【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0045】
[実施例1]
(基材)
縦50mm×横70mm×厚み1mmの矩形状のZr製板を基材とした。
【0046】
(非晶質性の触媒層形成用メッキ液)
Ptを0.3質量%、Wを6.0質量%含有する、pH=7のメッキ液を調製した。なおメッキ液は、Ptは塩化白金酸として、Wはタングステン酸Naとして水に溶解させたものである。
【0047】
(中間層形成用メッキ液)
メッキ液は、EEJA製中性液(製品 テンペレックスシリーズのAuめっき液)を使用した。
【0048】
(基材の前処理)
前記基材に対し、市販のアルカリによる脱脂およびフッ化物系の酸での浸漬処理を順次行い、基材表面を活性化処理した。
【0049】
(中間層の形成)
前記前処理した基材に対し、前記中間層形成用のメッキ液を用いた電気メッキを行った。電気メッキ条件は、電流密度0.5A/dm
2であり、時間3分、温度60℃とした。基材表面上に厚さ3μmの中間層が形成された。
【0050】
(非結晶質性の触媒層の形成)
前記中間層が形成された基材に対し、乾燥しないで引き続き水洗後、前記触媒層形成用メッキ液を用いた電気メッキを行った。電気メッキ条件は、電流密度0.5A/dm
2であり、時間5分、温度65℃とした。電気メッキ完了後、基材を水洗、乾燥した。中間層上に厚さ0.3μmの触媒層が形成されたことを確認した。
以上のようにして本発明の触媒を作製した。
なお、触媒層をXRD(Rigaku社製 ULTIMA IV)により分析したところ、触媒層は非晶質性の金属層からなることが確認された。結果を
図1に示す。
図1によると、実施例1の触媒層は、波形でPtの各結晶面でのピークの半値幅が広がっていることから、実施例1の触媒層は非晶質性であることがわかる。
【0051】
(過酸化水素分解性能の確認)
図2に示す廃液処理システム100によって、本発明の触媒における過酸化水素分解能の確認を行った。
【0052】
1.前述のように作製した実施例1の触媒を、触媒同士の間隔を5mmとし、表2に示す触媒の表面積にて、触媒を
図3に示すように充填した。
図3の廃液処理装置20は、第1の貯留槽10から流れてきた被処理水の導入口21、被処理水と接触する触媒の表面積を一定にするための仕切り板22、触媒同士の間隔24で配置された触媒23、被処理水の排出口26等から構成されている。
【0053】
2.第1の貯留槽10に、硫酸濃度が71質量%、過酸化水素濃度が1.65質量%である被処理水を供給して、表1の流通条件で前記廃液処理装置20中を通過させることによって、被処理水を該固体触媒に接触させ、本発明の触媒における、過酸化水素分解能を確認した。具体的には、導入口21から流入した被処理水が、導入口21に隣接して設置された仕切り板22を乗り越える。仕切り板22を乗り越えた被処理水は
図3中に矢印で示す触媒23の充填方向に沿って、触媒23と接触しながら廃液処理装置20中を進み、排出口26より排出される。被処理水の液面25の高さは、仕切り板22の高さにほぼ等しい。
【0054】
3.前記廃液処理装置20中を通過した処理水は、第2の貯留槽30に貯留された。
処理水中の過酸化水素残存濃度の結果を表2及び
図4に示す。
【0055】
[比較例1](基材)
実施例1と同様に、縦50mm×横70mm×厚み1mmの矩形状のZr製板を基材とした。
【0056】
(結晶性触媒層形成用メッキ液)
Ptを0.5質量%含有する、pH=1の市販のメッキ液を調製した。
【0057】
(基材の前処理)
実施例1と同様、前記基材に対し、市販のアルカリ脱脂およびフッ化物系の酸での浸漬処理等を順次行い、基材表面を活性化処理した。
【0058】
(結晶性触媒層の形成)
前記活性化処理した基材に対し、前記触媒層形成用メッキ液を用いた電気メッキを行った。電気メッキ条件は、電流密度0.5A/dm
2であり、時間60分、温度60℃とした。電気メッキ完了後、基材を水洗、乾燥した。基材上に厚さ2μmの触媒層が形成されたことを確認した。
なお、触媒層をXRD(Rigaku社製 ULTIMA IV)により分析したところ、触媒層は結晶性の金属層からなることが確認された。結果を
図1に示す。
図1によると、比較例1の触媒層は、波形でPtの各結晶面でのピークの半値幅が狭くシャープになっていることから比較例1の触媒層は結晶性であることがわかる。
【0059】
(過酸化水素分解性能の確認)
触媒を比較例1で作成した結晶性の触媒を使用したこと、過酸化水素濃度が1.78質量%である被処理水を使用したことを除いては、実施例1と同様に、触媒の過酸化水素分解性能の確認を行った。
結果を表2及び
図4に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表2及び
図4の結果より、実施例1の非晶質性の金属を有する触媒は、非晶質性の金属を有しない比較例1の結晶性の触媒と比較して、顕著に過酸化水素分解性能が高いことが分かった。
【0063】
[実施例2〜3]
被処理水中の硫酸濃度が表3に示す濃度であること、触媒表面積が表3に示す表面積で行ったことを除いては、実施例1と同様の方法で、触媒の過酸化水素分解性能の確認を行った。結果を表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
表3の結果により、被処理水中の硫酸濃度が71%である実施例1と比較して、実施例2の8%、実施例3の44%のように、被処理水中の硫酸濃度が低い場合であっても、非晶質性の金属を有する触媒を使用することによって、実施例1と同様に、被処理水中の過酸化水素を分解できることがわかった。したがって、本発明の触媒によれば、被処理水中の硫酸濃度が低い場合であっても、高い場合であっても、被処理水中の過酸化水素を効率よく分解できることが分かった。
【0066】
[実施例4]
(基材)
縦48mm×横80mm×厚み0.7mmの矩形状に、3mmφ穴が6mm間隔でパンチング加工されたZr製板(パンチングメタル)を基材とした。
【0067】
(非晶質性の触媒層形成用メッキ液)
実施例1と同様に、Ptを0.3質量%、Wを6.0質量%含有する、pH=7のメッキ液を調製した。なおメッキ液は、Ptは塩化白金酸として、Wはタングステン酸Naとして水に溶解させたものである。
【0068】
(中間層形成用メッキ液)
メッキ液は、酸性Ptめっき液とEEJA製中性Auめっき液(製品 テンペレックス401)を使用した。
【0069】
(基材の前処理)
前記基材に対し、市販のアルカリによる脱脂およびフッ化物系の酸での浸漬処理等を順次行い、基材表面を活性化処理した。
【0070】
(中間層の形成)
前記前処理した基材に対し、前記中間層形成は2段層にして、一段目は前記Ptメッキ液を用いた電気メッキを行った。電気メッキ条件は、電流密度0.5A/dm
2であり、時間8分、温度50℃とした。基材表面上に厚さ0.3μmの第一段中間層が形成された。二段目は前記Auメッキ液を用いた電気メッキを行った。電気メッキ条件は、電流密度0.3A/dm
2であり、時間5分、温度60℃とした。基材表面上で厚さ0.5μmの第二段中間層が形成された。
【0071】
(非結晶質性の触媒層の形成)
前記中間層が形成された基材に対し、乾燥しないで引き続き水洗後、前記触媒層形成用メッキ液を用いた電気メッキを行った。電気メッキ条件は、電流密度0.5A/dm
2であり、時間5分、温度65℃とした。電気メッキ完了後、基材を水洗、乾燥した。中間層上に厚さ0.3μmの触媒層が形成されたことを確認した。
以上のようにして本発明の触媒を作製した。
【0072】
(過酸化水素分解性能の確認)
図5に示す廃液処理システム200によって、本発明の触媒における過酸化水素分解能の確認を行った。
【0073】
1.前述のように作製した実施例4の触媒を、触媒同士の間隔を5mmとし、表5に示す触媒の表面積にて、触媒を
図5の廃液処理システム200における廃液処理装置120に充填した。廃液処理装置120は、
図6に示すように、筐体121、第1の貯留槽110から流れてきた被処理水の導入口21、触媒に均一に接触させるための邪魔板122、触媒23、触媒を二段にセットするための仕切り板124、被処理水の排出口26等から構成されている。
【0074】
2.第1の貯留槽110に、硫酸濃度が71質量%、過酸化水素濃度が1.80質量%である被処理水を供給して、表4の流通条件で前記廃液処理装置120中を通過させることによって、被処理水を該固体触媒に接触させ、本発明の触媒における、過酸化水素分解能を確認した。具体的には、
図6に示すように、導入口21から流入した被処理水が、導入口21に隣接して設置された邪魔板122を通過する。邪魔板122を通過した被処理水は廃液処理装置120の底部から上部に向かって(
図6に矢印で示す方向)、触媒23と接触しながら廃液処理装置120中を進み、排出口26より排出される。
【0075】
3.前記廃液処理装置120中を通過した処理水は、第2の貯留槽130に貯留された。
処理水中の過酸化水素残存濃度の結果を表5に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
表5の結果より、廃液処理システムの装置形状を変えた場合であっても、本発明の非晶質性の触媒層を有する過酸化水素分解用触媒を使用することによって、実施例1と同様に、被処理水中の過酸化水素を効率良く分解できることがわかった。
【0079】
[実施例5、6]
(基材)
縦48mm×横80mm×厚み0.7mmのTi製エキスパンドメタルを基材とした。
【0080】
(非晶質性の触媒層形成用メッキ液)
実施例1と同様に、Ptを0.3質量%、Wを6.0質量%含有する、pH=7のメッキ液を調製した。なおメッキ液は、Ptは塩化白金酸として、Wはタングステン酸Naとして水に溶解させたものである。
【0081】
(中間層形成用メッキ液)
メッキ液は、酸性Ptメッキ液とEEJA製中性Auメッキ液(製品 オーロボンドTN)を使用した。
【0082】
(基材の前処理)
前記基材に対し、市販のアルカリによる脱脂およびフッ化物系の酸での浸漬処理等を順次行い、基材表面を活性化処理した。
【0083】
(中間層の形成)
前記前処理した基材に対し、前記中間層形成用のPtメッキ液を用いた電気メッキを行った。電気メッキ条件は、電流密度0.5A/dm
2であり、時間40分、温度50℃とした。基材表面上に厚さ1μmの中間層が形成された。さらに、1μmのPtメッキ中間層の上に、前期中間層形成用のAuメッキ液を用いた電気フラッシュメッキを行った。電圧5V、時間0.5分、温度60℃とした。
【0084】
(非結晶質性の触媒層の形成)
前記中間層が形成された基材に対し、乾燥しないで引き続き水洗後、前記触媒層形成用メッキ液を用いた電気メッキを行った。電気メッキ条件は、電流密度0.5A/dm
2であり、時間5分、温度65℃とした。電気メッキ完了後、基材を水洗、乾燥した。中間層上に厚さ0.3μmの触媒層が形成されたことを確認した。
以上のようにして本発明の触媒を作製した。
【0085】
(過酸化水素分解性能の確認)
実施例1と同様に、
図2に示す廃液処理システム100によって、本発明の触媒における過酸化水素分解能の確認を行った。
【0086】
1.前述のように作製した触媒を、触媒同士の間隔を5mmとし、表7に示す触媒の表面積にて、触媒を
図3に示すように充填した。
【0087】
2.第1の貯留槽10に、硫酸濃度が71質量%、過酸化水素濃度が1.80質量%である被処理水(実施例5:初期の液温13℃、実施例6:初期の液温25℃)を供給して、表6の流通条件で前記廃液処理装置20中を通過させることによって、被処理水を該固体触媒に接触させ、本発明の触媒における、過酸化水素分解能を確認した。具体的には、導入口21から流入した被処理水が、導入口21に隣接して設置された仕切り板22を乗り越える。仕切り板22を乗り越えた被処理水は
図3中に矢印で示す触媒23の充填方向に沿って、触媒23と接触しながら廃液処理装置20中を進み、排出口26より排出される。
【0088】
3.前記廃液処理装置20中を通過した処理水は、第2の貯留槽30に貯留された。
処理水中の過酸化水素残存濃度の結果を表7に示す。
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
表7の結果より、初期の液温により、過酸化水素の処理効率に差が生じるが、実施例1と触媒の形状を変えた場合であっても、非晶質性の金属を有する触媒を使用することによって、実施例1と同様に、被処理水中の過酸化水素を効率良く分解できることがわかった。
【0092】
[実施例7]
(基材)
縦46mm×横70mm×厚み0.7mmの矩形状のNb製板を基材とした。
【0093】
(非晶質性の触媒層形成用メッキ液)
実施例1と同様に、Ptを0.3質量%、Wを6.0質量%含有する、pH=7のメッキ液を調製した。なおメッキ液は、Ptは塩化白金酸として、Wはタングステン酸Naとして水に溶解させたものである。
【0094】
(中間層形成用メッキ液)
メッキ液は、酸性Ptメッキ液を使用した。
【0095】
(基材の前処理)
前記基材に対し、市販のアルカリによる脱脂、フッ化物系の酸での浸漬処理等を順次行い、基材表面を活性化処理した。
【0096】
(中間層の形成)
前記前処理した基材に対し、前記中間層形成用のPtメッキ液を用いた電気メッキを行った。電気メッキ条件は、電流密度0.5A/dm
2であり、時間40分、温度50℃とした。基材表面上に厚さ1μmの中間層が形成された。
【0097】
(非結晶質性の触媒層の形成)
前記中間層が形成された基材に対し、乾燥しないで引き続き水洗後、前記触媒層形成用メッキ液を用いた電気メッキを行った。電気メッキ条件は、電流密度0.5A/dm
2であり、時間5分、温度65℃とした。電気メッキ完了後、基材を水洗、乾燥した。中間層上に厚さ0.3μmの触媒層が形成されたことを確認した。
以上のようにして本発明の触媒を作製した。
【0098】
(過酸化水素分解性能の確認)
実施例1と同様に、
図2に示す廃液処理システム100によって、本発明の触媒における過酸化水素分解能の確認を行った。
【0099】
1.前述のように作製した実施例7の触媒を、触媒同士の間隔を5mmとし、表9に示す触媒の表面積にて、触媒を
図3に示すように充填した。
【0100】
2.第1の貯留槽10に、硫酸濃度が16質量%、過酸化水素濃度が3.76質量%である被処理水を供給して、表8の流通条件で前記廃液処理装置20中を通過させることによって、被処理水を該固体触媒に接触させ、本発明の触媒における、過酸化水素分解能を確認した。具体的には、導入口21から流入した被処理水が、導入口21に隣接して設置された仕切り板22を乗り越える。仕切り板22を乗り越えた被処理水は
図3中に矢印で示す触媒23の充填方向に沿って、触媒23と接触しながら廃液処理装置20中を進み、排出口26より排出される。
【0101】
3.前記廃液処理装置20中を通過した処理水は、第2の貯留槽30に貯留された。
処理水中の過酸化水素残存濃度の結果を表9に示す。
【0102】
【表8】
【0103】
【表9】
【0104】
表9の結果により、被処理水中の過酸化水素濃度が実施例1〜6と比較して、実施例7の3.76質量%濃度のように、被処理水中の過酸化水素濃度が高い場合であっても、非晶質性の金属を有する触媒を使用することによって、実施例1と同様に、被処理水中の過酸化水素を分解できることがわかった。したがって、本発明の触媒によれば、被処理水中の過酸化水素濃度が高い場合であっても、被処理水中の過酸化水素を効率よく分解できることが分かった。
【0105】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2014年12月11日付で出願された日本特許出願(特願2014−251315)に基づいており、その全体が引用により援用される。