(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜9のいずれか一項に記載のLC媒体の、PSまたはPSAディスプレイにおける、PSまたはPSAディスプレイにおける構成成分Aの化合物(単数または複数)のin situ重合によるLC媒体中のプレティルト角を作り出すための使用。
PSA−VA、PSA−OCB、PSA−IPS、PS−FFS、PSA−ポジ−VAまたはPSA−TNディスプレイであることを特徴とする、請求項12に記載のLCディスプレイ。
請求項12または13に記載のLCディスプレイであって、LCセルを含み、該LCセルが2つの基板および2つの電極、ここで少なくとも1つの基板は光に対して透明であり、かつ少なくとも1つの基板は1つまたは2つの電極を有する、ならびに基板間に位置して、重合した構成成分および低分子量構成成分を含む、請求項1〜9のいずれかに記載のLC媒体の層、ここで該重合した成分は、該LCセルの基板間の該LC媒体の構成成分Aの重合性化合物を重合することにより得ることができる、を有することを特徴とする、前記LCディスプレイ。
重合した構成成分が、電極に電圧を印加しながらLCセルの基板間のLC媒体の構成成分Aの重合性化合物を重合することにより得ることができることを特徴とする、請求項14に記載のLCディスプレイ。
請求項12〜15のいずれか一項に記載のLCディスプレイの製造方法であって、請求項1〜8のいずれか一項に記載のLC媒体を、2つの基板および2つの電極を有し、ここで少なくとも1つの基板が光に対して透明であり、かつ少なくとも1つの基板が1つまたは2つの電極を有するLCセル中に満たし、LC媒体の構成成分Aの重合性化合物を重合させるステップを含む、前記方法。
LC媒体の構成成分Aの重合性化合物を重合させるステップが、電極に電圧を印加しながら該重合性化合物を重合させるステップであることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
請求項1〜8のいずれか一項に記載のLC媒体の製造方法であって、少なくとも1種が請求項1または2において定義した式Iで表される化合物である1種または2種以上の低分子量液晶化合物を、1種または2種以上の重合性化合物と、ならびに任意にさらなる液晶化合物および/または添加剤と混合するステップを含む、前記方法。
【背景技術】
【0002】
背景
現在使用されている液晶ディスプレイ(LCディスプレイ)は、通常はTN(「ねじれネマチック」)タイプのものである。しかしながら、これらは、コントラストの強い視野角依存性の欠点を有する。
【0003】
さらに、より広い視野角を有するいわゆるVA(「垂直配列」)ディスプレイが、知られている。VAディスプレイのLCセルは、2つの透明電極間にLC媒体の層を含み、ここでLC媒体は、通常は負の値の誘電(DC)異方性を有する。スイッチオフ状態において、LC層の分子は、電極表面に対して垂直に(ホメオトロピックに)配列しているか、またはティルトしたホメオトロピック配向を有する。2つの電極への電圧の印加の際に、電極表面に対して平行なLC分子の再配列が起こる。
【0004】
さらに、複屈折効果に基づき、いわゆる「ベンド」配列および通常は正の(DC)異方性を有するLC層を有するOCB(「光学的に補償されたベンド」)ディスプレイが、知られている。電圧の印加の際に、電極表面に対して垂直なLC分子の再配列が起こる。さらに、OCBディスプレイは通常、暗状態におけるベンドセルの光に対する所望されない透明性を防止するために1つまたは2つ以上の複屈折光学的リターデーション膜を含む。OCBディスプレイは、TNディスプレイと比較して広い視野角および短い応答時間を有する。
【0005】
また知られているのは、いわゆるIPS(「面内切換」)ディスプレイであり、それは、2つの基板の間にLC層を含み、ここで2つの電極は、2つの基板の1つのみの上に配置され、好ましくはかみ合った櫛形状構造を有する。電極への電圧の印加の際に、LC層に対して平行な有意の成分を有する電界が、それによってそれらの間で発生する。これによって、層平面におけるLC分子の再配列が生じる。
【0006】
さらに、いわゆるFFS(「フリンジ領域切換」)ディスプレイが提唱され(とりわけS.H. Jung et al., Jpn. J. Appl. Phys., Volume 43, No. 3, 2004, 1028を参照)、それは同様に同一の基板上に2つの電極を含むが、IPSディスプレイとは対照的に、これらの1つのみが櫛形状の様式で構造化された電極の形態にあり、他方の電極は構造化されていない。強力な、いわゆる「フリンジ領域」が、それによって作り出される。つまり電極の端部に近接した強力な電界、およびセルにわたって、強力な垂直成分およびまた強力な水平成分の両方を有する電界である。IPSディスプレイおよびまたFFSディスプレイは共に、コントラストの視野角低依存性を有する。
【0007】
より最近のタイプのVAディスプレイにおいて、LC分子の均一な配列は、LCセル内の複数の相対的に小さなドメインに限定される。回位がこれらのドメイン間に存在し得、それはまたティルトドメインとして知られている。ティルトドメインを有するVAディスプレイは、慣用のVAディスプレイと比較して、コントラストおよびグレーシェードのより大きな視野角独立性を有する。さらに、このタイプのディスプレイは、スイッチオン状態にある分子の均一な配向のための電極表面の例えばラビングによる追加的な処理がもはや必要ではないため、生産がより単純である。代わりに、ティルトまたはプレティルト角の優先方向は、電極の特別な設計によって制御される。
【0008】
いわゆるMVA(「多重ドメイン垂直配列」)ディスプレイにおいて、これは通常、局所的なプレティルトを生じる突部を有する電極によって達成される。結果として、LC分子は、電圧の印加の際に、セルの異なった定義された領域における異なる方向において電極表面に対して平行に配列する。「制御された」切換がそれによって達成され、干渉回位線の形成が防止される。この配置によってディスプレイの視野角が改善されるが、しかしながらその結果、光に対するその透明性の低下がもたらされる。MVAのさらなる開発は、一方の電極側上のみの突部を使用し、一方反対の電極はスリットを有し、それによって光に対する透明性が改善される。スリットを有する電極は、電圧の印加の際にLCセルにおいて不均質な電界を発生し、それは制御された切換が尚達成されることを意味する。
【0009】
光に対する透明性のさらなる改善のために、スリットと突部との間の距離を増加させることができるが、ひいてはこの結果、応答時間の延長がもたらされる。いわゆるPVA(「パターン化VA」)ディスプレイにおいて、両方の電極がスリットによって対向する側上に構築され、その結果増加したコントラストおよび光に対する改善された透明性がもたらされるが、技術的に困難であり、ディスプレイを機械的影響(「タッピング」など)に対してより感受性にするので、突部は完全に余分になる。しかしながら、多くの適用、例えばモニターおよび特にテレビスクリーンに対し、ディスプレイの応答時間の短縮ならびにコントラストおよび輝度(透過)における改善が、要求されている。
【0010】
さらなる開発は、いわゆるPSまたはPSA(「ポリマー保持」または「ポリマー保持配列」)ディスプレイであり、それに対する用語「ポリマー保持」がまた、時々使用される。これらにおいて、少量(例えば0.3重量%、典型的には<1重量%)の1種または2種以上の重合性化合物(単数または複数)を、LC媒体に加え、LCセル中への導入の後、電極間で印加された電圧を伴って、または伴わずに、通常はUV光重合によって、in situで重合させるかまたは架橋させる。重合を、LC媒体が液晶相を呈する温度で、通常は室温で行う。反応性メソゲンまたは「RM」としてもまた知られている、重合性メソゲン性または液晶性化合物のLC混合物への添加は、特に好適であることが明らかになった。
【0011】
他に示さない限り、用語「PSA」を、PSディスプレイおよびPSAディスプレイを表すものとして以下で使用する。
【0012】
その一方で、PS(A)原理は、種々の古典的なLCディスプレイにおいて使用されている。したがって、例えば、PSA−VA、PSA−OCB、PSA−IPS、PSA−FFSおよびPSA−TNディスプレイが、知られている。重合性化合物(単数または複数)の重合は、好ましくはPSA−VAおよびPSA−OCBディスプレイの場合においては印加された電圧を伴って、およびPSA−IPSディスプレイの場合においては印加された電圧を伴って、または伴わずに、好ましくは伴わずに起こる。試験セルにおいて例証することができるように、PS(A)方法によって、セルにおいてプレティルトがもたらされる。PSA−OCBディスプレイの場合において、例えば、ベンド構造を、オフセット電圧が不必要であるかまたは低減され得るように安定化することが可能である。PSA−VAディスプレイの場合において、プレティルトは、応答時間に対して正の効果を有する。PSA−VAディスプレイについては、標準的なMVAまたはPVAピクセルおよび電極レイアウトを、使用することができる。さらに、しかしながら、例えば1つのみの構造化した電極側および突部なしで間に合わせることがまた可能であり、それによって生産が著しく単純化され、同時に光に対する非常に良好な透明性と同時に非常に良好なコントラストがもたらされる。
【0013】
さらに、いわゆるポジ−VAディスプレイ(「正のVA」)は、特に好適なモードであると明らかになった。古典的なVAディスプレイにおけるように、ポジ−VAディスプレイにおけるLC分子の初期配向は、電圧を印加しない際の初期状態において、ホメオトロピック、つまり基板に対して実質的に垂直である。しかしながら、古典的なVAディスプレイとは対照的に、ポジ−VAディスプレイにおいて、正の誘電異方性を有するLC媒体が、使用されている。通常使用されているIPSディスプレイにおけるように、ポジ−VAディスプレイにおける2つの電極は、2つの基板の1つのみの上に配置され、好ましくはかみ合った櫛形状の(インターデジタル(interdigital))構造を示す。LC媒体の層に対して実質的に平行である電界を作り出すインターデジタル電極への電圧の印加によって、LC分子は、基板に対して実質的に平行である配向に移行する。ポジ−VAディスプレイにおいても、ポリマー安定化(PSA)は、有利であると明らかになり、つまりRMのLC媒体への添加であり、それはセル中で重合し、それによって切換時間の著しい低減を実現することができる。
【0014】
PSA−VAディスプレイは、例えばJP 10-036847 A、EP 1 170 626 A2、US 6,861,107、US 7,169,449、US 2004/0191428 A1、US 2006/0066793 A1およびUS 2006/0103804 A1に記載されている。PSA−OCBディスプレイは、例えばT.-J- Chen et al., Jpn. J. Appl. Phys. 45, 2006, 2702-2704およびS. H. Kim, L.-C- Chien, Jpn. J. Appl. Phys. 43, 2004, 7643-7647に記載されている。PSA−IPSディスプレイは、例えばUS 6,177,972およびAppl. Phys. Lett. 1999, 75(21), 3264に記載されている。PSA−TNディスプレイは、例えばOptics Express 2004, 12(7), 1221に記載されている。
【0015】
上に記載されている慣用のLCディスプレイのように、PSAディスプレイは、アクティブマトリックスまたはパッシブマトリックスディスプレイとして作動することができる。先行技術から知られているように、アクティブマトリックスディスプレイの場合において、個々のピクセルは、通常は集積された非線形能動素子、例えばトランジスタ(例えば薄膜トランジスタ(「TFT」))によってアドレスされ、一方パッシブマトリックスディスプレイの場合において、個々のピクセルは、通常は多重化方法によってアドレスされる。
【0016】
特にモニターおよびとりわけテレビ適用のために、LCディスプレイの応答時間、しかしまたコントラストおよび輝度(したがってまた透過)の最適化が、要求され続けている。PSA法は、ここで重大な利点を提供することができる。特にPSA−VA、PSA−IPS、PSA−FFSおよびPSA−ポジ−VAディスプレイの場合において、試験セルにおける測定可能なプレティルトと相関する応答時間の短縮を、他のパラメーターに対する著しい悪影響を伴わずに達成することができる。
【0017】
先行技術において、例えば以下の式で表される重合性化合物を、活用する:
【化1】
式中、Pは、重合性基、通常は例えばUS 7,169,449に記載されるアクリレートまたはメタクリレート基を示す。
【0018】
しかしながら、例えば不適切なティルトが確立されるようになるかもしくはティルトが全く確立されるようにはならないので、または例えばいわゆる「電圧保持比」(VHRもしくはHR)がTFTディスプレイ適用に不適切であるので、LC混合物(また以下で「LCホスト混合物」と称する)+重合性構成成分(典型的にRM)からなるすべての組み合わせがPSAディスプレイに適しているとは限らないという問題が生じる。さらに、PSAディスプレイにおける使用の際に、先行技術から知られているLC混合物およびRMが尚いくつかの欠点を有することが、見出された。したがって、LC混合物に可溶であるすべての既知のRMがPSAディスプレイにおいて使用するに適しているとは限らない。さらに、RMに適している選択基準をPSAディスプレイにおけるプレティルトの直接的な測定に加えて見出すことは、しばしば困難である。好適なRMの選択は、光開始剤を添加せずにUV光による重合が所望される場合に尚小さくなり、それはある適用のために有利であり得る。
【0019】
さらに、LCホスト混合物/RMの選択された組み合わせは、可能な限り低い回転粘度および最良の可能な電気的特性を有しなければならない。特に、それは、可能な限り高いVHRを有しなければならない。PSAディスプレイにおいて、UV光での照射の後の高いVHRは、UV露光がディスプレイ生産プロセスの所要の部分であり、しかしまた完成したディスプレイの作動中の正常な露光として生じるので、特に必要である。
【0020】
特に、特に小さなプレティルト角を生じるPSAディスプレイのための利用可能な新規な材料を有するのが、望ましいであろう。ここでの好ましい材料は、現在まで知られている材料と同一の露光時間にわたる重合中に、および/または既知の材料で達成することができる(より高い)プレティルト角をより短い露光時間の後に既に達成することができる使用を通じて、より小さなプレティルト角を生じるものである。ディスプレイの生産時間(「タクトタイム」)をしたがって短縮し、生産プロセスのコストを低減することができる。
【0021】
PSAディスプレイの生産におけるさらなる問題は、特にディスプレイにおけるプレティルト角を作り出すのための重合ステップの後の、残留量の未重合RMの存在または除去である。例えば、このタイプの未反応RMは、ディスプレイの特性に、例えばディスプレイの完成後の作動中に制御されない様式で重合することによって悪影響を及ぼし得る。
【0022】
したがって、先行技術から知られているPSAディスプレイは、しばしばいわゆる「 残像(image sticking)」または「画像焼け(image burn)」の所望されない影響を示す。つまり個々のピクセルの一時的なアドレシングによってLCディスプレイにおいて生じた画像は、これらのピクセルにおける電界をスイッチオフした後または他のピクセルがアドレスされた後にさえも尚依然として視覚可能である。
【0023】
この「残像」は、一方では低いVHRを有するLCホスト混合物を使用する場合に生じ得る。太陽光またはバックライティングのUV成分は、その中のLC分子の所望されない分解反応を引き起こし、したがってイオン性またはフリーラジカル不純物の生成を開始し得る。これらは、特に電極または配向層で蓄積し得、ここでそれらは、実効印加電圧を低下させ得る。この結果をまた、ポリマー構成成分を有しない慣用のLCディスプレイにおいて観察することができる。
【0024】
さらに、未重合RMの存在によって引き起こされた付加的な「残像」効果は、しばしばPSAディスプレイにおいて観察される。残留RMの制御されない重合は、ここで環境からのUV光によって、またはバックライティングによって開始する。切り換えられた表示領域において、これによって、多数のアドレシングサイクルの後のティルト角が変化する。その結果、切り換えられた領域における透過の変化が生じ得、一方それは、切り換えられていない領域において依然として不変である。
【0025】
したがって、RMの重合がPSAディスプレイの生産の間に可能な限り完全に進行し、ディスプレイ中の未重合のRMの存在が可能な限り除外されるかまたは最小に低減されるのが、望ましい。この目的のために、高度に効果的であり、完全な重合を可能にする材料が、必要である。さらに、これらの残留量の制御された反応が、所望されるであろう。これは、RMが現在まで知られている材料よりより迅速かつ効果的に重合する場合にはより単純であろう。
【0026】
PSAディスプレイの作動において観察されたさらなる問題は、プレティルト角の安定性である。したがって、上に記載されるようにRMを重合させることによるディスプレイ製造の間に生じたプレティルト角が一定を維持せず、ディスプレイをその作動中に電圧ストレスにさらした後に低下し得ることが、観察された。これは、ディスプレイ性能に、例えば黒色状態透過を増大させ、したがってコントラストを低下させることによって負に影響し得る。
【0027】
したがって、上に記載した欠点を示さないかまたは小さな程度に示すに過ぎず、改善された特性を有する、特にVAおよびOCBタイプのPSAディスプレイ、ならびにかかるディスプレイにおいて使用するためのLC媒体および重合性化合物についての大きな需要が、尚ある。
【0028】
特に、低温においても高い比抵抗、同時に大きな作動温度範囲、短い応答時間、ならびに低いしきい値電圧、低いプレティルト角、プレティルト角の高い安定性、グレーシェードの多重度、高いコントラストおよび広い視野角を可能にし、かつUV露光の後の「電圧保持比」(VHR)についての高い値を有するPSAディスプレイ、およびPSAディスプレイにおいて使用するためのLC媒体についての大きな需要がある。
【発明の概要】
【0029】
本発明は、上に示した欠点を有しないか、または低下した程度に有し、可能な限り迅速かつ完全に重合し、低いプレティルト角が可能な限り迅速に確立されることを可能にし、ディスプレイ作動中のプレティルト角の安定性を改善し、ディスプレイにおける「残像」の発生を低減させるかまたは防止し、かつ好ましくは同時に非常に高い比抵抗値、低いしきい値電圧および短い応答時間を可能にする、PSAディスプレイにおける使用のための改善されたLC媒体を提供する目的に基づく。
【0030】
本発明の他の目的は、特に光学的、電気光学的および電子的用途のための新規なLC媒体、ならびにその製造のための好適なプロセスおよび中間体を提供することにある。
【0031】
この目的は、本発明において、本出願において記載した材料およびプロセスによって達成された。特に、驚くべきことに、側方のフルオロ置換を有するビフェニル化合物を含むが、ターフェニル化合物を含まない、本明細書中に開示し、クレームするLC媒体をPSAディスプレイにおいて使用することによって、ディスプレイ作動中の、および電圧ストレス後のプレティルト角の安定性を著しく改善することができることが、見出された。
【0032】
しかしながら、PSAディスプレイにおいて使用するためのかかるLC媒体は、先行技術にはこれまで開示されていない。
【0033】
概要
本発明は、
− 好ましくは反応性メソゲン(RM)から選択された、1種または2種以上の重合性化合物を含む重合性構成成分A)、および
− メソゲン性化合物または液晶化合物から選択された、1種または2種以上、好ましくは2種または3種以上の低分子量(モノマーかつ非重合性)化合物を含む、本明細書中でまた「LCホスト混合物」とも称する、液晶構成成分B)
を含むLC媒体であって、
【0034】
構成成分Bが1種または2種以上の式I
【化2】
式中、
【化3】
は、
【化4】
を示し、
【0035】
R
1およびR
2は、各々、互いに独立して、1つまたは2つの隣接していないCH
2基が−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−によって、O原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよい、1〜12個のC原子を有するアルキル、好ましくは1〜6個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを示し、
L
1〜4は、各々、互いに独立してF、Cl、OCF
3、CF
3、CH
3、CH
2F、CHF
2を示し、ここでL
1〜4の少なくとも1つはHと異なり、好ましくはFを示す、
で表される化合物を含み、
【0036】
かつ構成成分Bは、1つまたは2つ以上のフェニル環が2位および/または3位においてフッ素化されているターフェニル化合物を含まず、好ましくはいかなるターフェニル化合物をも含まない
ことを特徴とする、前記LC媒体に関する。
【0037】
本発明はさらに、本明細書中に記載したLC媒体の、LCディスプレイにおける、好ましくはPS(ポリマー安定化)またはPSA(ポリマー保持配列)タイプのLCディスプレイにおける使用に関する。
本発明はさらに、構成成分Aの重合性化合物が重合した、本明細書中に記載したLC媒体に関する。
【0038】
本発明はさらに、本明細書中に記載したLC媒体の調製方法であって、少なくとも1種が式Iで表される化合物である1種もしくは2種以上の低分子量液晶化合物、または本明細書中に記載したLCホスト混合物を、1種または2種以上の重合性化合物ならびに任意にさらなる液晶化合物および/または添加剤と混合するステップを含む、前記方法に関する、
【0039】
本発明はさらに、本明細書中に記載したLC媒体の、PSおよびPSAディスプレイにおける使用、特にLC媒体を含むPSおよびPSAディスプレイにおける、好ましくは電界または磁界における、PSAディスプレイにおける構成成分Aの化合物(単数または複数)のin-situ重合によるLC媒体におけるプレティルト角の生成のための使用に関する。
【0040】
本発明はさらに、本明細書中に記載したLC媒体を含むLCディスプレイ、特にPSまたはPSAディスプレイ、特に好ましくはPSA−VA、PSA−OCB、PSA−IPS、PS−FFS、PSA−ポジ−VAまたはPSA−TNディスプレイに関する。
【0041】
本発明はさらに、LCセルを含むPSまたはPSAタイプのLCディスプレイであって、該LCセルが2つの基板および2つの電極、ここで少なくとも1つの基板は光に対して透明であり、少なくとも1つの基板は1つまたは2つの電極を有する、ならびに基板間に位置して、重合した構成成分および低分子量構成成分を含む、本明細書に記載されるLC媒体の層、ここで該重合した構成成分は、好ましくは電極に電圧を印加しながら、該LCセルの基板間の該LC媒体の構成成分Aの化合物を重合することにより得ることができる、を有する、前記LCディスプレイに関する。
【0042】
本発明はさらに、本明細書中に記載したLCディスプレイの製造方法であって、本発明のLC媒体を本明細書中に記載した2つの基板および2つの電極を有するLCセル中に満たし、好ましくは電圧を電極に印加しながらLC媒体の構成成分Aの重合性化合物を重合させるステップを含む、前記方法に関する。
【0043】
本発明のPSおよびPSAディスプレイは、好ましくは透明な層の形態において、2つの電極を有し、それは、LCセルを形成する一方または両方の基板に適用されている。各場合のいずれにおいても、一方の電極は、例えば本明細書中に記載したようにPSA−VA、PSA−OCBもしくはPSA−TNディスプレイにおいて、2つの基板の各々に適用されており、または、例えば本発明のPSA−ポジ−VA、PSA−IPSまたはPSA−FFSディスプレイにおけるように、両方の電極は、2つの基板の一方のみに適用されており、一方他方の基板は電極を有しない。
【0044】
詳細な説明
用語「ティルト(角)」および「プレティルト(角)」を、本明細書中で交換可能に使用することが理解されるであろう。したがってティルト角への言及はプレティルト角を包含し、逆もまた同様である。用語「(プレ)ティルト」および「(プレ)ティルト角」がLCディスプレイ(ここで好ましくはPSまたはPSAディスプレイ)におけるセルの表面に対するLC媒体のLC分子のティルト配列を意味するものと理解されることが、さらに理解される。ここでのティルト角は、LC分子の長手分子軸(LCディレクタ)とLCセルを形成する、面平行の外板の表面との間の平均の角度(<90°)を示す。ティルト角に関する低い値(つまり90°角度からの大きな偏位)は、ここで大きなティルトに相当する。ティルト角の測定に適している方法を、例に示す。他に示さない限り、本明細書中に開示したティルト角値は、この測定法に関する。
【0045】
本明細書中で使用する用語「メソゲン性基」は当業者に知られており、文献に記載されており、その引きつける、および反発する相互作用の異方性により、低分子量物質またはポリマー物質において液晶(LC)相を引き起こすことに本質的に寄与する基を意味するものと理解されるであろう。メソゲン性基を含む化合物(メソゲン性化合物)は、必ずしもそれら自体LC相を有する必要はない。メソゲン性化合物が、他の化合物と混合した後に、および/または重合の後にのみLC相挙動を示すこともまた、可能である。典型的なメソゲン性基は、例えば剛体棒形状またはディスク形状のユニットである。メソゲン性化合物またはLC化合物に関して使用する用語および定義の概説は、Pure Appl. Chem. 73(5), 888 (2001)およびC. Tschierske, G. Pelzl, S. Diele, Angew. Chem. 2004, 116, 6340-6368中に示されている。
【0046】
本明細書中で使用する用語「スペーサー基」、または「Sp」は、当業者に知られており、文献に記載されている。例えば、Pure Appl. Chem. 73(5), 888 (2001)およびC. Tschierske, G. Pelzl, S. Diele, Angew. Chem. 2004, 116, 6340-6368を参照。他に示さない限り、本明細書中で使用する用語「スペーサー基」または「スペーサー」は、メソゲン性基および重合性基(単数または複数)を重合性メソゲン性化合物中で互いに結合させる屈曲基(flexible group)を意味するものと理解される。
【0047】
本明細書中で使用する用語「反応性メソゲン」および「RM」は、重合に適している1つのメソゲン性基および1つまたは2つ以上の官能基(また重合性基または基Pとも称する)を含む化合物を意味するものと理解される。
【0048】
本明細書中で使用する用語「低分子量化合物」および「非重合性化合物」は、当業者に知られている通常の条件の下での、特にRMの重合のために使用する条件の下での重合に適している官能基を含まない化合物、通常はモノマー化合物を意味するものと理解されるであろう。
本明細書中で使用する用語「有機基」は、炭素または炭化水素基を意味するものと理解されるであろう。
【0049】
本明細書中で使用する「炭素基」は、少なくとも1個の炭素原子を含む1価の、または多価の有機基を意味するものと理解され、ここでこれは、さらなる原子を含まない(例えば−C≡C−)か、または1個もしくは2個以上のさらなる原子、例えばN、O、S、P、Si、Se、As、TeもしくはGeを任意に含む(例えばカルボニルなど)。用語「炭化水素基」は、1個または2個以上のH原子および任意に1個または2個以上のヘテロ原子、例えばN、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeをさらに含む炭素基を示す。
【0050】
本明細書中で使用する用語「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはIを意味するものと理解されるであろう。
炭素または炭化水素基は、飽和の、または不飽和の基であり得る。不飽和の基は、例えばアリール、アルケニルまたはアルキニル基である。3個より多いC原子を有する炭素または炭化水素ラジカルは、直鎖状、分枝状および/または環状であり得、またスピロ結合または縮合環を含んでいてもよい。
【0051】
本明細書中で使用する用語「アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」は、多価の基、例えばアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンを包含するものと理解されるであろう。
本明細書中で使用する用語「アリール」は、芳香族炭素基またはそれから誘導される基を意味するものと理解され、用語「ヘテロアリール」は、1個または2個以上のヘテロ原子を含む上に定義したアリールを意味するものと理解されるであろう。
【0052】
好ましい炭素基および炭化水素基は、1〜40個、好ましくは1〜25個、特に好ましくは1〜18個のC原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシおよびアルコキシカルボニルオキシ、6〜40個、好ましくは6〜25個のC原子を有する任意に置換されたアリールもしくはアリールオキシ、または6〜40個、好ましくは6〜25個のC原子を有する任意に置換されたアルキルアリール、アリールアルキル、アルキルアリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシおよびアリールオキシカルボニルオキシである。
【0053】
さらに好ましい炭素基および炭化水素基は、C
1〜C
40アルキル、C
2〜C
40アルケニル、C
2〜C
40アルキニル、C
3〜C
40アリル、C
4〜C
40アルキルジエニル、C
4〜C
40ポリエニル、C
6〜C
40アリール、C
6〜C
40アルキルアリール、C
6〜C
40アリールアルキル、C
6〜C
40アルキルアリールオキシ、C
6〜C
40アリールアルキルオキシ、C
2〜C
40ヘテロアリール、C
4〜C
40シクロアルキル、C
4〜C
40シクロアルケニルなどである。特に好ましいのは、C
1〜C
22アルキル、C
2〜C
22アルケニル、C
2〜C
22アルキニル、C
3〜C
22アリル、C
4〜C
22アルキルジエニル、C
6〜C
12アリール、C
6〜C
20アリールアルキルおよびC
2〜C
20ヘテロアリールである。
【0054】
さらに好ましい炭素基および炭化水素基は、1〜40個、好ましくは1〜25個のC原子を有し、非置換であるか、またはF、Cl、Br、IもしくはCNによって単置換もしくは多置換されており、かつここで1つまたは2つ以上の隣接していないCH
2基が各々、互いに独立して−C(R
x)=C(R
x)−、−C≡C−、−N(R
x)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−によって、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよい、直鎖状、分枝状または環状アルキルラジカルである。
【0055】
R
xは、好ましくはH、ハロゲン、1〜25個のC原子を有し、ここでさらに、1個または2個以上の隣接していないC原子が−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−によって置き換えられていてもよく、かつここで1個または2個以上のH原子がフッ素によって置き換えられていてもよい直鎖状、分枝状または環状アルキル鎖、あるいは6〜40個のC原子を有する任意に置換されたアリールまたはアリールオキシ基、あるいは2〜40個のC原子を有する任意に置換されたヘテロアリールまたはヘテロアリールオキシ基を示す。
【0056】
好ましいアルコキシ基は、例えばメトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、2−メチルブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、n−ヘプトキシ、n−オクトキシ、n−ノノキシ、n−デコキシ、n−ウンデコキシ、n−ドデコキシなどである。
【0057】
好ましいアルキル基は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、シクロオクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、ドデカニル、トリフルオロメチル、パーフルオロ−n−ブチル、2,2,2−トリフルオロエチル、パーフルオロオクチル、パーフルオロヘキシルなどである。
【0058】
好ましいアルケニル基は、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルなどである。
好ましいアルキニル基は、例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニルなどである。
【0059】
好ましいアルコキシ基は、例えばメトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、2−メチルブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、n−ヘプトキシ、n−オクトキシ、n−ノノキシ、n−デコキシ、n−ウンデコキシ、n−ドデコキシなどである。
好ましいアミノ基は、例えばジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノなどである。
【0060】
アリールおよびヘテロアリール基は、単環式または多環式であり得、つまりそれらは、1つの環(例えばフェニル)または2つもしくは3つ以上の環を含むことができ、それはまた縮合されている(例えばナフチル)か、または共有結合している(例えばビフェニル)か、または縮合環および結合した環の組み合わせを含んでいてもよい。ヘテロアリール基は、好ましくはO、N、SおよびSeから選択された1個または2個以上のヘテロ原子を含む。
【0061】
特に好ましいのは、6〜25個のC原子を有する単環式、二環式または三環式アリールおよび5〜25個の環原子を有する単環式、二環式または三環式ヘテロアリールであり、それは任意に縮合環を含み、任意に置換されている。好ましいのは、さらに、5、6または7員環アリールおよびヘテロアリール基であり、ここでさらに、1つまたは2つ以上のCH基は、N、SまたはOによって、O原子および/またはS原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよい。
【0062】
好ましいアリール基は、例えばフェニル、ビフェニル、ターフェニル、[1,1’:3’,1’’]ターフェニル−2’−イル、ナフチル、アントラセン、ビナフチル、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フルオレン、インデン、インデノフルオレン、スピロビフルオレンなどである。
【0063】
好ましいヘテロアリール基は、例えば5員環、例えばピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、フラン、チオフェン、セレノフェン、オキサゾール、イソキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、6員環、例えばピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、
【0064】
または縮合基、例えばインドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、ベンゾキサゾール、ナフトキサゾール、アントロキサゾール、フェナントロキサゾール、イソキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、キノリン、イソキノリン、プテリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、ベンゾイソキノリン、アクリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾピリダジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントリジン、フェナントロリン、チエノ[2,3b]チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾチアジアゾチオフェン、またはこれらの基の組み合わせである。
【0065】
本明細書中で述べたアリールおよびヘテロアリールはまた、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、フッ素、フルオロアルキルまたはさらにアリールもしくはヘテロアリールに基よって置換されていてもよい。
【0066】
(非芳香族の)脂環式および複素環式基は、飽和環、つまり専ら単結合を含むもの、およびまた部分的に不飽和の環、つまりまた多重結合を含んでいてもよいものの両方を包含する。複素環は、好ましくはSi、O、N、SおよびSeから選択された1個または2個以上のヘテロ原子を含む。
【0067】
(非芳香族の)脂環式および複素環式基は、単環式、つまり1つのみの環を含む(例えばシクロヘキサン)かまたは多環式、つまり複数の環を含む(例えばデカヒドロナフタレンもしくはビシクロオクタン)ことができる。特に好ましいのは、飽和の基である。好ましいのは、さらに、5〜25個の環原子を有し、任意に縮合した環を含み、任意に置換されている単環式、二環式または三環式基である。好ましいのは、さらに、5、6、7または8員環の炭素環式基であり、ここでさらに1個もしくは2個以上のC原子はSiによって置き換えられていてもよく、かつ/または1つもしくは2つ以上のCH基はNによって置き換えられていてもよく、かつ/または1つもしくは2つ以上の隣接していないCH
2基は−O−および/もしくは−S−によって置き換えられていてもよい。
【0068】
好ましい脂環式および複素環式基は、例えば5員環の基、例えばシクロペンタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフラン、ピロリジン、6員環の基、例えばシクロヘキサン、シリナン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、ピペリジン、7員環の基、例えばシクロヘプタン、および縮合した基、例えばテトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、インダン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、オクタヒドロ−4,7−メタノインダン−2,5−ジイルである。
【0069】
好ましい置換基は、例えば溶解促進基、例えばアルキルもしくはアルコキシ、電子求引基、例えばフッ素、ニトロもしくはニトリル、またはポリマーにおけるガラス転移温度(Tg)を増大させるための置換基、特に嵩の大きい(bulky)基、例えばt−ブチルもしくは任意に置換されたアリール基である。
【0070】
本明細書中で「L」とも称する好ましい置換基は、例えばF、Cl、Br、I、−CN、−NO
2、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R
x)
2、−C(=O)Y
1、−C(=O)R
x、−N(R
x)
2であり、ここでR
xは、上に示した意味を有し、Y
1は、ハロゲン、6〜40個、好ましくは6〜20個のC原子を有する任意に置換されたシリルまたはアリール、および1〜25個のC原子を有し、ここで1個または2個以上のH原子が任意にFまたはClによって置き換えられていてもよい直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシを示す。
【0071】
本明細書中で使用する用語「置換シリルまたはアリール」は、好ましくは、ハロゲン、−CN、R
0、−OR
0、−CO−R
0、−CO−O−R
0、−O−CO−R
0または−O−CO−O−R
0によって置換されていることを意味し、ここでR
0は上に示した意味を有する。
特に好ましい置換基Lは、例えばF、Cl、CN、NO
2、CH
3、C
2H
5、OCH
3、OC
2H
5、COCH
3、COC
2H
5、COOCH
3、COOC
2H
5、CF
3、OCF
3、OCHF
2、OC
2F
5、さらにフェニルである。
【0072】
【化5】
は、好ましくは
【化6】
であり、ここでLは、上に示した意味の1つを有する。
【0073】
重合性基Pは、重合反応、例えばフリーラジカルもしくはイオン性連鎖重合、重付加もしくは重縮合、またはポリマー類似反応、例えばポリマー主鎖上への付加もしくは縮合に適している基である。特に好ましいのは、連鎖重合のための基、特にC=C二重結合または−C≡C−三重結合を含むもの、および開環を伴う重合に適している基、例えばオキセタンまたはエポキシド基である。
【0074】
好ましい基Pは、
【化7】
からなる群から選択され、
【0075】
ここでW
1はH、F、Cl、CN、CF
3、フェニルまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特にH、F、ClまたはCH
3を示し、W
2およびW
3は各々、互いに独立してHまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特にH、メチル、エチルまたはn−プロピルを示し、W
4、W
5およびW
6は各々、互いに独立してCl、1〜5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルを示し、W
7およびW
8は各々、互いに独立してH、Clまたは1〜5個のC原子を有するアルキルを示し、Pheは1,4−フェニレンを示し、それは任意にP−Sp−以外である上に定義した1つまたは2つ以上のラジカルLによって置換されており、k
1、k
2およびk
3は各々、互いに独立して0または1を示し、k
3は好ましくは1を示し、k
4は1〜10の整数を示す。
【0076】
特に好ましい基Pは、
【化8】
からなる群から選択され、
【0077】
ここでW
1はH、F、Cl、CN、CF
3、フェニルまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特にH、F、ClまたはCH
3を示し、W
2およびW
3は各々、互いに独立してHまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特にH、メチル、エチルまたはn−プロピルを示し、W
4、W
5およびW
6は各々、互いに独立してCl、1〜5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルを示し、W
7およびW
8は各々、互いに独立してH、Clまたは1〜5個のC原子を有するアルキルを示し、Pheは1,4−フェニレンを示し、k
1、k
2およびk
3は各々、互いに独立して0または1を示し、k
3は好ましくは1を示し、k
4は1〜10の整数を示す。
【0078】
非常に特に好ましい基Pは、CH
2=CW
1−CO−O−、特にCH
2=CH−CO−O−、CH
2=C(CH
3)−CO−O−およびCH
2=CF−CO−O−、さらに
【化9】
からなる群から選択される。
【0079】
さらなる非常に特に好ましい基Pは、ビニル、ビニルオキシ、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、クロロアクリレート、オキセタンおよびエポキシド基からなる群から選択され、特に好ましくはアクリレートまたはメタクリレート基を示す。
【0080】
単結合以外の好ましいスペーサー基Spは、式Sp’’−X’’から選択され、したがってラジカルP−Sp−は、式P−Sp’’−X’’−に適合し、ここで
Sp’’は、1〜20個、好ましくは1〜12個のC原子を有するアルキレンを示し、それは任意にF、Cl、Br、IまたはCNによって単置換または多置換されており、かつここでさらに、1つまたは2つ以上の隣接していないCH
2基は、各々、互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−N(R
0)−、− Si(R
00R
000)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−N(R
00)−CO−O−、−O−CO−N(R
00)−、−N(R
00)−CO−N(R
00)−、−CH=CH−または−C≡C−によって、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよく、
【0081】
X’’は、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R
00)−、−N(R
00)−CO−、−N(R
00)−CO−N(R
00)−、−OCH
2−、−CH
2O−、−SCH
2−、−CH
2S−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2S−、−SCF
2−、−CF
2CH
2−、−CH
2CF
2−、−CF
2CF
2−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR
0−、−CY
2=CY
3−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−または単結合を示し、
【0082】
R
00およびR
000は、各々、互いに独立して、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを示し、ならびに
Y
2およびY
3は、各々、互いに独立してH、F、ClまたはCNを示す。
【0083】
X’は、好ましくは−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR
0、−NR
0−CO−、−NR
0−CO−NR
0−または単結合である。
典型的なスペーサー基Sp’’は、例えば−(CH
2)
p1−、(CH
2CH
2O)
q1−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−S−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−NH−CH
2CH
2−または−(SiR
00R
000−O)
p1−であり、ここでp1は1〜12の整数であり、q1は1〜3の整数であり、R
00およびR
000は上に示した意味を有する。
【0084】
特に好ましい基−Sp’’−X’’−は−(CH
2)
p1−、−(CH
2)
p1−O−、−(CH
2)
p1−O−CO−、−(CH
2)
p1−O−CO−O−であり、ここでp1およびq1は上に示した意味を有する。
特に好ましい基Sp’’は、例えば、各場合において直鎖状エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレンチオエチレン、エチレン−N−メチルイミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0085】
本発明のさらなる好ましい態様において、式I中のR
aおよび/またはR
bは、2つまたは3つ以上の重合性基を含むラジカル(多官能性重合性ラジカル)を示す。このタイプの適切なラジカルおよびそれらを含む重合性化合物およびそれらの製造は、例えばUS 7,060,200 B1またはUS 2006/0172090 A1に記載されている。特に好ましいのは、以下の式から選択された多官能性重合性ラジカルである:
【化10】
【0086】
式中、
alkylは、単結合または1〜12個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキレンを示し、ここで1つまたは2つ以上の隣接していないCH
2基は、各々、互いに独立して、−C(R
00)=C(R
000)−、−C≡C−、−N(R
00)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−によって、Oおよび/またはS原子が直接互いに結合しないように置き換えられていてもよく、かつここでさらに、1個または2個以上のH原子は、F、ClまたはCNによって置き換えられていてもよく、ここでR
00およびR
000は、上に示した意味を有し、
【0087】
aaおよびbbは、各々、互いに独立して0、1、2、3、4、5または6を示し、
Xは、X’について示した意味の1つを有し、ならびに
P
1〜5は、各々、互いに独立してPについて示した意味の1つを有する。
【0088】
ビフェニル化合物、例えば2および/または3位においてフッ素化されているフェニル環を有する式Iで表されるものを含むが、側方でフッ素化されたターフェニル化合物を含まない本発明のLC媒体を、PSAディスプレイにおいて使用する際に、電圧ストレスの後のプレティルト角の安定性を著しく改善することができることが、観察された。これと比較して、任意に1つまたは2つ以上のフェニル環が2位および/または3位においてフッ素化されているターフェニル化合物、例えば式PYP−n−(O)mで表されるもの(以下の表Bを参照)を含むLC媒体は、電圧ストレスの後のプレティルト角のより大きな変化を示す。この改善は驚くべきであり、先行技術から予想することができなかった。
【0089】
好ましくは、本発明のLC媒体の構成成分Bは、ターフェニル化合物を含まず、ここでフェニル環は、置換または非置換である。
特に好ましいのは、式Iで表され、式中R
1が1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルまたは2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニルラジカルを示し、R
2が1〜6個のC原子を有する直鎖状アルコキシラジカルを示す化合物である。
【0090】
さらに好ましいのは、以下の従属式からなる群から選択された式Iで表される化合物である:
【化11】
【0092】
式中、alkylおよびalkyl*は、各々、互いに独立して1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルを示し、alkenylは、2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニルラジカルを示し、(O)は、酸素原子または単結合を示す。alkenylは、好ましくはCH
2=CH−、CH
2=CHCH
2CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
3−CH
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
3−CH=CH−またはCH
3−CH=CH−(CH
2)
2−を示す。
【0093】
特に好ましいのは、従属式I2で表される化合物である。
【0094】
PSAディスプレイの生産のために、LC媒体を、2つの平面平行な対向する基板および2つの電極を含むディスプレイセル中に満たし、ここで少なくとも1つの基板は光に対して透明であり、少なくとも1つの基板は1つまたは2つの電極を有する。構成成分Aの重合性化合物を、LCディスプレイセルの基板間のLC媒体中のin situ重合によって、好ましくは電圧を電極に印加しながら重合させるかまたは架橋させる(1種の化合物が2つまたは3つ以上の重合性基を含む場合)。重合を、1ステップにおいて行うことができる。また、先ず、プレティルト角を生じるために第1のステップにおいて任意に電圧の印加を伴って重合を行い、その後印加された電圧を伴わない第2の重合ステップにおいて、第1のステップにおいて反応していない化合物を重合させるかまたは架橋させる(「最終硬化」)ことが、可能である。
【0095】
好適であり、好ましい重合方法は、例えば熱重合または光重合、好ましくは光重合、特にUV光重合である。1種または2種以上の開始剤を、任意にまたここで加えることができる。重合に適している条件ならびに開始剤の好適なタイプおよび量は、当業者に知られており、文献に記載されている。遊離基重合に適しているのは、例えば商業的に入手できる光開始剤Irgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、Irgacure907(登録商標)、Irgacure369(登録商標)またはDarocure1173(登録商標)(Ciba AG)である。開始剤を使用する場合、その割合は、好ましくは0.001〜5重量%、特に好ましくは0.001〜1重量%である。
【0096】
本発明の重合性化合物はまた、開始剤を伴わない重合に適しており、それには、相当な利点、例えばより低い材料費および特に可能な残留量の開始剤またはその分解生成物によるLC媒体のより少ない汚染が伴う。重合を、したがってまた開始剤の添加を伴わずに行うことができる。好ましい態様において、LC媒体は、したがって重合開始剤を含まない。
【0097】
重合性構成成分AまたはLC媒体はまた、例えば保存または輸送の間の、RMの所望されない自発的な重合を防止するために1種または2種以上の安定剤を含んでもよい。安定剤の好適なタイプおよび量は、当業者に知られており、文献に記載されている。特に好適なのは、例えば、Irganox(登録商標)シリーズ(Ciba AG)からの商業的に入手できる安定剤、例えばIrganox(登録商標) 1076である。安定剤を使用する場合、RMの総量または重合性構成成分Aに基づいたそれらの割合は、好ましくは10〜500,000ppm、特に好ましくは50〜50,000ppmである。
【0098】
PSAディスプレイにおいて使用するための本発明のLC媒体は、好ましくは、>0〜<5重量%、特に好ましくは>0〜<1重量%、非常に特に好ましくは 0.01〜0.5重量%の構成成分Aの重合性化合物、特にRMから選択された重合性化合物を含む。
【0099】
特に好ましいのは、1種、2種または3種の重合性化合物を含むLC媒体である。
好ましいのは、さらに、構成成分Bがネマチック液晶相を有するLC化合物またはLC混合物であるLC媒体である。
好ましいのは、さらに、構成成分Aおよび/またはBの化合物が専らアキラルな化合物からなる群から選択された、本発明のアキラルな重合性化合物およびLC媒体である。
【0100】
好ましいのは、さらに、重合性構成成分または構成成分Aが2つまたは3つ以上、好ましくは2つまたは3つの重合性基を含む(二反応性または多反応性)、1種または2種以上の重合性化合物を含むLC媒体である。
好ましいのは、さらに、重合性構成成分または構成成分Aが専ら2つまたは3つの重合性基を含む重合性化合物を含むPSAディスプレイおよびLC媒体である。
【0101】
本発明のLC媒体中の重合性構成成分または構成成分Aの割合は、好ましくは>0〜<5%、特に好ましくは>0〜<1%、非常に特に好ましくは0.01〜0.5%である。
本発明のLC媒体中の液晶性構成成分または構成成分Bの割合は、好ましくは95〜<100%、特に好ましくは99〜<100%である。
【0102】
構成成分Aの重合性化合物を、個々に重合させることができるが、また好ましくはRMから選択される2種または3種以上の重合性化合物を含む混合物を重合させることが可能である。後者の場合において、コポリマーが生成する。
【0103】
構成成分Aにおいて使用するための好適であり、好ましい重合性化合物またはRMは、例えば以下の式から選択される:
【化13】
【0110】
式中、個々のラジカルは以下の意味を有する:
P
1、P
2およびP
3は各々、互いに独立して、好ましくはPについて本明細書中に示した意味の1つを有する重合性基、特に好ましくはアクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、オキセタン、ビニル、ビニルオキシまたはエポキシド基を示し、
【0111】
Sp
1、Sp
2およびSp
3は、各々、互いに独立して、好ましくは単結合またはSpについて本明細書中に示した意味の1つを有するスペーサー基を示し、特に好ましくは−(CH
2)
p1−、−(CH
2)
p1−O−、−(CH
2)
p1−CO−O−または−(CH
2)
p1−O−CO−O−を示し、ここでp1は1〜12の整数であり、かつここで最後に述べた基中の隣接する環への結合は、O原子を介して起こり、
【0112】
ここでさらに、ラジカルP
1−Sp
1−、P
1−Sp
2−およびP
3−Sp
3−の1つまたは2つ以上はR
aaを示してもよく、ただし存在するラジカルP
1−Sp
1−、P
2−Sp
2−およびP
3−Sp
3−の少なくとも1つはR
aaを示さず、
【0113】
R
aaは、H、F、Cl、CNまたは1〜25個のC原子を有し、ここでさらに1つもしくは2つ以上の隣接していないCH
2基が各々、互いに独立してC(R
0)=C(R
00)−、−C≡C−、−N(R
0)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−によって、Oおよび/もしくはS原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよく、かつここでさらに、1個もしくは2個以上のH原子がF、Cl、CNもしくはP
1−Sp
1−によって置き換えられていてもよい直鎖状もしくは分枝状アルキル、特に好ましくは1〜12個のC原子を有する直鎖状または分枝状の任意に単フッ素化または多フッ素化されたアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ(ここでアルケニルおよびアルキニルラジカルは少なくとも2個のC原子を有し、分枝状ラジカルは少なくとも3個のC原子を有する)を示し、
【0114】
R
0、R
00は、各々、互いに独立して、および各出現において同一に、または異なって、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを示し、
R
yおよびR
zは、各々、互いに独立してH、F、CH
3またはCF
3を示し、
X
1、X
2およびX
3は、各々、互いに独立して−CO−O−、−O−CO−または単結合を示し、
【0115】
Z
1は、−O−、−CO−、−C(R
yR
z)−または−CF
2CF
2−を示し、
Z
2およびZ
3は、各々、互いに独立して−CO−O−、−O−CO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−または−(CH
2)
n−を示し、ここでnは2、3または4であり、
【0116】
Lは、各出現において同一に、または異なって、F、Cl、CNまたは1〜12個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状の、任意に単フッ素化もしくは多フッ素化されているアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ、好ましくはFを示し、
L’およびL’’は、各々、互いに独立してH、FまたはClを示し、
【0117】
rは、0、1、2、3または4を示し、
sは、0、1、2または3を示し、
tは、0、1または2を示し、
xは、0または1を示す。
【0118】
特に好ましいのは、式M1〜M28で表される化合物である。
式M1〜M42で表される化合物において、
【化20】
は、好ましくは
【化21】
であり、
ここでLは、各出現において同一に、または異なって、本明細書中に示した意味の1つを有し、好ましくはF、Cl、CN、NO
2、CH
3、C
2H
5、C(CH
3)
3、CH(CH
3)
2、CH
2CH(CH
3)C
2H
5、OCH
3、OC
2H
5、COCH
3、COC
2H
5、COOCH
3、COOC
2H
5、CF
3、OCF
3、OCHF
2、OC
2F
5またはP−Sp−、非常に好ましくはF、Cl、CN、CH
3、C
2H
5、OCH
3、COCH
3、OCF
3またはP−Sp−、より好ましくはF、Cl、CH
3、OCH
3、COCH
3またはOCF
3、特にFまたはCH
3である。
【0119】
重合性構成成分Aに加えて、本発明のLC媒体は、メソゲン性または液晶化合物から選択され、その少なくとも1種が式Iで表される化合物である、1種または2種以上、好ましくは2種または3種以上の低分子量(つまりモノマーまたは重合していない)化合物を含むLC混合物(「ホスト混合物」)である構成成分Bを含む。これらの化合物は、構成成分Bの重合性化合物の重合のために使用した条件下で安定であるか、または重合反応に対して非反応性である。
【0120】
原則として、慣用のVAおよびOCBディスプレイにおける使用に適しているあらゆるLC混合物が、ホスト混合物として好適である。好適なLC混合物は、当業者に知られているか、文献に記載されているか、例えばEP 1 378 557 A1におけるVAディスプレイにおける混合物ならびにEP 1 306 418 A1およびDE 102 24 046 A1におけるOCBディスプレイのための混合物である。
【0121】
好ましい態様において、LC媒体は、負の誘電異方性を有する化合物に基づいたLCホスト混合物を含む。かかるLC媒体は、PSA−VAディスプレイにおいて使用するに特に適している。かかるLC媒体のいくつかの特に好ましい態様を、以下に列挙する:
【0122】
a) 式CYおよび/またはPYで表される1種または2種以上の化合物を含むLC媒体:
【化22】
式中、
aは、1または2を示し、
【化23】
は、
【化24】
を示し、
【0123】
R
1およびR
2は、各々、互いに独立して、1〜12個のC原子を有し、ここでさらに1つまたは2つの隣接していないCH
2基が−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−によって、O原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよいアルキル、好ましくは1〜6個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを示し、
【0124】
Z
xおよびZ
yは、各々、互いに独立して−CH
2CH
2−、−CH=CH−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CO−O−、−O−CO−、−C
2F
4−、−CF=CF−、−CH=CH−CH
2O−または単結合、好ましくは単結合を示し、
L
1〜4は、各々、互いに独立してF、Cl、OCF
3、CF
3、CH
3、CH
2F、CHF
2を示す。
【0125】
好ましくは、L
1およびL
2の両方はFを示すか、またはL
1およびL
2の一方はFを示し、他方はClを示し、あるいはL
3およびL
4の両方はFを示すか、またはL
3およびL
4の一方はFを示し、他方はClを示す。
【0126】
式CYで表される化合物は、好ましくは以下の従属式からなる群から選択される:
【化25】
【0131】
式中、aは、1または2を示し、alkylおよびalkyl*は、各々、互いに独立して1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルを示し、alkenylは、2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニルラジカルを示し、(O)は、酸素原子または単結合を示す。alkenylは、好ましくはCH
2=CH−、CH
2=CHCH
2CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
3−CH
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
3−CH=CH−またはCH
3−CH=CH−(CH
2)
2−を示す。
【0132】
式PYで表される化合物は、好ましくは以下の従属式からなる群から選択される:
【化30】
【0134】
式中、alkylおよびalkyl*は、各々、互いに独立して1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルを示し、alkenylは、2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニルラジカルを示し、(O)は、酸素原子または単結合を示す。alkenylは、好ましくはCH
2=CH−、CH
2=CHCH
2CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
3−CH
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
3−CH=CH−またはCH
3−CH=CH−(CH
2)
2−を示す。
【0135】
b)さらに以下の式で表される1種または2種以上の化合物を含むLC媒体:
【化32】
式中、個々のラジカルは以下の意味を有する:
【化33】
は、
【化34】
を示し、
【化35】
は、
【化36】
を示し、
【0136】
R
3およびR
4は、各々、互いに独立して1〜12個のC原子を有するアルキルを示し、ここでさらに、1つまたは2つの隣接していないCH
2基は、−O−、−CH=CH−、−CO−、−O−CO−または−CO−O−によって、O原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよく、
Z
yは、−CH
2CH
2−、−CH=CH−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CO−O−、−O−CO−、−C
2F
4−、−CF=CF−、−CH=CH−CH
2O−または単結合、好ましくは単結合を示す。
【0137】
式ZKで表される化合物は、好ましくは以下の従属式からなる群から選択される:
【化37】
【0139】
式中、alkylおよびalkyl*は、各々、互いに独立して1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルを示し、alkenylは、2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニルラジカルを示す。alkenylは、好ましくはCH
2=CH−、CH
2=CHCH
2CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
3−CH
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
3−CH=CH−またはCH
3−CH=CH−(CH
2)
2−を示す。
【0140】
c)さらに以下の式で表される1種または2種以上の化合物を含むLC媒体:
【化39】
式中、個々のラジカルは、各出現において同一に、または異なって以下の意味を有する:
R
5およびR
6は、各々、互いに独立してR
1について上に示した意味の1つを有し、
【化40】
は、
【化41】
を示し、
【化42】
は、
【化43】
を示し、ならびに
eは、1または2を示す。
【0141】
式DKで表される化合物は、好ましくは以下の従属式からなる群から選択される:
【化44】
【0143】
式中、alkylおよびalkyl*は、各々、互いに独立して1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルを示し、alkenylおよびalkenyl*は、各々、互いに独立して2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニルラジカルを示す。alkenylおよびalkenyl*は、好ましくはCH
2=CH−、CH
2=CHCH
2CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
3−CH
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
3−CH=CH−またはCH
3−CH=CH−(CH
2)
2−を示す。
【0144】
d)さらに以下の式で表される1種または2種以上の化合物を含むLC媒体:
【化46】
式中、個々のラジカルは以下の意味を有する:
【化47】
は、
【化48】
を示し、
【0145】
fは、0または1を示し、
R
1およびR
2は、各々、互いに独立して1〜12個のC原子を有するアルキルを示し、ここでさらに1つまたは2つの隣接していないCH
2基は、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−によって、O原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよく、
【0146】
Z
xおよびZ
yは、各々、互いに独立して−CH
2CH
2−、−CH=CH−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CO−O−、−O−CO−、−C
2F
4−、−CF=CF−、−CH=CH−CH
2O−または単結合、好ましくは単結合を示し、
L
1およびL
2は、各々、互いに独立してF、Cl、OCF
3、CF
3、CH
3、CH
2F、CHF
2を示す。
【0147】
好ましくは、ラジカルL
1およびL
2の両方はFを示すか、またはL
1およびL
2の一方はFを示し、他方はClを示す。
【0148】
式LYで表される化合物は、好ましくは以下の従属式からなる群から選択される:
【化49】
【0152】
式中、R
1は上に示した意味を有し、alkylは1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルを示し、(O)は酸素原子または単結合を示し、vは1〜6の整数を示す。R
1は、好ましくは1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルまたは2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニル、特にCH
3、C
2H
5、n−C
3H
7、n−C
4H
9、n−C
5H
11、CH
2=CH−、CH
2=CHCH
2CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
3−CH
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
3−CH=CH−またはCH
3−CH=CH−(CH
2)
2−を示す。
【0153】
e)さらに以下の式からなる群から選択された1種または2種以上の化合物を含むLC媒体:
【化53】
【0156】
式中、R
5はR
1について上に示した意味の1つを有し、alkylはC
1〜6アルキル基を示し、dは0または1を示し、zおよびmは各々、互いに独立して1〜6の整数を示す。これらの化合物中のR
5は、特に好ましくはC
1〜6アルキルもしくはアルコキシまたはC
2〜6アルケニルであり、dは好ましくは1である。本発明のLC媒体は、好ましくは≧5重量%の量における前述の式で表される1種または2種以上の化合物を含む。
【0157】
f)さらに以下の式からなる群から選択された1種または2種以上のビフェニル化合物を含むLC媒体:
【化56】
【0158】
式中、alkylおよびalkyl*は、各々、互いに独立して1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルを示し、alkenylおよびalkenyl*は、各々、互いに独立して2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニルラジカルを示す。alkenylおよびalkenyl*は、好ましくはCH
2=CH−、CH
2=CHCH
2CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
3−CH
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
3−CH=CH−またはCH
3−CH=CH−(CH
2)
2−を示す。
【0159】
式B1〜B3で表されるビフェニルのLC混合物中での比率は、好ましくは少なくとも3重量%、特に≧5重量%である。
式B2で表される化合物が、特に好ましい。
【0160】
式B1〜B3で表される化合物は、好ましくは以下の従属式からなる群から選択される:
【化57】
式中、alkyl*は、1〜6個のC原子を有するアルキルラジカルを示す。本発明の媒体は、特に好ましくは式B1aおよび/またはB2cで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【0161】
g)さらに以下の式からなる群から選択された1種または2種以上の化合物を含むLC媒体:
【化58】
【0163】
式中、R
1およびR
2は上に示した意味を有し、好ましくは各々、互いに独立して1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルまたは2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニルを示す。
【0164】
好ましい媒体は、式O1、O3およびO4から選択された1種または2種以上の化合物を含む。
【0165】
h)さらに以下の式:
【化60】
式中、
【化61】
は、
【化62】
を示し、
【0166】
R
9はH、CH
3、C
2H
5またはn−C
3H
7を示し、(F)は任意のフッ素置換基を示し、qは1、2または3を示し、R
7はR
1について示した意味の1つを有する、
で表される1種または2種以上の化合物を、好ましくは>3重量%、特に≧5重量%および非常に特に好ましくは5〜30重量%の量において含むLC媒体。
【0167】
式FIで表される特に好ましい化合物は、以下の従属式からなる群から選択される:
【化63】
【0169】
式中、R
7は好ましくは直鎖状アルキルを示し、R
9はCH
3、C
2H
5またはn−C
3H
7を示す。特に好ましいのは、式FI1、FI2およびFI3で表される化合物である。
【0170】
i)さらに以下の式からなる群から選択された1種または2種以上の化合物を含むLC媒体:
【化65】
【0171】
式中、R
8はR
1について示した意味を有し、alkylは1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルを示す。
【0172】
k)さらにテトラヒドロナフチルまたはナフチル単位を含む1種または2種以上の化合物、例えば以下の式:
【化66】
【0174】
式中、R
10およびR
11は、各々、互いに独立してR
1について示した意味の1つを有し、好ましくは1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルもしくはアルコキシまたは2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニルを示し、Z
1およびZ
2は、各々、互いに独立して−C
2H
4−、−CH=CH−、−(CH
2)
4−、−(CH
2)
3O−、−O(CH
2)
3−、−CH=CH−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH=CH−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CO−O−、−O−CO−、−C
2F
4−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CH
2−または単結合を示す、
からなる群から選択された化合物を含むLC媒体。
【0176】
式中
R
11およびR
12は、各々、互いに独立して上に示した意味を有し、
環Mは、トランス−1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり、
Z
mは、−C
2H
4−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CO−O−または−O−CO−であり、
cは、0または1である、
で表される1種または2種以上のジフルオロジベンゾクロマンおよび/またはクロマンを、好ましくは3〜20重量%の量において、特に3〜15重量%の量において含むLC媒体。
【0177】
式BC、CRおよびRCで表される特に好ましい化合物は、以下の従属式からなる群から選択される:
【化69】
【0181】
式中、alkylおよびalkyl*は、各々、互いに独立して1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルを示し、(O)は、酸素原子または単結合を示し、cは、1または2であり、alkenylおよびalkenyl*は、各々、互いに独立して2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニルラジカルを示す。alkenylおよびalkenyl*は、好ましくはCH
2=CH−、CH
2=CHCH
2CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
3−CH
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
3−CH=CH−またはCH
3−CH=CH−(CH
2)
2−を示す。
【0182】
非常に特に好ましいのは、式BC−2で表される1種、2種または3種の化合物を含む混合物である。
【0183】
m)さらに以下の式で表される1種または2種以上のフッ素化されたフェナントレンおよび/またはジベンゾフランを含むLC媒体:
【化73】
【0184】
式中、R
11およびR
12は各々、互いに独立して上に示した意味を有し、bは0または1を示し、LはFを示し、rは1、2または3を示す。
【0185】
式PHおよびBFで表される特に好ましい化合物は、以下の従属式からなる群から選択される:
【化74】
【0186】
式中、RおよびR’は、各々、互いに独立して1〜7個のC原子を有する直鎖状アルキルまたはアルコキシラジカルを示す。
【0187】
n)さらに以下の式で表される1種または2種以上の単環式化合物を含むLC媒体
【化75】
【0188】
式中、
R
1およびR
2は、各々、互いに独立して、さらに1つまたは2つの隣接していないCH
2基が−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−によって、O原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよい、1〜12個のC原子を有するアルキル、好ましくは1〜6個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを示し、
L
1およびL
2は、各々、互いに独立してF、Cl、OCF
3、CF
3、CH
3、CH
2F、CHF
2を示す。
【0189】
好ましくは、L
1およびL
2の両方はFを示すか、またはL
1およびL
2の一方はFを示し、他方はClを示す。
【0190】
式Yで表される化合物は、好ましくは以下の従属式からなる群から選択される:
【化76】
【0192】
式中、AlkylおよびAlkyl*は、各々、互いに独立して1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルを示し、Alkoxyは、1〜6個のC原子を有する直鎖状アルコキシラジカルを示し、AlkenylおよびAlkenyl*は、各々、互いに独立して2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニルラジカルを示し、Oは、酸素原子または単結合を示す。AlkenylおよびAlkenyl*は、好ましくはCH
2=CH−、CH
2=CHCH
2CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
3−CH
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
2−CH=CH−、CH
3−(CH
2)
3−CH=CH−またはCH
3−CH=CH−(CH
2)
2−を示す。
【0193】
式Yで表される特に好ましい化合物は、以下の従属式からなる群から選択される:
【化78】
【0194】
式中、Alkoxyは、好ましくは3、4または5個のC原子を有する直鎖状アルコキシを示す。
【0195】
o) 特に式Iまたはその従属式で表される、本発明の重合性化合物およびコモノマーとは別に、末端ビニルオキシ基(−O−CH=CH
2)を含む化合物を含まない、LC媒体。
p) 好ましくは式M1〜M18から選択された、1〜5種、好ましくは1種、2種または3種の構成成分Aの重合性化合物を含むLC媒体。
【0196】
q) 特に式M1〜M18から選択された、構成成分Aの重合性化合物の全体としての混合物中の割合が0.05〜5%、好ましくは0.1〜1%であるLC媒体。
r) 1〜8種、好ましくは2、3、4または5種の、非常に好ましくは式I2から選択された式Iで表される別個の化合物を含むLC媒体。
【0197】
s) 式Iで表される化合物の全体としての混合物中での割合が1〜45%、好ましくは1〜25%であるLC媒体。式Iで表される個々の化合物の含量は、好ましくは各場合において1〜20%、非常に好ましくは1〜15%である。
【0198】
t) 1種または2種以上、好ましくは1〜10種の、式CY1、CY2、CY7、CY8、CY17、CY18、CY23、CY24、CY32、CY33、LY1およびLY1からなる群から選択された別個の化合物を含むLC媒体。これらの化合物の全体としての混合物中での割合は、好ましくは2〜60%、非常に好ましくは5〜30%である。個々の化合物の含量は、好ましくは各場合において1〜25%である。
【0199】
u) 1種または2種以上、好ましくは1〜10種の、式CY9、CY10、CY15、CY16、CY34、CY35、LY10、PY1、PY2、PY7およびPY8からなる群から選択された別個の化合物を含むLC媒体。これらの化合物の全体としての混合物中での割合は、好ましくは2〜80%、非常に好ましくは5〜60%である。個々の化合物の含量は、好ましくは各場合において1〜20%である。
【0200】
v) 1〜10種、好ましくは1〜8種の、アルケニル基を含む式ZK3およびDK3からなる群から選択された別個の化合物を含むLC媒体。これらの化合物の全体としての混合物中での割合は、好ましくは2〜85%、非常に好ましくは5〜65%である。個々の化合物の含量は、好ましくは各場合において1〜60%である。
【0201】
w) 1種または2種以上、好ましくは1〜10種の、式ZK1、ZK6、DK1、DK4、B1、B2、O1、O3およびO12からなる群から選択された別個の化合物を含むLC媒体。これらの化合物の全体としての混合物中での割合は、好ましくは2〜85%、非常に好ましくは10〜70%である。個々の化合物の含量は、好ましくは各場合において1〜30%である。
【0202】
上に述べた好ましい態様の化合物の上に記載した重合した化合物との組み合わせによって、本発明のLC媒体における低いしきい値電圧、低い回転粘度および非常に良好な低温安定性が常に高い透明点および高いHR値と同時にもたらされ、PSAディスプレイにおける特に低いプレティルト角の迅速な確立が可能になる。特に、LC媒体は、先行技術からの媒体と比較してPSAディスプレイにおいて著しく短縮された応答時間、特にまたグレーシェード応答時間を示す。
【0203】
液晶混合物は、好ましくは、20℃で少なくとも80K、特に好ましくは少なくとも100Kのネマチック相範囲、および250mPa・sより大きくない、好ましくは200mPa・sより大きくない回転粘度を有する。
【0204】
本発明のVAタイプのディスプレイにおいて、スイッチオフ状態におけるLC媒体の層中の分子は、電極表面に対して垂直に(ホメオトロピック的に)配列しているか、または傾斜した(tilted)ホメオトロピック配向を有する。電極への電圧の印加の際に、LC分子の再配列が、電極表面に対して平行な長手分子軸で起こる。
【0205】
特にPSA−VAタイプのディスプレイにおいて使用するための、負の誘電異方性を有する化合物に基づいた本発明のLC媒体は、20℃および1kHzで好ましくは−0.5〜−10、特に−2.5〜−7.5の負の誘電異方性Δεを有する。
【0206】
PSA−VAタイプのディスプレイにおいて使用するための本発明のLC媒体中の複屈折Δnは、好ましくは0.16未満、特に好ましくは0.06〜0.14、非常に特に好ましくは0.07〜0.12である。
【0207】
本発明のOCBタイプのディスプレイにおいて、LC媒体の層中の分子は、「ベンド」配列を有する。電圧の印加の際に、LC分子の再配列が、電極表面に対して垂直な長手分子軸で起こる。
【0208】
PSA−OCBタイプのディスプレイにおいて使用するための本発明のLC媒体は、好ましくは第2の好ましい態様による正の誘電異方性を有する化合物に基づいたものであり、好ましくは20℃および1kHzで+4〜+17の正の誘電異方性Δεを有する。
【0209】
PSA−OCBタイプのディスプレイにおいて使用するための本発明のLC媒体における複屈折Δnは、好ましくは0.14〜0.22、特に好ましくは0.16〜0.22である。
PSA−TN、PSA−ポジ−VA、PSA−IPSまたはPSA−FFSタイプのディスプレイにおいて使用するための本発明のLC媒体における複屈折Δnは、好ましくは0.07〜0.15、特に好ましくは0.08〜0.13である。
【0210】
本発明のLC媒体はまた、当業者に知られており、文献に記載されているさらなる添加剤、例えば重合開始剤、阻害剤、安定剤、界面活性物質またはキラルなドーパントを含んでもよい。これらは、重合性または非重合性であり得る。重合性添加剤を、したがって重合性構成成分または構成成分A)に属するものとみなす。非重合性添加剤を、したがって非重合性構成成分または構成成分B)に属するものとみなす。
【0211】
好ましい態様において、LC媒体は、1種または2種以上のキラルなドーパントを、好ましくは0.01〜1%、非常に好ましくは0.05〜0.5%の濃度において含む。キラルなドーパントは、好ましくは以下の表Bからの化合物からなる群から、非常に好ましくはR−またはS−1011、R−またはS−2011、R−またはS−3011、R−またはS−4011およびR−またはS−5011からなる群から選択される。
【0212】
別の好ましい態様において、LC媒体は、好ましくは前の段落において述べたキラルなドーパントから選択された1種または2種以上のキラルなドーパントのラセミ体を含む。
【0213】
さらに、LC媒体に、例えば0〜15重量%の多色性染料、さらにナノ粒子、伝導性を改善するための伝導性塩、好ましくはエチルジメチルドデシルアンモニウム4−ヘキソキシベンゾエート、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレートもしくはクラウンエーテルの錯塩(例えばHaller et al., Mol. Cryst. Liq. Cryst.
24, 249-258 (1973)を参照)、またはネマチック相の誘電異方性、粘度および/もしくは配列を修正するための物質を加えることが、可能である。このタイプの物質は、例えばDE-A 22 09 127、22 40 864、23 21 632、23 38 281、24 50 088、26 37 430および28 53 728に記載されている。
【0214】
本発明のLC媒体の好ましい態様の個々の構成成分は知られているか、またはそれらが文献に記載されている標準的な方法に基づくので、その製造方法を関連する分野における当業者によって先行技術から容易に誘導することができる。式CYで表される対応する化合物は、例えばEP-A-0 364 538に記載されている。式ZKで表される対応する化合物は、例えばDE-A-26 36 684およびDE-A-33 21 373に記載されている。
【0215】
本発明に従って使用することができるLC媒体を、自体慣用の方式において、例えば前述の化合物の1種または2種以上を1種または2種以上の上に定義した重合性化合物と、ならびに任意にさらなる液晶化合物および/または添加剤と混合することにより製造する。一般に、所望の量のより少ない量において使用する構成成分を、主成分を構成する構成成分に、有利には高い温度で溶解する。有機溶媒、例えばアセトン、クロロホルムまたはメタノールに溶解した構成成分の溶液を混合し、十分な混合の後に例えば蒸留によって溶媒を再び除去することがまた、可能である。本発明はさらに、本発明のLC媒体の製造方法に関する。
【0216】
本発明のLC媒体がまた例えばH、N、O、Cl、Fが対応する同位体によって置き換えられている化合物を含んでもよいことは、当業者に言うまでもない。
【0217】
本発明のLCディスプレイの構造は、最初に引用された先行技術に記載されているように、PSAディスプレイについての通常の形状に相当する。突部を有しない形状、特に、さらに色フィルター側の電極が未構築であり、TFT側の電極のみがスロットを有するものが、好ましい。PSA−VAディスプレイに特に好適であり、好ましい電極構造は、例えばUS 2006/0066793 A1に記載されている。
【0218】
以下の略語を使用する:
(n、m、z:各場合において互いに独立して1、2、3、4、5または6)
表A
【化79】
【0223】
本発明の好ましい態様において、本発明のLC媒体は、表Aからの化合物からなる群から選択された1種または2種以上の化合物を含む。
【0224】
表B
表Bは、本発明のLC媒体に加えることができる可能なキラルなドーパントを示す。
【化84】
【0226】
LC媒体は、好ましくは0〜10重量%、特に0.01〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%のドーパントを含む。LC媒体は、好ましくは表Bからの化合物からなる群から選択された1種または2種以上のドーパントを含む。
【0227】
表C
表Cは、本発明のLC媒体に加えることができる可能な安定剤を示す。
(nはここで1〜12、好ましくは1、2、3、4、5、6、7または8の整数を示し、末端のメチル基は示さない)。
【化86】
【0231】
【化90】
LC媒体は、好ましくは0〜10重量%、特に1ppm〜5重量%、特に好ましくは1ppm〜1重量%の安定剤を含む。LC媒体は、好ましくは表Cからの化合物からなる群から選択された1種または2種以上の安定剤を含む。
【0232】
表D
表Dは、本発明のLC媒体において好ましくは反応性メソゲン性化合物として使用することができる例示的な化合物を示す。
【0242】
本発明の好ましい態様において、メソゲン性媒体は、表Dからの化合物の群から選択された1種または2種以上の化合物を含む。
【0243】
さらに、以下の略語および記号を使用する:
V
0 しきい値電圧、20℃での容量性[V]、
n
e 20℃および589nmでの異常屈折率、
n
o 20℃および589nmでの正常屈折率、
Δn 20℃および589nmでの光学異方性、
ε
⊥ 20℃および1kHzでのディレクタに垂直な誘電体誘電率
ε
││ 20℃および1kHzでのディレクタに平行な誘電体誘電率
Δε 20℃および1kHzでの誘電異方性
cl.p.、T(N,I) 透明点[℃]、
γ
1 20℃での回転粘度[mPa・s]、
K
1 弾性定数、20℃での「スプレイ」変形[pN]、
K
2 弾性定数、20℃での「ねじれ」変形[pN]、
K
3 弾性定数、20℃での「ベンド」変形[pN]。
【0244】
他に明確に注記しない限り、本出願におけるすべての濃度を重量パーセントにおいて引用し、溶媒を有しないすべての固体または液晶構成成分を含む全体としての対応する混合物に関する。
【0245】
他に明確に注記しない限り、本出願中で示したすべての温度値、例えば融点T(C,N)、スメクチック相(S)からネマチック相(N)への転移T(S,N)および透明点T(N,I)を、摂氏度(℃)において引用する。m.p.は融点を示し、cl.p.=透明点である。さらに、C=結晶状態、N=ネマチック相、S=スメクチック相およびI=アイソトロピック相である。これらの記号間のデータは、転移温度を表す。
【0246】
すべての物理的特性を、"Merck Liquid Crystals, Physical Properties of Liquid Crystals", Status Nov. 1997, Merck KGaA, Germanyに従って決定し、決定しており、20℃の温度について適用され、各場合において他に明確に示さない限り、Δnを589nmで決定し、Δεを1kHzで決定する。
【0247】
本発明についての用語「しきい値電圧」は、他に明確に示さない限り、またFreedericksしきい値として知られている容量性しきい値(V
0)に関する。例において、光学的しきい値はまた、一般に通常のように10%相対的コントラスト(V
10)について引用され得る。
【0248】
他に述べない限り、本明細書中に記載したPSAディスプレイにおける重合性化合物を重合させるプロセスを、LC媒体が液晶相、好ましくはネマチック相を示す温度で行い、最も好ましくは室温で行う。
【0249】
他に記載しない限り、試験セルを製造し、それらの電気光学的および他の特性を測定する方法を、以下に記載する方法によって、またはそれと同様にして行う。
容量性しきい値電圧の測定のために使用する試験セルは、25μmの距離における2枚の平面平行ガラス外側プレートからなり、その各々は、内側に電極層および最上部上にラビングしていないポリイミド配向層を有し、それは、液晶分子のホメオトロピックな端部配列を達成する。
【0250】
ティルト角の測定のために使用したディスプレイまたは試験セルは、4μmの距離における2枚の平面平行ガラス外側プレートからなり、その各々は、内側に電極層および最上部上にポリイミド配向層を有し、ここで2つのポリイミド層は互いに逆平行にラビングされており、液晶分子のホメオトロピックな端部配列を達成する。
【0251】
重合性化合物を、ディスプレイまたは試験セル中で、定義された時間にわたる定義された強度のUVA光での照射によって重合させ、電圧を、電極に同時に印加する(通常10V〜30Vの交流、1kHz)。例において、他に示さない限り、メタルハライドランプおよび100mW/cm
2の強度を、重合のために使用する。強度を、標準的なUVAメーター(UVAセンサーを備えたHoenleUVメーターハイエンド)を使用して測定する。
【0252】
ティルト角を、結晶回転実験(Autronic-Melchers TBA-105)によって決定する。低い値(つまり90°角度からの大きな偏位)は、ここで大きい形成したプレティルト角に相当する。
【0253】
VHR値を、以下のように測定する:0.3%の重合性化合物を、LCホスト混合物に加え、得られたLC媒体を、VA−VHR試験セル(ラビングしていない、VAポリイミド配向層、LC層厚さd≒6μm)中に導入する。VHR値を、5分後に100℃で、1V、60Hz、64μsパルスでのUV露光の前および後に決定する(測定機器:Autronic-Melchers VHRM-105)。
【0254】
以下の例は、本発明を、それを限定せずに説明することを意図する。
混合物例
比較例1
ネマチックLCホスト混合物C1を、以下のように配合する:
【表1】
混合物C1は、ターフェニル化合物PYP−2−3およびPYP−2−4を含む。
【0255】
例1
ネマチックLCホスト混合物N1を、以下のように配合する:
【表2】
混合物N1は、混合物C1と同様の構成成分を含み、同様の特性を有するが、ターフェニル化合物PYP−2−3およびPYP−2−4の代わりに化合物PY−3−O2を含む。
【0256】
比較例2
ネマチックLCホスト混合物C2を、以下のように配合する:
【表3】
混合物C2は、ターフェニル化合物PYP−2−3を含む。
【0257】
例2
ネマチックLCホスト混合物N2を、以下のように配合する:
【表4】
混合物N2は、混合物C2と同様の構成成分を含み、同様の特性を有するが、ターフェニル化合物PYP−2−3の代わりに化合物PY−3−O2を含む。
【0258】
比較例3
ネマチックLCホスト混合物C3を、以下のように配合する:
【表5】
混合物C3は、ターフェニル化合物PYP−2−3を含む。
【0259】
例3
ネマチックLCホスト混合物N3を、以下のように配合する:
【表6】
混合物N3は、それがターフェニル化合物PYP−2−3の代わりに化合物PY−3−O2を含む以外は混合物C3と同様である。
【0260】
デバイス例
例A
重合性LC媒体を、以下のRM
【化100】
をそれぞれLCホスト混合物C1〜C3およびN1〜N3の各々に0.3重量%の濃度で加えることにより製造する。
各々の得られた重合性LC媒体を、VA e/o試験セル(ラビングした逆平行、VA−ポリイミド配向層、LC層厚さd≒4μm)中に挿入する。
【0261】
セルを、100mW/cm
2の強度を有するUV光で20分間、24V
rmsの電圧(交流)の印加を伴って照射し、RMの重合を引き起こす。UV照射の後にLC媒体において誘発されたプレティルト角を、結晶回転実験(Autronic-Melchers TBA-105)によって決定する。
【0262】
プレティルト角を、次にディスプレイを30V
rmsの電圧ストレスに3日の時間にわたりさらした後に再び測定する。
個々の試料についての電圧ストレスの後のプレティルト角値およびプレティルト角の変化を、表1に概略する。
【0264】
表1から明らかなように、LCホスト混合物N1、N2またはN3が式Iで表される化合物PYを含む本発明のLC媒体に基づいたディスプレイは、プレティルト角のより小さな変化を示す。比較において、LCホスト混合物C1、C2またはC3が式Iで表される化合物PYを含まないが代わりにターフェニル化合物PYPを含むLC媒体に基づいたディスプレイは、プレティルト角の著しくより大きな変化を示す。
【0265】
それぞれホスト混合物C1、C2、C3、N1、N2またはN3およびRM−1を含む重合性LC混合物のUV露光の前および後のVHR値を、上に記載したように測定する。
個々の試料についてのUV負荷の前および後のVHR値を、表2に概略する。
【0267】
表2から明らかなように、ターフェニル化合物PYPを有する混合物C1、C2およびC3の、RMを重合させるために必要であるUV負荷後のVHR値は、ターフェニル化合物PYPを有せず本発明の化合物PYを有する対応する混合物N1、N2およびN3と比較して低い。