(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記分離層形成工程において、前記ガラス支持体と、前記分離層を形成するための液体を塗布可能なスリットノズルとを相対的に移動させ、前記スリットノズルにより前記ガラス支持体上に前記液体を塗布して前記分離層を形成する、請求項1又は請求項2に記載の積層体の製造方法。
  前記分離層形成工程において、前記ガラス支持体と前記スリットノズルとの相対的な移動範囲を調整することにより、移動方向における前記ガラス支持体の両端から、それぞれ前記分離層の端部を離間させる、請求項3に記載の積層体の製造方法。
  前記分離層形成工程において、前記スリットノズルの開口幅の長さを調整することにより、前記移動方向と直交する方向における前記ガラス支持体の両端から、それぞれ前記分離層の端部を離間させる、請求項3又は請求項4に記載の積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
  以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下、図面においては、各構成をわかりやすくするために、一部を強調して、あるいは一部を簡略化して表しており、実際の構造または形状、縮尺等が異なっている場合がある。
 
【0013】
  図1は、実施形態に係る電子装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態では、いわゆるファンアウト型PLP技術により電子装置を製造する。実施形態に係る電子装置の製造方法は、
図1に示すように、分離層形成工程(ステップS01)と、接着層形成工程(ステップS02)と、基板形成工程(ステップS03)と、モールド研磨工程(ステップS04)と、分離層変質工程(ステップS05)と、ガラス支持体剥離工程(ステップS06)と、接着層除去工程(ステップS07)と、を含む。
 
【0014】
  図2から
図5は、実施形態に係る電子装置の製造方法について、工程の一例を示す図である。以下、
図2から
図5においては、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、ガラス支持体のうち分離層が形成される分離層形成面に平行な面をXY平面とする。このXY平面に平行な一方向(例えば、ガラス支持体の短手方向)をX方向と表記し、X方向に直交する方向(例えば、ガラス支持体の長手方向)をY方向と表記する。また、XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。すなわち、分離層形成面の法線方向がZ方向となる。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
 
【0015】
  <分離層形成工程>
  分離層形成工程S01では、例えば、
図2(A)及び(B)に示すように、矩形状のガラス支持体10の分離層形成面10fに分離層20を形成する。分離層形成面10fは、平面状である。また、分離層形成工程S01では、分離層20の端部20eがガラス支持体10の端部10eから離間するように、分離層20をガラス支持体10の分離層形成面10fの中央部分に形成することで、積層体50を形成する。なお、ガラス支持体10は、例えば、厚さ500〜1500μmのガラス板などが用いられ、ステージ部70(
図6参照)等に載置されて吸着等されることにより、分離層形成面10fを所定の平面度とした状態で保持される。
 
【0016】
  図2(A)及び(B)に示す例では、分離層20は矩形状に形成される。なお、分離層20は、矩形状に限定されず、他の形状であってもよい。例えば、分離層20は、円形状、楕円形状、長円形状、又は矩形以外の多角形状に形成されてもよい。分離層20が矩形状に形成される場合、分離層20は、端部20eとして、4つの端辺20a、20b、20c、20dを有する。端辺20a〜20dは、ガラス支持体10の端部10eである端辺10a、10b、10c、10dに平行にそれぞれ配置される。
 
【0017】
  分離層20の端辺20aは、ガラス支持体10の端辺10aとの間に距離L1を空けて配置される。分離層20の端辺20bは、ガラス支持体10の端辺10bとの間に距離L2を空けて配置される。また、分離層20の端辺20cは、ガラス支持体10の端辺10cとの間に距離M1を空けて配置される。分離層20の端辺20dは、ガラス支持体10の端辺10dとの間に距離M2を空けて配置される。上記の距離L1、L2、M1、M2は、それぞれ同一の値であってもよいし、互いに異なる値であってもよい。
 
【0018】
  なお、上記の距離L1、L2、M1、M2は、例えば0.1mm〜10mmの範囲で設定することができるが、この範囲に限定されない。距離L1、L2、M1、M2の値が0.1mm以上とすることにより、一段と分離層20の端部20eをガラス支持体10の端部10eから離間する効果が発揮される。また、上記値が10mm以下とすることにより、好適な分離層20の面積が確保され、歩留りのよいプロセスを構築できる。なお、分離層20の膜厚は前面にわたって均一又はほぼ均一となるように形成されるが、一部の膜厚が異なってもよい。例えば、分離層20の端部20eが他の部分より膜厚が薄くなってもよいし、また、の端部20eが他の部分より膜厚が厚くなってもよい。
 
【0019】
  (分離層の製造例)
  
図6は、実施形態に係る分離層形成装置90の一例を示す斜視図である。
図6に示すように、分離層形成装置90は、ノズル部60と、ステージ部70と、制御部80とを備える。ノズル部60は、不図示のガントリ等により保持され、ステージ部70に対して移動可能である。ノズル部60は、分離層20を形成するための液状体を開口部(スリット)から吐出可能である。ステージ部70は、ガラス支持体10を載置可能なステージを有する。制御部80は、ステージ部70に対してノズル部60を移動させつつ、ノズル部60からガラス支持体10上に液状体を塗布するように制御する。なお、分離層形成装置90は、ノズル部60を固定してステージ部70を移動させる構成であってもよいし、ノズル部60及びステージ部70の双方を移動させる構成であってもよい。
 
【0020】
  図7から
図9は、上記した分離層形成装置90により分離層形成工程S01を行う様子を示す工程図である。なお、分離層形成工程S01に先立ち、分離層形成装置90のノズル部60として、分離層20を形成するための液状体Q1を吐出するスリットノズル61を設置しておく。スリットノズル61は、分離層20を形成するための液状体を開口部61aを有する。また、
図7から
図9において、ステージ部70は、省略している。また、以下に説明する各部の動作は、制御部80からの指示による。
 
【0021】
  分離層形成工程S01では、先ず、ステージ部70にガラス支持体10を配置した後、
図7(A)に示すように、スリットノズル61の開口部61aが、ガラス支持体10の分離層形成面10fに向けて配置される。このとき、開口部61aは、液状体Q1の吐出開始位置として、ガラス支持体10の端辺10aから所定距離LX1だけ離れた位置に配置される。続いて、開口部61aから分離層形成面10fに液状体Q1を吐出する。これにより、開口部61aから吐出された液状体Q1は、開口部61aと分離層形成面10fの間に挟まれた状態となる。
 
【0022】
  次に、
図7(B)に示すように、スリットノズル61は、開口部61aから液状体Q1を吐出しながら、X方向に移動する。この動作により、スリットノズル61の移動方向(+X方向)に液状体Q1が連続して吐出され、ガラス支持体10の分離層形成面10fに液状体Q1が塗布される。また、液状体Q1は、スリットノズル61が+X方向に移動した後、スリットノズル61の移動方向とは反対方向(−X方向)にも拡がる。この液状体Q1の拡がりにより、分離層20の端部20eの1つである端辺20aが形成される。
 
【0023】
  次に、
図8(A)に示すように、スリットノズル61は、開口部61aがガラス支持体10の端辺10bから所定距離LX2だけ離れた位置に到達した場合に移動を停止し、開口部61aからの液状体Q1の吐出を停止する。その後、
図8(B)に示すように、スリットノズル61を上昇させ、開口部61aをガラス支持体10から離す。所定距離LX2に達したタイミングで液状体Q1の吐出は停止しているが、開口部61aがガラス支持体10から離れたことにより、液状体Q1がガラス支持体10の端辺10b側に向けて+X方向に拡がる。この液状体Q1の拡がりにより、分離層20の端辺20bが形成される。このとき、液状体Q1がガラス支持体10の端辺10bまで拡がらないように距離LX2が設定される。
 
【0024】
  このように、液状体Q1の吐出開始及び吐出停止の双方の位置において、液状体Q1が拡がることを考慮したうえで、ガラス支持体10とスリットノズル61との相対的な移動範囲を調整することにより、移動方向(X方向)におけるガラス支持体10の両端辺10a、10bから、それぞれ分離層20の端辺20a、20bを距離L1、L2だけ離間させることが可能となる。
 
【0025】
  また、
図9に示すように、スリットノズル61の開口部61aから液状体Q1を吐出させつつスリットノズル61を移動させる場合、ガラス支持体10に塗布された液状体Q1は、スリットノズル61の移動方向に直交する方向(Y方向)、つまりガラス支持体10の端辺10c側(+Y方向)、10d側(−Y方向)にそれぞれ拡がる。この液状体Q1の拡がりにより、分離層20の端辺20c、20dが形成される。
 
【0026】
  この場合、スリットノズル61の移動方向に直交する方向(Y方向)について、開口部61aの開口幅の長さ(Y方向の長さ)を調整し、開口部61aの−Y側端部からガラス支持体10の端辺10cまでが距離MY1となり、開口部61aの+Y側端部からガラス支持体10の端辺10dまでが距離MY2となるように設定する。これにより、移動方向と直交する方向におけるガラス支持体10の両端辺10c、10dから、それぞれ分離層20の端辺20c、20dを距離M1、M2だけ離間させることが可能となる。開口部61aの開口幅の長さの調整は、開口部61aの一部を閉じるための閉塞部材等が用いられてもよいし、ガラス支持体10のY方向の長さに合わせた専用の開口部61aを持つスリットノズル61が用いられてもよい。
 
【0027】
  上記の分離層20は、例えば光を吸収することによって変質する材料から形成される。本実施形態において、分離層20が変質するとは、分離層20をわずかな外力を受けて破壊され得る状態、又は分離層20と接する層との接着力が低下した状態にさせることをいう。分離層20は、光を吸収して変質することにより、変質する前に比べて、強度又はガラス支持体10に対する接着性が低下する。このため、変質後の分離層20は、わずかな外力を加える(例えば、ガラス支持体10を持ち上げるなど)こと等により、破壊され又はガラス支持体10から剥離する。
 
【0028】
  分離層20の変質は、吸収した光のエネルギーによる(発熱性又は非発熱性の)分解、架橋、立体配置の変化又は官能基の解離(そして、これらにともなう分離層20の硬化、脱ガス、収縮又は膨張)等であり得る。分離層20の変質は、分離層20を構成する材料による光の吸収の結果として生じる。よって、分離層20の変質の種類は、分離層20を構成する材料の種類に応じて変化し得る。また、分離層20は、光を吸収することによって変質する材料に限定されない。例えば、光によらずに与えられた熱を吸収することによって変質する材料、あるいは、他の溶剤等によって変質する材料であってもよい。
 
【0029】
  分離層20の厚さは、例えば、0.05〜50μmであることがより好ましく、0.3〜1μmであることがさらに好ましい。分離層20の厚さが0.05〜50μmの範囲内に収まっていれば、短時間の光の照射及び低エネルギーの光の照射、あるいは短時間の加熱、溶剤への短時間の浸漬などによって、分離層20に所望の変質を生じさせることができる。また、分離層20の厚さは、生産性の観点から1μm以下の範囲内に収まっていることが特に好ましい。
 
【0030】
  以下、吸収した光のエネルギーにより変質する分離層20について説明する。分離層20は、光を吸収する構造を有する材料のみから形成されていることが好ましいが、本質的な特性を損なわない範囲において、光を吸収する構造を有していない材料を添加して、分離層20を形成してもよい。また、分離層20における接着層13に対向する側の面が平坦である(凹凸が形成されていない)ことが好ましく、これにより、分離層20の形成が容易に行なえ、かつ貼り付け時においても均一に貼り付けることが可能となる。
 
【0031】
  分離層20は、レーザから照射される光を吸収することによって変質するものであってもよい。すなわち、分離層20を変質させるために分離層20に照射される光は、レーザから照射されたものであってもよい。分離層20に照射する光を発射するレーザの例としては、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO
4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO
2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光等が挙げられる。分離層20に照射する光を発射するレーザは、分離層20を構成している材料に応じて適宜選択することが可能であり、分離層20を構成する材料を変質させ得る波長の光を照射するレーザを選択すればよい。
 
【0032】
  (フルオロカーボン)
  分離層20は、フルオロカーボンからなっていてもよい。分離層20は、フルオロカーボンによって構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、ガラス支持体10を持ち上げる等)ことによって、分離層20が破壊されて、ガラス支持体10と基板40とを分離し易くすることができる。分離層20を構成するフルオロカーボンは、プラズマCVD(化学気相堆積)法によって好適に成膜することができる。
 
【0033】
  フルオロカーボンは、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層20に用いたフルオロカーボンが吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、フルオロカーボンを好適に変質させ得る。なお、分離層20における光の吸収率は80%以上であることが好ましい。
 
【0034】
  分離層20に照射する光としては、フルオロカーボンが吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO
2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光を適宜用いればよい。フルオロカーボンを変質させ得る波長としては、これに限定されるものではないが、例えば、600nm以下の範囲のものを用いることができる。
 
【0035】
  (光吸収性を有している構造をその繰り返し単位に含んでいる重合体)
  分離層20は、光吸収性を有している構造をその繰り返し単位に含んでいる重合体を含有していてもよい。該重合体は、光の照射を受けて変質する。該重合体の変質は、上記構造が照射された光を吸収することによって生じる。分離層20は、重合体の変質の結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、ガラス支持体10を持ち上げる等)ことによって、分離層20が破壊されて、ガラス支持体10と基板40とを分離し易くすることができる。
 
【0036】
  光吸収性を有している上記構造は、光を吸収して、繰り返し単位として該構造を含んでいる重合体を変質させる化学構造である。該構造は、例えば、置換若しくは非置換のベンゼン環、縮合環又は複素環からなる共役π電子系を含んでいる原子団である。より詳細には、該構造は、カルド構造、又は上記重合体の側鎖に存在するベンゾフェノン構造、ジフェニルスルフォキシド構造、ジフェニルスルホン構造(ビスフェニルスルホン構造)、ジフェニル構造若しくはジフェニルアミン構造であり得る。
 
【0037】
  上記構造が上記重合体の側鎖に存在する場合、該構造は以下の式によって表され得る。
 
【0039】
  (式中、Rはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ハロゲン、水酸基、ケトン基、スルホキシド基、スルホン基又はN(R
1)(R
2)基であり(ここで、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である)、Zは、存在しないか、又は−CO−、−SO
2−、−SO−若しくは−NH−であり、nは0又は1〜5の整数である。)
  また、上記重合体は、例えば、以下の式のうち、(a)〜(d)の何れかによって表される繰り返し単位を含んでいるか、(e)によって表されるか、又は(f)の構造をその主鎖に含んでいる。
 
【0041】
  (式中、lは1以上の整数であり、mは0又は1〜2の整数であり、Xは、(a)〜(e)において上記の化学式[化1]に示した式のいずれかであり、(f)において上記の[化1]に示した式のいずれかであるか、又は存在せず、Y
1及びY
2はそれぞれ独立して、−CO−又は−SO
2−である。lは好ましくは10以下の整数である。)
  上記の化学式[化1]に示されるベンゼン環、縮合環及び複素環の例としては、フェニル、置換フェニル、ベンジル、置換ベンジル、ナフタレン、置換ナフタレン、アントラセン、置換アントラセン、アントラキノン、置換アントラキノン、アクリジン、置換アクリジン、アゾベンゼン、置換アゾベンゼン、フルオレン、置換フルオレン、フルオレノン、置換フルオリレノン、カルバゾール、置換カルバゾール、N−アルキルカルバゾール、ジベンゾフラン、置換ジベンゾフラン、フェナンスレン、置換フェナンスレン、ピレン及び置換ピレンが挙げられる。例示した置換基がさらに置換基を有している場合、その置換基は、例えば、アルキル、アリール、ハロゲン原子、アルコキシ、ニトロ、アルデヒド、シアノ、アミド、ジアルキルアミノ、スルホンアミド、イミド、カルボン酸、カルボン酸エステル、スルホン酸、スルホン酸エステル、アルキルアミノ及びアリールアミノから選択される。
 
【0042】
  上記の化学式[化1]に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO
2−である場合の例としては、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,6‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2‐ヒドロキシフェニル)スルホン、及びビス(3,5‐ジメチル‐4‐ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。
 
【0043】
  上記の化学式[化1]に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO−である場合の例としては、ビス(2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)‐スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。
 
【0044】
  上記の化学式[化1]に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−C(=O)−である場合の例としては、2,4‐ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,5,6’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐オクトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,6‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4,4’‐ジメトキシベンゾフェノン、4‐アミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジエチルアミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐4’‐メトキシ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐2’,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノン、及び4‐ジメチルアミノ‐3’,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
 
【0045】
  上記構造が上記重合体の側鎖に存在している場合、上記構造を含んでいる繰り返し単位の、上記重合体に占める割合は、分離層20の光の透過率が0.001%以上、10%以下になる範囲内にある。該割合がこのような範囲に収まるように重合体が調製されていれば、分離層20が十分に光を吸収して、確実かつ迅速に変質し得る。すなわち、積層体50からのガラス支持体10の除去が容易であり、該除去に必要な光の照射時間を短縮させることができる。
 
【0046】
  上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している光を吸収することができる。例えば、上記構造が吸収可能な光の波長は、100nm以上、2,000nm以下の範囲内であることがより好ましい。この範囲内のうち、上記構造が吸収可能な光の波長は、より短波長側であり、例えば、100nm以上、500nm以下の範囲内である。例えば、上記構造は、好ましくはおよそ300nm以上、370nm以下の範囲内の波長を有している紫外光を吸収することによって、該構造を含んでいる重合体を変質させ得る。
 
【0047】
  上記構造が吸収可能な光は、例えば、高圧水銀ランプ(波長:254nm以上、436nm以下)、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマレーザ(波長:193nm)、F2エキシマレーザ(波長:157nm)、XeClレーザ(波長:308nm)、XeFレーザ(波長:351nm)若しくは固体UVレーザ(波長:355nm)から発せられる光、又はg線(波長:436nm)、h線(波長:405nm)若しくはi線(波長:365nm)等である。
 
【0048】
  上述した分離層20は、繰り返し単位として上記構造を含んでいる重合体を含有しているが、分離層20はさらに、上記重合体以外の成分を含み得る。該成分としては、フィラー、可塑剤、及びガラス支持体10の剥離性を向上し得る成分等が挙げられる。これらの成分は、上記構造による光の吸収、及び重合体の変質を妨げないか、又は促進する、従来公知の物質又は材料から適宜選択される。
 
【0049】
  (無機物)
  分離層20は、無機物からなっていてもよい。分離層20は、無機物によって構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、ガラス支持体10を持ち上げる等)ことによって、分離層20が破壊されて、ガラス支持体10と基板40とを分離し易くすることができる。
 
【0050】
  上記無機物は、光を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、金属、金属化合物及びカーボンからなる群より選択される1種類以上の無機物を好適に用いることができる。金属化合物とは、金属原子を含む化合物を指し、例えば、金属酸化物、金属窒化物であり得る。このような無機物の例示としては、これに限定されるものではないが、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン、クロム、SiO
2、SiN、Si
3N
4、TiN、及びカーボンからなる群より選ばれる1種類以上の無機物が挙げられる。なお、カーボンとは炭素の同素体も含まれ得る概念であり、例えば、ダイヤモンド、フラーレン、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ等であり得る。
 
【0051】
  上記無機物は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層20に用いた無機物が吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、上記無機物を好適に変質させ得る。
 
【0052】
  無機物からなる分離層20に照射する光としては、上記無機物が吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO
4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO
2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光を適宜用いればよい。
 
【0053】
  無機物からなる分離層20は、例えばスパッタ、化学蒸着(CVD)、メッキ、プラズマCVD、スピンコート等の公知の技術により、ガラス支持体10上に形成され得る。無機物からなる分離層20の厚さは特に限定されず、使用する光を十分に吸収し得る膜厚であればよいが、例えば、0.05μm以上、10μm以下の範囲内の膜厚とすることがより好ましい。また、分離層20を構成する無機物からなる無機膜(例えば、金属膜)の両面又は片面に予め接着剤を塗布し、ガラス支持体10及び基板40に貼り付けてもよい。
 
【0054】
  なお、分離層20として金属膜を使用する場合には、分離層20の膜質、レーザ光源の種類、レーザ出力等の条件によっては、レーザの反射や膜への帯電等が起こり得る。そのため、反射防止膜や帯電防止膜を分離層20の上下又はどちらか一方に設けることで、それらの対策を図ることが好ましい。
 
【0055】
  (赤外線吸収性の構造を有する化合物)
  分離層20は、赤外線吸収性の構造を有する化合物によって形成されていてもよい。該化合物は、赤外線を吸収することにより変質する。分離層20は、化合物の変質の結果として、赤外線の照射を受ける前の強度又は接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体を持ち上げる等)ことによって、分離層20が破壊されて、ガラス支持体10と基板40とを分離し易くすることができる。
 
【0056】
  赤外線吸収性を有している構造、又は赤外線吸収性を有している構造を含む化合物としては、例えば、アルカン、アルケン(ビニル、トランス、シス、ビニリデン、三置換、四置換、共役、クムレン、環式)、アルキン(一置換、二置換)、単環式芳香族(ベンゼン、一置換、二置換、三置換)、アルコール及びフェノール類(自由OH、分子内水素結合、分子間水素結合、飽和第二級、飽和第三級、不飽和第二級、不飽和第三級)、アセタール、ケタール、脂肪族エーテル、芳香族エーテル、ビニルエーテル、オキシラン環エーテル、過酸化物エーテル、ケトン、ジアルキルカルボニル、芳香族カルボニル、1,3−ジケトンのエノール、o−ヒドロキシアリールケトン、ジアルキルアルデヒド、芳香族アルデヒド、カルボン酸(二量体、カルボン酸アニオン)、ギ酸エステル、酢酸エステル、共役エステル、非共役エステル、芳香族エステル、ラクトン(β−、γ−、δ−)、脂肪族酸塩化物、芳香族酸塩化物、酸無水物(共役、非共役、環式、非環式)、第一級アミド、第二級アミド、ラクタム、第一級アミン(脂肪族、芳香族)、第二級アミン(脂肪族、芳香族)、第三級アミン(脂肪族、芳香族)、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、アンモニウムイオン、脂肪族ニトリル、芳香族ニトリル、カルボジイミド、脂肪族イソニトリル、芳香族イソニトリル、イソシアン酸エステル、チオシアン酸エステル、脂肪族イソチオシアン酸エステル、芳香族イソチオシアン酸エステル、脂肪族ニトロ化合物、芳香族ニトロ化合物、ニトロアミン、ニトロソアミン、硝酸エステル、亜硝酸エステル、ニトロソ結合(脂肪族、芳香族、単量体、二量体)、メルカプタン及びチオフェノール及びチオール酸等の硫黄化合物、チオカルボニル基、スルホキシド、スルホン、塩化スルホニル、第一級スルホンアミド、第二級スルホンアミド、硫酸エステル、炭素−ハロゲン結合、Si−A
1結合(A
1は、H、C、O又はハロゲン)、P−A
2結合(A
2は、H、C又はO)、又はTi−O結合であり得る。
 
【0057】
  上記炭素−ハロゲン結合を含む構造としては、例えば、−CH
2Cl、−CH
2Br、−CH
2I、−CF
2−、−CF
3、−CH=CF
2、−CF=CF
2、フッ化アリール、及び塩化アリール等が挙げられる。
 
【0058】
  上記Si−A
1結合を含む構造としては、SiH、SiH
2、SiH
3、Si−CH
3、Si−CH
2−、Si−C
6H
5、SiO−脂肪族、Si−OCH
3、Si−OCH
2CH
3、Si−OC
6H
5、Si−O−Si、Si−OH、SiF、SiF
2、及びSiF
3等が挙げられる。Si−A
1結合を含む構造としては、特に、シロキサン骨格及びシルセスキオキサン骨格を形成していることが好ましい。
 
【0059】
  上記P−A
2結合を含む構造としては、PH、PH
2、P−CH
3、P−CH
2−、P−C
6H
5、A
33−P−O(A
3は脂肪族又は芳香族)、(A
4O)
3−P−O(A
4はアルキル)、P−OCH
3、P−OCH
2CH
3、P−OC
6H
5、P−O−P、P−OH、及びO=P−OH等が挙げられる。
 
【0060】
  上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している赤外線を吸収することができる。具体的には、上記構造が吸収可能な赤外線の波長は、例えば1μm以上、20μm以下の範囲内であり、2μm以上、15μm以下の範囲内をより好適に吸収することができる。さらに、上記構造がSi−O結合、Si−C結合及びTi−O結合である場合には、9μm以上、11μm以下の範囲内であり得る。なお、各構造が吸収できる赤外線の波長は当業者であれば容易に理解することができる。例えば、各構造における吸収帯として、非特許文献:SILVERSTEIN・BASSLER・MORRILL著「有機化合物のスペクトルによる同定法(第5版)−MS、IR、NMR、UVの併用−」(1992年発行)第146頁〜第151頁の記載を参照することができる。
 
【0061】
  分離層20の形成に用いられる、赤外線吸収性の構造を有する化合物としては、上述のような構造を有している化合物のうち、塗布のために溶媒に溶解することができ、固化されて固層を形成することができるものであれば、特に限定されるものではない。しかしながら、分離層20における化合物を効果的に変質させ、ガラス支持体10と基板40との分離を容易にするには、分離層20における赤外線の吸収が大きいこと、すなわち、分離層20に赤外線を照射したときの赤外線の透過率が低いことが好ましい。具体的には、分離層20における赤外線の透過率が90%より低いことが好ましく、赤外線の透過率が80%より低いことがより好ましい。
 
【0062】
  一例を挙げて説明すれば、シロキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記の化学式[化3]で表される繰り返し単位及び下記の化学式[化4]で表される繰り返し単位の共重合体である樹脂、あるいは下記の化学式[化4]で表される繰り返し単位及びアクリル系化合物由来の繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
 
【0065】
(上記の化学式[化4]中、R
3は、水素、炭素数10以下のアルキル基、又は炭素数10以下のアルコキシ基である。)
  中でも、シロキサン骨格を有する化合物としては、上記の化学式[化3]で表される繰り返し単位及び下記の化学式[化5]で表される繰り返し単位の共重合体であるt−ブチルスチレン(TBST)−ジメチルシロキサン共重合体がより好ましく、上記の化学式[化3]で表される繰り返し単位及び下記の化学式[化5]で表される繰り返し単位を1:1で含む、TBST−ジメチルシロキサン共重合体がさらに好ましい。
 
【0067】
  また、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記の化学式[化6]で表される繰り返し単位及び下記の化学式[化7]で表される繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
 
【0070】
(上記の化学式[化6]中、R
4は、水素又は炭素数1以上、10以下のアルキル基であり、上記の化学式[化7]中、R
5は、炭素数1以上、10以下のアルキル基、又はフェニル基である。)
  シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、このほかにも、特開2007−258663号公報(2007年10月4日公開)、特開2010−120901号公報(2010年6月3日公開)、特開2009−263316号公報(2009年11月12日公開)及び特開2009−263596号公報(2009年11月12日公開)において開示されている各シルセスキオキサン樹脂を好適に利用することができる。
 
【0071】
  中でも、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、下記の化学式[化8]で表される繰り返し単位及び下記の化学式[化9]で表される繰り返し単位の共重合体がより好ましく、下記の化学式[化8]で表される繰り返し単位及び下記の化学式[化9]で表される繰り返し単位を7:3で含む共重合体がさらに好ましい。
 
【0074】
  シルセスキオキサン骨格を有する重合体としては、ランダム構造、ラダー構造、及び籠型構造があり得るが、何れの構造であってもよい。
 
【0075】
  また、Ti−O結合を含む化合物としては、例えば、(i)テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、及びチタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート等のアルコキシチタン;(ii)ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、及びプロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のキレートチタン;(iii)i−C
3H
7O−[−Ti(O−i−C
3H
7)
2−O−]
n−i−C
3H
7、及びn−C
4H
9O−[−Ti(O−n−C
4H
9)
2−O−]
n−n−C
4H
9等のチタンポリマー;(iv)トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、及び(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン等のアシレートチタン;(v)ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン等の水溶性チタン化合物等が挙げられる。
 
【0076】
  中でも、Ti−O結合を含む化合物としては、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン(Ti(OC
4H
9)
2[OC
2H
4N(C
2H
4OH)
2]
2)が好ましい。
 
【0077】
  上述した分離層20は、赤外線吸収性の構造を有する化合物を含有しているが、分離層20はさらに、上記化合物以外の成分を含み得る。該成分としては、フィラー、可塑剤、及びガラス支持体10の剥離性を向上し得る成分等が挙げられる。これらの成分は、上記構造による赤外線の吸収、及び化合物の変質を妨げないか、又は促進する、従来公知の物質又は材料から適宜選択される。
 
【0078】
  (赤外線吸収物質)
  分離層20は、赤外線吸収物質を含有していてもよい。分離層20は、赤外線吸収物質を含有して構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、ガラス支持体10を持ち上げる等)ことによって、分離層20が破壊されて、ガラス支持体10と基板40とを分離し易くすることができる。
 
【0079】
  赤外線吸収物質は、赤外線を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、カーボンブラック、鉄粒子、又はアルミニウム粒子を好適に用いることができる。赤外線吸収物質は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層20に用いた赤外線吸収物質が吸収する範囲の波長の光を分離層20に照射することにより、赤外線吸収物質を好適に変質させ得る。
 
【0080】
  <接着層形成工程>
  接着層形成工程S02は、分離層形成工程S01の後に行う。接着層形成工程S02では、例えば
図3(A)に示すように、分離層20のガラス支持体10が存在しない側、つまり接着層形成面20fに、分離層20と互いが接し合うように接着層30が形成される。接着層形成工程S02では、接着層30の端部30eが分離層20の端部20eから離間した状態で、接着層30が分離層20上に形成される。例えば、先ず、接着層30を分離層20の接着層形成面20fの全面に形成する。その後、接着層30の端部30eの周縁を除去して、接着層30の端部30eが分離層20の端部20eから離間した状態にする。
 
【0081】
  図3(A)に示す例では、接着層30は、端辺30a、30bを有する。例えば、端辺30a、30bは、分離層20の端辺20a、20bに平行にそれぞれ配置される。接着層30の端辺30aは、分離層20の端辺20aとの間に距離L3を空けて配置される。接着層30の端辺30bは、分離層20の端辺20bとの間に距離L4を空けて配置される。距離L3と距離L4とは、同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。
 
【0082】
  (接着層の製造例)
  接着層形成工程S02では、分離層20に接着剤を含む液状体を塗布してもよいし、接着剤が両面に塗布された接着テープを分離層20に貼り付けてもよい。接着剤の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、ディッピング法、ローラーブレード法、ドクターブレード法、スプレー法、スリットノズル法による塗布法等が挙げられる。また、接着剤を分離層20上に塗布した後、加熱等により乾燥させてもよい。また、接着剤としては、例えばアクリル系、ノボラック系、ナフトキノン系、炭化水素系、ポリイミド系、エラストマー等の、当該分野において公知の種々の接着剤が使用可能である。
 
【0083】
  図10及び
図11は、接着層形成工程S02を行う様子を示す工程図である。接着層形成工程S02では、分離層形成装置90と同様の構成を有する接着層形成装置を用いて行う。なお、接着層形成工程S02は、分離層形成装置90と同一の装置を用いて行ってもよい。その場合、接着層形成工程S02に先立ち、スリットノズル61に代えて、接着層30を形成するための液状体Q2を吐出するスリットノズル62を設置しておく。スリットノズル62は、移動方向(X方向)に直交する方向(Y方向)についての開口部62aの寸法が、スリットノズル61の開口部61aの寸法よりも小さくなっている。
 
【0084】
  接着層形成工程S02では、
図10に示すように、ステージ部70にガラス支持体10を配置した後、スリットノズル62の開口部62aを分離層20の接着層形成面20fに向けて配置し、開口部62aから接着層形成面20fに液状体Q2を吐出する。このとき、開口部62aによる液状体Q2の吐出開始位置が、ガラス支持体10の端辺10aから所定距離LX3だけ離れた位置に設定される。
 
【0085】
  その後、スリットノズル62を+Y方向に移動させつつ開口部62aから液状体Q2を吐出する。この動作により、スリットノズル62の移動方向(+X方向)に液状体Q2が塗布される。また、液状体Q2は、スリットノズル62の移動方向と反対方向(−X方向)に拡がる。この液状体Q2の拡がりにより、接着層30の端辺30aが形成される。なお、液状体Q2が分離層20の端辺20aまで流れないように距離LX3が設定される。スリットノズル62の開口部62aが分離層20の端辺20bから所定距離LX4だけ離れた位置に到達した場合、スリットノズル62の移動を停止し、開口部62aからの液状体Q2の吐出を停止する。その後、スリットノズル62を上昇させ、開口部62aを分離層20から離す。所定距離LX4に達したタイミングで液状体Q2の吐出は停止しているが、開口部62aが分離層20から離れたことにより、液状体Q2が分離層20の端辺20b側に拡がる。この液状体Q2の拡がりにより、接着層30の端辺30bが形成される。このとき、液状体Q2が分離層20の端辺20bまで流れないように距離LX4が設定される。
 
【0086】
  このように、分離層20(ガラス支持体10)とスリットノズル62との相対的な移動範囲を調整することにより、移動方向における分離層20の両端辺20a、20bから、それぞれ接着層30の端辺30a、30bを距離L3、L4だけ離間させることが可能となる。
 
【0087】
  また、
図11に示すように、スリットノズル62の開口部62aから液状体Q2を吐出させつつスリットノズル62を移動させる場合、分離層20上に塗布された液状体Q2は、スリットノズル62の移動方向に直交する方向(Y方向)、つまり分離層20の端辺20c側(+Y方向)、20d側(−Y方向)にそれぞれ拡がる。この液状体Q2の拡がりにより、接着層30の端辺30c、30dが形成される。
 
【0088】
  この場合、スリットノズル62の移動方向に直交する方向(Y方向)について、開口部62aの開口幅の長さ(Y方向の長さ)を調整し、開口部62aの−Y側端部から分離層20の端辺20cまでが距離MY3となり、開口部62aの+Y側端部から分離層20の端辺20dまでが距離MY4となるように設定する。これにより、移動方向と直交する方向における分離層20の両端辺20c、20dから、それぞれ接着層30の端辺30c、30dを距離M3、M4だけ離間させることが可能となる。開口部62aの開口幅の長さの調整は、上記したスリットノズル61と同様である。
 
【0089】
  接着層30に含有される樹脂としては、接着性を備えたものであればよく、例えば、炭化水素樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂等、又はこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。
 
【0090】
  接着剤のガラス転移温度(Tg)は、上記樹脂の種類や分子量、及び接着剤への可塑剤等の配合物によって変化する。上記接着剤に含有される樹脂の種類や分子量は、基板及び支持体の種類に応じて適宜選択することができるが、接着剤に使用する樹脂のTgは−60℃以上、200℃以下の範囲内が好ましく、−25℃以上、150℃以下の範囲内がより好ましい。接着剤に使用する樹脂のTgが−60℃以上、200℃以下の範囲内であることによって、冷却に過剰なエネルギーを要することなく、好適に接着層30の接着力を低下させることができる。また、接着層30のTgは、適宜、可塑剤や低重合度の樹脂等を配合することによって調整してもよい。ガラス転移温度(Tg)は、例えば、公知の示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定することができる。
(炭化水素樹脂)
  炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体組成物を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂として、シクロオレフィン系ポリマー(以下、「樹脂(A)」ということがある)、並びに、テルペン樹脂、ロジン系樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂(B)」ということがある)等が挙げられるが、これに限定されない。
 
【0091】
  樹脂(A)としては、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を重合してなる樹脂であってもよい。具体的には、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂等が挙げられる。
 
【0092】
  樹脂(A)を構成する単量体成分に含まれる前記シクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエン等の三環体、テトラシクロドデセン等の四環体、シクロペンタジエン三量体等の五環体、テトラシクロペンタジエン等の七環体、又はこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)置換体、アルケニル(ビニル等)置換体、アルキリデン(エチリデン等)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチル等)置換体等が挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、又はこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーが好ましい。
 
【0093】
  樹脂(A)を構成する単量体成分は、上述したシクロオレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよく、例えば、アルケンモノマーを含有することが好ましい。アルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、α−オレフィン等が挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
 
【0094】
  また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、シクロオレフィンモノマーを含有することが、高耐熱性(低い熱分解、熱重量減少性)の観点から好ましい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、特に限定されないが、溶解性及び溶液での経時安定性の観点からは80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
 
【0095】
  また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、直鎖状又は分岐鎖状のアルケンモノマーを含有してもよい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するアルケンモノマーの割合は、溶解性及び柔軟性の観点からは10〜90モル%であることが好ましく、20〜85モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましい。
 
【0096】
  なお、樹脂(A)は、例えば、シクロオレフィン系モノマーとアルケンモノマーとからなる単量体成分を重合させてなる樹脂のように、極性基を有していない樹脂であることが、高温下でのガスの発生を抑制する上で好ましい。
 
【0097】
  単量体成分を重合するときの重合方法や重合条件等については、特に制限はなく、常法に従い適宜設定すればよい。
 
【0098】
  樹脂(A)として用いることのできる市販品としては、例えば、ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「APEL」、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」及び「ZEONEX」、JSR株式会社製の「ARTON」等が挙げられる。
 
【0099】
  樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。樹脂(A)のガラス転移温度が60℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに接着層30の軟化をさらに抑制することができる。
 
【0100】
  樹脂(B)は、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。具体的には、テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジン等が挙げられる。石油樹脂としては、例えば、脂肪族又は芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン・インデン石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、水添テルペン樹脂、水添石油樹脂がより好ましい。
 
【0101】
  樹脂(B)の軟化点は特に限定されないが、80〜160℃であることが好ましい。樹脂(B)の軟化点が80℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに軟化することを抑制することができ、接着不良を生じない。一方、樹脂(B)の軟化点が160℃以下であると、積層体を剥離するときの剥離速度が良好なものとなる。
 
【0102】
  樹脂(B)の重量平均分子量は特に限定されないが、300〜3,000であることが好ましい。樹脂(B)の重量平均分子量が300以上であると、耐熱性が充分なものとなり、高温環境下において脱ガス量が少なくなる。一方、樹脂(B)の重量平均分子量が3,000以下であると、積層体を剥離するときの剥離速度が良好なものとなる。なお、本実施形態における樹脂(B)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量を意味するものである。
 
【0103】
  なお、樹脂として、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合したものを用いてもよい。混合することにより、耐熱性及び剥離速度が良好なものとなる。例えば、樹脂(A)と樹脂(B)との混合割合としては、(A):(B)=80:20〜55:45(質量比)であることが、剥離速度、高温環境時の熱耐性、及び柔軟性に優れるので好ましい。
 
【0104】
  (アクリル−スチレン系樹脂)
  アクリル−スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン又はスチレンの誘導体と、(メタ)アクリル酸エステル等とを単量体として用いて重合した樹脂が挙げられる。
 
【0105】
  (メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数15〜20のアルキル基を有するアクリル系長鎖アルキルエステル、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステル等が挙げられる。アクリル系長鎖アルキルエステルとしては、アルキル基がn−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等であるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なお、当該アルキル基は、分岐状であってもよい。
 
【0106】
  炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルとしては、既存のアクリル系接着剤に用いられている公知のアクリル系アルキルエステルが挙げられる。例えば、アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基等からなるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
 
【0107】
  脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、イソボルニルメタアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
 
【0108】
  芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、芳香族環としては、例えばフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。また、芳香族環は、炭素数1〜5の鎖状又は分岐状のアルキル基を有していてもよい。具体的には、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
 
【0109】
  (マレイミド系樹脂)
  マレイミド系樹脂としては、例えば、単量体として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド等のアルキル基を有するマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等の脂肪族炭化水素基を有するマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−m−メチルフェニルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミド、N−p−メチルフェニルマレイミド等のアリール基を有する芳香族マレイミド等を重合して得られた樹脂が挙げられる。
 
【0110】
  例えば、下記の化学式[化10]で表される繰り返し単位及び下記の化学式[化11]で表される繰り返し単位の共重合体であるシクロオレフィンコポリマーを接着成分の樹脂として用いることができる。
 
【0113】
(上記の化学式[化11]中、nは0又は1〜3の整数である。)
  このようなシクロオレフィンコポリマーとしては、APL  8008T、APL  8009T、及びAPL  6013T(全て三井化学株式会社製)等を使用することができる。
 
【0114】
  (エラストマー)
  エラストマーは、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいることが好ましく、当該「スチレン単位」は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。また、当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であることがより好ましい。さらに、エラストマーは、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であることが好ましい。
 
【0115】
  スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であり、エラストマーの重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、後述する炭化水素系の溶剤に容易に溶解するので、より容易且つ迅速に第一接着剤層を除去することができる。また、スチレン単位の含有量及び重量平均分子量が上記の範囲内であることにより、ウエハがレジストリソグラフィー工程に供されるときに曝されるレジスト溶剤(例えばPGMEA、PGME等)、酸(フッ化水素酸等)、アルカリ(TMAH等)に対して優れた耐性を発揮する。
 
【0116】
  なお、エラストマーには、上述した(メタ)アクリル酸エステルをさらに混合してもよい。
 
【0117】
  また、スチレン単位の含有量は、より好ましくは17重量%以上であり、また、より好ましくは40重量%以下である。
 
【0118】
  重量平均分子量のより好ましい範囲は20,000以上であり、また、より好ましい範囲は150,000以下である。
 
【0119】
  エラストマーとしては、スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であり、エラストマーの重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、種々のエラストマーを用いることができる。例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、及び、これらの水添物、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SeptonV9461(株式会社クラレ製))、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(反応性のポリスチレン系ハードブロックを有する、SeptonV9827(株式会社クラレ製))等であって、スチレン単位の含有量及び重量平均分子量が上述の範囲内であるものを用いることができる。
 
【0120】
  また、エラストマーの中でも水添物がより好ましい。水添物であれば熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。また、炭化水素系溶剤への溶解性及びレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
 
【0121】
  また、エラストマーの中でも両端がスチレンのブロック重合体であるものがより好ましい。熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることでより高い耐熱性を示すからである。
 
【0122】
  より具体的には、エラストマーは、スチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であることがより好ましい。熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。また、熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることでより高い耐熱性を示す。さらに、炭化水素系溶剤への溶解性及びレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
 
【0123】
  接着層30を構成する接着剤に含まれるエラストマーとして用いられ得る市販品としては、例えば、株式会社クラレ製「セプトン(商品名)」、株式会社クラレ製「ハイブラー(商品名)」、旭化成株式会社製「タフテック(商品名)」、JSR株式会社製「ダイナロン(商品名)」等が挙げられる。
 
【0124】
  接着層30を構成する接着剤に含まれるエラストマーの含有量としては、例えば、接着剤組成物全量を100重量部として、50重量部以上、99重量部以下の範囲内が好ましく、60重量部以上、99重量部以下の範囲内がより好ましく、70重量部以上、95重量部以下の範囲内が最も好ましい。これら範囲内にすることにより、耐熱性を維持しつつ、ウエハと支持体とを好適に貼り合わせることができる。
 
【0125】
  また、エラストマーは、複数の種類を混合してもよい。つまり、接着層30を構成する接着剤は複数の種類のエラストマーを含んでいてもよい。複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいればよい。また、複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内である、又は、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、本発明の範疇である。また、接着層30を構成する接着剤において、複数の種類のエラストマーを含む場合、混合した結果、スチレン単位の含有量が上記の範囲内となるように調整してもよい。例えば、スチレン単位の含有量が30重量%である株式会社クラレ製のセプトン(商品名)のSepton4033と、スチレン単位の含有量が13重量%であるセプトン(商品名)のSepton2063とを重量比1対1で混合すると、接着剤に含まれるエラストマー全体に対するスチレン含有量は21〜22重量%となり、従って14重量%以上となる。また、例えば、スチレン単位が10重量%のものと60重量%のものとを重量比1対1で混合すると35重量%となり、上記の範囲内となる。本発明はこのような形態でもよい。また、接着層30を構成する接着剤に含まれる複数の種類のエラストマーは、全て上記の範囲内でスチレン単位を含み、且つ、上記の範囲内の重量平均分子量であることが最も好ましい。
 
【0126】
  なお、光硬化性樹脂(例えば、UV硬化性樹脂)以外の樹脂を用いて接着層30を形成することが好ましい。光硬化性樹脂以外の樹脂を用いることで、接着層30の剥離または除去の後に、被支持基板の微小な凹凸の周辺に残渣が残ることを防ぐことができる。特に、接着層30を構成する接着剤としては、あらゆる溶剤に溶解するものではなく、特定の溶剤に溶解するものが好ましい。これは、基板40に物理的な力を加えることなく、接着層30を溶剤に溶解させることによって除去可能なためである。接着層30の除去に際して、強度が低下した基板40からでさえ、基板40を破損させたり、変形させたりせずに、容易に接着層30を除去することができる。
 
【0127】
  (希釈溶剤)  
  接着層30(および後述する分離層14)を形成するときに使用する希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数4から15の分岐状の炭化水素、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン等の環状炭化水素、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテン等のテルペン系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。
 
【0128】
  (その他の成分)  
  接着層30を構成する接着剤は、本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤、熱重合禁止剤及び界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに用いることができる。
 
【0129】
  <基板形成工程>
  基板形成工程S03は、例えば接着層形成工程S02の後に行う。基板形成工程S03では、分離層20のガラス支持体10が存在しない側に電子部品41を有する基板40を形成する。つまり、基板40は、接着層30の基板形成面30fに形成される。基板形成工程S03では、基板40の端部40eが分離層20の端部20eから離間した状態で、基板40が接着層30上に形成される。基板形成工程S03では、まず、
図3(B)に示すように、接着層30の基板形成面30fに複数の電子部品41を配置する。電子部品の配置数は任意である。電子部品41は、例えば、半導体等を用いて形成されたチップ等を含む。電子部品41は、接着層30により接着されて固定される。
 
【0130】
  その後、
図3(C)に示すように、電子部品41を含む接着層30の基板形成面30fの全面を覆うようにモールド42を形成する。モールド42が形成されることにより、電子部品41がモールド42に埋まった状態で保持される。なお、モールド42は、電子部品41の一部(例えば上面)を露出させるように形成されてもよい。また、モールド42は、例えば分離層20を変質させる光を透過可能な材料を用いて形成される。このような材料としては、例えばガラス、シリコン、アクリル樹脂等が挙げられる。
 
【0131】
  なお、基板形成工程S03では、電子部品41が配置されなくてもよい。電子部品41が配置されない場合、例えば、接着層30の基板形成面30f上には単にモールド42が形成されてもよいし、このモールド42に再配線された電子回路が形成されてもよい。すなわち、形成される基板40には、電子部品41を含まなくてもよい。また、上記したように、分離層20の端部がガラス支持体10の端部から離れているので、基板形成工程S03の行程中に分離層20がガラス支持体10から剥がれることを抑制しており、基板形成工程S03以降の工程を適切に行うことができる。
 
【0132】
  <モールド研磨工程>
  モールド研磨工程S04は、基板形成工程S03の後に行う。モールド研磨工程S04は、
図4(A)に示すように、モールド42のガラス支持体10が存在しない側、つまりモールド42の上面42aを研磨し、電子部品41を露出させる。モールド研磨工程S04により、電子部品41の上面(+Z側の面)とモールド42の上面42aとがほぼ同一面となった状態となる。モールド研磨工程S04では、例えば公知の手法によりモールドを研磨する。なお、基板形成工程S03において、モールド42が電子部品41の一部を露出させて形成されている場合には、モールド研磨工程S04を省略することができる。
 
【0133】
  なお、モールド研磨工程S04の後、電子部品41及びモールド42の上面(+Z側の面、あるいはガラス支持体10が存在しない側の面)に導電性を有する材料により配線が形成されてもよい。また、この配線と電気的に接続するように電子部品41が配置され、この電子部品41を覆うように、モールド42が形成されてもよい。配線と電子部品41との接続はバンプ、はんだ等が用いられる。このように、電子部品41を配置した層が複数積層された基板40が形成されてもよい。
 
【0134】
  <分離層変質工程>
  分離層変質工程S05は、例えばモールド研磨工程S04の後に行う。分離層変質工程S05では、
図4(B)に示すように、ガラス支持体10の分離層20が存在しない側、つまりガラス支持体10の底面10rから分離層20に対して、照射装置IRから光L又は熱を照射する。光Lとしては、分離層20を変質させることが可能な波長の光L又は熱を照射する。分離層変質工程S05により、分離層20が変質し、強度又はガラス支持体10に対する接着力が低下する。なお、
図4(B)では、ガラス支持体10の上下を逆にして(基板40を下向きとして)、上方の照射装置IRから光L又は熱を照射しているが、この形態に限定されない。例えば、基板40を上向きとしてガラス支持体10の下方から照射装置IRにより光L又は熱を照射してもよい。
 
【0135】
  <ガラス支持体剥離工程>  
  ガラス支持体剥離工程S06は、例えば分離層変質工程S05の後に行う。ガラス支持体剥離工程S06では、
図5(A)に示すように、基板40を下向きとした状態でガラス支持体10を上方に持ち上げることにより、分離層20が破壊され、基板40からガラス支持体10が剥離される。ガラス支持体10を上方に持ち上げる作業は、ガラス支持体10を吸着して持ち上げる装置が用いられてもよい。このとき、基板40は、ステージ等に吸着されており、ガラス支持体10が持ち上げられることにより、ガラス支持体10から引き離される。ガラス支持体剥離工程S06により、接着層30及び基板40を含む積層体50がガラス支持体10から剥離される。
 
【0136】
  なお、上記したように、接着層30の端部が分離層20の端部から離れているので、接着層30がガラス支持体10に付着することを防止しており、ガラス支持体剥離工程S06において、ガラス支持体10を基板40から容易に剥離することができる。
 
【0137】
  <接着材除去工程>
  接着層除去工程S07は、ガラス支持体剥離工程S06の後に行う。接着層除去工程S07では、
図5(B)に示すように、基板40(配線及びモールド42)を溶解させず、かつ接着層30の接着剤を溶解させる溶剤を、接着層30上に供給する。これにより、接着剤が溶剤によって溶解され、基板40から接着層30が除去されて、複数の電子装置51が1枚の板状となった構成体が得られる。その後、図示しないが、例えば、電子部品41ごとにダイシングすることにより、個別の電子装置51が得られる。なお、ダイシング装置は、任意の装置が使用可能である。
 
【0138】
  以上のように、実施形態に係る積層体50の製造方法は、矩形状のガラス支持体10と、光の吸収または加熱により変質する分離層20と、が積層された積層体50を製造する方法であって、分離層20を、端部20eがガラス支持体10の端部10eから離間するようにガラス支持体10上の中央部分に形成する分離層形成工程S01を含んでいる。これにより、分離層20の端部20eがガラス支持体10の端部10eから離間した状態でガラス支持体10上の中央部分に形成されるので、ガラス支持体10と分離層20との密着性を向上させることにより分離層20が容易に剥がれることを抑制し、上記した基板形成工程S03以降の工程(あるいは接着層形成工程S02以降の工程)を円滑に行うことができ、積層体50あるいは電子装置51を容易に製造することができる。
 
【0139】
  上記した実施形態は、分離層形成工程S01において、スリットノズル61の移動範囲及び開口部61aの開口幅を調整することにより、分離層20を形成する範囲を設定する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
 
【0140】
  図12(A)及び(B)は、積層体の製造方法の他の例を示す工程図である。分離層形成工程S01において、例えば
図12(A)に示すように、予めガラス支持体10の周縁部10gにマスキングMを形成し、マスキングMが形成された後に、マスキングM上を含めてガラス支持体10の全面に液状体Q1を塗布する。その後、
図12(B)に示すように、マスキングMを溶剤等により除去してもよい。マスキングMを除去することにより、マスキングM上に重ねて塗布された液状体Q1がマスキングMと共に除去される。これにより、分離層20の端部20eがガラス支持体10の端部10eから離間した状態とすることができる。
 
【0141】
  なお、マスキングMは、溶剤等により除去可能な任意の材質を用いることができる。また、マスキングMとして、マスキングテープが用いられてもよい。この場合、ガラス支持体10の端部にマスキングテープが貼られた後に、ガラス支持体10の全面に液状体Q1を塗布する。その後、マスキングテープを剥がすことにより、マスキングテープ上に塗布された液状体Q1を除去することができる。
 
【0142】
  図13(A)及び(B)は、積層体の製造方法の他の例を示す工程図である。分離層形成工程S01において、例えば
図13(A)に示すように、ガラス支持体10をZ軸周りに回転させた状態で分離層形成面10fに不図示のディスペンサ等から液状体Q1を供給し、分離層形成面10fの全面に液状体Q1を塗布して分離層20を形成する。その後、
図13(B)に示すように、分離層20において分離層形成面10fの周縁部10gに形成された部分を溶剤S1等により除去してもよい。これにより、分離層20の端部20eがガラス支持体10の端部10eから離間した状態とすることができる。
 
【0143】
  また、上記した実施形態では、分離層形成工程S01と同様に、接着層形成工程S02において、スリットノズル62の移動範囲及び開口部62aの開口幅を調整することにより、接着層30の範囲を調整する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
 
【0144】
  図14(A)から(C)は、積層体の製造方法の他の例を示す工程図である。接着層形成工程S02において、例えば
図14(A)に示すように、分離層20を含むガラス支持体10の分離層形成面10fの全面に接着層30を形成する。続いて、
図14(B)に示すように、接着層30上に基板40を覆ったモールド42を研磨する(上記した基板形成工程S03及びモールド研磨工程S04参照)。続いて、
図14(C)に示すように、接着層30の周縁部を溶剤S2等により溶解させる。これにより、分離層20の端部20eを露出させることが可能となる。なお、
図14に示す例では、接着層30の端部30eが分離層20の端部20eに一致する場合を示しているが、分離層20の端部20eが露出しているため、接着層30がガラス支持体10に接着することを防止しており、ガラス支持体剥離工程S06において、がする支持体10を剥離する際の支障とはならない。
 
【0145】
  なお、
図14(C)に示すように、接着層30の端部30eを分離層20の端部20eに一致させることに限定されない。例えば、溶剤S2等の供給量又は供給時間を長くすることにより、接着層30の端部30eが分離層20の端部20eから離間するまで接着層30を溶解させてもよい。
 
【0146】
  <積層体製造システム>
  実施形態に係る積層体製造システムについて説明する。
図15は、積層体製造システム100の一例を模式的に示すブロック図である。
図15に示すように、積層体製造システム100は、分離層形成装置90と、接着層形成装置91と、基板形成装置92と、モールド研磨装置93と、分離層変質装置94と、ガラス支持体剥離装置95と、接着層除去装置96とを備える。
 
【0147】
  分離層形成装置90は、ガラス支持体10上に分離層20を形成し、上記した分離層形成工程S01を実行する。接着層形成装置91は、分離層20上に接着層30を形成し、上記した接着層形成工程S02を実行する。基板形成装置92は、接着層30上に基板40を形成し、上記した基板形成工程S03を実行する。モールド研磨装置93は、上記したモールド研磨工程S04に示すように、基板40のモールド42を研磨する。分離層変質装置94は、上記した分離層変質工程S05に示すように、分離層20に光又は熱を照射して分離層20を変質させる。ガラス支持体剥離装置95は、上記したガラス支持体剥離工程S06に示すように、ガラス支持体10を基板40から剥離する。接着層除去装置96は、上記した接着層除去工程S07に示すように、基板40から接着層30を除去する。
 
【0148】
  このように、積層体製造システム100によれば、上記した分離層形成工程S01、接着層形成工程S02、基板形成工程S03、モールド研磨工程S04、分離層変質工程S05、ガラス支持体剥離工程S06、及び接着層除去工程S07の各工程を効率的に行うことができる。
 
【実施例】
【0149】
  上記した実施形態に係る積層体の製造方法によりガラス支持体に分離層を形成した積層体50に対して各種の剥離テストを行った。
図16(A)から(C)は、実施例における各剥離テストの結果を示す表である。実施例1、2に係る積層体50は、ガラス支持体10の端部と分離層20の端部とを離間させた状態でガラス支持体10に分離層20を形成した積層体50に対して、400℃の温度でキュア処理を行ったものである。また、比較例1、2に係る積層体は、ガラス支持体10の端部まで分離層を形成した積層体に対して400℃の温度でキュア処理を行ったものである。
【0150】
  図16(A)に示す表は、実施例1に係る積層体50及び比較例1に係る積層体をそれぞれ10分間水に浸した後、ガラス支持体10と分離層との間に向けてエアを噴射した場合の結果を示している。
図16(A)に示すように、比較例1に係る積層体においては、ガラス支持体10から分離層の剥離が認められた。一方、実施例1に係る積層体50においては、ガラス支持体10分離層20の剥離が認められなかった。
【0151】
  また、
図16(B)に示す表は、実施例2に係る積層体50及び比較例2に係る積層体に対して
図16(A)におけるテストを行った後、さらに5分間の超音波洗浄を行い、その後、ガラス支持体10と分離層との間に向けてエアを噴射した場合の結果を示している。
図16(B)に示すように、比較例2に係る積層体においては、ガラス支持体10から分離層の剥離が認められた。一方、実施例2に係る積層体50においては、ガラス支持体10から分離層20の剥離が認められなかった。
【0152】
  また、
図16(C)に示す表は、実施例3に係る積層体50及び比較例3に係る積層体に対して
図16(B)におけるテストを行った後、それぞれの分離層にテープを貼付して剥がした場合(ピーリングテスト)の結果を示している。なお、実施例3に係る積層体50、及び比較例3に係る積層体は、360℃の温度でキュア処理を行ったものである。
図16(C)に示すように、比較例3に係る積層体においては、ピーリングテストによりガラス支持体10から分離層の剥離が認められた。一方、実施例3に係る積層体50においては、ピーリングテストを行った場合でもガラス支持体10から分離層20の剥離が認められなかった。
【0153】
  このように、上記した実施例1から3においては、ガラス支持体10に対する分離層20の密着度が向上していることが確認された。
【0154】
  以上、実施形態及び実施例について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
 
 
【解決手段】矩形状のガラス支持体10と、光の吸収または加熱により変質する分離層20と、が積層された積層体50を製造する方法であって、分離層20を、端部20eがガラス支持体10の端部10eから離間するようにガラス支持体10上の中央部分に形成する分離層形成工程S01を含む。