特許第6363891号(P6363891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6363891アナログスイッチ回路およびセレクタ回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363891
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】アナログスイッチ回路およびセレクタ回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/00 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   H03K17/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-139492(P2014-139492)
(22)【出願日】2014年7月7日
(65)【公開番号】特開2016-19075(P2016-19075A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083194
【弁理士】
【氏名又は名称】長尾 常明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 征幸
【審査官】 齋藤 正貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−169247(JP,A)
【文献】 特開2000−165222(JP,A)
【文献】 特開2006−148640(JP,A)
【文献】 特開平4−104608(JP,A)
【文献】 特開2000−183710(JP,A)
【文献】 特開2013−191911(JP,A)
【文献】 特開2013−219503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子の間に並列接続される第1のPMOSトランジスタおよび第1のNMOSトランジスタと、前記第1のPMOSトランジスタのバックゲートとソースの間に接続される第2のPMOSトランジスタと、前記第1のPMOSトランジスタのバックゲートと高電位電源端子との間に接続される第3のPMOSトランジスタと、前記第1のNMOSトランジスタのバックゲートとソースの間に接続される第2のNMOSトランジスタと、前記第1のNMOSトランジスタのバックゲートと低電位電源端子との間に接続される第3のNMOSトランジスタと、制御電圧が入力し第1の閾値電圧を有する第1のインバータと、前記制御電圧が入力し前記第1の閾値電圧よりも高い第2の閾値電圧を有する第2のインバータと、前記第1のインバータの出力が入力する第3のインバータと、前記第2のインバータの出力が入力する第4のインバータとを備え、
前記第1のインバータの出力が前記第1のNMOSトランジスタのゲートに入力し、前記第3のインバータの出力が前記第1のPMOSトランジスタのゲートに入力し、前記第2のインバータの出力が前記第2のNMOSトランジスタと前記第3のPMOSトランジスタのゲートに入力し、前記第4のインバータの出力が前記第2のPMOSトランジスタのゲートと前記第3のNMOSトランジスタのゲートに入力する、ことを特徴とするアナログスイッチ回路。
【請求項2】
入力端子と出力端子の間に並列接続される第1のPMOSトランジスタおよび第1のNMOSトランジスタと、前記第1のPMOSトランジスタのバックゲートとソースの間に接続される第2のPMOSトランジスタと、前記第1のPMOSトランジスタのバックゲートと高電位電源端子との間に接続される第3のPMOSトランジスタと、前記第1のNMOSトランジスタのバックゲートとソースの間に接続される第2のNMOSトランジスタと、前記第1のNMOSトランジスタのバックゲートと低電位電源端子との間に接続される第3のNMOSトランジスタと、制御電圧が高電位から低電位に変化するとき出力を低電圧から高電圧に変化させる第3の閾値電圧と前記制御電圧が低電位から高電位に変化するときに出力を高電圧から低電圧に変化させる前記第3の閾値電圧よりも高い第5の閾値電圧とを有するヒステリシス型の第5のインバータと、前記制御電圧が入力し前記第3の閾値電圧より高く前記第5の閾値電圧より低い第4の閾値電圧を有する第6のインバータと、前記第5のインバータの出力および前記第6のインバータの出力が入力する論理和回路と、前記第5のインバータの出力および前記第6のインバータの出力が入力する論理積回路と、前記論理積回路の出力が入力する第7のインバータと、前記論理和回路の出力が入力する第8のインバータとを備え、
前記論理積回路の出力が前記第1のNMOSトランジスタのゲートに入力し、前記第7のインバータの出力が前記第1のPMOSトランジスタのゲートに入力し、前記論理和回路の出力が前記第2のNMOSトランジスタのゲートと前記第3のPMOSトランジスタのゲートに入力し、前記第8のインバータの出力が前記第2のPMOSトランジスタのゲートと前記第3のNMOSトランジスタのゲートに入力する、ことを特徴とするアナログスイッチ回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアナログスイッチ回路をn個(nは3以上の整数)使用したセレクタ回路であって、
前記n個のアナログスイッチ回路の内のn−1個のアナログスイッチ回路を、n−1個のセレクタ入力端子と1個のセレクタ出力端子の間に接続するとともに、残り1個のアナログスイッチ回路の入力端子と出力端子を前記セレクタ出力端子に共通接続し、且つ前記残り1個のアナログスイッチ回路のサイズを前記n−1個のアナログスイッチ回路のサイズの1/2に設定したことを特徴とするセレクタ回路
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタを入出力端子間に並列接続して構成するアナログスイッチ回路およびそのアナログスイッチ回路を複数使用したセレクタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログスイッチ回路の基本回路は、ドレイン同士とソース同士を共通接続することで並列接続したNMOSトランジスタとPMOSトランジスタで構成される。そして、互いに逆相の制御電圧をNMOSトランジスタとPMOSトランジスタのゲートに入力することで、NMOSトランジスタとPMOSトランジスタとをON状態とOFF状態のいずれかに切り替えることができる。
【0003】
アナログスイッチ回路は、その入力電圧と出力電圧が接地電圧GNDと高電位電源電圧VDDとの間のいずれの電位であっても、NMOSトランジスタとPMOSトランジスタが補完的に動作することで、入力端子と出力端子の間をON状態とOFF状態のいずれかに維持することが出来る。
【0004】
一般的に、MOSトランジスタは、閾値電圧の変動を避けるために、そのバックゲートをソースと接続することで基板バイアスを零にして使用するが、この接続形態では、MOSトランジスタがOFF状態のとき、バックゲートとドレイン間にPNダイオードが存在する。
【0005】
このため、バックゲートをソースに接続したPMOSトランジスタとNMOSトランジスタで構成されるアナログスイッチ回路の入力端子と出力端子の間には、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタによって双方向のダイオードが接続される状態となり、入力端子と出力端子の間にダイオードが動作できる電圧差が生じると、OFF状態を維持することができない。
【0006】
そこで、図6に示すように、NMOSトランジスタMN1のバッゲートを接地電圧GNDに接続し、PMOSトランジスタMP1のバックゲートを高電位の電源電圧VDDに接続することが行われる。図6において、1は入力端子、2は出力端子、3は制御端子、INV10はインバータである。
【0007】
しかし、図6の回路によれば、トランジスタMP1,MN1は、ソースとバックゲートの電圧が異なるので、基板バイアス効果により空乏層の幅が広がり、トランジスタMP1,MN1の閾値電圧が上昇し、ON抵抗の上昇に加えて、入力信号の変動と閾値電圧の変動が連動することで、入力端子1と出力端子2の間を通過する信号の歪が悪化する問題が生じる。
【0008】
これを回避するため、図7に示すように、トランジスタMP1のバックゲート電圧を切り替えるためのPMOSトランジスタMP2,MP3を接続するとともに、トランジスタMN1のバックゲート電圧を切り替えるためのNMOSトランジスタMN2,MN3を接続する構成がある(特許文献1)。
【0009】
この図7に示す回路では、制御端子3に入力する制御電圧Vaを“L”にしトランジスタMP1,MN1をON状態にして、アナログスイッチ回路の入力端子1と出力端子2の間をON状態にするときは、トランジスタMP2,MN2をON状態に、トランジスタMP3,MN3をOFF状態にさせる。これにより、トランジスタMP1,MN1のバックゲートがソースに接続されることで、それらの閾値電圧の変動が防止される。
【0010】
一方、制御端子1に入力する制御電圧Vaを“H”にしトランジスタMP1,MN1をOFF状態にして、アナログスイッチ回路の入力端子1と出力端子2の間をOFF状態にするときは、トランジスタMP3、MN3をON状態に、トランジスタMP2,MN2をOFF状態にさせる。これにより、トランジスタMP1のバックゲートが高電位電源電圧VDDに接続されるとともに、トランジスタMN1のバックゲートが接地電圧GNDに接続されることで、確実なOFF状態を実現することができる。
【0011】
この結果、アナログスイッチ回路のON状態では、ON抵抗を低くでき、入力端子1と出力端子2の間を通過する信号の歪を小さくでき、出力精度を高くすることができる。また、OFF状態では、入力端子1と出力端子2の間にダイオードが動作できる電圧差が生じても、完全なOFF状態を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−169247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、図8に示すように、2個のアナログスイッチ回路SW1,SW2を使用してセレクタ回路を構成した場合、アナログスイッチ回路SW1がON状態からOFF状態へ遷移する際に生じる電荷移動に伴うチャージインジェクション電流(チャネル放電電流)Ichannel- と、アナログスイッチ回路SW2がOFF状態からON状態へ遷移する際に生じる電荷移動に伴うチャージインジェクション電流(チャネル充電電流)Ichannel+ に差分があると、その差分電流ΔIchannel(=channel- +Ichannel+ )が負荷抵抗RLおよび負荷容量CLに流入することで、そこに電圧が生じて切り替えノイズが発生する。図8において、IN1、IN2は入力端子、OUTは出力端子である。
【0014】
アナログスイッチ回路SW1,SW2のON状態時にそのチャネルに蓄積される電荷量Qは、
Q=L・W・Cox[Vgs−Vth] ・・・(1)
で表すことができる。Lはチャネル長、Wはチャネル幅、Coxはゲート酸化膜容量、Vgsはゲート・ソース間電圧、Vthは閾値電圧である。
【0015】
ところで、トランジスタMP1,MN1のバックゲート電圧がゲート電圧に依存せず、図6に示したように、固定されている場合は、閾値電圧Vthは変動しない。このため、各トランジスタMP1,MN1のチャネルに充電/放電する式(1)の電荷量Qの変動は、ゲート・ソース間電圧Vgsにのみ比例する。よって、チャージインジェクション電流はIchannel- =Ichannel+ となって、差分電流ΔIchannel=0となり、セレクタ出力端子OUTの電圧に変動は生じない。
【0016】
一方、図7に示すように、トランジスタMP1,MN1のバックゲート電圧がゲート電圧に応じて同時に制御される場合は、閾値電圧Vthがゲート・ソース間電圧Vgsの変動に対して非線形に変動する。このため、各トランジスタMP1,MN1に充電/放電する式(1)の電荷量Qの変動は、ゲート・ソース間電圧Vgsに比例しない。よって、Ichnnel- ≠Ichannel+ となって差分電流ΔIchannel=0とならず、負荷抵抗RLおよび負荷容量CLに流入して電圧に変換され、切り替えノイズが発生する問題があった。
【0017】
本発明の目的は、セレクタ回路に適用したときに切り替えノイズの発生を抑制できるようにしたアナログスイッチ回路およびセレクタ回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明のアナログスイッチ回路は、入力端子と出力端子の間に並列接続される第1のPMOSトランジスタおよび第1のNMOSトランジスタと、前記第1のPMOSトランジスタのバックゲートとソースの間に接続される第2のPMOSトランジスタと、前記第1のPMOSトランジスタのバックゲートと高電位電源端子との間に接続される第3のPMOSトランジスタと、前記第1のNMOSトランジスタのバックゲートとソースの間に接続される第2のNMOSトランジスタと、前記第1のNMOSトランジスタのバックゲートと低電位電源端子との間に接続される第3のNMOSトランジスタと、制御電圧が入力し第1の閾値電圧を有する第1のインバータと、前記制御電圧が入力し前記第1の閾値電圧よりも高い第2の閾値電圧を有する第2のインバータと、前記第1のインバータの出力が入力する第3のインバータと、前記第2のインバータの出力が入力する第4のインバータとを備え、前記第1のインバータの出力が前記第1のNMOSトランジスタのゲートに入力し、前記第3のインバータの出力が前記第1のPMOSトランジスタのゲートに入力し、前記第2のインバータの出力が前記第2のNMOSトランジスタと前記第3のPMOSトランジスタのゲートに入力し、前記第4のインバータの出力が前記第2のPMOSトランジスタのゲートと前記第3のNMOSトランジスタのゲートに入力する、ことを特徴とする。
【0019】
請求項2にかかる発明のアナログスイッチ回路は、入力端子と出力端子の間に並列接続される第1のPMOSトランジスタおよび第1のNMOSトランジスタと、前記第1のPMOSトランジスタのバックゲートとソースの間に接続される第2のPMOSトランジスタと、前記第1のPMOSトランジスタのバックゲートと高電位電源端子との間に接続される第3のPMOSトランジスタと、前記第1のNMOSトランジスタのバックゲートとソースの間に接続される第2のNMOSトランジスタと、前記第1のNMOSトランジスタのバックゲートと低電位電源端子との間に接続される第3のNMOSトランジスタと、制御電圧が高電位から低電位に変化するとき出力を低電圧から高電圧に変化させる第3の閾値電圧と前記制御電圧が低電位から高電位に変化するときに出力を高電圧から低電圧に変化させる前記第3の閾値電圧よりも高い第5の閾値電圧とを有するヒステリシス型の第5のインバータと、前記制御電圧が入力し前記第3の閾値電圧より高く前記第5の閾値電圧より低い第4の閾値電圧を有する第6のインバータと、前記第5のインバータの出力および前記第6のインバータの出力が入力する論理和回路と、前記第5のインバータの出力および前記第6のインバータの出力が入力する論理積回路と、前記論理積回路の出力が入力する第7のインバータと、前記論理和回路の出力が入力する第8のインバータとを備え、前記論理積回路の出力が前記第1のNMOSトランジスタのゲートに入力し、前記第7のインバータの出力が前記第1のPMOSトランジスタのゲートに入力し、前記論理和回路の出力が前記第2のNMOSトランジスタのゲートと前記第3のPMOSトランジスタのゲートに入力し、前記第8のインバータの出力が前記第2のPMOSトランジスタのゲートと前記第3のNMOSトランジスタのゲートに入力する、ことを特徴とする。
【0020】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載のアナログスイッチ回路をn個(nは3以上の整数)使用したセレクタ回路であって、前記n個のアナログスイッチ回路の内のn−1個のアナログスイッチ回路を、n−1個のセレクタ入力端子と1個のセレクタ出力端子の間に接続するとともに、残り1個のアナログスイッチ回路の入力端子と出力端子を前記セレクタ出力端子に共通接続し、且つ前記残り1個のアナログスイッチ回路のサイズを前記n−1個のアナログスイッチ回路のサイズの1/2に設定したことを特徴とする
【発明の効果】
【0024】
本発明のアナログスイッチ回路によれば、第1のPMOSトランジスタと第1のNMOSトランジスタのゲート電圧が変動するタイミングでは、第1のPMOSトランジスタと第1のNMOSトランジスタのバックゲートがソースに接続されるので、閾値電圧の変動がない。このため、例えば2個以上のアナログスイッチ回路によりセレクタ回路を構成して、1個のアナログスイッチ回路をON状態にするとき同時に別の1個のアナログスイッチ回路をOFF状態にする切り替えタイミングにおいて、1個のアナログスイッチ回路がON状態からOFF状態に遷移するときに発生するチャージインジェクション電流と、別の1個のアナログスイッチ回路がOFF状態からON状態に遷移するときに発生するチャージインジェクション電流の差分を零にすることができる。したがって、セレクタ回路の負荷側に切り替えノイズが発生することはない。また、アナログスイッチ回路自体では、第1のPMOSトランジスタや第1のNMOSトランジスタのサイズを増大させることなくON抵抗を小さくして出力精度を高くできると共に、確実なOFF状態を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例1のアナログスイッチ回路の回路図である。
図2図1のアナログスイッチ回路のタイミング制御回路の動作波形図である。
図3】本発明の実施例2のアナログスイッチ回路のタイミング制御回路の回路図である。
図4図3のタイミング制御部の動作波形図である。
図5】本発明のアナログスイッチ回路を使用した実施例3のセレクタ回路の回路図である。
図6】従来のアナログスイッチ回路の回路図である。
図7】従来の別の例のアナログスイッチ回路の回路図である。
図8】従来のアナログスイッチ回路を使用したセレクタ回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施例1>
図1に本発明の実施例1のアナログスイッチ回路の回路を示す。図7で説明した要素と同じ要素には同じ符号をつけた。10はタイミング制御回路であり、入力端子1に接続されたインバータINV1,INV2と、インバータINV1の出力に接続されたINV3と、インバータINV2の出力に接続されたインバータINV4とを備える。インバータINV1の出力は端子A−に、インバータINV2の出力は端子B−に、インバータINV3の出力は端子A+に、インバータINV4の出力は端子B+に、それぞれ接続されている。そして、インバータINV1の閾値電圧はVth1、インバータINV2の閾値電圧はVth2であり、Vth1<Vth2の関係にある。インバータINV3,INV4の閾値電圧はVth1,Vth2のいずれでもよく、別の値であってもよい。
【0027】
20はアナログスイッチ本体回路であり、PMOSトランジスタMP1のバックゲートとソースとの間にはPMOSトランジスタMP2が、PMOSトランジスタMP1のバックゲートと高電位電源電圧VDDとの間にはPMOSトランジスタMP3が、それぞれ接続されている。また、NMOSトランジスタMN1のバックゲートとソースとの間にはNMOSトランジスタMN2が、NMOSトランジスタMN1のバックゲートと接地電圧GNDとの間にはNMOSトランジスタMN3が、それぞれ接続されている。
【0028】
そして、タイミング制御回路10の端子A+はトランジスタMP1のゲートに、端子A−はトランジスタMN1のゲートに、それぞれ接続されている。また、端子B+はトランジスタMP2とMN3のゲートに、端子B−はトランジスタMN2とMP3のゲートに、それぞれ接続されている。
【0029】
さて、本実施例では、図2に示すような立上りと立下りに傾斜特性をもつ制御電圧Vaを制御端子3に入力させる。これにより、時刻t1以前では、その電圧Vaが閾値電圧Vth1未満であるので、インバータINV1,INV2の出力、つまり端子A−,B−は“H”となっている。また、インバータINV3,INV4の出力、つまり端子A+,B+は“L”となっている。このため、トランジスタMP1,MP2,MN1,MN2がON状態となり、トランジスタMP3,MN3がOFF状態となり、アナログスイッチ本体回路20はON状態となる。
【0030】
このとき、トランジスタMP1のバックゲートはON状態のトランジスタMP2によりソースに接続され、トランジスタMN1のバックゲートはON状態のトランジスタMN2によりソースに接続される。このため、アナログスイッチ本体回路20のON状態では、ON抵抗が低くなって入力端子1と出力端子2の間を通過する信号の歪を小さくでき、出力精度を高くすることができる。
【0031】
時刻t1では、制御電圧Vaが閾値電圧Vth1に到達するので、インバータINV1の出力が“H”から“L”に反転して、端子A+が“H”に、端子A−が“L”に変化する。このため、トランジスタMP1,MN1がON状態からOFF状態に切り替わり、アナログスイッチ本体回路20はOFF状態となる。このとき、端子B+は“L”の状態を、端子B−は“H”の状態を継続する。よって、このとき、トランジスタMP1,MN1は、ゲート電圧が変化したにも拘わらず、ソース電圧はバックゲート電圧と同じであり、その閾値電圧が変化することはない。
【0032】
時刻t2では、制御電圧Vaが閾値電圧Vth2に到達するので、インバータINV2の出力が“H”から“L”に反転して、端子B+が“H”に、端子B−が“L”になる。このため、トランジスタMP2,MN2がOFF状態になり、トランジスタMP3,MN3がON状態になる。これにより、トランジスタMP1のバックゲートはON状態のトランジスタMP3により高電位電源電圧VDDに接続され、トランジスタMN1のバックゲートはON状態のトランジスタMN3により接地電圧GNDに接続される。この結果、トランジスタMP1,MN1は完全なOFF状態に保持される。
【0033】
時刻t3では、制御電圧Vaが閾値電圧Vth2未満に低下するので、インバータINV2の出力が“L”から“H”に反転し、端子B+が“L”に、端子B−が“H”になる。このため、トランジスタMP2,MN2がON状態になり、トランジスタMP3,MN3がOFF状態になる。これにより、トランジスタMP1のバックゲートはON状態のトランジスタMP2によりソースに接続され、トランジスタMN1のバックゲートはON状態のトランジスタMN2によりソースに接続される。
【0034】
時刻t4では、制御電圧Vaが閾値電圧Vth1未満に低下するので、インバータINV1の出力が“L”から“H”に反転し、端子A+が“L”に、端子A−が“H”になる。このため、トランジスタMP1,MN1がOFF状態からON状態に切り替わり、アナログスイッチ本体回路20はON状態となる。このとき、端子B+は“H”の状態を、端子B−は“L”の状態を継続する。よって、このとき、トランジスタMP1,MN1は、そのゲート電圧が変化したにも拘わらず、ソース電圧はバックゲート電圧と同じであり、その閾値電圧が変化することはない。
【0035】
以上の結果、アナログスイッチ本体回路20がON状態からOFF状態に切り替わり、あるいはOFF状態からON状態に切り替わるときに、トランジスタMP1,MN1の閾値電圧は変化しないので、各トランジスタMP1,MN1に充電/放電するの電荷量Qの変動は、ゲート電圧のみに依存する。したがって、本実施例のアナログスイッチ回路を図8で説明したセレクタ回路に適用して、アナログスイッチ回路SW1をON状態からOFF状態に切り替えると同時にアナログスイッチ回路SW2をOFF状態からON状態に切り替えるとき、チャージインジェクション電流はIchannel- =Ichannel+ となって、差分電流ΔIchannel=0となり、セレクタ出力端子OUTに切り替えノイズは発生しない。
【0036】
このように、実施例1のアナログスイッチ回路では、これを2個用いてセレクタ回路を構成するとき、切り替えノイズが負荷側に発生することを抑制することができる。
【0037】
<実施例2>
図3に実施例2のタイミング制御回路10Aを示す。このタイミング制御回路10Aは、インバータINV5〜INV8、論理和回路OR1、論理積回路AND1から構成されている。インバータINV5はヒステリシス型であり、出力が“H”から“L”に変化するときの閾値電圧がVth5、出力が“L”から“H”に変化するときの閾値電圧がVth3である。また、インバータINV6の閾値電圧はVth4である。各閾値電圧は、Vth3<Vth4<Vth5の関係にある。なお、インバータINV7,INV8の閾値電圧は、Vth3,Vth4,Vth5のいずれでもよく、別の値であってもよい。
【0038】
本実施例でも、図2で説明したのと同様に、立上りと立下りに傾斜特性をもつ制御電圧Vaを制御端子3に入力することで、図4に示すように、図2で説明したのと同様の電圧が端子A+,A−,B+,B−に生成する。
【0039】
ヒステリシス型のインバータINV5の出力のノードP1には、制御電圧Vaが閾値電圧Vth5を超えると“L”となり、その後に閾値電圧Vth3を下回ると“H”となる電圧が発生する。また、インバータINV6の出力のノードP2には、制御電圧Vaが閾値電圧Vth4を超えると“L”となり、閾値電圧Vth4を下回ると“H”となる電圧が発生する。よって、このノードP1,P2の電圧を論理和回路OR1、論理積回路AND1で処理した信号が出力する端子A−、B-の電圧、それらをインバータINV7,INV8で反転した信号が出力する端子A+,B+の電圧は、図2で説明したのと同じ電圧となる。
【0040】
よって、本実施例のタイミング制御回路10Aをタイミング制御回路10に代えて使用するアナログスイッチ回路でも、実施例1のアナログスイッチ回路と同様に、これを2個用いてセレクタ回路を構成する際に、切り替えノイズが負荷側に発生することを抑制することができる。
【0041】
<実施例3>
図5に実施例1のアナログスイッチ回路を使用したセレクタ回路を示す。このセレクタ回路は、前記実施例1で説明したアナログスイッチ回路をn個(nは3以上の整数)のアナログスイッチ回路SW1〜SWn-1のそれぞれとして使用するものである。1〜n−1番目のアナログスイッチ回路SW1〜SWn-1は、n−1個のセレクタ入力端子IN1〜INn-1と1個のセレクタ出力端子OUTの間に接続し、n番目のアナログスイッチ回路SWnはその両端(入力端子1と出力端子2)をセレクタ出力端子OUTに接続している。n番目のアナログスイッチ回路SWnは、他のアナログスイッチ回路SW1〜SWn-1よりも、そのトランジスタMP1,MN1のサイズ比(W/L)が1/2に設定されている。
【0042】
図5のセレクタ回路は、アナログスイッチ回路SW1〜SWnの内の必ずいずれか1つがON状態となるように切り替えられる。このとき、切り替えノイズが負荷側に発生することを抑制することができる。
【0043】
n番目のアナログスイッチ回路SWnは、その他のアナログスイッチ回路SW1〜SWn-1のすべてがOFF状態となるときに、OFF状態からON状態となるよう切り替えられる。また、スイッチSW1〜SWn-1のすべてがOFF状態にある状態からいずれか1個がON状態になるときに、ON状態からOFF状態となるように切り替えられる。
【0044】
このn番目のアナログスイッチ回路SWnは、そのサイズが前記したように他のアナログスイッチ回路SW1〜SWn-1に対して1/2である。よって、ON状態からOFF状態への切り替え時は、片方の端子からチャージインジェクション電流Ichannel-/2 が流出するので、両方の端子に流出するチャージインジェクション電流はIchannel-となる。また、OFF状態からON状態への切り替え時は、片方の端子からチャージインジェクション電流Ichannel+/2 が流入するので、両方の端子から流入するチャージインジェクション電流はIchannel+となる。
【0045】
よって、アナログスイッチ回路SW1〜SWn-1の内のON状態にあった唯一の1個がOFF状態に切り替わるときに、アナログスイッチ回路SWnがOFF状態からON状態に切り替わることで、チャージインジェクション電流Ichannel-とIchannel+がキャンセルされ、切り替えノイズの発生が防止される。また、アナログスイッチ回路SW1〜SWn-1のすべてがOFF状態にある状態からその内の1個がON状態に切り替わるときに、アナログスイッチ回路SWnがON状態からOFF状態に切り替わることで、同様に切り替えノイズの発生が防止される。
【0046】
本発明のアナログスイッチ回路は、セレクタ回路や抵抗ラダー形式の電子ボリウム等を含むオーディオ製品に好適である。
【符号の説明】
【0047】
1:入力端子、2:出力端子、3:制御端子
10:タイミング制御回路、20,20A:アナログスイッチ本体回路
図1
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図8