特許第6363797号(P6363797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6363797光学用粘着剤組成物及び光学用粘着フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363797
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】光学用粘着剤組成物及び光学用粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/26 20060101AFI20180712BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180712BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20180712BHJP
【FI】
   C09J123/26
   C09J11/06
   C09J7/38
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-526953(P2017-526953)
(86)(22)【出願日】2016年11月4日
(65)【公表番号】特表2018-501338(P2018-501338A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】KR2016012706
(87)【国際公開番号】WO2017078488
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2017年5月18日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0155173
(32)【優先日】2015年11月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】クヮン・ス・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ウン・キュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】スン・ウォン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・スン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・グ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】テ・イ・チェ
【審査官】 佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/084349(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/084350(WO,A1)
【文献】 特開平08−188752(JP,A)
【文献】 特開2005−298641(JP,A)
【文献】 特開平07−062312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
C08K 2/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム及びヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムを含む熱硬化性ゴム;及び熱架橋剤を含む光学用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記イソブチレン−イソプレンゴムのイソプレン単位の含量は、イソブチレン単位及びイソプレン単位の総モル数に対し、1モル%以上30モル%以下である、請求項1に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記カルボキシル基及び前記ヒドロキシ基は、各々、前記イソブチレン−イソプレンゴムのイソプレン単位にグラフトされる、請求項1に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム及び前記ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムは、各々、不飽和度が0〜1.0である、請求項1に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム及び前記ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムは、各々、重量平均分子量(Mw)が1万〜100万である、請求項1に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項6】
前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴムのカルボキシル基の含量は、イソブチレン単位及びイソプレン単位の総モル数に対し、1モル%以上30モル%以下である、請求項1に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項7】
前記ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムのヒドロキシ基の含量は、イソブチレン単位及びイソプレン単位の総モル数に対し、1モル%以上30モル%以下である、請求項1に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項8】
前記熱硬化性ゴム100重量部に対して前記熱架橋剤0.05〜5重量部を含む、請求項1に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項9】
前記熱架橋剤は、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤及びそれらの組み合わせからなる群より選択された一つを含む、請求項1に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項10】
前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム:前記ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムの重量比が1:9〜9:1である、請求項1に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項11】
前記光学用粘着剤組成物は、反応促進剤、硬化遅延剤、粘着付与剤及びそれらの組み合わせからなる群より選択された一つをさらに含む、請求項1に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項12】
前記粘着付与剤は、水素化されたジシクロペンタジエン系化合物、水素化されたテルペン系化合物、水素化されたロジン系化合物、水素化された芳香族系化合物及びそれらの組み合わせからなる群より選択された一つを含む、請求項11に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学用粘着剤組成物の熱硬化物を含む粘着剤層を含む光学用粘着フィルム。
【請求項14】
前記粘着剤層のゲル含量は40重量%〜100重量%である、請求項13に記載の光学用粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は2015年11月5日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2015−0155173号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本発明に含まれる。
【0002】
本発明は光学用粘着剤組成物及び光学用粘着フィルムに関し、前記光学用粘着剤組成物及び前記光学用粘着フィルムは硫黄(Sulfur−)またはハロゲンフリー(halogen−free)の硬化が可能で優れた耐化学性、耐透湿性、光学特性及び耐久性を実現するものである。
【背景技術】
【0003】
パッケージングされた電子素子または透明導電性フィルム等を含むタッチ素材は卓越した作動のために優れたタッチ感度を必要とする。さらに、最近では、OLEDまたはタッチスクリーンパネルのような装置の耐久性及び光学特性を向上させるための粘着剤組成物の開発に大いなる関心が集中している。
【0004】
一般に、OLEDまたはタッチスクリーンパネル等に用いられる粘着剤は透明性及び視認性等の光学特性を確保しなければならない。そのために、従来にはアクリル系樹脂をベース樹脂として含む粘着剤が一般的に用いられたが、これは、タッチ感度の側面で補完が必要であると同時に、好適なモジュラス及び光学特性を確保することが重要な問題である。
【0005】
また、アクリル系樹脂の短所を補完するためにゴム系樹脂を用いた粘着剤も開発されており、例えば、大韓民国公開特許公報第2014−0050956号にはゴム系重合体を含む粘着剤組成物が開示され、大韓民国公開特許公報第2014−0049278号にも透湿度を下げるためにブチルゴム系重合体を用いることが開示されている。
【0006】
但し、ゴム系樹脂をベース樹脂として含む粘着剤の場合は、硬化過程を通じて化学的架橋が難しく、物理的架橋を利用しなければならず、その結果、十分な耐久性を確保するための硬化または架橋構造の形成が難しいという問題点がある。また、そのために最終製品の応用が制限的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第2014−0050956号
【特許文献2】大韓民国公開特許公報第2014−0049278号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一実現例は、適切な硬化過程を通じて化学的架橋が可能なゴムを含む光学用粘着剤組成物であって、結果的に優れた長期耐久性、耐透湿性及び耐化学性を確保することができ、優れた光学特性を提供することができる。また、ゴム系粘着剤として低いガラス転移温度(Tg)を通じて優れた柔軟性を実現することができ、耐化学性、耐湿性、電気絶縁性等に優れるため、次世代のディスプレイ装置としてフレキシブル(flexible)電子装置の応用に有利な長所を提供することができる。
【0009】
本発明の他の実現例は、ゴムそのものの化学的架橋及び硬化が可能であるため、電子装置に適用される時、優れた耐久性を実現し、光学特性に優れ、粘着性能及び耐透湿性が向上した光学用粘着フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実現例において、光学装置または電子装置に優れた耐透湿性及び耐化学性を付与し、向上した長期耐久性と光学特性を実現できる光学用粘着剤組成物であって、カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム及びヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムを含む熱硬化性ゴム;及び熱架橋剤を含む光学用粘着剤組成物を提供する。
【0011】
本発明の他の実現例において、前記光学用粘着剤組成物の熱硬化物を含む粘着剤層を含む光学用粘着フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
前記光学用粘着剤組成物は、それを適用した光学装置または電子装置に優れた耐透湿性及び耐化学性を付与し、優れた長期耐久性及び光学特性を実現することができる。
【0013】
また、前記光学用粘着フィルムは、アクリル系樹脂またはゴム系樹脂をベース樹脂とした従来の粘着フィルムに比べて、様々な電子装置に活用可能であり、優れた付着性及び長期信頼性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実現例による光学用粘着フィルムの断面を概略的に示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は後述する実施例を参照すれば明らかになるものである。但し、本発明は以下にて開示される実施例に限定されるものではなく互いに異なる様々な形態で実現されてもよく、本実施例は単に本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるのみである。明細書の全体にかけて同一の参照符号は同一の構成要素を指し示す。
【0016】
図面には複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示す。そして、図面には説明の便宜のために一部の層及び領域の厚さを誇張して示す。
【0017】
また、本明細書において、層、膜、領域、板等の部分が他の部分の「上に」または「上部に」存在するとする時、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その中間にまた他の部分が存在する場合も含む。これに対し、ある部分が他の部分の「真上に」存在するとする時にはその中間に他の部分がないことを意味する。さらに、層、膜、領域、板等の部分が他の部分の「下に」または「下部に」存在するとする時、これは、他の部分の「真下に」存在する場合だけでなく、その中間にまた他の部分が存在する場合も含む。これに対し、ある部分が他の部分の「真下に」存在するとする時にはその中間に他の部分がないことを意味する。
【0018】
本発明の一実現例においては、カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム及びヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムを含む熱硬化性ゴム;及び熱架橋剤を含む光学用粘着剤組成物を提供する。
【0019】
従来の粘着剤に用いられるイソブチレン−イソプレンゴムは硫黄(sulfur)をベースに熱硬化または光硬化を通じて物理的架橋を行うか、ゴムそのものにハロゲン(halogen)を置換して架橋を行った。または、粘着剤にイソブチレン−イソプレンゴムと共に光硬化型単量体を混合して、光照射によって前記光硬化型単量体を硬化させる方法でゴムを含有させた。
【0020】
粘着剤に硫黄(sulfur)またはハロゲン(halogen)成分を用いる場合には、前記粘着剤を最終電子製品に適用した時、腐食等の問題を引き起こすので応用範囲が狭く、光硬化型単量体を用いる場合には、ゴムそのものが硬化に参加しないので、求められる剥離力を確保し難いという問題があった。
【0021】
このような問題を解決するために、本発明は、前記イソブチレン−イソプレンゴムに化学的改質を通じて熱硬化可能な官能基を導入し、それにより、そのもので熱硬化可能な熱硬化性ゴムを含むことができる。具体的には、前記熱硬化可能な官能基はカルボキシル基またはヒドロキシ基である。
【0022】
前記光学用粘着剤組成物は、カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム及びヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムを含む熱硬化性ゴムを含むことによって、硬化のために硫黄(sulfur)またはハロゲン(halogen)成分を用いる必要がないため、被付着剤の腐食に対する腐食の危険がなく、熱硬化を通じてゴムそのものが架橋構造を形成することができるため、その結果、優れた長期耐久性及び耐透湿性を実現すると同時に、求められる剥離力を得るという長所を得ることができる。
【0023】
本発明の一実現例によれば、前記イソブチレン−イソプレンゴムのイソプレン単位の含量は、イソブチレン単位及びイソプレン単位の総モル数に対し、1モル%以上30モル%以下であってもよい。また、前記イソプレン単位の含量は、前記イソブチレン−イソプレンの総単位に対し、1%以上30%以下であってもよい。前記イソプレン単位の含量は、前記イソブチレン−イソプレンゴムの製造時、共重合単量体の全体に対するイソプレン単量体の含量と同一であってもよい。
【0024】
イソプレンの含量がイソブチレン単位及びイソプレン単位の総モル数に対して1モル%以上に調節される場合、カルボキシル基またはヒドロキシ基の導入が容易であり、熱硬化を通じてゴムそのものの架橋を円滑に行うことができる。さらに、前記イソプレンの含量がイソブチレン単位及びイソプレン単位の総モル数に対して30モル%以下に調節される場合、光学用粘着剤組成物の水分透過率及びガス透過率を低く実現することができるため、それを適用した電子装置の腐食を防止することができる。
【0025】
本明細書において、イソブチレン単位及びイソプレン単位は、各々、イソブチレン−イソプレンゴムにおけるイソブチレン繰り返し単位及びイソプレン繰り返し単位を意味することができる。
【0026】
具体的には、前記イソブチレン−イソプレンゴムは、イソブチレン約70モル%〜約99モル%及びイソプレン約1モル%〜約30モル%を含む単量体混合物から形成された共重合体であってもよい。この時、前記イソブチレンの含量が約70モル%未満であり、前記イソプレンの含量が約30モル%超過の場合には、前記光学用粘着剤組成物の水分透過率及びガス透過率が高くなって、それを適用した電子装置の腐食を引き起こす恐れがある。また、前記イソブチレンの含量が約99モル%超過であり、前記イソプレンの含量が約1モル%未満の場合には、前記イソブチレン−イソプレンゴムにカルボキシル基またはヒドロキシ基を導入し難く、その結果、熱硬化を通じてゴムそのものの架橋が十分に行われない恐れがある。
【0027】
本発明の一実現例によれば、前記カルボキシル基及び前記ヒドロキシ基は、各々、イソブチレン−イソプレンゴムのイソプレン単位にグラフトされたものであってもよい。具体的には、前記カルボキシル基及び前記ヒドロキシ基は、各々、前記イソブチレン−イソプレンゴムの主鎖に結合されたものであってもよい。より具体的には、前記カルボキシル基及び前記ヒドロキシ基は、各々、前記イソブチレン−イソプレンゴムの主鎖のうちのイソプレン単位にグラフト結合されたものであってもよい。
【0028】
すなわち、熱硬化可能な官能基がイソブチレン単位でなく、イソプレン単位に導入されたものであってもよい。それにより、前記ゴム成分の不飽和度を最小化することができ、それによって黄変現象を防止することができ、優れた耐透湿性及び粘弾性の特性を確保することができる。また、前記熱硬化可能な官能基がイソプレン単位にグラフトされることによってゴム鎖内にランダムに分布することができ、その結果、効率的な架橋が可能であり、最終フィルムの長期耐久性及び安定した物性の実現が可能な利点を得ることができる。
【0029】
具体的には、前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム及び前記ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムは、各々、不飽和度(Degree Of Unsaturation)が0〜1.0であってもよく、例えば0〜0.5であってもよい。前記不飽和度は化学的構造内に多重結合が含まれる程度を示すものであり、赤外線分光法(IR spectroscopy)や1H NMRによって測定することができる。前記不飽和度が高いほど、多重結合が多く含まれていることを意味する。具体的には、前記不飽和度は、イソプレン単位数に対する多重結合を含む単位の数を意味することができる。例えば、前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴムの繰り返し単位に多重結合がない場合、不飽和度が0である。また、前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴムのイソプレン単位に対して、多重結合を有する繰り返し単位数が半分である場合、不飽和度は0.5である。
【0030】
前記ゴムの不飽和度が前記範囲を満たすことによって、前記光学用粘着剤組成物は優れた耐候性及び耐久性を実現することができ、最も好ましくは、前記不飽和度が0(zero)である。
【0031】
本発明の一実現例によれば、前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム及び前記ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムは、各々、重量平均分子量(Mw)が1万〜100万であってもよく、例えば約15万〜約80万であってもよい。前記熱硬化性ゴムの重量平均分子量が前記範囲を満たすことによって、熱硬化後の架橋構造による物理的な絡み合い領域(physical entanglement site)を十分に確保することができ、前記光学用粘着剤組成物が適用された製品の耐久性を向上させることができる。また、前記光学用粘着剤組成物をコーティングする場合、ディウェッティング(dewetting)問題を防止し、コーティングの均一性を向上させることができる。また、前記粘着剤組成物が適切な粘度を有するようにして、工程条件及び他成分との相溶性の側面で有利である。
【0032】
本発明の一実現例によれば、前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴムは、イソプレン単位にカルボキシル基が結合されたものであってもよい。前記カルボキシル基は、末端にカルボキシル基が結合された直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基がイソプレン単位に結合されたものであってもよい。
【0033】
本発明の一実現例によれば、前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴムのカルボキシル基の含量は、イソブチレン単位及びイソプレン単位の総モル数に対し、1モル%以上30モル%以下であってもよい。すなわち、前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴムは、繰り返し単位の全体モル数に対してカルボキシル基を1モル%〜約30モル%含むことができる。前記イソブチレン−イソプレンゴムにカルボキシル基が前記範囲の含量で導入されることによって、熱硬化を通じて適切な架橋密度を形成することができ、適切なゲル含量を通じて優れた耐久性を実現することができる。
【0034】
本発明の一実現例によれば、前記ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムは、イソプレン単位にヒドロキシ基が結合されたものであってもよい。前記ヒドロキシ基は、イソプロパノールの形態でイソプレン単位に結合されたものであってもよい。
【0035】
本発明の一実現例によれば、前記ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムのヒドロキシ基の含量は、イソブチレン単位及びイソプレン単位の総モル数に対し、1モル%以上30モル%以下であってもよい。すなわち、前記ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムは、繰り返し単位の全体モル数に対してヒドロキシ基を約1重量%〜約30重量%含むことができる。前記イソブチレン−イソプレンゴムにヒドロキシ基が前記範囲の含量で導入されることによって、熱硬化を通じて適切な架橋密度を形成することができ、適切なゲル含量を通じて優れた耐久性を実現することができる。
【0036】
本発明の一実現例によれば、前記光学用粘着剤組成物は、前記熱硬化性ゴム100重量部に対して前記熱架橋剤を0.05〜5重量部で含むことができる。前記熱架橋剤は前記カルボキシル基またはヒドロキシ基と化学的に結合して架橋構造を形成する物質であり、前記熱架橋剤の含量が前記範囲を満たすことによって、前記粘着剤組成物が光学用に好適な架橋密度及びゲル含量を確保することができる。
【0037】
本発明の一実現例によれば、前記熱架橋剤は、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤及びそれらの組み合わせからなる群より選択された一つを含むことができる。例えば、前記熱架橋剤はイソシアネート系架橋剤を含むことができ、この場合、前記カルボキシル基またはヒドロキシ基との反応性に優れて硬化効率が向上する。
【0038】
具体的には、前記イソシアネート系架橋剤は、三官能性イソシアネート化合物を含むことができる。この場合、前記光学用粘着剤組成物が適切なゲル含量を通じて優れた耐久性を実現するのに有利である。
【0039】
前記熱硬化性ゴムは、前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴムまたは前記ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムを含み、例えば、前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴムと前記ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムを共に含むことができる。
【0040】
本発明の一実現例によれば、前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム:前記ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムの重量比は1:9〜9:1であってもよく、具体的には、1:9〜6:4、2:8〜6:4、または3:7〜6:4であってもよい。前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム:前記ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムの重量比が前記範囲を満たすことによって、前記光学用粘着剤組成物の硬化物が適切なゲル含量を確保することができ、浮き上がり現象等による耐久性の低下を防止することができ、ガラス等の基材に対する適切な剥離力を確保することができる。すなわち、前記重量比の範囲を満たすことによって、光学用に好適なゲル含量、優れた耐久性及び粘着性能を全て確保することができる。
【0041】
本発明の一実現例によれば、前記光学用粘着剤組成物は、反応促進剤、硬化遅延剤、粘着付与剤及びそれらの組み合わせからなる群より選択された一つをさらに含むことができる。
【0042】
前記反応促進剤は、熱架橋剤とヒドロキシ基またはカルボキシル基の架橋反応を迅速に進行し反応温度を下げる役割をするものであり、具体的には、スズ(Tin)触媒、ビスマス(Bismuth)触媒、水銀系触媒、アミン系触媒及びそれらの組み合わせからなる群より選択された一つを含むことができる。
【0043】
例えば、前記スズ(Tin)触媒はジブチル錫ジラウレート(dibutyltin dilaurate)、第一錫オクトアート(stannous octoate)及びそれらの組み合わせからなる群より選択された一つを含むことができ、前記水銀系触媒はフェニル水銀ネオデカノエート(phenylmercury neodecanoate)を含むことができ、前記アミン系触媒はトリエチルアミン(triethyl amine)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(1,4−diazabicyclo[2.2.2]octane)及びそれらの組み合わせからなる群より選択された一つを含むことができる。前記種類の反応促進剤を用いる場合、前記熱架橋剤とヒドロキシ基またはカルボキシル基の架橋反応が迅速に行われることができ、反応温度を下げて前記光学用粘着剤組成物の硬化効率が向上する。
【0044】
前記光学用粘着剤組成物が前記反応促進剤を含む場合、前記反応促進剤は、前記熱硬化性ゴム100重量部に対して約0.01〜約5.0重量部で含まれてもよい。前記反応促進剤が前記範囲の含量で含まれることにより、必要のない副反応を引き起こさず、熱架橋剤とヒドロキシ基またはカルボキシル基の架橋反応の速度を効率的に向上させることができ、経済的に有利である。例えば、前記反応促進剤が過剰の量で用いられる場合、反応速度が速すぎて、部分的なゲル化が生じて均一なフィルムの生産に困難がある。
【0045】
前記硬化遅延剤は、最終粘着剤組成物の配合後からフィルムコーティング前ステップまでの反応を抑制する役割をするものであり、具体的には、ケトン系硬化遅延剤を含むことができる。前記種類の硬化遅延剤を用いる場合、最終粘着剤組成物の安定性を維持することができ、フィルムコーティング前ステップまでのポットライフ(pot−life)を十分に確保するという利点を得ることができる。
【0046】
前記光学用粘着剤組成物が前記硬化遅延剤を含む場合、前記硬化遅延剤は、前記熱硬化性ゴム100重量部に対して約0.01〜約5.0重量部で含まれてもよい。前記硬化遅延剤が前記範囲の含量で含まれることによって、最終配合した組成物のゲル化を防止する効果を得ることができる。また、前記硬化遅延剤が過剰の量で用いられる場合には、前記粘着剤組成物の硬化反応を妨害して効果的な架橋を達成できない恐れがある。
【0047】
前記光学用粘着剤組成物は、ゴムを含むもので透湿性が低いため、十分な剥離力及び付着力を確保し難い側面がある。よって、前記光学用粘着剤組成物は粘着付与剤(tackifier)をさらに含むことができる。
【0048】
具体的には、本発明の一実現例によれば、前記粘着付与剤は、水素化されたジシクロペンタジエン系化合物、水素化されたテルペン系化合物、水素化されたロジン系化合物、水素化された芳香族系化合物、水素化された石油系化合物及びそれらの組み合わせからなる群より選択された一つを含むことができる。前記粘着付与剤は、水素化された構造を有する化合物を含むことによって、透明性を実現するのに有利であり、熱硬化時に熱エネルギーの影響を少なめに受けて優れた付着力及び剥離力を実現することができる。
【0049】
例えば、前記粘着付与剤は、水素化されたジシクロペンタジエン系化合物または水素化されたロジン系化合物を含むことができ、この場合、特にタック(tack)性能の付与及び光透過率及びヘイズ等の光学特性が向上する効果を得ることができる。
【0050】
前記水素化された粘着付与剤は部分水素化または完全水素化されたものであってもよい。具体的には、前記水素化された粘着付与剤は水素化率が約60%以上であってもよく、例えば100%であってもよい。前記水素化率が約60%未満の場合には、分子内に二重結合を多く含むようになって、前記粘着剤組成物から形成された粘着剤層の視認性及び透明性が低下する恐れがあり、前記二重結合が熱エネルギーを吸収する傾向が大きくなることによって、硬化のための熱エネルギー照射時にそれを吸収し、その結果、粘着性及び剥離力が不均一になるという問題が発生する。
【0051】
また、前記粘着付与剤は軟化点が約80℃〜約150℃であってもよく、具体的には約80℃〜約130℃であってもよく、より具体的には約90℃〜約120℃であってもよい。「軟化点」とは、一般的に物質に熱を加えた時、熱によって変形または軟化を引き起こし始める温度を言う。前記粘着付与剤の軟化点が約80℃未満の場合には、比較的に低温で粘着付与剤が軟化するため、それを含む粘着剤の高温信頼性が低下するという問題が発生し、前記粘着剤を用いて粘着フィルムを製造した時に高温で流通及び保管が難しいという問題が発生し、約150℃超過の場合には、常温で粘着剤の粘着増進効果を実現し難いという問題点があり、微量の添加だけで粘着剤がハード(hard)になる問題点が発生する恐れがある。
【0052】
前記光学用粘着剤組成物が前記粘着付与剤を含む場合、前記粘着付与剤は、前記熱硬化性ゴム100重量部に対して約10〜約70重量部で含まれてもよい。前記粘着付与剤が前記範囲の含量で用いられることによって、前記光学用粘着剤組成物の基材に対する剥離力が向上する。
【0053】
本発明の一実現例によれば、前記光学用粘着剤組成物は追加の光硬化性の成分を含まないものであってもよい。具体的には、前記光学用粘着剤組成物は、カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴムまたはヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムを含む熱硬化性ゴムを含むことにより、追加の光硬化性の成分を含まなくてもよい。
【0054】
従来のベース樹脂としてイソブチレン−イソプレンゴム成分を用いた粘着剤組成物の場合は、イソブチレン−イソプレンゴム成分が硬化反応に直接参加しないため、光硬化または熱硬化のために追加の成分が必要であった。例えば、前述したように、硫黄(sulfur)をベースに熱硬化または光硬化を通じて物理的架橋を行うか、ゴムそのものにハロゲン(halogen)を置換して架橋を行った。または、粘着剤にイソブチレン−イソプレンゴムと共に光硬化型単量体を混合して、光照射によって前記光硬化型単量体を硬化させる方法でゴムを含有させた。
【0055】
粘着剤に硫黄(sulfur)またはハロゲン(halogen)成分を用いる場合には、前記粘着剤を最終電子製品に適用した時、腐食等の問題を引き起こすので応用範囲が狭く、光硬化型単量体を用いる場合には、ゴムそのものが硬化に参加しないので剥離力が低下するかまたは耐久性が良くないという問題があった。
【0056】
しかし、本発明の前記熱硬化性ゴムは、カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴムまたはヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムを含むことによってゴムそのものが硬化に参加することができ、それにより、追加の光硬化性の成分を必要とせず、剥離力及び耐久性の確保の側面で有利な利点を得ることができる。
【0057】
また、本発明の前記光学用粘着剤組成物は、熱硬化または光硬化のための追加の硫黄(sulfur)またはハロゲン(halogen)成分を含まなくてもよい。それにより、前記光学用粘着剤組成物は、電子製品または光学装置等に適用した時に腐食等を引き起こさないため、優れた長期耐久性を実現することができる。
【0058】
本発明の他の実現例は、前記光学用粘着剤組成物の熱硬化物を含む粘着剤層を含む光学用粘着フィルムを提供する。前記光学用粘着フィルムはディスプレイ、電子装置等に適用されるものであり、前記光学用粘着剤組成物の熱硬化物を含む粘着剤層を有することによって優れた光学特性及び耐久性を示すことができる。
【0059】
前記粘着剤層は前記光学用粘着剤組成物の熱硬化物を含み、これは前記光学用粘着剤組成物に熱エネルギーを加えて硬化させることによって製造され、この時、前記光学用粘着剤組成物内のゴムのカルボキシル基またはヒドロキシ基が熱架橋剤と共に架橋構造を形成して硬化される。
【0060】
前記粘着剤層のゲル含量は約40重量%〜約100重量%、または約55重量%〜約100重量%であってもよく、例えば約60重量%〜約90重量%であってもよい。前記ゲル含量が前記範囲を満たすことによって、前記粘着剤層が優れた段差吸水性及び付着性を示すことができ、ディスプレイ、電子装置等に適用されて優れた耐久性を実現することができる。
【0061】
前記粘着剤層は前記光学用粘着剤組成物の熱硬化物を含み、前記光学用粘着剤組成物は前記熱硬化性ゴムを含有するものであって、それにより、優れた耐透湿性、向上した耐久性及び優れた光学特性を同時に実現することができる。
【0062】
具体的には、前記粘着剤層はガラス基材に対する剥離力が約600g/in以上、または約950g/in以上であってもよく、例えば約950g/in〜約2,500g/inであってもよい。それと共に、前記粘着剤層は厚さ50μmにおける透湿度(WVTR)が10g/m・24hr以下であってもよく、例えば、約7g/m・24hr以下であってもよく、例えば、約0g/m・24hr超過、約7g/m・24hr未満であってもよい。前記粘着剤層の前記範囲の剥離力及び前記範囲の透湿度を同時に満たすことによって、前記粘着フィルムを適用したディスプレイまたは電子装置に優れた長期耐久性を付与することができる。
【0063】
また、前記粘着剤層は、光透過率が約90%以上であってもよく、ヘイズが約2.5%未満、例えば約2.0%未満であってもよい。前記粘着剤層が前記範囲の光透過率及びヘイズを満たすことによって、ディスプレイまたは電子装置の視認性が求められる部品に有用に適用されることができ、優れた視認性を示すことができる。
【0064】
なお、前記粘着剤層は60℃〜120℃の高温で粘弾性比(=粘性比:弾性比)が約30%以上であってもよい。前記粘着剤層が高温で前記範囲の粘弾性比を有することにより、優れた粘着性を示すと同時に気泡の発生または浮き上がり現象等を防止することができる。
【0065】
また、前記粘着剤層はガラス転移温度(Tg)が約−60℃〜約−40℃であってもよい。前記粘着剤層のガラス転移温度が前記範囲を満たすことによって、剥離力が向上し、タック(tack)が増加する。
【0066】
本発明の一実現例によれば、前記粘着剤層は約20℃〜約30℃の常温で貯蔵弾性率が約0.15MPa〜約0.25MPaであってもよい。前記粘着剤層が常温で前記範囲の貯蔵弾性率を満たすことによって、気泡及び浮き上がり現象が発生しない優れた耐久性を実現することができ、向上した段差吸収性能を確保することができる。
【0067】
前記粘着剤層は、前記光学用粘着剤組成物から形成され、ゲル含量、ガラス基材に対する剥離力、透湿度、光透過率及びヘイズが全て前述した各々の範囲を同時に満たす場合に最も好ましい。これは、前記光学用粘着剤組成物内に含まれている前記熱硬化性ゴムを制御することによって達成され、具体的には、カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム及びヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムを適切な重量比で配合することによって調節される。
【0068】
本発明の一実現例によれば、前記粘着剤層の一面または両面に積層された離型フィルム層を含むことができる。
【0069】
図1は、本発明の一実現例による光学用粘着フィルム100の断面を概略的に示すものである。図1を参照する時、前記光学用粘着フィルム100は前記粘着剤層120を含み、前記粘着剤層120の一面または両面に積層された離型フィルム層110を含むことができる。
【0070】
前記離型フィルム層は、前記光学用粘着フィルムを最終製品に適用する時に剥離して除去される層であって、前記粘着剤層が最終製品においてどの位置に配置されるかに応じて前記粘着剤層の両面または一面に形成されることができる。
【0071】
前記離型フィルム層は基材フィルムの一面に離型剤が塗布された構造を有することができる。この時、前記離型フィルム層は、前記離型剤が塗布された面が前記粘着剤層に接するように配置されることができる。
【0072】
この時、前記基材フィルムは特に制限されないが、例えば、前記光学用粘着剤組成物の熱硬化のために照射される熱エネルギーに対して損傷せず、前記光学用粘着フィルムの流通及び裁断を有利にするために、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることができる。
【0073】
前記離型剤は特に制限されないが、前記光学用粘着剤組成物から形成された粘着剤層と適切な剥離力を確保して離型フィルム層の除去を容易にし、前記粘着フィルムを最終製品に適用時に残渣を残さないようにするために、シリコン系を用いることが有利である。
【実施例】
【0074】
以下では本発明の具体的な実施例を提示する。但し、下記に記載された実施例は本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これらによって本発明が制限されるものではない。
【0075】
<製造例>
製造例1:ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムの製造
イソプレン1.7モル%及びイソブチレン98.3モル%を含む単量体混合物から形成された共重合体であるイソブチレン−イソプレンゴムを準備した。窒素ガスが還流し、温度調節が容易となるように冷却装置を設けた2L反応器に前記イソブチレン−イソプレンゴム100重量部に対して過酸化物(mCPBA)3重量部を投入した後に30℃で6時間攪拌した。次に、前記ゴム100重量部に対して1N濃度の塩酸水溶液を3.1重量部投入し、30℃で1時間攪拌した後、90℃に昇温して1時間攪拌した。それにより、主鎖のイソプレン単位にグラフトされたヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−OH)を製造した。
【0076】
製造例2:カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴムの製造
イソプレン1.7モル%及びイソブチレン98.3モル%を含む単量体混合物から形成された共重合体であるイソブチレン−イソプレンゴムを準備した。窒素ガスが還流し、温度調節が容易となるように冷却装置を設けた2L反応器に前記イソブチレン−イソプレンゴム100重量部に対して無水マレイン酸(maleic anhydride)3重量部及び過酸化ジベンゾイル(dibenzoyl peroxide)1.75重量部を投入した後に60℃〜80℃で5時間攪拌した。次に、前記ゴム100重量部に対して1N濃度の塩酸水溶液を3.1重量部投入し、30℃で1時間攪拌した後、90℃に昇温して1時間攪拌した。それにより、主鎖のイソプレン単位にグラフトされたカルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−COOH)を製造した。
【0077】
製造例3:ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムの製造
イソプレン0.5モル%及びイソブチレン99.5モル%を含む単量体混合物から形成された共重合体であるイソブチレン−イソプレンゴムを用いたことを除いては、製造例1と同様の方法により、主鎖のイソプレン単位にグラフトされたヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−OH)を製造した。
【0078】
製造例4:カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴムの製造
イソプレン0.5モル%及びイソブチレン99.5モル%を含む単量体混合物から形成された共重合体であるイソブチレン−イソプレンゴムを用いたことを除いては、製造例3と同様の方法により、主鎖のイソプレン単位にグラフトされたカルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−COOH)を製造した。
【0079】
製造例5:ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムの製造
イソプレン28モル%及びイソブチレン72モル%を含む単量体混合物から形成された共重合体であるイソブチレン−イソプレンゴムを用いたことを除いては、製造例1と同様の方法により、主鎖のイソプレン単位にグラフトされたヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−OH)を製造した。
【0080】
製造例6:カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴムの製造
イソプレン28モル%及びイソブチレン72モル%を含む単量体混合物から形成された共重合体であるイソブチレン−イソプレンゴムを用いたことを除いては、製造例3と同様の方法により、主鎖のイソプレン単位にグラフトされたカルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−COOH)を製造した。
【0081】
製造例7:ヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴムの製造
イソプレン35モル%及びイソブチレン65モル%を含む単量体混合物から形成された共重合体であるイソブチレン−イソプレンゴムを用いたことを除いては、製造例1と同様の方法により、主鎖のイソプレン単位にグラフトされたヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−OH)を製造した。
【0082】
製造例8:カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴムの製造
イソプレン35モル%及びイソブチレン65モル%を含む単量体混合物から形成された共重合体であるイソブチレン−イソプレンゴムを用いたことを除いては、製造例3と同様の方法により、主鎖のイソプレン単位にグラフトされたカルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−COOH)を製造した。
【0083】
<実施例及び比較例>
実施例1〜8
実施例1〜8の各々は、製造例2により構成されたカルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−COOH)及び製造例1により構成されたヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−OH)を下記の表1に記載されたような重量比で含む熱硬化性ゴムを含有し、前記熱硬化性ゴム100重量部に対して三官能性イソシアネート系架橋剤(Asahi Kasei、TKA−100)1.2重量部、反応促進剤としてスズ(Tin)触媒1.0重量部、硬化遅延剤としてアセチルアセトン(Acetylacetone、純度99%、韓国大井化金社製)1.0重量部、及び粘着付与剤として水素化されたテルペン系化合物(DertopheneT−115、DRT社製)15重量部を混合することによって粘着剤組成物を製造した。
【0084】
実施例9
製造例1により構成されたヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−OH)と製造例2により構成されたカルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−COOH)の重量比を4:6に調節し、水素化されたテルペン系化合物(DertopheneT−115、DRT社製)30重量部を混合し、実施例1〜8に用いられた同一の添加剤を用いて粘着剤組成物を製造した。
【0085】
実施例10
製造例5により構成されたヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−OH)と製造例6により構成されたカルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−COOH)の重量比を4:6に調節し、水素化されたテルペン系化合物(DertopheneT−115、DRT社製)30重量部を混合し、実施例1〜8に用いられた同一の添加剤を用いて粘着剤組成物を製造した。
【0086】
比較例1及び2
比較例1及び2の各々は、熱硬化性ゴムがカルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−COOH)及びヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−OH)を下記の表1に記載されたような重量比で含むことを除いては、前記実施例1〜8と同様の方法により粘着剤組成物を製造した。
【0087】
【表1】
【0088】
比較例3
カルボキシル基またはヒドロキシ基を有しないイソプレン1.7モル%及びイソブチレン98.3モル%を含む単量体混合物から形成された共重合体であるイソブチレン−イソプレンゴム100重量部に対し、光硬化性の成分としてジシクロペンタジエンジアクリレート単量体10重量部、光開始剤(Irgacure651)0.5重量部、及び水素化されたジシクロペンタジエン系粘着付与剤(D−100、DRT社製)10重量部を混合して光学用粘着剤組成物を製造した。
【0089】
比較例4
アクリル樹脂100重量部に対し、光開始剤(Irgacure651)0.5重量部及び水素化されたジシクロペンタジエン系粘着付与剤(D−100、DRT社製)20重量部を混合して光学用粘着剤組成物を製造した。
【0090】
参考例1
製造例3により構成されたヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−OH)と製造例4により構成されたカルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−COOH)の重量比を4:6に調節し、前記実施例1〜8と同様の方法により粘着剤組成物を製造した。
【0091】
参考例2
製造例7により構成されたヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−OH)と製造例8により構成されたカルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−COOH)の重量比を4:6に調節し、前記実施例1〜8と同様の方法により粘着剤組成物を製造した。
【0092】
<評価>
前記実施例1〜10、比較例1及び2、及び参考例1及び2による粘着剤組成物をフィルム形状に製造した後、乾燥させながら120℃の温度で熱硬化物を形成し、それを含む50μm厚さの粘着剤層を製造した。
【0093】
前記比較例3及び4の場合は、2,000mJ/cmの紫外線光エネルギーを照射して光硬化物を形成し、それを含む50μm厚さの粘着剤層を製造した。
【0094】
実験例1:ゲル含量の測定
前記実施例及び比較例の粘着剤層の各々を一定大きさに切って得た試片に対して初期重さ(Wi)を測定した。次に、前記試片をトルエン(toluene)溶剤に入れて24時間放置し、次に濾過装置を用いて濾過した後に重さ(Wf)を測定した。次に、下記の式1によってゲル含量を導出し、その結果は下記の表2に記す。
【0095】
ゲル含量(%)={1−(Wi−Wf)/Wi}×100 (式1)
【0096】
実験例2:耐久性の測定
前記実施例及び比較例の粘着剤層の各々に対し、一面にガラス基材を付着し、裏面の離型フィルムを除去してITOフィルムに交替後に85℃の温度及び85%相対湿度の条件で24時間〜120時間放置した。次に、肉眼で気泡及び浮き上がり現象を観察して耐久性を測定した。測定結果は下記の表2に記し、具体的には、気泡及び浮き上がり現象が全く発生しない場合には○で表わし、気泡及び浮き上がり現象が発生する場合には×で表わした。
【0097】
実験例3:透湿度の測定
前記実施例及び比較例の粘着剤層の各々に対し、温度38℃、相対湿度90%の条件でコップに一定量の水を入れた後、その上に前記粘着剤層をロード(loading)してキャッピング(capping)した後、24時間蒸発して揮発した水の減量された重さを利用して、Labthink TSY−T3で透湿度(WVTR)を測定し、その結果を下記の表2に記す。
【0098】
実験例4:剥離力の測定
前記実施例及び比較例の粘着剤層の各々に対し、UTM(Universal Testing Machine)を利用して300mm/min剥離速度でガラス基材に対する剥離力を測定し、その結果は下記の表2に記した通りである。
【0099】
実験例5:光学特性の測定
1)光透過率(T)の測定
前記実施例及び比較例の粘着剤層の各々を透明なガラス基材に付着した後、20℃〜30℃の常温条件でUV−Visスペクトロメータを利用して光透過率を測定した。
【0100】
2)ヘイズ(H)の測定
前記実施例及び比較例の粘着剤層の各々を透明なガラス基材に付着した後、20℃〜30℃の常温条件でヘイズメータ(BYK社製)装置でヘイズを測定した。
【0101】
【表2】
【0102】
前記表2の結果を参照する時、前記比較例1及び2は、カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−COOH)及びヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−OH)のうちいずれか一つのみを含む粘着剤組成物であって、前記IIR−COOH及びIIR−OHを全て含む実施例1〜5は、透湿度、剥離力及び耐久性をいずれも一定レベル以上に実現し、実施例6〜8は、耐久性は一部不足しているが、透湿度、剥離力及び光学特性等に優れた結果を示した。また、実施例9は、粘着付与剤の含量増加によって、耐久性に異常がなく、剥離力の上昇効果を得ることができる。その反面、前記比較例1の場合は、剥離力が過度に低いという問題があり、比較例2の場合は、透湿度及び耐久性が求められるレベルを満たせないことが分かった。
【0103】
参考例1の場合は、イソプレン0.5モル%を有したイソブチレン−イソプレンゴムを用いたヒドロキシ基とカルボキシル基の改質時、構造内の反応性ヒドロキシ基とカルボキシル基の不足によって架橋によるゲル含量が充分でなく、耐久性にぜい弱であることを確認することができた。
【0104】
比較例3は、ゴムそのものが硬化に参加せず、光硬化性単量体を用いて硬化させたものであって、そのもので硬化可能なゴムを含有し、カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−COOH)及びヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−OH)が適切な割合で混合された実施例に比べ、剥離力が求められるレベルを満たせないことが分かった。
【0105】
比較例4は、ベース樹脂が光硬化型であるアクリル樹脂を用いたものであって、前記実施例1〜10に比べ、耐久性及び剥離力の側面では一定レベル以上の効果を実現するが、透湿度の側面で効果が顕著に良くないことが分かった。
【0106】
以上より、本発明の実現例による粘着剤組成物は、従来の粘着剤に比べて同一または向上した光学特性を実現し、且つ、優れた剥離力及び耐透湿性を共に実現できることが分かる。さらに、前記カルボキシル基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−COOH)及びヒドロキシ基を有するイソブチレン−イソプレンゴム(IIR−OH)を適切な割合で混合することにより、用途に応じて必要な物性を向上できることが分かる。
【符号の説明】
【0107】
100 ・・・粘着フィルム
110 ・・・離型フィルム層
120 ・・・粘着剤層
図1