(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板と、前記基板に対して垂直に設けられた打抜刃と、前記基板上の前記打抜刃内に配置された弾性体とを有する打抜型および受け板の間にシート状の無機繊維成形体を挟み、押圧して、前記無機繊維成形体から排ガス浄化装置用保持材を打抜く排ガス浄化装置用保持材の製造方法であって、
前記無機繊維成形体はニードリング処理が施されたものであり、
前記無機繊維成形体の嵩密度が0.160g/cm3以上0.250g/cm3以下の範囲内であり、
前記弾性体の25%圧縮荷重が1kPa以上20kPa以下の範囲内であることを特徴とする排ガス浄化装置用保持材の製造方法。
前記打抜型上に前記無機繊維成形体を配置し、前記無機繊維成形体の上方に前記受け板を配置することを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化装置用保持材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の排ガス浄化装置用保持材の製造方法および打抜型について詳細に説明する。
【0014】
A.排ガス浄化装置用保持材の製造方法
本発明の排ガス浄化装置用保持材の製造方法は、基板と、上記基板に対して垂直に設けられた打抜刃と、上記基板上の上記打抜刃内に配置された弾性体とを有する打抜型および受け板の間にシート状の無機繊維成形体を挟み、押圧して、上記無機繊維成形体から排ガス浄化装置用保持材を打抜く方法であって、上記無機繊維成形体はニードリング処理が施されたものであり、上記無機繊維成形体の嵩密度が0.160g/cm
3以上0.250g/cm
3以下の範囲内であり、上記弾性体の25%圧縮荷重が1kPa以上20kPa以下の範囲内であることを特徴とする方法である。
【0015】
本発明の排ガス浄化装置用保持材の製造方法について、図面を参照して説明する。
図1(a)、(b)は本発明の排ガス浄化装置用保持材の製造方法に用いられる打抜型の一例を示す概略平面図および断面図であり、
図1(b)は
図1(a)のA−A線断面図である。
図1(a)、(b)に示すように、打抜型1は、基板2と、基板2の溝2aに嵌め込まれ、垂直に設けられた帯状の打抜刃3と、基板2上の打抜刃3内に配置された弾性体4とを有している。
【0016】
図2(a)〜(c)は本発明の排ガス浄化装置用保持材の製造方法の一例を示す工程図であり、
図1(a)、(b)に示す打抜型を用いた例である。まず、
図2(a)に示すように、打抜型1上にシート状の無機繊維成形体11を載置する。続いて、打抜型1および無機繊維成形体11の上方に受け板5を配置する。次に、
図2(b)に示すように、打抜刃3の刃先が受け板5に接触するまで打抜型1を上方に移動させ、無機繊維成形体11を押圧する。この際、弾性体4が厚み方向に圧縮され、打抜刃3で無機繊維成形体11が厚み方向にさらに押圧され、無機繊維成形体11が打抜かれる。次に、
図2(c)に示すように打抜型1を下方に移動させ、元の位置に戻す。この際、弾性体4の弾性変形により、切り出された排ガス浄化装置用保持材12は打抜刃3内から押し出される。
【0017】
本発明における無機繊維成形体11はニードリング処理が施されたものであり、嵩密度が所定の範囲内であり比較的高いものである。打抜型1の弾性体4は25%圧縮荷重が所定の範囲内であり比較的柔らかい。そのため、無機繊維成形体11を打抜型1の弾性体4と受け板5との間に挟んだ状態で打抜く際、弾性体4は圧縮されやすいため、弾性体4から打抜刃3が突出し、打抜刃3を無機繊維成形体11の厚み方向に進入させることができ、無機繊維成形体11を精度良く打抜くことができる。また、無機繊維成形体11に過度の圧縮荷重がかかるのを抑えることができ、打抜き時に無機繊維成形体11が圧潰され崩壊するのを抑制することができる。
【0018】
これに対し、
図5(a)〜(b)に示すように、打抜型51の弾性体54の25%圧縮荷重が所定の範囲よりも大きく比較的硬い場合には、無機繊維成形体56を打抜型51の弾性体54と受け板55との間に挟んだ状態で打抜く際、弾性体54が圧縮されにくく、弾性体54から打抜刃53が突出しにくい。弾性体54から打抜刃53を突出させるためにさらに押圧すると、弾性体54だけでなく無機繊維成形体56も圧縮される。無機繊維成形体56が圧縮されると嵩密度が高くなるため、無機繊維成形体56に打抜刃53が進入しにくくなる。そのため、付与された押圧力は分散され、無機繊維成形体56の厚み方向だけでなく面内方向にも力が作用する。無機繊維成形体56は打抜型51の弾性体54と受け板55との間に挟まれているものの、打抜型51および受け板55に固定されているわけではないため、無機繊維成形体56に面内方向の力が作用すると、無機繊維成形体56は位置がずれてしまう。また、帯状の打抜刃53に水平方向の力が作用すると、打抜刃53の刃先がたわむおそれもある。この場合、
図5(c)に示すように、切り出された排ガス浄化装置用保持材57の切断面が斜めになる等、打抜精度が低下する。また、無機繊維成形体56が過度に圧縮されることで、繊維が座屈し無機繊維成形体56が破壊されたり、切り出された排ガス浄化装置用保持材57の厚みや面圧等の性状が劣化したりするおそれがある。
【0019】
したがって本発明においては、打抜型の弾性体が比較的柔らかいものであることにより、嵩密度が比較的高い無機繊維成形体の場合に精度良く打抜くことができ、また打抜き時の性状劣化を抑制することができる。よって、本発明により製造される排ガス浄化装置用保持材を用いて排ガス浄化装置を作製した場合には、位置ずれ、隙間の発生等を抑制することができ、排ガス浄化装置用保持材の保持力を高めることができる。
【0020】
以下、本発明の排ガス浄化装置用保持材の製造方法について説明する。
【0021】
1.無機繊維成形体
本発明における無機繊維成形体は、ニードリング処理を施されたものであり、嵩密度が0.160g/cm
3以上0.250g/cm
3以下の範囲内であり比較的高いものである。嵩密度が低すぎると、剥離性が低下し、キャニング時のトラブルとなる。また、嵩密度が高すぎても、無機繊維成形体のクッション性の低下や、無機繊維重量が増えるためコスト高になる。
【0022】
無機繊維形成体はニードリング処理が施されたものであるが、そのニードル密度としては、2打/cm
2〜200打/cm
2の範囲内であることが好ましく、中でも10打/cm
2〜150打/cm
2の範囲内、特に20打/cm
2〜100打/cm
2の範囲内、さらには25打/cm
2〜50打/cm
2の範囲内であることが好ましい。このニードル密度が低すぎると、無機繊維成形体としての厚みの均一性が低下し、かつ剥離性が低下する場合があり、高すぎると、繊維を傷め、焼成後に飛散し易くなるおそれがある。
【0023】
また、無機繊維成形体の目付量は、目的に応じて適宜選択されるが、1000g/m
2〜3000g/m
2の範囲内であることが好ましく、中でも1150g/m
2〜2800g/m
2の範囲内、特に1200g/m
2〜2600g/m
2の範囲内であることが好ましい。目付量が少なすぎると、無機繊維成形体の強度や、断熱性、クッション性等が不十分となる場合がある。また、目付量が多すぎると、無機繊維成形体が厚くなり、排ガス浄化装置用保持材の組み付けが困難になったり、クッション性が強すぎて触媒担体を破壊するおそれがあったり、コストが高くなったりする。
【0024】
無機繊維成形体は無機繊維の不織布状の集合体であり、シート状のものである。シート状の無機繊維成形体には、例えばマット、ブランケット等と称されるものも含まれる。
【0025】
無機繊維成形体を構成する無機繊維としては、特に限定されるものではなく、例えばシリカ、アルミナ/シリカ、これらを含むジルコニア、スピネル、チタニア等の単独、または複合繊維が挙げられる。中でもアルミナ/シリカ系繊維が好ましく、特に結晶質アルミナ/シリカ系繊維が好ましい。アルミナ/シリカ系繊維のアルミナ/シリカの組成比(重量比)は60〜98/40〜2の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは70〜74/30〜26の範囲内である。
【0026】
無機繊維の平均繊維径は3μm〜8μmの範囲内、特に5μm〜6μmの範囲内であることが好ましい。無機繊維の平均繊維径が大きすぎると無機繊維成形体の反発力が失われ、小さすぎると空気中に浮遊する発塵量が多くなるおそれがある。
【0027】
また、無機繊維成形体は、組み付け作業中の繊維飛散を防止すること等を目的として、バインダーを含有していてもよい。
バインダーとしては、有機バインダーおよび無機バインダーのいずれも用いることができる。また、有機バインダーおよび無機バインダーを組み合わせて用いてもよい。
【0028】
有機バインダーとしては、例えば各種のゴム、水溶性高分子化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を使用することができる。中でも、アクリルゴム、ニトリルゴム等の合成ゴム;カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子化合物;またはアクリル樹脂が好ましい。特に、アクリルゴム、ニトリルゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アクリルゴムに含まれないアクリル樹脂が好ましい。これらの有機バインダーは、有機バインダー液の調製または入手が容易であり、また無機繊維成形体への塗布操作も簡単であり、比較的低含有量としても十分な厚み拘束力を発揮し、得られる成形体が柔軟で強度に優れ、使用温度条件下で容易に分解または焼失されることから好適に使用することができる。有機バインダーは、1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
無機バインダーとしては、例えば無機酸化物を挙げることができ、具体的にはアルミナ、スピネル、ジルコニア、マグネシア、チタニア、カルシア、および上記無機繊維と同質の組成を有する材料が挙げられる。無機バインダーは、1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
無機酸化物の粒径は、例えば1μm以下とすることができる。
【0030】
無機繊維成形体の製造方法としては、ニードリング処理が施された無機繊維成形体を製造する方法であれば特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用することができる。ニードリング処理によって、無機繊維成形体を構成する無機繊維同士が絡んだ強固な無機繊維成形体となるだけでなく、無機繊維成形体の厚みを調整することができる。
【0031】
また、バインダーを含有する無機繊維成形体の製造方法としては、例えば無機繊維成形体にバインダー液を塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。塗布方法としては、例えばスプレー法、浸漬法、キスコート法等を挙げることができる。
【0032】
無機繊維成形体の厚みとしては、特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜選択される。例えば無機繊維成形体の厚みは2mm〜50mm程度とすることができる。
【0033】
無機繊維成形体は、枚葉であってもよく長尺であってもよい。長尺の無機繊維成形体の場合には、ロールツーロール方式で無機繊維成形体を打抜くことができ、生産性を向上させることができる。
【0034】
2.打抜型
本発明に用いられる打抜型は、基板と、上記基板に対して垂直に設けられた打抜刃と、上記基板上の上記打抜刃内に配置され、25%圧縮荷重が所定の範囲内である弾性体とを有するものである。
以下、打抜型における各構成について説明する。
【0035】
(1)弾性体
本発明に用いられる弾性体は、25%圧縮荷重が1kPa〜20kPaの範囲内であり、好ましくは3kPa〜15kPaの範囲内、さらに好ましくは5kPa〜10kPaの範囲内である。25%圧縮荷重が小さすぎると弾性体の反発力が弱く、打抜き後に打抜刃内から排ガス浄化装置用保持材を押し出すことが困難になる。一方、25%圧縮荷重が大きすぎると打抜精度が低下したり打抜き後の排ガス浄化装置用保持材の性状が劣化したりするおそれがある。
なお、25%圧縮荷重は、ASTM(米国材料試験協会)規格 D1056に準拠して測定した値である。
【0036】
弾性体を構成する弾性材料としては、弾性変形可能であり、上記の25%圧縮荷重を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば有機繊維、無機繊維等から構成される不織布またはフェルト、あるいは発泡体等が挙げられる。中でも、繊維の付着、排ガス浄化装置用保持材との繊維の絡みつき等がないことから、発泡体が好ましい。
発泡体としては、上記の25%圧縮荷重を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリウレタン発泡体、ポリエステル発泡体、メラミン樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、天然ゴム発泡体、合成ゴム発泡体、エラストマー発泡体等が挙げられる。
特に、合成ゴム発泡体が好ましい。合成ゴム発泡体は繰り返しの圧縮に対するヘタリが小さいからである。
弾性材料は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、弾性体は単層であってもよく、同一または異なる種類の弾性材料を積層させたものであってもよい。
【0037】
弾性体4は、
図1(a)に例示するように基板2上の打抜刃3内に配置されていればよいが、
図3に例示するように基板2上の打抜刃3内だけでなく打抜刃3の外周に配置されていてもよい。後者の場合、シート状の無機繊維成形体が配置される領域全体に弾性体を配置することができる。
【0038】
また、弾性体と打抜刃との間には隙間があることが好ましい。隙間があることで、摩擦抵抗をなくすことができるからである。この場合、弾性体と打抜刃の側面との間の隙間は、0mm超10mmの範囲内であることが好ましい。隙間が大きすぎると、弾性体と打抜刃の側面との間に無機繊維成形体が入り込み、切り出される排ガス浄化装置用保持材の性状が劣化したり、打抜き後に打抜刃内から排ガス浄化装置用保持材が押し出されにくくなったりするおそれがある。
【0039】
弾性体は基板に固定されていてもよく、固定されていなくてもよい。固定方法としては、例えば両面テープ、接着剤等により貼付する方法が挙げられる。
【0040】
弾性体の厚みは、通常、基板表面からの打抜刃の突出高さよりも大きい。具体的には、弾性体の厚みは、無機繊維成形体の厚みや、打抜刃の突出高さに応じて異なるが、弾性体の厚みと基板表面からの打抜刃の突出高さとの差が0mm超10mm以下の範囲内であることが好ましく、0mm超5mm以下の範囲内であることがより好ましい。弾性体の厚みが打抜刃の突出高さよりも薄いと繰り返しの打抜きにより弾性体にヘタリが生じ、打抜き後に打抜刃内から排ガス浄化装置用保持材が押し出されにくくなるおそれがある。一方、弾性体の厚みが打抜刃の突出高さよりも厚すぎると、打抜き時に無機繊維成形体が圧縮変形し、切り出される排ガス浄化装置用保持材の性状が劣化するおそれがある。
【0041】
弾性体の無機繊維成形体に接触する側の表面の形状は、無機繊維成形体を精度良く打抜くことができれば特に限定されるものではなく、例えば平面状であってもよく、曲面状、凹凸面状等であってもよい。
【0042】
(2)打抜刃
本発明における打抜刃としては、例えば帯状の金属刃が折り曲げ加工されたものを挙げることができ、具体的にはトムソン刃を用いることができる。
打抜刃は基板に対して垂直に設けられていればよく、例えば一方の側面に配置され、無機繊維成形体を打抜く刃部と、他方の側面に配置され、基板の溝や孔に嵌め込まれる固定部とを有するものを挙げることができる。
打抜刃は基板に固定されている。固定方法としては、例えば打抜刃の固定部を基板の溝や孔に嵌め込む方法や、ネジ、ボルト等の連結具を用いて固定する方法が挙げられる。
【0043】
打抜刃は、切り出される排ガス浄化装置用保持材の平面視形状と同一の形状を有するものであり、打抜刃の形状は目的とする排ガス浄化装置用保持材の平面視形状に応じて適宜決定される。
【0044】
打抜刃の厚みは、例えば0.5mm〜1.5mm程度とすることができ、好ましくは0.8〜1.2mmの範囲内、より好ましくは1.0mmである。打抜刃の厚みが薄すぎると、刃折れ等が生じ耐久性が低下するおそれがある。一方、厚みが厚すぎると、折り曲げ加工が困難となるとともに、切り出される排ガス浄化装置用保持材の形状が変化したり、打抜き後に排ガス浄化装置用保持材が押し出されにくくなったりするおそれがある。
基板表面からの打抜刃の突出高さは、無機繊維成形体の厚みや材質等により適宜選択される。
【0045】
(3)基板
本発明における基板は打抜刃および弾性体を支持するものである。
基板としては、ベニア板等の木製基板や金属基板を用いることができる。
また、基板は打抜刃を固定するための溝や孔を有していてもよい。また、溝や孔は、打抜刃が配置される領域の全てに形成されていてもよく、一部に形成されていてもよい。溝および孔の形成方法としては、例えばレーザ加工等が挙げられる。
【0046】
3.受け板
本発明に用いられる受け板としては、打抜刃の刃先を傷つけないものであれば特に限定されるものではなく、例えばポリプロピレン樹脂等の樹脂基板や、ゴム、発泡体、繊維等を積層した積層板等を用いることができる。
【0047】
4.打ち抜き方法
本発明においては、打抜型および受け板の間にシート状の無機繊維成形体を挟み、押圧して、無機繊維成形体から排ガス浄化装置用保持材を打抜く。
無機繊維成形体を打抜く際には、例えば打抜型の弾性体上に無機繊維成形体を載置し、打抜型および無機繊維成形体の上方に受け板を配置した後、打抜型を上下に移動させてもよく、または受け板を上下に移動させてもよい。また、受け板上に無機繊維成形体を載置し、受け板および無機繊維成形体の上方に打抜型を配置した後、受け板を上下に移動させてもよく、または打抜型を上下に移動させてもよい。
【0048】
中でも、打抜型上に無機繊維成形体を配置し、無機繊維成形体の上方に受け板を配置することが好ましく、特にこの場合には受け板に向けて打抜型を昇降することが好ましい。無機繊維成形体の自重が打抜型に向けて常にかかるため、受け板上に無機繊維成形体を配置し、無機繊維成形体の上方に打抜型を配置し、打抜型を昇降させて打抜いた場合と比較して、押圧が小さくても無機繊維成形体を打抜くことができる。そのため、無機繊維成形体が打抜型に埋もれにくく、押出性が良好となる。したがって、切り出された排ガス浄化装置用保持材を傷つけることなく、打抜型の打抜刃内から容易に取り出すことができる。
【0049】
また、無機繊維成形体が載置される打抜型または受け板を搬送装置と組み合わせて、無機繊維成形体の打抜きを連続的に行ってもよい。
【0050】
5.排ガス浄化装置用保持材
本発明により得られる排ガス浄化装置用保持材12としては、一般的な形状を有するものであればよく、例えば
図4(a)に示すように、平面視形状が矩形状である本体部13と、本体部13の一方の短辺側に設けられた凸部14と、本体部13の他方の短辺側に設けられ、凸部14と嵌合する凹部15とを有するものが挙げられる。
排ガス浄化装置用保持材12は、例えば
図4(b)に示すように触媒担体21に巻回され、
図4(c)に示すように排ガス浄化装置20の金属製のケーシング22内に装着され、使用される。
【0051】
排ガス浄化装置は、例えば触媒担体または粒子フィルタと、触媒担体または粒子フィルタを収容する金属製のケーシングと、触媒担体または粒子フィルタおよびケーシングの間に介装された保持材とを備えるものである。具体的には、触媒コンバータやディーゼルパティキュラーフィルタ(DPF)が挙げられる。
排ガス浄化装置の構成は特に限定されるものではなく、排ガス浄化装置用保持材は、上記の構成を備える一般的な排ガス浄化装置に適用することができる。
【0052】
B.打抜型
本発明の打抜型は、基板と、上記基板に対して垂直に設けられた打抜刃と、上記基板上の上記打抜刃内に配置された弾性体とを有するものであって、上記弾性体の25%圧縮荷重が1kPa以上20kPa以下の範囲内であり、ニードリング処理が施され、嵩密度が0.160g/cm
3以上0.250g/cm
3以下の範囲内であるシート状の無機繊維成形体から排ガス浄化装置用保持材を打抜くために用いられることを特徴とするものである。
なお、打抜型については、上記「A.排ガス浄化装置用保持材 2.打抜型」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0053】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0054】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0055】
[実施例1]
厚みが1.0mmであり、縦400mm、横70mmの略長方形状に加工された帯状の打抜刃(トムソン刃)が垂直に設けられた基板を準備し、基板上の打抜刃内のほぼ全面に弾性体として25%圧縮荷重が7.6kPaであるウレタン発泡体を配置して、打抜型を作製した。弾性体の厚みは、基板表面からの打抜刃の突出高さから+1mmとした。この打抜型を用いて、シート状の無機繊維成形体(三菱樹脂社製、マフテック(登録商標)、嵩密度:0.171g/cm
3)を打抜き、排ガス浄化装置用保持材を得た。この際、打抜型上に無機繊維成形体を配置し、無機繊維成形体の上方に受け板を配置し、受け板に向けて打抜型を昇降することで、無機繊維成形体を打抜いた。打抜きは10回繰り返し行った。
なお、弾性体の25%圧縮荷重は、ASTM規格 D1056に準じて測定した。
【0056】
[実施例2]
実施例1において、嵩密度が0.200g/cm
3であるシート状の無機繊維成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様に打抜きを行った。
【0057】
[比較例1]
実施例1において、弾性体として25%圧縮荷重が35.1kPaであるウレタン発泡体を使用したこと以外は、実施例1と同様に打抜きを行った。
【0058】
[比較例2]
実施例2において、弾性体として25%圧縮荷重が35.1kPaであるウレタン発泡体を使用したこと以外は、実施例1と同様に打抜きを行った
【0059】
[比較例3]
実施例1において、嵩密度が0.155g/cm
3であるシート状の無機繊維成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様に打抜きを行った。
【0060】
[評価]
(1)押出性
打抜き後に排ガス浄化装置用保持材が打抜刃内から押し出されたか否かを確認した。
【0061】
(2)打抜精度および端面の角度
切り出された排ガス浄化装置用保持材の寸法と端面の角度を測定した。打抜型の寸法より±1.0mm以上の差があるものについては不成功として、成功回数を求めた。また、端面の角度は10回の打ち抜きにおける平均値を求めた。
【0062】
(3)厚み精度
切り出された排ガス浄化装置用保持材の厚みを一定荷重の下で測定し、10回の打抜きにおける平均値を求めた。そして、下記式により厚み精度を求めた。
厚み精度(%)=(保持材の厚み/打抜き前の無機繊維成形体の厚み)×100
【0063】
(4)面圧評価
無機繊維成形体から切り出した排ガス浄化装置用保持材を嵩密度(GBD)0.3g/cm
3〜0.5g/cm
3まで圧縮した際の面圧値を測定し、各GBDにおける面圧値を求めた。
次に、各サンプルをGBD=0.3g/cm
3から0.4g/cm
3まで圧縮することを10回繰り返した。その際、第1回目のGBD=0.3g/cm
3での面圧値と第10回目のGBD=0.3g/cm
3での面圧値とを測定し、下記式より面圧の劣化度合いの指標となる面圧残存率(%)を求めた。
面圧残存率(%)=(第10回目の0.3面圧値/第1回目の0.3面圧値)×100
結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
上記の結果から、25%圧縮荷重が20kPaを超えるような比較的硬い弾性体を備える打抜型を用いて、嵩密度が0.160g/cm
3以上と比較的高い無機繊維成形体を打抜くと、打抜精度、厚み精度が低下し、保持材の性状が劣化することが確認された。これは、弾性体を圧縮させる際の荷重により無機繊維成形体が圧潰し無機繊維成形体の内部構造が破壊されるためと考えられる。打抜精度が悪くなると排ガス浄化装置用保持材の生産性が低下するおそれがある。
また、比較例3では、25%圧縮荷重が20kPa以下と比較的柔らかい弾性体を備える打抜型を用いて、嵩密度が0.160g/cm
3以下と比較的低い無機繊維成形体を打抜くと、打抜刃内からの排ガス浄化装置用保持材の押出性が悪くなることが確認された。これは、弾性体の反発力が小さいとともに、打抜く際の荷重で無機繊維成形体が圧潰されるため、排ガス浄化装置用保持材が打抜刃内に埋もれてしまったと考えられる。