特許第6363913号(P6363913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363913
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】アブソリュートエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/249 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   G01D5/249 S
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-173753(P2014-173753)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-64349(P2015-64349A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2017年4月5日
(31)【優先権主張番号】10 2013 219 099.9
(32)【優先日】2013年9月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】エルンスト・ティーリッケ
(72)【発明者】
【氏名】ダーニエール・アウアー
(72)【発明者】
【氏名】エルヴィン・ブラッツドルム
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−068978(JP,A)
【文献】 特開平09−113313(JP,A)
【文献】 米国特許第05687103(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00− 5/62
G01B 15/00−15/08
21/00−21/32
H05G 1/00− 2/00
A61M 36/10−36/14
A61N 5/00− 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・1つのスケール(22)と1つの走査ユニット(24)とを有する第1構成群(20.1)、
・少なくとも1つの周辺ユニット(30,31,32,33,34)を有する第2構成群(20.2)、及び
・複数の電線(21)から構成されるアブソリュートエンコーダ(20)であって、
少なくとも1つのコードトラック(23)が、前記スケール(22)上に配置されていて、位置信号(S)が、前記走査ユニット(24)を用いて少なくとも1つのコードトラック(23)を測定方向(X)に走査することによって生成可能であり、デジタル式の絶対位置値(P)が、当該位置信号(S)から生成可能であり、
前記少なくとも1つの周辺ユニット(30,31,32,33,34)は、前記エンコーダ(20)の付加機能又は補助機能を実行するために構成されていて、
電気信号を伝送するため、前記第1構成群(20.1)と前記第2構成群(20.2)とは、前記複数の電線(21)によって互いに接続されている当該アブソリュートエンコーダ(20)において、
前記エンコーダ(20)が、起動モードと通常モードとで稼働可能であり、前記通常モードで稼働させるために必要である前記第1構成群(20.1)の全ての部品は、機械の放射線領域(A)内で使用するために適する部品(22,25,26,41)であり、起動メモリ(70)が、前記第1構成群(20.1)内にさらに設けられていて、前記起動メモリ(70)は、通常モードで稼働させるために必要であるデータを有し、前記起動メモリ(70)は、機械の放射線領域(A)で使用するためには適さなく、前記起動メモリ(70)の内容が、前記起動モード中にメモリユニット(34,35)に伝送可能であり、前記メモリユニット(34,35)は、前記放射線領域(A)の外側に配置されていて、前記メモリユニット(34,35)の内容が、前記通常モードで稼働させるために使用される当該アブソリュートエンコーダ(20)。
【請求項2】
前記メモリユニット(34)は、前記第2構成群(20.2)内に配置されている請求項1に記載のアブソリュートエンコーダ(20)。
【請求項3】
マイクロコントローラ(72)が、前記データを前記起動メモリ(70)から前記メモリユニット(34)に伝送するために前記第2構成群(20.2)内に配置されている請求項2に記載のアブソリュートエンコーダ(20)。
【請求項4】
前記メモリユニット(54)は、制御ユニット(50)内に配置されていて、前記エンコーダ(20)が、この制御ユニット(50)の下で稼働可能である請求項1に記載のアブソリュートエンコーダ(20)。
【請求項5】
識別メモリ(71)が、前記第1構成群(20.1)内にさらに配置されていて、この識別メモリ(71)は、機械の放射線領域(A)内で使用するために耐放射線性に構成されていて、前記データを前記起動メモリ(70)から前記メモリユニット(34,54)に伝送することが必要であるか否かが、前記識別メモリ(71)の内容に基づいて確認可能である請求項1〜4のいずれか1項に記載のアブソリュートエンコーダ(20)。
【請求項6】
前記第2構成群(20.2)は、切換要素(74)をさらに有し、この切替要素(74)の操作が、起動モードを開始させることができる請求項1〜5のいずれか1項に記載のアブソリュートエンコーダ(20)。
【請求項7】
前記第2構成群(20.2)は、信号発生器(73)をさらに有し、起動が必要であることが、この信号発生器(73)によって信号で通知可能である請求項1〜6のいずれか1項に記載のアブソリュートエンコーダ(20)。
【請求項8】
・1つのスケール(22)と1つの走査ユニット(24)とを有する第1構成群(20.1)、
・少なくとも1つの周辺ユニット(30,31,32,33,34)を有する第2構成群(20.2)、及び
・複数の電線(21)から構成されるアブソリュートエンコーダ(20)を稼働させるための方法であって、
少なくとも1つのコードトラック(23)が、前記スケール(22)上に配置されていて、位置信号(S)が、前記走査ユニット(24)を用いて少なくとも1つのコードトラック(23)を測定方向(X)に走査することによって生成可能であり、デジタル式の絶対位置値(P)が、当該位置信号(S)から生成可能であり、
前記少なくとも1つの周辺ユニット(30,31,32,33,34)は、前記エンコーダ(20)の付加機能又は補助機能を実行するために構成されていて、
電気信号を伝送するため、前記第1構成群(20.1)と前記第2構成群(20.2)とは、前記複数の電線(21)によって互いに接続されている当該方法において、
前記エンコーダ(20)が、起動モードと通常モードとで稼働可能であり、前記通常モードで稼働させるために必要である前記第1構成群(20.1)の全ての部品は、機械の放射線領域(A)内で使用するために適する部品(22,25,26,41)であり、起動メモリ(70)が、前記第1構成群(20.1)内にさらに設けられていて、前記起動メモリ(70)は、通常モードで稼働させるために必要であるデータを有し、前記起動メモリ(70)は、機械の放射線領域(A)で使用するためには適さなく、
前記起動メモリ(70)の内容が、前記起動モード中にメモリユニット(34,35)に伝送され、前記メモリユニット(34,35)は、前記放射線領域(A)の外側に配置されていて、前記メモリユニット(34,35)の内容が、前記通常モードで稼働させるために使用される当該方法。
【請求項9】
前記起動メモリ(70)の内容を前記メモリユニット(34,54)に伝送することは、制御ユニット(50)によって実行され、前記エンコーダ(20)が、この制御ユニット(50)の下で稼働される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
マイクロコントローラ(72)が、前記第2構成群(20.2)内に配置されていて、このマイクロコントローラ(72)は、起動ユニットとして前記起動メモリ(70)の内容を前記メモリユニット(34,54)に伝送する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
識別メモリ(71)が、前記第1構成群(20.1)内に配置されていて、この識別メモリ(71)は、機械の放射線領域(A)内で使用するために耐放射線性に構成されていて、前記データを前記起動メモリ(70)から前記メモリユニット(34,54)に伝送することが必要であるか否かが、前記識別メモリ(71)の内容に基づいて確認される請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
サービス技術者が、前記起動モードの稼働が必要であることを知らせる確認メッセージに肯定的に応答したときに初めて、前記起動メモリ(70)の内容の伝送が開始される請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載のアブソリュートエンコーダ及び請求項8に記載の当該アブソリュートエンコーダを稼働させるための方法に関する。当該アブソリュートエンコーダは、高いエネルギーのイオン化放射線に曝されている設備又は機械内で使用するために適する。
【背景技術】
【0002】
エンコーダは、設備及び機械において移動する部品の位置(長さ及び/又は角度)を測定するために様々な技術分野で必要になる。当該エンコーダは、その機能原理に基づいて2つのグループに区分される。一方では、インクリメンタルエンコーダが存在する。当該エンコーダでは、位置の測定が、インクリメンタル目盛の目盛周期の数に基づく。他方では、アブソリュートエンコーダが存在する。当該エンコーダでは、位置が、絶対目盛を走査して評価することによって取得される。
【0003】
インクリメンタルエンコーダは、アブソリュートエンコーダと比べて簡単で頑丈な構造を有するものの、位置情報が、その起動直後に存在せず、絶対位置を特定できるようにするためには、まず、いわゆる基準走行によって、基準マークを通過する必要があるという欠点がある。それ故に、多くの技術分野において、好ましくは、絶対位置値が、起動の直後でも常に提供されるアブソリュートエンコーダが、益々使用されつつある。当該アブソリュートエンコーダは、例えば欧州特許公開第0660209号明細書に記載されている。
【0004】
アブソリュートエンコーダの使用が依然として問題である技術分野は、高いエネルギーのイオン化放射線に曝されている設備又は機械である。すなわち、当該設備又は機械の適用分野が、当該放射線の使用を必要とする。特に、医療技術が、当該適用分野として挙げられる。この医療分野では、病気を治療するため、又は病気の進行を遅らせるため、高いエネルギーのイオン化放射線が、適切に使用される。この場合、主に、ガンマ線、レントゲン線又は粒子線(陽子、中性子、電子等)が使用される。
【0005】
当該放射線に曝されているインクリメンタルエンコーダは、その簡単な構造に起因して非常に丈夫のままに維持されることが分かっている。これに対して、絶対位置値を測定するために複雑な構造を必要とするアブソリュートエンコーダは、高いエネルギーのイオン化放射線に曝されるときに故障しやすい。メモリモジュールが、特に問題のある部品であることが実証されている。何故なら、メモリの内容が、放射線の影響下で変化し得るからである。こうして発生する故障は、多くの場合に直すのが困難である。何故なら、当該故障のパターンは、不規則であるからである。
【0006】
未公開の独国特許出願第102012218890.8号明細書は、高いエネルギーのイオン化放射線に曝され得る環境下での使用に対しても適するアブソリュートエンコーダを開示する。当該エンコーダは、2つの構成群から構成される。この場合、第1構成群が、位置測定に直接に使用される機能ブロックを有し、第2構成群が、補助機能及び付加機能を実行する機能ブロックを有する。第1構成群は、いわゆる耐放射線性モジュールから構成されている、すなわち機械の放射線領域内での使用に対して適するモジュールから構成されている。第2構成群は、第1構成群から空間的に分離され、したがって当該機械の放射線領域の外側に配置され得るので、この第2構成群は、従来のモジュールから構成され得る。エンコーダの当該複数の機能の分離は、良好な費用便益比を可能にする。
【0007】
当該良好な費用便益比は、点検時にも言える。何故なら、場合によっては、当該複数の構成群のうちの1つの構成群を交換すれば十分だからである。実際には、交換すべき構成群は、大抵は第1構成群になる。何故なら、第1構成群は、高いエネルギーのイオン化放射線の環境下で稼働されるだけではなくて、この第1構成群は、機械的摩耗、温度変動等にも曝されているからである。
【0008】
エンコーダを稼働させるために必要になるデータが、多くの場合は製造業者によって第1構成群に割り当てられている。当該データは、技術仕様書(解像度、インターフェースプロトコル、型番、...)に関する情報でもよい。当該情報は、専門家の間では電子式銘板とも呼ばれる。さらに、これらのデータは、エンコーダの精度を最適にするために必要になる補正値を有してもよい。メモリモジュールの使用は、上記の理由から問題があるので、これらのデータは、エンコーダつまり第1構成群の製造業者によってこの第1構成群とは別に提供される必要がある、例えば、データ媒体(DVD−ROM,CD−ROM,...)又はハードコピーに記録される必要がある。
【0009】
このとき、第1構成群を交換するサービス技術者は、当該提供されたデータがエンコーダを稼働させるために必要になる場所、すなわち第2構成群(この第2構成群は、機械の放射線領域の外側で稼働されるので、メモリモジュールが、この第2構成群内で使用される)内と、エンコーダが接続されている後続の電子装置(例えば、数値制御装置)内とにも、当該供給されたデータを記憶する必要がある。しかしながら、この方法は望ましくない。何故なら、この方法は、コストがかかり且つ間違えやすいからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許公開第0660209号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、点検しやすい形式のアブソリュートエンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1に記載のアブソリュートエンコーダによって解決される。このアブソリュートエンコーダの好適な詳細は、請求項1に従属する請求項に記載されている。
【0013】
この場合、
・1つのスケールと1つの走査ユニットとを有する第1構成群、
・少なくとも1つの周辺ユニットを有する第2構成群、及び
・複数の電線から構成されるアブソリュートエンコーダが提供される。
【0014】
少なくとも1つのコードトラックが、前記スケール上に配置されている。位置信号が、前記走査ユニットを用いて少なくとも1つのコードトラックを測定方向に走査することによって生成可能である。デジタル式の絶対位置値が、当該位置信号から生成可能である。
【0015】
前記少なくとも1つの周辺ユニットは、前記エンコーダの付加機能又は補助機能を実行するために構成されている。
【0016】
電気信号を伝送するため、前記第1構成群と前記第2構成群とは、前記複数の電線によって互いに接続されている。
【0017】
この場合、前記エンコーダが、起動モードと通常モードとで稼働可能である。前記通常モードで稼働させるために必要である前記第1構成群の全ての部品は、機械の放射線領域内で使用するために適する部品である。起動メモリが、前記第1構成群内にさらに設けられている。前記起動メモリは、通常モードで稼働させるために必要であるデータを有する。前記起動メモリは、機械の放射線領域で使用するためには適さない。前記起動メモリの内容が、前記起動モード中にメモリユニットに伝送可能である。前記メモリユニットは、前記放射線領域の外側に配置されている。前記メモリユニットの内容が、前記通常モードで稼働させるために使用される。
【0018】
さらに、本発明の課題は、上記エンコーダを確実に起動するための方法を提供することである。
【0019】
この課題は、請求項8に記載の方法によって解決される。この方法の好適な詳細は、請求項8に従属する請求項に記載されている。
・1つのスケールと1つの走査ユニットとを有する第1構成群、
・少なくとも1つの周辺ユニットを有する第2構成群、及び
・複数の電線から構成されるアブソリュートエンコーダを稼働させるための方法が提供される。
【0020】
少なくとも1つのコードトラックが、前記スケール上に配置されている。位置信号が、前記走査ユニットを用いて少なくとも1つのコードトラックを測定方向に走査することによって生成可能である。デジタル式の絶対位置値が、当該位置信号から生成可能である。
【0021】
前記少なくとも1つの周辺ユニットは、前記エンコーダの付加機能又は補助機能を実行するために構成されている。
【0022】
電気信号を伝送するため、前記第1構成群と前記第2構成群とは、前記複数の電線によって互いに接続されている。
【0023】
この場合、前記エンコーダが、起動モードと通常モードとで稼働可能である。前記通常モードで稼働させるために必要である前記第1構成群の全ての部品は、機械の放射線領域内で使用するために適する部品である。起動メモリが、前記第1構成群内にさらに設けられている。前記起動メモリは、通常モードで稼働させるために必要であるデータを有する。前記起動メモリは、機械の放射線領域で使用するためには適さない。
【0024】
当該提供される方法に応じて、前記起動メモリの内容が、前記起動モード中にメモリユニットに伝送される。前記メモリユニットは、前記放射線領域の外側に配置されている。前記メモリユニットの内容が、前記通常モードで稼働させるために使用される。
【0025】
以下に、本発明のその他の利点及び詳細を図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a】医療用放射線機器の概略平面図である。
図1b】医療用放射線機器の概略側面図である。
図2】本発明のエンコーダの第1の実施の形態のブロック図である。
図3】本発明のエンコーダの別の形態のブロック図である。
図4】本発明のエンコーダの別の形態のブロック図である。
図5】本発明のエンコーダの別の形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1a及び1bは、高エネルギーイオン化放射線、特に、ガンマ線、レントゲン線又は電子線を使用する設備の例として、医療用放射線機器1の概略平面図(図1a)と概略側面図(図1b)である。この放射線機器1の放射線源2が、図示された患者用ベッド3の頭部の上方に存在する。したがって、見やすさのために、この放射線源の詳細図は省略されている。例えば、腫瘍に照射するために使用される高エネルギーイオン化放射線が、主に図1aに図示された円10内で発生し得ることが示されている。したがって、以下では、この円10内の平面を放射線領域Aと呼ぶ。放射線保護領域Bが、放射線領域A、すなわちこの円10の外側に存在する。
【0028】
見て取れるように、この放射線保護領域は、非常に大まかに示されていて、主に本発明を説明するためのものである。実際には、発生する放射線のエネルギーは、放射線源から遠ざかるほど減少する。すなわち、正確な境界線は確定され得ない。以下の説明に関しては、用語の放射線領域Aとは、高いエネルギーのイオン化放射線が、従来のアブソリュートエンコーダの機能的な安全性を損ない得る線量で発生し得る設備の領域を意味する。これに対して、発生する放射線によって、従来のアブソリュートエンコーダの機能的な安全性が、発生する放射線によって損なわれない設備の周辺の領域は、放射線保護領域Bと呼ばれる。
【0029】
上記の放射線源から所定の最小間隔を守ることのほかに、遮蔽障壁が、放射線の拡散方向に配備されることによって、放射線保護領域Bが提供されてもよい。このために特に適した材料は、鉛である。
【0030】
2つのロボットアーム5及び6が、この医療用放射線機器に配置されている。この場合、第1ロボットアーム5は、コンピュータ断層撮影機(CT)の送信ユニット7を支持し、第2ロボットアーム6は、その受信ユニット8を支持する。これらのロボットアーム5,6は、(図示されていない)サーボモータによってこの送信ユニット7とこの受信ユニット8とを精密に位置決めするために使用される。当該位置は、これらのロボットアーム5,6の継手に配置されているエンコーダ20、特にロータリエンコーダ又は測角器により測定される。
【0031】
患者用ベッドが、表示された矢印の方向に移動可能に構成されている。当該位置は、別のエンコーダ20、特にリニアエンコーダによって測定される。
【0032】
当該医療用放射線機器の一部では、20MeVより高い放射線エネルギーが既に使用される。したがって、相当な放射線量が、当該設備の耐用期間にわたってエンコーダ20内に侵入され得る。使用される放射線は、ガンマ線、レントゲン線又は粒子線(陽子、中性子、電子等)が、当該放射線として使用され得る。
【0033】
図2は、エンコーダ20が高いエネルギーのイオン化放射線に曝され得る設備内で使用するために適する本発明のエンコーダ20のブロック図である。このエンコーダ20は、第1構成群20.1と第2構成群20.2とから構成される。この第1構成群20.1とこの第2構成群20.2の間で電気信号を伝送するため、これらの構成群は、複数の電線21を通じて互いに接続されている。本発明によれば、第1構成群20.1は、(図2の垂直方向の破線の左側の)放射線領域A内で使用され、第2構成群20.1は、機械又は設備の放射線保護領域B内で使用される。
【0034】
当該第1構成群20.1は、絶対位置値Pに処理可能である位置信号Sを生成するために、少なくとも1つのコードトラック23を有するスケール22を備え、且つ当該少なくとも1つのコードトラック23を走査するために走査ユニット24を備える。当該コードトラック23は、パラレルにコード化され得る(例えば、グレーコード)、又は図2に示されたようにシリアルにコード化され得る(疑似ランダムコード;PRC)。しかし、当該コード化は、例えば、異なる目盛周期(ビート原理又はバーニア原理)を有する、平行に配置された複数のコードトラック23によってアナログ式に実行されてもよい。このスケール22とこの走査ユニット24とは、測定方向Xに互いに相対移動可能に配置されている。
【0035】
したがって、当該エンコーダ20が、リニアエンコーダである場合は、そのスケール22は、例えば、コードトラック23が形成されているスケールである。ロータリエンコーダ又は測角器の場合は、そのスケール22が、一般に円板として形成されていて、そのコードトラック23が、当該円板の中心点の周りにリング状に配置されている。
【0036】
この実施の形態では、エンコーダ20が、光学透過型の方式にしたがって稼働することが示されている。すなわち、コードトラック23の位置情報が、連続する複数の透光性領域と非透光性領域とによってコード化されている。走査ユニット24が、このスケール22側に配置されていて且つ光をこのコードトラック23の方向に放射する光源25と、このコードトラック23によって変調された当該光から位置信号Sを生成する検出器ユニット26とを有する。当該位置信号Sは、アナログ式に生成されてもよく、デジタル式に生成されてもよく、デジタル式の絶対位置値Pを当該位置信号Sから生成するために適する。
【0037】
当該光走査方式のほかに、その他の走査方式も使用可能である。特に、磁気走査方式、静電容量走査方式又は電磁誘導走査方式が使用可能である。同様に、光学照射型の方式が使用され得る。この方式では、コードトラック23が、反射領域と非反射領域とから構成される。それ故に、光源25と検出器ユニット26とが、スケール22の一方の側に配置されている。
【0038】
本発明によれば、起動メモリ70が、第1構成群20.1内にさらに配置されている。この起動メモリ70は、エンコーダ20の起動に関するデータ、例えば、技術仕様書(解像度、インターフェースプロトコル、型番、...)、又は補正値を有する。この起動メモリ70は、エンコーダ20つまり具体的には第1構成群20.1の製造業者によってプログラミングされ、その内容が、インターフェース38を通じて読み取り可能である。以下で説明されているように、点検時に、第1構成群20.1が、交換される必要があるときに、当該起動に関するデータが、常に一括して転送され得ることによって、環境設定エラーが、実質的に排除される程度に、エンコーダ20の再起動が簡単になる。
【0039】
第2構成群20.2は、エンコーダ20の、付加機能又は補助機能を実行する複数の周辺ユニットから構成される。例えば、この第2構成群20.2は、通信ユニット30、信号処理ユニット31、リセットユニット32、電源ユニット33及びメモリユニット34を有し得る。
【0040】
これらの周辺ユニットのうちの少なくとも幾つかの周辺ユニット(この第1の実施の形態では、通信ユニット30、信号処理ユニット31及びメモリユニット34)、及び第1構成群20.1内の走査ユニット24つまり検出器ユニット26が、内部インターフェース38を有する。同様に、起動メモリ70のインターフェースは、内部インターフェース38である。さらに、走査ユニット24が、内部インターフェース38を有し得る。全ての内部インターフェース38が、適切な信号線を通じて互いに接続されている。これらの内部インターフェース38は、通信のための物理的な要求条件を提供し、且つインターフェースプロトコルの規則にしたがってデータを伝送するように、適切に構成されている。当該データ伝送は、パラレル又はシリアルに実行され得る。
【0041】
通信ユニット30は、一方の側にデジタル機器インターフェース36を有する。制御ユニット50との通信が、この機器インターフェース36を通じて実行される。エンコーダ20が、この制御ユニット50の下で稼働される。この機器インターフェース36は、一方では通信のための物理的な要求条件(信号レベル、データ速度、コネクタ、...)を有し、他方ではエンコーダ20と制御ユニット50との間の通信規則を規定する通信プロトコルを有する。好ましくは、この機器インターフェース36は、シリアルインターフェース、特に同期シリアルインターフェースとして構成されている。この場合、信号が、例えばRS−485規格にしたがって公知の方法で差動伝送される。第2構成群20.2と制御ユニット50とが、適切なデータ伝送ケーブル52を通じて互いに接続されている。
【0042】
既に上述したように、通信ユニット30は、他方の側に内部インターフェース38を有する。この内部インターフェース38は、第2構成群20.2の周辺ユニット(この例では、信号処理ユニット31及びメモリユニット34)と通信するために適し、及び第1構成群20.1と通信するために適し、特に起動メモリ70を読み取るために適する。当該通信は、通信ユニット30によって制御されていることが好ましいので、この通信ユニット30の内部インターフェース38が、好ましくはいわゆるマスタインターフェースとして構成されていて、その他の構成要素の内部インターフェース38が、スレーブインターフェースとして構成されている。制御ユニット50が、内部インターフェース38を有する構成要素にアクセスすることも、制御ユニット50−機器インターフェース36−内部インターフェース38のインターフェース接続を通じて可能である。特に、起動メモリ70のメモリ内容及びメモリユニット34のメモリ内容が読み取られ、場合によってはプログラミングされ得る。
【0043】
信号処理ユニット31は、電線21通じて第1構成群20.1から第2構成群20.2に供給される位置信号Sから、デジタル式の絶対位置値Pを生成し、この絶対位置値Pを、場合によっては制御ユニット50の位置要求命令に対する応答として、内部インターフェース38を通じて通信ユニット30に伝送するために使用される。このために、この信号処理ユニット31の機能は、アナログ・デジタル変換、誤差を含む位置信号Sの検出、一定数の冗長な位置信号Sからの有効な信号の選択等から成り得る。
【0044】
リセットユニット32の機能が、例えば、エンコーダ20の供給電圧の監視、及び当該供給電圧の変動時に不確定な動作状態を回避するためのリセット信号の出力でもよい。特に、当該供給電圧が、所定の電圧レベルを十分に上回ったときに初めて、通常な稼働が、エンコーダ20の起動後に開始されるように、当該リセットユニット32は機能する。当該リセット信号は、第2構成群20.2の周辺機器ユニット(図示されている例では、通信ユニット30及び信号処理ユニット31)に供給されてもよく、電線21を通じて第1構成群20.1に供給されてもよい。
【0045】
電源ユニット33が、例えばデータ伝送ケーブル52を通じて制御ユニット50からエンコーダ20に供給される供給電圧を安定化させるために使用され、及び/又は電圧レベルを、このエンコーダの構成要素又は第1構成群20.1の構成要素及び第2構成群20.2の構成要素の条件に適合させるために使用される。このために、当該電源ユニット33は、場合によっては異なる電圧を出力する複数の異なる出力部を有し、電線21を通じて第1構成群20.1に伝送することが必要になり得る。同様に、当該電源ユニット33は、可変の入力電圧から1つ以上の一定の出力電圧を出力するように適合され得る。
【0046】
この実施の形態では、メモリユニット34が、起動メモリ70内に記憶さえたデータを記憶するために適切に構成されている。このメモリユニット34は、その内部インターフェース38を通じて読み取られてプログラミングされ得る。制御ユニット50からメモリユニット34へのアクセスは、通信ユニット30の仲介の下で、機器インターフェース36と内部インターフェース38とを通じて実行され得る。
【0047】
本発明によれば、当該エンコーダ20は、少なくとも2つの稼働モードの、一方では通常モードと他方では起動モードとで稼働可能である。当該通常モードとは、エンコーダ20が、規則通りに位置値を測定し、当該測定値を制御ユニット50に伝送するために使用される稼働モードを意味する。したがって、当該位置値の測定及び伝送は、制御ユニット50の命令によって制御され得る。エンコーダ20の第1構成群20.1は、放射線領域A内で稼働されるために適していなければならないので、当該通常モードのために必要になる第1構成群20.1の全ての構成要素が、放射線に対して強く構成されている、すなわち、当該全ての構成要素が、放射線領域A内の機械の使用に適するように構成されている。
【0048】
これに対して、エンコーダ20の第2構成群20.2は、(破線の右側の)放射線保護領域B内に配置されているために、この第2構成群20.2の構成要素を耐放射線性の(放射線に対して強い)構成要素によって構成することは必要でない。
【0049】
本発明によれば、起動メモリ70が、第1構成群20.1内に存在するにもかかわらず、この起動メモリ70は、放射線に対してあまり強く構成されていなく、したがって実際には放射線領域A内での使用に適さない。この理由のから、起動モードが、この起動メモリ70の内容を放射線保護領域B内に配置されているメモリ内に転送するために設けられている。この実施の形態では、当該メモリは、第2構成群20.2内のメモリユニット34である。エンコーダ20は、通常モードでは、起動メモリ70の内容の代わりにメモリユニット34のメモリ内容を用いて稼働されるので、高いエネルギーのイオン化放射線を伴う放射によって引き起こされた起動メモリ70のメモリ内容の変化が、エンコーダ20の機能性に影響しない。
【0050】
この解決手段は、放射線領域A内での機械又は設備の耐放射線性でない(放射線に対して強くない)メモリチップの使用が、そのメモリ内容の起こり得る変化以外に、第1構成群20.1のその他の構成要素に悪影響を及ぼさないことを実証した室内実験に基づくものである。換言すれば、当該メモリチップが、高いエネルギーのイオン化放射線に曝されるときでも、第1構成群20.1の機能性が、通常モードで保証される。起動メモリ70の内容は、起動のためだけに関与し、すなわち放射線保護領域B内で稼働されるメモリ(この実施の形態では、メモリユニット34)内に転送するためだけに関与し、且つその他のモードでは使用されないままであるために、この起動メモリ70のメモリ内容の変化は、エンコーダ20の機能性に関しては問題にならない。
【0051】
起動モードの稼働は、例えば、エンコーダ20の起動直後に制御ユニット50によって自動的に開始され得る。このとき、この起動モードでは、データが、起動メモリ70からメモリユニット34内に伝送され得る。したがって、当該起動メモリ70内のデータは、データチェック機構によって、例えばCRCコードによって、又は冗長コードによって保護されていることが好ましい。こうして、場合によっては、起動メモリ70が既に変更されたか否かが確認され得る。しかも、場合によっては、エラー補正アルゴリズムがインストールされることによって、当該起動は、メモリセルが損傷しても実行される。当該データがコピーされた後に、エンコーダ20が、自動的に又は同様に制御ユニット50によって起動されて、通常モードに移行する。
【0052】
一般に、第1構成群20.1を第2構成群20.2と一緒に起動させる時に、起動メモリ70を一回コピーすることで十分であるので、ロッキング機構が設けられてもよい。このロッキング機構は、起動が既に実行されたか否かを確認可能にする。このために、識別メモリ71が、第1構成群20.1内に設けられ得る。この識別メモリ71は、耐放射線性に構成されていて、同様に内部インターフェース38を有する。
【0053】
第1の異なる方式では、当該識別メモリ71は、プログラミング可能に構成されていて、起動メモリ70のコピーの実行後に適切にプログラミングされる。このためには、場合によっては、ただ1つのメモリセルで十分である。当該プログラミングは、好ましくは不可逆であり、例えば、当該プログラミングのために設けられている導体経路(「ヒューズ」)を溶断することによって実行され得る。さらに、メモリセルをトランジスタ構造として構成すること、このトランジスタ構造のエミッタとベースとの間を電気接続することが可能である(「ツェナーザッピング」又は「ツェナーアンチヒューズ」)。このとき、起動が既に実行されたか否かが、当該識別メモリ71を読み取ることによって何時でも確認可能である。
【0054】
第2の異なる方式では、第1構成群20.1を特徴付ける一義的な識別子(例えば、シリアルナンバー)が、識別メモリ71内に記憶されている。この一義的な識別子は、起動時に第2構成群20.2のメモリユニット34内に一緒に記憶され得る。起動が、既に実行されたか否かが、識別メモリ71内の識別子をメモリユニット34内の識別子と比較することによって確認され得る。当該起動が、既に実行された場合は、エンコーダ20が、通常モードに即座に切り替えられる。
【0055】
すなわち、場合によっては記憶ユニット34内に記憶された識別子に関連する、識別メモリ71の内容に基づいて、上記制御ユニット50は、起動が実行される必要があるか否かを判定できる。まず、制御ユニット50が、起動の必要性を確認したことを表示ユニット(モニター)上に表示し、サービス技術者が、入力機器(キーボード、マウス)を用いてその確認メッセージ(安全性の問い合せ)に肯定的に応答することによって初めて当該起動を開始する、すなわち起動メモリ70の記憶内容をメモリユニット34内にコピーすることを開始するという方法で、当該確認メッセージが、セキュリティー対策として提供されてもよい。こうして、サービス技術者は、当該起動前に、第1構成群20.1と第2構成群20.2との間の正しい割り当てを再度確認できる。
【0056】
図3は、本発明のエンコーダ20の別の実施の形態のブロック図である。同じ符号が、図2に関して既に説明された構成要素に付記されていて、その説明は省略する。
【0057】
この実施の形態では、第2構成群20.2が、稼働ユニットとして使用されるマイクロコントローラ72をさらに有する。このマイクロコントローラ72は、内部インターフェース38を有し、したがってエンコーダ20の構成要素と交信できる。これらの構成要素は、同様に内部インターフェースを有し、この内部インターフェースを通じて互いに接続されている。この発明の範囲内では、当該構成は、特に起動メモリ70とメモリユニット34とに対しても成立する。
【0058】
図2に基づいて説明されている実施の形態とは違って、この実施の形態では、起動、すなわち、特に、起動メモリ70のデータをメモリユニット34内にコピーすることが、マイクロコントローラ72によって実行され得る。このために、マイクロコントローラ72の内部インターフェース38が、マスタインターフェースとして構成されている。
【0059】
この構成の利点は、当該起動が、独立して、すなわち制御ユニット50との協働なしに実行され得ることである。したがって、当該マイクロコントローラ72は、その起動後に、識別メモリ71の内容に基づいて、又は(第1の実施の形態において説明されている2つの異なる方式にしたがって)稼働メモリ70内に記憶された識別子をメモリユニット34内に記憶された識別子と比較することによって、起動が必要であるか否かを確認できる。これに応じて、当該マイクロコントローラ72は、起動が必要であるときはエンコーダ20を起動モードに切り替え、起動メモリ70の内容をメモリユニット34内にコピーし、次いで通常モードに切り替えできる。
【0060】
この代わりに、この実施の形態では、当該起動が、制御ユニット50によって開始され、マイクロコントローラ72が、コピープロセスだけを実行してもよい。
【0061】
図4は、本発明のエンコーダ20の別の実施の形態のブロック図である。同じ符号が、上記の実施の形態で説明されている構成要素に付記されている。
【0062】
上記の説明されている実施の形態と違って、起動メモリ70、メモリユニット34及びマイクロコントローラ72が、独立したメモリインターフェース48を通じて接続されている。さらに、この実施の形態でも、同様にメモリインターフェース48を有する識別メモリ71が設けられている。好ましくは、通常のメモリユニット34で既に使用できるインターフェース、例えば12Cインターフェースが、メモリインターフェース48として使用される。
【0063】
当該マイクロコントローラ72は、内部インターフェース38をさらに有してもよい。こうして、通信チャネルが、(機器インターフェース36と内部インターフェース38とを通じて)制御ユニット50とマイクロコントローラ72との間で切り替えられる。
【0064】
同様に、図2及び3に基づいて説明されている実施の形態とは違って、この実施の形態では、信号処理ユニット31が、第2構成群20.2内に配置されている代わりに、信号処理ユニット41が、第1構成群20.1内に配置されている。この配置には、デジタル式の絶対位置値Pが、既に第1構成群20.1内で生成されるという非常に有利な効果がある。この絶対位置値Pは、内部インターフェース38を通じて第2構成群20.2の通信ユニット30に伝送され得る。この場合、当該データ伝送は、データ伝送プロトコルにしたがって実行されるために、第2構成群20.2へのデジタル式の絶対位置値Pの確実な伝送が、その当業者に既知である適切な手段(例えば、チェックサム等の生成及び検査)によって保証され得る。当該構成は、特に、第1構成群20.1と第2構成群20.2との間の空間距離が、放射線領域Aと放射線保護領域Bとの間の距離に起因して大きい(数メートル)ときに有効である。
【0065】
信号処理ユニット41と通信ユニット30との間のデータ伝送時に、可能な限り大きい雑音余裕を達成するため、内部インターフェース38でも、好ましくは、例えば既知のRS−485規格にしたがうデータの差動伝送が、当該物理的な伝送に対して使用される。しかしながら、対応するドライバモジュールが、既に上述した欠点(高い価格、問題のある可用性、大きい構造)を有するので、当該データの物理的な伝送は、共通参照デジタル信号によって実行してもよい。この場合には、データ伝送が実行される電線21を選択された物理的な伝送に適合させることが必要である。
【0066】
当該信号処理ユニット41は、内部インターフェース38のほかにメモリインターフェース48も有する。したがって、この信号処理ユニット41は、通信ユニット30を通じた迂回なしに、メモリユニット34のメモリ内容を直接に読み取り又は書き込みできる。したがって、例えば、内部インターフェース38の負担が軽減される。当該負担の軽減は、特に、この内部インターフェース38が、主に位置データPを伝送するために必要になる通常モードにおいて有益である。
【0067】
上記の実施の形態に関して既に説明された起動のための全ての方法が、図4に示されたアーキテクチャによって同様に実行可能である。
【0068】
図4には、第2構成群20.2のケースに配置されている信号発生器73と切替要素74とを用いて、データを起動メモリ70からメモリユニット34にコピーすることを開始するという、別の好適な可能な実施の形態がさらに示されている。起動が、第1構成群20.2によってまだ実行されていないことを、マイクロコントローラ72(又は制御ユニット50)が、例えば、起動メモリ72の内容に基づいて確認すると、起動モードとコピープロセスとが、同時に開始されるのではなくて、起動を実行することが必要であることが、まず、信号発生器73の信号(例えば、ランプの発光又は点滅)によって、設備で作業しているサービス技術者に知らされる。当該サービス技術者が、切換要素74(例えば、スイッチ)を操作したときに初めて、起動モードへの移行が開始される。こうして、第1の実施の形態と同様に、確認メッセージが、新しい第1構成群20.1の起動時に挿入される。この確認メッセージは、新しい第1構成群20.1が、実際の第2構成群20.2に接続されていたものであるか否かを再度確認することを当該サービス技術者に許可する。この実施の形態でも、起動メモリ70からメモリユニット34へのデータの当該伝送は、その確認メッセージが、肯定的に応答された(切替要素の操作)ときに初めて開始される。
【0069】
機器インターフェース36と内部インターフェース38とが、同一に構成されている場合、通信ユニット30は、電気機械式の接続部(コネクタ及び電線)だけを機器インターフェース36と内部インターフェース38との間に有してもよい。通信ユニット30を第2構成群20.2内に全く設けないことも可能である。
【0070】
したがって、図4で選択された配置は非常に良好である。何故なら、今日のエンコーダでは、多くの場合に、検出器ユニット26と、対応するインターフェース38,48を有する信号処理ユニット41とが、一緒に1つの高集積モジュール60(ASIC又は光学式走査の場合は光学式ASIC)内に組み込まれているからである。このことは、当該高集積モジュール60は、エンコーダ20が高いエネルギーのイオン化放射線に曝され得る設備内で使用するために丈夫に製造される必要がある一方で、第1構成群のその他の構成要素−光源25及びスケール22−は、放射線領域A内で必要な変更なしに既に使用され得ることを意味する。
【0071】
図4に示されているように、固有のケース内の第2構成群20.2は、制御ユニット50から空間的に分離されて配置され得る。当該配置には、当該制御ユニット50は、エンコーダ20が2つの構成群から構成されることを「意識する」必要が全くないという非常に有利な効果がある。したがって、コストのかかる遮蔽手段(例えば、鉛シールド)によって発生する放射線から保護されているアブソリュートエンコーダが既に使用されている設備で、このエンコーダを本発明のエンコーダ20に交換すること、及び当該遮蔽手段の望まない重量を排除することが非常に簡単である。機器インターフェース36に互換性があることに配慮するだけで済む。
【0072】
しかし、上記構成と違って、一点鎖線によって示されたブロックのように、第2構成群を制御ユニット50′内に組み込むことも可能である。
【0073】
図5は、本発明のエンコーダ20の別の実施の形態を示す。この実施の形態でも、同じ符号が、上記の実施の形態で既に説明された構成要素に付記されている。
【0074】
この実施の形態では、既に説明された実施の形態とは違って、メモリユニットが、第2構成群20.2内に設けられていない。この代わりに、起動メモリ70のデータを記憶するために適するメモリユニット54が、制御ユニット53内に存在する。したがって、エンコーダ20の起動時に、又は、第1構成群20.1の交換時に、起動メモリ70の内容、特に通常モードで必要になるデータが、起動メモリ70からメモリユニット54内にコピーされる。当該コピープロセスは、制御ユニット50によって実行され、当該起動メモリへのアクセスが、既に説明されたように、機器インターフェース36と内部インターフェース38とを通じて実行される。この実施の形態でも、当該コピープロセスが開始される前に、確認メッセージが提供され得る。次いで、通常モードでは、メモリユニット54内に記憶されたデータにアクセスされる。
【符号の説明】
【0075】
1 放射線機器
2 放射線源
3 患者用ベッド
5 ロボットアーム
6 ロボットアーム
7 送信ユニット
8 受信ユニット
10 放射線領域Aの円
20 アブソリュートエンコーダ
20.1 第1構成群
20.2 第2構成群
21 電線
22 スケール
23 コードトラック
24 走査ユニット
25 光源
26 検出器ユニット
30 通信ユニット
31 信号処理ユニット
32 リセットユニット
33 電源ユニット
34 メモリユニット
36 機器インターフェース
38 内部インターフェース
41 信号処理ユニット
48 メモリインターフェース
50 制御ユニット
52 データ伝送ケーブル
54 メモリユニット
60 高集積モジュール
70 起動メモリ
71 識別メモリ
72 マイクロコントローラ
73 信号発生器
74 切替要素
A 放射線領域
B 放射線保護領域
X 測定方向
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5