特許第6363894号(P6363894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363894
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/142 20140101AFI20180712BHJP
【FI】
   B23K26/142
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-141489(P2014-141489)
(22)【出願日】2014年7月9日
(65)【公開番号】特開2016-16438(P2016-16438A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】朴木 鴻揚
【審査官】 岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−124648(JP,A)
【文献】 特開2014−036987(JP,A)
【文献】 特開2013−184190(JP,A)
【文献】 特開2012−091198(JP,A)
【文献】 特開平09−216036(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/110214(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第04210518(DE,A1)
【文献】 米国特許第04010345(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するための被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射して被加工物を加工するための集光器を備えたレーザー光線照射手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該被加工物保持手段に保持された被加工物に該集光器からレーザー光線が照射することによって飛散されるデブリを吸引するデブリ排出機構を具備し、
該デブリ排出機構は、該集光器の端部を嵌合する集光器側開口部と被加工物側開口部とを備え該集光器から照射されるレーザー光線の通過を許容する連通路と、該連通路の該被加工物側開口部に一端が連通する吸引通路とを備えたデブリ吸引ケースと、該吸引通路を通してデブリを吸引して排出するデブリ排出手段とを具備しており、
該デブリ排出手段は、該吸引通路に配設され外周面から内周面に向けて斜めにエアーを噴出して該被加工物側開口部に負圧を生成するための複数の負圧生成エアー噴出通路を備えた負圧生成筒体と、該吸引通路に設けられ該負圧生成筒体に形成された複数の負圧生成エアー噴出通路に連通する環状溝と、該環状溝に連通するとともに負圧生成用エアー供給手段に連通せしめられた負圧生成用エアー供給通路とを具備している、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該ケースの該集光器側開口部には、該集光器との空間を遮断しレーザー光線を透過するカバーガラスが載置するガラス載置棚と、該ガラス載置棚に載置されたカバーガラスの該被加工物側開口部側の面に対向して設けられた複数の噴出口をそれぞれ有する複数の洗浄エアー噴出通路が設けられており、該複数の洗浄エアー噴出通路は、洗浄エアー供給手段に連通せしめられた洗浄エアー供給通路と連通している、請求項1記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該ケースの該被加工物側開口部側に隣接してレーザー光線の照射によって飛散されるデブリを吹き飛ばすデブリ吹き飛ばしノズルが配設されており、該デブリ吹き飛ばしノズルは、吹き飛ばしエアー供給手段に連通せしめられた吹き飛ばしエアー供給通路と連通している、請求項1又は2記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
該負圧生成エアー噴出通路から噴出するエアーの流量は100〜300リットル/分・mmに設定されている、請求項1から3のいずれかに記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
上記洗浄エアー噴出通路から噴出するエアーの流量は10〜30リットル/分・mmに設定されている、請求項2、又は請求項2を引用する請求項3、又は請求項2を引用する請求項4に記載のレーザー加工装置。
【請求項6】
上記デブリ吹き飛ばしノズルから噴出するエアーの流量は3〜10リットル/分・mmに設定されている、請求項3、又は請求項3を引用する請求項4、又は請求項3を引用する請求項5に記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物にレーザー加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
上述した半導体ウエーハ等のウエーハを分割予定ラインに沿って分割する方法として、ウエーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を分割予定ライントに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成し、ウエーハをレーザー加工溝が形成された分割予定ラインに沿って破断する方法が提案されている。このようなレーザー加工を施すレーザー加工装置は、被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物をレーザー加工するレーザー光線照射手段と、被加工物保持手段とレーザー光線照射手段を加工送り方向に相対的に移動せしめる加工送り手段とを具備している。そして、レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を集光して被加工物保持手段に保持された被加工物に照射する集光対物レンズを備えた集光器とから構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−18456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、ウエーハの分割予定ラインに沿ってパルスレーザー光線を照射すると、デブリ(debris)が飛散し、順次照射されるパルスレーザー光線の光路が飛散したデブリによって妨げられるという問題がある。即ち、飛散したデブリにパルスレーザー光線が当たると、レーザー光線は屈曲してデバイスに照射され、デバイスを損傷させるという問題がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、飛散したデブリの影響を受けることなくレーザー加工を施すことができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するための被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射して被加工物を加工するための集光器を備えたレーザー光線照射手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該被加工物保持手段に保持された被加工物に該集光器からレーザー光線が照射することによって飛散されるデブリを吸引するデブリ排出機構を具備し、
該デブリ排出機構は、該集光器の端部を嵌合する集光器側開口部と被加工物側開口部とを備え該集光器から照射されるレーザー光線の通過を許容する連通路と、該連通路の該被加工物側開口部に一端が連通する吸引通路とを備えたデブリ吸引ケースと、該吸引通路を通してデブリを吸引して排出するデブリ排出手段とを具備しており、
該デブリ排出手段は、該吸引通路に配設され外周面から内周面に向けて斜めにエアーを噴出して該被加工物側開口部に負圧を生成するための複数の負圧生成エアー噴出通路を備えた負圧生成筒体と、該吸引通路に設けられ該負圧生成筒体に形成された複数の負圧生成エアー噴出通路に連通する環状溝と、該環状溝に連通するとともに負圧生成用エアー供給手段に連通せしめられた負圧生成用エアー供給通路とを具備している、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0008】
上記ケースの該集光器側開口部には、集光器との空間を遮断しレーザー光線を透過するカバーガラスが載置するガラス載置棚と、該ガラス載置棚に載置されたカバーガラスの該被加工物側開口部側の面に対向して設けられた複数の噴出口をそれぞれ有する複数の洗浄エアー噴出通路が設けられており、該複数の洗浄エアー噴出通路は、洗浄エアー供給手段に連通せしめられた洗浄エアー供給通路と連通している。
上記ケースの該被加工物側開口部側に隣接してレーザー光線の照射によって飛散されるデブリを吹き飛ばすデブリ吹き飛ばしノズルが配設されており、該デブリ吹き飛ばしノズルは、吹き飛ばしエアー供給手段に連通せしめられた吹き飛ばしエアー供給通路と連通している。
上記負圧生成エアー噴出通路から噴出するエアーの流量は100〜300リットル/分・mm2に設定され、上記洗浄エアー噴出通路から噴出するエアーの流量は10〜30リットル/分・mm2に設定され、上記デブリ吹き飛ばしノズルから噴出するエアーの流量は3〜10リットル/分・mm2に設定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるレーザー加工装置は、被加工物保持手段に保持された被加工物に集光器からレーザー光線が照射することによって飛散されるデブリを吸引するデブリ排出機構を備え、該デブリ排出機構は、集光器の端部を嵌合する集光器側開口部と被加工物側開口部とを備え該集光器から照射されるレーザー光線の通過を許容する連通路と、該連通路の被加工物側開口部に一端が連通する吸引通路とを備えたデブリ吸引ケースと、吸引通路を通してデブリを吸引して排出するデブリ排出手段とを具備ており、該デブリ排出手段は、吸引通路に配設され外周面から内周面に向けて斜めにエアーを噴出して被加工物側開口部に負圧を生成するための複数の負圧生成エアー噴出通路を備えた負圧生成筒体と、吸引通路に設けられ負圧生成筒体に形成された複数の負圧生成エアー噴出通路に連通する環状溝と、該環状溝に連通するとともに負圧生成用エアー供給手段に連通せしめられた負圧生成用エアー供給通路とを具備しているので、負圧生成用エアー供給手段を作動し負圧生成用エアー供給通路および環状溝を介して負圧生成筒体の外周に開口する複数の負圧生成エアー噴出通路にエアーを供給する。この結果、複数の負圧生成エアー噴出通路を通して吸引通路を高速で流れるエアーの作用で吸引通路の被加工物側開口部側に負圧が生成されるため、被加工物保持手段に保持された被加工物に集光器からレーザー光線が照射されることによって飛散されるデブリは、吸引通路から吸引され負圧生成筒体を介して排出される。従って、レーザー光線が照射されることによって飛散されるデブリは、集光器から照射されるレーザー光線の光路から直ちに排除されるため、順次照射されるパルスレーザー光線が飛散したデブリに当たることがなく、飛散したデブリにレーザー光線は当たることにより屈曲してデバイスを損傷させるという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図2図1に示すレーザー加工装置に装備されるデブリ排出機構の要部斜視図。
図3図2に示すデブリ排出機構の要部断面図。
図4図2に示すデブリ排出機構の構成部材を分解して示す斜視図。
図5】被加工物としての半導体ウエーハが環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に貼着した状態を示す斜視図。
図6図1に示すレーザー加工装置によって実施するレーザー加工溝形成工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、基台2上に配設されたレーザー光線照射手段としてのレーザー光線照射ユニット4とを具備している。
【0013】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361の上面である保持面上に被加工物である例えば円板形状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、半導体ウエーハ等の被加工物を保護テープを介して支持する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0014】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にX軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0015】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための割り出し送り手段38を具備している。割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0016】
上記レーザー光線照射ユニット4は、上記基台2上に配設された支持部材41と、該支持部材41によって支持され実質上水平に延出するケーシング42と、該ケーシング42に配設されたレーザー光線照射手段5と、ケーシング42の前端部に配設されレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段6を具備している。レーザー光線照射手段5は、ケーシング42内に配設されたYAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器等のレーザー光線発振手段(図示せず)と、ケーシング42の先端に配設されレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光して上記チャックテーブル36に保持された被加工物に照射する集光器51を具備している。上記撮像手段6は、撮像素子(CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0017】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、チャックテーブル36に保持された被加工物に集光器51からレーザー光線が照射されることによって飛散されるデブリを吸引するデブリ排出機構7を具備している。このデブリ排出機構7について、図2乃至図4を参照して説明する。
【0018】
図示の実施形態におけるデブリ排出機構7は、集光器51の下側に配設されるデブリ吸引ケース71と、該デブリ吸引ケース71にデブリを吸引して排出するデブリ排出手段72を具備している。デブリ吸引ケース71は、集光器51の端部を嵌合する集光器側開口部711と被加工物側開口部712とを備え集光器から照射されるレーザー光線の通過を許容する連通路713と、該連通路713の被加工物側開口部712に一端が連通し他端がデブリ吸引ケース71の図3において左側面に開口する吸引通路714とを備えている。
【0019】
デブリ排出手段72は、吸引通路714に配設され被加工物側開口部712に負圧を生成するための負圧生成筒体721を備えている。この負圧生成筒体721は、図3および図4に示すように外周面から内周面に吸引通路714の一端側から他端側に向けて斜めにエアーを噴出する複数の負圧生成エアー噴出通路721aを備えているとともに、外周面には負圧生成エアー噴出通路721aの両側に形成されたシール溝721bを備えており、該シール溝721bにシールリング721dが装着されている。このように構成された負圧生成筒体721は、図3に示すように吸引通路714に他端側から挿入する。このようにして負圧生成筒体721は挿入された吸引通路714の内周面には、負圧生成筒体721の外周に開口する複数の負圧生成エアー噴出通路721aと対向する位置に環状溝721cが設けられている。この環状溝721cはデブリ吸引ケース71に設けられ図2に示す負圧生成用エアー供給通路722に連通され、該負圧生成用エアー供給通路722が負圧生成用エアー供給手段723に連通されている。なお、負圧生成筒体721の他端は、集塵器73に接続されている。
【0020】
図示の実施形態におけるデブリ排出手段72は以上のように構成されており、負圧生成用エアー供給手段723を作動し負圧生成用エアー供給通路722および環状溝721cを介して負圧生成筒体721の外周に開口する複数の負圧生成エアー噴出通路721aにエアーを供給すると、複数の負圧生成エアー噴出通路721aを通して吸引通路714の一端側から他端側に向けて高速で流れるエアーの作用で吸引通路714の一端側である連通路713の被加工物側開口部712側に負圧が生成される。この結果、チャックテーブル36に保持された被加工物に集光器51からレーザー光線が照射されることによって飛散されるデブリは、吸引通路714の一端から吸引され負圧生成筒体721を介して集塵器73に排出される。なお、複数の負圧生成エアー噴出通路721aから噴出するエアーの流量は100〜300リットル/分・mm2に設定されることが望ましい。
【0021】
図2乃至図4を参照して説明を続けると、デブリ吸引ケース71の集光器側開口部711には、集光器51との空間を遮断しレーザー光線を透過するカバーガラスが載置するガラス載置棚711aと、該ガラス載置棚711aに載置されたカバーガラス717の該被加工物側開口部712側の面に対向して設けられた複数の噴出口をそれぞれ有する複数の洗浄エアー噴出通路711bが設けられている。この複数の洗浄エアー噴出通路711bはデブリ吸引ケース71に設けられ図2に示す洗浄エアー供給通路731に連通され、該洗浄エアー供給通路731が洗浄エアー供給手段732に連通されている。洗浄エアー供給手段732を作動し洗浄エアー供給通路731を介して複数の洗浄エアー噴出通路711bにエアーを供給すると、カバーガラス717に向けてエアーは噴出される。この結果、カバーガラス717の被加工物側開口部712側の面が洗浄されるとともに、カバーガラス717に衝突したエアーが被加工物側開口部712側に向けて流出するので、チャックテーブル36に保持された被加工物に集光器51からレーザー光線が照射されることによって飛散されるデブリの集光器51側への移動が抑制される。なお、洗浄エアー噴出通路711bから噴出するエアーの流量は10〜30リットル/分・mm2に設定されることが望ましい。
【0022】
図示の実施形態におけるデブリ排出機構7は、レーザー光線の照射によって飛散されるデブリを吹き飛ばすデブリ吹き飛ばし手段75を具備している。デブリ吹き飛ばし手段75は、デブリ吸引ケース71の上面から被加工物側開口部712における連通路713に開口するノズル挿入穴715に装着されるデブリ吹き飛ばしノズル751と、該デブリ吹き飛ばしノズル751に接続された吹き飛ばしエアー供給通路752と、該吹き飛ばしエアー供給通路752を通してデブリ吹き飛ばしノズル751にエアーを供給する吹き飛ばしエアー供給手段753とからなっている。上記デブリ吹き飛ばしノズル751は、その先端が被加工物側開口部712において吸引通路714の反対側に隣接して配設される。なお、デブリ吸引ケース71には、デブリ吹き飛ばしノズル751の先端部が位置付けられる領域において連通路713に一端が開口し他端が図3において右側面に開口する連通穴716が設けられている。この連通穴716は、他端部に栓をしてもよい。
【0023】
図示の実施形態におけるデブリ吹き飛ばし手段75は以上のように構成されており、吹き飛ばしエアー供給手段753を作動し、吹き飛ばしエアー供給通路752を介してデブリ吹き飛ばしノズル751にエアーを供給すると、チャックテーブル36に保持された被加工物に集光器51からレーザー光線が照射されることによって飛散されるデブリがデブリ吹き飛ばしノズル751から噴出されるエアーによって吸引通路714側に向けて吹き飛ばされる。なお、デブリ吹き飛ばしノズル751から噴出するエアーの流量は3〜10リットル/分・mm2に設定されことが望ましい。
【0024】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図5には、上述したレーザー加工装置によって加工される被加工物としての半導体ウエーハ10が環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着された状態の斜視図が示されている。半導体ウエーハ10は、表面10aに格子状の分割予定ライン101が形成され、格子状の分割予定ライン101によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。このように構成された半導体ウエーハ10に分割予定ライン101に沿ってレーザー加工溝を形成するには、図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に半導体ウエーハ10のダイシングテープT側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、半導体ウエーハ10はダイシングテープTを介してチャックテーブル36上に吸引保持する(ウエーハ保持工程)。なお、半導体ウエーハ10をダイシングテープTを介して環状のフレームFは、チャックテーブル36に配設されたクランプ362によって固定される。
【0025】
上述したウエーハ保持工程を実施したならば、加工送り手段37を作動して半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル36を撮像手段6の直下に位置付ける。チャックテーブル36が撮像手段6の直下に位置付けられると、撮像手段6および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段6および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ10の所定方向に形成されている分割予定ライン101に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段5の集光器51との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ10に形成されている所定方向と直交する方向に形成されている分割予定ライン101に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。
【0026】
以上のようにしてチャックテーブル36上に保持された半導体ウエーハ10に形成されている分割予冷ラインを検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図6の(a)で示すようにチャックテーブル36をレーザー光線照射手段5の集光器51が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割予冷ライン101の一端(図6の(a)において左端)を集光器51の直下に位置付ける。そして、集光器51から照射されるパルスレーザー光線の集光点Pを半導体ウエーハ10の表面(上面)付近に合わせる。次に、レーザー光線照射手段5の集光器51から半導体ウエーハに対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を図6の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、分割予冷ライン101の他端(図6の(b)において右端)が集光器51の直下位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル36の移動を停止する。この結果、図6の(b)に示すように半導体ウエーハ10には、分割予冷ライン101に沿ってレーザー加工溝110が形成される(レーザー加工溝形成工程)。
【0027】
なお、上記レーザー加工溝形成工程は、例えば以下の加工条件で行われる。
レーザー光線の光源 :YVO4レーザーまたはYAGレーザー
波長 :355nm
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :4W
集光スポット径 :φ20μm
加工送り速度 :150mm/秒
【0028】
上述したレーザー加工溝形成工程においては、半導体ウエーハ10の表面に集光器51からパルスレーザー光線を照射することによりデブリ100が飛散し、順次照射されるパルスレーザー光線が飛散したデブリに当たると、レーザー光線は屈曲してデバイスに照射され、デバイスを損傷させるという問題がある。しかるに、図示の実施形態においては上述したデブリ排出機構7を備えており、デブリ排出手段72の負圧生成用エアー供給手段723を作動し負圧生成用エアー供給通路722および環状溝721cを介して負圧生成筒体721の外周に開口する複数の負圧生成エアー噴出通路721aにエアーを供給する。この結果、複数の負圧生成エアー噴出通路721aを通して吸引通路714の一端側から他端側に向けて高速で流れるエアーの作用で吸引通路714の一端側である連通路713の被加工物側開口部712側に負圧が生成されるため、チャックテーブル36に保持された被加工物に集光器51からレーザー光線が照射されることによって飛散されるデブリ100は、吸引通路714の一端から吸引され負圧生成筒体721を介して集塵器73に排出される。従って、レーザー光線が照射されることによって飛散されるデブリ100は、集光器51から照射されるレーザー光線の光路から直ちに排除されるため、順次照射されるパルスレーザー光線が飛散したデブリ100に当たることがなく、飛散したデブリ100にレーザー光線は当たることにより屈曲してデバイスを損傷させるという問題が解消する。
【0029】
また、図示の実施形態においては上述したデブリ排出機構7においては、洗浄エアー供給手段732を作動し洗浄エアー供給通路731を介して複数の洗浄エアー噴出通路711bにエアーを供給し、カバーガラス717に向けてエアーを噴出する。この結果、カバーガラス717の被加工物側開口部712側の面が洗浄されるとともに、カバーガラス717に衝突したエアーが被加工物側開口部712側に向けて流出するので、チャックテーブル36に保持された被加工物に集光器51からレーザー光線が照射されることによって飛散されるデブリの集光器51側への移動が抑制される。従って、レーザー光線が照射されることによって飛散されるデブリ100が集光器51から照射されるレーザー光線の光路から直ちに排除されるため、順次照射されるパルスレーザー光線が飛散したデブリ100に当たることがなく、飛散したデブリにレーザー光線は当たることにより屈曲してデバイスを損傷させるという問題が解消する。
【0030】
更に、図示の実施形態においては上述したデブリ排出機構7は、デブリ吹き飛ばし手段75を備え、吹き飛ばしエアー供給手段753を作動し、吹き飛ばしエアー供給通路752を介してデブリ吹き飛ばしノズル751にエアーを供給する。この結果、チャックテーブル36に保持された被加工物に集光器51からレーザー光線が照射されることによって飛散されるデブリ100がデブリ吹き飛ばしノズル751から噴出されるエアーによって吸引通路714側に向けて吹き飛ばされる。従って、集光器51からレーザー光線が照射されることによって飛散されるデブリは、集光器51から照射されるレーザー光線の光路から直ちに排除されるため、順次照射されるパルスレーザー光線が飛散したデブリに当たることがなく、飛散したデブリ100にレーザー光線は当たることにより屈曲してデバイスを損傷させるという問題が解消する。
【符号の説明】
【0031】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
31:案内レール
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
38:割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット
5:レーザー光線照射手段
51:集光器
6:撮像手段
7:デブリ排出機構
71:デブリ吸引ケース
711:集光器側開口部
712:被加工物側開口部
713:連通路
714:吸引通路
72:デブリ排出手段
721:負圧生成筒体
722:負圧生成用エアー供給通路
723:負圧生成用エアー供給手段
73:集塵器
図1
図2
図3
図4
図5
図6