の製造方法。
【請求項18】
蓄電デバイスの電極に用いる金属化合物粒子群であって、
ナノサイズの金属化合物粒子が三次元網目構造に結合した金属化合物粒子群。
【請求項19】
前記金属化合物粒子群において、金属化合物粒子群の断面における空隙率が、7〜50%である請求項18に記載の金属化合物粒子群。
【請求項20】
平均粒子径が100nm以下の前記金属化合物粒子により成る前記金属化合物粒子群を窒素ガス吸着測定法にて測定した細孔分布から換算される差分細孔容積において、10〜40nmの範囲の細孔径における差分細孔容積が0.01cm/g以上の値を有する請求項18又は19に記載の金属化合物粒子群。
【請求項21】
平均粒子径が100nm超の前記金属化合物粒子により成る前記金属化合物粒子群を窒素ガス吸着測定法にて測定した細孔分布から換算される差分細孔容積において、20〜40nmの範囲の細孔径における差分細孔容積が0.0005cm/g以上の値を有する請求項18又は19に記載の金属化合物粒子群。
【請求項22】
前記金属化合物粒子群には、カーボンの残存量を金属化合物粒子群の5重量%未満とした請求項18乃至21のいずれかに記載の金属化合物粒子群。
【請求項23】
前記金属化合物粒子群に含まれる金属化合物粒子は、その一次粒子の平均粒子径が5〜100nmを含む請求項18乃至22のいずれかに記載の金属化合物粒子群。
【請求項24】
前記金属化合物粒子が、チタン酸リチウムである請求項18乃至23のいずれかに記載の金属化合物粒子群。
【請求項25】
請求項18乃至24のいずれかに記載の前記金属化合物粒子群とバインダを含む蓄電デバイス用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの電極に用いる金属化合物粒子群の製造方法、金属化合物粒子群及びそれを用いた電極に関する。
【背景技術】
【0002】
金属化合物粒子を用いた電極は、正極及び負極にそれぞれ金属化合物粒子を用いたリチウムイオン二次電池や、正極に活性炭、負極にリチウムイオンを可逆的に吸着/脱着可能な材料(グラフェンや金属化合物など)を用いたリチウムイオンキャパシタなどの蓄電デバイスに用いられる。これらの蓄電デバイスは、携帯電話やノート型パソコンなどの情報機器の電源として、また、車載等での回生エネルギー用途に利用されている。特に車載用途においては高いレート特性が求められている。
【0003】
蓄電デバイスの高レート特性を目的とするものとしては、特定のリチウム含有複合酸化物の表面に、カーボンナノチューブ、グラフェン及び平均分散粒子径が0.2μm以下のカーボンブラックから選択された一種の炭素材料を被覆したリチウムイオン二次電池用正極活物質(特許文献1)が知られているが、高レートでの充放電特性が未だ満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−169217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、レート特性を向上せしめた蓄電デバイスの電極に用いられる金属化合物粒子群の製造方法、金属化合物粒子群及びこの金属化合物粒子群を用いた電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明の製造方法は、蓄電デバイスの電極に用いる金属化合物粒子群の製造方法であって、金属化合物粒子の前駆体とカーボン源とを複合化して第一の複合材料を得る工程と、前記第一の複合材料を非酸化雰囲気下で熱処理することによって、金属化合物粒子を生成し、該金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料を得る工程と、前記第二の複合材料を酸素雰囲気下で熱処理することによって、カーボンを除去して金属化合物粒子群を得る工程と、を有することを特徴としている。また、前記金属化合物粒子群を得る工程の熱処理によって、金属化合物粒子が三次元網目構造に結合されていることを特徴としている。
【0007】
また、前記第二の複合材料を得る工程の熱処理温度は、600〜950℃であることを特徴としている。また、前記第二の複合材料を得る工程の熱処理時間は、1〜20分であることを特徴としている。また、前記第二の複合材料を得る工程の前に、第一の複合材料を200〜500℃の非酸化雰囲気下で熱処理する予備加熱工程をさらに有することを特徴としている。また、前記金属化合物粒子群を得る工程の熱処理温度は、350〜800℃であることを特徴としている。また、前記金属化合物粒子群を得る工程の熱処理温度を、前記予備加熱工程の熱処理温度と同等以上の温度としたことを特徴としている。また、前記金属化合物粒子群を得る工程によって、カーボンの残存量を金属化合物粒子群の5重量%未満としたことを特徴としている。
【0008】
また、前記第一の複合材料を得る工程は、旋回する反応容器内で、金属化合物粒子の材料源とカーボン源とを含む溶液にずり応力と遠心力を加えてメカノケミカル反応する処理であることを特徴としている。また、前記金属化合物粒子の材料源が、チタン源とリチウム源であり、金属化合物粒子の前駆体がチタン酸リチウムの前駆体であることを特徴としている。また、前記溶液に含まれるチタン源がチタンアルコキシドであり、前記溶液にチタンアルコキシドと錯体を形成する反応抑制剤がさらに含まれていることを特徴としている。
【0009】
また、前記第一の複合材料を得る工程は、金属化合物粒子の材料源とカーボン源とを含む溶液をスプレードライする処理であることを特徴としている。また、前記溶液は、溶媒にカーボン源を添加した後に、金属化合物粒子の材料源を添加して得られることを特徴としている。
【0010】
また、前記第一の複合材料を得る工程は、金属化合物粒子の材料源とカーボン源とを含む溶液を攪拌する処理であることを特徴としている。また、前記カーボン源がポリマーであることを特徴としている。また、前記金属化合物粒子の材料源は、その平均粒子径が500nm以下であることを特徴としている。
【0011】
また、第二の複合材料は、金属化合物粒子とカーボンとの混合割合が重量比で95:5〜30:70であることを特徴としている。
【0012】
また、本願発明は、蓄電デバイスの電極に用いる金属化合物粒子群であって、ナノサイズの金属化合物粒子が三次元網目構造に結合した金属化合物粒子群であることを特徴としている。
【0013】
また、前記金属化合物粒子群において、金属化合物粒子群の断面における空隙率が、7〜50%であることを特徴としている。また、平均粒子径が100nm以下の前記金属化合物粒子により成る前記金属化合物粒子群を窒素ガス吸着測定法にて測定した細孔分布から換算される差分細孔容積において、10〜40nmの範囲の細孔径における差分細孔容積が0.01cm/g以上の値を有することを特徴としている。また、平均粒子径が100nm超の前記金属化合物粒子により成る前記金属化合物粒子群を窒素ガス吸着測定法にて測定した細孔分布から換算される差分細孔容積において、20〜40nmの範囲の細孔径における差分細孔容積が0.0005cm/g以上の値を有することを特徴としている。また、前記金属化合物粒子群には、カーボンの残存量を金属化合物粒子群の5重量%未満としたことを特徴としている。また、前記金属化合物粒子群に含まれる金属化合物粒子は、その一次粒子の平均粒子径が5〜100nmを含むことを特徴としている。また、前記金属化合物粒子が、チタン酸リチウムであることを特徴としている。また、これらの金属化合物粒子群とバインダを含む蓄電デバイス用電極とすることもできる。
【0014】
このように、金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料を得た後に、酸素雰囲気下で加熱処理することによって、カーボンが除去され、加熱前に存在したカーボンの部位が空隙となり、且つこの加熱処理によって金属化合物粒子同士が反応して結合し、カーボン由来の空隙と、金属化合物粒子同士の結合とが相まって、金属化合物粒子の三次元網目構造を構成することになる。この金属化合物粒子群は、適度な空隙を有するため、蓄電デバイスを構成した際の電解液が含浸されて電極内での電解液中のイオンの移動が円滑となり、また金属化合物同士の結合によって電子の移動が早くなり、両者の相乗作用により電極の抵抗が下がり、レート特性を向上させることができると考えられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法および本発明の金属化合物粒子群を用いることで、蓄電デバイス用の電極のレート特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は、本発明の第二の複合材料を示す概念図であり、(b)は、本発明の金属化合物粒子群を示す概念図である。
図2】従来の金属化合物粒子群を示す概念図である。
図3】本発明及び従来の金属化合物粒子群を用いた電極のレート特性を示した図であり、金属化合物粒子群はチタン酸リチウムである。
図4】本発明及び従来の金属化合物粒子群を用いた電極のレート特性を示した図であり、金属化合物粒子群はコバルト酸リチウムである。
図5】(a)は、本発明のチタン酸リチウムに係る金属化合物粒子群の断面のSTEM写真であり、(b)は、従来の金属化合物粒子群の断面のSTEM写真である。
図6】本発明のコバルト酸リチウムに係る金属化合物粒子群の断面のSTEM写真である。
図7】(a)は、本発明のチタン酸リチウムに係る金属化合物粒子群の断面のSTEM写真であり、(b)は、従来の金属化合物粒子群の断面のSTEM写真である。
図8】本発明のコバルト酸リチウムに係る金属化合物粒子群の断面のSTEM写真である。
図9】(a)は、本発明の金属化合物粒子群の断面のSTEM写真を画像分析した図であり、(b)は、従来の金属化合物粒子群の断面のSTEM写真を画像分析した図である。
図10】本発明の金属化合物粒子群の表面のSEM写真である。
図11】本発明及び従来の金属化合物粒子群の差分細孔容積を示した図であり、金属化合物粒子群はチタン酸リチウムである。
図12】本発明及び従来の金属化合物粒子群の差分細孔容積を示した図であり、金属化合物粒子群はコバルト酸リチウムである。
図13】本発明及び参考例の金属化合物粒子群の導電率を示した図である。
図14】本発明及び従来の金属化合物粒子群を用いた電極のレート特性を示した図である。
図15】本発明の金属化合物粒子群の差分細孔容積を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施する形態について、説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものでない。
【0018】
本発明の金属化合物粒子群は、主に蓄電デバイスの電極に用いられるものであり、金属化合物粒子群を構成する金属化合物粒子としては、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタなどの蓄電デバイスの正極活物質又は負極活物質として動作可能な材料である。
【0019】
金属化合物粒子は、リチウムを含む酸化物又は酸素酸塩であり、Liαβγで表される。金属酸化物の場合、例えば、M=Co,Ni,Mn,Ti,Si,Sn,Al,Zn,Mgの何れかであり、Y=Oである。金属酸素酸塩の場合、例えば、M=Fe,Mn,V,Co,Niの何れかであり、Y=PO,SiO,BO,Pの何れかである。Mβは、MδM’εの合金であってもよく、例えば、M=Sn,Sb,Siの何れかであり、M’=Fe,Co,Mn,V,Ti,Niの何れかである。例えば、酸化マンガン、リン酸鉄リチウム、チタン酸リチウム、コバルト酸リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸鉄マンガンリチウムが使用できる。
【0020】
本発明にかかる蓄電デバイスの電極に用いる金属化合物粒子群の製造方法は、次の工程を有するものである。
【0021】
(1)金属化合物粒子の前駆体とカーボン源とを複合化して第一の複合材料を得る工程
(2)前記第一の複合材料を非酸化雰囲気下で熱処理することによって、金属化合物粒子を生成し、該金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料を得る工程
(3)前記第二の複合材料を酸素雰囲気下で熱処理することによって、カーボンを除去して金属化合物粒子群を得る工程
【0022】
(1)第一の複合材料を得る工程
この第一の複合材料を得る工程では、金属化合物粒子の前駆体とカーボン源とを複合化して第一の複合材料を得る。
【0023】
金属化合物粒子の前駆体は、熱処理工程によって金属化合物粒子が生成される前の物質を言う。例えば、Mβγもしくはその構成化合物(Mβγのそれぞれの範囲は、金属化合物粒子と同様)であり、さらにこのMβγもしくはその構成化合物にリチウム源を加えたものを含むものである。
【0024】
金属化合物粒子の材料源としては、粉体であっても溶液に溶けた状態であってもよい。リン酸鉄リチウムの場合は、例えば、酢酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)等のFe源と、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸源とクエン酸、リンゴ酸、マロン酸等のカルボン酸を材料源として、金属化合物粒子の前駆体を生成する。
【0025】
チタン酸リチウムの場合は、例えば、チタンアルコキシド等のチタン源、酢酸リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウムなどのリチウム源を材料源として、金属化合物粒子の前駆体を生成する。
【0026】
コバルト酸リチウムの場合は、例えば、水酸化リチウム一水和物、酢酸リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウムなどのリチウム源と、酢酸コバルト(II)四水和物といった酢酸コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト等のコバルト源を材料源として、金属化合物粒子の前駆体を生成する。
【0027】
本発明のカーボン源は、カーボン自体(粉体)もしくは熱処理によってカーボンとなりうる材料を意味する。カーボン(粉体)としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定なく使用することができる。例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、無定形炭素、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化ケッチェンブラック、メソポーラス炭素、気相法炭素繊維等を挙げることができる。なかでも粒子径がナノサイズの炭素材料が好ましい。
【0028】
熱処理によってカーボンとなりうる材料としては、有機物で、金属化合物粒子の前駆体の表面に堆積するものであり、後の熱処理工程においてカーボンに転化するものである。有機物としては、多価アルコール(エチレングリコールなど)、ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなど)、糖類(グルコースなど)、アミノ酸(グルタミン酸など)などである。
【0029】
これら金属化合物粒子の材料源とカーボン源とを複合化して第一の複合材料を得るものであり、複合材料は、金属化合物粒子の材料源として、溶解したものもしくは粉体のものを用い、カーボン源としては、カーボン(粉体)もしくは熱処理によってカーボンとなりうる物質を用いた複合材料である。
【0030】
この金属化合物粒子の材料源とカーボン源との複合化の手法としては、次のものが挙げられる。
(a)メカノケミカル処理
(b)スプレードライ処理
(c)攪拌処理
【0031】
(a)メカノケミカル処理
メカノケミカル処理としては、溶媒に、金属化合物粒子の材料源の少なくとも1種とカーボン粉体とを添加し、溶媒に材料源を溶解させることで溶液を得る。
【0032】
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない液であれば特に限定なく使用することができ、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを好適に使用することができる。2種以上の溶媒を混合して使用しても良い。
【0033】
金属化合物粒子の前駆体反応が加水分解反応である場合には、その材料源は、金属アルコキシドM(OR)xが挙げられる。また、必要に応じて、溶液に反応抑制剤を添加することもできる。反応抑制剤として該金属アルコキシドと錯体を形成する所定の化合物を添加することにより、化学反応が促進しすぎるのを抑制することができる。金属アルコキシドに、これと錯体を形成する酢酸等の所定の化合物を該金属アルコキシド1モルに対して、1〜3モル添加して錯体を形成することにより、反応を抑制、制御する。金属アルコキシドと錯体を形成することができる物質としては、酢酸の他、クエン酸、蓚酸、ギ酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、プロピオン酸、レプリン酸等のカルボン酸、EDTA等のアミノポリカルボン酸、トリエタノールアミン等のアミノアルコールに代表される錯化剤が挙げられる。
【0034】
この溶液にずり応力と遠心力を加えてメカノケミカル反応によりカーボン粉体の表面に金属化合物粒子の前駆体を結合させる。旋回する反応器内で溶液にずり応力と遠心力とを印加する処理をするもので、反応器としては、特開2007−160151号公報の図1に記載されている、外筒と内筒の同心円筒からなり、旋回可能な内筒の側面に貫通孔が設けられ、外筒の開口部にせき板が配置されている反応器が好適に使用される。上記反応器において、内筒外壁面と外筒内壁面との間隔は、5mm以下であるのが好ましく、2.5mm以下であるのがより好ましい。なお、この薄膜上を生成するために必要な遠心力は1500N(kgms−2)以上、好ましくは70000N(kgms−2)以上である。
【0035】
このように前駆体形成工程を経て、金属化合物粒子の材料源が含有された溶液にずり応力と遠心力が加えられることで、金属化合物粒子の前駆体とカーボン粉体が複合化した第一の複合材料を生成することができる。
【0036】
(b)スプレードライ処理
スプレードライ処理としては、溶媒に、金属化合物粒子の材料源の少なくとも1種とカーボン粉体とを含有する溶液を準備する。
【0037】
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない液であれば特に限定なく使用することができ、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを好適に使用することができる。2種以上の溶媒を混合して使用しても良い。また、金属化合物粒子の材料源としては、金属アルコキシドM(OR)xが好ましい。
【0038】
溶媒には、金属化合物粒子の材料源及びカーボン粉体が添加され、必要に応じて攪拌して溶液が調整される。スプレードライ処理に際しては、まずは、溶媒にカーボン粉体を分散させ、その後に金属化合物粒子の材料源を分散させるとよい。分散手法としては、超遠心処理(溶液中で粉体にずり応力と遠心力を加える処理)、ビーズミル、ホモジナイザーなどによってカーボン粉体を溶媒中に高分散させるとよい。
【0039】
このカーボン粉体が分散された溶媒に、金属化合物粒子の材料源として金属アルコキシドを溶解させて得た溶液を基板上にスプレードライ処理を行い、金属アルコキシドが酸化処理されて金属化合物粒子の前駆体が生成され、この前駆体とカーボン粉体とが複合化されて第一の複合材料が得られる。なお、必要に応じてこの複合材料に、さらに金属化合物粒子の材料源を添加して、第一の複合材料としても良い。スプレードライ処理は、0.1Mpa程度の圧力でカーボン粉体が焼失しない温度で処理される。スプレードライ処理によって一次粒子の平均粒子径が5〜300nmの範囲の金属化合物粒子の前駆体が得られる。
【0040】
(c)攪拌処理
攪拌処理としては、金属化合物粒子の材料源として少なくとも1種の粉体と、カーボン源である熱処理によってカーボンになりうる材料を溶媒に添加し、この溶液を攪拌し、金属化合物粒子の材料源の表面にカーボンになりうる材料を堆積させた第一の複合材料を得る。材料源となる粉体は、予め粉砕等を行いナノレベルの微小粒子とすることが好ましい。熱処理によってカーボンになりうる材料として、ポリマーを用いる場合は、予めポリマーを添加した溶媒に金属化合物粒子の材料源を添加し、この溶液を攪拌するとよい。ポリマーは、金属化合物粒子の材料源となる粉体の重量を1とした場合に、0.05〜5の範囲となるように調整するとよい。また、微小粒子の平均二次粒子径としては、500nm以下、好ましくは100nm以下とすることで、粒子径の小さな金属化合物粒子群を得ることができる。また、溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好適に使用できる。
【0041】
(2)第二の複合材料を得る工程
この第二の複合材料を得る工程では、前記第一の複合材料を非酸化雰囲気下で熱処理することによって、金属化合物粒子を生成し、該金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料を得る。非酸化雰囲気下とするのは、カーボン源の燃失を抑制するためであり、非酸化雰囲気としては不活性雰囲気と飽和水蒸気雰囲気が挙げられる。
【0042】
この第二の複合材料を得る工程では、金属化合物粒子の前駆体とカーボン源とが複合化された第一の複合材料を真空中、窒素もしくはアルゴン雰囲気などの非酸化雰囲気下で熱処理を施す。この熱処理によって金属化合物粒子の前駆体が成長し、カーボン源と複合化された状態で金属化合物粒子が生成される。また非酸化雰囲気下での熱処理のため、カーボン源は燃失されにくく金属化合物粒子と複合化した状態として存在し、金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料が得られる。図1(a)の概念図に示すように、第二の複合材料は、カーボン(例えばカーボンナノファイバ:CNF)上に金属化合物粒子(例えばチタン酸リチウム:LTO)が担持された複合材料であり、CNF上に、LTOがナノサイズの粒子となって分散して存在しているものと考えられる。
【0043】
第一の複合材料に含まれるカーボン源としてカーボン粉体を用いた場合には、この非酸化雰囲気下での熱処理によって、カーボン粉体の表面の金属化合物粒子の前駆体が、非酸化雰囲気下での熱処理の際に反応し、カーボン粉体の表面上で成長して格子接合することとなり、カーボン粉体と金属化合物粒子が一体化する。また、第一の複合材料に含まれるカーボン源として熱処理によってカーボンとなりうる材料を用いた場合には、この非酸化雰囲気下での熱処理によって、金属化合物粒子の前駆体の表面上で該材料が炭化されてカーボンが生成され、このカーボンと熱処理によって成長した金属化合物粒子とが複合化された第二の複合材料が生成される。ここで第二の複合材料に含まれる「カーボン」は、カーボン粉体もしくは熱処理によって生成されたカーボンを示す。
【0044】
この非酸化雰囲気下での熱処理として、不活性雰囲気下で熱処理を行う場合は、カーボン源の燃失を防止するためにその温度は、600〜950℃の範囲で、1分〜20分間保持される。この範囲であると良好な金属化合物粒子が得られ、良好な容量、レート特性が得られる。特に金属化合物粒子がチタン酸リチウムである場合は、熱処理温度が600℃未満であると、チタン酸リチウムの生成が十分でないため好ましくなく、熱処理温度が950℃を超えると、チタン酸リチウムが凝集し且つチタン酸リチウム自体が分解するため好ましくない。なお、不活性雰囲気下としては特には窒素雰囲気での熱処理が好ましく、金属化合物粒子に窒素がドープされて金属化合物粒子の導電性が高まり、この結果急速充放電特性が向上する。
【0045】
また非酸化雰囲気下での熱処理として、飽和水蒸気雰囲気下で熱処理を行う場合は、カーボン源の焼失を防止するためにその温度は、110〜300℃の範囲で、1〜8時間保持される。この範囲であると良好な金属化合物粒子が得られ、良好な容量、レート特性が得られる。特に金属化合物粒子がコバルト酸リチウムである場合は、熱処理温度が110℃未満であると、コバルト酸リチウムの生成が十分でないため好ましくなく、熱処理温度が300℃を超えると、カーボン源が焼失するとともに、コバルト酸リチウムが凝集するため好ましくない。
【0046】
この第二の複合材料を得る工程で得られた金属化合物粒子の一次粒子の平均粒子径は、5〜300nmの範囲を含むことが好ましい。このようなナノサイズの微小粒子とすることで後述する金属化合物粒子群の空隙率を増加させることができると共に、金属化合物粒子群に存在する微細な孔の数を増やすことができる。また、得られた第二の複合材料は、金属化合物粒子とカーボンとの重量比で95:5〜30:70の範囲が好ましく、このような範囲とすることで、最終的に得られた金属化合物粒子群の空隙率を増加させることができる。なお、このような範囲にするには、予め金属化合物粒子の材料源とカーボン源の混合比を調整しておけばよい。
【0047】
なお、この第二の複合材料を得る工程の前に、第一の複合材料を200〜500℃の温度範囲で、1〜300分間保持する予備熱処理を施すとよい。この予備加熱処理では非酸化雰囲気下が望ましいが、カーボン源が焼失しない300℃未満であれば、酸素雰囲気下で行っても良い。この予備加熱処理によって得られる金属化合物粒子によっては、第一の複合材料に存在する不純物を除去することができ、また金属化合物粒子の前駆体がカーボン源に均一に付着された状態を得ることができる。また、第一の複合材料に含まれる金属化合物粒子の前駆体の生成を促進させる効果もある。
【0048】
(3)金属化合物粒子群を得る工程
この金属化合物粒子群を得る工程では、前記第二の複合材料を酸素雰囲気下で熱処理することによって、カーボンを除去して金属化合物粒子群を得る。
【0049】
この金属化合物粒子群を得る工程では、ナノサイズの金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料を酸素雰囲気下で熱処理を施す。この熱処理によってカーボンが焼失して除去され、加熱前に存在したカーボンの部位が空隙となる。またこの熱処理によって金属化合物粒子同士が反応して結合する。これによって、カーボン由来の空隙と、金属化合物粒子同士の結合とが相まって、図1(b)の概念図に示すように金属化合物粒子の三次元網目構造を構成することになる。この金属化合物粒子群は、適度な空隙を有するため、蓄電デバイスを構成した際の電解液が含浸されて電極内での電解液中のイオンの移動が円滑となり、また金属化合物同士の結合によって電子の移動が速くなり、両者の相乗作用により電極の抵抗が下がり、レート特性を向上するものと考えられる。なお、カーボン源を用いないで作製する金属化合物粒子群では、図2の概念図に示すように、粗大な金属化合物同士が凝集し且つ空隙も少ないものである。
【0050】
この熱処理では、カーボンを除去するために、また金属化合物粒子同士を結合させるためにその温度は、350以上800℃以下、好ましくは400以上600℃以下の範囲で、0.25以上24時間以下保持することが好ましく、更に好ましくは0.5以上10時間以下保持する。特に、不活性雰囲気下の場合は、第二の複合材料を得る工程の熱処理温度よりも低い温度に設定することが好ましい。350℃未満の温度は、第二の複合材料に含まれるカーボンの除去が不十分となり、800℃を超える温度では、金属化合物粒子の凝集が進み金属化合物粒子群の空隙が減少する。また、400以上600℃以下の温度範囲であると、金属化合物粒子は、一次粒子の平均粒子径が5〜300nmに維持され、この熱処理前の金属化合物粒子の一次粒子の平均粒子径からの粒子成長が抑制される。
【0051】
また、この熱処理温度は、予備加熱工程の温度以上で処理することが好ましい。酸素雰囲気下としては、窒素などとの混合雰囲気でもよく、大気中など酸素が15%以上存在する雰囲気下が好ましい。この酸素雰囲気下での熱処理においては、カーボンの消失によって酸素量が減少するため、熱処理炉内に適宜酸素を供給するとよい。
【0052】
次に、このようにして得られた金属化合物粒子群は、ナノサイズの金属化合物粒子同士が結合して、三次元網目構造を構成しており、ナノサイズの細孔(空隙)が存在している。この金属化合物粒子群の断面における空隙率が7〜50%の範囲が好ましい。空隙率が7%未満では、電解液との接する金属化合物粒子の面積が少なく、電解液中のイオンの移動に影響を与える。また空隙率が50%を超えると、金属化合物粒子同士の結合が粗くなり三次元網目構造を形成しづらくなる。金属化合物粒子は、その一次粒子の平均粒子径が5〜300nmの範囲の粒子を有しており、このような範囲の微小粒子であるため、金属化合物粒子群のナノサイズの細孔が多く得られ、電解液との接する金属化合物粒子の面積を増やし、電解液中のイオンの移動が円滑となる。また、この金属化合物粒子群の細孔を測定したところ、微細な細孔が多く存在する。特に40nm以下の微細な細孔も多く含むものである。
【0053】
例えば一次粒子径の平均粒子径が100nm以下の金属化合物粒子群を窒素ガス吸着測定法にて測定した細孔分布から換算される差分細孔容積においては、10〜40nmの範囲の細孔径における差分細孔容積が0.01cm/g以上の値を有し、特には、0.02cm/g以上の値を有するものであり、電解液との接する金属化合物粒子の面積が増え、このよう電解液との接する金属化合物粒子との面積が多いほど、電極に用いた際のレート特性が向上する。
【0054】
また、例えば一次粒子径の平均粒子径が100nm超の金属化合物粒子群を窒素ガス吸着測定法にて測定した細孔分布から換算される差分細孔容積においては、20〜40nmの範囲の細孔径における差分細孔容積が0.0005cm/g以上の値を有するものであり、電解液との接する金属化合物粒子の面積が増え、このよう電解液との接する金属化合物粒子との面積が多いほど、電極に用いた際のレート特性が向上する。
【0055】
また、この得られた金属化合物粒子群に残存するカーボン量は、金属化合物粒子群に対しての5重量%未満とすることが好ましい。このカーボン量を除去するには、金属化合物粒子群を得る工程の熱処理温度及び処理時間を調整し、第二の複合材料に含まれるカーボンを除去し、カーボンを極めて少ない量にまで制限することで、電極内でのカーボンと電解液との反応が抑制され放置特性が向上し、特には、1重量%未満が好ましい。
【0056】
このようにして得られた金属化合物粒子群は、蓄電デバイスの電極に用いられる。金属化合物粒子群は、所定の溶媒とバインダ、必要に応じて導電助剤となるカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイトなどの導電性カーボンを加えて混練して成型することで、電気エネルギーを貯蔵する電極となる。この電極には電解液が含浸され、所定の容器に収納されて蓄電デバイスとなる。
【実施例】
【0057】
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0058】
(実施例1)
カーボンナノファイバ20gとテトライソプロポキシチタン245gとをイソプロピルアルコール1300gに添加して、テトライソプロポキシチタンをイソプロピルアルコールに溶解させた。チタンアルコキシドとカーボンナノファイバの重量比は、第二の複合材料においてチタン酸リチウムとカーボンナノファイバの重量比が約8:2となるように選択した。得られた液を、外筒と内筒の同心円筒からなり、内筒の側面に貫通孔が設けられ、外筒の開口部にせき板が配置されている反応器の内筒内に導入し、35000kgms−2の遠心力が液に印加されるように内筒を300秒間旋回させて、カーボンナノファイバを液に高分散させた。
【0059】
酢酸165gと酢酸リチウム50gとを、イソプロピルアルコール145gと水150gとの混合溶媒に溶解した。得られた液を上記反応器の内筒内に導入し、溶液を調製した。この溶液に35000kgms−2の遠心力が印加されるように内筒を300秒間旋回させて、外筒の内壁に溶液の薄膜を形成させると共に、溶液にずり応力と遠心力を加えて化学反応を促進させ、チタン酸リチウムの前駆体を高分散状態でカーボンナノファイバ上に担持させた。
【0060】
次いで、上記反応器の内容物を回収し、大気中で溶媒を蒸発させ、さらに100℃で17時間乾燥した。得られたチタン酸リチウムの前駆体を担持させたカーボンナノファイバを、窒素中、400℃で30分の予備熱処理を行い、その後窒素中、900℃で3分間熱処理を行い、一次粒子の平均粒子径が5〜20nmのチタン酸リチウムのナノ粒子がカーボンナノファイバ上に高分散状態で担持された第二の複合材料を得た。
【0061】
得られた第二の複合材料100gを、500℃で6時間の熱処理を施し、カーボンナノファイバを燃失して除去するとともに、チタン酸リチウム粒子を結合させて三次元網目構造のチタン酸リチウム粒子群を得た。
【0062】
(実施例2)
実施例1では、第二の複合材料においてチタン酸リチウムとカーボンナノファイバの重量比を約8:2となるように選択したのに対して、実施例2の金属化合物粒子群では、第二の複合材料においてチタン酸リチウムとカーボンナノファイバの重量比を約7:3となるように選択した以外は、実施例1と同様にしてチタン酸リチウム粒子群を得た。
【0063】
(実施例5)
まず、ケッチェンブラック20gと、Co(CHCOO)・4HOを202gと、HOを3243gとを混合して、上記反応器の内筒内に導入し、混合液に対して50m/sの回転速度で5分間旋回させた。この第1回目のメカノケミカル処理を終えた混合液に対しては、LiHO・HO(65g含有)水溶液3300gを加えて、50m/sの回転速度で5分間旋回させて、第2回目のメカノケミカル処理を行った。このメカノケミカル処理では、66000N(kgms−2)の遠心力が加わっている。この第1,2回目のメカノケミカル処理は、メカノケミカル処理による金属化合物の前駆体をカーボン源に担持させて第一の複合材料を得る工程に対応する。
【0064】
次に、予備加熱処理として、得られた溶液を大気中などの酸化雰囲気中で250℃まで急速加熱し、1時間の間保持することで焼成を行う。焼成後、オートクレーブ内にHOと、焼成によって作製した前駆体と、Hとを加えて、飽和水蒸気中で250℃で6h保持して水熱合成を行いコバルト酸リチウム(LiCoO)とケッチェンブラックの第二の複合材料100gを得た。このときの圧力は39.2気圧である。この水熱合成は、第一の複合材料を非酸化雰囲気下で熱処理することによって、金属化合物粒子を生成し、該金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料を得る工程に対応する。
【0065】
そして、得られた第二の複合材料100gを、500℃で6時間の熱処理を施し、ケッチェンブラックを焼失して除去するとともに、コバルト酸リチウム粒子を結合させて三次元網目構造のコバルト酸リチウム粒子群を得た。
【0066】
(従来例1)
水酸化リチウム38g、水800gの水溶液に、ナノサイズ(200nm程度)となるように粉砕した酸化チタン(TiO)87gを添加して攪拌して溶液を得る。この溶液をスプレードライ装置に導入し噴霧乾燥して乾燥物を得た。得られた乾燥造粒物を大気中で700℃の温度で3時間熱処理を行いチタン酸リチウム粒子群を得た。すなわち、従来例1は、カーボン未使用で生成したチタン酸リチウム粒子群である。
【0067】
(従来例2)
炭酸リチウム(LiCO)を45gと四酸化三コバルト(Co)を85gの粉末同士を乾式で混合した。得られた混合物を水(HO)と共にオートクレーブに投入した。オートクレーブ内において、飽和水蒸気中で250℃で6時間保持した。その結果、コバルト酸リチウム(LiCoO)の粉末を得た。すなわち、従来例2は、カーボン未使用で生成したコバルト酸リチウム粒子群である。
【0068】
(キャパシタ評価)
次いで、得られた実施例1,2及び従来例1のチタン酸リチウム粒子群と、得られた実施例5及び従来例2のコバルト酸リチウム粒子群に対して、5重量%のポリフッ化ビニリデンと適量のN−メチルピロリドンを加えて十分に混練してスラリーを形成し、アルミニウム箔上に塗布し、乾燥して、各々電極を得た。さらに、得られた電極を用いて、1MのLiBFのプロピレンカーボネート溶液を電解液とし、対極に活性炭電極を用いたラミネート封止のキャパシタを各々作成した。
【0069】
得られた実施例1、2及び従来例1のキャパシタについて、図3は、レートと容量維持率との関係を示した図である。図4は、得られた実施例5及び従来例2のキャパシタについて、レートと容量維持率との関係を示した図である。図3及び4から分かるように、実施例1,2,5のキャパシタは高レートにおいても良好なレート特性が得られることが分かる。特に実施例1,2,5のキャパシタでは、電極に導電助剤となる導電性カーボンを含めていなくてもこのように良好なレート特性が得られるのは本発明の金属化合物粒子群の特徴でもある。
【0070】
次に、得られたチタン酸リチウム粒子群について観察する。図5(a)は、実施例1のチタン酸リチウム粒子群の断面を写した明視野STEM写真であり、図5(b)は、従来例1のチタン酸リチウム粒子群の断面を写した明視野STEM写真である。図6は、実施例5のコバルト酸リチウム粒子群の断面を写した明視野STEM写真である。図5(a)では、チタン酸リチウム粒子群の断面には、粒子群の中心も含め、多くの空隙が存在していることが分かる(断面内において、チタン酸リチウム粒子がグレーを示し、空隙は黒を示す)。また、図6では、コバルト酸リチウム粒子群の断面も実施例1と同様に、粒子群の中心も含め、多くの空隙が存在していることが分かる。これに対して従来例1のチタン酸リチウム粒子群では、空隙はほとんどなく、また粒子群の外周近辺に僅かに見られる。
【0071】
また、図7は、実施例1及び従来例1のチタン酸リチウム粒子群をさらに拡大した断面の明視野STEM写真である。また、図8は、実施例3のコバルト酸リチウム粒子群をさらに拡大した断面の明視野STEM写真である。図7(a)の実施例1のチタン酸リチウム粒子群、及び図8の実施例5のコバルト酸リチウム粒子群には、双方とも、粒子間の粒界がほとんど見えず(グレーが粒子を示す)、粒子同士が結合して三次元網目構造を形成している。また、チタン酸リチウム粒子はその一次粒子の粒子径が主に100nm以下であることが分かる。これに対して図7(b)の従来例1の金属化合物粒子群では、粒子間の輪郭が見えており、粒界が存在していることが分かる。またその粒子径も主に200nm以上であることが分かる。
【0072】
次に、実施例1、実施例5及び従来例1の得られたチタン酸リチウム粒子群とコバルト酸リチウム粒子群の空隙状態を確認する。図5に示すチタン酸リチウム粒子群の断面における空隙の面積を画像処理により分析した。図9に示すように、チタン酸リチウム粒子群における白色をチタン酸リチウム粒子とし、グレーを空隙として画像処理し、チタン酸リチウム粒子群における空隙が占める面積率を計算した。
【0073】
その結果、図9(a)の実施例1で得られたチタン酸リチウム粒子群の空隙率は、22%であった。また、図6に示すコバルト酸リチウム粒子群の断面における空隙の面積も実施例1と同様に画像処理により分析した。その結果、図6の実施例5で得られたコバルト酸リチウム粒子群の空隙率は、9.9%であった。これに対して図9(b)の従来例1で得られたチタン酸リチウム粒子群の空隙率は、4%であった。このように実施例1及び実施例5のチタン酸リチウム粒子群及びコバルト酸リチウム粒子群は高い空隙率を備えていることが分かる。
【0074】
また、図10は、この得られたチタン酸リチウム群の表面を写した10万倍のSEM写真である。図10から、チタン酸リチウム群の表面もナノレベルの微細な粒子群であることが分かる。
【0075】
次に、この得られた実施例1、2及び従来例1のチタン酸リチウム粒子群の細孔分布を測定した。また、得られた実施例5及び従来例2のコバルト酸リチウム粒子群の細孔分布を測定した。測定方法としては、窒素ガス吸着測定法を用いる。具体的には、金属酸化物粒子表面及び、金属酸化物粒子表面と連通した内部に形成された細孔に窒素ガスを導入し、窒素ガスの吸着量を求める。次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温曲線を得る。この実施例では、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置 BELSORP-max-N (日本ベル株式会社製)を用いて測定した。図11及び図12は、横軸に細孔径を取り、測定ポイント間の細孔容積の増加分を縦軸に取った差分細孔容積分布であり、図11は実施例1、2及び従来例1のチタン酸リチウム粒子群を示し、図12は実施例5及び従来例2のコバルト酸リチウム粒子群を示す。
【0076】
図11から分かるように、実施例1,2のチタン酸リチウム粒子群は、従来例1のチタン酸リチウム粒子群に対して、差分細孔容積が大きいことが分かる。このような細孔径の小さい範囲(100nm)において差分細孔容積が大きいため、チタン酸リチウム粒子群の内部に電解液が侵入し、電解液と接するチタン酸リチウム粒子の面積が大きいことが分かる。特に10〜40nmの範囲の細孔径における差分細孔容積が0.01cm/g以上の値を有し、さらには、0.02cm/g以上の値が得られている。
【0077】
また、図12から分かるように、実施例5のコバルト酸リチウム粒子群は、従来例2のコバルト酸リチウム粒子群に対して、差分細孔容積が大きいことが分かる。このような細孔径の小さい範囲(100nm)において差分細孔容積が大きいため、コバルト酸リチウム粒子群の内部に電解液が侵入し、電解液と接するコバルト酸リチウム粒子の面積が大きいことが分かる。特に20〜40nmの範囲の細孔径における差分細孔容積が0.0005cm/g以上の値が得られている。
【0078】
尚、実施例1、2のチタン酸リチウム粒子群と実施例5のコバルト酸リチウム粒子群の差分細孔容積の差異は、実施例1、2のチタン酸リチウム粒子群の平均一次粒子径が100nm以下であること、それに対して実施例5のコバルト酸リチウム粒子群の平均一次粒子径が100nmを超えることに起因すると考えられる。いずれにしても、カーボン未使用で生成した場合と比べて、差分細孔容積が大きくなっている。
【0079】
次に本発明の金属化合物粒子群の残存カーボン量を確認する。
【0080】
(実施例1−1)
実施例1では、第二の複合材料100gを500℃で6時間の熱処理を施したのに対して、実施例1−1の金属化合物粒子群では、第二の複合材料100gを、350℃で3時間の熱処理を施した以外は、実施例1と同様にしてチタン酸リチウム粒子群を得た。
【0081】
(実施例1−2)
実施例1では、第二の複合材料100gを500℃で6時間の熱処理を施したのに対して、実施例1−2の金属化合物粒子群では、第二の複合材料100gを、300℃で1時間の熱処理を施した以外は、実施例1と同様にしてチタン酸リチウム粒子群を得た。
【0082】
得られた実施例1、実施例1−1及び実施例1−2のチタン酸リチウム粒子群の残存カーボン量を測定した。なお、TG−DTA測定(示差熱-熱重量同時測定)を用いる。またこれらの実施例の60℃放置試験を行った結果を表1に示す。なお、放置試験条件は、各キャパシタを2.8Vで充電した状態で30分間保持し、その後60℃の雰囲気で1500時間放置した。このキャパシタを再度充放電した際の放電容量を、試験前の放電容量の割合として算出した値である。表1に示すように、カーボンの残存量は5重量%未満が好ましく、特にはカーボンの残存量が1重量%以下であった実施例1が良好な結果が得られている。
【0083】
(表1)
【0084】
次に本発明の金属化合物粒子群の導電性について確認する。本発明の金属化合物粒子群は、金属粒子同士が結合しているため、粒子群の導電性は高いものである。図13では、実施例1の金属化合物粒子群と、参考例1として、実施例1で得られた金属化合物粒子群をボールミルにて1分間粉砕して得た金属化合物粒子群を用いて、電極シートを作製し、この電極の導電率を測定した結果を示す。
【0085】
電極シートの作製手順としては、実施例1及び参考例1のチタン酸リチウム粒子群とバインダとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを10:1の重量割合で混合した混合物に適量のイソプロピルアルコールを混合し、ロールプレスにより、150〜180μmの厚みの電極シートを作製した。この作製した電極シートをステンレスメッシュで挟み込んで作用電極とし、セパレータを介して対極としてリチウム箔を用い、電解液として、1MのLiBFのプロピレンカーボネート溶液を用いた。測定条件としては、約0.05Cの電流で充電を行い、適時電極シートのインピーダンスを測定した。なお、チタン酸リチウム粒子群の利用率(SOC)は、満充電に要する時間からを算出した。
【0086】
図13で示すように、実施例1の電極シートは、利用率に関わらず良好な導電率を示している。これに対して、実施例1のチタン酸リチウム粒子群を粉砕して得た参考例1では、その導電率は低下していることが分かる。これは、粉砕によってチタン酸リチウム粒子群の三次元網目構造が部分的に崩れることで粒子間の電子パスが減少し、抵抗が増加しているものと考えられる。つまり、実施例1のチタン酸リチウム粒子群は、粒子同士が結合した三次元網目構造が形成されていることを示している。
【0087】
(実施例3)
ケッチェンブラック20gをイソプロピルアルコール1200gに添加した溶液を超遠心処理によって分散させた後、テトライソプロポキシチタン247gを添加し溶解させて溶液を得た。チタンアルコキシドとケッチェンブラックの重量比は、第二の複合材料においてチタン酸リチウムとケッチェンブラックの重量比が約8:2となるように選択した。得られた溶液をスプレードライ装置(ADL−311:ヤマト科学株式会社製)に導入し、基板上に噴霧乾燥(圧力:0.1Mpa、温度150℃)して乾燥物を得る。この乾燥物を、酢酸リチウム52gが溶解した水200gに添加して攪拌して乾燥して混合物を得た。この混合物は、金属アルコキシドが酸化処理されて生成された金属化合物粒子の前駆体とカーボン粉体とが複合化された第一の複合材料である。
【0088】
次いで、得られた第一の複合材料100gを、窒素中、400℃で30分の予備熱処理を行い、その後窒素中、900℃で3分間熱処理を行い、一次粒子の平均粒子径が5〜20nmのチタン酸リチウムのナノ粒子がケッチェンブラック上に高分散状態で担持された第二の複合材料を得た。
【0089】
得られた第二の複合材料100gを、大気中500℃で6時間の熱処理を施し、カーボンナノファイバを燃失して除去するとともに、チタン酸リチウムを結合させて三次元網目構造のチタン酸リチウム粒子群を得た。得られた粒子群の金属化合物粒子の一次粒子の平均粒子径は5〜100nmであった。またこの金属化合物粒子群のカーボンの残存量を測定したところ、1重量%以下であった。
【0090】
(実施例4)
ナノサイズ(平均粒子径5−20nm)の酸化チタン(TiO)87gと、ポリビニルアルコール87gと酢酸リチウム60gを水800gに添加した。この溶液を乾燥して得られた金属化合物粒子の前駆体の表面にポリビニルアルコールが堆積した第一の複合材料を得た。
【0091】
次いで、得られた第一の複合材料100gを、窒素中、400℃で30分の予備熱処理を行い、その後窒素中、900℃で3分間熱処理を行い、5〜20nmのチタン酸リチウムのナノ粒子がポリビニルアルコール由来のカーボン上に高分散状態で担持された第二の複合材料を得た。この第二の複合材料において、チタン酸リチウム粒子とカーボンの重量比は約9:1であった。
【0092】
得られた第二の複合材料100gを、大気中500℃で6時間の熱処理を施し、カーボンを燃失して除去するとともに、チタン酸リチウムを結合させて三次元網目構造のチタン酸リチウム粒子群を得た。得られた粒子群の金属化合物粒子の一次粒子の平均粒子径は5〜100nmであった。またこの金属化合物粒子群のカーボンの残存量を測定したところ、1重量%以下であった。
【0093】
(ハーフセルでの評価)
次いで、得られた実施例3,4及び従来例1のチタン酸リチウム粒子群とこの粒子群に対して5重量%のポリフッ化ビニリデンと適量のN−メチルピロリドンを加えて十分に混練してスラリーを形成し、アルミニウム箔上に塗布し、乾燥して、電極を得た。さらに、得られた電極を用いて、1MのLiBFのプロピレンカーボネート溶液を電解液とし、対極にリチウム板を用いたラミネート封止のハーフセルを作成した。
【0094】
得られた実施例3、4及び従来例1のハーフセルについて、充放電電流と容量維持率との関係を図14に示す。図14から分かるように、実施例3、4のハーフセルは高レートにおいても良好なレート特性が得られることが分かる。特に実施例3、4のハーフセルでは、電極に導電性カーボンを含めていなくてもこのように良好なレート特性が得られることは本発明の金属化合物粒子群の特徴でもある。
【0095】
次に、この得られた実施例4のチタン酸リチウム粒子群の細孔分布を測定した。測定方法としては、窒素ガス吸着測定法を用いる。測定条件は図11及び図12にて示したものと同様として、差分細孔容積分布を求めたものを図15に示す。
【0096】
図15から分かるように、実施例4のチタン酸リチウム粒子群は、実施例1、2と同様に、差分細孔容積が大きいことが分かる。このような細孔径の小さい範囲(100nm)において差分細孔容積が大きいため、チタン酸リチウム粒子群の内部に電解液が侵入し、電解液と接するチタン酸リチウム粒子の面積が大きいことが分かる。特に10〜40nmの範囲の細孔径における差分細孔容積が0.01cm/g以上の値を有しており、その値も0.03cm/gを超えるものである。なお、実施例3のチタン酸リチウム粒子群についても同様に細孔容積分布を求めたところ、実施例1、2と同様に、差分細孔容積が大きいことが分かった(図省略)。特に10〜40nmの範囲の細孔径における差分細孔容積が0.01cm/g以上の値を有しており、その値も0.02cm/gを超えるものであった。
図1
図2
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図15